説明

自動分析装置および分析システム

【課題】検体の種別にかかわらず正確な分析結果の算出を行なうことが可能な自動分析装置および分析システムを提供すること。
【解決手段】検体と試薬との反応を光学的に測定し、得られた測定値を用いて分析値を算出して検体の分析を行う自動分析装置1であって、制御部31が、各試薬毎に設定される検体の種類に対応した1つ以上の分析パラメータPを保持するデータベース35から分析項目に対応した分析パラメータPを取得し、分析部33が、分析パラメータPと測定値とをもとに分析値を算出することで、検体の種類に対応した分析結果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを用いて前記検体の分析を行う自動分析装置と通信可能な管理装置を有し、管理装置が試薬に対応した分析パラメータ等の試薬情報を管理する分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析結果の算出処理には、測定されて得られた測定値と分析パラメータとを用いて分析値の算出を行うことによって、分析結果を算出する。分析パラメータは、測定値を分析値として変換することに用いられるため、分析結果の算出において特に重要となる。この分析パラメータの取り込みに対して、自動分析装置に用いられる試薬の分析パラメータを送受信して試薬が有する分析パラメータを更新する分析システムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この分析システムでは、試薬容器に貼付されたバーコードまたは管理装置に記憶された情報を自動分析装置が取り込むことによって情報の追加・更新が行なわれる。装置担当者が分析パラメータの入力を行なうことなく、分析パラメータを自動分析装置に取り込むことができるため、入力ミスによる分析結果の語算出を防止すことができる。
【0003】
【特許文献1】特許第4112229号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本来、試薬の分析パラメータは、検体の種別によって測定対象の物質の濃度が大きく異なるため、検体の種類に対応して複数の分析パラメータを持つ必要があるが、特許文献1に示す分析システムは、試薬IDをもとに、対応する分析パラメータを選択していたため、各試薬IDが検体の種類に応じて保持する複数の分析パラメータに対応できなかった。この場合、検体の種別間による測定値の差異によって、分析結果にも差異が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、検体の種別にかかわらず正確な分析結果の算出を行なうことが可能な自動分析装置および分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる自動分析装置は、検体と試薬との反応を光学的に測定し、得られた測定値を用いて分析値を算出して前記検体の分析を行う自動分析装置であって、各試薬毎に設定される前記検体の種類に対応した1つ以上の分析パラメータを保持する保持部と、分析項目に応じた前記分析パラメータと前記測定値とをもとに分析値を算出する分析部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記分析パラメータの単位または有効数字を変更または設定する設定部を備え、前記分析部は、前記設定部によって変更または設定された分析パラメータを取得することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、取得した分析パラメータの取得情報を作成する情報作成部を備え、次回分析処理を行う場合に、前記取得情報を参照して取得する分析パラメータを決定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、取得した前記分析パラメータを前記分析項目と前記検体の種類に対応付けして記憶する記憶部を備え、取得した分析パラメータが、記憶済み分析パラメータの情報と異なる場合に今回取得した分析パラメータを記憶することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記保持部は、各試薬毎に設定される前記検体の種類と、前記検体にかかる属性とに対応した前記分析パラメータを保持することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる分析システムは、上記の発明において、検体と試薬との反応を光学的に測定し、得られた測定値を用いて分析値を算出して前記検体の分析を行う自動分析装置と通信可能な管理装置を有し、該管理装置が前記試薬に対応した分析パラメータ等の試薬情報を管理する分析システムであって、前記管理装置は、各試薬毎に設定される前記検体の種類または状態に対応した1つ以上の分析パラメータを保持する保持部を備え、前記自動分析装置は、前記管理装置から前記分析パラメータを取得し、取得した分析パラメータと前記測定値とをもとに分析値を算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる分析システムは、上記の発明において、前記自動分析装置は、取得した前記分析パラメータの単位または有効数字を変更または設定する設定部を備え、前記分析部は、前記設定部によって変更または設定された分析パラメータを保持することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる分析システムは、上記の発明において、前記自動分析装置は、取得した分析パラメータの取得情報を作成する情報作成部を備え、次回分析処理を行う場合に、前記取得情報を参照して取得する分析パラメータを決定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる分析システムは、上記の発明において、前記自動分析装置は、取得した前記分析パラメータを前記分析項目と前記検体の種類に対応付けして記憶する記憶部を備え、取得した分析パラメータが、記憶済み分析パラメータの情報と異なる場合に今回取得した分析パラメータを記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各試薬において検体の種類に応じて分析パラメータを複数有するようにしたので、検体の種類にかかわらず正確な分析結果の算出を行なうことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である自動分析装置について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる自動分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器21にそれぞれ分注し、分注した反応容器21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構3とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学分析を自動的に行なう。なお、反応容器21は、容量が数μL〜数mLと微量な容器であり、測光部18の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス、環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器21は、側壁と底壁とによって液体を保持する水平断面が四角形の液体保持部が形成され、液体保持部の上部に開口を有する四角筒形状の反応容器である。
【0018】
測定機構2は、図1に示すように、大別して検体移送部11、検体分注機構12、反応テーブル13、試薬庫14、試薬分注機構16、攪拌部17、測光部18および洗浄部19を備える。
【0019】
検体移送部11は、血液を検体として収容した複数の検体容器11aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注機構12によって、反応テーブル13上に配列して搬送される反応容器21に分注される。
【0020】
検体分注機構12は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム12aを備える。このアーム12aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうノズルが取り付けられている。検体分注機構12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構12は、上述した検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11aの中からノズルによって検体を吸引し、アーム12aを図中時計回りに旋回させ、反応容器21に検体を吐出して分注を行なう。
【0021】
反応テーブル13は、反応容器21への検体や試薬の分注、反応容器21の攪拌、測光、洗浄および汚れ検出用測光を行なうために反応容器21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル13の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル13の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0022】
試薬庫14は、反応容器21内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収納できる。試薬庫14には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器15が着脱自在に収納される。試薬庫14は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器15を試薬分注機構16による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫14の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫14の下方には、恒温槽が設けられている。このため、試薬庫14内に試薬容器15が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬容器15内に収容された試薬を冷却し、試薬容器15内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0023】
試薬容器15の側面部には、試薬容器15に収容された試薬に関する試薬情報が記録された記憶媒体が付されている。記憶媒体は、符号化された各種の情報を表示したバーコード記号であり、光学的に読み取られる。試薬情報として、この試薬が使用される検査項目名、試薬名、収容する試薬容量、試薬有効期限、ロット番号、ボトル番号がある。試薬庫14の外周部には、この記憶媒体を光学的に読み取る読取部14aが設けられている。読取部14aは、記憶媒体に対して赤外光または可視光を発し、記憶媒体からの反射光を処理することによって、記憶媒体の情報を読み取る。また、読取部14aは、記憶媒体を撮像処理し、撮像処理によって得られた画像情報を解読して、記憶媒体の情報を取得してもよい。読取部14aは、読み取った記憶媒体の情報を制御部31に出力する。なお、記憶媒体は、符号化された各種の情報を表示し光学的に読み取られるバーコード記号であるほか、所定周波数の電波を介して記憶する試薬情報の送信および記憶する試薬情報の書替えを行なうRFIDタグであってもよい。この場合、読取部14aは、所定周波数の電波を介して、記憶媒体の情報の読み取りおよび記憶媒体の情報の書替えを行なってもよい。
【0024】
試薬分注機構16は、検体分注機構12と同様に、試薬の吸引および吐出を行なう試薬ノズルが先端部に取り付けられたアーム16aを備える。アーム16aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なう。試薬分注機構16は、試薬庫14上の所定位置に移動された試薬容器15内の試薬をノズルによって吸引し、アーム16aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定位置に搬送された反応容器21に分注する。攪拌部17は、反応容器21に分注された検体と試薬との攪拌を行ない、反応を促進させる。
【0025】
測光部18は、たとえば、所定の測光位置に搬送された反応容器21にハロゲンランプなどの光源から分析光(340〜800nm)を照射し、反応容器21内の液体を透過した光を分光し、PDAなどの受光素子による各波長光の強度測定を行なうことによって、分析対象である検体と試薬との反応液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0026】
洗浄部19は、洗浄ノズルによって、測光部18による測定が終了した反応容器21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで分析処理が終了した反応容器21を洗浄する。この洗浄された反応容器21は再利用される。
【0027】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、記憶部34、データベース35および出力部36を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0028】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。また、制御部31は、パラメータ設定部31aと情報作成部31bとを有し、パラメータ設定部31aは、測光部18によって測光されて得られた反応液の測定値から分析値を算出する際に用いられる分析パラメータPの単位または小数点桁数の設定・変更を行い、情報作成部31bは、取得した分析パラメータPに関する情報である実施記録341を、取得日時を付加して作成する。
【0029】
入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部33は、測光部18によって測定された吸光度に基づいて検体の成分分析等を行なう。記憶部34は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報および分析パラメータPの取得記録である実施記録341を記憶する。データベース35は、分析パラメータP等を含む試薬情報を記憶し、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置として用いられる。
【0030】
出力部36は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部36は、図示しない通信ネットワークを介して外部装置に諸情報を出力する。
【0031】
以上のように構成された自動分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器21に対して、検体分注機構12が検体容器11a中の検体を分注し、試薬分注機構16が試薬容器15中の試薬を分注した後、測光部18が検体と試薬とを反応させた状態の検体の分光強度測定を行ない、得られた測定値と分析パラメータPとを用いて、分析部33が分析値を算出して分析することで、検体の成分分析等が自動的に行なわれる。また、洗浄部19が測光部18による測定が終了した後に搬送される反応容器21を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行なわれる。
【0032】
ここで、分析処理を行う場合に用いられる試薬に関する分析パラメータPの取得について、図2を参照して説明する。図2は、取得する分析パラメータPの選択画面を示す図である。図2に示す分析パラメータ選択画面W1は、試薬名、サンプル種別、単位、小数点桁数および取込位置を表示する。取得する分析パラメータPは、チェックボックス群CGの各試薬名に対応したチェックボックスを選択し、ダウンロードボタンB2を押下することによって取得できる。また、キャンセルする場合は、キャンセルボタンB3を押下すると分析パラメータ選択処理が終了する。
【0033】
なお、サンプル種別は、各試薬に対して分析可能な検体の種類がそれぞれ表示され、同一試薬において、複数の検体が分析可能である場合は、別個表示される。また、同一の試薬であっても、図2中のグルコースにおける成人用および小児用のように、検体にかかる属性によって分析パラメータが異なる場合も別個に表示され、選択できる。属性は、検体にかかるものでもよく、用途にかかるものでもよい。単位は、プルダウン群PG1を押下することによって選択が可能であり、サンプル種別または試薬に対応して単位の選択ができる。小数点桁数は、有効数字として算出される桁数が選択でき、プルダウン群PG2を押下して表示される、たとえば桁単位の段階的な選択範囲である0.00001〜1.0から選択する。取込位置は、予め自動分析装置1に設定されている分析項目ナンバーに対応した数値で表示され、分析項目に対応した試薬名とサンプル種別との組合せによって取込位置が決定される。なお、取り込み位置は、試薬名とサンプル種別との組合せによって自動的に入力されてもよく、装置担当者が入力処理を行ってもよい。ここで、分析パラメータ選択画面W1は、試薬名とサンプル種別とを表示し、選択された試薬名およびサンプル種別に対して、詳細画面として図2に示す単位、小数点桁数および取込位置を表示して設定できるようにしてもよい。
【0034】
また、図2の実施記録ボタンB1を押下すると、これまでに実施された情報を確認することができる。図3は、実施記録ボタンB1を押下した場合に表示される実施記録画面W2を示す図である。図3に示す実施記録画面W2は、情報作成部31bによって分析パラメータの取得情報である実施記録341として作成・更新され、これまでに取得した情報を、試薬またはサンプル種別毎に表示する。表示項目は、図2に示す分析パラメータ選択画面において設定された情報に加えて、取得した試薬情報のバージョン、実施日および実施者が表示される。実施日は、最新の実施日が表示されており、その実施日に実施した実施者が表示される。確認後、実施記録画面W2を閉じる場合は、OKボタンB4を押下する。
【0035】
なお、実施記録341の表示においては、現在ログインしている実施者が過去に行なった実施情報のみを表示するようにしてもよい。また、今回の更新において新たに追加された情報と、更新された情報との文字色を変更して表示してもよく、背景色を変更してもよい。さらに、データベース35の情報が更新され、実施記録に同一の試薬またはサンプル種別がある場合に、実施記録画面W2の対応する試薬またはサンプル種別に、更新が必要である旨の情報を付加するようにしてもよい。
【0036】
つづいて、データベース20に保持されている分析パラメータPについて図4を参照して説明する。図4は、データベース20に保持された各試薬に対する分析パラメータPの一例を示す図である。分析パラメータPは、試薬単位で各データシートDS1〜DS4に分けられ、データシートDS1は、試薬がグルコースである場合の分析パラメータPを示しており、図4に示す「成人用」、「小児用」の属性に応じて「血清」、「血漿」のように、サンプル種別に対応した分析パラメータが保持されている。
【0037】
ここで、図1に示す制御部31が行なう分析パラメータ取得処理について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の実施の形態1にかかる分析パラメータ取得処理を示すフローチャートである。まず、制御部31は、取得する分析パラメータ選択画面からの入力があるか否かを判断する(ステップS102)。制御部31は、図2に示す分析パラメータ選択の入力がない場合(ステップS102:No)、分析パラメータ選択の入力の判断を繰り返す。制御部31は、分析パラメータ選択の入力がある場合(ステップS102:Yes)、ステップS104に移行して、データベース35から、選択された分析パラメータPの取得処理を行う。制御部31は、分析パラメータPの取得の確認を行い、取得が完了していない場合(ステップS106:No)、取得完了の確認を繰り返す。分析パラメータPの取得が完了すると(ステップS106:Yes)、制御部31は、ステップS108に移行して、取得した分析パラメータPを所定位置、たとえば、分析部33による分析値の算出領域に保持する。なお、記憶部34に一時保存領域を設け、サンプル種別または分析項目ナンバーに対応させて一時保存領域に保持させてもよい。分析パラメータPを所定位置に保持すると、制御部31は、情報作成部31bに図3に示す実施記録341の更新処理を行うよう指示する(ステップS110)。その後、未取得の分析パラメータPがある場合(ステップS112:Yes)、制御部31は、ステップS104に移行し、上述した処理を繰り返して分析パラメータPを取得する。また、未取得の分析パラメータPがない場合(ステップS112:No)、分析パラメータ取得処理を終了する。
【0038】
ここで、ステップS102の分析パラメータ選択の判断において、制御部31が実施記録341を参照して、取得すべき分析パラメータPの判断を行なうように設定してもよい。また、取得する分析パラメータを予め設定し、装置起動時に分析パラメータの取得処理を行ってもよい。
【0039】
つぎに、本発明の実施の形態1にかかる分析処理について、図6を参照して説明する。図6は、本発明の実施の形態1にかかる分析処理を示すフローチャートである。まず、分析部33は、制御部31から分析項目が付加された分析指示の入力があるか否かを判断する(ステップS202)。ここで、制御部31からの分析指示がない場合は、指示の有無の判断を繰り返す(ステップS202:No)。制御部31から分析項目が付加された分析指示をあると判断すると(ステップS202:Yes)、分析部33は、ステップS204に移行して取込位置(分析項目)に対応したサンプル種別を抽出し、抽出したサンプル種別に対応する分析パラメータPの取得処理を行う(ステップS206)。ここで、分析パラメータの取得処理が、予め図5に示す分析パラメータ取得処理によって取得されている場合は、分析部33の所定位置または記憶部33の一時保存領域から分析パラメータPを取得する。分析パラメータPの取得が完了すると、分析部33は、測光部18による測光で得られた測定値を取得し(ステップS208)、分析パラメータPと測定値とを用いて分析値を算出する(ステップS210)。分析部33は、算出された分析値を制御部31に出力する(ステップS212)。その後、制御部31から次の検体の分析指示がある場合(ステップS214:Yes)、ステップS202に移行して分析項目の確認を行い、上述した分析処理を繰り返す。また、次の検体の分析指示がない場合(ステップS214:No)、分析部33は、分析処理を終了する。
【0040】
上述した分析パラメータの取得処理によって、記憶部にかかる負荷を軽減しつつ、検体に対応した分析値の算出を行なうことが可能となる。また、分析処理を行う度に分析パラメータを取得することによって、装置担当者が情報の更新作業を行なうことなく、常に最新の分析パラメータを用いて分析を行うことができる。
【0041】
なお、上述した分析パラメータ取得処理では、取得した分析パラメータPを記憶部34には記憶せず、処理を行う度に取得するようにしたが、記憶部33に保存するようにしてもよい。図7は、図5に示す分析パラメータ取得処理の変形例である分析パラメータ取込処理を示すフローチャートである。まず、制御部31は、取得する分析パラメータ選択画面からの入力があるか否かを判断する(ステップS302)。制御部31は、図2に示す分析パラメータ選択の入力がない場合(ステップS302:No)、分析パラメータ選択の入力の判断を繰り返す。制御部31は、分析パラメータ選択の入力がある場合(ステップS302:Yes)、ステップS304に移行し、実施記録341を参照して、前回以前に取得された分析パラメータのうち、今回取得する分析パラメータと同一の試薬およびサンプル種別の情報があるか否かを判断する。ここで、前回以前に同一の試薬およびサンプル種別の分析パラメータPを取得していない場合(ステップS304:No)、制御部31は、データベース35から分析パラメータPの取得処理を行う(ステップS308)。制御部31は、分析パラメータPの取得状況を確認し、分析パラメータPの取得が完了していない場合(ステップS310:No)、取得完了の確認を繰り返す。分析パラメータPの取得が完了すると(ステップS310:Yes)、制御部31は、取得した分析パラメータPを記憶するよう記憶部34に指示する(ステップS312)。その後、情報作成部31bに実施記録341の更新処理するよう指示し(ステップS314)、未取得の分析パラメータPがある場合は(ステップS316:Yes)、ステップS304に移行して上述した処理を繰り返し、未取得の分析パラメータがない場合は(ステップS316:No)、分析パラメータ取込処理を終了する。
【0042】
ここで、ステップS304において、記憶部34が同一の試薬およびサンプル種別の分析パラメータPを記憶している場合(ステップS304:Yes)、制御部31は、ステップS306に移行して、今回取得した分析パラメータが記憶されている分析パラメータと同一の値であるかをバージョンも含めて判断する。なお、分析パラメータまたはバージョンが異なる場合(ステップS306:No)、制御部31は、ステップS308に移行して分析パラメータの取得処理を行う。また、分析パラメータまたはバージョンが同一である場合(ステップS306:Yes)、制御部31は、ステップS314に移行して、情報作成部31bに実施記録の更新を行なうよう指示する。
【0043】
また、データベース35に保持された分析パラメータPを自動分析装置1内に取り込む場合のサンプル種別に対応する保持位置は、データベース35内のサンプル種別に対応する自動分析装置1内のサンプル種別を設定することができる。図8は、自動分析装置1内のサンプル種別設定を行なう設定画面を示す図である。図8に示すサンプル種別設定画面W3は、データベース35内において設定されているサンプル種別と、自動分析装置1内において設定されるサンプル種別とを表示し、データベース35のサンプル種別に対応した自動分析装置1のサンプル種別を、プルダウン群PG3の各プルダウンを押下することによって設定可能である。なお、プルダウンによって選択できるサンプル種別は、予め設定されているサンプル種別が表示される。サンプル種別の設定後、設定を確定する場合はOKボタンB5を押下し、キャンセルする場合はキャンセルボタンB6を押下する。
【0044】
上述した実施の形態1にかかる自動分析装置は、検体の種別に対応した試薬の分析パラメータをデータベースから取得することができるため、記憶部にかかる負荷を抑制しつつ、検体に対応した分析値を正確に算出することが可能となる。また、成人用・小児用のように、検体の分注量等の差異による分析パラメータも使用可能であるため、一層正確な分析値を算出することができる。
【0045】
(実施の形態2)
図9は、本実施の形態2にかかる分析システムの全体構成を示す模式図である。図9に示すように、本実施の形態1にかかる分析システムは、複数の施設にそれぞれ配置された自動分析装置A1〜A3,B1,B2と、ネットワークNを介して各自動分析装置A1〜A3,B1,B2と接続する管理サーバ60とを備える。また、この自動分析装置A1〜A3,B1,B2は、複数の施設にそれぞれ設置される。たとえば、施設Aには、自動分析装置A1〜A3が設置され、施設Bには、自動分析装置B1,B2が設置されている。
【0046】
管理サーバ60は、ネットワークNを介して自動分析装置A1〜A3,B1,B2との間で通信を行うことによって、各自動分析装置A1〜A3,B1,B2を管理する。管理サーバ60は、管理サーバ60の各構成部位の処理動作を制御する制御部61と、各指示情報などを入力する入力部62と、管理サーバ60が処理した情報などを出力する出力部64と、通信ネットワークNを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する送受信部63とを有する。制御部61は、各自動分析装置A1〜A3,B1,B2から分析パラメータPの取得要求があった場合に、データベース70に保持されている分析パラメータPを要求した自動分析装置に送信する。
【0047】
また、各自動分析装置A1〜A3,B1,B2は、ネットワークNを介して各自動分析装置A1〜A3,B1,B2に関する情報を管理サーバ60に送信する。各自動分析装置A1〜A3,B1,B2は、管理サーバ60と自動分析装置A1〜A3,B1,B2との間の接続状態を示す接続情報および自動分析装置A1〜A3,B1,B2自身の動作状態を示す状態情報を管理サーバ60に送信する。たとえば、状態情報として、行っていた分析処理が終了したことを示す情報や、検体、試薬、反応容器内の液体の温度情報などがある。また、各自動分析装置A1〜A3,B1,B2は、分析処理に用いる試薬に関する分析パラメータPの取得要求情報を管理サーバ60に送信する。
【0048】
続いて、各自動分析装置A1〜A3,B1,B2について説明する。図9においては、各自動分析装置A1〜A3,B1,B2のうち、たとえば自動分析装置A1,B1における構造を示す。自動分析装置A1,B1は、図9に示すように、検体および検査項目に対応する試薬を反応容器に分注し、反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定機構40,50と、自動分析装置A1,B1の各構成部位の処理および動作を制御する制御部41,51と、種々の情報を入力する入力部42,52と、測定機構40,50による測定結果に基づいて検体に対する分析処理等を行なう分析部43,53と、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する記憶部44,54と、図示しない通信ネットワークNを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する送受信部45,55と、分析に関する諸情報を出力する出力部46,56とを有する。また、制御部41,51は、分析値を算出する際に用いられる分析パラメータPの単位の設定等を行うパラメータ設定部41a,51aと、取得した分析パラメータPの実施記録を作成する情報作成部41b,51bとを有する。なお、測定機構40,50は、図1に示す測定機構2と同様の構成である。
【0049】
ここで、パラメータ設定部41a,51aによって、設定・選択された分析パラメータPの情報を制御部41,51が管理サーバ60に送信する。なお、図2に示す分析パラメータ選択画面W1を用いて、試薬名を選択後、ダウンロードボタンB2を押下することによって、制御部41,51が管理サーバ60に送信するようにしてもよい。各自動分析装置A1〜A3,B1,B2は、図5または図7に示すフローチャートに従って分析パラメータを取得する。
【0050】
上述した実施の形態2にかかる分析システムは、管理サーバによって、接続された各自動分析装置が取得する分析パラメータを保持するデータベースを一元管理するため、検体の種類に対応した分析パラメータを取得できるうえ、試薬の分析パラメータが更新された場合においても、各自動分析装置は最新の分析パラメータを取得することが可能となる。
【0051】
なお、上述した実施の形態1,2において、制御部31,41,51は、測定機構の試薬庫に収容された試薬容器に付された記憶媒体から得られる試薬情報をもとに、試薬名に対応する分析パラメータPを取得するように設定してもよい。また、分析パラメータPは、各入力部32,42,52,62からユーザが数値を変更できるようにしてよく、変更を防止するために暗号化してデータベース35,70に保持してもよい。さらに、図2の分析パラメータ選択画面W1は、読取部14aによって読み取られた試薬情報から試薬名を特定し、表示する試薬名の一覧に、ユーザが使用する試薬のみを絞り込んで表示してもよく、実施記録341の情報をもとに、チェックボックスを自動で選択できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】取得する分析パラメータの選択画面を示す図である。
【図3】実施記録ボタンを押下した場合に表示される実施記録画面を示す図である。
【図4】データベースに保持された各試薬に対する分析パラメータの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる分析パラメータ取得処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる分析処理を示すフローチャートである。
【図7】図5に示す分析パラメータ取得処理の変形例である分析パラメータ取込処理を示すフローチャートである。
【図8】自動分析装置内のサンプル種別設定を行なう設定画面を示す図である。
【図9】本実施の形態2にかかる分析システムの全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1,A1〜A3,B1,B2 自動分析装置
2 測定機構
3 制御機構
11 検体移送部
12 検体分注機構
13 反応テーブル
14 試薬庫
15 試薬容器
16 試薬分注機構
17 攪拌部
18 測光部
19 洗浄部
21 反応容器
31,41,51,61 制御部
32,42,52,62 入力部
33,43,53 分析部
34,44,54 記憶部
35,70 データベース
36,46,56,64 出力部
40,50 測定機構
45,55,63 送受信部
60 管理サーバ
A,B 施設
N ネットワーク
P 分析パラメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬との反応を光学的に測定し、得られた測定値を用いて分析値を算出して前記検体の分析を行う自動分析装置であって、
各試薬毎に設定される前記検体の種類に対応した1つ以上の分析パラメータを保持する保持部と、
前記保持部から分析項目に応じた前記分析パラメータを取得し、取得した分析パラメータと前記測定値とをもとに分析値を算出する分析部と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記分析パラメータの単位または有効数字を変更または設定する設定部を備え、
前記分析部は、前記設定部によって変更または設定された分析パラメータを取得することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
取得した分析パラメータの取得情報を作成する情報作成部を備え、
次回分析処理を行う場合に、前記取得情報を参照して取得する分析パラメータを決定することを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
取得した前記分析パラメータを前記分析項目と前記検体の種類に対応付けして記憶する記憶部を備え、
取得した分析パラメータが、記憶済み分析パラメータの情報と異なる場合に今回取得した分析パラメータを記憶することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記保持部は、各試薬毎に設定される前記検体の種類と、前記検体にかかる属性とに対応した前記分析パラメータを保持することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項6】
検体と試薬との反応を光学的に測定し、得られた測定値を用いて分析値を算出して前記検体の分析を行う自動分析装置と通信可能な管理装置を有し、該管理装置が前記試薬に対応した分析パラメータ等の試薬情報を管理する分析システムであって、
前記管理装置は、
各試薬毎に設定される前記検体の種類または状態に対応した1つ以上の分析パラメータを保持する保持部を備え、
前記自動分析装置は、前記管理装置から前記分析パラメータを取得し、取得した分析パラメータと前記測定値とをもとに分析値を算出することを特徴とする分析システム。
【請求項7】
前記自動分析装置は、
取得した前記分析パラメータの単位または有効数字を変更または設定する設定部を備え、
前記分析部は、前記設定部によって変更または設定された分析パラメータを保持することを特徴とする請求項6に記載の分析システム。
【請求項8】
前記自動分析装置は、
取得した分析パラメータの取得情報を作成する情報作成部を備え、
次回分析処理を行う場合に、前記取得情報を参照して取得する分析パラメータを決定することを特徴とする請求項6または7に記載の分析システム。
【請求項9】
前記自動分析装置は、
取得した前記分析パラメータを前記分析項目と前記検体の種類に対応付けして記憶する記憶部を備え、
取得した分析パラメータが、記憶済み分析パラメータの情報と異なる場合に今回取得した分析パラメータを記憶することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−223735(P2010−223735A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70936(P2009−70936)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】