説明

自動分析装置および反応セルの装着状態を確認する方法

【課題】 反応セルの取り付け不良や、反応ディスクとその駆動部などの偏磨耗に伴う測光不良などを日常点検で容易に発見できるようにする。
【解決手段】 反応ディスク11に装着され初期設定された全ての反応セル10について、装着状態データを収集して記録する第1の工程と、当該自動分析装置の動作開始時に、第1の工程と同じ手段によって全ての反応セルの装着状態データを収集して記録する第2の工程と、第1、第2の工程で収集した装着状態データを、各反応セルについて比較する第3の工程と、この比較結果に基づき、反応セルの装着状態の正常・異常を判定する第4の工程とから成る。
これにより、特に治具を用いた煩わしい測定作業によらず、反応セルの浮き上がりなどの不具合の有無を、オペレータが始業点検として容易に確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬に反応させた試料を、分光分析によりその成分を自動的に分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿などの試料に試薬を混合して反応させ、その反応状態を分光分析することによって、試料の成分分析を自動的に行う装置である。この自動分析装置は、多数の試料について、短時間に多数項目の成分分析を行えるため、病院や医療検査機関などにおいて広く利用されている。
【0003】
図5は、自動分析装置の要部である分析部の概略的な構成を示した斜視図であり、この図を参照しながら自動分析装置について説明する。
【0004】
図5に示すように、自動分析装置は、多数の反応セル10を装着した反応ディスク11、多数の試料容器12aを収容したサンプルディスク12、第1試薬庫13、第2試薬庫14、試料分注機構15、第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19、洗浄ユニット20、測定ユニット22などを備え、これらのユニットや機構などの各構成機器の動作が、図示しない分析装置制御部によって制御されるものである。なお、オプションとして電極21も配置可能となっている。
【0005】
反応ディスク11は、リング状に形成されて周方向に多数の反応セル10を装着しており、設定されたプログラムに沿って所定の角度だけ回転したり停止したりする間欠的な回転動作を行う。この反応ディスク11の傍に、分析対象となる試料の入った試料容器12aを多数収容したサンプルディスク12が配置されている。第1試薬庫13は、反応ディスク11の内側に同心状に配置され、試薬を収容した多数の試薬容器13aを格納している。同じく試薬を収容した多数の試薬容器14aを格納している第2試薬庫14が、反応ディスク11の近傍に所定間隔をおいて配置されている。
【0006】
反応ディスク11とサンプルディスク12の間に試料分注機構15が配置されている。この試料分注機構15は支柱15aを軸として、反応ディスク11とサンプルディスク12の間を、孤を描くように回転する。また、反応ディスク11の外周近傍に第1試薬分注機構16が配置され、さらに反応ディスク11と第2試薬庫14の間に第2試薬分注機構17が配置されている。これら第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17もそれぞれ支柱16a、17aを軸として、反応ディスク11と第1試薬庫13の間、または反応ディスク11と第2試薬庫14の間を、孤を描くように回転する。さらに、反応ディスク11の外周近傍に、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19、洗浄ユニット20、電極21が配置され、反応ディスク11の所定位置に測定ユニット22が配置されている。
【0007】
サンプルディスク12は円盤状に形成され、その軸線を中心として回転することにより、試料容器12aの所望のものを試料分注機構15の吸引位置に移動させる。試料分注機構15は、アーム15bの先端側に針状のプローブ15cを有している。そして、このプローブ15cをサンプルディスク12の所定の吸引位置に位置づけて支柱15aを下降させることにより、プローブ15cを試料容器12a内に降下させて試料を吸引する。その後支柱15aを上昇させた上でアーム15bを反応ディスク11側へ回転し、反応ディスク11に収容された所定の反応セル10内へ試料を吐出する。
【0008】
なお、試料の吐出に当っても吸引時と同様に、試料分注機構15は所定の吐出位置で支柱15aを下降させることにより、反応セル10内にプローブ15cを降下させて、プローブ15cから試料を吐出する。なお、プローブ15cの根元部すなわちアーム15b側にチューブが連結されており、このチューブはアーム15b内を通り、さらに支柱15a内を通って、その他端は図示しないポンプに連結されている。
【0009】
反応ディスク11はその軸線を中心に回転し、所定の反応セル10を第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17の試薬吐出位置に移動させる。
【0010】
第1試薬庫13、第2試薬庫14はともに円環状に形成されていて、その軸線を中心として回転するものであり、それぞれに格納されている所望の試薬容器13a、14aを第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17の吸入位置へ移動させる。第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17も試料分注機構15と同様に、それぞれアーム16b、17bの先端に針状のプローブ16c、17cを有しており、それぞれ第1試薬庫13、第2試薬庫14の所定の試薬容器13a、14aから試薬を吸引し、その試薬を反応ディスク11に収容されている所定の反応セル10へ所定量分注する。
【0011】
反応ディスク11の回転動作によって、反応セル10が第1攪拌位置、第2攪拌位置に達すると、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19は、該当する反応セル10内に吐出されている試料と試薬との混合液を攪拌子で攪拌し、反応を促進させる。さらに、反応ディスク11の回転動作に伴い反応セル10が測定ユニット22の位置に達すると、測定ユニット22によって反応セル10内の混合液の成分が分光分析される。そして、分析終了後反応セル10内の混合液は廃棄され、その反応セル10内は洗浄ユニット20によって洗浄されて次の試料の分析に供せられる。
【0012】
ところで、自動分析装置で分析に供される試料について、近時その量を微量化したいとの要望が強い。その理由は、ひとにとって大切な血液を無駄にしたくないということは勿論のことであるが、試料の量が多いとその試料に反応させるために使用する試薬の量も多く必要となるからである。すなわち、自動分析装置の運用に当ってのランニングコストに占める試薬の割合が大きいため、ランニングコストを低減するためには、使用する試薬の量を減らさなければならないからである。
【0013】
一方、分光分析を実施するに当っては、正確な測定精度を得るため、試料に照射する光束の全てが試料内を通過しなければならない。換言すれば、光束は試料に入射してから出射するまでの間、試料の外部を通過しないようにしなければならない(例えば、特許文献1参照。)。そのため、試料を分注した反応セル10と測定ユニット22との位置を精度良く保つことが求められる。
【0014】
ここで、反応ディスク11部分のみを抽出して示すと、反応ディスク11は図6に示すようなリング状に形成されている。そして反応ディスク11は、そのA−A線に沿う断面を概略的に示した図7のような駆動部50によって駆動される。すなわち、図7に示すように、反応ディスク11の内周面は駆動軸51のピニオン52に噛合わされており、さらに反応ディスク11の内周面と底面は、それぞれガイドローラー53、54によって支持されるようになっている。
【0015】
そして、反応ディスク11の外周方向に反応セル10を保持した反応セルホルダ11aが装着されている。なお、反応セルホルダ11aは、例えば図8に示すような弧状に形成されており、リング状の反応ディスク11に例えば10個の反応セルホルダ11aが周状に配列され、この反応セルホルダ11aには、例えば11個の反応セル10が装着される。図7に戻って、このような反応セル10の底部側を、測定ユニット22の光源ランプ22aからの光束22bが通過するように、測定ユニット22が反応セル10の底部側に位置するように配置されている。
【0016】
このように、多数の反応セル10が測定ユニット22の光源ランプ22aからの光束22bを横切るように移動して試料の分析が行われる。
【特許文献1】特開2001−91455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、自動分析装置にあって測定ユニット22は固定されて配置されているので、不用意に位置がずれることはほんとん起こりえない。しかし反応セル10は、分析すべき試料が変わる毎に洗浄ユニット20によって洗浄され、また場合によっては、オペレータが反応ディスク11の反応セルホルダ11aから反応セル10を抜き取って、手動で洗浄することもあり、洗浄後に反応セル10を反応セルホルダ11aへ戻しても、正しい位置に戻されないことが予想される。また、自動分析装置を長期間使用することにより、図7に示した反応ディスク11や駆動部50のピニオン52、ガイドローラー53、54などが偏磨耗を起して、測定ユニット22に対して微少の傾きを生ずることにより、測光位置がずれてしまうおそれもある。
【0018】
このような場合には、測定ユニット22から照射する光束の一部が、反応セル10の外部を通過するようになって、測定精度を保つことができなくなり、正確な分析データが得られなくなるという問題を生ずることになる。
【0019】
製品の組み立て・調整時には、測光ユニット22の光源ランプ22aから照射される光束22bの、反応ディスク11に装着された反応セル10に対する位置関係を、治具を用いて反応セルホルダ11a毎に正確に設定しているが、このような設定作業は複雑で長時間を要するものであり、日常点検において実施するのは困難であった。そのため、洗浄後に反応セル10が反応ディスク11および反応セルホルダ11aの正しい位置に戻されているかどうか、或いは、偏磨耗などに起因する測光位置ずれが生じていないかどうかなどを確認することが困難であった。
【0020】
本発明は、このような事情に基づき、従来では発見の困難であった反応セルホルダの取り付け不良や、反応セルの位置ずれ、さらには駆動部などの偏磨耗に伴う測光不良などを日常点検で容易に発見できるようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、反応ディスクに装着された反応セルに、試料および試薬を分注して混合したものを反応させることにより前記試料の成分を分光分析する自動分析装置において、前記反応セルに試料または試薬を分注するためのプローブを有し、このプローブを回動および上下動させる機構部と、このプローブを前記反応セル内に降下させることによって、その先端が前記反応セルの底部に当ったときの降下量を検出する検出手段と、この検出手段で検出された前記プローブの降下量を、前記反応セル毎に記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された前記反応セル毎の前記プローブの降下量の、初期データと日常点検時データとを比較する比較手段とを具備することを特徴とする。
【0022】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動分析装置において、前記機構部は、前記プローブを垂直下方に支持する水平方向に延びたアームを備え、このアームに、前記プローブの降下によって、前記プローブの先端が前記反応セルの底部に当ったことを感知する感知手段が設けられていることを特徴とする。
【0023】
また、請求項3に記載の発明は、反応ディスクに装着された反応セル中の試料を分光分析する自動分析装置における、反応セルの装着状態を確認する方法であって、前記反応ディスクに装着され初期設定された全ての反応セルに対して、その装着状態を示す初期データを収集して記録する第1の工程と、この第1の工程と同じ手段によって、当該自動分析装置の動作開始時に、全ての前記反応セルに対して、その装着状態を示すデータを収集して記録する第2の工程と、この第2の工程で収集したデータと前記第1の工程で収集したデータとを、前記各反応セルについて比較する第3の工程と、この第3の工程による比較結果に基づき、前記反応セルの装着状態の正常・異常を判定する第4の工程とを具備することを特徴とする。
【0024】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の反応セルの装着状態を確認する方法において、前記反応セルの装着状態を示すデータは、前記反応セルに試料または試薬を分注するプローブを前記反応セル内に降下させることにより、前記プローブの先端が前記反応セルの底部に当ったときの、前記プローブのダウンステップ数であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記課題を解決するための手段の項にも示したとおり、本発明の特許請求の範囲に記載する各請求項の発明によれば、次のような効果を奏する。
【0026】
請求項1に記載の発明によれば、各反応セルに対して、プローブの基準位置からの下降量を計測できるようにし、その計測データを、自動分析装置を製造したときの初期データとして保存するとともに、日常点検時に同様のデータを得て、保存されている初期データと比較する。よってこの比較結果から、反応セルが浮き上がっていたり、反応ディスクの駆動部などが偏磨耗を起していたりするなどの不具合の有無を、容易に確認することができる。従って、治具を用いて反応セルの装着状態を確認する従来の煩わしい作業から開放されるので、オペレータの負担が軽減し、さらに正確な自動分析データの収集に寄与することができる。
【0027】
請求項3に記載の発明によれば、自動分析装置としての通常の動作を適用して、各反応セルに対するプローブの下降量を計測し、その計測データを、自動分析装置を製造したときの初期データとして記録しておき、日常点検時に同様のデータを得て初期データと比較することにより、反応セルと分光分析用光軸との位置関係の異常の有無を判定するようにしたものである。これによって、特に治具などの特別の準備や煩わしい測定作業などを必要とせず、反応セルが浮き上がっていたり、反応ディスクの駆動部などが偏磨耗を起していたりするなどの不具合の有無を、オペレータが始業点検として容易に確認することができ、正確な自動分析データの収集に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る自動分析装置および反応セルの装着状態を確認する方法の一実施例について、図1ないし図4を参照して詳細に説明する。なおこれらの図において、図5ないし図8と同一部分には同一符号を付して説明する。
【0029】
先ず、自動分析装置の組み立て・調整時に、従来実施しているのと同様の方法によって、測光ユニット22の光源ランプ22aから照射される光束22bの、反応ディスク11および反応セルホルダ11aに装着された反応セル10に対する位置関係を、治具を用いて反応セルホルダ11a毎に正確に設定する。続いて本発明は、それぞれの反応セル10の装着状態についてのデータを得て保存し、これを初期データとする。その後必要に応じて同様の手段を用いて、反応セル10の装着状態についてのデータを得て保存し、これを点検時データとする。そして、この点検時データと初期データとを比較することによって、組み立て・調整時に対して、現在の反応セル10が反応ディスク11および反応セルホルダ11aの正しい位置に戻されているかどうか、或いは、反応ディスク11や駆動部50のピニオン52、ガイドローラー53、54などが偏磨耗を起し、それらに起因する測光位置ずれが生じていないかなど、異常の有無を確認する。
【0030】
次に、反応セル10の装着状態についてのデータを得る方法について説明するが、そのデータは、試料分注機構15のプローブ15cを反応セル10内に降下させて、プローブ15cの先端が反応セル10の底に当ったときの支柱15aの下降量すなわちダウンステップ数として求めている。
【0031】
図1は、本発明に係る自動分析装置において、反応ディスク11の外周方向に沿って装着されている反応セルホルダ11aの1つと、この反応セルホルダ11aに保持されている反応セル10に試料を分注する試料分注機構15を抽出して示したものである。反応ディスク11は、図示しない分析装置制御部のもとで回転制御されるので、反応セルホルダ11aも図1に弧状の矢印で示す方向へ回転させられる。また、分析装置制御部は、試料分注機構15を駆動して、サンプルディスク12の試料容器12aから試料を吸引するとともに、反応セルホルダ11aに保持されている反応セル10への試料の分注を制御する。
【0032】
試料分注機構15は、支柱15a、アーム15b、プローブ15cによって外形が略逆U字状に形成されている。すなわち、支柱15aの上端部から水平方向へ延びるようにアーム15bが形成され、そのアーム15bの先端部に垂直方向下向きにプローブ15cが設けられている。アーム15bはカバーで覆われていてその内部が見えないが、アーム15bの内部にプローブ15cに連結されたチューブ、プローブ15cの受ける微少な衝撃を感知するカット板、衝撃を感知したカット板の動きを検出しLEDなどを点灯させるセンサ、カット板の感度を調整するスライドプレートなどが収納されている。
【0033】
試料分注機構15の支柱15a、アーム15b、プローブ15cは、一体となって図1に太い矢印で示すように上下方向へ移動する。そしてこれらの上下方向への移動量を計測するための計測装置15dが、試料分注機構15に設けられている。この計測装置15dは、例えば支柱15aの上下動に応じて発生するパルスを計数するものであり、基準位置からのパルス数を計数して移動量を計測する。
【0034】
そこで、試料分注機構15の支柱15aを上方へ移動させて、例えば最も高い位置を基準位置とする。そして、反応セル10の真上にプローブ15cを位置させ、この状態で支柱15aを下降させる。従って、プローブ15cが反応セル10内へ降下する。図2は、停止している反応セル10に、プローブ15cが(a)→(b)→(c)→(d)の順で降下する状態を示したものである。ここで、(a)はプローブ15cの先端が反応セル10の中に入ろうとしている状態であり、(b)、(c)はプローブ15cが徐々に降下している状態を示し、(d)はプローブ15cの先端が反応セル10の底に当ったときの状態を示している。
【0035】
プローブ15cの先端が反応セル10の底に当ると、その衝撃がアーム15b内の図示しないカット板で感知され、その動きがセンサで検出されて支柱15aの下降動作が停止する。この反応セル10の底にプローブ15cの先端が当ったときの支柱15aの下降量(ダウンステッブ数)は計測装置15dで計測され、その値が記録される。このような計測を全ての反応セル10について行い、反応セル10毎の計測値を記録する。
【0036】
このような計測動作を、自動分析装置の組み立て・調整の完了時に実施したものを、初期データとして分析装置制御部のメモリなどに格納したり印刷したりしておく。そして、その後の日常点検時などに、必要に応じて同様の方法で全ての反応セル10について支柱15aの下降量を計測し、分析装置制御部のメモリなどに格納され、または印刷されている反応セル10毎の初期データと比較する。その結果、両者の差が許容範囲内ならば、異常なしと判断されるのでそのまま当日の分析動作を実施する。
【0037】
図3は、反応セル10の底にプローブ15cの先端が当ったときの支柱15aの下降量、すなわちダウンステッブ数の初期データと日常点検時データの取得結果を、反応セル10毎に比較して表に示したものである。例えば、正常な状態でのダウンステッブ数が700であるとして、反応セル10のNO.1〜NO.65とNO.68〜NO.110は、初期データと日常点検時データともに700と同じ値なので、これらの反応セル10は浮き上がりなく正常に装着されているものと判断される。しかし、NO.66とNO.67の反応セル10は、日常点検時データが690と692であり、初期データ700に対してダウンステッブ数が小さくなっていることが分かる。
【0038】
このように、初期データに対して日常点検時データが小さく、その差が許容範囲を外れていれば、その反応セル10自体またはその反応セル10を保持している反応セルホルダ11aに位置ずれが生じているおそれがあることを表しているので、その反応セル10を点検し、位置ずれなどがあればそれを正して再度日常点検時データを収集して初期データと比較する。また、再度のデータ比較でも異常値が修正されないときは、反応ディスク11や駆動部50のピニオン52、ガイドローラー53、54などに偏磨耗が生じていることが予想されるので、専門のサービス事業者などへ点検・修理を依頼する。
【0039】
このような動作の流れをフローチャートに示すと図4のとおりとなる。
【0040】
すなわち、ステップ1は、自動分析装置の組み立て・調整時に、測光ユニット22の光源ランプ22aから照射される光束22bの、反応ディスク11および反応セルホルダ11aに装着された反応セル10に対する位置関係を、治具を用いて反応セル10毎に正確に設定する工程である。設定を終えて自動分析装置が完成した段階でステップ2へ進み、全ての反応セル10について、その装着状態についての初期データを得る。このデータは、既に述べたように、試料分注機構15のプローブ15cを反応セル10内に降下させて、プローブ15cの先端が反応セル10の底に当ったときの支柱15aの下降量(ダウンステッブ数)として求めている。この初期データは、分析装置制御部のメモリなどに保存したり、印刷して保管したりする。
【0041】
次に、自動分析装置の日常点検時に、ステップ3として、全ての反応セル10について装着状態についてのデータを、ステップ2で実施したのと同じ方法で得て、一旦分析装置制御部のメモリなどに保存したり、印刷して保管したりする。続いてステップ4として、各反応セル10について、日常点検時のデータと保存されている初期データとを比較する。そして、ステップ5として比較結果を判定し、日常点検時のデータと初期データとの差が予め設定した許容範囲内であれば異常なしと判断して、ステップ6へ進み、当日の自動分析動作を実施する。
【0042】
一方、ステップ5において、比較結果に許容範囲外の反応セル10が見つかった場合は、エラー信号を発する。この場合、エラーとなった反応セル10の番号や差の値などを、自動分析装置のメインテナンスパネルなどに表示する。この表示を確認してオペレータは、エラーとなった反応セル10自体または当該反応セル10を保持している反応セルホルダ11aなどの設置状態を点検して修正する(ステップ7)。そして、ステップ3へ戻って再度データを収集し、初期データとの比較を行い、異常の有無を判定する。この点検・修正とその後のデータ再収集および初期データとの比較を繰り返しても異常が修復しないときは、反応ディスク11や駆動部50のピニオン52、ガイドローラー53、54などが偏磨耗を起していることが予想されるので、自動分析装置の使用を中止して、専門のサービス事業者などへ点検・修理を依頼するものとする。
【0043】
以上詳述したように本発明によれば、治具など用いての複雑な点検作業を実施することなく、簡単なデータ収集動作を実施して、それを自動分析装置の組み立て・調整時のデータと比較することにより、測光ユニット22の光源ランプ22aから照射される光束22bの、反応ディスク11および反応セルホルダ11aに装着された反応セル10に対する位置関係にずれがあるか否かを判定することができる。よって、高い信頼性を保つ自動分析装置の運用ができる。
【0044】
なお、上述の実施例の説明において、反応セル10の装着状態を示すデータを、試料分注機構15の支柱15aの下降量(ダウンステッブ数)として求めるとしたが、支柱15aとアーム15bおよびプローブ15cは一体に上下動するものなので、プローブ15cの降下量と同じになることは言うまでもない。また、第1試薬分注機構16や第2試薬分注機構17に、試料分注機構15と同様の計測装置やプローブ16c、17cの先端が反応セル10の底に当ったことを感知するセンサなどを設ければ、第1試薬分注機構16や第2試薬分注機構17によっても、上記実施例と同様に反応セル10の装着状態を確認することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る自動分析装置の、反応セルホルダの1部と、これに保持されている反応セルに試料を分注する試料分注機構の要部を示した説明図である。
【図2】本発明の動作を説明するための、反応セルに対してプローブが降下する状態を示した図である。
【図3】ダウンステッブ数の初期データと日常点検時データの取得結果を、反応セル毎に例示した図表である。
【図4】本発明の動作を説明したフローチャートである。
【図5】自動分析装置の要部である分析部の概略的な構成を示した斜視図である。
【図6】自動分析装置の反応ディスク部分を抽出して示した斜視図である。
【図7】図6のA−A線に沿う概略的な断面図である。
【図8】反応ディスクの外周方向に装着されている反応セルホルダの斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
10 反応セル
11 反応ディスク
11a 反応セルホルダ
15 試料分注機構
15a 支柱
15b アーム
15c プローブ
15d 計測装置
22 測定ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ディスクに装着された反応セルに、試料および試薬を分注して混合したものを反応させることにより前記試料の成分を分光分析する自動分析装置において、
前記反応セルに試料または試薬を分注するためのプローブを有し、このプローブを回動および上下動させる機構部と、
このプローブを前記反応セル内に降下させることによって、その先端が前記反応セルの底部に当ったときの降下量を検出する検出手段と、
この検出手段で検出された前記プローブの降下量を、前記反応セル毎に記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された前記反応セル毎の前記プローブの降下量の、初期データと日常点検時データとを比較する比較手段と、
を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記機構部は、前記プローブを垂直下方に支持する水平方向に延びたアームを備え、
このアームに、前記プローブの降下によって、前記プローブの先端が前記反応セルの底部に当ったことを感知する感知手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
反応ディスクに装着された反応セル中の試料を分光分析する自動分析装置における、反応セルの装着状態を確認する方法であって、
前記反応ディスクに装着され初期設定された全ての反応セルに対して、その装着状態を示す初期データを収集して記録する第1の工程と、
この第1の工程と同じ手段によって、当該自動分析装置の動作開始時に、全ての前記反応セルに対して、その装着状態を示すデータを収集して記録する第2の工程と、
この第2の工程で収集したデータと前記第1の工程で収集したデータとを、前記各反応セルについて比較する第3の工程と、
この第3の工程による比較結果に基づき、前記反応セルの装着状態の正常・異常を判定する第4の工程と
を具備することを特徴とする反応セルの装着状態を確認する方法。
【請求項4】
前記反応セルの装着状態を示すデータは、
前記反応セルに試料または試薬を分注するプローブを前記反応セル内に降下させることにより、前記プローブの先端が前記反応セルの底部に当ったときの、前記プローブのダウンステップ数であることを特徴とする請求項3に記載の反応セルの装着状態を確認する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−60521(P2010−60521A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228913(P2008−228913)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】