説明

自動分析装置および洗剤ポンプ異常判定方法

【課題】洗剤調整に使用されるポンプ異常を判定しうる自動分析装置および洗剤ポンプ異常判定方法を提供すること。
【解決手段】反応容器5等の洗浄に使用する洗剤供給調整ユニット30を備えた自動分析装置であって、洗剤原液L1を貯留する洗剤原液タンク30Aと、洗剤原液L1を希釈する希釈液L2を貯留する希釈液タンク30Bと、洗剤原液L1と希釈液L2とを混合して洗剤L3を調整し、洗剤L3を貯留する洗剤タンク30Cと、希釈液L2を洗剤タンク30Cに送液する希釈液ポンプ30Dと、洗剤原液L1を洗剤タンク30Cに送液する洗剤原液ポンプ30Eと、洗剤L3について導通電圧を検出する電極30Fと、電極30Fが検出した導通電圧に基づき、希釈液ポンプ30Dまたは洗剤原液ポンプ30Eの異常を判定する洗剤ポンプ異常判定部25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器等の洗浄用の洗剤を調整する洗剤ポンプの異常を判定しうる自動分析装置および洗剤ポンプ異常判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、検体又は試薬等の複数の異なる液体試料を反応容器内で攪拌して反応させ、反応液の光学的特性をもとに反応液を分析する。ここで、自動分析装置は、クロスコンタミネーションやキャリーオーバーを防止しながら反応容器を再利用すべく、分析終了後の反応容器等を洗浄機構によって洗浄している。反応容器等の清浄性の向上のために各洗浄機構において洗剤が使用されているが、実際に使用する濃度の洗剤をそのまま貯留するには分析装置内でのスペース上の問題があるため、濃度の高い洗剤原液で分析装置内に貯留し、必要に応じて希釈液として使用するイオン交換水等と洗剤原液とを混合希釈して使用する濃度の洗剤を調整している。
【0003】
これに対し、洗剤供給が正常であることを確認するために、自動分析装置が備える吸光度計を用いて反応容器内に吐出された洗剤を分析し、洗剤の供給が正常か確認しうる自動分析装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、自動食器洗浄装置やドライクリーニング機において、電極を用いて洗剤の導電率に基づき洗剤濃度を確認する方法が開示されているが(例えば、特許文献2〜4参照)、使用により低下する洗剤濃度を把握して適切な洗剤補給を可能とするもので、洗剤の調整に使用されるポンプの異常を検知するものではない。
【0005】
【特許文献1】特開平10−73601号公報
【特許文献2】特公昭59−34397号公報
【特許文献3】特公平6−24502号公報
【特許文献4】特開平8−285804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される自動分析装置では、分析装置の分析に使用される吸光度計を兼用して洗剤濃度を測定できるという利点を有するものの、濃度測定のために、洗剤を吐出した反応容器を吸光度計まで搬送する必要がある。また、該自動分析装置では、吸光度計は反応テーブル近傍に設置されるため、反応容器内に吐出された洗剤の濃度しか測定できず、分注プローブや攪拌機構の洗浄に使用される洗剤濃度について測定することはできない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、導電率を測定して反応容器等の洗浄に使用される洗剤濃度を測定し、該洗剤の希釈混合に使用されるポンプ異常を早期に検知することにより、キャリーオーバーの防止ならびに分析に使用される試薬の無駄を低減しうる自動分析装置および洗剤ポンプ異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、反応容器、分注プローブまたは攪拌機構の洗浄に使用する洗剤供給調整ユニットを備えた自動分析装置であって、洗剤原液を貯留する洗剤原液貯留手段と、前記洗剤原液を希釈する希釈液を貯留する希釈液貯留手段と、前記洗剤原液と前記希釈液とを混合して洗剤を調整し、前記洗剤を貯留する洗剤貯留手段と、前記希釈液を前記洗剤貯留手段に送液する希釈液ポンプと、前記洗剤原液を前記洗剤貯留手段に送液する原液ポンプと、前記洗剤の導通電圧を検出する電極と、前記電極が検出した導通電圧に基づき、前記希釈液ポンプまたは前記原液ポンプの異常を判定する洗剤ポンプ異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記電極は、前記洗剤貯留手段から前記洗剤を供給する配管内に設置されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記電極は、洗浄機構の洗剤ノズル対を挟んだ両側に設置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記電極により検出された導通電圧を記憶する電圧記憶手段と、前記電圧記憶手段に記憶された導通電圧と新たに測定した電圧との電位差を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された電位差に基づき吐出洗剤液量を判定する洗剤液量判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、洗剤温度を検出する温度検出手段と、前記電圧検出手段が検出した導通電圧を、前記温度検出手段で検出した温度に基づき温度補正する電圧補正手段と、を備え、前記洗剤ポンプ異常判定手段は、前記電圧補正手段により温度補正された電圧値により前記希釈液ポンプまたは前記原液ポンプの異常を判定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記洗剤ポンプ異常判定手段が、前記希釈液ポンプまたは前記原液ポンプが異常であると判定した場合に、洗剤ポンプ異常である旨の警告を出力する出力手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の自動分析装置は、上記発明において、前記出力手段は、前記洗剤液量判定手段が反応容器中の吐出洗剤液量が異常であると判定した場合に、洗剤液量異常である旨の警告を出力することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法は、反応容器、分注プローブまたは攪拌機構のキャリーオーバー防止のための洗浄に使用する洗剤供給調整ユニットを備えた自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法であって、洗剤原液と希釈液とを混合して希釈調整された洗剤について電極により導通電圧を検出する電圧検出ステップと、前記電圧検出ステップにて検出した導通電圧に基づき、希釈液ポンプまたは原液ポンプの異常を判定する洗剤ポンプ異常判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法は、上記発明において、前記電極は、洗剤貯留手段から前記洗剤を供給する配管内に設置されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法は、上記発明において、前記電極は、洗浄機構の洗剤ノズル対を挟んだ両側に設置されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法は、上記発明において、前記電極により検出された導通電圧を記憶手段に記憶する電圧記憶ステップと、前記電圧記憶ステップにおいて記憶された導通電圧と新たに測定した電圧との電位差を算出する算出ステップと、前記算出ステップにより算出された電位差に基づき吐出洗剤液量を判定する洗剤液量判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法は、上記発明において、洗剤温度を検出する温度検出ステップと、前記電圧検出ステップにおいて検出した導通電圧を、前記温度検出ステップにおいて検出した温度に基づき温度補正する電圧補正ステップと、を含み、前記洗剤ポンプ異常判定ステップは、前記電圧補正ステップにおいて温度補正された電圧値により希釈液ポンプまたは原液ポンプの異常を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自動分析装置は、簡易な手法により洗剤調整用の洗浄ポンプ異常を早期に検出して、キャリーオーバーの防止ならびに分析に使用される試薬の無駄を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、この発明の実施の形態にかかる自動分析装置について、血液などの液体検体をサンプルとして分析する自動分析装置を例に説明する。以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる自動分析装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、自動分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器5にそれぞれ分注し、分注した反応容器5内で生じる反応を光学的に測定する測定機構40と、測定機構40を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構40における測定結果の分析を行う制御機構50とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学的、免疫学的あるいは遺伝学的な分析を自動的に行う。
【0023】
測定機構40は、大別して、第1試薬庫2と、第2試薬庫3と、反応テーブル4と、第1試薬分注装置6と、第2試薬分注装置7と、検体容器移送部8と、分析光学系11と、洗浄機構12と、第1攪拌装置13と、第2攪拌装置14と、検体分注装置20とを備えている。
【0024】
第1試薬庫2は、図1に示すように、第1試薬を収容する試薬容器2aが周方向に複数配置され、駆動手段(図示せず)により回転されて試薬容器2aを周方向に搬送する。複数の試薬容器2aは、それぞれ検査項目に応じた試薬が満たされ、外面には収容した試薬の種類、ロット及び有効期限等の情報を記録した情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。ここで、第1試薬庫2の外周には、試薬容器2aに貼付した情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取り、制御部15へ出力する読取装置10aが設置されている。第1試薬庫2の上方には、試薬の蒸発や変性を抑制するため、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられており、第1試薬庫2の下方には試薬冷却用の恒温槽(図示せず)が設けられている。
【0025】
第2試薬庫3は、図1に示すように、第2試薬を収容する試薬容器3aが周方向に複数配置され、第1試薬庫2と同様に、駆動手段(図示せず)により回転されて試薬容器3aを周方向に搬送する。複数の試薬容器3aは、それぞれ検査項目に応じた試薬が満たされ、外面には収容した試薬の種類、ロット及び有効期限等の情報を記録した情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。ここで、第2試薬庫3の外周には、試薬容器3aに貼付した情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取り、制御部15へ出力する読取装置10bが設置されている。第2試薬庫3の上方には、試薬の蒸発や変性を抑制するため、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられており、第2試薬庫3の下方には試薬冷却用の恒温槽(図示せず)が設けられている。
【0026】
第1試薬分注装置6は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム6aを備える。このアーム6aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうプローブ6bが取り付けられている。第1試薬分注装置6は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。第1試薬分注装置6は、上述した第1試薬庫2上の所定位置に移送された試薬容器2aの中からプローブ6bによって第1試薬を吸引し、アーム6aを図中時計回りに旋回させ、反応容器5に第1試薬を吐出して分注を行なう。また、プローブ6bの回動軌跡上には、洗浄水によってプローブ6bを洗浄する洗浄槽6dが設置される。
【0027】
第2試薬分注装置7は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム7aを備える。このアーム7aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうプローブ7bが取り付けられている。第2試薬分注装置7は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。第2試薬分注装置7は、上述した第2試薬庫3上の所定位置に移送された試薬容器3aの中からプローブ7bによって第2試薬を吸引し、アーム7aを図中反時計回りに旋回させ、反応容器5に第2試薬を吐出して分注を行なう。また、プローブ7bの回動軌跡上には、洗浄水によってプローブ7bを洗浄する洗浄槽7dが設置される。
【0028】
反応テーブル4は、図1に示すように、複数の反応容器5が周方向に沿って配列されており、第1および第2試薬庫2、3を駆動する駆動手段とは異なる駆動手段(図示せず)によって矢印で示す方向に回転されて反応容器5を周方向に移動させる。反応テーブル4は、光源11aと分光部11bとの間に配置され、反応容器5を保持する保持部4aと光源11aが出射した光束を分光部11bへ導く円形の開口からなる光路4bとを有している。保持部4aは、反応テーブル4の外周に周方向に沿って所定間隔で配置され、保持部4aの内周側に半径方向に延びる光路4bが形成されている。反応テーブル4の上方には開閉自在な蓋(図示せず)が、下方には検体と試薬の反応を促進させる温度に加温するための恒温槽(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0029】
反応容器5は、分析光学系11から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する光学的に透明な素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス、環状オレフィンやポリスチレン等によって四角筒状に成形されたキュベットと呼ばれる容器である。
【0030】
分析光学系11は、試薬と検体とが反応した反応容器5内の液体試料に分析光(340〜800nm)を透過させて分析するための光学系であり、光源11a、分光部11b及び受光部11cを有している。光源11aから出射された分析光は、反応容器5内の液体試料を透過し、分光部11bと対向する位置に設けた受光部11cによって受光される。
【0031】
第1攪拌装置13および第2攪拌装置14は、分注された検体と試薬とを攪拌棒13a、14aによって攪拌し、反応を均一化させる。
【0032】
検体容器移送部8は、図1に示すように、配列された複数のラック9を矢印方向に沿って1つずつ歩進させながら移送する。ラック9は、検体を収容した複数の検体容器9aを保持している。ここで、検体容器9aは、収容した検体の情報を記録した情報記録媒体(図示せず)が貼付され、検体容器移送機構8によって移送されるラック9の歩進が停止するごとに、検体分注装置20によって検体が各反応容器5へ分注される。検体分注装置20は、水平面内を回動すると共に、上下方向に昇降されるアーム20aに試薬を分注する分注プローブ20bが設けられる。ここで、ラックの近傍には、検体容器9aに貼付された情報記録媒体に記録された、検体情報や検体容器9aの容器情報を読み取り、制御部15へ出力する読取装置10cが設置されている。
【0033】
検体分注装置20は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム20aを備える。このアーム20aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうプローブ20bが取り付けられている。検体分注装置20は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注装置20は、後述する検体容器移送部8により分注位置に移送された検体容器9aの中からプローブ20bによって検体を吸引し、アーム20aを図中時計回りに旋回させ、反応容器5に検体を吐出して分注を行なう。また、プローブ20bの回動軌跡上には、洗浄水によってプローブ20bを洗浄する洗浄槽20dが設置される。
【0034】
洗浄機構12は、複数の洗浄ノズルを備え、吸引ノズルによって分析光学系11による測定が終了した反応容器5内の反応液を吸引して排出するとともに、吐出ノズルにより洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入し、乾燥することで洗浄を行なう。詳細な構成については後述する。洗浄に使用する洗剤は、洗剤調整ユニット30(図3参照)により調整される。洗浄した反応容器5は再利用される。
【0035】
つぎに、制御機構50について説明する。制御機構50は、制御部15と、入力部16と、出力部17と、分析部18と、記憶部19とを備える。制御部15は、測定機構40および制御機構50が備える各部と接続される。これら各部の作動を制御するため、制御部15には、マイクロコンピュータ等が使用される。制御部15は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。制御部15は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、情報記録媒体から読み取った情報に基づき、試薬の有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。制御部15は、検体容器移送部8の作動を制御する搬送制御部としての機能も備えている。
【0036】
入力部16は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。出力部17は、プリンタ、通信機構等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力し、ユーザーに報知する。分析部18は、分析光学系11から取得した測定結果に基づいて吸光度等を演算し、検体の成分分析等を行う。記憶部19は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部19は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0037】
以上のように構成された自動分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器5に対して、第1試薬分注装置6が試薬容器2a中の第1試薬を分注した後、検体分注装置20が検体容器9a中の検体を分注し、さらに第2試薬分注装置7が試薬容器3a中の第2試薬を分注して、分析光学系11が検体と試薬とを反応させた状態の試料の分光強度測定を行い、この測定結果を分析部18が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄機構12が分析光学系11による測定が終了した後に反応容器5を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0038】
つぎに、実施の形態1にかかる自動分析装置1の洗浄ポンプ異常判定について、図2〜図4を参照して詳細に説明する。図2は、洗浄機構12の構成を示す模式図である。図3は、実施の形態1にかかる洗剤調整ユニット30の構成を示す模式図である。図4は、自動分析装置1で使用される洗剤の濃度と導通電圧の関係を示す図である。
【0039】
洗浄機構12は、図2に示すように、保持部材12Iによって連結された洗浄ノズルである、洗剤ノズル対12A、12Bと、洗浄水ノズル対12C〜12Fと、洗浄水吸引ノズル12Gと、乾燥ノズル12Hと、保持部材12Iを駆動する保持部材駆動部12Tを備え、反応テーブル4の回動によって矢印方向に沿って搬送されてくる反応容器5を、保持部材駆動部12Tにより洗浄ノズルを上下動しながら順次洗浄する。洗浄水ノズル対12A、12Bは反応容器5中の液体を吸引する吸引ノズル12aと、洗剤を吐出する洗剤吐出ノズル12b’を有し、洗浄水ノズル対12C〜12Fは、洗剤吐出ノズル12b’の代わりにすすぎ用の洗浄水を吐出する洗浄水吐出ノズル12b’’を有する。吸引ノズル12aは反応容器5内の底部まで挿入され、吐出ノズル12b(12b’および12b’’)は反応容器5内の中間まで挿入される。洗浄水吸引ノズル12Gは、洗浄水ノズル対12Fが反応容器5内に吐出し、反応容器5内をすすいだ洗浄水を吸引し、乾燥ノズル12Hは、下端に取り付けられた合成樹脂性のチップ12hにより、洗浄水吸引ノズル12Gが吸引し残した洗浄水を吸引する。
【0040】
洗剤調整ユニット30は、図3に示すように、洗剤原液タンク30Aと、希釈液タンク30Bと、洗剤タンク30Cと、希釈液ポンプ30Dと、洗剤原液ポンプ30Eと、電極30Fと、洗剤送液ポンプ30Gと、洗剤ポンプ異常判定部25とを備える。洗剤原液タンク30Aは、洗剤原液L1を貯留するタンクであり、配管30bを介して洗剤原液L1を洗剤タンク30Cに送液する洗剤原液ポンプ30Eと接続される。希釈液タンク30Bは、希釈液L2を貯留するタンクであり、配管30aを介して希釈液L2を洗剤タンク30Cに送液する希釈液ポンプ30Dと接続される。なお、希釈水L2は、イオン交換水、純水等が使用される。洗剤タンク30Cは、洗剤原液L1と希釈液L2とを混合して洗剤L3を調整し、調整された洗剤L3を貯留するタンクであり、内部には洗剤L3の液位を検出する液位センサ30dを有する。液位センサ30dは、洗剤タンク30C内の洗剤液量が所定量以下になった場合その旨制御部15に出力する。制御部15は、液位センサ30dからの液量低下の信号を受信した場合、希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30Eを駆動させて、希釈液L2および洗剤原液L1を所定量洗剤タンク30Cに送液し、洗剤L3を新たに調整する。
【0041】
また、洗剤タンク30Cは、配管30cを介して洗剤L3を洗浄機構12、洗浄槽6d、7d、20d(図1参照)、および図示しない第1攪拌装置13および第2攪拌装置14の洗浄槽へ送液する洗剤送液ポンプ30Gと接続され、洗剤タンク30Cと洗剤送液ポンプ30Gを連結する配管30cの途中には、洗剤L3に導通して電圧を測定する電極30Fが設置される。電極30Fは洗剤ポンプ異常判定部25と接続され、検出した導通電圧を洗剤ポンプ異常判定部25に発信する。洗剤ポンプ異常判定部25は、ユーザーにより設定された閾値と受信した電圧信号とを対比して、洗剤ポンプ(希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30E)が正常か否かを判定する。洗剤タンク30C中の洗剤濃度は、希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30Eが正常に稼動している場合は設定濃度に保たれるが、希釈液ポンプ30Dが故障等により希釈液タンク30Bから希釈液の供給が途絶えると洗剤濃度が上昇し、洗剤原液ポンプ30Eが故障等により洗剤原液タンク30Aから洗剤原液の供給が途絶えると洗剤濃度が低下する。実施の形態1にかかる自動分析装置1は、洗剤L3の導通電圧を検出して洗剤濃度を測定することにより、洗剤調整に使用される希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30Eの異常を判別することができる。
【0042】
自動分析装置1で使用される洗剤は、洗剤の種類により数値は異なるものの、図4に示すように、洗剤濃度と導通電圧とは一定の関係を有している。したがって、電極30Fにより送液される洗剤の導通電圧を検出し、使用する洗剤に応じて、最適洗剤濃度に対応する電圧値について所定の閾値を設定することにより、洗剤濃度異常、すなわち洗浄ポンプである希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30Eの異常を判別することができる。たとえば、洗剤Aを濃度0.2%で使用し、洗剤Aの適正濃度範囲を0.1〜0.3%に設定すると、洗剤Aの出力電圧の閾値は1.3〜2.5vとなる(図4参照)。閾値下限1.3v未満の場合は洗剤濃度が上昇しているため希釈液ポンプ30D異常であり、閾値上限2.5vより大きい場合は洗剤濃度が低下しているため洗剤原液ポンプ30Eの異常と判定する。
【0043】
さらに、自動分析装置1における洗剤ポンプ異常の判定動作について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。制御部15の制御のもと、分析終了後の反応容器5中の検体と試薬との反応液を、洗剤ノズル対12Aの吸引ノズル12aで吸引排出後、洗剤タンク30C中の洗剤L3を洗剤送液ポンプ30Gにより洗剤吐出ノズル12b’から反応容器5に吐出する(ステップS101)。その後、電極30Fを介して配管内に滞留する洗剤L3に導通し、導通電圧を検出する(ステップS102)。洗剤ポンプ異常判定部25は、電極30Fにより検出された導通電圧について、使用する洗剤L3についてユーザーにより設定された閾値下限、たとえば1.3vと対比する(ステップS103)。対比により、閾値下限の1.3v以上と判定された場合は(ステップS103、Yes)、洗剤ポンプ異常判定部25は、導通電圧をさらに閾値上限、たとえば2.5vと対比する(ステップS104)。閾値上限の2.5v以下と判定された場合は(ステップS104、Yes)、希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30Eともに正常と判断され、判定を終了する。
【0044】
一方、対比により、洗剤ポンプ異常判定部25により閾値下限の1.3v未満と判定された場合は(ステップS103、No)、希釈液ポンプ30Dが故障し、洗剤タンク30C内に希釈水L2が送液されず洗剤濃度が適正濃度範囲より大きくなっていると考えられるため、出力部17を介して希釈液ポンプ30D異常である旨をユーザーに警告し(ステップS105)、洗剤調整ユニット30により調整された洗剤L3の反応容器5への送液を一旦中止する(ステップS107)。また、洗剤ポンプ異常判定部25による導通電圧と閾値上限の2.5vとの対比により、閾値上限より大きいと判定された場合は(ステップS104、No)、洗剤原液ポンプ30Eが故障し、洗剤タンク30C内に洗剤原液L1が送液されず洗剤濃度が適正濃度範囲未満となっていると考えられるため、出力部17を介して洗剤原液ポンプ30E異常である旨をユーザーに警告し(ステップS106)、洗剤調整ユニット30により調整された洗剤L3の反応容器5への送液を一旦中止する(ステップS107)。ユーザーは、希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30E異常の出力部17による警告に基づき、希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30Eのメンテナンス等を行なうことが可能となる。
【0045】
実施の形態1にかかる自動分析装置または洗剤ポンプ異常判定方法を採用することにより、希釈液ポンプ30Dまたは洗剤原液ポンプ30Eの異常の早期発見が可能となり、洗剤L3濃度の増加・減少によって発生しうる洗浄不良やキャリーオーバーを低減することが可能となる。これにより、キャリーオーバーに起因する再検査数ならびに再検査に使用される試薬量についても低減可能となる。
【0046】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる自動分析装置における洗剤ポンプ異常判定について、図面6〜図10を参照して詳細に説明する。図6は、実施の形態2にかかる自動分析装置で使用される洗剤調整ユニット30’およびこれに連結される洗浄機構の一部を示す模式図である。図7は、実施の形態2にかかる自動分析装置における洗剤液量判定を説明するための図である。図8は、電極30F’と洗剤L3との接触長さと出力電圧との関係を示す図である。図9は、種々の状態における時間と出力電圧との関係を示す図である。図10は、実施の形態2にかかる洗剤ポンプ異常の判定についてのフローチャートである。なお、図6で示す洗浄機構は、説明を簡易にするために、洗剤ノズル対12Aのみ洗剤調整ユニット30’と連結する構成として図示しているが、他の洗浄ノズル(洗剤ノズル対12B、洗浄水ノズル対12C〜12F、洗浄水吸引ノズル12Gおよび乾燥ノズル12H)についても、実施の形態1の洗浄機構12と同様にその他の洗浄ノズルも備えるものである。
【0047】
実施の形態2では、図6に示すように、電極30F’は、洗浄ノズルの保持部材12Iに支持されて、洗浄機構12の洗剤ノズル対12Aを挟んだ両側に設置される。電極30F’は、洗剤吐出ノズル12b’により反応容器5中に吐出された洗剤L3に導通して電圧を測定する。洗剤ノズル対12Aの吸引ノズル12aは、配管30dを介して接続される真空ポンプ(図示しない)の吸引圧により、反応容器5中の反応液を廃液タンク(図示しない)に排出する。洗剤ノズル対12Aの洗剤吐出ノズル12b’は、配管30cを介して洗剤送液ポンプ30Gと接続され、洗剤送液ポンプ30Gの駆動により洗剤タンク30C内の洗剤L3を反応容器5中に吐出する。
【0048】
実施の形態2では、実施の形態1と同様に電極30F’により検出した電圧に基づき洗剤ポンプ異常判定部25Aにおいて洗剤ポンプ異常を判定するほか、当該電圧値に基づき、反応容器5中に吐出された洗剤液量についての判定も行なう。洗剤ポンプ異常判定部25Aは、電圧記憶部21、算出部22、および洗剤液量判定部23を有し、電圧記憶部21は、電極30F’が検出した電圧値を記憶する。算出部22は、電圧記憶部21に記憶されている電圧値と新たに測定した電圧値との電位差を算出し、洗剤液量判定部23は、該電位差に基づき、反応容器5中に吐出された洗剤液量についての判定を行なう。反応容器5中に吐出された洗剤液量についての判定については、図7を参照して説明する。上述したように、洗剤L3への導通電圧は洗剤の種類および濃度により変化するが、電極30F’と洗剤L3との接触長さ(接触面積)によっても大きく変化する。図(7−1)は、反応容器5中に洗剤L3が所定量吐出された場合であり(正常時)、電極30F’は、洗剤L3に長さh分浸漬接触する。長さhは所定長さhに等しい。図(7−2)は、反応容器5中に洗剤L3が所定量より多量に収容されている場合であり(洗剤溢れ)、電極30F’は、洗剤L3に所定長さhより長い、長さh分浸漬接触している(h>h)。図(7−3)は、反応容器5中に洗剤L3が所定量より少量収容されている場合であり(洗剤吐出異常)、電極30F’は、洗剤L3と接触していない(h<h)。電極30F’の洗剤L3との接触長さhと出力電圧とは、図8に示すような関係を有しているため、電極30F’により検出された導通電圧に基づき、反応容器5中に吐出された洗剤液量についての判定を行なうことが可能となる。なお、図8において、hは電極30F’が反応容器5中で洗剤L3に浸漬接触する最大長さであり、接触長さが大きくなるほど出力電圧が低下する。
【0049】
希釈液ポンプ30Dまたは洗剤原液ポンプ30Eの一方が故障した場合、洗剤タンク30C内の洗剤濃度は増加または減少していくが、洗剤タンク30C内にはすでに所定濃度の洗剤L3が貯留されているため、反応容器5に吐出される洗剤L3の濃度変動は図9に示すように穏やかである。一方、ノズル詰まりや洗剤送液ポンプ30Gの異常により反応容器5中に吐出される洗剤液量が変動した場合には、短時間で急激に出力電圧が変動する。したがって、従前に検出した電圧値と再度検出した電圧値との差分である電位差を算出部22により算出し、電位差について閾値を設定することにより洗剤液量の変動を判定しうる。たとえば、閾値を0.2vとし、出力電圧が前回値から0.2vを越えて高くなった場合には(電位差>0.2v)、反応容器5中に吐出された洗剤液量は所定液量より少なく、出力電圧が前回値から0.2vを下回って小さくなった場合には(電位差<−0.2v)、反応容器5中に吐出された洗剤液量は所定液量より多いと判定しうる。希釈液ポンプ30Dまたは洗剤原液ポンプ30Eが故障した場合でも電位差は変動するが、図9でわかるように短時間では大きく変動しないため、反応容器5中の洗剤液量の判定も可能となる。
【0050】
図10を参照して、実施の形態2の洗剤ポンプ異常の判定動作について説明する。制御部15の制御のもと、分析終了後の反応容器5中の検体と試薬との反応液を吸引ノズル12aで吸引後、洗剤タンク30C中の洗剤L3を洗剤送液ポンプ30Gにより洗剤吐出ノズル12b’から反応容器5に吐出する(ステップS201)。その後、電極30F’を介して反応容器5内に吐出された洗剤L3に導通し、導通電圧を検出する(ステップS202)。検出した導通電圧は電圧記憶部21に記憶され(ステップS203)、その後、前回検出時の電圧と今回測定した電圧値との差分である電位差を算出部22により算出する(ステップS204)。なお、初回は、電圧記憶部21に記憶されたデフォルト値との差分を算出する。洗剤液量判定部23は、算出部22により算出された電位差の絶対値が、使用する洗剤L3についてユーザーにより設定された閾値、たとえば0.2v以内であるか判定する(ステップS205)。
【0051】
洗剤液量判定部23により、電位差の絶対値が0.2v以内であると判定された場合は(ステップS205、Yes)、洗剤ポンプ異常判定部25Aは、ステップS202で検出した導通電圧について、使用する洗剤L3についてユーザーにより設定された閾値下限、たとえば1.3vと対比する(ステップS206)。対比により、閾値下限の1.3v以上と判定された場合は(ステップS206、Yes)、洗剤ポンプ異常判定部25Aは、導通電圧をさらに閾値上限、たとえば2.5vと対比する(ステップS207)。閾値上限の2.5v以下と判定された場合は(ステップS207、Yes)、希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30Eともに正常と判断され、判定を終了する。
【0052】
一方、ステップS205の対比により、電位差の絶対値が0.2vより大きいと判定された場合は(ステップS205、No)、さらに電位差が0.2vより大きいか否かを判定する(ステップS208)。洗剤液量判定部23が、電位差が0.2vより大きいと判定した場合(ステップS208、Yes)、反応容器5中に吐出された洗剤液量が所定液量より少なく、洗剤吐出異常と考えられるため、その旨出力部17によりユーザーに警告し(ステップS209)、洗剤調整ユニット30’により調整された洗剤L3の反応容器5への送液を一旦中止する(ステップS210)。ユーザーは、出力部17による洗剤吐出異常警告に基づき、洗剤送液ポンプ30Gの故障、または洗剤吐出ノズル12b’詰まりについてメンテナンスを行なう。
【0053】
ステップS208の対比において、洗剤液量判定部23により電位差が0.2vより小さいと判定した場合(ステップS208、No)、反応容器5中に吐出された洗剤液量が所定液量より多く、洗剤溢れと考えられるため、その旨出力部17によりユーザーに警告し(ステップS211)、洗剤調整ユニット30’により調整された洗剤L3の反応容器5への送液を一旦中止する(ステップS210)。ユーザーは、出力部17による洗剤溢れ警告に基づき、廃液タンクに接続される真空ポンプ(図示せず)の故障、または吸引ノズル12a詰まりについてメンテナンスを行なう。
【0054】
ステップS206の対比により、洗剤ポンプ異常判定部25Aが、ステップS202で検出した導通電圧が閾値下限の1.3v未満と判定した場合(ステップS206、No)、希釈液ポンプ30Dが故障し、洗剤タンク30C内に希釈水が送液されず洗剤濃度が適正濃度範囲より大きくなっているため、出力部17を介して希釈液ポンプ30D異常である旨をユーザーに警告し(ステップS212)、洗剤調整ユニット30’により調整された洗剤L3の反応容器5への送液を一旦中止する(ステップS210)。ユーザーは、出力部17による希釈液ポンプ30D異常警告に基づき、希釈液ポンプ30Dについてメンテナンスを行なう。
【0055】
ステップS207の対比により、洗剤ポンプ異常判定部25Aが、ステップS202で検出した導通電圧が閾値上限の2.5vより大きいと判定した場合(ステップS207、No)、洗剤原液ポンプ30Eが故障し、洗剤タンク30C内に洗剤原液が送液されず洗剤濃度が適正濃度範囲未満となっているため、出力部17を介して洗剤原液ポンプ30E異常である旨をユーザーに警告し(ステップS213)、洗剤調整ユニット30’により調整された洗剤L3の反応容器5への送液を一旦中止する(ステップS210)。ユーザーは、出力部17による洗剤原液ポンプ30E異常警告に基づき、洗剤原液ポンプ30Eについてメンテナンスを行なう。
【0056】
実施の形態2にかかる自動分析装置または洗剤ポンプ異常判定方法を採用することにより、希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30E異常だけでなく、洗剤送液ポンプ30Gの故障、または洗剤吐出ノズル12b’および洗剤ノズル12a詰まりについても早期発見が可能となり、洗浄不良やキャリーオーバーを低減することができる。これにより、キャリーオーバーに起因する再検査数ならびに再検査に使用される試薬量についても低減可能となる。
【0057】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる自動分析装置における洗剤ポンプ異常判定について、図11〜図13を参照して詳細に説明する。図11は、実施の形態3にかかる自動分析装置で使用される洗剤調整ユニット30’’を示す模式図である。図12は、洗剤の濃度と導通電圧の関係(温度変更時)を示す図である。図13は、実施の形態3にかかる洗剤ポンプ異常の判定についてのフローチャートである。実施の形態3にかかる自動分析装置では、洗剤L3の温度を温度センサにより測定し、電極30Fで検出した導通電圧を温度補正することにより、より正確な判定が可能となる。
【0058】
実施の形態3にかかる洗剤調整ユニット30’’において、図11に示すように、電極30Fは、実施の形態1にかかる洗剤調整ユニット30と同様に、洗剤タンク30Cから洗浄機構12に洗剤L3を送付する配管30c上に設置され、電極30F近傍の配管内に温度センサ30eが配設されている。洗剤L3への導通電圧は、上述したように、洗剤L3の種類・濃度により影響されるほか、温度によっても変動する(図12参照)。本発明のような血液等の分析を行う自動分析装置は、非常に高い分析精度が要求され、装置内外の温度等も厳密に制御される。しかしながら、通常、洗剤調整ユニット30’’内の洗剤タンク30Cは温度管理がなされていないため季節的な要因等で温度変動する。したがって、実施の形態3では、洗剤温度を温度センサ30eにより測定し、電極30Fにより検出した導通電圧を、装置内に有している出力電圧の温度相関データに基づき電圧補正部24により補正し、補正後の電圧で洗剤ポンプ異常の判定を行なう。
【0059】
図13に示すフローチャートを用いて、実施の形態3にかかる洗剤ポンプ異常の判定について説明する。制御部15の制御のもと、反応容器5中の反応液を吸引ノズル12aで吸引後、洗剤タンク30C中の洗剤L3を洗剤送液ポンプ30Gにより洗剤吐出ノズル12b’から反応容器5に吐出する(ステップS301)。その後、電極30Fを介して配管内に滞留する洗剤L3に導通して導通電圧を検出し(ステップS302)、温度センサ30eにより洗剤温度を測定する(ステップS303)。検出された導通電圧および洗剤温度に基づき、電圧補正部24により電圧を温度補正し(ステップS304)、温度補正された電圧について洗剤ポンプ異常判定部25が設定された閾値と対比する(ステップS305)。洗剤ポンプ異常判定部25により、補正電圧が閾値下限以上と判定された場合は(ステップS305、Yes)、さらに洗剤ポンプ異常判定部25は、補正電圧と閾値上限とを対比する(ステップS306)。閾値上限以下と判定された場合は(ステップS306、Yes)、希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30Eともに正常と判断され、判定は終了する。
【0060】
一方、洗剤ポンプ異常判定部25により補正電圧が閾値下限未満と判定された場合は(ステップS305、No)、希釈液ポンプ30Dが故障し、洗剤タンク30C内に希釈水が送液されず洗剤濃度が適正濃度範囲より大きくなっているため、出力部17を介して希釈液ポンプ30D異常である旨をユーザーに警告し(ステップS307)、洗剤調整ユニット30により調整された洗剤L3の反応容器5への送液を一旦中止する(ステップS309)。また、洗剤ポンプ異常判定部25により補正電圧が閾値上限より大きいと判定された場合は(ステップS306、No)、洗剤原液ポンプ30Eが故障し、洗剤タンク30C内に洗剤原液が送液されず洗剤濃度が適正濃度範囲未満となっているため、出力部17を介して洗剤原液ポンプ30E異常である旨をユーザーに警告し(ステップS308)、洗剤調整ユニット30により調整された洗剤L3の反応容器5への送液を一旦中止する(ステップS309)。ユーザーは、希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30E異常の出力部17による警告に基づき、希釈液ポンプ30Dおよび洗剤原液ポンプ30Eのメンテナンス等を行なう。
【0061】
なお、実施の形態3の変形例として、洗剤タンク30C内または配管30cにヒータを設置して洗剤温度を制御する自動分析装置が例示される。洗剤温度を温度制御することにより、検出した電圧の温度補正を行なう必要がなくなるだけでなく、加温により洗浄力の向上を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の自動分析装置で使用される洗浄機構の構成を示す模式図である。
【図3】図1の自動分析装置で使用される洗剤調整ユニットの構成を示す模式図である。
【図4】図1の自動分析装置で使用される洗剤の濃度と導通電圧の関係を示す図である。
【図5】図1の自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定のフローチャートである。
【図6】実施の形態2にかかる自動分析装置で使用される洗剤調整ユニットおよびこれに連結される洗浄機構の一部を示す模式図である。
【図7】実施の形態2にかかる自動分析装置における洗剤液量判定を説明するための図である。
【図8】実施の形態2にかかる電極の洗剤との接触長さと出力電圧との関係を示す図である。
【図9】実施の形態2における種々の状態での時間と出力電圧との関係を示す図である。
【図10】実施の形態2にかかる洗剤ポンプ異常判定のフローチャートである。
【図11】実施の形態3にかかる自動分析装置で使用される洗剤調整ユニット30’’を示す模式図である。
【図12】洗剤の濃度と導通電圧の関係(温度変更時)を示す図である。
【図13】実施の形態3にかかる洗剤ポンプ異常判定についてのフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 自動分析装置
2 第1試薬庫
2a、3a 試薬容器
3 第2試薬庫
4 反応テーブル
5 反応容器
6 第1試薬分注装置
6a、7a、20a アーム
6b、7b、20b プローブ
6d、7d、20d 洗浄槽
7 第2試薬分注装置
8 検体容器移送部
9 ラック
9a 検体容器
10a、10b、10c 読取装置
11 分析光学系
12 洗浄機構
12A、12B 洗剤ノズル対
12C〜12F 洗浄水ノズル対
12G 洗浄水吸引ノズル
12H 乾燥ノズル
12I 保持部材
12T 保持部材駆動部
12a 吸引ノズル
12b’ 洗剤吐出ノズル
12b’’ 洗浄水吐出ノズル
12h チップ
13 第1攪拌装置
14 第2攪拌装置
15 制御部
16 入力部
17 出力部
18 分析部
19 記憶部
20 検体分注装置
21 電圧記憶部
22 算出部
23 洗剤液量判定部
24 電圧補正部
25、25A 洗剤ポンプ異常判定部
30、30’、30’’ 洗剤供給調整ユニット
30A 洗剤原液タンク
30B 希釈液タンク
30C 洗剤タンク
30D 希釈液ポンプ
30E 洗剤原液ポンプ
30F、30F’ 電極
30G 洗剤送液ポンプ
30a、30b、30c 配管
30d 液位センサ
30e 温度センサ
40 測定機構
50 制御機構
L1 洗剤原液
L2 希釈液
L3 洗剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器、分注プローブまたは攪拌機構の洗浄に使用する洗剤供給調整ユニットを備えた自動分析装置であって、
洗剤原液を貯留する洗剤原液貯留手段と、
前記洗剤原液を希釈する希釈液を貯留する希釈液貯留手段と、
前記洗剤原液と前記希釈液とを混合して洗剤を調整し、前記洗剤を貯留する洗剤貯留手段と、
前記希釈液を前記洗剤貯留手段に送液する希釈液ポンプと、
前記洗剤原液を前記洗剤貯留手段に送液する原液ポンプと、
前記洗剤の導通電圧を検出する電極と、
前記電極が検出した導通電圧に基づき、前記希釈液ポンプまたは前記原液ポンプの異常を判定する洗剤ポンプ異常判定手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記電極は、前記洗剤貯留手段から前記洗剤を供給する配管内に設置されることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記電極は、洗浄機構の洗剤ノズル対を挟んだ両側に設置されることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記電極により検出された導通電圧を記憶する電圧記憶手段と、
前記電圧記憶手段に記憶された導通電圧と新たに測定した電圧との電位差を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された電位差に基づき吐出洗剤液量を判定する洗剤液量判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
洗剤温度を検出する温度検出手段と、
前記電極が検出した導通電圧を、前記温度検出手段が検出した温度に基づき温度補正する電圧補正手段と、
を備え、前記洗剤ポンプ異常判定手段は、前記温度補正手段により温度補正された電圧値により希釈液ポンプまたは原液ポンプの異常を判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記洗剤ポンプ異常判定手段が前記希釈液ポンプまたは前記原液ポンプが異常であると判定した場合に、前記洗剤ポンプ異常である旨の警告を出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記出力手段は、前記洗剤液量判定手段が反応容器中の吐出洗剤液量が異常であると判定した場合に、洗剤液量異常である旨の警告を出力することを特徴とする請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
反応容器、分注プローブまたは攪拌機構のキャリーオーバー防止のための洗浄に使用する洗剤供給調整ユニットを備えた自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法であって、
洗剤原液と希釈液とを混合して希釈調整された洗剤について電極により導通電圧を検出する電圧検出ステップと、
前記電圧検出ステップにて検出した導通電圧に基づき、希釈液ポンプまたは原液ポンプの異常を判定する洗剤ポンプ異常判定ステップと、
を含むことを特徴とする自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法。
【請求項9】
前記電極は、洗剤貯留手段から洗剤を供給する配管内に設置されることを特徴とする請求項8に記載の自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法。
【請求項10】
前記電極は、洗浄機構の洗剤ノズル対を挟んだ両側に設置されることを特徴とする請求項8に記載の自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法。
【請求項11】
前記電極により検出された導通電圧を記憶手段に記憶する電圧記憶ステップと、
前記電圧記憶ステップにおいて記憶された導通電圧と新たに測定した電圧との電位差を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出された電位差に基づき吐出洗剤液量を判定する洗剤液量判定ステップと、
を含むことを特徴とする請求項10に記載の自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法。
【請求項12】
洗剤温度を検出する温度検出ステップと、
前記電圧検出ステップで検出した導通電圧を、前記温度検出ステップで検出した温度に基づき温度補正する電圧補正ステップと、
を含み、前記洗剤ポンプ異常判定ステップは、前記電圧補正ステップにおいて温度補正された電圧値により希釈液ポンプまたは原液ポンプの異常を判定することを特徴とする請求項8〜11のいずれか一つに記載の自動分析装置の洗剤ポンプ異常判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−122177(P2010−122177A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298497(P2008−298497)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】