説明

自動分析装置および自動分析方法

【課題】測定対象物以外のノイズ成分の散乱光の影響を低減し、受光信号のS/N比特性を改善可能な自動分析装置を実現する。
【解決手段】複数の検出器204〜206で複数の角度でデータを取得する。検出データ選択部18aにより、その中の一つの検出器によって取得した信号を基準信号として選択する。第1選択データ処理部18bの近似式選択部18b1で適用する近似式を選択し、選択した近似式を用いて近似式計算部18b2により近似式が計算される。変動率計算部18b3により基準信号の変動率が求められる。検出器205の信号は第2選択データ処理部18cにより保持され、データ補正部18dにより基準信号の変動率で除されることによって行われる。補正した信号データを用いて濃度演算処理部18eにより濃度演算が行われ、結果出力部18fによりCRT等に結果が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象に光を照射して測定対象にて散乱する光を測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルに含まれる成分量を分析する分析装置として、光源からの光を、サンプル、又はサンプルと試薬とが混合した反応液に照射して得られる単一又は複数の波長の透過光量を測定し吸光度を算出して、Lambert-Beerの法則に従い、吸光度と濃度の関係から成分量を割り出す自動分析装置が広く用いられている。
【0003】
これらの自動分析装置においては、回転と停止を繰り返すセルディスクに、反応液を保持する多数のセルが円周状に並べられ、セルディスク回転中に、予め配置された透過光測定部により、一定の時間間隔で吸光度の経時変化が測定される。
【0004】
自動分析装置は透過光量を測定するシステムを備える一方、反応液の反応には、基質と酵素との呈色反応と、抗原と抗体との凝集反応の大きく2種類の反応が用いられている。前者は生化学分析であり、検査項目としてLDH(乳酸脱水素酵素)、ALP(アルカリホスファターゼ)、AST(アスパラギン酸オキソグルタル酸アミノトンラフェナーゼ)などがある。
【0005】
後者は免疫分析であり、検査項目としてCRP(C反応性蛋白)、IgG(免疫グロブリン)、RF(リウマトイド因子)などがある。後者の免疫分析で測定される測定物質は血中濃度が低く高感度が要求される。これまでも、ラテックス粒子の表面に抗体を感作(結合)させた試薬を用い、サンプル中に含まれる成分を認識し凝集させる際に、反応液に光を投光し、ラテックス凝集塊に散乱されずに透過した光量を測定することでサンプル中に含まれる成分量を定量するラテックス免疫凝集法での高感度化が図られてきた。
【0006】
さらに装置としては、透過光量を測定するのではなく、散乱光量を測定することによる高感度化も試みられている。例えば、ダイアフラムを用いて透過光と散乱光とを分離し、吸光度と散乱光を同時に測定するシステム(特許文献1参照)や、凝集反応が進んだ結果形成される大きな凝集塊での反射散乱光計測による高濃度側での精度を高める構成(特許文献2参照)、反応容器前後に積分球を用いて前方散乱光と後方散乱光のそれぞれの平均光量を測定し、セル位置ずれによる濁度変化を補正する方法(特許文献3参照)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−141654号公報
【特許文献2】特開2008−8794号公報
【特許文献3】特開平10−332582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、散乱光を用いた自動分析装置の場合、測定対象物によって起こる光の散乱と同様に、気泡や異物が測定光路中に存在した場合や反応容器に付いた傷等も散乱光成分として現れ、ノイズ成分として測定値に影響を与える。
【0009】
また、ラテックス粒子反応を用いた反応では、粒子固有のブラウン運動、あるいは溶液の対流等、溶液中の粒子が介在することによって、散乱光が揺らぎ、同様にノイズ成分として測定値に影響を与えてしまう。
【0010】
ノイズの影響を低減するため、検出器からの出力を一定時間積分することによりS/N比特性を改善する方法があるが、積分時間は測定対象の時間的変化により制約があるだけでなく、反応容器内に気泡などの異物が偶発的に付着した場合はS/N比特性の改善効果を望めない。
【0011】
気泡や異物、反応容器の傷による散乱光や、粒子ゆらぎによって起こる散乱光と、測定対象物の反応によって起こる散乱光とを分離する場合、気泡等による散乱光は、偶発的あるいはランダムに発生するため、これらによる散乱光を事前に予測することや、事象が発生した後に成分を切り分けることは困難である。
【0012】
本発明の目的は、散乱光を用いる自動分析装置において、測定対象物以外のノイズ成分の散乱光の影響を低減し、受光信号のS/N比特性を改善可能な自動分析装置及び方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成される。
【0014】
反応容器を通過した光を、光源に対し異なる角度で設置された複数の光検出素子により検出し、複数の検出素子のうちの選択した一つの検出素子の検出信号に基づいて基準データを算出し、算出した基準データに対する上記選択した一つの検出素子の検出信号の変動率を算出し、算出した変動率に基づいて、上記選択した一つの検出素子とは異なる検出素子の検出信号を補正し、補正した検出信号に基づいて、上記試料を分析する。
【発明の効果】
【0015】
散乱光を用いる自動分析装置において、測定対象物以外のノイズ成分の散乱光の影響を低減し、受光信号のS/N比特性を改善可能な自動分析装置及び方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例が適用される自動分析装置の全体構成図である。
【図2】本発明の一実施例における検出系の説明図である。
【図3】本発明の一実施例における検出系の変形例の説明図である。
【図4】本発明の一実施例における検出系の測定結果を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施例における複数の角度で取得したデータの相関グラフである。
【図6】本発明の一実施例におけるデータ処理のフローチャートである。
【図7】本発明の一実施例における演算処理の結果を示したグラフである。
【図8】本発明の一実施例における演算処理部の機能ブロック図である。
【図9】本発明の一実施例における表示画面(パラメータ選択手段)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0018】
最初に、図1を用いて、本発明の一実施例が適用される自動分析装置の全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態による自動分析装置の全体概略構成図である。
【0019】
図1において、間欠回転可能な反応ディスク1には、透光性材料からなる多数の反応容器2が円周状に配列されている。反応ディスク1上の反応容器2は、恒温槽3によって所定の温度(例えば37°C)に維持される。恒温槽3内には流体が収容され、この流体は恒温維持装置4により温度調整される。
【0020】
サンプルディスク5上には、血液又は尿のような生体サンプルを収容した多数の検体容器6が配置される。可動アーム7に取り付けられたピペットノズル8は、サンプルディスク5の吸入位置に位置した検体容器6から所定量のサンプルを吸入し、吸入したサンプルを反応ディスク1上の吐出位置にある反応容器2内に吐出する。
【0021】
試薬保冷庫9A、9B内にそれぞれ配置されている試薬ディスク上には、バーコードのような試薬識別情報を表示したラベルが貼られた複数の試薬ボトル10A、10B が配置される。これらの試薬ボトル10A、10Bには、自動分析装置によって分析され得る分析項目に対応する試薬液が収容されている。
【0022】
各試薬保冷庫9A、9Bに付属されたバーコード読み取り装置34A、34Bは、試薬登録時に、各試薬ボトル10A、10Bの外壁に表示されているバーコードを読み取る。バーコード読み取り装置34A、34Bにより読み取られた試薬情報は、試薬ディスク上のポジションと共に後述するメモリ11に登録される。
【0023】
各試薬分注機構12A、12Bにおける試薬用ピペットノズルは、反応ディスク1上の試薬受け入れ位置に位置付けられる検査項目に応じた試薬ボトル10A、10Bから試薬液を吸入し、該当する反応容器2内へ吐出する。
【0024】
反応容器2内に収容されたサンプルと試薬の混合物は、撹拌機構13A、13Bにより撹拌される。反応容器2の列は、光源14と散乱光度計15とによって挟まれた測光位置を通るように回転移動される。散乱光度計15は、光軸上に多波長吸光光度計を備えても良く、散乱光と透過光との両方を使って濃度演算を行っても良い。なお、散乱光度計15内の検出器の配置については図2を使って後述する。
【0025】
各反応容器2内におけるサンプルと試薬との反応液は、反応ディスク1の回転動作中に検出器15の前を横切る度に測光される。サンプル毎に測定されたアナログ信号は、A/D変換器16に入力される。反応ディスク1の近傍に配置されている反応容器洗浄機構17は、使用済みの反応容器2の内部を洗浄することにより、反応容器の繰り返しの使用を可能にする。
【0026】
次に、図1の自動分析装置における制御系及び信号処理系について簡単に説明する。コンピュータ(演算処理部)18は、インターフェース19を介して、サンプル分注制御部20、試薬分注制御部21、A/D変換器16に接続されている。コンピュータ18は、サンプル分注制御部20に対して指令を送り、サンプルの分注動作を制御する。また、コンピュータ18は、試薬分注制御部21に対して指令を送り、試薬の分注動作を制御する。
【0027】
検出器15から供給され、A/D変換器16によってディジタル信号に変換された測光値は、コンピュータ18に取り込まれる。
【0028】
インターフェース19には、分析結果等を印字するためのプリンタ22、記憶装置であるメモリ11やFD等の外部出力メディア23、操作指令等を入力するためのキーボード24、画面表示するためのCRTディスプレイ25が接続されている。画面表示装置としては、CRTディスプレイの他に液晶ディスプレイなどを採用できる。メモリ11は、例えばハードディスクメモリ又は外部メモリにより構成される。メモリ11には、各操作者のパスワード、各画面の表示レベル、分析パラメータ、分析項目依頼内容、キャリブレーション結果、分析結果等の情報が記憶される。
【0029】
次に、図1に示した自動分析装置におけるサンプルの分析動作を説明する。
【0030】
自動分析装置によって分析可能な項目に関する分析パラメータは、予めキーボード24のような情報入力装置を介して入力されておリ、メモリ11に記憶されている。操作者は、後述する操作機能画面を用いて各サンプルに依頼されている検査項目を選択する。
【0031】
この際に、患者IDなどの情報もキーボード24から入力される。各サンプルに対して指示された検査項目を分析するために、ピペットノズル8は、分析パラメータにしたがって、検体容器6から反応容器2へ所定量のサンプルを分注する。
【0032】
サンプルを受け入れた反応容器2は、反応ディスク1の回転によって移送され、試薬受け入れ位置に停止する。試薬分注機構12A、12Bのピペットノズル8は、該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応容器2に所定量の試薬液を分注する。サンプルと試薬の分注順序は、この例とは逆に、サンプルより試薬が先であってもよい。
【0033】
その後、撹拌機構13A、13Bにより、サンプルと試薬との撹拌が行われ、混合される。この反応容器2が、測光位置を横切る時、散乱光度計15により反応液の散乱光が測光される。測光された散乱光は、A/D変換器16により光量に比例した数値に変換され、インターフェース19を経由して、コンピュータ18に取り込まれる。この変換された数値を用い、検査項目毎に指定された分析法により予め測定しておいた検量線に基づき、濃度データに変換される。各検査項目の分析結果としての成分濃度データは、プリンタ22やCRT25の画面に出力される。
【0034】
以上の測定動作が実行される前に、操作者は、分析測定に必要な種々のパラメータの設定や試料の登録を、CRT25の操作画面を介して行う。また、操作者は、測定後の分析結果をCRT25上の操作画面により確認する。
【0035】
次に、図2を用いて図1中の光源14および散乱光度計15の構成の詳細を説明する。
【0036】
図2は光源14(201)/反応容器2(202)/散乱光度計15(204、205、206)の説明図である。
【0037】
図2において、光源201から発せられた光は、測定対象物203が分注された反応容器202に入射される。反応容器202内で入射した光は測定対象物203に衝突し散乱される。散乱した光は、図2の例では、透過光とθ1の角度をなす位置に検出器(検出素子)204が配置され、透過光とθ2の角度をなす位置に検出器(検出素子)205が配置される。また、透過光とθ3の角度をなす位置に検出器(検出素子)206が配置されている。
【0038】
検出器204〜206は、光源201からの入射光に対して、Z軸方向(図2の上下方向)に沿って直列に配しているが、X軸方向(図2の左右方法)、Y軸方向(図2の紙面表側から裏側に向かう方向)に配置しても良い。
【0039】
また、直線上に配置された複数の光検出素子からなる一つの検出器とすることもできる。
【0040】
さらに、検出器204〜206は、離散的に配置する必要は無く、2次元的な位置情報を分解することが可能な一つの検出器301(図3に示す)であっても良い。ここで、検出器301は複数の検出素子を有し、光源に対して異なる角度で設置された2次元的な配置構成とすることができる。この場合、互いに直交する2つの直線上に2次元的に複数の検出素子を配列してもよい。
【0041】
反応容器202から検出器204〜206までの途中経路に気泡や傷207があった場合には、検出器204〜206で受光する光は影響を受けることとなる。
【0042】
次に、図4は検出器204〜206で受光した判定信号の試料と試薬との反応過程における変化の1例を示すグラフである。図4において、縦軸は、光量に比例して増大する測定信号値を示し、横軸は測定点(測定回数)を示している。反応過程は、反応容器202が、反応ディスク1の円周上に配置され、検出器204〜206の前を一定時間毎に通過し、測定開始から終了までの反応の進み具合を経時的に複数回プロットしたものである。
【0043】
図4の(a)は、検出器204の信号変化の過程を示し、図4の(b)は検出器205の信号変化の過程を示している。散乱光量は、透過光からの角度によって異なるため、受光する検出器によって光量も変化するが、図2に示した例では、角度θ1に配置された検出器204の測定信号値である光量が、角度θ2に配置された検出器205の測定信号値である光量より小さくなっている。
【0044】
また、測定開始から終了までの反応に関して、単純な直線、あるいは曲線では近似できない程度のノイズ成分が重なっている。前述したように、これらのノイズ成分は、測定光路中に存在する異物や気泡によって偶発的に発生することや、粒子固有のブラウン運動、溶液の対流が影響していることが、これまで発明者らが検証を重ねてきた結果、明らかになってきた。
【0045】
図5は、検出器204の受光信号と検出器205の受光信号との間の相関を示すグラフである。図5に示した例では、検出器204と205との信号の回帰曲線として1次の回帰曲線(直線)を最小二乗法で算出している。
【0046】
図5に示した回帰曲線(直線)から、両者の信号は非常によい相関を持っており、両者の信号を用いて演算処理することによって、効果的にノイズ低減が図れることが明らかとなった。
【0047】
次に、図6、図7、図8を参照して、複数の検出器で受光した信号成分を用いてノイズを除去するアルゴリズムについて説明する。図6は動作フローチャートであり、図7は、アルゴリズムを用いて補正したデータを示すグラフ、図8は、アルゴリズムを実行するためのコンピュータ18の内部機能ブロック図である。
【0048】
まず、複数の検出器204〜206で複数の角度でデータを取得する(図6のステップ(b))。そして、検出データ選択部18aにより、その中の一つの検出器によって取得した測定信号を基準信号として選択する(図6のステップ(c)、(d))。
【0049】
次に、第1選択データ処理部18bの近似式選択部18b1において、適用する近似式を選択し、選択した近似式を用いて近似式計算部18b2により近似式が計算される(図6のステップ(e))。この近似式により、基準信号に対して仮想のベースラインが導かれる。この仮想のベースラインは多項式近似によって実施する。なお、本発明の一実施例では、検出器204(角度θ1)の測定信号を基準信号とした例を示す。また、本発明の一実施例では、反応の時間経過に伴い、16回の測定を実施している。
【0050】
近似式の計算は、図4の(a)中の、測定ポイント第1の点及び第2の点の平均値を導き、さらに第15の点及び、第16の点の平均値を導く。そして、両値を一次式で結んだ直線を規格化多項式、すなわち仮想のベースラインとする。この仮想のベースラインを、偶発的なノイズや粒子ゆらぎのない理想的な反応曲線(直線)とし、次に、変動率計算部18b3により基準信号の変動率が求められる(図6のステップ(f))。
【0051】
具体的には、各測定点の測定信号値をベースラインの値(基準データ)で除した値を求める。この基準信号の変動率を用いて、濃度計算に用いたい主信号の補正を実施する。本発明の一実施例では検出器205(角度θ2)の測定信号を補正する例を示す。具体的には検出器205(角度θ2)の測定信号は第2選択データ処理部18cにより保持され、データ補正部18dにより、基準信号の変動率で除されることによって行われる(図6のステップ(g))。
【0052】
上述したように、図7は上記アルゴリズムを用いて補正したデータを示す。最後に、この補正した信号データを用いて、濃度演算処理部18eにより濃度演算が行われ(図6のステップ(h))、結果出力部18fにより、CRT25等に結果が出力されて終了する(図6のステップ(i))。
【0053】
近似式の選択、多項式の近似次数、分析に使用する設定ポイント、ベースラインを設定するための検出器(サブ検出器)及びデータを補正する検出器(メイン検出器)の設定は、CRT25の表示画面(選択手段)を用いて行われる。
【0054】
図9は、CRT25による分析設定画面の一例を示す図である。図9に示した例においては、近似式選択項目として、多項式近似か、2点間直線近似かのいずれかを選択することができる。また、多項式近似を選択した場合は、近似次数を選択でき、2点間直線近似を選択した場合は、演算する区間である設定ポイントを設定することができる。多項式近似を選択した場合も、演算する区間である設定ポイントを設定することができる。
【0055】
なお、規格化多項式、すなわち仮想のベースラインを導くための数式は、上述した例の他、最小二乗法により決定してもよい。
【0056】
また、本発明の一実施例においては、第1点目、第2点目、第15点目、第16点目をそれぞれ用いて規格化多項式を導出したが、この選択は任意に決定することが可能である。ここで注意が必要なのは、多項式近似をする場合、近似式の精度を考慮し、少なくとも5点以上の測定点があることが望ましい。
【0057】
それぞれのパラメータ設定に関しては、自動分析装置の設定画面上からそれぞれ設定する構成としている。なお分析条件の設定は、装置の設定画面から必ずしも設定する必要は無く、固定の条件であれば予め装置の記憶領域に記憶させた値を使っても良い。
【0058】
また、上述した例においては、3つの検出器204〜206のうちの、検出器204の測定信号を用いてベースラインを算出し、算出したベースラインを用いて、検出器205の測定信号を補正する例であるが、検出器204〜206のうちのいずれの検出器の測定信号をベースライン算出用に用いるか、算出したベースラインを用いていずれの検出器の測定信号を補正するかは、測定項目によって適切な角度の検出器が選択される(複数の検出素子のうちのいずれを近似式算出に使用する検出素子とするか、変動率による補正に使用する検出素子とするかを選択する)。
【0059】
以上のように、本発明の一実施例によれば、試料からの散乱光を少なくとも2つの互いに異なる散乱角度で検出し、いずれか一つの散乱光測定信号値を用いて、ベースラインを算出し、算出したベースラインを用いて、ベースライン算出に用いた散乱角度とは異なる散乱角度の散乱側定信号値を補正し、補正した散乱光を用いて、試料の濃度演算を行うように構成したので、散乱光を用いる自動分析装置において、測定対象物以外のノイズ成分の散乱光の影響を低減し、受光信号のS/N比特性を改善可能な自動分析装置及び方法を実現することができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・反応ディスク、2・・・反応容器、3・・・恒温槽、4・・・恒温維持装置、5・・・サンプルディスク、6・・・検体容器、7・・・可動アーム、8・・・ピペットノズル、9A、9B・・・試薬保冷庫、11・・・メモリ、12A、12B・・・試薬用ピペットノズル、15・・・フォトダイオード、18・・・コンピュータ、18a・・・検出データ選択部、18b・・・第1選択データ処理部、18b1・・・近似式選択部、18b2・・・近似式計算部、18b3・・・変動率計算部、18c・・・第2選択データ処理部、18d・・・データ補正部、18e・・・濃度演算処理部、18f・・・結果出力部、19・・・インターフェース、25・・・CRT(選択手段)、201・・・光源、202・・・反応容器、203・・・測定対象物、204〜206、301・・・検出器、207・・・気泡や傷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を、試料が収容された反応容器に照射し、上記反応容器を通過した光を光検出手段により検出し、検出した光に基づいて演算処理部が上記反応容器内の試料を分析する自動分析装置において、
上記検出手段は、光源に対して異なる角度で設置された複数の光検出素子を有し、上記演算処理部は、上記複数の検出素子のうちの選択した一つの検出素子の測定信号に基づいて基準データを算出し、算出した基準データに対する上記選択した一つの検出素子の測定信号の変動率を算出し、算出した変動率に基づいて、上記選択した一つの検出素子とは異なる検出素子の測定信号を補正し、補正した測定信号に基づいて、上記試料を分析することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
上記検出素子の複数の測定信号は、検出時刻が互いに異なる複数の測定信号であり、上記演算処理部は、上記選択した一つの検出素子の複数の測定信号に基づいて基準データを算出し、算出した基準データに対する、上記選択した一つの検出素子の複数の測定信号のそれぞれの変動率を算出し、算出した変動率に基づいて、上記選択した一つの検出素子とは異なる検出素子の複数の測定信号を補正し、補正した測定信号に基づいて、上記試料を分析することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置において、上記検出素子の複数の測定信号は、互いに異なる検出時刻により検出された信号であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、上記検出手段の複数の検出素子は、2次元的に配列されていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項2に記載の自動分析装置において、上記基準データは、上記選択した一つの検出素子の複数の測定信号から算出した近似式であり、上記演算処理部は、算出した近似式で得られる信号値を、上記近似式により得られる信号値で除して変動率を算出し、算出した変動率で、上記選択した一つの検出素子とは異なる検出素子の複数の測定信号を除することにより補正することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の自動分析装置において、上記近似式は、選択した一つの検出素子の測定信号のうちの異なる2つの測定信号によって決定した直線を示す直線式であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項5に記載の自動分析装置において、上記近似式は、最小二乗法により算出した直線式であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項5に記載の自動分析装置において、上記近似式が、多項近似式か2点間直線かのいずれかを選択する選択手段を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項5に記載の自動分析装置において、上記近似式を演算する区間を選択する選択手段を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項5に記載の自動分析装置において、上記複数の検出素子のうちのいずれを近似式算出に使用する検出素子とするか、変動率による補正に使用する検出素子とするかを選択する選択手段を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項8に記載の自動分析装置において、上記選択手段は、選択項目を表示する表示画面であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
光源からの光を、試料が収容された反応容器に照射し、上記反応容器を通過した光を検出し、検出した光に基づいて上記反応容器内の試料を分析する自動分析方法において、
上記反応容器を通過した光を、光源に対して異なる角度で設置された複数の光検出素子により検出し、上記複数の検出素子のうちの選択した一つの検出素子の測定信号に基づいて基準データを算出し、算出した基準データに対する上記選択した一つの検出素子の測定信号の変動率を算出し、算出した変動率に基づいて、上記選択した一つの検出素子とは異なる検出素子の測地信号を補正し、補正した測定信号に基づいて、上記試料を分析することを特徴とする自動分析方法。
【請求項13】
請求項12に記載の自動分析方法において、
上記複数の検出素子の測定信号は、検出時刻が互いに異なる複数の測定信号であり、上記選択した一つの検出素子の複数の測定信号に基づいて基準データを算出し、算出した基準データに対する、上記選択した一つの検出素子の複数の測定信号のそれぞれの変動率を算出し、算出した変動率に基づいて、上記選択した一つの検出素子とは異なる検出素子の複数の測定信号を補正し、補正した測定信号に基づいて、上記試料を分析することを特徴とする自動分析方法。
【請求項14】
請求項13に記載の自動分析方法において、上記複数の検出素子の測定信号は、互いに異なる検出時刻により検出された信号であることを特徴とする自動分析方法。
【請求項15】
請求項12に記載の自動分析方法において、上記複数の検出素子は、2次元的に配列されていることを特徴とする自動分析方法。
【請求項16】
請求項13に記載の自動分析方法において、上記基準データは、上記選択した一つの検出素子の複数の測定信号から算出した近似式であり、算出した近似式で得られる信号値を、上記近似式により得られる信号値で除して変動率を算出し、算出した変動率で、上記選択した一つの検出素子とは異なる検出素子の複数の測定信号を除することにより補正することを特徴とする自動分析方法。
【請求項17】
請求項16に記載の自動分析方法において、上記近似式は、選択した一つの検出素子の測定信号のうちの異なる2つの測定信号によって決定した直線を示す直線式であることを特徴とする自動分析方法。
【請求項18】
請求項16に記載の自動分析方法において、上記近似式は、最小二乗法により算出した直線式であることを特徴とする自動分析方法。
【請求項19】
請求項16に記載の自動分析方法において、上記近似式が、多項近似式か2点間直線かのいずれかを選択することを特徴とする自動分析方法。
【請求項20】
請求項16に記載の自動分析方法において、上記近似式を演算する区間を選択することを特徴とする自動分析方法。
【請求項21】
請求項16に記載の自動分析方法において、上記複数の検出素子のうちのいずれを近似式算出に使用する検出素子とするか、変動率による補正に使用する検出素子とするかを選択することを特徴とする自動分析方法。
【請求項22】
請求項19に記載の自動分析装置において、上記近似式が、多項近似式か2点間直線かのいずれかを選択は、選択項目を表示する表示画面により行われることを特徴とする自動分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−7921(P2012−7921A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142259(P2010−142259)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】