説明

自動分析装置および自動分析装置における検体分注方法

【課題】検体間のキャリーオーバーを回避できる自動分析装置、および検体分注方法を提供する。
【解決手段】キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目と、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の両方の分析を行う自動分析装置1であって、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目の検体分注と、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目用の検体の小分け分注とを、ディスポーザブルチップを装填して行なう第1検体分注装置6と、第1検体分注装置6により小分け分注されたキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目用の検体を、小分け収容するアリコート容器9と、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の検体分注を、連続使用するプローブを装填して行なう第2検体分注装置5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリーオーバー回避レベルが異なる分析項目の分析を行う自動分析装置、ならびに前記自動分析装置で使用される検体分注方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、検査室の省力化の流れに伴い、生化学的分析装置に各種の免疫学的分析項目に対応するモジュールを搭載した生化学分析および免疫学的分析の兼用装置、統合装置や、1台の自動分析装置に生化学的分析用モジュールおよび免疫学的分析用モジュールを組み込んだ複合装置が開発されている。
【0003】
しかしながら、免疫学的分析項目は正常値および異常値間の数値差が極めて大きく、生化学的分析項目では問題にならない程度の微量の検体間キャリーオーバーが存在する場合でも、当該キャリーオーバーにより擬陽性判定を招いてしまうおそれがある。このため、生化学分析および免疫学的分析の兼用装置や複合装置において、検体間キャリーオーバーを防止するために、先に免疫学的分析を実施し、後で生化学的分析を行い、免疫学的分析項目において再検査の必要がある場合は、分注プローブを検体液面の内部まで挿入し、キャリーオーバーの影響を低減する自動分析システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目用の分注は、ディスポーザブルなノズルチップを使用し、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目用の分注は、繰り返し使用するノズルを使用して行い、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目の分析結果により再検査不要と判定された後に、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の分析を行う分析方法が開示されている(例えば、特許文献2および3参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第3845301号公報
【特許文献2】特許第3380542号公報
【特許文献3】特許第4101466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の自動分析システムでは、検体液面から分注する場合に比較してキャリーオーバーの影響を低減しうるものの、キャリーオーバーを完全に回避できるものではなく、また免疫学的分析と生化学分析の検体分注を同時に行うものではない。
【0007】
また、特許文献2または3に記載の分析方法は、キャリーオーバーの回避は可能であるものの、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目の再検査の可否が判明するまで、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の分析を行うことができないため、処理能力が大幅に低下するという問題を有していた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、検体間のキャリーオーバーを回避できるとともに、大幅に処理能力を向上しうる自動分析装置、および検体分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる自動分析装置は、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目と、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の両方の分析を行う自動分析装置であって、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目の検体分注と、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目用の検体の小分け分注とを、ディスポーザブルチップを装填して行なう第1検体分注手段と、前記第1検体分注手段により小分け分注されたキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目用の検体を、小分け収容する収容手段と、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の検体分注を、連続使用するプローブを装填して行なう第2検体分注手段と、を備え、前記第2検体分注手段は前記収容手段から検体を分注することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、同一検体について、前記第1検体分注手段によるキャリーオーバー回避レベルの高い分析項目の検体容器からの検体分注と、前記第2検体分注手段によるキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の前記収容手段からの同一検体の検体分注とを並行して行なうことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記収容手段は、前記第1検体分注手段および前記第2検体分注手段の分注プローブの軌跡上であって、交差する位置に設けられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記収容手段を、前記第検体1分注手段による検体小分け位置と、前記第2検体分注手段による検体分注位置とに搬送する搬送手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目は免疫学的分析項目または遺伝学的分析項目であり、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目は生化学的分析項目であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記第1検体分注手段および前記第2検体分注手段は、独立して回動するが回転軸は共通である2本の駆動アームにそれぞれ備えられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記収容手段は、アリコート容器であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記アリコート容器は、収容する検体が替わるたびに洗浄して再使用されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記アリコート容器は、収容する検体が替わるたびに廃棄され、新しい容器に変更されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、1検体毎にキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の分析に要する検体量を算出する算出手段と、前記算出手段により算出した検体量を記憶する記憶手段を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目について再検査を行なう場合は、新しいチップを装填した前記第1検体分注手段を用いて前記検体容器から分注し、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目について再検査を行なう場合は、新しいチップを装填した前記第1検体分注手段を用いて前記検体容器から前記収容手段に検体小分け後、前記第2検体分注手段で前記収容手段から分注するよう制御する分注制御部を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記第2検体分注手段のプローブを洗浄する洗浄装置を備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目を分析する分析モジュールと、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目を分析する分析モジュールとが、個別のユニットとして設置されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目を分析する分析モジュールと、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目を分析する分析モジュールとが、1つのユニット内に設置されることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の自動分析装置の検体分注方法は、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目と、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の両方の分析を行う自動分析装置における検体分注方法であって、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の分析に要する検体を、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目の検体分注用のディスポーザブルチップを使用する第1検体分注手段を用いて、検体容器から収容手段に分注する小分け分注ステップと、同一検体について、前記検体容器から前記第1検体分注手段を使用してキャリーオーバー回避レベルの高い分析項目用の検体を分注する第1検体分注ステップと、同一検体について、前記収容手段から連続使用するプローブを装填する第2検体分注手段を使用してキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目用の検体を分注する第2検体分注ステップと、を含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の自動分析装置の検体分注方法は、上記発明において、同一検体について、前記第1検体分注ステップと前記第2検体分注ステップとを並行して行なうことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の自動分析装置の検体分注方法は、上記の発明において、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目は免疫学的分析項目または遺伝学的分析項目であり、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目は生化学的分析項目であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の自動分析装置の検体分注方法は、上記の発明において、前記収容手段は、アリコート容器であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の自動分析装置の検体分注方法は、上記の発明において、前記アリコート容器は、収容する検体が替わるたびに洗浄して使用されることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の自動分析装置の検体分注方法は、上記の発明において、前記アリコート容器は、収容する検体が替わるたびに新しいものに変更されることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の自動分析装置の検体分注方法は、上記の発明において、1検体毎にキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の分析に要する検体量を算出する算出ステップと、前記算出ステップで算出した検体量を記憶する記憶手段から、前記検体量を抽出する抽出ステップを含むことを特徴とする。
【0030】
また、本発明の自動分析装置の検体分注方法は、上記の発明において、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目について再検査を行なう場合は、新しいチップを装填した前記第1検体分注手段を用いて前記検体容器から分注し、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目について再検査を行なう場合は、新しいチップを装填した前記第1検体分注手段を用いて前記検体容器から前記収容手段に検体小分け後、前記第2検体分注手段で前記収容手段から分注することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の自動分析装置の検体分注方法は、上記の発明において、前記第1検体分注ステップ後に、前記第1検体分注手段のチップを廃棄、交換するノズルチップ交換ステップを含むことを特徴とする。
【0032】
また、本発明の自動分析装置の検体分注方法は、上記の発明において、前記第2検体分注ステップは、1つの分析項目の分注が終了するたびに前記第2検体分注手段の金属プローブを洗浄装置にて洗浄する洗浄ステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明においては、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目の再検査時においてキャリーオーバーを回避できるとともに、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の検体分注およびその後の分析を待機させる必要がなく、処理能力の大幅な向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して、この発明の実施の形態にかかる自動分析装置および、該自動分析装置における検体分注方法について、血液などの液体検体をサンプルとして生化学分析項目および免疫学分析項目の両方の分析を行う自動分析装置を例に説明する。以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である自動分析装置を示す概略構成図である。自動分析装置1は、血液や尿などの検体(液体)と、検査項目に応じた試薬とを混合して反応させた反応液の光学的特性を測定することにより検体の成分濃度などを分析するものである。この自動分析装置1は、検体と試薬との間の反応物を通過する光、または反応液から発する発光量を測光分析する測定機構としての生化学的分析ユニット11および免疫学的分析ユニット12と、生化学的分析ユニット11および免疫学的分析ユニット12を含む自動分析装置1全体の制御を行なうとともに、測定機構における測定結果の分析を行なう制御機構10とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の分析を自動的に行なう。
【0036】
まず、生化学的分析ユニット11について説明する。生化学的分析ユニット11は、大別して、反応テーブル3と、試薬テーブル4、4Aと、試薬分注装置7、7Aと、分注プローブ洗浄装置8、8A、44とを備えている。
【0037】
反応テーブル3は、円環状のテーブルを有し、該テーブルの周方向に沿って等間隔で複数配置された収納部31を備えている。各収納部31には、検体と試薬を収容する透明な反応容器32が上方に向けて開口した形態で着脱自在に収納される。また、反応テーブル3は、反応テーブル3の中心を通る鉛直線を回転軸として反応テーブル駆動部(図示せず)によって図1に矢印で示す方向に回転する。反応テーブル3が回転すると反応容器32は、第2検体分注装置5によって検体が吐出される検体吐出位置Aや、試薬分注装置7および7Aによって試薬が吐出される試薬吐出位置B、Cに搬送される。反応テーブル3の上方には開閉自在な蓋(図示せず)が、下方には検体と試薬の反応を促進させる温度に加温するための恒温槽(図示せず)がそれぞれ設けられる。
【0038】
測光装置33は、光源33aおよび受光部33bを有している。光源33aは、所定波長の分析光を出射する。受光部33bは、光源33aから出射されて、反応容器32に収容された検体と試薬が反応した反応液を透過した光束を測定する。測光装置33は、前記光源33aと受光部33bが反応テーブル3の収納部31を挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。なお、反応テーブル3には、測定後の反応液を反応容器32から排出し、反応容器32を洗浄する反応容器洗浄装置34が備えられる。
【0039】
試薬テーブル4および4Aは、円盤状のテーブルを有し、該テーブルの周方向に沿って等間隔で複数配置された収納部41を備えている。各収納部41には、試薬を収容した試薬容器42が着脱自在に収納される。試薬容器42は、上方に向いて開口する開口部42aを有している。また、試薬テーブル4および4Aは、試薬テーブル4の中心を通る鉛直線を回転軸として試薬テーブル駆動部(図示せず)によって図1に矢印で示す方向に回転する。試薬テーブル4が回転すると試薬容器42は、試薬分注装置7および7Aによって試薬が吸引される試薬吸引位置に搬送される。ここで、試薬テーブル4および4Aの外周には、試薬容器42に貼付した情報記録媒体に記録された試薬情報を読み取り、制御部101へ出力する読取装置(図示せず)が設置されている。試薬テーブル4および4Aの上方には、試薬の蒸発や変性を抑制するため、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられており、下方には試薬冷却用の恒温槽(図示せず)が設けられている。
【0040】
試薬分注装置7は、試薬の吸引および吐出を行なう分注ノズルが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。試薬分注装置7は、試薬テーブル4と反応テーブル3との間に設けられ、試薬テーブル4によって所定位置に搬送された試薬容器42内の試薬を分注ノズルによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル3によって所定位置に搬送された反応容器32に分注して試薬を所定タイミングで反応テーブル3上の反応容器32内に移送する。試薬分注装置7Aについても同様である。
【0041】
検体容器移送機構40は、配列された複数のラック22bを矢印方向に沿って1つずつ歩進させながら移送する。ラック22bは、検体を収容した複数の検体容器22を保持している。検体容器移送機構40によってラック22bが歩進され、検体吸引位置Dに移送されると、後述する第1検体分注装置6によって検体容器22内の検体を吸引し、アリコート容器9に吐出して、検体を小分けする。その後、第2検体分注装置5によりアリコート容器9内に小分けされた検体を吸引し、反応容器32に吐出することにより生化学分析用の検体分注を行う。アリコート容器9は、繰り返し使用される第2検体分注装置5の分注プローブから検体容器22中の検体へのキャリーオーバーを回避するために設置される生化学分析項目用検体の収容容器であり、第1検体分注装置6および第2検体分注装置5の両プローブの軌跡上であって、交差する位置に設けられる。アリコート容器9は、小分け分取専用のアリコート容器9のほか、検体を検体容器22から小分けして収容しうるものであればよく、自動分析装置1で他の目的に使用される反応容器32、32Aなども代用することが可能である。
【0042】
第2検体分注装置5は、検体の吸引および吐出を行なう分注プローブが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。第2検体分注装置5は、アリコート容器9内の検体を分注プローブによって吸引し、アームを旋回させ、反応テーブル3によって検体吐出位置Aに搬送された反応容器32に分注して検体を所定タイミングで反応テーブル3上の反応容器32内に移送する。
【0043】
図2に第2検体分注装置5の概略構成図を示す。第2検体分注装置5は、図2に示すように金属製の分注プローブ50を有している。分注プローブ50は、ステンレスなどによって棒管状に形成されたもので、先端側はテーパー形状をとる。先端を下方に向けて上方の基端がアーム51の先端に取り付けてある。アーム51は、水平配置され、その基端が支軸52の上端に固定してある。支軸52は、鉛直配置されており、分注プローブ移送部53によって鉛直軸Oを中心として回転する。支軸52が回転すると、アーム51が水平方向に旋回して、分注プローブ50を水平方向に移動させる。また、支軸52は、分注プローブ移送部53によって鉛直軸Oに沿って昇降する。支軸52が昇降すると、アーム51が鉛直方向に昇降して、分注プローブ50を鉛直(上下)方向であって分注プローブ50の長手方向に昇降させる。
【0044】
分注プローブ50の基端には、チューブ54aの一端が接続される。このチューブ54aの他端は、シリンジ55に接続される。シリンジ55は、チューブ54aの他端が接続された筒状のシリンダー55aと、シリンダー55aの内壁面に摺動しながらシリンダー55a内を進退可能に設けられたプランジャー55bとを有する。プランジャー55bは、プランジャー駆動部56に接続される。プランジャー駆動部56は、例えばリニアモーターを用いて構成され、シリンダー55aに対するプランジャー55bの進退移動を行うものである。シリンジ55のシリンダー55aには、チューブ54bの一端が接続される。このチューブ54bの他端は、押し出し液L1を収容するタンク57に接続される。また、チューブ54bの途中には、電磁弁58およびポンプ59が接続される。なお、押し出し液L1としては、蒸留水や脱気水などの非圧縮性流体が適用される。この押し出し液L1は、分注プローブ50の内部の洗浄を行う洗浄液としても適用される。
【0045】
第2検体分注装置5は、ポンプ59を駆動し、電磁弁58を開状態にすることでタンク57に収容されている押し出し液L1が、チューブ54bを経てシリンジ55のシリンダー55a内に充填され、さらにシリンダー55aからチューブ54aを経て分注プローブ50の先端まで満たされる。このように押し出し液L1が分注プローブ50の先端まで満たされた状態で、電磁弁58を閉状態にし、ポンプ59を止めておく。そして、検体や試薬の吸引を行う場合、プランジャー駆動部56を駆動してプランジャー55bをシリンダー55aに対して後退移動させることにより、押し出し液L1を介して分注プローブ50の先端部に吸引圧が印加され、この吸引圧によって検体や試薬が吸引される。一方、検体や試薬の吐出を行う場合には、プランジャー駆動部56を駆動してプランジャー55bをシリンダー55aに対して進出移動させることにより、押し出し液L1を介して分注プローブ50の先端部に吐出圧が印加され、この吐出圧によって検体や試薬が吐出される。
【0046】
分注プローブ洗浄装置44は、第2検体分注装置5が備える分注プローブ50の水平移動の軌跡の途中位置に設けられ、検体間のキャリーオーバー防止のために、分注プローブ50により検体の分注を行なうたびに該分注プローブ洗浄装置44にて分注プローブ50の洗浄を行なう。分注プローブ洗浄装置44の洗浄槽に貯留した洗浄水に分注プローブ50を浸漬、またはシャワー等の噴射圧力を用いて外壁面を洗浄し、内壁面は、押し出し液L1を分注プローブ50から噴出させることにより洗浄する。分注プローブ洗浄装置8および8Aも同様である。
【0047】
このような構成の生化学的分析ユニット11において、検体容器移送機構40により検体容器22を収容したラック22bが検体吸引位置Dに搬送された後、第1検体分注装置6によりアリコート容器9に検体が小分け分注され、第2検体分注装置5によりアリコート容器9内の検体を吸引し、試薬が分注された反応容器32内に検体を吐出する。反応容器32にさらに試薬を分注し、反応テーブル3によって周方向に沿って搬送される間に検体と試薬とが攪拌されて反応し、光源33aと受光部33bとの間を通過する。このとき、光源33aから出射され、反応容器32内の反応液を通過した分析光は、受光部33bによって測光されて成分濃度などが分析される。そして、分析が終了した反応容器32は、反応容器洗浄装置34によって測定後の反応液が排出されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0048】
つぎに、免疫学的分析ユニット12について説明する。免疫学的分析ユニット12は、大別して、免疫反応テーブル24と、BFテーブル25と、試薬テーブル26および27と、試薬分注装置28および29と、酵素反応テーブル30と、測光装置37と、反応容器移送部35および36と、分注プローブ洗浄装置38および39と、チップ装填ユニット43とを備えている。
【0049】
免疫学的分析ユニット12の各構成要素は、生化学的分析ユニットと共通するものが多いので、以下、免疫学的分析ユニットに特徴的な各要素について説明する。
【0050】
試薬テーブル26および27は、試薬容器を複数収納し、各試薬容器には、免疫学的分析項目の分析に使用される試薬であって、分析対象である検体内の抗原または抗体と特異的に結合する反応物質を固相した磁性粒子を含む試薬や、磁性粒子と結合した抗原または抗体と特異的に結合する標識物質(たとえば酵素)、標識物質との酵素反応によって発光する基質を含む基質液が収容されている。
【0051】
免疫反応テーブル24は、反応容器32A内で検体と所定の試薬とを反応させるための反応ラインを有し、検体と磁性粒子試薬との第一反応用の外周ラインと、検体と標識試薬との第二反応用の内周ラインの2つの反応ラインを有する。各反応ラインには、反応容器32Aを収容する反応容器収容部が複数形成される。免疫反応テーブル24は、免疫反応テーブル24の中心を通る鉛直線を回転軸として図1の矢印の方向に回動自在であり、免疫反応テーブル24の図示しない反応容器収容部に収容された反応容器32Aを所定タイミングで検体吐出位置E等に移送する。
【0052】
BFテーブル25は、所定の洗浄液を吸引吐出して検体または試薬における未反応物質を分離するBF(bound−free)分離を実施するBF洗浄処理を行なう。BFテーブル25は、BFテーブル25の中心を通る鉛直線を回転軸として図1の矢印の方向に回動自在であり、BFテーブル25に配置された反応容器32Aを所定タイミングで所定位置に移送する。BFテーブル25は、BF分離に必要な磁性粒子を集磁する集磁機構と、BF液を反応容器内に吐出・吸引してBF分離を実施するBF洗浄プローブを有するBF洗浄部と、集磁された磁性粒子を分散させる攪拌機構とを有する。
【0053】
酵素反応テーブル30は、反応容器32A内に注入された基質液内の基質が発光可能となる酵素反応処理を行なうための反応ラインである。酵素反応テーブル30には、周方向に反応容器32Aを収容する反応容器収容部が形成される。酵素反応テーブル30は、酵素反応テーブル30の中心を通る鉛直線を回転軸として図1の矢印の方向に回動自在であり、酵素反応テーブル30に配置された反応容器32Aを所定タイミングで所定位置に移送する。
【0054】
反応容器移送部35および36は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、検体および所定の試薬を収容した反応容器32Aを所定タイミングで、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、酵素反応テーブル30、測光装置37、図示しない反応容器供給部および反応容器廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。
【0055】
第1検体分注装置6は、検体容器移送機構40により検体吸引位置Dに搬送された検体容器22内の検体を、アリコート容器9に生化学分析用の検体として小分け分注し、同一検体について免疫学分析項目がオーダーされている場合には、免疫学分析項目用に検体容器22内から検体を吸引し、検体吐出位置Eにおいて免疫反応テーブル24に保持される反応容器32Aに検体を吐出する。
【0056】
図3に示すように、第1検体分注装置6は、検体の吸引および吐出を行なうディスポーザブルチップ60aが連結管60の先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なう。第1検体分注装置6は、ディスポーザブルチップ60aが連結管60の先端部に取り付けられている点を除き、第2検体分注装置と同様の構造を有する。
【0057】
チップ装填ユニット43は、複数のチップを整列したチップケースを設置しており、このケースからディスポーザブルチップ60aが供給される。このディスポーザブルチップ60aは、免疫学分析項目測定時のキャリーオーバー防止のため、第1検体分注装置6の連結管60の先端部に装着され、検体分注ごとに交換される使い捨てのサンプルチップである。また、チップ装填ユニット43において、ディスポーザブルチップ60aの連結管60への装着のほか、ディスポーザブルチップ60aの脱着を行い、使用済みのディスポーザブルチップ60aの廃棄ボックスを有している。
【0058】
このような構成の免疫学的分析ユニット12において、検体容器移送機構40により検体容器22を収容したラック22bが検体吸引位置Dに搬送された後、ディスポーザブルチップ60aが装着された第1検体分注装置6により検体容器22内の検体を反応容器32A内に分注する。反応容器32A内には、さらに磁性粒子、標識物質、基質液などの試薬がBF洗浄等による未反応物質等の除去のステップを挟んで分注され、検体と各試薬の反応により生成した免疫複合体と基質とが作用し、基質から発せられる発光を測光装置37により測定する。
【0059】
つぎに、制御機構10について説明する。図1に示すように、制御機構10は、制御部101、入力部102、分析部103、記憶部104、出力部105、送受信部107を備える。制御機構10が備える各部は、制御部101に電気的に接続されている。制御部101は、CPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部101は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。制御部101は、算出部101aと、分注制御部101bを備える。算出部101aは、分析を行う1検体毎に、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目である、生化学分析に要する検体量を合算して算出する。分注制御部101bは、キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目である免疫学分析項目について再検査が必要な場合は、新しいチップ60aを装填した第1検体分注装置6を用いて検体容器22から反応容器32Aに分注させ、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目である生化学分析項目について再検査を行なう場合は、新しいディスポーザブルチップ60aを装填した第1検体分注装置6を用いて検体容器22からアリコート容器9に検体小分け後、第2検体分注装置5でアリコート容器9から検体を分注するような制御を行なう。分析部103は、制御部101を介して各ユニットの測光装置33および37に接続され、光量に基づいて検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部101に出力する。入力部102は、制御部101へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。
【0060】
記憶部104は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部104は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。また、記憶部104は、算出部101aにより算出した、生化学分析項目の分析に要する検体量を検体ごとに記憶する。
【0061】
出力部105は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、制御部101の制御のもと、分析に関する諸情報を出力する。出力部105は、ディスプレイ等を用いて構成された表示部106を備える。表示部106は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。入力部102および表示部106はタッチパネルによって実現するようにしてもよい。送受信部107は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。
【0062】
また、制御部101には、上述した第1検体分注装置6および第2検体分注装置5の各部、分注プローブ移送部53および63、プランジャー駆動部56および66、電磁弁58および68、およびポンプ59および69が接続されている。制御機構10は、自動分析装置1の各処理にかかわる各種プログラムを用いて、第1検体分注装置6および第2検体分注装置5の動作処理の制御も行なう。
【0063】
以上のように構成される自動分析装置1において、入力部102により検査オーダー受付後、算出部101aにより1検体ごとに生化学分析項目の分析に要する検体量を合算により算出し、算出した検体量を第1検体分注装置6で検体容器22から吸引し、アリコート容器9に小分け分注する。生化学分析項目用の検体は、第2検体分注装置5によりアリコート容器9から吸引し、反応容器32に吐出する。免疫学分析項目用の検体の分注は、第1検体分注装置6により検体容器22から直接吸引し、反応容器32Aに吐出する。第2検体分注装置5および第1検体分注装置6で検体分注後、生化学的分析ユニット11および免疫学的分析ユニット12において分析が行われ、分析結果により再検査が必要な場合には、分注制御部101bの制御のもと、再度検体容器22から第1検体分注装置6による小分け分注または免疫学分析用分注が行われ、小分け分注後のアリコート容器9から第2検体分注装置5による生化学分析用分注が行われる。このように、キャリーオーバーを引き起こしやすい第2検体分注装置5について、検体容器22から直接検体を分注させないようにするだけで、再検査が必要な場合でもキャリーオーバーを完全に回避することができる。また、本発明に係る実施の形態1では、第2検体分注装置5および第1検体分注装置6を使用した分注を並行して行なうことが可能となり、処理能力の大幅な向上が可能になるものである。
【0064】
次に、本発明の実施の形態1にかかる検体分注方法について、図4および5を参照して詳細に説明する。図4は実施の形態1にかかる自動分析装置1の分注動作の処理手順を示すフローチャートである。図5は、図4に示す再検査処理の処理手順を示すフローチャートである。まず、図4に示すように、検体毎に検査オーダーを受け付ける(ステップS101)。検体番号と分析項目とからなる検査オーダー表に基づき、入力部102を介して検査オーダーが受け付けられる。算出部101aは、受け付けられた1検体毎に生化学分析項目の分析に要する検体量を合算して算出する(ステップS102)。各分析項目の分析に要する検体量は、すべての分析項目毎に検体分注量または検体吸引量として記憶部104に記憶されているので、制御部101の制御のもと、記憶部104から検査オーダーのあった生化学分析項目の検体分注量または検体吸引量を抽出して、算出部101aで合算算出し、記憶部104に記憶させる。ここで、検体分注量は、実際の分析に要する検体量を意味し、検体吸引量は、分析に要する検体量に、押し出し液での検体の薄まりを考慮して余分に吸引した検体量を加えたものを意味する。
【0065】
すべての検査オーダーの受付終了(ステップS103、No)まで、検査オーダーの受付および検体量の算出が繰り返され、すべての検査オーダーの受付終了後(ステップS103、Yes)、制御部101の制御のもと、チップ装填ユニット43において、第1検体分注装置6の連結管60にディスポーザブルチップ60aを装填する(ステップS104)。ディスポーザブルチップ60a装填後、ステップS102で算出した、これから分析を行う検体の生化学分析項目すべての分析に要する検体量を記憶部104から抽出し(ステップS105)、第1検体分注装置6を使用して検体容器22から合算された検体量を吸引して(ステップS106)、アリコート容器9に検体を吐出する(ステップS107)。
【0066】
その後、免疫分析項目の検体分注は第1検体分注装置6により検体容器22から分注が行なわれ、生化学分析項目の検体分注は第2検体分注装置5により検体が小分け分注されたアリコート容器9から分注が行われる。同一検体について、免疫分析項目の検体分注と生化学分析項目の検体分注を並行して行なうことができるため、処理能力の向上を計ることが可能となる。まず、免疫分析項目の検体分注について説明する。これから分注を行なう検体について、免疫分析項目の検査オーダーがされているか否かを確認する(ステップS108)。検査オーダーされている場合は(ステップS108、Yes)、免疫分析項目用の検体を第1検体分注装置6により検体容器22から吸引し(ステップS109)、免疫反応テーブル24上に保持される反応容器32Aに検体を吐出する(ステップS110)。同一検体について、すべての免疫分析項目の分注が終了したか確認し(ステップS111)、終了していない場合は(ステップS111、No)、ステップS109〜S110を繰り返し、終了した場合は(ステップS111、Yes)、装填していたチップ60aをチップ装填ユニット43で脱着し、廃棄する(ステップS112)。検査オーダーされていない場合も(ステップS108、No)、同様に装填していたチップ60aをチップ装填ユニット43で脱着し、廃棄する(ステップS112)。検体が吐出された反応容器32Aには、分析対象と反応する反応物質を固相した磁性粒子を含む試薬がすでに分注されており、検体分注後、反応容器移送部35によりBFテーブル25に搬送されてBF洗浄が行なわれ、標識物質の分注、BF洗浄、基質液の分注の後、反応容器移送部35による酵素反応テーブル30への搬送を経て、測光装置37で発光が測定される。
【0067】
一方、生化学分析項目の検体分注は、第2検体分注装置5により検体が小分け分注されたアリコート容器9から吸引し(ステップS113)、反応テーブル3に保持される反応容器32に検体を吐出する(ステップS114)。分注プローブ洗浄装置44で分注プローブ50を洗浄後(ステップS115)、同一検体についてすべての生化学分析項目の分注が終了したか確認し(ステップS116)、終了していない場合は(ステップS116、No)、ステップS113〜S115を繰り返し、終了した場合は(ステップS116、Yes)、その後の工程に移行する。検体が分注された反応容器32には、第1試薬がすでに分注されており、検体分注後、第2試薬が分注され、測光装置33で吸光度が測定される。反応に使用された反応容器32は、反応容器洗浄装置34で洗浄され、再使用される。アリコート容器9も、図示しない洗浄装置で洗浄の後再使用することも可能であり、また使い捨てアリコート容器9の使用も可能である。
【0068】
免疫分析項目および生化学分析項目すべての分注が終了後、同一検体についての再検査の要求があるか確認し(ステップS117)、再検査のオーダーがある場合は(ステップS117、Yes)、後述する再検査の処理工程を行なう(ステップS118)。再検査のオーダーがない場合は(ステップS117、No)、すべての検体の分注が終了したか否かを確認し(ステップS119)、すべての検体の分注が終了していない場合は(ステップS119、No)、ステップS104から再度検体の分注を行なう。すべての検体の分注が終了した場合は(ステップS119、Yes)、検体分注処理は終了する。
【0069】
つぎに、再検査処理について、図5を参照して説明する。図5に示すように、チップ装填ユニット43において、第1検体分注装置6の連結管60にディスポーザブルチップ60aを装填する(ステップS201)。ディスポーザブルチップ60a装填後、再検査が必要な分析項目が生化学か否か確認する(ステップS203)。再検査が必要な分析項目が生化学である場合は(ステップS202、Yes)、再検査が必要な生化学分析項目の検体量を合算により算出し(ステップS203)、第1検体分注装置6を使用して検体容器22から合算された検体量を吸引して(ステップS204)、アリコート容器9に検体を吐出する(ステップS205)。
【0070】
その後、再検査の分注処理に移行する。免疫分析項目と生化学分析項目の再検査用の検体分注は並行して行なわれる。まず、免疫分析項目の分注であるが、免疫分析項目の再検査がオーダーされているか確認し(ステップS206)、オーダーされている場合は(ステップS206、Yes)、免疫分析項目再検査用の検体を第1検体分注装置6により検体容器22から吸引し(ステップS207)、免疫反応テーブル24上に保持される反応容器32Aに検体を吐出する(ステップS208)。同一検体について、すべての免疫分析項目の再検査用の分注が終了したか確認し(ステップS209)、終了していない場合は(ステップS209、No)、ステップS207〜S208を繰り返し、終了した場合は(ステップS209、Yes)、装填していたディスポーザブルチップ60aをチップ装填ユニット43で脱着し、廃棄する(ステップS210)。
【0071】
一方、生化学分析項目の再検査用の検体分注は、生化学分析項目の再検査用の検体を第2検体分注装置5によりアリコート容器9から吸引し(ステップS211)、反応テーブル3に保持される反応容器32に検体を吐出する(ステップS212)。分注プローブ洗浄装置44で分注プローブ50を洗浄後(ステップS213)、同一検体について、すべての生化学分析項目の再検査用の分注が終了したか確認し(ステップS214)、終了していない場合は(ステップS214、No)、ステップS211〜S213を繰り返し、終了した場合は(ステップS214、Yes)、再検査用の検体分注は終了する。
【0072】
なお、実施の形態1における自動分析装置の分注処理の手順は、1検体毎に再検査の要求の有無を確認するものであるが、変形例として、図6に示すように、検査オーダーされたすべての検体の分注終了後に(ステップS317、Yes)、再検査の要求があるか否か確認し(ステップS318)、再検査の要求がある場合に(ステップS318、Yes)、上述した再検査処理を行い(ステップS319)、再検査の要求がなされたすべての検体について再検査が終了するまで(ステップS320、Yes)順次再検査を行なうことも可能である。この変形例によれば、再検査の有無が迅速に判断できない場合でも分注処理を進めることができるので、処理能力のさらなる向上が可能となる。
【0073】
また、実施の形態1における検体分注方法では、検査オーダーされた検体すべてについて生化学分析項目に要する検体量を合算算出し(ステップS102)、算出された検体量を第1検体分注装置5によりアリコート容器9に小分け分注しているが(ステップS104〜S107)、免疫分析項目がオーダーされているか否か確認し、免疫分析項目がオーダーされている場合のみ当該処理を行い、オーダーされていない場合は、検体容器22から第2検体分注装置5で直接検体分注を行なうものであってよい。
【0074】
さらに、自動分析装置1は、図7に示すようなアリコート容器搬送部13を備えていてもよい。アリコート容器搬送部13は、円盤状のテーブルを有し、該テーブルの周方向に沿って等間隔で複数配置された収納部15を備え、各収納部15にアリコート容器9が着脱自在に収納される。また、アリコート容器搬送部13は、アリコート容器搬送部13の中心を通る鉛直線を回転軸として試薬テーブル駆動部(図示せず)によって図7に矢印で示す方向に回転し、アリコート容器9を第1検体分注装置6による検体吐出位置F、および第2検体分注装置5による検体吸引位置Gに移送する。アリコート容器搬送部13には、アリコート容器9を再使用するためのアリコート容器洗浄部14を備えていてもよい。
【0075】
さらにまた、実施の形態1では、第1検体分注装置6および第2検体分注装置5が、それぞれ独立して設置されるが、図8に示すような同軸ツインアームユニットの検体分注装置70を使用することも可能である。検体分注装置70は、検体容器22、反応容器32および32A、チップ装填ユニット43、アリコート容器9、および分注プローブ洗浄装置44などを結ぶ軌跡上を水平方向に回動する駆動アーム71aおよび71bを有する。駆動アーム71aおよび71bには、分注プローブ70aおよび連結管70bが支持され、連結管70bの先端にはディスポーザブルチップ70cが装填される。図8の例では、分注プローブ70aを支持する駆動アーム71aが、連続的に使用する金属プローブを装填する第2検体分注装置5’であり、ディスポーザブルチップ70cが装填される連結管70bを支持する駆動アーム71bが第1検体分注装置6’である。検体分注装置70は、駆動アーム71aおよび71bをそれぞれ支持する支柱72aおよび72bを有する。2本の駆動アーム71aおよび71bは、昇降を同一とし、回動を独立させるために、回動モータ73a、73bと昇降モータ77を有する駆動機構78を備える。回動モータ73a、73bは、回転軸74a、74bに取り付けたホイール(図示せず)と支柱72a、72bに取り付けたホイール75a、75bとの間にタイミンベルト76a、76bが巻き掛けられている。昇降モータ77は、タイミンベルト77cによって回転軸77aを回転し、昇降ブロック77eをねじ軸77dに沿って上下動させる。タイミンベルト77cは、回転軸77aに取り付けたホイールとねじ軸77dの下端に取り付けたホイール77bとの間に巻き掛けられている。ここで、昇降ブロック77eは、支柱72aの下端に取り付けて支柱72a、72bを支持しており、ねじ軸77dと共にボールねじを構成している。
【0076】
駆動アーム71aおよび71bは、昇降を同一とするため、昇降時の位置決めをすることが好ましく、分注プローブ70aが検体容器22上に位置し昇降する場合には、分注プローブ70bはアリコート容器9上に位置し、分注プローブ70aがアリコート容器9または反応容器32A上のときは分注プローブ70bは反応容器32上、分注プローブ70aがチップ装填ユニット43上のときは分注プローブ70bは分注プローブ洗浄装置44上に位置し、同時に昇降を行なう。図8に示すような検体分注装置70を使用することにより、スペース効率が改善できるだけでなく、メンテナンス性やユーザーのハンドリング性も向上できるので好ましい。
【0077】
(実施の形態2)
実施の形態2は、生化学的分析を行う生化学分析モジュールと、免疫学的分析を行う免疫学分析モジュールとを1つの分析ユニット内に備える統合装置において、生化学分析用の検体を小分けするアリコート容器を設置するものである。以下、実施の形態2について、図9を参照して説明する。
【0078】
図9は、実施の形態2にかかる自動分析装置1Aを示す概略構成図である。実施の形態2にかかる自動分析装置1Aは、大別して、分析ユニット15と、制御機構10と、検体容器移送機構40Aとを備え、分析ユニット15は、第1検体分注装置6と、第2検体分注装置5と、アリコート容器9と、反応テーブル3(生化学)と、試薬テーブル4Bと、免疫反応テーブル24Aと、試薬テーブル26Aと、試薬分注装置7、7A、28Aと、分注プローブ洗浄装置8、8A、38A、44と、測光装置33、37と、反応容器洗浄装置34と、チップ装填ユニット43と、緊急検体テーブル46と、電解質測定装置(ISE)47、反応容器廃棄口48とを備える。
【0079】
自動分析装置1Aは、生化学分析および免疫学分析の分析工程は、実施の形態1の自動分析装置1とほぼ同様の工程を採用するものであるが、生化学分析モジュールと免疫学分析モジュールとを1つのユニット内に集約させるために、各構成の機能を統合させている。免疫反応テーブル24Aは、免疫反応だけでなく酵素反応をも行なう酵素反応テーブルとしての機能も有する。試薬テーブル4Bと試薬テーブル26Aは、同心円構造をとり、外側に試薬テーブル4Bが、内側に試薬テーブル26Aがそれぞれ配置される。試薬テーブル4Bと試薬テーブル26Aは、図示しない駆動部を個々に備えることにより、図9に示す矢印の方向にそれぞれ独立して回転する。試薬テーブル26A内の試薬容器42Aは、円柱状の構造であり、隣りあう試薬容器42Aは図示しないギヤで連結されて、図示しない駆動部により駆動されて試薬テーブル26A上を公転するとともに自転する。
【0080】
緊急検体テーブル46は、緊急検体、再検査用検体および割り込み検体のほか、一般検体以外の各種検体(検量線作成用のスタンダード検体、精度管理検体等)をそれぞれ収容する。電解質測定装置(ISE)47は、電解質濃度(イオン濃度)を、イオン選択性電極を用いて測定する装置である。反応容器廃棄口48は、免疫学分析に使用される使い捨ての反応容器32Aの廃棄口である。
【0081】
自動分析装置1Aのような、生化学分析モジュールと免疫学分析モジュールとを1つのユニット内に備える統合装置においても、ディスポーザブルチップを使用する第1検体分注装置6と、金属プローブを連続使用する第2検体分注装置5と、生化学分析用の検体を小分けするアリコート容器9とを備えることにより、キャリーオーバー回避レベルの高い免疫学分析項目の再検査時においてキャリーオーバーを回避できるとともに、キャリーオーバー回避レベルの低い生化学分析項目の検体分注およびその後の分析を延期させる必要がなく、処理能力の大幅な向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の自動分析装置で使用される第2検体分注装置を示す概略構成図である。
【図3】図1の自動分析装置で使用される第1検体分注装置を示す概略構成図である。
【図4】実施の形態1にかかる検体分注方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図4に示す再検査の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1、2、3または4における検査オーダーを示す図である。
【図7】実施の形態1の変形例であるアリコート容器搬送装置の概略構成図である。
【図8】実施の形態1の変形例である同軸ツインアームを有する検体分注装置の斜視図である。
【図9】実施の形態2にかかる自動分析装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0083】
1、1A 自動分析装置
2 検体テーブル
8、8A、38、39、44、38A 分注プローブ洗浄装置
11 生化学的分析ユニット
12 免疫学的分析ユニット
15 分析ユニット
22 検体容器
22b 検体ラック
24、24A 免疫反応テーブル
25 BFテーブル
3 反応テーブル
30 酵素反応テーブル
32、32A 反応容器
33、37 測光装置
33a 光源
33b 受光部
34 反応容器洗浄装置
35、36 反応容器移送部
4、4A、26、27 試薬テーブル
42、42A 試薬容器
42a 開口部
5、5’ 第2検体分注装置
6、6’ 第1検体分注装置
70 検体分注装置
7、7A、28、29 試薬分注装置
9 アリコート容器
13 アリコート容器搬送部
14 アリコート容器洗浄部
40 検体容器移送機構
41 収納部
43 チップ装填ユニット
46 緊急検体テーブル
47 電解質測定装置
48 反応容器廃棄口
60a、70c ディスポーザブルチップ
60、70b 連結管
50、70a 分注プローブ
51、61、71a、71b アーム
52、62、72a、72b 支柱
53、63 分注プローブ移送部
54a、54b、64a、64b チューブ
55、65 シリンジ
55a、65a シリンダー
55b、65b プランジャー
56、66 プランジャー駆動部
57、67 タンク
58、68 電磁弁
59、69 ポンプ
10 制御機構
101 制御部
101a 算出部
101b 分注制御部
102 入力部
103 分析部
104 記憶部
105 出力部
106 表示部
107 送受信部
L1 押し出し液
O 鉛直軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目とキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の両方の分析を行う自動分析装置であって、
キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目の検体分注と、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目用の検体の小分け分注とを、ディスポーザブルチップを装填して行なう第1検体分注手段と、
前記第1検体分注手段により小分け分注されたキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目用の検体を、小分け収容する収容手段と、
キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の検体分注を、連続使用するプローブを装填して行なう第2検体分注手段と、
を備え、前記第2検体分注手段は前記収容手段から検体を分注することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
同一検体について、前記第1検体分注手段によるキャリーオーバー回避レベルの高い分析項目の検体容器からの検体分注と、前記第2検体分注手段によるキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の前記収容手段からの検体分注とを並行して行なうことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記収容手段は、前記第1検体分注手段および前記第2検体分注手段の分注プローブの軌跡上であって、交差する位置に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記収容手段を、前記第1検体分注手段による検体小分け位置と、前記第2検体分注手段による検体分注位置とに搬送する搬送手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項5】
キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目は免疫学的分析項目または遺伝学的分析項目であり、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目は生化学的分析項目であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記第1検体分注手段および前記第2検体分注手段は、独立して回動するが回動軸は共通である2本の駆動アームにそれぞれ備えられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記収容手段は、アリコート容器であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記アリコート容器は、収容する検体が替わるたびに洗浄して再使用されることを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記アリコート容器は、収容する検体が替わるたびに廃棄され、新しい容器に変更されることを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項10】
1検体毎にキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の分析に要する検体量を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出した検体量を記憶する記憶手段を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項11】
キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目について再検査を行なう場合は、新しいチップを装填した前記第1検体分注手段を用いて前記検体容器から分注し、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目について再検査を行なう場合は、新しいチップを装填した前記第1検体分注手段を用いて前記検体容器から前記収容手段に再度検体を小分け後、前記第2検体分注手段で前記収容手段から分注するよう制御する分注制御部を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記第2検体分注手段のプローブを洗浄する洗浄装置を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項13】
キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目を分析する分析モジュールと、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目を分析する分析モジュールとが、個別のユニットとして設置されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項14】
キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目を分析する分析モジュールと、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目を分析する分析モジュールとが、1つのユニット内に設置されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項15】
キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目とキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の両方の分析を行う自動分析装置における検体分注方法であって、
キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の分析に要する検体を、ディスポーザブルチップを装填するキャリーオーバー回避レベルの高い分析項目用の第1検体分注手段を用いて、検体容器から収容手段に分注する小分け分注ステップと、
同一検体について、前記検体容器から前記第1検体分注手段を使用してキャリーオーバー回避レベルの高い分析項目用の検体を分注する第1検体分注ステップと、
同一検体について、前記収容手段から連続使用するプローブを装填する第2検体分注手段を使用してキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目用の検体を分注する第2検体分注ステップと、
を含むことを特徴とする自動分析装置における検体分注方法。
【請求項16】
同一検体について、前記第1検体分注ステップと前記第2検体分注ステップとを並行して行なうことを特徴とする請求項15に記載自動分析装置における検体分注方法。
【請求項17】
キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目は免疫学的分析項目または遺伝学的分析項目であり、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目は生化学的分析項目であることを特徴とする請求項15または16に記載の自動分析装置における検体分注方法。
【請求項18】
前記収容手段は、アリコート容器であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一つに記載の自動分析装置における検体分注方法。
【請求項19】
前記アリコート容器は、収容する検体が替わるたびに洗浄して使用されることを特徴とする請求項18に記載の自動分析装置における検体分注方法。
【請求項20】
前記アリコート容器は、収容する検体が替わるたびに新しいものに変更されることを特徴とする請求項18に記載の自動分析装置における検体分注方法。
【請求項21】
1検体毎にキャリーオーバー回避レベルの低い分析項目の分析に要する検体量を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した検体量を記憶する記憶手段から、前記検体量を抽出する抽出ステップを含むことを特徴とする請求項15〜20のいずれか一つに記載の自動分析装置における検体分注方法。
【請求項22】
キャリーオーバー回避レベルの高い分析項目について再検査を行なう場合は、新しいチップを装填した前記第1検体分注手段を用いて前記検体容器から分注し、キャリーオーバー回避レベルの低い分析項目について再検査を行なう場合は、新しいチップを装填した前記第1検体分注手段を用いて前記検体容器から前記収容手段に検体小分け後、前記第2検体分注手段で前記収容手段から分注することを特徴とする請求項15〜21のいずれか一つに記載の自動分析装置における検体分注方法。
【請求項23】
前記第1検体分注ステップ後に、前記第1検体分注手段のディスポーザブルチップを廃棄、交換するノズルチップ交換ステップを含むことを特徴とする請求項15〜22のいずれか一つに記載の自動分析装置における検体分注方法。
【請求項24】
前記第2検体分注ステップは、1つの分析項目の分注が終了するたびに前記第2検体分注手段のプローブを洗浄装置にて洗浄する洗浄ステップを含むことを特徴とする請求項15〜23のいずれか一つに記載の自動分析装置における検体分注方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−133827(P2010−133827A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310028(P2008−310028)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】