説明

自動分析装置および自動分析装置の検量線表示方法

【課題】利用者が同一の分析項目に対する検量線の形状の経時的な変化を容易に確認することができ、検量線の異常判定を的確に行うことができる自動分析装置および自動分析装置の検量線表示方法を提供する。
【解決手段】検体と試薬とを反応させることによって検体の成分を分析する自動分析装置1がキャリブレーション分析を行うことによって作成した同一の分析項目に対する複数の異なる検量線を、自動分析装置1のデータ処理ユニット102が有する表示部22が重ねて表示する。この際、制御部23の検索部232は、表示部22で表示すべき検量線に対応するキャリブレーションデータを記憶部24から検索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応させることによって検体の成分を分析する自動分析装置および自動分析装置がキャリブレーション分析を行うことによって作成した検量線を表示する自動分析装置の検量線表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を分析する自動分析装置では、分析項目に応じた試薬と検体との反応液に対する測光結果を濃度値に変換することによって検体の成分の分析を行っている。自動分析装置が測光結果を濃度値に変換する際には、分析項目ごとに行うキャリブレーション分析によって作成した検量線を使用する(例えば、特許文献1および2を参照)。このような自動分析装置が備える表示部では、キャリブレーション分析によって作成した検量線を表示することができる。
【0003】
自動分析装置の表示部では、キャリブレーションポイントごとの測光結果の経時的な変化を表示することもできる(例えば、特許文献3を参照)。図8は、キャリブレーションポイントごとの測光結果の経時的な変化の表示例を示す図である。同図に示すグラフ81は、横軸が分析日時、縦軸が測光値を表している。3つの折れ線L1〜L3は、各々異なるキャリブレーションポイントの測光値の経時的な変化を示しており、図8では、縦軸方向に沿って一列に並んだ3つのプロット点が、同一の検量線の要素をなしている。この従来技術によれば、キャリブレーションポイントごとの測光値の経時的な変化を、一つの画面上で容易にトレースすることができる。
【0004】
【特許文献1】特許第3728861号公報
【特許文献2】特開平9−325150号公報
【特許文献3】特開平8−211064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析装置の利用者(オペレータ)は、表示部で表示された検量線の形状を目視することにより、その検量線の異常の有無を判定する。この際、判定対象の検量線の形状と過去に作成した検量線の形状とを比較することができれば、利用者は異常判定を的確に行うことができる。しかしながら、上述した従来技術では、利用者が、一つの画面上に表示されている内容から、同一の分析項目に対する検量線の形状の経時的な変化を確認することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、利用者が同一の分析項目に対する検量線の形状の経時的な変化を容易に確認することができ、検量線の異常判定を的確に行うことができる自動分析装置および自動分析装置の検量線表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る自動分析装置は、検体と試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、当該自動分析装置がキャリブレーション分析を行うことによって作成した同一の分析項目に対する複数の検量線を重ねて表示する表示手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る自動分析装置は、上記発明において、前記キャリブレーション分析の分析結果を記憶する記憶手段と、前記表示手段で表示すべき検量線を前記記憶手段から検索する検索手段と、をさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る自動分析装置は、上記発明において、前記表示手段で表示すべき検量線の選択入力を受ける入力手段をさらに備え、前記検索手段は、前記入力手段が受けた選択入力に応じて検索を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る自動分析装置は、上記発明において、前記検索手段は、前記分析項目に応じて定められた検量線の表示条件に基いて検索を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る自動分析装置は、上記発明において、前記検量線の表示条件の設定入力を受ける入力手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る自動分析装置の検量線表示方法は、検体と試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析する自動分析装置が、キャリブレーション分析を行うことによって作成した検量線を表示する自動分析装置の検量線表示方法であって、同一の分析項目に対する複数の異なる検量線を重ねて表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、キャリブレーション分析を行うことによって作成した同一の分析項目に対する複数の異なる検量線を一つの画面上で重ねて表示することにより、利用者が同一の分析項目に対する検量線の形状の経時的な変化を容易に確認することができ、検量線の異常判定を的確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る自動分析装置要部の構成を模式的に示す図である。同図に示す自動分析装置1は、血液や体液等の検体(試料)とその検体の検査項目に応じた試薬とを所定の反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内で反応した液体に対して光学的な測定を行う測定ユニット101と、測定ユニット101を含む自動分析装置1の制御を行うとともに測定ユニット101における測定結果の分析を行うデータ処理ユニット102とを有し、これら二つのユニットが連携することによって複数の検体の生化学的な分析を自動的かつ連続的に行う装置である。なお、ここでいう「液体」には、微量の固体成分を含有する液体も含まれる。
【0016】
測定ユニット101は、主として一般検体を収容する検体容器31が搭載された複数のラック32を収納して順次移送する検体移送部11と、一般検体以外の各種検体(キャリブレーション用検体、精度管理検体、緊急検体、STAT検体、再検査用検体等)を収容する検体容器33を保持する検体容器保持部12と、試薬容器34を保持する試薬容器保持部13と、検体と試薬を反応させる反応容器35を保持する反応容器保持部14と、を備える。
【0017】
また、測定ユニット101は、検体移送部11上の検体容器31や検体容器保持部12上の検体容器33に収容された各種検体を反応容器35に分注する検体分注部15と、試薬容器保持部13上の試薬容器34に収容された試薬を反応容器35に分注する試薬分注部16と、反応容器35の内部に収容された液体を攪拌する攪拌部17と、光源から照射されて反応容器35内を通過した光を受光して所定の波長成分の強度等を測定する測光部18と、イオン交換水等から成る洗浄液を用いて反応容器保持部14上の反応容器35の洗浄を行う反応容器洗浄部19と、を備える。
【0018】
検体容器31、33には、内部に収容する検体を識別する識別情報を所定の情報コード(バーコード、2次元コード等)にコード化して記録した情報コード記録媒体がそれぞれ貼付されている(図示せず)。試薬容器34にも、内部に収容する試薬を識別する識別情報を所定の情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体が貼付されている(図示せず)。このため、測定ユニット101には、検体容器31に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR1、検体容器33に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR2、試薬容器34に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR3が、検体移送部11、検体容器保持部12、試薬容器保持部13にそれぞれ設けられている。
【0019】
検体容器保持部12、試薬容器保持部13、反応容器保持部14は、検体容器33、試薬容器34、反応容器35をそれぞれ収容保持するホイールと、このホイールの底面中心に取り付けられ、その中心を通る鉛直線を回転軸としてホイールを回転させる駆動手段とを有する(図示せず)。各容器保持部の内部は一定の温度に保たれている。例えば、試薬容器保持部13の内部は、試薬の劣化や変性を抑制するために室温よりも低温に設定される。また、反応容器保持部14の内部は、人間の体温と同程度の温度に設定される。なお、生化学的な分析を行う際には、一つの検体に対して2種類の試薬を用いることが多いため、第1試薬用の試薬容器保持部13と第2試薬用の試薬容器保持部13とを別個に設けるとともに、各試薬容器保持部13に対応する試薬分注部16を別個に設けてもよい。
【0020】
検体分注部15は、検体の吸引や吐出を行う細管状のプローブ151と、プローブ151を支持するアーム152と、プローブ151を洗浄するプローブ洗浄部153と、吸排シリンジ等によって実現される吸排機構と、プローブ151の先端が液面に達したのを検知する液面検知機構とを有する(吸排機構と液面検知機構は図示せず)。プローブ151は、データ処理ユニット102の制御のもと、鉛直方向の昇降および水平方向の回転を行い、検体容器31または33から検体を吸引した後、所定の反応容器35へ検体を吐出する。試薬分注部16も、検体分注部15と同様に、プローブ161、アーム162、プローブ洗浄部163、図示しない吸排機構および液面検知機構を有する。プローブ161は、データ処理ユニット102の制御のもと、鉛直方向の昇降および水平方向の回転を行い、試薬容器34から試薬を吸引した後、所定の反応容器35へ試薬を吐出する。
【0021】
測光部18は、白色光を照射する光源18aと、反応容器35を透過してきた白色光を分光する分光光学系18bと、分光光学系18bで分光した光を成分ごとに受光して電気信号に変換する受光素子18cとを有する。
【0022】
ところで、図1では、測定ユニット101の主要な構成要素を模式的に示すことを主眼としているため、構成要素間の位置関係は必ずしも正確ではない。測定ユニット101の構成要素間の正確な位置関係は、試薬容器保持部13の数や分注動作のインターバルにおける反応容器保持部14のホイールの回転態様などの各種条件に応じて定められる。
【0023】
次に、データ処理ユニット102の構成を説明する。データ処理ユニット102は、CPU,ROM,RAM等を具備したコンピュータによって実現される。データ処理ユニット102は、キーボードやマウスなどを有し、検体の分析に必要な情報や自動分析装置1の動作指示信号などを含む情報等の入力を受ける入力部21と、液晶等のディスプレイ装置を有し、検体の分析に関する情報等を表示する表示部22と、自動分析装置1が有する各機能または各手段の制御を行う制御部23と、キャリブレーション分析の結果得られたキャリブレーションデータ等を含む各種情報を記憶する記憶部24と、を備える。
【0024】
制御部23は、測定ユニット101の測定結果に基づいた分析演算を行い、検体の分析データを生成する演算部231と、記憶部24で記憶するキャリブレーションデータから所定の検索条件に基いた検索を行う検索部232とを有する。演算部231は、具体的な分析演算として、記憶部24で記憶するキャリブレーションデータに含まれる検量線を用いることにより、測光部18で測定した吸光度を濃度に変換する演算を行う。
【0025】
次に、本実施の形態1に係る自動分析装置の検量線表示方法について説明する。利用者は、入力部21から所定の操作入力を行うことにより、検量線を表示する検量線表示画面を表示部22に表示させる。図2は、表示部22における検量線表示画面の初期状態の表示例を示す図である。同図に示す検量線表示画面41には、横軸が濃度値、縦軸が測光値(吸光度)を表すグラフ42、グラフ42で表示する内容を選択するデータ選択ボタン43、および検量線表示画面41の表示をキャンセルするキャンセルボタン44が表示されている。図2に示す初期状態において、グラフ42には未だ検量線が表示されていない。
【0026】
続いて、利用者が入力部21の一部をなすマウスを操作し、表示部22で表示されているマウスポインタPをデータ選択ボタン43にあわせた後、マウスの所定のボタンを押下すると、表示部22はデータ選択画面を表示する。この際、表示部22は、検量線表示画面41を開いたままの状態でデータ選択画面をさらに表示するようにしてもよい。なお、ここで説明した処理選択動作は、マウス以外のポインティングデバイス(トラックパッド、トラックボール等)を用いても実現可能である。
【0027】
以後、マウス等のポインティングデバイスを操作してマウスポインタPを画面上に設けられたボタンにあわせた後、そのポインティングデバイスが有する所定のボタン等によって処理を選択する動作を、単に「ボタンをクリックする」と表現する。
【0028】
図3は、表示部22におけるデータ選択画面の表示例を示す図である。同図に示すデータ選択画面51では、利用者が入力部21を操作することによって最大二つのキャリブレーションデータ(基本データ、比較データ)を選択することができる。
【0029】
基本データは、異常判定の対象である検量線に対応したキャリブレーションデータである。図3では、基本データとして、分析日時が「2006年11月30日11時45分」のキャリブレーションデータが選択されている。この選択を行う際、利用者は、基本データの分析日時を表示する分析日時表示部52の右側に設けられた選択用ボタン53をクリックし、分析日時表示部52に表示される複数の候補から所望の分析日時を選択する。
【0030】
比較データは、基本データと比較するために選択されるキャリブレーションデータである。データ選択画面51では、「比較データ」と表示されている左側の領域にボックス54が設けられている。利用者がボックス54をクリックすると、ボックス54の内部にチェックが表示され、比較データの表示が選択される。続いて、利用者は、比較データの分析日時を表示する分析日時表示部55の右側に設けられた選択用ボタン56をクリックし、分析日時表示部55に表示された複数の候補(図3では5つの候補を表示)の中から所望の分析日時をクリックする。
【0031】
利用者が、以上説明したデータ選択処理を完了する場合には、OKボタン57をクリックする。これに対して、利用者がデータ選択処理をキャンセルする場合には、キャンセルボタン58をクリックする。
【0032】
この後、制御部23の検索部232は、上述したデータ選択処理によって選択されたキャリブレーションデータを記憶部24から検索する。図4は、検索部232の検索によって得られたキャリブレーションデータに対応する検量線の表示例を示す図である。同図に示すグラフ42は、2本の異なる検量線を重ねて表示している。具体的には、実線で記載された検量線C1が基本データに対応し、破線で示された検量線C2が比較データに対応している。この2本の検量線C1、C2は、各々の座標系が一致している。また、検量線C1のプロット点P1(四角形で表示)および検量線C2のプロット点P2(円で表示)は、各々のキャリブレーションポイントを示している(図4において、各検量線のキャリブレーションポイントは3つである)。なお、複数の異なる検量線を重ねて表示する際には、検量線ごとに色を変えて表示してもよい。
【0033】
ここで、利用者がグラフ42を用いた検量線の異常判定を行う場合の利点を、図8に示す従来法のグラフ81を用いた検量線の異常判定を行う場合と比較して説明する。まず、利用者がグラフ81を用いて検量線の異常判定を行う場合、キャリブレーションポイントごとの経時的な変化を確認することはできるが、異なる分析日時の検量線の形状を比較することは困難である。特に、検量線が曲線をなす分析項目の場合、利用者がグラフ81の折れ線L1〜L3だけを用いて異なる検量線の形状を比較することはほとんど不可能である。これに対して、利用者がグラフ42を用いて検量線の異常判定を行う場合には、ともに曲線をなす検量線C1の形状と検量線C2の形状を容易に比較することができる。したがって、利用者は、グラフ42を用いることによって検量線の異常判定を的確に行うことができる。
【0034】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、キャリブレーション分析を行うことによって作成した同一の分析項目に対する複数の異なる検量線を一つの画面上で重ねて表示することにより、利用者が同一の分析項目に対する検量線の形状の経時的な変化を容易に確認することができ、検量線の異常判定を的確に行うことができる。
【0035】
また、本実施の形態1によれば、表示部で表示すべき検量線の選択入力を受け、この選択入力に応じて記憶部内のキャリブレーションデータを検索して表示することにより、利用者が表示する検量線を任意に選択することができる。
【0036】
さらに、本実施の形態1によれば、利用者は検量線の形状の比較を同じ画面上で容易に行うことができるため、キャリブレーションデータの異常判定を行う際の負担が大幅に軽減される。この結果、利用者による検量線の異常判定の精度が向上し、結果的に自動分析装置におけるキャリブレーションデータの信頼性を一段と向上させることが可能となる。
【0037】
なお、表示部22で表示する検量線の数は3本以上でもよい。換言すれば、本実施の形態1では、基本データに対して2つ以上の比較データを選択できるようにしてもよい。
【0038】
また、キャリブレーションデータを選択する際には、分析日時だけでなく、キャリブレーション分析に用いた試薬ロットの情報や試薬ボトルの情報、あるいはキャリブレーション用検体のロット(キャリブレータロット)の情報などを選択条件として加えることも可能である。
【0039】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、自動分析装置が、予め設定された表示条件にしたがって自動的に複数の検量線を表示することを特徴とする。本実施の形態2に係る自動分析装置の構成は、上記実施の形態1に係る自動分析装置1の構成とほぼ同じである(図1を参照)が、制御部23の検索部232の検索処理と記憶部24で記憶する内容は、上記実施の形態1と異なる。
【0040】
図5は、本実施の形態2に係る自動分析装置の検量線表示方法の処理の概要を示すフローチャートである。図5では、利用者が、入力部21から表示すべき分析項目を選択入力した後に行われる処理の概要を示している。
【0041】
図5において、制御部23の検索部232が、指定された分析項目のキャリブレーションデータを、所定の検索条件に基いて記憶部24から検索する(ステップS1)。この際の検索条件は、分析項目によって異なる。このため、記憶部24は、分析項目と検索条件とを対応付けて記憶している。また、検索部232は、分析項目に応じた検索条件を記憶部24から読み出し、この読み出した検索条件に基いてキャリブレーションデータの検索を行う。
【0042】
ここで、検索条件について説明する。例えば、試薬ロットごとの検量線が必要な分析項目の場合、同一試薬ロットの検量線を重ねて表示すべきである。したがって、このような分析項目の検量線の検索条件は、「同一試薬ロット」とするのが好ましい。これに対して、試薬ボトルごとの検量線が必要な分析項目の場合には、同一試薬ボトルの検量線を重ねて表示すべきなので、検索条件は「同一試薬ボトル」とするのが好ましい。また、試薬ロットや試薬ボトルに応じた検量線を作成する必要がない分析項目の場合には、特別な検索条件を課す必要はない。他にも、前述した試薬に関する情報と並立可能な検索条件として、「同一キャリブレータロット」を採用することもできる。
【0043】
ステップS1で検索部232が検索した結果、選択された分析項目のキャリブレーションデータが得られた場合(ステップS2,Yes)、取得したキャリブレーションデータの数ncが、表示部22で重ねて表示する検量線の本数N以下であれば(ステップS3,Yes)、表示部22は取得したキャリブレーションデータに対応する検量線を全て表示する(ステップS4)。他方、取得したキャリブレーションデータの数ncが、表示部22で重ねて表示する検量線の本数Nよりも多ければ(ステップS3,No)、表示部22は所定の表示条件にしたがってキャリブレーションデータを取捨選択し、残ったキャリブレーションデータに対応する検量線を表示する(ステップS5)。ここでいう「表示条件」には、検索部232における検索条件と対応する条件、重ねて表示する検量線の本数N、キャリブレーションデータを取捨選択する際の条件などが含まれる。このうち、キャリブレーションデータを取捨選択する際の条件として、例えば最新のキャリブレーションデータから新しい順に選択するという条件を採用することができる。
【0044】
なお、ステップS1で検索部232が検索した結果、選択された分析項目のキャリブレーションデータが得られなかった場合(ステップS2,No)には、表示部22が検量線表示画面41のグラフ42上に「キャリブレーションデータなし」と表示し(ステップS6)、一連の処理を終了する。
【0045】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、キャリブレーション分析を行うことによって作成した同一の分析項目に対する複数の異なる検量線を一つの画面上で重ねて表示することにより、利用者が同一の分析項目に対する検量線の形状の経時的な変化を容易に確認することができ、検量線の異常判定を的確に行うことができる。
【0046】
また、本実施の形態2によれば、分析項目に応じて定められた検量線の表示条件に基いて記憶部内のキャリブレーションデータを検索し、この検索によって得られた複数の検量線を表示することにより、分析項目ごとに最適な検量線の表示を行うことができる。
【0047】
さらに、本実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様、利用者がキャリブレーションデータの異常判定を行う際の負担が大幅に軽減され、結果的に自動分析装置におけるキャリブレーションデータの信頼性を一段と向上させることが可能となる。
【0048】
(実施の形態2の変形例)
本実施の形態2の一変形例は、利用者が表示部22における表示条件の設定を行うことが可能な構成を有する。図6は、この一変形例において、表示部22が表示する表示条件設定画面の例を示す図である。同図に示す表示条件設定画面61において、利用者は、分析項目を表示する分析項目表示部62の右側に設けられている選択用ボタン63をクリックし、分析項目表示部62に表示された複数の候補の中から所望の分析項目を選択する。図6では、分析項目としてアルブミン(ALB)が選択されている。
【0049】
表示条件設定画面61には、分析項目に関する表示条件として、「同一試薬ロット」、「同一試薬ボトル」、「同一キャリブレータロット」、「指定なし」の4つの条件が表示されている。利用者は、各表示条件記載箇所の左側にそれぞれ設けられているボックス64a〜64dの中で所望の表示条件に対応するボックスをクリックすることにより、分析項目に関する表示条件を選択する。図6では、分析項目に関する表示条件として、「同一試薬ロット」が選択されている。
【0050】
上述した4つの条件は、検索部232における検量線の検索条件に対応している。この意味で、本変形例においては、利用者が表示条件を設定することによって、検索部232の検索条件も変更される。
【0051】
表示条件設定画面61において、利用者が、表示部22で重ねて表示する検量線の本数Nを設定する際には、検量線本数表示部65の右側に設けられている選択用ボタン66をクリックし、検量線本数表示部65に表示された複数の候補の中から所望の本数を選択する。図6では、Nの値として「3」が選択されている。
【0052】
利用者が、以上説明した表示条件設定処理を完了する場合には、OKボタン67をクリックする。これに対して、利用者が表示条件設定処理をキャンセルする場合には、キャンセルボタン68をクリックする。
【0053】
なお、分析項目に応じた表示条件のデフォルト値を予め記憶部24で記憶しておき、利用者が所望の分析項目を選択したとき、表示条件設定画面61のボックス64a〜64dのうち、デフォルト値に相当するボックスに対して自動的にチェックが付加されるようにしてもよい。また、キャリブレーションデータの数ncが、表示部22で重ねて表示する検量線の本数Nを超えた場合(nc>N)の検量線の選択条件を、利用者が入力部21から設定入力できるようにしてもよい。
【0054】
以上説明した本実施の形態2の一変形例によれば、利用者が表示条件を設定可能な構成とすることにより、利用者のニーズに応じた検量線の表示を行うことができる。
【0055】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための最良の形態として、実施の形態1および2を詳述してきたが、本発明はそれら2つの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、本発明において表示部が検量線を表示する際には、最初に1本の検量線(基本データに対応)のみを表示しておき、入力部からの入力に応じて複数の検量線を重ねて表示するようにしてもよい。図7は、この場合の検量線表示画面の初期状態の表示例を示す図である。同図に示す検量線表示画面71には、横軸が濃度値、縦軸が測光値を表すグラフ72、グラフ72で検量線を複数表示する際に選択する複数表示ボタン73、および検量線表示画面71の表示をキャンセルするキャンセルボタン74が表示されている。図7のグラフ72には、1本の検量線のみ表示されているが、利用者が複数表示ボタン73をクリックすると、図4に示すグラフ42と同様に、複数の異なる検量線が表示される。
【0056】
また、本発明において、表示部で重ねて表示した複数の検量線の形状が顕著に異なる場合には、検量線表示画面上で異常が発生したことを報知する内容の表示を行うようにしてもよい。この場合、検量線の形状の差異を判定する判定基準は、分析項目に応じて適宜定めればよい。
【0057】
さらに、本発明は、免疫学的な分析や遺伝学的な分析を行う自動分析装置に対して適用することも可能である。
【0058】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置要部の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の表示部における検量線表示画面の初期状態の表示例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の表示部におけるデータ選択画面の表示例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の検量線表示方法における検量線の表示例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る自動分析装置の検量線表示方法の処理の概要を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2の一変形例に係る自動分析装置の表示部における表示条件設定画面の表示例を示す図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る自動分析装置の表示部における検量線表示画面の初期状態の表示例を示す図である。
【図8】従来法による検量線の経時的変化の表示例を示す図である。
【0060】
1 自動分析装置
11 検体移送部
12 検体容器保持部
13 試薬容器保持部
14 反応容器保持部
15 検体分注部
16 試薬分注部
17 攪拌部
18 測光部
19 反応容器洗浄部
21 入力部
22 表示部
23 制御部
24 記憶部
31、33 検体容器
32 ラック
34 試薬容器
35 反応容器
41、71 検量線表示画面
51 データ選択画面
52、55 分析日時表示部
61 表示条件設定画面
62 分析項目表示部
65 検量線本数表示部
101 測定ユニット
102 データ処理ユニット
151、161 プローブ
152、162 アーム
153、163 プローブ洗浄部
231 演算部
232 検索部
C1、C2 検量線
CR1、CR2、CR3 情報コード読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、
当該自動分析装置がキャリブレーション分析を行うことによって作成した同一の分析項目に対する複数の異なる検量線を重ねて表示する表示手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記キャリブレーション分析の分析結果を記憶する記憶手段と、
前記表示手段で表示すべき検量線を前記記憶手段から検索する検索手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記表示手段で表示すべき検量線の選択入力を受ける入力手段をさらに備え、
前記検索手段は、前記入力手段が受けた選択入力に応じて検索を行うことを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記検索手段は、
前記分析項目に応じて定められた検量線の表示条件に基いて検索を行うことを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記検量線の表示条件の設定入力を受ける入力手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
検体と試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析する自動分析装置が、キャリブレーション分析を行うことによって作成した検量線を表示する自動分析装置の検量線表示方法であって、
同一の分析項目に対する複数の異なる検量線を重ねて表示することを特徴とする自動分析装置の検量線表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−122316(P2008−122316A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309023(P2006−309023)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】