説明

自動分析装置とその分析終了予定時刻算出方法

【課題】実際に供給された分析対象の検体の分析終了予定時刻を告知することが可能な自動分析装置とその分析終了予定時刻算出方法を提供すること。
【解決手段】複数のラック3に保持された複数の検体容器3aから順次反応容器8へ分注された検体と試薬が反応した反応液の特性をもとに検体を分析する自動分析装置1とその分析終了予定時刻算出方法。自動分析装置1は、検体容器3a又はラック3に付された検体記録媒体から検体の分析項目を含む検体情報を読み取る情報読取装置5と、情報読取装置が読み取った検体情報をもとに分析終了予定時刻を算出する演算部21bとを備え、情報読取装置が読み取った検体情報をもとに分析開始前に分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置とその分析終了予定時刻算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、いわゆる割り込み検体や緊急検体を除き、ラックに保持して供給される検体容器に採取された検体を供給順に分析している。このとき、ユーザーの便宜を考慮して分析終了時刻を知る機能を備えた分析システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−124782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された分析システムは、ホストコンピュータから提供される検体の分析依頼情報をもとに分析終了予定時間を算出している。このため、特許文献1の分析システムは、分析依頼情報中の検体が実際に供給されなかった場合には、算出した分析終了予定時間が変わってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、実際に供給された分析対象の検体の分析終了予定時刻を告知することが可能な自動分析装置とその分析終了予定時刻算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、複数のラックに保持された複数の検体容器から順次反応容器へ分注された検体と試薬が反応した反応液の特性をもとに前記検体を分析する自動分析装置であって、前記検体容器又は前記ラックに付された検体記録媒体から前記検体の分析項目を含む検体情報を読み取る情報読取手段と、前記情報読取手段が読み取った前記検体情報をもとに分析終了予定時刻を算出する演算手段と、を備え、前記情報読取手段が読み取った前記検体情報をもとに分析開始前に分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、算出した前記分析終了予定時刻を告知する告知手段を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記自動分析装置は、前記ラックをセットし、検体分注位置へ搬送する搬送手段へ送り出すラックセット部と、検体の分注を終えた前記ラックを一時的に収容するバッファ部と、分析が終了したラックを回収するラック回収部と、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置の分析終了予定時刻算出方法は、複数のラックに保持された複数の検体容器から順次反応容器へ分注された検体と試薬が反応した反応液の特性をもとに前記検体を分析する自動分析装置の分析終了予定時刻算出方法であって、分析対象となる前記検体容器又は前記ラックに付された検体記録媒体から前記検体の分析項目を含む検体情報を分析開始前に読み取る情報読取工程と、を含み、前記検体情報をもとに分析開始前に分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析装置の分析終了予定時刻算出方法は、上記の発明において、算出した前記分析終了予定時刻を告知する告知工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、読み取った検体情報をもとに分析開始前に分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出するので、実際に供給された分析対象の検体の分析終了予定時刻を分析開始前に知ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の自動分析装置とその分析終了予定時刻算出方法にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置の概略構成を示す平面図である。図2は、自動分析装置の検体移送機構を拡大した平面図である。図3は、検体移送機構によって搬送されるラックの斜視図である。
【0013】
自動分析装置1は、図1に示すように、検体移送機構2、分析処理部6及びデータ処理部20を備えている。
【0014】
検体移送機構2は、例えば、ベルトコンベアから構成され、図1に示すように、複数の検体容器3aを保持したラック3を検体分注位置Psへ搬送すると共に、検体の分注を終えたラック3を回収する。検体移送機構2は、図2に示すように、ラックセット部2a、ラック搬送部2b、バッファ部2c、戻し搬送部2d、再検ラック移送部2e、再検レーン部2f及びラック回収部2gを有している。
【0015】
ラックセット部2aは、図2に示すように、ラック3をセットし、検体分注位置Psへ搬送するラック搬送部2bへ送り出す。ラック搬送部2bは、ラック3をラックセット部2aから検体分注位置Psを通ってバッファ部2cへ搬送する。バッファ部2cは、検体分注位置Psにおける検体の分注を終えたラック3を一時的に収容する。戻し搬送部2dは、再検ラック移送部2e、ラック回収部2g及びラックセット部2aに沿って配置され、ラック3を再検ラック移送部2e、ラック回収部2g或いはラックセット部2aへ搬送する。再検ラック移送部2eは、バッファ部2cから送り出されてくる再検対象のラック3を再検レーン部2fへと搬送する。再検レーン部2fは、ラック3を搬送して保持した再検対象の検体容器3aを再検分注位置Psrまで移動させる。検体を再検分注したラック3は、再検レーン部2fを戻された後、再検ラック移送部2e、戻し搬送部2dを経てラック回収部2gへ回収される。ラック回収部2gは、バッファ部2cから送り出され、戻し搬送部2dを搬送されてくる再検対象外のラック3を回収する。
【0016】
ラック3は、採血管等の検体を保持した検体容器3aを複数搭載し、ラック搬送部2b上の検体分注位置Psにおいて検体分注装置9によって検体容器3aから検体が吸引される。ここで、ラック3は、図3に示すように、端面に他のラック3と識別するラック記録媒体としてラック情報を記録したバーコードラベルやRFID或いはIDコード、2次元コード等のラック情報記録媒体3bが貼付されている。また、検体容器3aには、検体を識別する検体記録媒体として検体情報を記録したバーコードラベルやRFID或いはIDコード、2次元コード等の検体情報記録媒体3cが側面に貼付されている。ここで、ラック情報記録媒体3bと検体情報記録媒体3cは、どちらか一方だけの場合もある。ラック情報記録媒体3bは、ラックセット部2aと再検レーン部2fとの間に設置した情報読取装置4によってラック情報が読み取られ、検体情報記録媒体3cは、ラックセット部2aの側部に設置した情報読取装置5によって検体情報が読み取られる。情報読取装置4,5は、読み取ったラック情報や検体情報をデータ処理部20へ出力する。
【0017】
ここで、ラック情報や検体情報には必ずしも分析依頼情報が含まれているとは限らない。このため、このような場合、制御部21は、上位のホストコンピュータへ問い合わせ、ラックID又は検体IDをキーにしてそれぞれに対応した分析依頼情報を取得するか、予め制御部21に入力されているラックID,検体ID及び分析依頼情報をもとに検索して各ラック上の検体IDとそれに対応した分析依頼情報を特定する。これらは、制御部21(後述)が、状況に応じて適宜選択して実行する。
【0018】
分析処理部6は、図1に示すように、反応槽7、検体分注装置9、第1試薬保冷庫10、第1試薬分注装置11、第2試薬保冷庫12、第2試薬分注装置13、撹拌装置14、測光部15及び洗浄部16を備えている。
【0019】
反応槽7は、図1に示すように、複数の反応容器8を保持して回転するキュベットホイールを有しており、検体分注位置Psの検体容器3aから反応容器8に検体が分注される。前記キュベットホイールは、加温装置(図示せず)によって一定温度(=略37℃)に保温されている。
【0020】
検体分注装置9は、図1に示すように、検体移送機構2と反応槽7との間に配置されており、上下方向への昇降と水平方向への回動をする分注アーム9aに保持される分注プローブによって検体分注位置Psの検体容器3aから反応容器8に検体を分注する。
【0021】
第1試薬保冷庫10は、図1に示すように、放射状に仕切られた内部に複数の第1試薬容器10aを収容し、所定温度に保冷している。第1試薬容器10aは、検査項目に応じた所定の第1試薬が満たされ、外面には収容した第1試薬の種類,ロット番号及び有効期限等の試薬情報を記録したバーコードラベルやRFID等の情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。第1試薬保冷庫10の外側には、第1試薬容器10aに貼付した前記情報記録媒体から試薬情報を読み取り、制御部21へ出力する情報読取装置10bが設置されている。
【0022】
第1試薬分注装置11は、図1に示すように、反応槽7と第1試薬保冷庫10との間に配置されており、上下方向への昇降と水平方向への回動をする分注アーム11aに保持される分注プローブによって第1試薬容器10aから反応容器8に第1試薬を分注する。
【0023】
第2試薬保冷庫12は、放射状に仕切られた内部に第2試薬を保持した第2試薬容器12aを収容し、所定温度に保冷している。第2試薬容器12aは、第1試薬容器10aと同様に、試薬情報を記録したバーコードラベルやRFID等の情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。第2試薬保冷庫12の外側には、第2試薬容器12aに貼付した前記情報記録媒体から試薬情報を読み取り、制御部21へ出力する情報読取装置12bが設置されている。
【0024】
第2試薬分注装置13は、図1に示すように、反応槽7と第2試薬保冷庫12との間に配置されており、上下方向への昇降と水平方向への回動をする分注アーム13aに保持される分注プローブによって第2試薬容器12aから反応容器8に第2試薬を分注する。
【0025】
撹拌装置14は、反応容器8内の液体を、例えば、撹拌棒によって撹拌する。測光部15は、反応容器8内の液体を透過する光の光量を測定し、測定した光量に対応する測定信号を制御部21へ出力する。洗浄部16は、測光部15による測定が終了した反応容器8を洗剤や洗浄水によって洗浄し、乾燥させる。
【0026】
データ処理部20は、図1に示すように、制御部21、入力部22及び表示部23を有している。
【0027】
制御部21は、例えば、分析結果を記憶する記憶機能等を備えたマイクロコンピュータ等が使用され、検体移送機構2及び分析処理部6の各構成部並びに入力部22や表示部23と接続されて、自動分析装置1の各部の作動を制御する。特に、制御部21は、情報読取装置4,5が読み取ったラック情報や検体情報をもとに前記コンベアによるラック3の搬送を制御する。制御部21は、図1に示すように、分析部21aと演算部21bを有している。
【0028】
分析部21aは、ホストコンピュータから入力される検体や試薬の識別番号、第1試薬保冷庫10及び第2試薬保冷庫12における第1試薬容器10a及び第2試薬容器12aの配置位置、分析項目、再検の要否等、分析に関連する情報を記憶する。また、分析部21aは、測光部15が測光した光量に基づいて求められる反応容器8内の反応液の吸光度(光学的特性)から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を記憶する。
【0029】
演算部21bは、情報読取装置5が読み取った総ての検体容器3aについての検体情報をもとに分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出する。このとき、演算部21bは、各検体容器3aについて分析項目毎に要する時間を総ての検体について総計した時間から分析終了予定時刻を算出する。この算出に際し、検体情報に分析項目が含まれていない場合、演算部21bは、制御部21が取得又は特定した分析項目の情報を利用して分析終了予定時刻を算出する。また、演算部21bは、分析開始前に算出するのであるから、再検に要する時間は含まれてなく、算出されるのは概略の分析終了予定時刻である。
【0030】
入力部22は、制御部21へ検体数や分析項目等の入力操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。
【0031】
表示部23は、分析結果を含む分析内容や演算部21bが算出した分析終了予定時刻等を表示する告知手段を兼ねる出力部であり、ディスプレイパネル等が使用される。ここで、表示部23は、音声によって分析終了予定時刻を告知してもよい。
【0032】
以上のように構成される自動分析装置1は、前記キュベットホイールによって周方向に沿って第1試薬の分注位置へ搬送されてくる反応容器8に第1試薬分注装置11によって第1試薬容器11aから第1試薬が順次分注される。第1試薬が分注された反応容器8は、前記キュベットホイールによって周方向に沿って搬送され、検体分注装置9によって検体分注位置Psに搬送されてくる検体容器3aから順次検体が分注される。
【0033】
そして、検体が分注された反応容器8は、前記キュベットホイールによって第2試薬の分注位置へ搬送され、反応容器8に第2試薬分注装置13によって第2試薬容器12aから第2試薬が順次分注される。この間、反応容器8は、分注された試薬や試薬と検体が撹拌装置14によって撹拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液は、前記キュベットホイールが再び回転したときに測光部15を通過し、分析部21aによって反応容器8内の検体と試薬の反応液の吸光度(光学的特性)から検体の成分濃度等が分析される。また、分析が終了した反応容器8は、洗浄部16において洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0034】
この検体の分析に際し、ラック3は、図2に矢印で示すように、ラックセット部2a→ラック搬送部2b→バッファ部2c→戻し搬送部2d→ラック回収部2gと検体移送機構2を搬送される。但し、再検の場合、ラック3は、図2に点線の矢印で示すように、途中の戻し搬送部2dから再検ラック移送部2e→再検レーン部2f→再検ラック移送部2e→戻し搬送部2dと搬送された後、ラック回収部2gへ回収される。
【0035】
一方、自動分析装置1は、検体の分析動作開始前に分析対象となる検体の分析終了予定時刻を演算するときは、以下のようにして検体移送機構2のラックセット部2aにセットされるラック3を検体分注位置Psで停止させて検体を分注することなく搬送する。即ち、自動分析装置1は、図5に矢印で示すように、ラック3をラックセット部2a→ラック搬送部2b→バッファ部2c→戻し搬送部2d→ラックセット部2aと空回しするように搬送する。
【0036】
この間に情報読取装置4によってラック3に貼付されたラック情報記録媒体3bからラック情報を読み取ると共に、情報読取装置5によって検体容器3aに貼付された検体情報記録媒体3cから検体情報を読み取り、データ処理部20へ出力する。演算部21bは、このようにして情報読取装置5が読み取った総ての検体容器3aについての検体情報をもとに分析対象の検体の分析終了予定時刻を演算する。算出した分析終了予定時刻は、表示部23に表示して告知される。
【0037】
この分析終了予定時刻の算出において制御部21が実行する本発明の自動分析装置の分析終了予定時刻算出方法を図4に示すフローチャートを参照して以下に説明する。以下においては、情報読取装置5が読み取った検体情報中に分析項目の情報が含まれているものとして説明する。
【0038】
先ず、制御部21は、入力部22から入力される分析終了予定時刻算出指示の制御信号を受けて検体移送機構2を駆動する(ステップS100)。これにより、検体移送機構2を制御してラックセット部2aにセットされた総てのラック3が、ラック搬送部2b、バッファ部2c及び戻し搬送部2dを通って搬送された後、ラックセット部2aへ戻される。
【0039】
前記ラック3の搬送により、情報読取装置4,5が、ラック3に貼付されたラック情報記録媒体3bやラック3が保持した検体容器3aに貼付された検体情報記録媒体3cからラック情報や検体情報を読み取る。制御部21は、このようにして読み取った総ての検体容器3aについての検体情報を情報読取装置5から取得する(ステップS102)。
【0040】
次いで、制御部21は、総ての検体容器3aについて取得した検体情報をもとに演算部21bに分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出させる(ステップS104)。そして、制御部21は、演算部21bが算出した分析終了予定時刻を告知する(ステップS106)。この告知は、表示部23に表示することによって行う。この場合、演算部21bは、先に分析対象の検体を分析に要する時間を計算するので、分析所要時間を表示部23に表示させることも可能である。
【0041】
このようにして、自動分析装置1は、分析開始前に分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出する。このため、自動分析装置1は、実際に供給された分析対象となる検体の分析終了予定時刻を分析開始前に告知することができる。また、自動分析装置1は、分析開始前に分析対象となる総ての検体の検体情報を取得し、検体は供給順に分析されるので、特定の検体や特定の検体の特定分析項目を入力することによってこれらの分析終了予定時刻を個別に告知することも可能である。
【0042】
(実施の形態2)
次に、本発明の自動分析装置にかかる実施の形態2について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1は、単一の自動分析装置であったのに対し、実施の形態2は、自動分析装置を複数組み合わせた多ユニット分析装置に関するものである。図6は、実施の形態2の多ユニット分析装置の概略構成を示す平面図である。図7は、実施の形態2の多ユニット分析装置の検体移送機構を拡大した平面図である。ここで、以下の説明においては、実施の形態1の自動分析装置1と同一の構成要素には原則として同一の符号を使用している。
【0043】
多ユニット分析装置30は、複数の分析装置を連結したもので、図6に示すように、検体移送機構2、搬送機構34に沿って並列して設けられる分析装置31及び自動分析装置1A〜1C、中央制御装置33及び搬送機構34を備えており、図示しない入力部によって入力操作が行われる。
【0044】
検体移送機構2は、図6及び図7に示すように、分析装置31及び自動分析装置1A〜1Cと共に並列して設けられており、ラックセット部2a、ラック搬送部2b、バッファ部2c及びラック回収部2gを有している。このとき、検体移送機構2は、バッファ部2c、ラック回収部2g及びラックセット部2aの順に配列されると共に、ラックの搬送方向両側にラック搬送部2bと戻し搬送部2dが配置されている。また、検体移送機構2は、一側にラック3の端面に貼付したラック情報記録媒体3bからラック情報を読み取る情報読取装置4が設置され、ラック回収部2gの側部に検体容器3aに貼付した検体情報記録媒体3cから検体情報を読み取る情報読取装置5が設置されている。この情報読取装置5が読み取る検体情報は、分析終了予定時刻の演算に使用される。検体移送機構2は、ラック搬送部2bに隣接してレーンチェンジャ2hが設けられている。レーンチェンジャ2hは、ラック搬送部2bから追い越しレーン34aへ搬送されるラック3を搬送レーン34bに変更し、或いは戻しレーン34cによって分析装置31や自動分析装置1A〜1Cにおける分析を終えて戻されてくるラック3をバッファ部2cへと移送する。ここで、実施の形態2の多ユニット分析装置30においては、検体移送機構2は、搬送機構34と共に搬送制御部32によって制御される。このため、情報読取装置4,5が読み取ったラック情報や検体情報は、中央制御装置33の他に搬送制御部32へ出力される。
【0045】
搬送制御部32は、例えば、マイクロコンピュータ等が使用され、中央制御装置33からの指示を受けてラックセット部2aから送り出されるラック3を追い越しレーン34aや搬送レーン34bに振り分け、自動分析装置1Cにおける分析処理が終了したラックを戻しレーン34cに戻すと共に、戻しレーン34cを搬送されてくるラック3をバッファ部2cを介してラック回収部2gへ回収する等の動作を制御する。
【0046】
このとき、搬送制御部32は、図7に示すように、演算部32aを有している。演算部32aは、実施の形態1の演算部21bと同様に、情報読取装置5が読み取った総ての検体容器3aについての検体情報をもとに分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出する。
【0047】
分析装置31及び自動分析装置1A〜1Cは、図6に示すように、搬送機構34に沿って並列して設けられ、中央制御装置33の制御の下に作動する。
【0048】
分析装置31は、電極法によって検体中の電解質を測定する自動分析装置であり、図6に示すように、検体分注装置31a、検体容器3aに貼付した検体情報記録媒体3cから検体情報を読み取る情報読取装置5及びユニット制御部31cを有している。そして、分析装置31は、追い越しレーン34aを臨む位置にラック3が搬送する検体容器3aに貼付した検体情報記録媒体3cから検体情報を読み取る情報読取装置5が設置されている。
【0049】
検体分注装置31aは、実施の形態1の検体分注装置9と同様に、回動、かつ、昇降可能なアームと、前記アームに支持される分注プローブを有しており、図6に示すように、追い越しレーン34a上と搬送レーン34b上にそれぞれ吸引位置S1bと吸引位置S1aが配置され、ラック3が保持した複数の検体容器3aから検体を順次吸引し、測定容器31bに吐出する。測定容器31bに吐出された検体は、ナトリウム,塩素,カリウム,カルシウム,無機リン等のイオンからなる電解質が測定される。情報読取装置5は、読み取った検体情報を中央制御装置33へ出力する。ユニット制御部31cは、CPU,RAM及びROM等により構成され、中央制御装置33からの指示を受けて検体分注装置31aを含む分析装置31全体の動作を制御する副制御部である。ユニット制御部31cは、分析装置31における測定項目,測定結果等を含む測定データを中央制御装置33へ出力する。
【0050】
自動分析装置1A〜1Cは、自動分析装置1Aが生化学項目を、自動分析装置1Bが免疫項目を、自動分析装置1Cが遺伝子項目を、それぞれ分析する実施の形態1と同じ自動分析装置である。自動分析装置1A〜1Cは、図6に示すように、搬送レーン34b上に吸引位置SAa〜SCaが配置され、追い越しレーン34a上に吸引位置SAb〜SCbが配置されている。
【0051】
自動分析装置1Aは、図6に示すように、情報読取装置5、反応槽7、検体分注装置9、第1試薬保冷庫10、第1試薬分注装置11、第2試薬保冷庫12、第2試薬分注装置13及び制御部21を備えており、自動分析装置1B,1Cも同様に構成されている。ここで、図示しないが、自動分析装置1A〜1Cは、実施の形態1の自動分析装置1と同様に、それぞれ撹拌装置14、測光部15及び洗浄部16を備えている。
【0052】
情報読取装置5は、追い越しレーン34aや搬送レーン34bによって自動分析装置1Aへ搬送されてくるラック3が保持した検体容器3aに貼付した検体情報記録媒体3cから検体情報を読み取る。情報読取装置5は、読み取った検体情報を中央制御装置33へ出力する。反応槽7は、複数の反応容器8が同心円上に二重に配置されている。制御部21は、中央制御装置33からの指示を受けて自動分析装置1A全体の動作を制御する。制御部21は、自動分析装置1Aにおける測定項目,測定結果等を含む測定データを中央制御装置33へ出力する。
【0053】
ここで、自動分析装置1B,1Cは、高い分析精度を要求され、検体のキャリーオバーが厳しく制限されている。このため、自動分析装置1B,1Cは、分析装置31や自動分析装置1Aでの分析に先立って優先的に分析が実行されるように中央制御装置33によって制御する。
【0054】
中央制御装置33は、多ユニット分析装置30全体を制御するパーソナルコンピュータであり、入力部、表示部33a及び出力部を有している。前記入力部は、多ユニット分析装置30へ分析操作に関連した分析項目等を含む種々の情報を入力する、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部33aは、演算部32aが算出した分析終了予定時刻等を表示する他、多ユニット分析装置30での分析操作に関連した分析内容,分析結果或いは警報等の種々の情報を表示するものであり、ディスプレイパネル等が使用される。前記出力部は、表示部33aに表示される情報の他に分析結果等の種々の情報をプリントアウトするもので、例えば、プリンタ等が使用されるが、スピーカ等を使用した音声出力も可能である。中央制御装置33は、検体移送機構2の情報読取装置4から送られてくるラック情報に基づいてラック3を搬送すべき分析装置を決定し、決定した搬送先の分析ユニットを搬送機構34に指示する。また、中央制御装置33は、自動分析装置1A〜1Cの情報読取装置5が読み取った検体情報に基づき、ラック3が指示された正規の分析ユニットに搬送されているか否かを確認する。
【0055】
搬送機構34は、中央制御装置33からの指示を受けてラック3を搬送するベルトコンベアを使用した搬送装置である。搬送機構34は、図6に示すように、分析装置31と自動分析装置1A〜1Cの配列方向に沿って互いに並行して配置され、緊急検体や割り込み検体用のラック3を特定の分析ユニットに選択的に搬送する追い越しレーン34aと、ラック3を分析装置31と自動分析装置1A〜1Cに順次搬送する搬送レーン34bと、各分析ユニットに搬送後のラック3をバッファ部2cへ戻す戻しレーン34cとを有している。追い越しレーン34a及び搬送レーン34bは、間欠的に運転されてラック3をピッチ送りすることにより分析装置31と自動分析装置1A〜1Cの吸引位置S1a,S1b,SAa,SAb〜SCa,SCbに位置決めして順次停止させる。
【0056】
また、搬送機構34は、図6に示すように、吸引位置SAa,SAb〜SCa,SCbから見てラック3の搬送方向下流側に、追い越しレーン34a、搬送レーン34b及び戻しレーン34cを跨ってレーンチェンジャ35が設けられている。レーンチェンジャ35は、ラック3の搬送方向に対して直交する横方向にスライドし、ラック3を搬送するレーンを変更する。
【0057】
以上のように構成される多ユニット分析装置30は、検体移送機構2のラックセット部2aに検体容器3aを保持した複数のラック3をセットし、スイッチをオンすると、中央制御装置33の制御の下に、ラック3がラックセット部2aから順次送り出され、搬送機構34によってラック3が分析装置31や自動分析装置1A〜1Cへ搬送される。そして、多ユニット分析装置30は、搬送先の分析装置で測定容器31bや反応容器8内の検体が分析された後、搬送機構34に搬送されてラック3が検体移送機構2へ戻され、バッファ部2cで回収される。
【0058】
上述した検体の分析に際し、ラック3は、図7に矢印で示すように、ラックセット部2aからラック搬送部2bを経てレーンチェンジャ2hによって追い越しレーン34a或いは搬送レーン34bへ送り出され、検体の分析が終了すると、戻しレーン34cからレーンチェンジャ2hによってバッファ部2cへ移送され、戻し搬送部2dを経てラック回収部2gに回収される。但し、再検の場合、ラック3は、戻しレーン34cからバッファ部2cへ移送された後、図中点線の矢印で示すように、戻し搬送部2dを経てラックセット部2aへ戻される。そして、再検のラック3は、改めてラック搬送部2bによって追い越しレーン34aへ送り出され、分析装置31や自動分析装置1A〜1Cにおいて再検が実施される。
【0059】
一方、多ユニット分析装置30は、検体の分析動作開始前に分析対象となる検体の分析終了予定時刻を演算するときは、図8に示すように、ラック3をラックセット部2a→ラック搬送部2b→バッファ部2c→戻し搬送部2d→ラックセット部2aと空回しするように搬送する。
【0060】
多ユニット分析装置30は、この間にラック3に貼付されたラック情報記録媒体3bからラック情報を情報読取装置4によって読み取ると共に、情報読取装置5によって検体容器3aに貼付された検体情報記録媒体3cから検体情報を読み取り、制御部21へ出力する。演算部21bは、このようにして情報読取装置5が読み取った総ての検体容器3aについての検体情報をもとに分析対象の検体の分析終了予定時刻を演算する。算出した分析終了予定時刻は、表示部33aに表示される。
【0061】
多ユニット分析装置30は、上述のようにして分析開始前に分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出する。このため、多ユニット分析装置30は、実際に供給された分析対象となる検体の分析終了予定時刻を分析開始前に中央制御装置33の表示部33aに表示して告知することができる。また、多ユニット分析装置30は、分析開始前に分析対象となる総ての検体の検体情報を取得し、検体は供給順に決まった分析装置で分析されるので、特定の検体や特定の検体の特定分析項目を入力することによってこれらの分析終了予定時刻を個別に告知することも可能である。
【0062】
尚、上記各実施の形態は、情報読取装置5が読み取った総ての検体容器3aについての検体情報をもとに分析対象の検体の分析終了予定時刻を演算した。しかし、ラック3に付したラック情報記録媒体3bに検体情報記録媒体3cに記録された情報が記録されている場合、演算部21bは、情報読取装置4が読み取った検体情報をもとに分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態1の自動分析装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】自動分析装置の検体移送機構を拡大し、検体を分析する際のラックの搬送を示した平面図である。
【図3】検体移送機構によって搬送されるラックの斜視図である。
【図4】本発明の自動分析装置の分析終了予定時刻算出方法を説明するフローチャートである。
【図5】実施の形態1の自動分析装置における検体の分析終了予定時刻を演算するときの検体移送機構によるラックの搬送を示す平面図である。
【図6】実施の形態2の多ユニット分析装置の概略構成を示す平面図である。
【図7】実施の形態2の多ユニット分析装置の検体移送機構を拡大した平面図である。
【図8】実施の形態2の多ユニット分析装置における検体の分析終了予定時刻を演算するときの検体移送機構によるラックの搬送を示す平面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 自動分析装置
1A〜1C 自動分析装置
2 検体移送機構
2a ラックセット部
2b ラック搬送部
2c バッファ部
2d 戻し搬送部
2e 再検ラック移送部
2f 再検レーン部
2g ラック回収部
2h レーンチェンジャ
3 ラック
3a 検体容器
3b ラック情報記録媒体
3c 検体情報記録媒体
4,5 情報読取装置
6 分析処理部
7 反応槽
8 反応容器
9 検体分注装置
10 第1試薬保冷庫
11 第1試薬分注装置
12 第2試薬保冷庫
13 第2試薬分注装置
14 撹拌装置
15 測光部
16 洗浄部
20 データ処理部
21 制御部
21a 分析部
21b 演算部
22 入力部
23 表示部
30 多ユニット分析装置
31 分析装置
32 搬送制御部
32a 演算部
33 中央制御装置
33a 表示部
33 中央制御装置
34 搬送機構
35 レーンチェンジャ
Ps 検体分注位置
Psr 再検分注位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラックに保持された複数の検体容器から順次反応容器へ分注された検体と試薬が反応した反応液の特性をもとに前記検体を分析する自動分析装置であって、
前記検体容器又は前記ラックに付された検体記録媒体から前記検体の分析項目を含む検体情報を読み取る情報読取手段と、
前記情報読取手段が読み取った前記検体情報をもとに分析終了予定時刻を算出する演算手段と、
を備え、前記情報読取手段が読み取った前記検体情報をもとに分析開始前に分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
算出した前記分析終了予定時刻を告知する告知手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記自動分析装置は、前記ラックをセットし、検体分注位置へ搬送する搬送手段へ送り出すラックセット部と、検体の分注を終えた前記ラックを一時的に収容するバッファ部と、分析が終了したラックを回収するラック回収部と、を少なくとも備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
複数のラックに保持された複数の検体容器から順次反応容器へ分注された検体と試薬が反応した反応液の特性をもとに前記検体を分析する自動分析装置の分析終了予定時刻算出方法であって、
分析対象となる前記検体容器又は前記ラックに付された検体記録媒体から前記検体の分析項目を含む検体情報を分析開始前に読み取る情報読取工程と、
前記情報読取手段が読み取った前記検体情報をもとに分析終了予定時刻を算出する演算工程と、
を含み、
前記検体情報をもとに分析開始前に分析対象の検体の分析終了予定時刻を算出することを特徴とする自動分析装置の分析終了予定時刻算出方法。
【請求項5】
算出した前記分析終了予定時刻を告知する告知工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の自動分析装置の分析終了予定時刻算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−145210(P2010−145210A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322042(P2008−322042)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】