説明

自動分析装置とその測光方法

【課題】同心円上に複数の反応容器を配列した複数列の反応容器を有していても測光手段が一つで済み、大型化を抑制することが可能な自動分析装置とその測光方法を提供すること。
【解決手段】複数列の同心円上に複数の反応容器が配列され、反応容器のそれぞれに分注される検体と試薬を反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置とその測光方法。各列の反応容器6は、それぞれ等しい中心角で周方向に沿って配置され、単一の光源15aと、単一の受光部15jと入射ファイバ15bと出射ファイバ15iとを有する測光部15を備え、複数列の光経路Lp1〜Lp3又は複数列の反応容器6は、単一の光源から出射された光が複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器に入射して光経路が形成されている場合には、他の列の反応容器では光経路が形成されないように円周方向に沿って変位させて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置とその測光方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬を反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置は、処理能力を大きくするため、複数の反応容器を二重の同心円上に配置した反応ディスクを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2−311765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された自動分析装置は、二重の同心円上に反応容器を複数配置している。このように、複数の同心円上に反応容器を複数配置する場合、自動分析装置は、各同心円のそれぞれに光源や受光部を有する測光手段を配置しなければならず、装置が大型化するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、同心円上に複数の反応容器を配列した複数列の反応容器を有していても測光手段が一つで済み、大型化を抑制することが可能な自動分析装置とその測光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、複数列の同心円上に複数の反応容器が配列され、前記反応容器のそれぞれに分注される検体と試薬を反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、前記各列の反応容器は、それぞれ等しい中心角で周方向に沿って配置され、単一の光源と、単一の受光部と、一端が前記光源と接続され、他端が前記反応容器の列数に対応して分岐し、前記各列の反応容器に個々に光を入射させる光分岐出射端を有する入射ファイバと、一端が前記受光部と接続され、他端が前記反応容器の列数に対応して分岐し、前記各列の反応容器を透過した光を受光する光分岐受光端を有し、前記各列の反応容器と前記単一の受光部との間を光学的に接続し、前記列毎に光経路を形成する出射ファイバとを有する測光手段を備え、前記複数列の光経路又は前記複数列の反応容器は、前記単一の光源から出射された光が前記複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器に入射して光経路が形成されている場合には、他の列の反応容器では光経路が形成されないように円周方向に沿って変位させて配置されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記複数列の光経路又は前記複数列の反応容器は、前記等しい中心角で周方向に沿って配置されている際の配置間隔をP、mを整数、nを前記反応容器の列の数としたとき、それぞれ円周方向に沿って(mP+P/n)変位されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記各列の反応容器の光の入射側又は出射側には、いずれか一列の反応容器を光が透過している場合に、他の列の反応容器の光の透過を遮断する大きさを有する測光窓が配置されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記入射ファイバの光分岐出射端又は前記出射ファイバの光分岐受光端は、前記複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器を光が透過している場合に、他の列の反応容器の光の透過を遮断するシャッタが設けられていることを特徴とする
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置の測光方法は、同心円上に複数の反応容器が配列され、前記複数列の反応容器のそれぞれに分注される検体と試薬を反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置の測光方法であって、単一の光源と、単一の受光部との間に前記列毎に光経路を形成し、前記単一の光源から出射された光が前記複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器に入射して光経路が形成されている場合には、他の列の反応容器では光経路が形成されないように前記各列からの光の入射タイミングをずらして測光することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の自動分析装置の測光方法は、上記の発明において、前記複数列の光経路又は前記複数列の反応容器は、等しい中心角で周方向に沿って配置され、前記反応容器の周方向に沿った配置間隔をP、mを整数、nを前記反応容器の列の数としたとき、それぞれ円周方向に沿って(mP+P/n)変位され、前記各列の反応容器へ入射する前記光の入射タイミングが1/nずつずれていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の自動分析装置の測光方法は、上記の発明において、前記各列の反応容器の光の入射側又は出射側には、いずれか一列の反応容器を光が透過している場合に、他の列の反応容器の光の透過を遮断する大きさを有する測光窓が配置されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置の測光方法は、上記の発明において、前記入射ファイバの光分岐出射端又は前記出射ファイバの光分岐受光端は、前記複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器を光が透過している場合に、他の列の反応容器の光の透過を遮断するシャッタが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数列の光経路又は複数列の反応容器は、単一の光源から出射された光が複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器に入射して光経路が形成されている場合には、他の列の反応容器では光経路が形成されないように円周方向に沿って変位させて配置しているので、同心円上に複数の反応容器を配列した複数列の反応容器を有していても測光手段が一つで済み、大型化を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の自動分析装置とその測光方法にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置の概略構成を示す平面図である。図2は、キュベットホイールを測光部で半径方向に沿って切断し、測光部の概略構成を示す断面図である。図3は、図2のキュベットホイールを測光窓を通る水平面で切断した断面を模式的に示す図である。
【0016】
自動分析装置1は、図1に示すように、検体移送機構2、分析処理部4及びデータ処理部20を備えている。
【0017】
検体移送機構2は、例えば、ベルトコンベアから構成され、図1に示すように、複数の検体容器3aを保持したラック3をラックセット部2aからラック搬送部2bを通って検体分注位置Psへ搬送すると共に、検体の分注を終えたラック3をバッファ部2c、戻し搬送部2dを通ってラック回収部2eに回収する。
【0018】
ラック3は、採血管等の検体を保持した検体容器3aを複数搭載し、ラック搬送部2b上の検体分注位置Psにおいて検体分注装置9によって検体容器3aから検体が吸引される。
【0019】
分析処理部4は、図1に示すように、キュベットホイール5、検体分注装置9、第1試薬保冷庫10、第1試薬分注装置11、第2試薬保冷庫12、第2試薬分注装置13、撹拌装置14、測光部15及び洗浄部16を備えている。
【0020】
キュベットホイール5は、図1に示すように、複数の反応容器6を凹溝状に形成されたホルダ5aに保持して回転し、検体分注位置Psの検体容器3aから反応容器6に検体が分注される。このとき、キュベットホイール5は、例えば、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4回転し、四周期で(1周−1反応容器)回転する。キュベットホイール5は、図2に示すように、三重の同心円のそれぞれに反応容器6を保持するホルダ5aが3列配列されており、支持部材7との間にベアリングBrが配置されている。
【0021】
各ホルダ5aは、図2に示すように、半径方向内周側と外周側に反応容器6の幅よりも直径を小さくした測光窓5bが形成されている。キュベットホイール5は、内周に設け内歯車5cが支持部材7に設置したモータ8の回転軸8aに取り付けられた歯車8bと噛合している。従って、キュベットホイール5は、モータ8によって回転される。また、キュベットホイール5は、加温装置(図示せず)によって一定温度(=略37℃)に保温されている。ここで、以下の説明において三重の同心円上のホルダ5aや反応容器6の列を区別する必要がある場合には、内側から順に第一列、第二列及び第三列と呼ぶこととする。
【0022】
反応容器6は、四角筒形状の容量が数μL〜数十μLと微量なキュベットであり、測光部15が出射した光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器6は、キュベットホイール5の各列のホルダ5aにそれぞれ等しい中心角で周方向に沿って配置されている。従って、各列の反応容器6は、各列の直径により、周方向に沿った配置間隔が第一列と第二列との間並びに第二列と第三列との間では僅かに異なる。但し、以下の説明においては、説明の便宜上、各列の反応容器6は、周方向に沿って等間隔に配置(配置間隔P)されているものとして説明する。
【0023】
検体分注装置9は、図1に示すように、検体移送機構2とキュベットホイール5との間に配置されており、上下方向への昇降と水平方向への回動をする分注アーム9aに保持される分注プローブによって検体分注位置Psの検体容器3aから反応容器6に検体を分注する。
【0024】
第1試薬保冷庫10は、図1に示すように、放射状に仕切られた内部に複数の第1試薬容器10aを収容し、所定温度に保冷している。第1試薬容器10aは、検査項目に応じた所定の第1試薬が満たされ、外面には収容した第1試薬の種類,ロット番号及び有効期限等の試薬情報を記録したバーコードラベルやRFID等の情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。第1試薬保冷庫10の外側には、第1試薬容器10aに貼付した前記情報記録媒体から試薬情報を読み取り、制御部21へ出力する情報読取装置10bが設置されている。
【0025】
第1試薬分注装置11は、図1に示すように、キュベットホイール5と第1試薬保冷庫10との間に配置されており、上下方向への昇降と水平方向への回動をする分注アーム11aに保持される分注プローブによって第1試薬容器10aから反応容器6に第1試薬を分注する。
【0026】
第2試薬保冷庫12は、放射状に仕切られた内部に第2試薬を保持した第2試薬容器12aを収容し、所定温度に保冷している。第2試薬容器12aは、第1試薬容器10aと同様に、試薬情報を記録したバーコードラベルやRFID等の情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。第2試薬保冷庫12の外側には、第2試薬容器12aに貼付した前記情報記録媒体から試薬情報を読み取り、制御部21へ出力する情報読取装置12bが設置されている。
【0027】
第2試薬分注装置13は、図1に示すように、キュベットホイール5と第2試薬保冷庫12との間に配置されており、上下方向への昇降と水平方向への回動をする分注アーム13aに保持される分注プローブによって第2試薬容器12aから反応容器6に第2試薬を分注する。
【0028】
撹拌装置14は、反応容器6内の液体を、例えば、撹拌棒によって撹拌する。
【0029】
測光部15は、反応容器6内の液体を透過した光の光量を測定し、測定した光量に対応する測光信号を制御部21へ出力する。測光部15は、図2に示すように、光源15a、入射ファイバ15b、入射側レンズ15c,15e、入射側反射鏡15d、出射側レンズ15f,15h、出射側反射鏡15g、出射ファイバ15i、受光部15j及び測定回路15kを有している。
【0030】
光源15aは、測定用の光を入射ファイバ15bへ出射する。入射ファイバ15bは、図2に示すように、一端が光源15aと接続され、他端が反応容器6の列数に対応して分岐し、各列の反応容器6に光を入射させる光分岐出射端15b1〜15b3を有している。入射側レンズ15c及び出射側レンズ15fは、三重の同心円上の反応容器6の各列に配置されている。入射側レンズ15c及び出射側レンズ15fは、コリメータレンズが使用され、入射側レンズ15e及び出射側レンズ15hは、集光レンズが使用されている。
【0031】
入射側反射鏡15dは、図2に示すように、出射側反射鏡15gと共に三重の同心円上の反応容器6の各列に配置されている。入射側反射鏡15dは、入射ファイバ15bによって伝送されてくる光を反射させて測光窓5bから反応容器6の側面に照射させる。このとき、測光窓5bの幅は、キュベットのピッチPを列数で割った値P/nよりも小さく形成する。また、反応容器6に入射する光束の幅は、この測光窓5bのサイズよりも小さく絞っている。出射側反射鏡15gは、反応容器6に保持された検体や試薬を含む液体試料Lqを透過してくる光を反射させ、出射側レンズ15fを介して出射ファイバ15iに入射させる。
【0032】
出射ファイバ15iは、図2に示すように、一端が受光部15jと接続され、他端が反応容器6の列数に対応して分岐し、各列の反応容器6を透過した光を受光する光分岐受光端15i1〜15i3を有している。出射ファイバ15iは、単一の光源15aと単一の受光部15jとの間を各列の反応容器6を介して光学的に接続する。この結果、第一列の反応容器6には第一光経路Lp1、第二列の反応容器6には第二光経路Lp2、第三列の反応容器6には第三光経路Lp3の複数列の光経路が形成される。
【0033】
このとき、図2に示す光分岐出射端15b1〜15b3、入射側レンズ15c,15e、入射側反射鏡15d、出射側レンズ15f,15h、出射側反射鏡15g及び光分岐受光端15i1〜15i3が形成する光経路Lp1〜Lp3は、mを整数、Pを各列の反応容器6の配置間隔とすると、nを反応容器6の列の数(=3)とすると、図3に示すように、周方向にP/3変位している。例えば、光経路Lp1〜Lp3は、第一列と第三列では周方向にP/3変位し、第二列と第三列では周方向に(P+P/3)(m=1)変位している。但し、第二列と第三列は、光がホルダ5aの壁に遮られ、光経路Lp2,Lp3は形成されない。
【0034】
このように、測光部15は、入射ファイバ15bと出射ファイバ15iを使用し、光経路Lp1〜Lp3をそれぞれ円周方向に沿って(mP+P/n)変位させ、キュベットホイール5は、各列の測光窓5bの幅をP/nよりも小さく形成している。このため、測光部15の測定回路15kは、各列の反応容器6を透過して入力される測光信号のタイミングを1/nずつずらして明確に区別して受信することができる。
【0035】
受光部15jは、反応容器6に保持された液体試料Lqを透過してくる光を受光し、受光量に対応した測光信号を測定回路15kへ出力する。測定回路15kは、受光部15jから入力される測光信号の予め設定された測光域Mの最大値(図6参照)を測定値としてA/D変換し、制御部21へ出力する。
【0036】
洗浄部16は、測光部15による測定が終了した反応容器6を洗剤や洗浄水によって洗浄した後、乾燥させる。
【0037】
データ処理部20は、図1に示すように、制御部21、入力部22及び表示部23を有している。
【0038】
制御部21は、例えば、分析結果を記憶する記憶機能等を備えたマイクロコンピュータ等が使用され、検体移送機構2及び分析処理部4の各構成部並びに入力部22や表示部23と接続されて、自動分析装置1の各部の作動を制御する。このとき、制御部21は、測光部15から入力される測光信号をもとに分析部21aによって検体の成分濃度等を分析し、分析結果を記憶する。
【0039】
入力部22は、制御部21へ検体数や検査項目等の入力操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。
【0040】
表示部23は、分析結果を含む分析内容を表示する出力部であり、ディスプレイパネル等が使用される。
【0041】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール5によって周方向に沿って第1試薬の分注位置へ搬送されてくる反応容器6に第1試薬分注装置11によって第1試薬容器11aから第1試薬が順次分注される。第1試薬が分注された反応容器6は、キュベットホイール5によって周方向に沿って搬送され、検体分注装置9によって検体分注位置Psに搬送されてくる検体容器3aから順次検体が分注される。
【0042】
そして、検体が分注された反応容器6は、キュベットホイール5によって第2試薬の分注位置へ搬送され、反応容器6に第2試薬分注装置13によって第2試薬容器12aから第2試薬が順次分注される。この間、反応容器6は、分注された試薬や試薬と検体が撹拌装置14によって撹拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液は、キュベットホイール5が再び回転したときに測光部15を通過し、分析部21aによって反応容器6内の検体と試薬の反応液の吸光度(光学的特性)から検体の成分濃度等が分析される。また、分析が終了した反応容器6は、洗浄部16において洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0043】
このとき、自動分析装置1は、3列の同心円上に複数の反応容器6が配列され、第一光経路Lp1〜第三光経路Lp3は、互いにP/3ずつ位置が変位している。このため、図3に示す位置からキュベットホイール5がP/3回転すると、図4に示すように、入射側反射鏡15d、入射側レンズ15e、出射側レンズ15f及び出射側反射鏡15gが第二列のホルダ5aの測光窓5bと対向して第二光経路Lp2が形成される。この結果、第二列の反応容器6に測光用の光が入射する。但し、ホルダ5aの側壁によって光の照射が遮断されるため、第一列や第三列の反応容器6には光経路は形成されない。
【0044】
次いで、図4に示す位置からキュベットホイール5が更にP/3回転すると、図5に示すように、入射側反射鏡15d、入射側レンズ15e、出射側レンズ15f及び出射側反射鏡15gが第三列のホルダ5aの測光窓5bと対向して第三光経路Lp3が形成される。この結果、第三列の反応容器6に測光用の光が入射する。但し、ホルダ5aの側壁によって光の照射が遮断されるため、第一列や第二列の反応容器6には光経路が形成されない。
【0045】
そして、図5に示す位置からキュベットホイール5が更にP/3回転すると、図3に示したように、入射側反射鏡15d、入射側レンズ15e、出射側レンズ15f及び出射側反射鏡15gが第一列のホルダ5aの測光窓5bと対向して第一光経路Lp1(図2参照)が形成される。この結果、第一列の反応容器6に測光用の光が入射する。
【0046】
以下、キュベットホイール5の回転に伴って、形成される光経路が第一光経路Lp1〜第三光経路Lp3の順に周期的に変化してゆく。このため、受光部15jは、第一列〜第三列の反応容器6に関する測光信号を、図6に示すように、時分割して測定回路15kへ出力する。
【0047】
このとき、測光部15は、入射ファイバ15bと出射ファイバ15iを使用し、光経路Lp1〜Lp3をそれぞれ円周方向に沿って(mP+P/n)変位させている。またキュベットホイール5は、図2に示すように、各測光窓5bの幅をP/nよりも小さく形成している。また、反応容器6に入射する光束の幅は、この測光窓5bのサイズよりも小さく絞っている。そして、測定回路15kは、受光部15jから入力される測光信号の予め設定された測光域Mの最大値(図6参照)を測定値としてA/D変換し、制御部21へ出力する。
【0048】
従って、測光部15の測定回路15kは、図6に示すように、各列の反応容器6を透過して受光部15jから入力される測光信号のタイミングを列の数nの1/n、即ち、本実施の形態では1/3ずつずらして明確に区別して受信することができる。
【0049】
このように、自動分析装置1は、キュベットホイール5に、同心円上に複数の反応容器6を配列した複数列の反応容器6を有していても測光部15が一つで済むので、装置の大型化を抑制することができる。特に、自動分析装置1は、測光部15の光伝送手段として入射ファイバ15bと出射ファイバ15iを使用しているので、測定に使用する光束の直径を小さくし、従ってキュベットホイール5の測光窓5bを小さくすることができる。また、自動分析装置1は、キュベットホイール5上に複数列の反応容器6を有し、キュベットホイール5は従来と同じ回転速度で使用するので、処理能力が従来装置よりも大きくなる。
【0050】
(実施の形態2)
次に、本発明の自動分析装置にかかる実施の形態2を、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1は、複数列の光経路を円周方向に沿って(mP+P/n)変位させた。これに対し、実施の形態2は、複数列の反応容器を円周方向に沿って(mP+P/n)変位させている。
【0051】
図7は、実施の形態2の自動分析装置において、第一列の反応容器に測光用の光が入射する際のキュベットホイール及び測光部を模式的に示す図である。尚、実施の形態2の自動分析装置は、実施の形態1と比べてキュベットホイールにおける複数列の反応容器が変位しているだけであるので、実施の形態1と同一構成要素には同一の符号を使用している。
【0052】
実施の形態2の自動分析装置は、図7に示すように、キュベットホイール5の複数列の反応容器6が円周方向に沿って(mP+P/n)変位させて配置されている。即ち、キュベットホイール5は、第一列〜第三列の各列の反応容器6が隣接する列の反応容器6に対してP/3(m=0)変位させて配置されている。このとき、図7は、入射側反射鏡15d、入射側レンズ15e、出射側レンズ15f、出射側反射鏡15gしか示していないが、入射ファイバ15b、入射側レンズ15c,15e、入射側反射鏡15d、出射側レンズ15f,15h、出射側反射鏡15g、出射ファイバ15iは、半径方向に沿って一直線上に配置されている。
【0053】
このとき、図7に示すように、入射側反射鏡15d、入射側レンズ15e、出射側レンズ15f及び出射側反射鏡15gは、第一列のホルダ5aの測光窓5bと対向している。このため、キュベットホイール5は、第一列のホルダ5aに保持された反応容器6を透過する第一光経路Lp1が形成され、第一列の反応容器6に測光用の光が入射する。但し、ホルダ5aの側壁によって光の照射が遮断されるため、第二列や第三列の反応容器6には光経路は形成されない。
【0054】
このため、図7に示す位置からキュベットホイール5がP/3回転すると、図8に示すように、入射側反射鏡15d、入射側レンズ15e、出射側レンズ15f及び出射側反射鏡15gが第二列のホルダ5aの測光窓5bと対向して第二光経路Lp2が形成される。この結果、第二列の反応容器6に測光用の光が入射する。但し、ホルダ5aの側壁によって光の照射が遮断されるため、第一列や第三列の反応容器6には光経路は形成されない。
【0055】
次いで、図8に示す位置からキュベットホイール5が更にP/3回転すると、図9に示すように、入射側反射鏡15d、入射側レンズ15e、出射側レンズ15f及び出射側反射鏡15gが第三列のホルダ5aの測光窓5bと対向して第三光経路Lp3が形成される。この結果、第三列の反応容器6に測光用の光が入射する。これにより、図9に示す場合、第三列の反応容器6に第三光経路Lp3(図2参照)が形成されるが、第一列や第二列の反応容器6には光経路が形成されない。
【0056】
そして、キュベットホイール5が図9に示す位置から更にP/3回転すると、図7に示したように、入射側反射鏡15d、入射側レンズ15e、出射側レンズ15f及び出射側反射鏡15gが第一列のホルダ5aの測光窓5bと対向して第一列の反応容器6に測光用の光が入射するようになり、第一光経路Lp1(図2参照)が形成される。
【0057】
以下、キュベットホイール5の回転に伴って、形成される光経路が第一光経路Lp1〜第三光経路Lp3の順に周期的に変化してゆき、図6に示したように、受光部15jは、第一列〜第三列の反応容器6に関する測光信号を、時分割して測定回路15kへ出力する。
【0058】
従って、測光部15の測定回路15kは、各列の反応容器6を透過して入力される測光信号のタイミングを1/3ずつずらして明確に区別して受信することができる。
【0059】
従って、実施の形態2の自動分析装置は、キュベットホイール5に、同心円上に複数の反応容器6を配列した複数列の反応容器6を有していても測光部15が一つで済むので、装置の大型化を抑制することができる他、実施の形態1の自動分析装置1と同様の効果を奏することができる。
【0060】
また、実施の形態1,2は、単一の光源15aと単一の受光部15jを有する測光部15によって複数の光経路を通った光を測定しているので、測定値を直接比較することができるうえ、測光部15が一つなので、キャリブレーションも三重の同心円の中の1列で行えば十分であり、キャリブレーションが容易になるうえ、装置コストを低減することもできる。
【0061】
ここで、実施の形態1,2は、各列における測光信号のタイミングをずらして測光する際、各列の測光窓5bの幅をP/nよりも小さく形成すると共に、各列の反応容器6に入射する光束の幅を測光窓5bのサイズよりも小さく絞ることにより、一つの列の反応容器で測定中に、他の列の反応容器で光経路が形成されないように、他の列の光の透過を遮断している。但し、測光窓5bのサイズ、光束の幅を小さくする代わりに、測光部15は、入射ファイバ15bや出射ファイバ15iの光分岐出射端又は光分岐受光端に光の透過を遮断するシャッタを設け、一つの列の反応容器で測定中に、他の列の反応容器で光経路が形成されないように、他の列の反応容器6への光の透過を遮断するようにしてもよい。
【0062】
この場合、入射ファイバ15bや出射ファイバ15iは、例えば、第1列の反応容器6に関して図示すると、図10に示すように、光分岐出射端15b1側にシャッタ15mを設けるか、或いは光分岐受光端15i1側にシャッタ15nを設ける。これにより、測光部15は、各列のシャッタ15m又はシャッタ15nを制御部21によって制御することで、第一光経路Lp1を遮断又は開放のいずれかに切り替え、いずれか一列の反応容器6を測光している場合に、他の列の反応容器6を透過した光が受光部15jに混入しないようにする。
【0063】
尚、上記実施の形態は、複数列の光経路又は複数列の反応容器が円周方向に沿って(mP+P/n)変位させて配置した場合について説明した。しかし、本発明においては、複数列の光経路又は前記複数列の反応容器が、単一の光源から出射された光が複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器に入射して光経路が形成されている場合に、他の列の反応容器では光経路が形成されないように円周方向に沿って変位させて配置されていればよい。このため、本発明は、複数列の光経路又は複数列の反応容器が円周方向に沿って(mP+P/n)変位させて配置される場合に限定されるものではない。
【0064】
また、本発明において、複数列の光経路又は前記複数列の反応容器を円周方向に沿って変位させる際の(mP+P/n)に関し、mPは測光部15の機械的配置スペースを確保したものであり、P/nは光の受光タイミングを考慮したものである。従って、測光部15を構成する構成要素の配置上のスペースが確保されるのであれば、mPの項は不要であり、複数列の光経路又は前記複数列の反応容器は、円周方向に沿ってP/nだけ変位させればよい。
【0065】
また、実施の形態1,2は、複数の反応容器6を同心円上に3列配列した場合について説明したが、反応容器6が同心円上に複数列配列されていれば2列であっても、或いは4列以上配列されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施の形態1の自動分析装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】キュベットホイールを測光部で半径方向に沿って切断し、測光部の概略構成を示す断面図である。
【図3】図2のキュベットホイールを測光窓を通る水平面で切断した断面を模式的に示す図である。
【図4】キュベットホイールが図3に示す位置からP/3回転した際の模式図である。
【図5】キュベットホイールが図4に示す位置からP/3回転した際の模式図である。
【図6】各列の反応容器を透過し、測光部の受光部から測定回路に入力されてくる測光信号のタイミングを示す図である。
【図7】実施の形態2の自動分析装置において、複数列の反応容器を円周方向に沿って(mP+P/n)変位させたキュベットホイール及び測光部を模式的に示す断面図である。
【図8】キュベットホイールが図7に示す位置からP/3回転した際の模式図である。
【図9】キュベットホイールが図8に示す位置からP/3回転した際の模式図である。
【図10】測光部の変形例の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 自動分析装置
2 検体移送機構
3 ラック
4 分析処理部
5 キュベットホイール
6 反応容器
7 支持部材
Br ベアリング
8 モータ
9 検体分注装置
10 第1試薬保冷庫
11 第1試薬分注装置
12 第2試薬保冷庫
13 第2試薬分注装置
14 撹拌装置
15 測光部
15b 入射光ファイバ束
15i 出射光ファイバ束
16 洗浄部
20 データ処理部
21 制御部
22 入力部
23 表示部
Lp1〜Lp3 光経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数列の同心円上に複数の反応容器が配列され、前記反応容器のそれぞれに分注される検体と試薬を反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、
前記各列の反応容器は、それぞれ等しい中心角で周方向に沿って配置され、
単一の光源と、単一の受光部と、一端が前記光源と接続され、他端が前記反応容器の列数に対応して分岐し、前記各列の反応容器に個々に光を入射させる光分岐出射端を有する入射ファイバと、一端が前記受光部と接続され、他端が前記反応容器の列数に対応して分岐し、前記各列の反応容器を透過した光を受光する光分岐受光端を有し、前記各列の反応容器と前記単一の受光部との間を光学的に接続し、前記列毎に光経路を形成する出射ファイバとを有する測光手段を備え、
前記複数列の光経路又は前記複数列の反応容器は、前記単一の光源から出射された光が前記複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器に入射して光経路が形成されている場合には、他の列の反応容器では光経路が形成されないように円周方向に沿って変位させて配置されていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記複数列の光経路又は前記複数列の反応容器は、前記等しい中心角で周方向に沿って配置されている際の配置間隔をP、mを整数、nを前記反応容器の列の数としたとき、それぞれ円周方向に沿って(mP+P/n)変位されていることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記各列の反応容器の光の入射側又は出射側には、いずれか一列の反応容器を光が透過している場合に、他の列の反応容器の光の透過を遮断する大きさを有する測光窓が配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記入射ファイバの光分岐出射端又は前記出射ファイバの光分岐受光端は、前記複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器を光が透過している場合に、他の列の反応容器の光の透過を遮断するシャッタが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項5】
同心円上に複数の反応容器が配列され、前記複数列の反応容器のそれぞれに分注される検体と試薬を反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置の測光方法であって、
単一の光源と、単一の受光部との間に前記列毎に光経路を形成し、前記単一の光源から出射された光が前記複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器に入射して光経路が形成されている場合には、他の列の反応容器では光経路が形成されないように前記各列からの光の入射タイミングをずらして測光することを特徴とする自動分析装置の測光方法。
【請求項6】
前記複数列の光経路又は前記複数列の反応容器は、等しい中心角で周方向に沿って配置され、前記反応容器の周方向に沿った配置間隔をP、mを整数、nを前記反応容器の列の数としたとき、それぞれ円周方向に沿って(mP+P/n)変位され、前記各列の反応容器へ入射する前記光の入射タイミングが1/nずつずれていることを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置の測光方法。
【請求項7】
前記各列の反応容器の光の入射側又は出射側には、いずれか一列の反応容器を光が透過している場合に、他の列の反応容器の光の透過を遮断する大きさを有する測光窓が配置されることを特徴とする請求項5又は6に記載の自動分析装置の測光方法。
【請求項8】
前記入射ファイバの光分岐出射端又は前記出射ファイバの光分岐受光端は、前記複数列の反応容器のいずれか一列の反応容器を光が透過している場合に、他の列の反応容器の光の透過を遮断するシャッタが設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の自動分析装置の測光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−145377(P2010−145377A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326507(P2008−326507)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】