説明

自動分析装置とその遺伝子情報管理方法

【課題】遺伝子情報の漏洩を防ぐことが可能な自動分析装置とその遺伝子情報管理方法を提供すること。
【解決手段】遺伝子検査項目の分析と、生化学検査項目又は免疫検査項目の分析を行う複数の分析ユニット4〜6を備え、ネットワーク80を介して管理装置90に接続される自動分析装置1とその遺伝子情報管理方法。自動分析装置1は、遺伝子検査項目、生化学検査項目又は免疫検査項目のいずれか一つの検査項目を選択する選択部10dと、選択部において選択した検査項目に応じて自動分析装置のネットワークへの接続又は切断の切り替えを行うインタフェース10jと、遺伝子検査項目を選択した場合に自動分析装置をネットワークから切断する承認の入力依頼を行う入力依頼部10eと、入力依頼部における切断承認の入力があった場合にインタフェースの切り替えを制御して自動分析装置をネットワークから切断する制御部10aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置とその遺伝子情報管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や尿等の成分を分析する自動分析装置は、ネットワークを介して管理サーバと接続し、管理サーバとの間で通信を行うことによって分析結果を含む分析データを含めた自動分析装置それ自体の管理に利用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−91117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動分析装置は、ネットワークを介して管理装置と接続した場合、ネットワークと接続された状態で分析データ等の情報を管理装置との間で送受信すると、侵入者がハブを介してアクセスすることにより情報を簡単に盗むことができる。しかも、この場合、自動分析装置のアクセス制限を掛けたデータ記憶手段、例えば、ハードディスクに侵入するよりも容易に情報を盗むことができる。このため、生化学検査項目や免疫検査項目の分析データに比べ、より機密性の高い遺伝子情報が漏洩すると深刻な問題が生じてしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、遺伝子情報の漏洩を防ぐことが可能な自動分析装置とその遺伝子情報管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る自動分析装置は、遺伝子検査項目の分析と、生化学検査項目又は免疫検査項目の分析を行う複数の分析ユニットを備え、ネットワークを介して管理装置に接続される自動分析装置において、前記遺伝子検査項目、生化学検査項目又は免疫検査項目のいずれか一つの検査項目を選択する選択手段と、前記選択手段において選択した検査項目に応じて当該自動分析装置の前記ネットワークへの接続又は切断の切り替えを行う切替手段と、前記遺伝子検査項目の分析を選択した場合に当該自動分析装置を前記ネットワークから切断する承認の入力依頼を行う入力依頼手段と、前記入力依頼手段における切断承認の入力があった場合に前記切替手段の切り替えを制御して当該自動分析装置を前記ネットワークから切断する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る自動分析装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記選択手段において前記遺伝子検査項目を選択後、予め設定した暗証符号を入力した場合に前記遺伝子検査項目の分析へ移行することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る自動分析装置は、上記の発明において、前記遺伝子検査項目を選択した場合に、前記切断の承認に先行して当該自動分析装置を前記ネットワークから切断する警告を発する警告手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る自動分析装置は、上記の発明において、精度管理の実行を指示する精度管理指示手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る自動分析装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記遺伝子検査項目の分析が終了した場合に、前記切替手段を制御して当該自動分析装置を前記ネットワークに接続することを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項6に係る自動分析装置の遺伝子情報管理方法は、遺伝子検査項目と、生化学検査項目又は免疫検査項目の分析を行う複数の分析ユニットを備え、ネットワークを介して管理装置に接続される自動分析装置の遺伝子情報管理方法であって、前記遺伝子検査項目、生化学検査項目又は免疫検査項目の分析のいずれか一つの分析を選択する選択工程と、前記遺伝子検査項目の分析を選択した場合に当該自動分析装置を前記ネットワークから切断する承認の入力依頼を行う入力依頼工程と、前記切断が承認された場合に、当該自動分析装置を前記ネットワークから切断する切断工程と、を含み、当該自動分析装置を前記ネットワークから切断した状態で前記遺伝子検査項目の分析を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動分析装置とその遺伝子情報管理方法は、自動分析装置をネットワークから切断した状態で遺伝子検査項目の分析を行うので、ネットワークを通じて第三者が外部から情報を盗むことができず、遺伝子情報の漏洩を確実に防ぐことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の自動分析装置とその遺伝子情報管理方法にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、ネットワークを介して管理装置へ接続される本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、遺伝子検査項目の分析を選択する一例を示す図であり、表示部に表示される画面を示す図である。図3は、遺伝子検査項目の分析を選択した場合の、自動分析装置の遺伝子情報管理方法を示すフローチャートである。
【0014】
自動分析装置1は、血液や尿等の検体中に含まれる特定物質の量を分析するもので、図1に示すように、サンプラ2、搬送装置11に沿って並列して設けられる分析ユニット3〜6、搬送制御部9、中央制御装置10及び搬送装置11を備えており、スイッチをオンした初期状態においてはネットワーク80を介して管理装置90へ接続される。ここで、管理装置90は、ネットワーク80を介して接続される複数の自動分析装置1を個々に管理するホストコンピュータである。
【0015】
サンプラ2は、分析ユニット3〜6と共に並列して設けられており、ラック供給部21、ラック回収部22及びラック収納部23を有している。ラック供給部21は、試料容器7を保持した複数のラック8がセットされる部分であり、ラック回収部22と共に中央制御装置10からの制御の下に作動し、これらのラック8を順次搬送装置11の追い越しライン12又は搬送ライン13に送り出す。ラック回収部22は、戻しライン14によって搬送されてくるラック8を回収してラック収納部23に搬送する。これにより、分析終了後の試料容器7を保持したラック8は、ラック収納部23に収納される。また、サンプラ2は、複数のラック8の搬送装置11への送り出し位置に情報読取装置24が設けられている。情報読取装置24は、サンプラ2から搬送装置11へ送り出されるラック8に貼付された前記情報記録媒体の情報を読み取り、読み取ったラック情報を中央制御装置10へ出力する。
【0016】
ここで、ラック8は、試料容器7を保持する複数の凹部が長手方向に沿って所定ピッチで形成され、搬送装置11によって搬送される。ラック8は、側面及び端面に情報読取装置24,33,48,58,68によって読み取られる識別指標として情報記録媒体が付されている。この情報記録媒体には、ラック8の種類,ラック番号及び各試料容器7に保持された検体の分析項目等を含むラック情報が記録されている。
【0017】
なお、ラック8に設ける識別指標としては、バーコードラベルの他に、電磁気的な情報の書込み,消去が可能な、例えば、ICタグのような記録媒体や、ラック8に設ける切欠き又はカラーマーク或いはラック8自体の色の少なくとも一つ或いはこれらを組み合わせて使用してもよい。この場合、識別指標としてICタグを使用する場合、読取装置としては無線通信手段を用い、識別指標として切欠き又はカラーマーク或いはラック8自体の色を使用する場合、読取装置としてはCCDカメラ等の撮像手段を用いる。
【0018】
また、試料容器7は、分析対象となる検体が予め収容されており、分析項目等を記録した情報記録媒体が貼付されている。この情報記録媒体は、ラック8に貼付した前記情報記録媒体と同様に、情報読取装置24,33,48,58,68によって読み取られる。ここで、試料容器7は、血清等の検体を収容する容器であるが、試薬単独を収容する場合や、試薬と検体の混合液を含む液体試料を収容する場合或いは空の場合もある。
【0019】
分析ユニット3〜6は、搬送装置11に沿って並列して設けられ、中央制御装置10からの制御の下に作動する。分析ユニット3は、電極法によって検体中の電解質検査項目を分析するユニットであり、検体分注機構31、情報読取装置33及びユニット制御部34を有している。
【0020】
検体分注機構31は、回動、かつ、昇降可能に構成され、追い越しライン12上又は搬送ライン13上のラック8が保持した複数の試料容器7から検体を順次吸引し、測定容器32に吐出する。測定容器32に吐出された検体は、ナトリウム,塩素,カリウム,カルシウム,無機リン等のイオンからなる電解質が測定される。情報読取装置33は、搬送装置11を臨む位置に追い越しライン12に隣接して設けられ、追い越しライン12や搬送ライン13によって分析ユニット3へ搬送されてきたラック8に貼付された前記情報記録媒体のバーコードを読み取る。情報読取装置33は、読み取ったバーコードのラック情報を中央制御装置10へ出力する。ユニット制御部34は、CPU,RAM及びROM等により構成され、中央制御装置10からの指示を受けて検体分注機構31を含む分析ユニット3全体の動作を制御する副制御部である。ユニット制御部34は、分析ユニット3における測定項目,測定結果等を含む測定データを中央制御装置10へ出力する。
【0021】
分析ユニット4〜6は、分析ユニット4が生化学検査項目を、分析ユニット5が免疫検査項目を、分析ユニット6が遺伝子検査項目を、それぞれ分析するが、主要構成が同じであるので、分析ユニット4について説明し、分析ユニット5,6については対応する構成部分に対応する符号を付している。
【0022】
分析ユニット4は、キュベットホイール42、第一試薬テーブル44、第二試薬テーブル45、情報読取装置48及びユニット制御部49を有し、検体と試薬とを反応させた反応液を光学的に測定する。測光データは、ユニット制御部49に出力され、ユニット制御部49において検体に含まれる特定成分の濃度が定量される。
【0023】
キュベットホイール42は、周方向に沿って異なる半径で複数の反応容器43が内外2列に保持されており、検体分注機構41によって反応容器43に検体が分注される。検体分注機構41は、検体分注機構31と同様に構成され、追い越しライン12上又は搬送ライン13上のラック8が保持した複数の試料容器7から検体を順次吸引し、反応容器43に吐出する。第一試薬テーブル44は、第一試薬を収容した複数の試薬ボトルを保持しており、近傍に第一試薬分注機構46が配置されている。第一試薬分注機構46は、分析項目に対応した第一試薬を対応する反応容器43に分注する。第二試薬テーブル45は、第二試薬を収容した複数の試薬ボトルを保持し、第二試薬分注機構47によって分析項目に対応した第二試薬が対応する反応容器43に分注される。
【0024】
情報読取装置48は、追い越しライン12や搬送ライン13によって分析ユニット4へ搬送されてきたラック8に貼付された前記情報記録媒体のバーコードを読み取る。情報読取装置48は、読み取ったラック情報を中央制御装置10へ出力する。ユニット制御部49は、CPU,RAM及びROM等により構成され、中央制御装置10からの指示を受けて分析ユニット4全体の動作を制御する副制御部である。ユニット制御部49は、検体名,検体の測定項目,測定濃度等を含む測定データを中央制御装置10へ出力する。
【0025】
ここで、分析ユニット5,6は、高い分析精度を要求され、検体のキャリーオバーが厳しく制限されている。このため、分析ユニット5,6は、分析ユニット3,4での分析に先立って優先的に分析が実行されるように搬送装置11によるラック8の搬送が中央制御装置10によって制御される。
【0026】
搬送制御部9は、中央制御装置10からの指示を受けてラック供給部21から送り出されるラック8を追い越しライン12や搬送ライン13に振り分け、分析ユニット6における分析処理が終了したラックを戻しライン14に戻すと共に、戻しライン14を搬送されてくるラック8をラック回収部22へ回収する等の動作を制御する。
【0027】
中央制御装置10は、自動分析装置1全体を制御するパーソナルコンピュータであり、図1に示すように、制御部10a、記憶部10b、入力部10c、出力部10g及びインタフェース10jを備えており、これらは相互に接続されて情報を送受信している。
【0028】
制御部10aは、CPU,RAM及びROM等により構成されており、自動分析装置1全体の制御を行う。制御部10aは、情報読取装置24から送られてくるラック情報(検体の分析項目)に基づいてラック8を搬送すべき分析ユニットを決定し、決定した搬送先の分析ユニットを搬送装置11に指示する。また、制御部10aは、情報読取装置33,48,58,68が読み取った前記情報記録媒体の情報に基づいて指示された正規の分析ユニットにラック8が搬送されているか否かを確認する。情報読取装置33,48,58,68が読み取った前記情報記録媒体の情報からラック8が誤った分析ユニットに搬送されている場合、制御部10aは、搬送装置11にラック8の転送を指示する。ここで、制御部10aは、インタフェース10jによるネットワーク80への接続又は切断の切り替えを制御し、例えば、選択部10dにおいて遺伝子検査項目の分析を選択した場合に自動分析装置1をネットワーク80から切断する。
【0029】
記憶部10bは、情報読取装置33,48,58,68が読み取ったラック情報を始めとしてパスワード等の予め設定した暗証符号や自動分析装置1の分析操作に関する各種情報を記憶する。
【0030】
入力部10cは、自動分析装置1へ分析操作に関連した分析項目等を含む種々の情報を入力する操作部であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。入力部10cは、選択部10d、入力依頼部10e及び精度管理指示部10fを備えており、これらはそれぞれ表示部10hに表示される画面にタブ,ダイアログボックス或いは選択ボタン等種々の態様で表示することができる。
【0031】
選択部10dは、遺伝子検査項目、生化学検査項目又は免疫検査項目のいずれか一つの検査項目の選択、特に、遺伝子検査項目かそれ以外の検査項目かの選択をする。このとき、選択部10dは、例えば、図2に示すように、表示部10hに表示される画面Wから遺伝子検査をダブルクリックすることによって遺伝子検査項目を選択する。選択部10dにおいて遺伝子検査項目を選択すると、制御部10aは、予め設定した暗証符号の入力を表示部10hの画面上で要求する。この要求に応じて表示部10hの画面上で正しい暗証符号を入力すると、入力依頼部10eは、自動分析装置1をネットワーク80から切断する承認の入力を依頼し、切断を承認した場合に自動分析装置1をネットワーク80から切断する。精度管理指示部10fは、各検査項目において精度管理分析の実行を指示する。
【0032】
ここで、自動分析装置1は、検体の分析結果を精度良く管理するために、検体と同じ試料又は検体に類似した試料を精度管理検体として分析して分析結果を監視しており、一般にこれら一連の作業を総称して精度管理と呼んでいる。このとき、精度管理によって得られた分析結果は、精度管理情報としてネットワーク80を介して管理装置90に出力され、管理装置90に保管される。
【0033】
出力部10gは、表示部10hと警告部10iとを備えている。表示部10hは、自動分析装置1での分析操作に関連した分析内容,分析結果或いは警報等の種々の情報やタブ,ダイアログボックス或いは選択ボタン等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。このとき、表示部10hは、制御部10aの制御の下に、分析作業の進行と並行して表示内容が変化してゆく。警告部10iは、遺伝子検査項目の分析を選択した場合に自動分析装置1をネットワーク80から切断する旨を表示部10h上に表示して警告する。この場合、警告部10iは、入力依頼部10eにおける切断の承認に先行して自動分析装置1をネットワーク80から切断する警告を発するが、音声によってその旨を警告してもよい。
【0034】
インタフェース10jは、制御部10aの制御の下に、選択部10dにおいて選択した検査項目に応じて自動分析装置1のネットワーク80への接続又は切断の切り替えを物理的に行う切替手段であり、例えば、中央制御装置10にコネクタを介して取り付けられ、アクチュエータによってネットワーク80への接続又は切断を切り替えるスイッチが使用される。
【0035】
搬送装置11は、中央制御装置10からの指示を受けてラック8を搬送するベルトコンベアを使用した搬送装置である。搬送装置11は、分析ユニット3〜6の配列方向に沿って互いに並行して配置され、緊急検体や割り込み検体用のラック8を特定の分析ユニットに選択的に搬送する追い越しライン12と、ラック8を分析ユニット3〜6に順次搬送する搬送ライン13と、各分析ユニットに搬送後のラック8をラック回収部22へ戻す戻しライン14とを有している。追い越しライン12及び搬送ライン13は、間欠的に運転されてラック8をピッチ送りすることにより分析ユニット3〜6の吸引位置S3a,S3b〜S6a,S6bに位置決めして順次停止させる。搬送装置11は、少なくとも搬送ライン13と戻しライン14とを有していれば、追い越しライン12は必ずしも必要ではない。
【0036】
また、搬送装置11は、ラック8の搬送方向下流側に、追い越しライン12、搬送ライン13及び戻しライン14を跨ってラインチェンジャ15が設けられている。ラインチェンジャ15は、ラック8の搬送方向に対して直交する横方向にスライドし、ラック8を搬送するラインを変更する。
【0037】
以上のように構成される自動分析装置1は、サンプラ2のラック供給部21に試料容器7を保持した複数のラック8をセットし、スイッチをオンすると、中央制御装置10の制御の下に、ラック8がラック供給部21から順次送り出され、搬送装置11によってラック8が分析ユニット3〜6へ搬送される。そして、自動分析装置1は、搬送先の分析ユニットで試料容器8内の検体が分析された後、搬送装置11に搬送されてラック8がサンプラ2へ戻され、ラック回収部22で回収される。
【0038】
ここで、自動分析装置1は、スイッチをオンして起動すると、表示部10hに図2に示す初期画面が表示される。オペレータは、この初期画面において検査項目を選択し、電解質検査項目,生化学検査項目,免疫検査項目,遺伝子検査項目の分析を実行する。このとき、スイッチをオンした初期状態においては、自動分析装置1は、インタフェース10jのスイッチがアクチュエータによって接続に切り替えられ、ネットワーク80を介して管理装置90へ接続されている。これに対して、自動分析装置1は、遺伝子検査項目の分析を選択すると、インタフェース10jのスイッチがアクチュエータによって切断に切り替えられ、ネットワーク80から切断される。このとき、遺伝子検査項目の分析の選択によるネットワークからの切断を経て遺伝子検査項目の分析終了に伴うネットワーク80への再接続に至る本発明の遺伝子情報管理方法を、図3を参照しつつ以下に説明する。図3は、遺伝子検査項目の分析を選択した場合の、自動分析装置の遺伝子情報管理方法を示すフローチャートである。
【0039】
先ず、制御部10aは、選択部10dからの情報をもとに遺伝子検査項目の分析が選択されたか否かを判定する(ステップS100)。判定の結果、遺伝子検査項目の分析が選択されていると(ステップS100,Yes)、制御部10aは、パスワードの入力を要求する(ステップS102)。この場合、制御部10aは、選択部10dに代えて遺伝子検査項目の分析を行う分析ユニット6を作動させるパスワード入力用の入力画面を表示部10hに表示させる。一方、遺伝子検査項目の分析が選択されていない場合(ステップS100,No)、制御部10aは、自動分析装置1の遺伝子情報管理を終了する。この場合、遺伝子検査項目以外の分析を選択した場合であるので、制御部10aは、自動分析装置1のネットワーク80への接続を維持する。
【0040】
次に、制御部10aは、表示部10hに表示された入力画面に正しいパスワードが入力されたか否かを判定する(ステップS104)。このパスワードの正否の判定は、予め記憶しておいたパスワードを制御部10aが記憶部10bから読み出し、このパスワードを入力されたパスワードと照合することによって行う。判定の結果、入力されたパスワードが誤っている場合(ステップS104,No)、制御部10aは、ステップS102に戻って改めてパスワードの入力を要求する(ステップS102)。このとき、パスワードの入力が複数回要求された場合、もしくは所定時間内に正しいパスワードが入力されなかった場合、制御部10aは、情報管理の安全性を考慮し、初期画面に戻ると共に、自動分析装置1のネットワーク80への接続を維持する。
【0041】
一方、正しいパスワードが入力された場合(ステップS104,Yes)、制御部10aは、精度管理指示部10fからの情報をもとに精度管理の要求があったか否かを判定する(ステップS106)。判定の結果、精度管理の要求があった場合(ステップS106,Yes)、制御部10aは、遺伝子検査項目の分析を行う分析ユニット6に精度管理を指示する(ステップS108)。この指示に基づき、分析ユニット6は、精度管理分析を実行し、精度管理情報をネットワーク80から管理装置90へ出力する。制御部10aは、精度管理を指示した後、ステップS110へ移行する。
【0042】
一方、精度管理の要求がなかった場合(ステップS106,No)、制御部10aは、ネットワーク80からの切断を警告する(ステップS110)。この警告は、表示部10hに自動分析装置1をネットワーク80から切断する旨を表示して行う他、警告部10iからの音声や警報音によってその旨を警告する。
【0043】
次いで、制御部10aは、入力依頼部10eからの情報をもとにネットワーク80からの切断を承認したか否かを判定する(ステップS112)。ここで、切断の承認は、表示部10hへの自動分析装置1をネットワーク80から切断する旨の表示後、表示部10hへ表示される入力依頼部10eの画面上で行う。判定の結果、ネットワーク80からの切断が承認されなかった場合(ステップS112,No)、制御部10aは、自動分析装置1の遺伝子情報管理を終了する。この場合、遺伝子検査項目以外の分析を選択した場合と同じ状況であるので、制御部10aは、自動分析装置1のネットワーク80への接続を維持する。
【0044】
一方、ネットワーク80からの切断が承認された場合(ステップS112,Yes)、制御部10aは、インタフェース10jのスイッチにネットワーク80からの切断を指示する(ステップS114)。これにより、インタフェース10jのスイッチがアクチュエータによって切断に切り替えられ、自動分析装置1は、ネットワーク80から切断される。これにより、自動分析装置1は、ネットワーク80から切断した状態で遺伝子検査項目の分析が可能となるので、ネットワーク80を通じて第三者が外部から情報を盗むことができず、遺伝子情報の漏洩を確実に防ぐことができる。その後、制御部10aは、分析ユニット6に分析開始を指示する(ステップS116)。これにより、自動分析装置1は、ネットワーク80から切断した状態で分析ユニット6において遺伝子検査項目の分析を開始する。
【0045】
次に、制御部10aは、入力部10cから入力された分析項目等を含む分析情報に基づいて分析ユニット6に分析終了を指示する(ステップS118)。これにより、自動分析装置1は、分析ユニット6による遺伝子検査項目の分析を終了する。次いで、制御部10aは、分析終了指示の後、予め設定した一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS120)。判定の結果、一定時間が経過していない場合(ステップS120,No)、制御部10aは、一定時間が経過する迄ステップS120を繰り返す。
【0046】
一方、分析終了指示の後、予め設定した一定時間が経過した場合(ステップS120,Yes)、制御部10aは、遺伝子検査項目の分析を続行するか否かを判定する(ステップS122)。ここで、制御部10aは、ステップS122の判定に先立ってタイマをリセットする。また、ステップS122の判定は、表示部10hへ表示される分析を続行するか否かを問う画面上で行う。この場合、表示部10hへ表示される分析を続行するか否かを問う画面に対する応答が予め設定した所定時間内にない場合、情報管理の安全性を考慮し、制御部10aは、分析を続行しないものと判定する。
【0047】
判定の結果、遺伝子検査項目の分析を続行する場合(ステップS122,Yes)、制御部10aは、分析ユニット6に分析開始を指示する(ステップS116)。一方、遺伝子検査項目の分析を続行しない場合(ステップS122,No)、制御部10aは、インタフェース10jにネットワーク80への接続を指示する(ステップS124)。これにより、自動分析装置1は、ネットワーク80へ接続されるが、遺伝子検査項目の分析を続行するか否かのステップを設けることにより、オペレータが自動分析装置1から離れても第三者が遺伝子検査項目の分析を行うことができなくなり、情報管理の安全性を担保することができる。
【0048】
このように、本発明においては、遺伝子検査項目の分析を行う場合には、自動分析装置1をネットワーク80から切断するので、ネットワーク80を通じて第三者が外部から情報を盗むことができず、遺伝子情報の漏洩を確実に防ぐことができる。
【0049】
ここで、本発明の自動分析装置とその遺伝子情報管理方法は、遺伝子情報の漏洩を防ぐ目的から、例えば、自動分析装置1による遺伝子検査項目の分析中にインタフェース10jのコネクタが事故によって中央制御装置10から外れた場合、外れたコネクタをインタフェース10jに接続しても、遺伝子検査項目の分析の場合には、自動分析装置1がネットワーク80へ接続されないような対策が必要となる。このように、インタフェース10jのコネクタが事故で外れた場合、ネットワーク80からの切断状態を保持しつつ、コネクタをインタフェース10jに再接続する手順を、図4を参照しつつ以下に説明する。図4は、自動分析装置1による分析中に外れたコネクタをインタフェース10jに再接続する手順を示すフローチャートである。
【0050】
先ず、制御部10aは、インタフェース10jからの情報をもとにコネクタが外れたか否かを判定する(ステップS200)。判定の結果、コネクタが外れている場合(ステップS200,Yes)、制御部10aは、表示部10hにコネクタが外れている旨の警告を指示する(ステップS202)。これにより、表示部10hには、例えば、インタフェース10jのコネクタが外れています等の警告が表示される。このとき、警告部10iから音声や警報音を発してその旨を併せて警告してもよい。一方、コネクタが外れていない場合(ステップS200,No)、制御部10aは、ステップS200へ戻ってコネクタが外れたか否かの判定を繰り返す。
【0051】
次に、制御部10aは、入力依頼部10eからの情報をもとに、コネクタが外れる前の状況として自動分析装置1がネットワーク80から切断されていたか否かを判定する(ステップS204)。判定の結果、自動分析装置1がネットワーク80に接続されていた場合(ステップS204,No)、制御部10aは、コネクタの接続を承認する(ステップS206)。この承認は、外れたコネクタのインタフェース10jへの接続を承認する旨を表示部10hに表示して実行される。オペレータは、この表示を確認したうえで、外れたコネクタをインタフェース10jに接続する。
【0052】
一方、自動分析装置1がネットワーク80から切断されていた場合(ステップS204,Yes)、制御部10aは、ネットワーク80との切断維持を表示部10hに表示する(ステップS208)。次に、制御部10aは、コネクタの接続を承認する(ステップS210)。オペレータは、この表示を確認したうえで、外れたコネクタをインタフェース10jに接続する。従って、自動分析装置1は、ネットワーク80からの切断状態を保持しつつ、外れたコネクタがインタフェース10jに接続される。
【0053】
(変形例)
ここで、遺伝子検査項目の分析中に精度管理を行う場合、本発明の遺伝子情報管理方法は、図5に示すようになる。図5は、遺伝子検査項目の分析中に精度管理を行う場合の、自動分析装置の遺伝子情報管理方法を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、図3に示すフローチャートのステップS116とステップS118の間に精度管理を指示するステップが新たに挿入された点が異なっている。
【0054】
即ち、遺伝子検査項目の分析中に精度管理を行う場合、制御部10aは、図5に示すように、分析開始を指示(ステップS116)した後、遺伝子検査項目の分析を行う分析ユニット6に精度管理を指示する(ステップS118)。この場合、分析ユニット6は、定期的に精度管理分析を実行し、得られた精管理情報を制御部10aに出力する。そして、制御部10aは、リアルタイム或いは定期的に自動分析装置1をネットワーク80に接続し、精度管理情報を管理装置90へ送信する。このとき、分析ユニット6は、ネットワーク80に接続している場合には、遺伝子検査項目の分析を中断し、遺伝子情報の漏洩を防ぐ。なお、分析ユニット6に分析終了を指示するステップS120以降は、図3と同様にして実行される。
【0055】
以上のように、本発明の自動分析装置とその遺伝子情報管理方法によれば、自動分析装置1をネットワーク80から切断した状態で遺伝子検査項目の分析を行うので、ネットワークを通じて第三者が外部から情報を盗むことができず、遺伝子情報の漏洩を確実に防ぐことができる。
【0056】
なお、検査項目を選択する方式としては、上述の他、例えば、表示部10hの画面に選択ボタンを設定し、或いはプルダウンメニューの中に遺伝子検査項目を設定することも可能であり、各検査項目のタブを設け、画面上でそれぞれの検査項目を設定してもよい。
【0057】
また、自動分析装置1のネットワーク80への接続又は切断の切り替えを行うインタフェース10jは、中央制御装置10にコネクタを介して取り付けられ、アクチュエータによってネットワーク80への接続又は切断を切り替えるスイッチを使用した。しかし、インタフェース10jは、自動分析装置1のネットワーク80への接続又は切断の切り替えを行うことができれば、物理的な切替手段に代えて、ソフトウエアによる切替手段としてもよい。但し、ソフトウエアによる切替手段を用いる場合には、情報管理の安全性を考慮して下位のレーヤーで切断する構成にすることが好ましい。
【0058】
また、自動分析装置1は、遺伝子検査項目を分析する分析ユニット6の他に、電解質検査項目を分析する分析ユニット3、生化学検査項目を分析する分析ユニット4及び免疫検査項目を分析する分析ユニット5を備えたものについて説明したが、遺伝子検査項目を分析する分析ユニット6の他に、生化学検査項目を分析する分析ユニット4又は免疫検査項目を分析する分析ユニット5を備えていればよく、電解質検査項目を分析する分析ユニット3はなくてもよい。
【0059】
また、自動分析装置1は、遺伝子検査項目を分析する分析ユニットの他、分析対象の異なる複数の分析ユニットを有していれば、試薬テーブルは一つであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ネットワークを介して管理装置へ接続される本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】遺伝子検査項目の分析を選択する一例を示す図であり、表示部に表示される画面を示す図である。
【図3】遺伝子検査項目の分析を選択した場合の、自動分析装置の遺伝子情報管理方法を示すフローチャートである。
【図4】遺伝子検査項目の分析中に外れたコネクタをインタフェースに再接続する手順を示すフローチャートである。
【図5】遺伝子検査項目の分析中に精度管理を行う場合の、自動分析装置の遺伝子情報管理方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 自動分析装置
2 サンプラ
21 ラック供給部
22 ラック回収部
23 ラック収納部
24 情報読取装置
3 分析ユニット
31 検体分注機構
32 測定容器
33 情報読取装置
34 ユニット制御部
4 分析ユニット
41 検体分注機構
42 キュベットホイール
43 反応容器
44 第一試薬テーブル
45 第二試薬テーブル
46 第一試薬分注機構
47 第二試薬分注機構
48 情報読取装置
49 ユニット制御部
5 分析ユニット
51 検体分注機構
52 キュベットホイール
53 反応容器
54 第一試薬テーブル
55 第二試薬テーブル
56 第一試薬分注機構
57 第二試薬分注機構
58 情報読取装置
59 ユニット制御部
6 分析ユニット
61 検体分注機構
62 キュベットホイール
63 反応容器
64 第一試薬テーブル
65 第二試薬テーブル
66 第一試薬分注機構
67 第二試薬分注機構
68 情報読取装置
69 ユニット制御部
7 試料容器
8 ラック
9 搬送制御部
10 中央制御装置
10a 制御部
10d 選択部
10e 入力依頼部
10f 精度管理指示部
10i 警告部
10j インタフェース
11 搬送装置
12 追い越しライン
13 搬送ライン
14 戻しライン
15 ラインチェンジャ
80 ネットワーク
90 管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子検査項目の分析と、生化学検査項目又は免疫検査項目の分析を行う複数の分析ユニットを備え、ネットワークを介して管理装置に接続される自動分析装置において、
前記遺伝子検査項目、生化学検査項目又は免疫検査項目のいずれか一つの検査項目を選択する選択手段と、
前記選択手段において選択した検査項目に応じて当該自動分析装置の前記ネットワークへの接続又は切断の切り替えを行う切替手段と、
前記遺伝子検査項目を選択した場合に当該自動分析装置を前記ネットワークから切断する承認の入力依頼を行う入力依頼手段と、
前記入力依頼手段における切断承認の入力があった場合に前記切替手段の切り替えを制御して当該自動分析装置を前記ネットワークから切断する制御手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記選択手段において前記遺伝子検査項目を選択後、予め設定した暗証符号を入力した場合に前記遺伝子検査項目の分析へ移行することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記遺伝子検査項目を選択した場合に、前記切断の承認に先行して当該自動分析装置を前記ネットワークから切断する警告を発する警告手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
精度管理の実行を指示する精度管理指示手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記遺伝子検査項目の分析が終了した場合に、前記切替手段を制御して当該自動分析装置を前記ネットワークに接続することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
遺伝子検査項目と、生化学検査項目又は免疫検査項目の分析を行う複数の分析ユニットを備え、ネットワークを介して管理装置に接続される自動分析装置の遺伝子情報管理方法であって、
前記遺伝子検査項目、生化学検査項目又は免疫検査項目の分析のいずれか一つの分析を選択する選択工程と、
前記遺伝子検査項目の分析を選択した場合に当該自動分析装置を前記ネットワークから切断する承認の入力依頼を行う入力依頼工程と、
前記切断が承認された場合に、当該自動分析装置を前記ネットワークから切断する切断工程と、
を含み、
当該自動分析装置を前記ネットワークから切断した状態で前記遺伝子検査項目の分析を行うことを特徴とする自動分析装置の遺伝子情報管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−46095(P2008−46095A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224653(P2006−224653)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】