説明

自動分析装置と洗浄方法

【課題】蓄積する汚れに起因するキャリーオーバーを洗浄対象毎に回避することが可能な自動分析装置と洗浄方法を提供すること。
【解決手段】検体と試薬とを反応させることによって検体の成分を分析し、検体の分析時に異なる複数の洗浄対象を洗浄水によってそれぞれ洗浄する複数の洗浄機構を備える自動分析装置と洗浄方法。自動分析装置1は、各洗浄対象3c,5,6c,8c,13c,14bの基準時からの使用回数又は使用時間を含む使用情報と、使用情報をもとに各洗浄対象の必要洗浄水流量を求める演算式を含む必要洗浄水流量情報とを記憶する記憶部17bと、記憶部に記憶された使用情報と必要洗浄水流量情報とをもとに各洗浄対象の必要洗浄水流量を演算する演算部17cと、演算部が演算した必要洗浄水流量の洗浄水によって各洗浄対象を洗浄するように各洗浄機構を制御する洗浄制御部17dとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とが反応した反応液の光学的特性を測定することによって検体を分析する自動分析装置と洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、血液や尿等の生体から採取した検体を試薬と反応させ、反応液の光学的特性を測定することによって検体に含まれる特定成分やその濃度等を分析している。このため、自動分析装置は、検体や試薬が次の検体の分析に持ち越されるいわゆるキャリーオーバーを回避して信頼性の高い分析結果を得るために、検体を分注した検体分注プローブや試薬を分注した試薬分注プローブを分注の都度、洗浄水で洗浄している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2945747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、検体分注プローブや試薬分注プローブは、血液や尿等の生体から採取した検体や、その試薬を分注することから、分注を繰り返すことによって経時的に検体や試薬に起因した汚れが蓄積してゆく傾向を有している。このような汚れが分注プローブに蓄積すると、蓄積した汚れに分注対象の検体や試薬が付着して洗浄不良となり、自動分析装置は、引き続く次の分注時に検体や試薬のキャリーオーバーが発生し、分析結果に影響を及ぼすことがある。また、このような汚れの蓄積傾向は、試薬と検体とが反応する反応容器や試薬や検体を撹拌する撹拌棒にも同様に発生する。このため、自動分析装置においては、検体分注プローブ、試薬分注プローブ、反応容器或いは撹拌棒を定期的に洗剤等で特別洗浄している。
【0005】
しかしながら、上述した検体分注プローブ等の洗浄対象における汚れの蓄積は、使用頻度によって決まることから、自動分析装置毎に異なるうえ、洗浄対象毎にも異なっている。従って、自動分析装置は、洗浄対象を定期的に洗浄したとしても、洗浄対象毎に蓄積する汚れのキャリーオーバーを回避するうえで十分とは言えなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、使用回数又は使用時間の経過に伴って蓄積する汚れに起因したキャリーオーバーを洗浄対象毎に回避することが可能な自動分析装置と洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体と試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析し、前記検体の分析時に複数の洗浄対象を洗浄水によってそれぞれ洗浄する複数の洗浄機構を備える自動分析装置であって、各洗浄対象の基準時からの使用回数又は使用時間を含む使用情報と、前記使用情報をもとに前記各洗浄対象の必要洗浄水流量を求める演算式を含む必要洗浄水流量情報とを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記使用情報と前記必要洗浄水流量情報とをもとに前記各洗浄対象の必要洗浄水流量を演算する演算手段と、前記演算手段が演算した前記必要洗浄水流量の洗浄水によって前記各洗浄対象を洗浄するように前記各洗浄機構を制御する洗浄制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記複数の洗浄対象は、前記検体と前記試薬とを反応させる反応容器、前記反応容器に前記試薬を分注する試薬プローブ、前記反応容器に前記検体を分注する検体プローブ及び前記反応容器に分注された前記検体又は前記試薬を撹拌する撹拌棒を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記基準時は、前記洗浄対象の交換時又は洗剤を使用した特別洗浄時であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記演算手段は、予め設定された洗浄水流量補正式に基づき前記必要洗浄水流量を補正することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記洗浄対象の使用回数又は使用時間が所定回数又は所定時間に達した場合に、前記洗浄対象を交換又は洗剤を使用した特別洗浄するように警告する警告手段を備えることを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の洗浄方法は、検体と試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析し、前記検体の分析時に複数の洗浄対象を洗浄水によって洗浄する複数の洗浄機構を備える自動分析装置が前記洗浄対象に対して行う洗浄方法であって、前記洗浄対象の基準時からの使用回数又は使用時間を含む使用情報として取得する取得工程と、前記使用情報をもとに前記洗浄対象の必要洗浄水流量を求める演算式又は表を含む必要洗浄水流量情報を記憶する記憶工程と、前記記憶工程で記憶した前記使用情報と前記必要洗浄水流量情報とをもとに前記洗浄対象の必要洗浄水流量を演算する演算工程と、前記演算工程で演算した前記必要洗浄水流量で前記洗浄対象を洗浄させる洗浄制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の洗浄方法は、上記の発明において、前記異複数の洗浄対象は、前記検体と前記試薬とを反応させる反応容器、前記反応容器に前記試薬を分注する試薬プローブ、前記反応容器に前記検体を分注する検体プローブ及び前記反応容器に分注された前記検体又は前記試薬を撹拌する撹拌棒を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の洗浄方法は、上記の発明において、前記基準時は、前記洗浄対象の交換時又は洗剤を使用した特別洗浄時であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の洗浄方法は、上記の発明において、前記演算工程は、予め設定された洗浄水流量補正式に基づき前記必要洗浄水流量を補正する工程を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の洗浄方法は、上記の発明において、前記洗浄対象の使用回数又は使用時間が所定回数又は所定時間に達した場合に、前記洗浄対象を交換又は洗剤を使用した特別洗浄するように警告する警告工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基準時からの使用回数又は使用時間を含む使用情報をもとに洗浄対象毎に求めた必要洗浄水流量で対応する洗浄対象を洗浄するので、使用回数又は使用時間の経過に伴って蓄積する汚れに起因したキャリーオーバーを洗浄対象毎に回避することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施の形態1の自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図2は、図1の自動分析装置で使用する検体分注装置の概略構成図である。
【図3】図3は、図1に示す自動分析装置で使用する第一撹拌装置の構成を示す概略図である。
【図4】図4は、図1に示す自動分析装置1で使用する洗浄装置16の構成を示す概略構成図である。
【図5】図5は、洗浄対象を洗浄する際の洗浄水流量と汚れ量との関係を説明するモデル図である。
【図6】図6は、洗浄対象に関する残存汚れ量の評価方法を説明する図である。
【図7】図7は、必要洗浄水流量を説明する洗浄水流量と残存汚れ量との関係を示す図である。
【図8】図8は、残存汚れの評価方法を用いて洗浄対象毎に求めた交換時からの使用回数と必要洗浄水流量との関係を示す図である。
【図9】図9は、残存汚れの評価方法を用いて洗浄対象毎に求めた特別洗浄時からの使用回数と必要洗浄水流量との関係を示す図である。
【図10】図10は、本発明の洗浄方法を説明するフローチャートである。
【図11】図11は、実測残存汚れ量に基づく残存汚れ量の補正方法を説明する図である。
【図12】図12は、残存汚れ量の評価方法の第1変形例を示す図である。
【図13】図13は、残存汚れ量の評価方法の第2変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態1)
以下、本発明の自動分析装置と洗浄方法にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置の概略構成図である。
【0020】
自動分析装置1は、図1に示すように、ラック供給装置2、反応部4、第一試薬保冷庫9及び第二試薬保冷庫10、第一撹拌装置13、第二撹拌装置14、光学測定装置15、洗浄装置16及び制御部17を備え、ラック供給装置2と反応部4との間に検体分注装置3が設けられ、反応部4と第一試薬保冷庫9との間に第一試薬分注装置6が、反応部4と第二試薬保冷庫10との間に第二試薬分注装置8が、それぞれ設けられている。
【0021】
ラック供給装置2は、図1に示すように、複数のラック2aが配列され、各ラック2aには検体を保持した検体容器2bが搭載されている。ラック供給装置2は、矢印で示す経路に沿ってラック2aを順次搬送する。
【0022】
次に、検体分注装置を図1及び図2に示す概略構成図を参照して説明する。検体分注装置3は、試薬の液面を検知する液面検知手段(図示せず)を有しており、検体容器2bに保持された検体を順次吸引して反応部4の反応容器5へ分注する。検体分注装置3は、図2に示すように、支柱3a、アーム3b、検体プローブ3c及び液面検知手段(図示せず)の他、プローブ駆動部31と、分注制御部32と、送水ポンプ34とを備え、更に検体プローブ3cの洗浄機構として、送水ポンプ34と、洗浄水容器36と、洗浄槽38とを備えている。
【0023】
プローブ駆動部31は、図2に示すように、支柱3aを軸周りに回転、かつ、昇降させることにより、アーム3bに設けた検体プローブ3cを吸引する検体吸引位置、検体吐出位置、洗浄槽38との間を移動させる。分注制御部32は、CPU等が使用され、プローブ駆動部31による支柱3aの回転動作と昇降動作を制御することにより、検体プローブ3cの支柱3a周りの回転移動を制御する。ここで、分注制御部32は、検体プローブ3cに検体を吸引する際、洗浄制御部17dを介して送水ポンプ34を駆動するが、このとき、配管37に設けた弁37aが閉となるように制御する。
【0024】
送水ポンプ34は、図2に示すように、検体プローブ3cとの間が配管33によって、洗浄水Wを貯留した洗浄水容器36との間が弁35aを設けた配管35によって、洗浄槽38との間が弁37aを設けた配管37によって、それぞれ接続されている。送水ポンプ34は、分注精度に優れたシリンジポンプが使用される。
【0025】
このとき、送水ポンプ34は、検体の分注する際は、洗浄制御部17dを介して制御部17の制御のもと、弁35a,37aを閉じ、洗浄水Wを配管33から検体プローブ3cへ検体を給排することにより検体を分注する。また、送水ポンプ34は、検体プローブ3cを洗浄する際は、洗浄制御部17dの制御のもと、弁35a,37aを開き、必要洗浄水流量の洗浄水Wを洗浄水容器36から検体プローブ3cや洗浄槽38に圧送する。
【0026】
洗浄槽38は、支柱3aによって回転移動される検体プローブ3cの移動軌跡上に配置されており、配管33によって圧送されてくる洗浄水によって検体プローブ3cの内側を洗浄すると共に、配管37を圧送されてくる洗浄水によって検体プローブ3cの外側を洗浄する。ここで、洗浄水容器36に貯留する洗浄水は、脱イオン水や蒸留水等が使用される。
【0027】
反応部4は、図1に示すように、保温部材4aとキュベットホイール4bとを有している。保温部材4aは、キュベットホイール4bの半径方向内側及び外側に配置され、光学測定装置15と対応する位置に測光用の開口4cが形成されている。キュベットホイール4bは、複数の反応容器5を体温程度の温度に保持して回転し、例えば、一周期で時計方向に(1周−1キュベット)/4分回転し、四周期では時計方向に1キュベット分回転する。ここで、複数の反応容器5は、キュベットホイール4b上の位置(アドレス)と識別番号が予め記憶部17bに登録されている。
【0028】
第一試薬分注装置6は、第一試薬保冷庫9の試薬容器9aから第一試薬を吸引してキュベットホイール4b上の所定の反応容器5に分注する分注装置である。第一試薬分注装置6は、第一試薬の液面を検知する図示しない液面検知手段を有しており、第二試薬分注装置8と共に検体分注装置3と同様に構成されている。即ち、第一試薬分注装置6は、昇降、かつ、軸周りに回転自在な支柱6aの上端にアーム6bが設けられ、アーム6b先端下部に試薬を分注する第一試薬プローブ6cが設けられている。また、第一試薬分注装置6は、第一試薬プローブ6cの移動軌跡上に第一試薬プローブ6cの内外を洗浄する洗浄槽6dが設けられている。
【0029】
第二試薬分注装置8は、第二試薬保冷庫10の試薬容器10aから第二試薬を吸引してキュベットホイール4b上の所定の反応容器5に分注する。第二試薬分注装置8は、第一試薬分注装置6と同様に構成されているので、以下においては第一試薬分注装置6と対応する構成部材に対応する符号を付して説明している。
【0030】
第一試薬保冷庫9は、図1に示すように、第一試薬を保持した複数の試薬容器9aが配置され、第一試薬分注装置6の第一試薬プローブ6cによって所定の試薬が反応容器5に分注される。複数の試薬容器9aは、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、収容した試薬に関する情報を記録するバーコードラベル等の情報記録媒体(図示せず)が外面に貼付されている。
【0031】
また、第一試薬保冷庫9の外周には、各試薬容器9aに貼付された前記情報記録媒体から試薬情報を読み取り、その情報を制御部17へ出力する読取装置11が設置されている。
【0032】
なお、第二試薬保冷庫10は、第一試薬保冷庫9と構成が同じであり、第二試薬保冷庫10の外周には、第二試薬保冷庫10内の各試薬容器10aに貼付された前記情報記録媒体から試薬情報を読み取り、その情報を制御部17へ出力する読取装置12が設置されてい。
【0033】
次に、第一撹拌装置13について図1及び図3を参照して説明する。図3は、図1に示す自動分析装置で使用する第一撹拌装置13の構成を示す概略図である。なお、第二撹拌装置14は、撹拌棒の数が異なること、反応部4外周の検体分注装置3の近傍に配置されていることを除いて第一撹拌装置13と構成が同じであるので、以下においては第一撹拌装置13と対応する構成部材に対応する符号を付して説明している。
【0034】
第一撹拌装置13は、図1に示すように、反応部4外周の第二試薬分注装置8の近傍に配置されており、キュベットホイール4bの回転によって撹拌位置へ搬送されてくる反応容器5内の検体や試薬を撹拌する。第一撹拌装置13は、図3に示すように、支柱13a、支持板13b及び3対の撹拌棒13cの他、支柱駆動部131と、撹拌制御部132とを備え、更に撹拌棒13cの洗浄機構として送水ポンプ134と、洗浄水容器136と、洗浄槽138とを備えている。
【0035】
支柱駆動部131は、図3に示すように、支柱13aを軸周りに回転、かつ、昇降させることにより、支持板13bを矢印方向に回転させ、支持板13bに設けた3対の撹拌棒13cを1対ずつ洗浄槽138へ順次回転移動させる。撹拌制御部32は、CPU等を用いて構成され、支柱駆動部131による支柱13aの回転動作と昇降動作を制御することにより、3対の撹拌棒13cの支柱13a周りの回転移動を制御する。
【0036】
送水ポンプ134は、図3に示すように、洗浄水容器136との間が配管135によって、洗浄槽138との間が配管137によって、それぞれ接続されている。送水ポンプ134は、洗浄制御部17dの制御のもとに必要洗浄水流量の洗浄水Wを洗浄水容器136から洗浄槽138に圧送する。洗浄槽138は、支柱13aによって回転移動される3対の撹拌棒13cの移動軌跡上に配置されており、配管137によって圧送されてくる洗浄水によって撹拌を終えた撹拌棒13cを洗浄する。ここで、洗浄水容器136に貯留する洗浄水は、脱イオン水や蒸留水等が使用される。また、洗浄水容器136は、洗浄水容器36と共用してもよい。
【0037】
ここで、本発明においては、洗浄水によって洗浄される検体プローブ3c,反応容器5,第一試薬プローブ6c,第二試薬プローブ8c,撹拌棒13c及び撹拌棒14cを洗浄対象と呼ぶ。このとき、これらの洗浄対象は、検体や試薬と接する面に液体との非親和性を高める、例えば、フッ素樹脂等からなる表面処理を施すと、汚れの蓄積が遅れ、必要洗浄水流量の急激な増加を抑えることができる。
【0038】
光学測定装置15は、図1に示すように、光源15aと測光センサ15bとを有している。光源15aは、試薬と検体とが反応した反応容器5内の反応液を分析するための分析光を出射する。測光センサ15bは、光源15aが出射し、開口4cを通って反応容器5内の反応液を透過した光束を測光する。測光センサ15bは、測光した光量に対応した光量信号を分析部17aへ出力する。
【0039】
次に、図4を参照して洗浄装置16について説明する。図4は、図1に示す自動分析装置1で使用する洗浄装置16の構成を示す概略構成図である。洗浄装置16は、測光終了後の反応容器5を洗浄する通常洗浄と、反応容器5が所定閾値まで汚れた場合に行う特別洗浄とを実行する反応容器5の洗浄機構であり、図4に示すように、配管によって接続された洗浄ノズル対16A、洗浄ノズル対16B〜16D、吸引ノズル16E,16F、廃液タンク16H、洗剤タンク16J、洗浄水タンク16K及び送液ポンプ16L、送水ポンプ16M〜16Oを有している。
【0040】
洗浄ノズル対16A、洗浄ノズル対16B〜16D、吸引ノズル16E,16Fは、保持部材16Gに保持され、保持部材16Gを鉛直方向に駆動する駆動手段によって一体に上下動される。また、廃液タンク16Hは、真空ポンプ16Iによって内部が負圧に保持されている。洗浄ノズル対16A及び洗浄ノズル対16B〜16Dは、それぞれ長さが異なり、反応容器5内の底部近くまで挿入される吸引ノズル16a、反応容器5内の中間まで挿入される吐出ノズル16b及び反応容器5内の上部まで挿入されるオーバーフロー吸引ノズル16cを有している。
【0041】
ここで、洗浄ノズル対16Aは、反応容器5内の反応液を吸引ノズル16aによって吸引して廃液タンク16Hへ廃棄し、送液ポンプ16Lによって洗剤タンク16J内の洗剤を吐出ノズル16bから反応容器5内に吐出する。そして、オーバーフロー吸引ノズル16cは、過剰な洗剤を吸引して廃液タンク16Hへ廃棄することにより、洗剤が反応容器5から溢れることを防止しており、他のノズル対においても洗浄水の溢れを防止している。
【0042】
洗浄ノズル対16Bは、洗浄ノズル対16Aが反応容器5内に吐出した洗剤を吸引ノズル16aによって吸引して廃液タンク16Hへ廃棄し、送液ポンプ16Mによって洗浄水タンク16K内の洗浄水Wを吐出ノズル16bから反応容器5内に吐出する。以下、洗浄ノズル対16C,16Dは、同様の操作を繰り返す。このとき、送水ポンプ16M〜16Oは、洗浄制御部17dの制御のもとに必要洗浄水流量の洗浄水Wを吐出ノズル16bから反応容器5内に吐出させる。これにより、反応容器5は、内部が必要洗浄水流量の洗浄水Wで洗浄される。
【0043】
吸引ノズル16Eは、洗浄ノズル対16Dが反応容器5内に吐出した洗浄水を吸引し、廃液タンク16Hへ廃棄する。吸引ノズル16Fは、下端に合成樹脂性のチップ16fが取り付けられ、吸引ノズル16Eが残した洗浄水を吸引し、廃液タンク16Hへ廃棄する。このようにして洗浄された反応容器5は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0044】
一方、洗浄装置16は、洗浄制御部17dからの洗浄指示信号によって指示された反応容器5を洗剤によって特別洗浄する。この場合、洗浄装置16は、自動分析装置1を起動した初期化時や分析終了時等、分析に支障のない時に特別洗浄を実行し、反応容器5内に洗剤を通常の洗浄の場合よりも長い時間保持した後に、洗浄水で洗浄する。
【0045】
制御部17は、記憶機能、演算機能及び計時機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用され、上述した各部と接続されている。制御部17は、ホストコンピュータからの分析依頼に基づいて自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体から読み取った試薬情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設定範囲外の場合、警告信号を出力部19へ出力する。制御部17は、図1に示すように、分析部17a、記憶部17b、演算部17c及び洗浄制御部17dを有している。
【0046】
分析部17aは、測光センサ15bが測光した光量の信号に基づいて求められる反応容器5内の検体と試薬の反応液の吸光度をもとに検体の成分濃度等を分析する。
【0047】
記憶部17bは、各洗浄対象の基準時からの使用回数又は使用時間を含む使用情報と、前記使用情報をもとに前記各洗浄対象の必要洗浄水流量を求める演算式又は表を含む必要洗浄水流量情報とを記憶する。
【0048】
演算部17cは、記憶部17bに記憶された前記使用情報と前記必要洗浄水流量情報とをもとに各洗浄対象の必要洗浄水流量を演算する。
【0049】
洗浄制御部17dは、制御部17を介して各洗浄機構の駆動を制御する洗浄制御手段であり、演算部17cが演算した必要洗浄水流量で対応する各洗浄対象を洗浄させる。洗浄制御部17dは、検体プローブ3c,第一試薬プローブ6c,第二試薬プローブ8c,撹拌棒13c,14c及び反応容器5の使用回数又は使用時間を含む使用情報を管理し、使用回数又は使用時間が所定値を超えている場合に、対応する洗浄対象に洗浄指示信号を出力して特別洗浄させると共に、対応する洗浄対象を交換又は特別洗浄すべき旨の警告信号を出力部19に出力する。
【0050】
入力部18は、制御部17へ検体数や検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。また、入力部18は、検体プローブ3c,第一試薬プローブ6c,第二試薬プローブ8c,撹拌棒13c,14c及び反応容器5を交換した際に、予め洗浄対象毎に設定された所定の識別番号をオペレータが入力することによって洗浄対象の交換を洗浄制御部17dへ入力すると共に、新たな洗浄対象の基準時情報の作成依頼を洗浄制御部17dへ入力することができる。
【0051】
出力部19は、図1に示すように、表示部19aと告知部19bとを有している。表示部19aは、分析結果を含む自動分析装置1に係る種々の情報を表示するディスプレイパネル等を使用した表示手段である。告知部19bは、スピーカ等によって撹拌の良否を含む自動分析装置1に係る種々の警報を音声又は警報音によって告知する。このとき、出力部19は、洗浄制御部17dから入力された警告信号を受けて対応する洗浄対象を交換又は特別洗浄すべき旨を表示部19aに表示し、或いは告知部19bによって告知する警告手段を兼ねている。
【0052】
なお、検体プローブ3c,第一試薬プローブ6c,第二試薬プローブ8c及び反応容器5は、特別洗浄を行った年月日、或いは交換年月日を含む基準時情報を記録したRFID等の情報記録媒体(図示せず)を外面に貼付し、この情報記録媒体を図示しないリーダライタによって読み取り、或いは読み出した基準時情報を洗浄制御部17dに出力することで、洗浄制御部17dによって基準時情報を管理してもよい。
【0053】
また、撹拌棒13c,14cは、特別洗浄を行った年月日、或いは交換年月日を含む基準時情報を記録したRFID等の情報記録媒体(図示せず)を支持板13b,14bに貼付し、この情報記録媒体を図示しないリーダライタによって読み取り、或いは読み出した基準時情報を洗浄制御部17dに出力することで、洗浄制御部17dによって基準時情報を管理してもよい。
【0054】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部17の制御の下に作動し、回転するキュベットホイール4bによって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5のそれぞれに第一試薬分注装置6によって試薬容器9aから第一試薬が順次分注された後、検体分注装置3によってラック2aに保持された複数の検体容器2bから検体が順次分注される。検体が分注された反応容器5には、第二試薬分注装置8が試薬容器10aから順次第二試薬が分注される。
【0055】
この間、試薬や検体が分注された反応容器5は、キュベットホイール4bが停止する都度、第一撹拌装置13や第二撹拌装置14によって試薬や検体が撹拌され、キュベットホイール4bが再び回転したときに光学測定装置15を通過する。このとき、反応容器5内の試薬と検体とが反応した反応液は、光学測定装置15において光学的特性が測定され、光学測定装置15から入力される光信号をもとに分析部17aによって成分濃度等が分析される。そして、反応液の測定が終了した反応容器5は、洗浄装置16に移送されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0056】
このとき、自動分析装置1は、洗浄対象、例えば、検体分注装置3の検体プローブ3cを基準時からの使用回数又は使用時間を含む使用情報をもとに決まる必要洗浄水流量によって洗浄する。
【0057】
ここで、基準時とは、各洗浄対象のそれぞれの交換時又は洗剤を使用した特別洗浄時をいい、例えば、反応液の測光終了時に反応容器5の内部を洗剤によって洗浄する通常洗浄時は含まれない。
【0058】
また、自動分析装置1は、通常、ホストコンピュータからの分析依頼に基づいて制御部17による制御のもとに検体の分析処理を開始する。このため、分析処理開始後における各洗浄対象の使用回数又は使用時間を含む使用情報は、制御部17が各洗浄対象へ出力する洗浄制御信号を洗浄制御部17dが取得しながら使用回数として更新し、或いは取得した洗浄制御信号と各洗浄対象に関して予め設定されている洗浄時間との積を洗浄制御部17dが取得しながら使用時間として更新し、使用情報として記憶部17bに記憶してゆく。
【0059】
以下、洗浄制御部17dが取得した使用情報をもとに決まる洗浄対象の必要洗浄水流量について図5乃至図7を参照して説明する。図5は、洗浄対象を洗浄する際の洗浄水流量と汚れ量との関係を説明するモデル図である。図6は、洗浄対象に関する残存汚れ量の評価方法を説明する図である。図7は、必要洗浄水流量を説明する洗浄水流量と残存汚れ量との関係を示す図である。
【0060】
一般に、検体の分析に伴って検体や試薬で汚れた洗浄対象を洗浄する際、図5(a)に示すように、洗浄水流量の増加に伴って汚れ量が減少してゆく。そして、汚れ量が許容しうる最大値である許容値S以下になった状態を目的とする洗浄が達成された状態と見做している。この場合、図5(a)に示す洗浄対象が、交換直後で使用回数又は使用時間が少なく、汚れの蓄積が殆どない洗浄対象であるとする。
【0061】
これに対し、交換後複数回繰り返し使用され、使用回数又は使用時間が多い洗浄対象の場合には、汚れが蓄積しているため、同一条件で使用したとしても、蓄積した汚れに更に汚れが付着するため汚れの量が増加する。このため、使用回数又は使用時間が多い洗浄対象の場合には、図5(b)に示すように、汚れ量が相対的に増加する。このように、洗浄対象を洗浄する際の洗浄水流量は、使用回数又は使用時間が増加するのに伴って増加することが経験的に知られている。
【0062】
このとき、汚れの蓄積に起因したキャリーオーバーを考慮するため、その原因となる残存汚れを評価した。以下、洗浄対象を検体分注装置3の検体プローブ3cとした場合について説明する。残存汚れを評価する際、自動分析装置1は、予めラック供給装置2上のラック2aに所定濃度の色素溶液を保持した検体容器2bを搭載すると共に、キュベットホイール4bにセットされた複数の反応容器5に汚れ評価液を規定量分注しておく。
【0063】
先ず、図6(a)に示すように、所定濃度の色素溶液Dsを保持した検体容器2bから色素溶液Dsを所定量吸引した後、検体容器2bへ戻す。次に、図6(b)に示すように、検体プローブ3cを洗浄槽38へ移動し、検体プローブ3cの内外を洗浄する。このとき、検体プローブ3cは、配管33から所定流量の洗浄水を一定時間流して内側が洗浄される。
【0064】
次いで、検体プローブ3cをキュベットホイール4bへ移動し、反応容器5内の汚れ評価液を所定量吸引した後、反応容器5へ戻す。その後、キュベットホイール4bを回転し、図6(c)に示すように、この反応容器5を光学測定装置15の位置へ移動する。そして、光源15aが出射し、反応容器5内の汚れ評価液Lを透過して測光センサ15bが受光した光量に対応した光量信号から分析部17aが求めた汚れ評価液の単位体積当たりの吸光度を残存汚れ量とする。
【0065】
このとき、一般に、分注プローブは、外側よりも内側に汚れが蓄積し易い。このため、検体プローブ3cの内側を洗浄する配管33によって圧送される洗浄水の流量を、洗浄の都度変化させることにより、洗浄水流量と残存汚れ量との関係を調べると、図7に示す関係が得られる。従って、検体プローブ3cについて残存汚れ量の許容しうる最大値である許容値Srを設定した場合、許容値Srに対応する洗浄水の流量が、検体プローブ3cを許容しうる残存汚れ量まで洗浄するのに最低限必要な必要洗浄水流量Fnとなる。この検体プローブ3cに関する残存汚れ量の評価方法及び洗浄水流量と残存汚れ量との関係は、反応容器5,第一試薬プローブ6c,第二試薬プローブ8c,撹拌棒13c及び撹拌棒14cにも成り立つ。但し、許容値Srや必要洗浄水流量Fnは、洗浄対象によって異なっている。
【0066】
ここで、残存汚れ量の許容しうる最大値である許容値Srは、洗浄対象によって異なっている。このため、上述した残存汚れの評価方法を用い、洗浄対象毎に交換時からの使用回数と必要洗浄水流量との関係を求めると、例えば、許容値Srが大きい場合には、図7に示すように、洗浄水流量が少なくなるので、図8(a)のように必要洗浄水流量も少なくなる。一方、許容値Srが小さい場合には、洗浄水流量が多くなるので、図8(b)のように必要洗浄水流量も多くなる。
【0067】
従って、予め洗浄対象毎に求めた使用回数と必要洗浄水流量との関係を演算式を含む必要洗浄水流量情報として記憶部17bに記憶しておき、この必要洗浄水流量情報に基づいて演算部17cが演算した使用回数に対応した必要洗浄水流量で洗浄対象を洗浄すると、汚れのキャリーオーバーを回避できることになる。
【0068】
この場合、同様にして、洗浄対象毎に洗剤による特別洗浄時からの使用回数と必要洗浄水流量との関係を求めると、許容値Srが大きい場合には、図9(a)のように必要洗浄水流量は少なくなり、許容値Srが小さい場合には、図9(b)のように必要洗浄水流量は多くなる。
【0069】
以上のようにして決まる必要洗浄水流量に基づく本発明の洗浄方法を以下に説明する。図10は、自動分析装置の複数の洗浄対象として、例えば、検体プローブ3cを洗浄する場合について本発明の洗浄方法を説明するフローチャートである。
【0070】
先ず、自動分析装置1が起動され、検体の分析が開始されると、洗浄制御部17dは、検体プローブ3cの使用情報を取得する(ステップS100)。このとき、洗浄制御部17dは、記憶部17bから使用情報を取得し、或いは取得した前記出力回数と検体プローブ3cに関して予め設定されている洗浄時間との積を使用時間として取得する。
【0071】
次に、洗浄制御部17dは、取得した検体プローブ3cの使用回数又は使用時間が所定値を超えているか否かを判定する(ステップS102)。使用回数又は使用時間が所定値を超えていない場合(ステップS102,No)、検体プローブ3cの使用情報を記憶部17bに記憶する(ステップS104)。この使用情報は、基準時からの使用回数又は使用時間である。
【0072】
記憶部17bが使用情報を記憶すると、演算部17cは、洗浄制御部17dが取得した使用回数又は使用時間をもとに検体プローブ3cの必要洗浄水流量を演算する(ステップS106)。以後、洗浄制御部17dは、検体の分析が進行するのに伴って使用回数又は使用時間を順次更新しながら順次取得してゆく。また、演算部17cは、この更新された使用回数又は使用時間をもとに検体プローブ3cの必要洗浄水流量を演算してゆく。
【0073】
次いで、洗浄制御部17dは、検体プローブ3cの洗浄機構を制御して演算部17cが演算した必要洗浄水流量で検体プローブ3cを洗浄し(ステップS108)、本発明の洗浄方法を終了する。検体プローブ3cは、このようにして使用回数又は使用時間に応じた必要洗浄水流量で洗浄される。この結果、検体プローブ3cは、使用回数又は使用時間の経過に伴って蓄積する汚れに起因したキャリーオーバーを回避することが可能になる。
【0074】
一方、使用回数又は使用時間が所定値を超えている場合(ステップS102,Yes)、洗浄制御部17dは、検体プローブ3cの洗浄機構に洗浄指示信号を出力して特別洗浄し(ステップS110) 、本発明の洗浄方法を終了する。このとき、洗浄制御部17dは、対応する洗浄対象を交換又は特別洗浄すべき旨を表示部19aに表示し、或いは告知部19bによって告知する。
【0075】
なお、反応容器5や第一試薬プローブ6c等の他の洗浄対象についても上記と同様にして本発明の洗浄方法が並行して実行される。
【0076】
以上のように、本発明の自動分析装置と洗浄方法によれば、基準時からの使用回数又は使用時間を含む使用情報をもとに洗浄対象毎に求めた必要洗浄水流量で対応する洗浄対象を洗浄するので、使用回数又は使用時間の経過に伴って蓄積する汚れに起因したキャリーオーバーを洗浄対象毎に回避することができる。このため、本発明によれば、信頼性の高い分析結果を得ることができる。
【0077】
ここで、上記実施の形態は、検体プローブ3cの使用回数又は使用時間が所定値を超えている場合、分析作業中であることから自動分析装置1を停止させないように検体プローブ3cの交換を求めることなく、検体プローブ3cを交換又は特別洗浄すべき旨を表示部19aに表示し、或いは告知部19bによって告知するのに留め、検体プローブ3cの洗浄指示信号を出力して特別洗浄させた。
【0078】
しかし、自動分析装置1を起動した際の初期化時に記憶部17bから各洗浄対象の使用回数又は使用時間を含む使用情報を取得し、この情報をもとに使用回数又は使用時間が所定値を超えている洗浄対象を特別洗浄し、或いは交換するようにしてもよい。このようにすると、検体の分析作業中に洗浄対象を特別洗浄しないで済むため、分析作業の効率低下を回避することができる。
【0079】
また、各洗浄対象の必要洗浄水流量は、図6で説明した評価方法によって残存汚れ量を洗浄対象毎に測定した実測残存汚れ量に基づいて補正してもよい。図11は、実測残存汚れ量に基づく残存汚れ量の補正方法を説明する図である。
【0080】
この場合、例えば、検体プローブ3cの残存汚れ量を図6で説明した評価方法によって測定し、この実測残存汚れ量の測定値に基づいて図7より求めた洗浄水流量がFmであったとする。一方、この検体プローブ3cに関して記憶部17bに記憶されていた使用回数と必要洗浄水流量とが図8(b)に示す関係であったとする。
【0081】
このとき、検体プローブ3cの使用回数がNであったとすると、洗浄制御部17dは、図11に示すように、使用回数Nにおける必要洗浄水流量Fを必要洗浄水流量Fmに変更すると共に、使用回数N以降の必要洗浄水流量に必要洗浄水流量Fmと必要洗浄水流量Fとの差分ΔF(=Fm−F)を追加した流量を補正必要洗浄水流量として検体プローブ3cへ圧送するように送水ポンプ34を制御する。これにより、自動分析装置1は、検体プローブ3cの必要洗浄水流量を一層適正な流量に補正することができる。
【0082】
なお、上述した残存汚れ量の評価方法は、図6に示す方法に限定されるものではない。図12は、残存汚れ量の評価方法の第1変形例を示している。例えば、図12(a)に示すように、検体プローブ3cを洗浄槽38へ移動し、配管41によって洗浄槽38と接続された色素水容器42から送液ポンプ43により所定濃度の色素溶液を洗浄槽38へ流す。このとき、弁37aを閉じて送水ポンプ34を駆動し、洗浄槽38内の色素溶液を検体プローブ3cに所定量吸引させた後、吐出させる。
【0083】
次に、送液ポンプ43を停止し、弁37aを開いて送水ポンプ34を駆動し、配管33,37に洗浄水を圧送して検体プローブ3cの内外を洗浄する。次いで、検体プローブ3cをキュベットホイール4bへ移動し、反応容器5内の汚れ評価液を所定量吸引させた後、反応容器5へ戻す。その後、キュベットホイール4bを回転し、図12(b)に示すように、この反応容器5を光学測定装置15の位置へ移動する。そして、光源15aが出射し、反応容器5内の汚れ評価液Lを透過して測光センサ15bが受光した光量に対応した光量信号から分析部17aが求めた汚れ評価液の単位体積当たりの吸光度を残存汚れ量とする。
【0084】
また、図13は、残存汚れ量の評価方法の第2変形例を示している。例えば、図13(a)に示すように、所定濃度の色素溶液Dsを保持した検体容器2bから色素溶液Dsを所定量吸引した後、検体容器2bへ戻す。次に、図13(b)に示すように、検体プローブ3cを洗浄槽38Aへ移動し、送水ポンプ34を駆動して検体プローブ3cの内外を洗浄する。ここで、洗浄槽38Aは、透明素材から構成すると共に、槽内に液体を一時溜めておくことができるように構成されている。また、洗浄槽38Aは、配管37の他に、汚れ評価液を保持した評価液容器47との間を接続すると共に、送液ポンプ48を設けた配管46が設けられている。
【0085】
洗浄終了後、送液ポンプ48を駆動し、図13(c)に示すように、評価液容器47から洗浄槽38Aへ評価液を流し、洗浄槽38A内に貯留しておく。このとき、洗浄槽38A内の汚れ評価液を撮像手段、例えば、CCDカメラCmで撮像し、画像処理によって画像濃度を求めておく。次いで、弁37aを閉じて送水ポンプ34を駆動し、洗浄槽38A内の汚れ評価液を検体プローブ3cに所定量吸引させた後、吐出させる。その後、洗浄槽38A内の汚れ評価液を撮像手段、例えば、CCDカメラCmで撮像し、同様に画像濃度を求めておく。そして、求めた画像濃度の差分の汚れ評価液の単位体積当たりの差分値を残存汚れ量とする。
【0086】
これら2つの残存汚れ量の評価方法は、反応容器5,第一試薬プローブ6c,第二試薬プローブ8c,撹拌棒13c及び撹拌棒14cにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明の自動分析装置と洗浄方法は、蓄積する汚れに起因するキャリーオーバーを洗浄対象毎に回避するのに有用であり、特に、分析精度を向上させて、信頼性の高い分析結果を得るのに適している。
【符号の説明】
【0088】
1 自動分析装置
2 ラック供給装置
3 検体分注装置
3c 検体プローブ
31 プローブ駆動部
32 分注制御部
33,35,37 配管
34 送水ポンプ
36 洗浄水容器
38 洗浄槽
4 反応部
5 反応容器
6 第一試薬分注装置
6c 第一試薬プローブ
6d 洗浄槽
8 第二試薬分注装置
9 第一試薬保冷庫
10 第二試薬保冷庫
11,12 読取装置
13 第一撹拌装置
13c 撹拌棒
131 支柱駆動部
132 撹拌制御部
134 送水ポンプ
135,137 配管
136 洗浄水容器
138 洗浄槽
14 第二撹拌装置
14c 撹拌棒
15 光学測定装置
16 洗浄装置
16A 洗浄ノズル対
16B〜16D 洗浄ノズル対
16E,16F 吸引ノズル
16H 廃液タンク
16J 洗剤タンク
16K 洗浄水タンク
16L 送液ポンプ
16M〜16O 送水ポンプ
17 制御部
17a 分析部
17b 記憶部
17c 演算部
17d 洗浄制御部
18 入力部
19 出力部
Ds 色素溶液
L 汚れ評価液
W 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析し、前記検体の分析時に複数の洗浄対象を洗浄水によってそれぞれ洗浄する複数の洗浄機構を備える自動分析装置であって、
各洗浄対象の基準時からの使用回数又は使用時間を含む使用情報と、前記使用情報をもとに前記各洗浄対象の必要洗浄水流量を求める演算式を含む必要洗浄水流量情報とを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記使用情報と前記必要洗浄水流量情報とをもとに前記各洗浄対象の必要洗浄水流量を演算する演算手段と、
前記演算手段が演算した前記必要洗浄水流量の洗浄水によって前記各洗浄対象を洗浄するように前記各洗浄機構を制御する洗浄制御手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記複数の洗浄対象は、前記検体と前記試薬とを反応させる反応容器、前記反応容器に前記試薬を分注する試薬プローブ、前記反応容器に前記検体を分注する検体プローブ及び前記反応容器に分注された前記検体又は前記試薬を撹拌する撹拌棒を含むことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記基準時は、前記洗浄対象の交換時又は洗剤を使用した特別洗浄時であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記演算手段は、予め設定された洗浄水流量補正式に基づき前記必要洗浄水流量を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記洗浄対象の使用回数又は使用時間が所定回数又は所定時間に達した場合に、前記洗浄対象を交換又は洗剤を使用した特別洗浄するように警告する警告手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項6】
検体と試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析し、前記検体の分析時に複数の洗浄対象を洗浄水によって洗浄する複数の洗浄機構を備える自動分析装置が前記洗浄対象に対して行う洗浄方法であって、
前記洗浄対象の基準時からの使用回数又は使用時間を含む使用情報として取得する取得工程と、
前記使用情報をもとに前記洗浄対象の必要洗浄水流量を求める演算式又は表を含む必要洗浄水流量情報を記憶する記憶工程と、
前記記憶工程で記憶した前記使用情報と前記必要洗浄水流量情報とをもとに前記洗浄対象の必要洗浄水流量を演算する演算工程と、
前記演算工程で演算した前記必要洗浄水流量で前記洗浄対象を洗浄させる洗浄制御工程と、
を含むことを特徴とする洗浄方法。
【請求項7】
前記複数の洗浄対象は、前記検体と前記試薬とを反応させる反応容器、前記反応容器に前記試薬を分注する試薬プローブ、前記反応容器に前記検体を分注する検体プローブ及び前記反応容器に分注された前記検体又は前記試薬を撹拌する撹拌棒を含むことを特徴とする請求項6に記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記基準時は、前記洗浄対象のそれぞれの交換時又は洗剤を使用した特別洗浄時であることを特徴とする請求項6又は7に記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記演算工程は、予め設定された洗浄水流量補正式に基づき前記必要洗浄水流量を補正する工程を含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記洗浄対象の使用回数又は使用時間が所定回数又は所定時間に達した場合に、前記洗浄対象を交換又は洗剤を使用した特別洗浄するように警告する警告工程を含むことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一つに記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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