説明

自動分析装置の撹拌装置

【課題】 反応容器に収容した液体の撹拌のために反応容器を一旦反応装置外へ搬送することなく、反応装置上で撹拌可能な撹拌装置を提供すること。
【解決手段】 反応容器を保持する反応容器保持部と、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座と、反応容器保持部に保持された反応容器を揺動する反応容器揺動手段とを備えた、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置であって、(A)反応容器保持部が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器保持部が前記揺動軸に対する軸受と突起部とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、撹拌装置、前記撹拌装置を備えた反応装置、および前記反応装置を備えた自動分析装置により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血液や血清といった試料(検体)中に含まれる微量成分を分析するための自動分析装置に用いる撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の微量成分を分析する際、試料と試薬とを反応させた後、未反応の成分を洗浄除去して検出する自動分析装置がある。このような自動分析装置は、
反応容器内で微量成分を含んだ試料と試薬とを反応させる反応装置と、
未反応成分を洗浄する洗浄手段と、
微量成分と試薬との反応物を検出する検出手段と、
反応容器を搬送する搬送手段と、
を備えている。そして通常、前記反応装置で試料と試薬とを反応させる前に、反応容器内に収容した試薬と前記反応容器に分注した試料とを均一化させるべく撹拌操作を行なう。
【0003】
前記撹拌操作を行なう撹拌装置としては、前記試料と前記試薬との混合物をチップで吸引/吐出することで撹拌する手段や、前記試料と前記試薬との混合溶液を収容した反応容器自体を揺動して撹拌する手段(特許文献1)が知られている。
【0004】
チップで吸引/吐出することで撹拌する手段を撹拌装置として用いる場合、試料を反応容器に分注する分注手段と共用するならば、前記分注手段の処理能力が低下する問題が発生する。また、撹拌用のチップと分注用のチップを別体として独立に操作するならば、チップ同士の干渉の問題が発生する。
【0005】
反応容器自体を揺動して撹拌する手段を撹拌装置として用いる場合は、分注手段の処理能力が低下する問題は解消されるものの、搬送手段により反応容器を一旦前記撹拌装置に搬送する必要がある。そのため、前記撹拌装置による撹拌が必要な反応容器が増加すると、前記撹拌装置に反応容器を搬送する回数が増え、前記搬送手段の処理能力が低下する問題が発生する。また、搬送効率を向上させるためには、前記搬送手段による搬送距離が極力短くなるように搬送手段および前記撹拌装置の配置を工夫する必要があり、自動分析装置の全体構成に制限が発生する。また、搬送回数が増加することにより、複数の搬送手段が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−139463号公報
【特許文献2】特許2884604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、反応容器に収容した液体の撹拌のために反応容器を一旦反応装置外へ搬送することなく、反応装置上で撹拌可能な撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の発明を包含する。
【0009】
第一の発明は、
反応容器を保持する反応容器保持部と、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座と、反応容器保持部に保持された反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備えた、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置であって、
(A)反応容器保持部が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または
(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器保持部が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、前記撹拌装置である。
【0010】
第二の発明は、
反応容器を保持する反応容器保持部と、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を少なくとも一つ設けた反応容器移送手段と、反応容器保持部に保持された反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備えた、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置であって、
(A)反応容器保持部が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または
(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器保持部が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、前記撹拌装置である。
【0011】
第三の発明は、
反応容器移送手段が、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を、周縁部に複数設けた、回転可能な水平円板を設けた手段であり、
反応容器保持部が、その揺動軸またはその軸受と非平行方向に突起部を有し、かつ前記突起部が前記水平円板の外径方向を向くよう前記保持座に保持されている、第二の発明に記載の撹拌装置である。
【0012】
第四の発明は、反応容器揺動手段が、反応容器保持部が有する突起部と係合可能な切り欠き部を有した係合部材と、前記突起部が前記切り欠き部と係合した状態で前記係合部材を上下に駆動可能な駆動手段と、を有した手段である、第一から第三のいずれかの発明に記載の撹拌装置である。
【0013】
第五の発明は、係合部材が有する切り欠き部の上下方向の幅が、外側から内側に向かって狭くなっている、第四の発明に記載の撹拌装置である。
【0014】
第六の発明は、
反応容器と、反応容器を揺動可能に保持する保持座と、反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備えた、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置であって、
(A)反応容器が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または
(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、前記撹拌装置である。
【0015】
第七の発明は、
反応容器を保持する反応容器保持部と、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を少なくとも一つ設けた反応容器移送手段と、反応容器保持部に保持された反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備え、(A)反応容器保持部が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器保持部が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置と、
反応容器保持部に保持された反応容器を温調する温調手段と、
を備えた、反応容器に収容された液体を撹拌可能な反応装置である。
【0016】
第八の発明は、
反応容器移送手段が、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を、周縁部に複数設けた、回転可能な水平円板を設けた手段であり、
反応容器保持部が、その揺動軸と非平行方向に突起部を有し、かつ前記突起部が前記水平円板の外径方向を向くよう前記保持座に保持されており、
温調手段が前記保持座の下方かつ前記保持座と平行する位置に設けた、固定した板を有した手段である、
第七の発明に記載の反応装置である。
【0017】
第九の発明は、温調手段が、保持座に保持されている反応容器保持部に保持した、反応容器の底部と当接可能な位置に設けた、固定した板を有した手段であり、かつ前記固定した板が、反応容器に収容された液体を反応容器揺動手段により撹拌する位置に、凹部または切り欠き部を設けた板である、第七または第八の発明に記載の反応装置。
【0018】
第十の発明は、
試薬を収容した反応容器および試料を収納する収納手段と、反応容器に収容した溶液を撹拌し一定時間反応させる反応装置と、収納手段に収納した反応容器を反応装置に搬送する搬送手段と、反応装置に保持した反応容器に試料を分注する分注手段と、反応容器から発する光を検出する検出手段と、を備えた自動分析装置であって、
反応装置が、反応容器を保持する反応容器保持部と、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を少なくとも一つ設けた反応容器移送手段と、反応容器保持部に保持された反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備え、(A)反応容器保持部が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器保持部が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置と、反応容器保持部に保持された反応容器を温調する温調手段と、を備えた装置である、前記自動分析装置である。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明の撹拌装置の一態様として、
外部に延出した揺動軸と突起部とを有する、反応容器を保持するための反応容器保持部と、
前記揺動軸に対する軸受を有する、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座と、
前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する反応容器揺動手段と、
を備えた撹拌装置があげられる。また、揺動軸を保持座が、前記揺動軸に対する軸受を反応容器保持部が、それぞれ有してもよく、その場合は、
揺動軸を有する、反応容器を保持する反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座と、
突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有する反応容器保持部と、
前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する反応容器揺動手段と、
を備えた撹拌装置となる。
【0021】
さらに、反応容器自体が外部に延出した揺動軸と突起部とを有してもよく、その場合は、
外部に延出した揺動軸と突起部とを有する反応容器と、
前記揺動軸に対する軸受を有する、反応容器を揺動可能に保持する保持座と、
前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する反応容器揺動手段と、
を備えた撹拌装置、または
揺動軸を有する、反応容器を揺動可能に保持する保持座と、
突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有する反応容器と、
前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する反応容器揺動手段と、
を備えた撹拌装置となり、前記撹拌装置も本発明の撹拌装置に含まれる。
【0022】
本発明の撹拌装置のうち、反応容器保持部(または反応容器)を揺動可能に保持する保持座は固定されていてもよいし、移動可能としてもよい。ただし、本発明の撹拌装置を、自動分析装置に備える反応装置の構成手段とする場合は、通常、未反応成分を洗浄するための洗浄手段や、試料を反応容器に分注する分注手段などを反応装置上に設けることから、反応容器保持部(または反応容器)を揺動可能に保持する保持座は移動可能とするほうが好ましい。
【0023】
本発明の撹拌装置のうち、反応容器保持部(または反応容器)が有する突起部は、揺動軸周りにモーメントを生じる作用点の位置に配すればよい。例えば、反応容器揺動手段が有する係合部材を左右方向に駆動(反応容器を左右方向に揺動)させる場合は揺動軸(または軸受)と平行方向に突起部を有していると好ましく、係合部材を上下方向に駆動(反応容器を上下方向に揺動)させる場合は揺動軸(または軸受)と非平行方向に突起部を有していると好ましい。
【0024】
本発明の撹拌装置のうち、反応容器揺動手段が有する係合部材の駆動方向は、反応容器保持部(または反応容器、保持座)に設けた揺動軸を中心に前記反応容器を揺動可能であれば、その方向に限定はない。ただし、反応容器移送手段により、反応容器が移送される場合は、その移送方向に依存する。例えば、反応容器の移送方向が水平方向の場合は係合部材を上下方向に駆動させればよいし、反応容器の移送方向が垂直方向の場合は係合部材を左右方向に駆動させればよい。通常、自動分析装置において反応容器は水平方向に移送させることが多いことから、反応容器揺動手段が有する係合部材の駆動方向は上下方向であると好ましい。なお、反応容器揺動手段が有する係合部材は、少なくとも、反応容器または反応容器を保持する反応容器保持部が有する、突起部が移動する軌道上に切り欠き部を有する必要がある。
【0025】
本発明の撹拌装置のうち、反応容器移送手段は、反応容器保持部(または反応容器)を揺動可能に保持する保持座を少なくとも一つ設けることで、反応容器を移送できれば、その移送経路に限定はなく、直線経路で移送してもよいし、いわゆるスネークチェーン型のコンベア(特許文献2)を用いて移送してもよいし、円板または扇形板の円周経路または円弧経路上に反応容器保持部(または反応容器)を設け前記板を回転させることで行なってもよい。反応容器移送手段の一態様として、反応容器保持部(または反応容器)を揺動可能に保持する保持座を、周縁部に複数設けた、回転可能な水平円板を設けた手段があり、前記手段は一定の空間内により多くの反応容器を保持できる点で好ましい。なお、前記円板に設ける、反応容器保持部(または反応容器)を揺動可能に保持する保持座の数および間隔は、本発明の撹拌装置を備える自動分析装置の大きさや処理能力を考慮し、適宜決定すればよい。
【0026】
本発明の撹拌装置を有した反応装置の一態様として、
外部に延出した揺動軸と突起部とを有する、反応容器を保持するための反応容器保持部と、
前記揺動軸に対する軸受を有する、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を少なくとも一つ設けた反応容器移送手段と、
反応容器保持部に保持された反応容器を温調する温調手段と、
前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動させるための駆動手段とを有した反応容器揺動手段と、
を備えた装置があげられる。前記反応装置は、反応容器に収容された試料と試薬の撹拌混合と、混合された前記試料と前記試薬との反応とを一つの装置で行なうことができるため、前記反応装置を備えた自動分析装置の小型化・簡素化に貢献できる。また、従来の装置(特許文献1)のように、反応容器に収容された試料と試薬の撹拌混合を行なう際、一旦反応容器を反応装置外に搬出する操作がないため、前記搬出に伴う前記試料と試薬の温度変化を抑えることができる。
【0027】
本発明の反応装置のうち、反応容器移送手段が、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を、周縁部に複数設けた、回転可能な水平円板を設けた手段である場合、温調手段を前記保持座の下方かつ前記保持座と平行する位置に設けた、固定した板を有した手段とすると好ましい。
【0028】
本発明の反応手段のうち、温調手段が、前記保持座の下方かつ前記保持座と平行する位置に設けた、固定した板を有した手段である場合、反応容器移送手段に設けた保持座に揺動可能に保持された、反応容器保持部で保持した反応容器の底部が、前記固定した板と当接可能とすると、前記反応容器に収容された液体の温調精度が高まるため好ましく、前記反応容器保持部は、保持した反応容器の底部と前記固定した板とが当接できるよう、その底部が開口していると好ましい。なお、反応容器移送手段に設けた保持座に揺動可能に保持された、反応容器保持部の底部は、温調手段である固定した板と当接すると、反応容器移送手段による測定容器を移動する際、干渉する恐れがあること、前記固定した板から大きく離れると、前記反応容器保持部が有する突起部と反応容器揺動手段が有する係合部材との係合不良の恐れがあることから、前記固定した板とほぼ当接(具体的には反応容器保持部の底部から前記固定した板までの距離が1mm程度またはそれ未満)すると好ましい。さらに、反応容器揺動手段で反応容器保持部(反応容器)を揺動することによる前記固定した板との干渉を防ぐため、温調手段が有する固定した板のうち、反応容器(反応容器保持部)を反応容器揺動手段により揺動する位置には、凹部または切り欠き部を設けると好ましい。
【0029】
本発明の反応手段を備えた自動分析装置の一態様として、
試薬を収容した反応容器および試料を収納する収納手段と、
外部に延出した揺動軸と突起部とを有する、反応容器を保持するための反応容器保持部と、前記揺動軸に対する軸受を有する、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を少なくとも一つ設けた反応容器移送手段と、反応容器保持部に保持された反応容器を温調する温調手段と、前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動させるための駆動手段とを有した反応容器揺動手段と、を備えた、反応容器に収容した溶液を撹拌し一定時間反応させる反応装置と、
収納手段に載置した反応容器を反応装置に搬送する搬送手段と、
反応装置に載置した反応容器に試料を分注する分注手段と、
反応容器から発する光を検出する検出手段と、
を備えた自動分析装置があげられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の撹拌装置は、
反応容器を保持する反応容器保持部と、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座と、反応容器保持部に保持された反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備えた、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置であって、
(A)反応容器保持部が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または
(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器保持部が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、ことを特徴としている。本発明の撹拌装置を有する反応装置は、反応容器に収容した液体を一旦反応装置外に備えた撹拌装置へ搬送する必要がなく、反応容器に収容した液体の混合撹拌作業を反応容器保持部で保持された状態で行なうことができる。そのため、本発明の反応装置を自動分析装置に備えることで、自動分析装置の簡素化・小型化が可能となる。また、反応容器に収容した液体を一旦反応装置外に備えた撹拌装置へ搬送する必要がないため、前記搬送に伴う前記液体の温度変化を抑えることができる。よって、従来の自動分析装置と比較し、試料内に含まれる目的成分の分析をより高い精度で行なうことができる。
【0031】
なお、反応容器自体が外部に延出した揺動軸と突起部とを有してもよく、その場合、本発明の撹拌装置は、
反応容器と、反応容器を揺動可能に保持する保持座と、反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備えた、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置であって、
(A)反応容器が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または
(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器が前記揺動軸に対する軸受と突起部を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の撹拌装置を有する反応装置を備えた、自動分析装置の一態様(上面図)である。
【図2】本発明の反応装置における、反応容器揺動手段、反応容器移送手段(反応テーブル)および温調手段との位置関係を示した図である。(a)は反応容器保持部が有する突起部と反応容器揺動手段が有する係合部材とが係合した状態を、(b)は前記突起部と前記係合部材とが係合しない状態を、それぞれ示す。
【図3】本発明の反応装置における、反応容器保持部、保持座および温調手段の位置関係を示した図である。(a)が上面図、(b)が正面図(揺動位置)、(c)が別の正面図(当接位置)である。
【図4】本発明の撹拌装置において、反応容器揺動手段による反応容器に収容した液体の混合撹拌の模式図である。(a)は停止状態を、(b)は上死点を、(c)下死点を、それぞれ示す。
【図5】本発明の撹拌装置において、反応容器保持部が有する突起部と反応容器揺動手段が有する係合部材との係合の一態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。
【0034】
本発明の撹拌装置を有する反応装置を備えた、自動分析装置の一態様(上面図)を図1に示す。図1において本願発明と関連性が低い部分については省略して図示している。収納手段20に載置した、試薬を収納した反応容器21が、搬送手段30によって把持され、反応装置40に備えた反応テーブル41のAの位置に搬入される。Aの位置に搬入された反応容器は、反応テーブル駆動手段によって検体分注位置Bに移送される。Bの位置に移送された反応容器は、収納手段20に配置されたチップ22を装着した分注手段50により反応容器23内の試料が分注される。前記試料が分注された反応容器はそのままBの位置で反応容器揺動手段60により混合撹拌される。混合された前記試料と前記試薬とが一定時間反応テーブル41で反応した後、反応テーブル駆動手段によって洗浄位置(Cの位置)に移送し、B/F(Bound/Free)洗浄などにより未反応成分を除去する。その後、反応テーブル駆動手段によって基質分注位置(Dの位置)に移送し、発光基質が分注されることで発光反応を行なう。前記発光反応後の溶液を収容した反応容器は反応テーブル駆動手段によって再びAの位置に移送後、搬送手段30によって把持することで反応テーブル41から搬出し、検出手段10のEの位置へ搬入する。その後、反応容器は、検出器で前記容器からの発光を検出するFの位置に移送され、検出操作を行なう。
【0035】
本発明の反応装置における、反応容器揺動手段60、反応容器移送手段(反応テーブル41)および温調手段44との位置関係を図2に示し、本発明の反応装置における、反応容器保持部42、保持座43および温調手段44の位置関係を示した図を図3に示す。反応テーブル41は周縁部に反応容器保持部42を保持するための保持座43を複数設けた、回転可能な水平円板である。反応テーブル41に設けた保持座43は、反応容器保持部42が有する揺動軸42bに対する軸受を有しており、これにより反応容器保持部42を揺動可能に保持している。反応容器21を保持する反応容器保持部42が有する突起部42aは、反応テーブル41の外径方向を向いており、反応容器揺動手段60が有するコの字型の係合部材61と係合可能となっている。なお、反応容器保持部42の底部は開口しており、反応容器21を保持した際、反応容器21の底部は露出した状態となる。反応テーブル41の下方かつ反応テーブル41と平行する位置には、固定した板(温調手段44)を備えており、反応容器保持部42に保持された反応容器21の底部が、温調手段44を構成する固定した板と当接可能としている。これにより、反応容器に収容された液体を高い精度で温調することができる。係合部材61は、係合部材駆動手段62により上下に駆動させることが可能であり、突起部42aが係合部材61と係合した状態で係合部材61を上下に駆動させることで、前記突起部42aを有した反応容器保持部42は揺動軸42bを中心に揺動し、反応容器保持部42に保持された反応容器21に収容された液体を混合撹拌させる。前述したように、反応容器保持部42に保持された反応容器21の底部は温調手段44が有する固定した板と当接しているが(図3c)、反応容器揺動手段60により反応容器21を保持した反応容器保持部42を揺動する(反応容器21に収容した液体を撹拌する)位置では(図3b)、揺動により、反応容器保持部42および反応容器21と、温調手段44が有する固定した板との干渉を防ぐため、凹部44aを設けている。反応容器揺動手段60により反応容器保持部42を揺動させるとき、温調手段44が有する固定した板に設けた凹部44aにより、一旦温調手段44から離れることになるが(図3b)、揺動終了後は反応テーブル駆動手段によって凹部44aのない位置まで(図3c)移送されるため、再び反応容器の底部と温調手段44が有する固定した板と当接させることができる。
【0036】
本発明の撹拌装置において、反応容器揺動手段60による反応容器に収容した液体の混合撹拌の模式図を図4に示す。反応容器を保持する反応容器保持部42が有する揺動軸42bは回転可能な状態で反応テーブルに設けた保持座に固定されており、揺動する際の支点になる。反応容器揺動手段60が有する係合部材61は、係合部材駆動手段62であるステッピングモータに偏心して装着されたベアリング(不図示)と移動可能な状態で嵌合しており、係合部材駆動手段(ステッピングモータ)62が回転し、ベアリングが上方に移動すると係合部材61は上昇し(図4b)、ベアリングが下方に移動すると係合部材は下降する(図4c)。コの字型の係合部材61に反応容器保持部42が有する突起部42aが係合した状態で、係合部材駆動手段62により係合部材61を上下に駆動させると、揺動軸42bを回転中心として反応容器保持部42が揺動運動し、反応容器保持部42に保持された反応容器に収容された液体を混合撹拌させることができる。なお、係合部材61および突起部42aは係合/離合を繰り返すため、摩擦の少ない部材の組み合わせが好ましく、例えば、係合部材61がアルミ、突起部42aがポリオキシアセタールの組み合わせがあげられる。
【0037】
本発明の撹拌装置において、反応容器保持部が有する突起部42aと反応容器揺動手段が有する係合部材61との係合の一態様を示した図を図5に示す。係合部材61が有する切り欠き部(コの字部)の上下方向の幅は、外側から内側に向かって狭くなっている。図5に示す係合部材61は、本発明の撹拌装置における反応容器保持部を反応容器移送手段により左側から右側へ(または右側から左側へ)移送する場合、係合開始時における突起部42aと係合部材61との係合を容易とする一方、中央部では突起部42aと係合部材61とが最小限の遊嵌状態で係合されるため、係合部材駆動手段による駆動を効率よく突起部42aへ伝達することができる。
【符号の説明】
【0038】
10:検出手段
20:収納手段
21:反応容器
22:チップ
23:反応容器
24:廃棄箱
30:搬送手段
40:反応装置
41:反応テーブル(反応容器移送手段)
42:反応容器保持部
42a:突起部
42b:揺動軸
43:保持座
43a:板ばね
44:温調手段
44a:温調手段に設けた凹部
50:分注手段
60:反応容器揺動手段
61:係合部材
62:係合部材駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器を保持する反応容器保持部と、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座と、反応容器保持部に保持された反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備えた、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置であって、
(A)反応容器保持部が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または
(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器保持部が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、前記撹拌装置。
【請求項2】
反応容器を保持する反応容器保持部と、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を少なくとも一つ設けた反応容器移送手段と、反応容器保持部に保持された反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備えた、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置であって、
(A)反応容器保持部が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または
(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器保持部が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、前記撹拌装置。
【請求項3】
反応容器移送手段が、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を、周縁部に複数設けた、回転可能な水平円板を設けた手段であり、
反応容器保持部が、その揺動軸またはその軸受と非平行方向に突起部を有し、かつ前記突起部が前記水平円板の外径方向を向くよう前記保持座に保持されている、請求項2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
反応容器揺動手段が、反応容器保持部が有する突起部と係合可能な切り欠き部を有した係合部材と、前記突起部が前記切り欠き部と係合した状態で前記係合部材を上下に駆動可能な駆動手段と、を有した手段である、請求項1から3のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項5】
係合部材が有する切り欠き部の上下方向の幅が、外側から内側に向かって狭くなっている、請求項4に記載の撹拌装置。
【請求項6】
反応容器と、反応容器を揺動可能に保持する保持座と、反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備えた、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置であって、
(A)反応容器が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または
(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、前記撹拌装置。
【請求項7】
反応容器を保持する反応容器保持部と、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を少なくとも一つ設けた反応容器移送手段と、反応容器保持部に保持された反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備え、(A)反応容器保持部が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器保持部が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置と、
反応容器保持部に保持された反応容器を温調する温調手段と、
を備えた、反応容器に収容された液体を撹拌可能な反応装置。
【請求項8】
反応容器移送手段が、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を、周縁部に複数設けた、回転可能な水平円板を設けた手段であり、
反応容器保持部が、その揺動軸と非平行方向に突起部を有し、かつ前記突起部が前記水平円板の外径方向を向くよう前記保持座に保持されており、
温調手段が前記保持座の下方かつ前記保持座と平行する位置に設けた、固定した板を有した手段である、
請求項7に記載の反応装置。
【請求項9】
温調手段が、保持座に保持されている反応容器保持部に保持した、反応容器の底部と当接可能な位置に設けた、固定した板を有した手段であり、かつ前記固定した板が、反応容器に収容された液体を反応容器揺動手段により撹拌する位置に、凹部または切り欠き部を設けた板である、請求項7または8に記載の反応装置。
【請求項10】
試薬を収容した反応容器および試料を収納する収納手段と、反応容器に収容した溶液を撹拌し一定時間反応させる反応装置と、収納手段に収納した反応容器を反応装置に搬送する搬送手段と、反応装置に保持した反応容器に試料を分注する分注手段と、反応容器から発する光を検出する検出手段と、を備えた自動分析装置であって、
反応装置が、反応容器を保持する反応容器保持部と、反応容器保持部を揺動可能に保持する保持座を少なくとも一つ設けた反応容器移送手段と、反応容器保持部に保持された反応容器を揺動する反応容器揺動手段と、を備え、(A)反応容器保持部が外部に延出した揺動軸と突起部とを有し、保持座が前記揺動軸に対する軸受を有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、または(B)保持座が揺動軸を有し、反応容器保持部が突起部と前記揺動軸に対する軸受とを有し、反応容器揺動手段が前記突起部と係合可能な係合部材と、前記係合部材を駆動可能な駆動手段とを有する、反応容器に収容された液体を撹拌する撹拌装置と、反応容器保持部に保持された反応容器を温調する温調手段と、を備えた装置である、前記自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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