説明

自動分析装置及びその分注プローブ

【課題】試料間のキャリーオーバを低減することができる自動分析装置及びその分注プローブを提供する。
【解決手段】試料容器17内の試料を吸引して吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、サンプル分注プローブ16を試料容器17内へ移動して下層吸引位置で停止させるサンプル分注アーム10とを備え、サンプル分注プローブ16は、試料を吸引する開口部を有する一端から、吸引した試料を含む流体の端部までの吸引範囲W1では、内径Φ1を有する流路を形成し、下層吸引位置で停止したときに試料容器17内の試料と接触する吸引範囲W1を含む接触範囲W2では、一端から離れるに従い、外径が単調に増加して無段階的に傾斜する傾斜面S1を有する無段差の外面を形成すると共に、吸引範囲W1の流路に連なる内径Φ1よりも大きい内径Φ2を有する流路を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に含まれている成分を分析する自動分析装置及びその分注プローブに係り、特に、液体を分注する分注プローブを備えた自動分析装置及びその分注プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、被検体から採取された被検試料と各検査項目の試薬との混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、分光光度計や比濁計等の測光部で光学的に測定することにより、被検試料中の様々な検査項目成分の濃度や酵素の活性等で表される分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料毎に複数の検査項目の中から設定された検査対象の項目の分析を行うために、サンプル分注プローブが試料容器内の試料を吸引して反応容器に吐出する分注を行い、試薬分注プローブが試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出する分注を行う。そして、測光部が反応容器内に分注された試料及び試薬の混合液を測定する。
【0004】
サンプル分注プローブは、先行する被検試料の分注終了後、その先行試料がサンプル分注プローブを介して後続する被検試料に持ち越されて汚染される試料間のキャリーオーバを防ぐため、被検試料の分注終了毎に洗浄される。しかしながら、より高感度な測定が求められる自動分析装置の分野では、更なる試料間のキャリーオーバの低減が望まれている。この中にあって、先行試料の残存量をより低減することができる洗浄性に優れたサンプル分注プローブが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このサンプル分注プローブは、試料の吸引及び吐出を行う一端近傍に段階的に内径が狭くなるように配設された複数の直管部と、直管部間を接合する複数の縮径部とを備え、内部に残存する先行試料を最小限に抑えて、洗浄効率を向上させることができる形状になっている。
【0006】
ところで、試料容器には被検体から採血された全血を収容する採血管がある。この採血管に収容された全血は、上澄みの血清又は血漿からなる上層の試料とこの試料の下側の血球等を含む下層の試料に分離される。そして、大部分の検査項目では上層の試料を分注して分析が行われ、例えばグリコヘモグロビンなど一部の検査項目では下層の試料を分注して分析が行われる。そして、下層試料の分注における吸引では、上層試料を通過させて下層試料の吸引が可能な位置でサンプル分注プローブを停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−249535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のサンプル分注プローブを用いて下層試料の吸引を行うと、後続試料が下層試料である場合にサンプル分注プローブ一端近傍の外面が試料に接触するため、その外面の縮径部と直管部間の段差の部分に先行試料が残存して試料間のキャリーオーバが大きくなるため、下層試料の分注精度が悪化する問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、試料間のキャリーオーバを低減することができる自動分析装置及びその分注プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る本発明の自動分析装置は、試料と試薬を分注して、その混合液を測定する自動分析装置において、前記試料を収容する試料容器と、前記試料容器内の試料を吸引して、吐出する分注を行う管状の分注プローブと、前記分注プローブを前記試料容器内へ移動して、前記試料容器内の試料の内の下層に位置する下層試料の吸引が可能な下層吸引位置で停止させるプローブ移動手段とを備え、前記分注プローブは、前記試料容器内の試料を吸引する開口部を有する一端から、吸引した試料を含む流体の端部までの吸引範囲では、所定の内径を有する流路を形成し、前記下層吸引位置で停止したときに前記試料容器内の試料と接触する前記吸引範囲を含む接触範囲では、前記一端から離れるに従い、外径が単調に増加して無段階的に傾斜する傾斜面を有する無段差の外面を形成すると共に、前記流路に連なる前記所定の内径よりも大きい内径を有する流路を形成していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る自動分析装置の分注プローブは、試料を吸引して、吐出する分注を行う自動分析装置の分注プローブにおいて、前記自動分析装置の試料容器内の試料を吸引する開口部を有する一端から、吸引した試料を含む流体の端部までの吸引範囲では、所定の内径を有する流路を形成し、前記試料容器内の試料の内の下層に位置する下層試料及びこの下層試料の上側に位置する上層試料と接触する前記吸引範囲を含む接触範囲では、前記一端から離れるに従い、外径が単調に増加して無段階的に傾斜する傾斜面を有する無段差の外面を形成すると共に、前記流路に連なる前記所定の内径よりも大きい内径を有する流路を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試料容器内の下層試料の吸引が可能な位置で停止したときに試料と接触する接触範囲では、試料を吸引する一端から離れるに従い、外径が単調に増加して無段階的に傾斜する傾斜面を有する無段差の外面を形成する分注プローブを用いて、下層試料の分注を行うことにより、試料間のキャリーオーバを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る分析部の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の実施例に係る試料容器内の下層吸引位置及び上層吸引位置で停止したサンプル分注プローブを示す断面図。
【図4】本発明の実施例に係るサンプル分注プローブの一端部の構成の一例を示す断面図。
【図5】本発明の実施例に係る洗浄部の下層洗浄位置及び上層洗浄位置で停止したサンプル分注プローブを示す断面図。
【図6】本発明の実施例に係る下層試料を分注する工程を示すフローチャート。
【図7】本発明の実施例に係る下層試料の分注におけるサンプル分注プローブの吸引及び吐出を示す断面図。
【図8】本発明の実施例に係る上層試料を分注する工程を示すフローチャート。
【図9】本発明の実施例に係る上層試料の分注におけるサンプル分注プローブの吸引及び吐出を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図9を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料等の試料と各検査項目の分析に用いる試薬との混合液を測定して標準データや被検データを生成する分析部24と、分析部24の測定に関る各分析ユニットの駆動及び制御を行う分析制御部25とを備えている。
【0017】
また、自動分析装置100は、分析部24で生成された標準データや被検データを処理して検量データや分析データを生成するデータ処理部30と、データ処理部30で生成された検量データや分析データを印刷出力や表示出力する出力部40と、各種コマンド信号の入力等を行う操作部50と、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0018】
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、標準試料や被検試料等の試料を収容する試料容器17と、この試料容器17を保持するサンプルディスク5と、試料に含まれる検査項目の成分と反応する1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する試薬容器6と、この試薬容器6を格納する試薬庫1と、この試薬庫1に格納された試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aと、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、この試薬容器7を格納する試薬庫2と、この試薬庫2に格納された試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aと、円周上に配置された複数の反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0019】
また、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、サンプル分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせるサンプル分注ポンプ16aと、サンプル分注プローブ16を回動及び上下移動可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。また、サンプル分注プローブ16を洗浄する洗浄部70と、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料の液面をこの液面とサンプル分注プローブ16の一端との接触により検出する試料検出器16bとを備えている。
【0020】
また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬を吸引して試料が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14と、この第1試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に保持する第1試薬分注アーム8と、第1試薬分注プローブ14を洗浄する洗浄部80と、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬の液面をこの液面と第1試薬分注プローブ14との接触により検出する第1試薬検出器14aとを備えている。
【0021】
また、反応容器3内に吐出された試料と第1試薬の混合液を撹拌する第1撹拌子18と、第1撹拌子18を回動及び上下移動可能に保持する第1撹拌アーム20と、混合液の撹拌終了毎に第1撹拌子18を洗浄する洗浄槽18aとを備えている。
【0022】
また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬を吸引して第1試薬が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ15と、この第2試薬分注プローブ15を回動及び上下移動可能に保持する第2試薬分注アーム9と、第2試薬分注プローブ15を洗浄する洗浄部90と、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬の液面をこの液面と第2試薬分注プローブ15との接触により検出する第2試薬検出器15aとを備えている。
【0023】
また、反応容器3内の試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する第2撹拌子19と、第2撹拌子19を回動及び上下移動可能に保持する第2撹拌アーム21と、混合液の撹拌終了毎に第2撹拌子19を洗浄する洗浄槽19aと、反応容器3内の混合液に光を照射して光学的に測定する測光部13と、測光部13で測定終了の反応容器3内を洗浄する反応容器洗浄部12とを備えている。
【0024】
そして、測光部13は、回転移動して光路を横切る反応容器3に光を照射し、この照射により反応容器3内の混合液を透過した光を検査項目の波長毎に検出する。そして、検出した検出信号に基づいて、例えば吸光度データで表される標準データや被検データを生成し、生成した標準データや被検データをデータ処理部30に出力する。
【0025】
分析制御部25は、分析部24の各分析ユニットを駆動する機構を有する機構部26と、機構部26の各機構及び分析部24の各洗浄部70,80,90を制御する制御部27とを備えている。そして、機構部26は、サンプルディスク5、試薬ラック1a、及び試薬ラック2aを夫々回動する機構、並びに反応ディスク4を回転する機構を備えている。また、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、及び第2撹拌アーム21を夫々回動及び上下移動する機構を備えている。また、反応容器洗浄部12を上下移動する機構を備えている。また、サンプル分注ポンプ16aを吸引及び吐出駆動する機構、及び各洗浄部70,80,90の洗浄ユニットを駆動する機構を備えている。
【0026】
制御部27は、機構部26のサンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9等の各分析ユニットや、各洗浄部70,80,90の洗浄ユニットを駆動する機構を夫々制御する制御回路を備えている。そして、サンプル分注アーム10の機構を制御することにより、サンプル分注プローブ16を移動させる。
【0027】
制御部27のサンプル分注アーム10の制御回路は、サンプル分注アーム10の回動機構にサンプル分注プローブ16を上死点の高さでサンプルディスク5、反応ディスク4、及び洗浄部70の各上停止位置へ移動させる。また、サンプル分注アーム10の上下移動機構に下移動駆動パルスを供給して各上停止位置から下に移動させ、様々な位置で停止させる。
【0028】
ここで、サンプルディスク5に保持された例えば採血管などの試料容器17内の被検試料である全血から分離された下層に位置する血球等の下層試料の分注では、試料容器17内の下層試料を吸引させるために、サンプルディスク5の上停止位置から下へ移動させる。そして、試料容器17内の下層試料の吸引が可能な下層吸引位置でサンプル分注プローブ16を停止させる。また、下層吸引位置で吸引した下層試料の分注終了毎に、洗浄部70の上停止位置から下へ移動させ、下層洗浄位置でサンプル分注プローブ16を停止させる。
【0029】
また、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の被検試料である全血から分離された下層試料の上側に位置する血清や血漿の上層試料、及び採血管よりも収容量が少なく高さが低いサンプルカップ等の試料容器17内の尿、血清、血漿等の均一な被検試料の上層に位置する上層試料の分注では、試料容器17内の上層試料を吸引させるために、サンプルディスク5の上停止位置から下へ移動させる。そして、試料容器17内の上層試料の液面が試料検出器16bにより検出される位置から、その試料の吸引が可能な距離下方へ移動させた下層吸引位置よりも上方の上層吸引位置でサンプル分注プローブ16を停止させる。また、上層吸引位置で吸引した上層試料の分注終了毎に、洗浄部70の上停止位置である下層洗浄位置よりも上方の上層洗浄位置でサンプル分注プローブ16を停止させる。
【0030】
図1に示したデータ処理部30は、分析部24の測光部13から出力された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する演算部31と、演算部31で生成された標準データや分析データを保存するデータ記憶部32とを備えている。
【0031】
演算部31は、測光部13から出力された標準データ及びこの標準データの標準試料に対して予め設定された標準値から、標準値と標準データの関係を表す検量データを生成し、生成した検量データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0032】
また、測光部13から出力された被検データに対応する検査項目の検量データをデータ記憶部32から読み出す。そして、読み出した検量データを用いて測光部13より出力された被検データから、濃度値や活性値として表される分析データを生成する。そして、生成した分析データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0033】
データ記憶部32は、ハードディスク等のメモリデバイスを備え、演算部31から出力された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部31から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
【0034】
出力部40は、データ処理部30の演算部31から出力された検量データや分析データを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0035】
表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを表示する。また、自動分析装置100で分析可能な検査項目の分析パラメータを設定するための分析パラメータ設定画面、及びこの分析パラメータ設定画面で設定された検査項目の分析に用いる試薬の情報を設定するための試薬情報設定画面を表示する。
【0036】
また、被検試料毎にこの被検試料を識別する氏名やID等の識別情報及び分析パラメータ設定画面で設定された検査項目の中から検査対象となる下層試料を用いて分析する検査項目(下層検査項目)や、上層試料を用いて分析する検査項目(上層検査項目)を選択して設定するための検査項目設定画面を表示する。
【0037】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、検査項目毎の分析パラメータ、試薬情報、被検試料の識別情報及び検査項目、被検試料毎に識別情報及び検査対象となる検査項目を設定するための入力操作を行う。
【0038】
システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備え、操作部50からの操作により入力された各検査項目の分析パラメータの情報、試薬情報、被検試料毎の識別情報及び検査項目の情報等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
【0039】
以下、図1乃至図9を参照して、分析部24におけるサンプル分注プローブ16の構成、サンプル分注プローブ16の洗浄、及び試料の分注工程について説明する。
【0040】
図3は、試料容器17内の下層吸引位置及び上層吸引位置で停止したサンプル分注プローブ16を示す断面図である。また、図4は、サンプル分注プローブ16の一端部の構成の一例を示す断面図である。また、図5は、洗浄部70の下層洗浄位置及び上層洗浄位置で停止したサンプル分注プローブ16を示す断面図である。
【0041】
また、図6は、下層試料を分注する工程を示すフローチャートである。また、図7は、下層試料の分注におけるサンプル分注プローブ16の吸引及び吐出を示す図である。また、図8は、上層試料を分注する工程を示すフローチャートである。また、図9は、上層試料の分注におけるサンプル分注プローブ16の吸引及び吐出を示す図である。
【0042】
先ず、図2乃至図4を参照してサンプル分注プローブ16の構成を説明する。
図3(a)は下層吸引位置で停止したサンプル分注プローブ16を示し、図3(b)は上層吸引位置で停止したサンプル分注プローブ16を示している。
【0043】
図3(a)において、下層試料の分注における吸引では、サンプル分注プローブ16は、サンプルディスク5の上停止位置から下へ移動して、試料容器17内の下層試料の吸引が可能な例えば一端が底面近傍に位置する下層吸引位置で停止する。
【0044】
このサンプル分注プローブ16は、管状を成している。そして、中心軸161方向における試料を吸引及び吐出する一端が試料容器17内の例えば底面近傍に位置し、内部に試料を吸引及び吐出させる圧力を伝達する水等の圧力伝達媒体を保持している。また、サンプル分注ポンプ16との間で圧力伝達媒体の流通が可能なように、他端部とサンプル分注ポンプ16a間がチューブで連通している。
【0045】
ここで、サンプル分注ポンプ16aの吸引動作により圧力伝達媒体を流動させて試料を吸引したとき、サンプル分注プローブ16内面に残存する圧力伝達媒体の試料への混入や試料の圧力伝達媒体への拡散により、吸引した試料が希釈されるのを低減するために、所定量の空気及び分析に使用されない試料(ダミー試料)を吸引する。このダミー試料の吸引に引き続き、各分析項目の分析に使用される量の試料(分析用試料)を吸引する。
【0046】
そして、一端から、順に吸引した空気、ダミー試料、及び分析用試料からなる流体の空気層の端部までの吸引範囲W1では、中心軸161に対して平行で、例えば0.3〜0.4mm程度の小さい内径Φ1を有する流路を形成している。
【0047】
このように、吸引範囲W1に中心軸161に対して平行な段差のない内面により構成され、小さな内径Φ1を有する流路を設け、この流路内に流体を吸引することにより、空気及びダミー試料の層を崩壊させることなく分析用試料の吸引を行うことができる。これにより、分析用試料の希釈を低減することができる。
【0048】
また、下層吸引位置で停止したときに試料容器17内の被検試料と接触する吸引範囲W1を含む接触範囲W2では、一端から離れるに従い、外径が単調に増加して無段階的に傾斜する緩やかな傾斜面S1、及びこの傾斜面S1に連なる中心軸161に平行な平行面S2により構成される無段差の滑らかな外面を形成すると共に、吸引範囲W1の流路に連なる内径Φ1よりも大きい内径Φ2を有する流路を形成している。
【0049】
このように、サンプル分注プローブ16の吸引範囲W1を含む接触範囲W2に、傾斜面S1及び平行面S2により構成される段差のない滑らかな外面を形成することにより、サンプル分注プローブ16接触範囲W2の外面に付着する被検試料を洗い落としやすい形状にすることができる。
【0050】
更に、接触範囲W2の吸引範囲W1以外の部分から他端までの吸引範囲W1よりも長い支持範囲W3では、接触範囲W2の吸引範囲W1以外の流路及び外面に一致する流路及び外面を形成している。また、吸引範囲W1よりも大きな外径を有する外面を形成している。そして、他端部がサンプル分注アーム10に保持されている。
【0051】
このように、吸引範囲W1以外の支持範囲W3の外径を吸引範囲W1よりも大きくして、支持範囲W3の部分で保持して移動させることにより、サンプル分注プローブ16を停止させたとき、試料の分注精度を低下させる要因となるサンプル分注プローブ16の振動を抑えることができる。
【0052】
図4は、サンプル分注プローブ16の一端部の構成の一例を示した断面図である。このサンプル分注プローブ16の一端部は、内径Φ2の直管の吸引範囲W1の部分を内径Φ1になるように絞り込むことにより流路を形成している。また、絞り込みにより変形した外面の段差面162及び絞り込まれた吸引範囲W1の直管の外面を包囲するスペーサ163を接合して傾斜面S1を形成している。
【0053】
図3(b)において、上層試料の分注における吸引では、サンプル分注プローブ16は、サンプルディスク5の上停止位置から下へ移動して、試料容器17内の上層試料の液面が試料検出器16bにより検出される位置から、距離D下方へ移動した上層吸引位置で停止する。
【0054】
次に、図3及び図5を参照してサンプル分注プローブ16の洗浄について説明する。
図5は、洗浄部70の下層洗浄位置及び上層洗浄位置で停止したサンプル分注プローブ16を示した断面図である。図5(a)は下層洗浄位置で停止したサンプル分注プローブ16を示し、図5(b)は上層洗浄位置で停止したサンプル分注プローブ16を示している。
【0055】
図5(a)において、洗浄部70は、サンプル分注プローブ16を洗浄する洗浄液が吐出する吐出口711を有する洗浄槽71、及びこの洗浄槽71の吐出口711にサンプル分注プローブ16の被検試料に接触した外面を洗浄するための洗浄液を供給する洗浄ポンプ72を備えている。
【0056】
そして、下層吸引位置で吸引した下層試料の分注終了後、サンプル分注プローブ16は、洗浄槽71の上停止位置から下へ移動して、下層洗浄位置で停止する。サンプル分注プローブ16が停止した後、洗浄ポンプ72は、純水、アルカリ性洗浄液、酸性洗浄液等の洗浄液を洗浄槽71の吐出口711に供給する。この供給により洗浄液が吐出口711から吐出され、サンプル分注プローブ16の接触範囲W2の外面に付着した被検試料を洗い落とす。このとき、サンプル分注ポンプ16a及びチューブを介してサンプル分注プローブ16の他端部に圧力伝達媒体として用いられている純水が洗浄液として供給される。この供給によりサンプル分注プローブ16内を通過した洗浄液が一端から吐出され、サンプル分注プローブ16の接触範囲W2の内面に付着した試料を洗い落とす。
【0057】
このように、下層試料の分注終了後、サンプル分注プローブ16を下層洗浄位置で停止させることにより、サンプル分注プローブ16の接触範囲W2の内外面を、洗浄液を用いて洗浄することができる。
【0058】
図5(b)において、上層吸引位置で吸引した試料の分注終了後、サンプル分注プローブ16は、洗浄槽71の上停止位置である上層洗浄位置に停止する。サンプル分注プローブ16が停止した後、洗浄ポンプ72は、洗浄液を洗浄槽71の吐出口711に供給する。この供給により洗浄液が吐出口711から吐出され、サンプル分注プローブ16の一端から距離Dに亘る外面に付着した被検試料を洗い落とす。また、サンプル分注ポンプ16a及びチューブを介してサンプル分注プローブ16の他端部に洗浄液が供給される。この供給によりサンプル分注プローブ16内を通過した洗浄液が一端から吐出され、サンプル分注プローブ16の内面に付着した被検試料を洗い落とす。
【0059】
このように、上層試料の分注終了後、サンプル分注プローブ16を上層洗浄位置で停止させることにより、サンプル分注プローブ16の上層試料に接触した内外面を、洗浄液を用いて洗浄することができる。
【0060】
次に、図1乃至図9を参照してサンプル分注プローブ16の試料を分注する工程を説明する。
図6は、下層試料を分注する工程を示したフローチャートである。この下層試料分注工程S10は、表示部42の検査項目設定画面で下層検査項目が設定された下層試料を分注するときの工程である。
【0061】
1回目の下層試料の分注では、サンプル分注プローブ16は、ホームポジションである例えば洗浄部70の洗浄槽71の上停止位置から移動して、サンプルディスク5の上停止位置で停止する(ステップS11)。
【0062】
サンプルディスク5の上停止位置で停止した後、サンプル分注プローブ16は、図7(a)に示すように、所定量の空気を吸引する(ステップS12)。
【0063】
空気を吸引した後、サンプル分注プローブ16は、サンプルディスク5の上停止位置から下へ移動して、下層吸引位置で停止する(ステップS13)。
【0064】
下層吸引位置で停止した後、サンプル分注プローブ16は、図7(b)に示すように、試料容器17内の下層試料であるダミー試料及び分析用試料を吸引する(ステップS14)。
【0065】
下層試料を吸引した後、サンプル分注プローブ16は、下層吸引位置から上へ移動してサンプルディスク5の上停止位置で停止する。次いで、サンプルディスク5の上停止位置から移動して反応ディスク4の上停止位置で停止する。更に、反応ディスク4の上停止位置から下へ移動して反応容器3内の試料の吐出が可能な吐出位置で停止する(ステップS15)。
【0066】
吐出位置で停止した後、サンプル分注プローブ16は、図7(c)に示すように、反応容器3内に分析用試料を吐出する(ステップS16)。
【0067】
分析用試料を吐出した後、サンプル分注プローブ16は、吐出位置から上へ移動して反応ディスク4の上停止位置で停止する。次いで、反応ディスク4の上停止位置から移動してホームポジションで停止する。そして、1回目に分注した下層試料の1回又は複数回の分注終了後、その下層試料の分注を終えたサンプル分注プローブ16は、洗浄槽71の上停止位置から下へ移動して下層洗浄位置で停止する(ステップS17)。
【0068】
下層洗浄位置で停止した後、洗浄部70の洗浄ポンプ72が洗浄槽71へ洗浄液を供給すると共に、サンプル分注ポンプ16a及びチューブを介して供給される洗浄液により、サンプル分注プローブ16の被検試料に接触した接触範囲W2の内外面の洗浄を行う(ステップS18)。
【0069】
洗浄が行われた後、サンプル分注プローブ16は、次の被検試料の分注に備えて、下層洗浄位置から上へ移動してホームポジションで停止する(ステップS19)。
【0070】
図8は、上層試料を分注する工程を示したフローチャートである。この上層試料分注工程S30は、表示部42の検査項目設定画面で上層検査項目が設定された上層試料を分注するときの工程である。
【0071】
1回目の上層試料の分注では、サンプル分注プローブ16は、ホームポジションである洗浄部70の洗浄槽71の上停止位置から移動して、サンプルディスク5の上停止位置で停止する(ステップS31)。
【0072】
サンプルディスク5の上停止位置で停止した後、サンプル分注プローブ16は、図9(a)に示すように、所定量の空気を吸引する(ステップS32)。
【0073】
空気を吸引した後、サンプル分注プローブ16は、サンプルディスク5の上停止位置から下へ移動して、試料容器17内の上層試料の液面が試料検出器16bにより検出される位置から距離D下方へ移動した上層吸引位置で停止する(ステップS33)。
【0074】
上層吸引位置で停止した後、サンプル分注プローブ16は、図9(b)に示すように、試料容器17内の上層試料であるダミー試料及び分析用試料を吸引する(ステップS34)。
【0075】
上層試料を吸引した後、サンプル分注プローブ16は、上層吸引位置から上へ移動してサンプルディスク5の上停止位置で停止する。次いで、サンプルディスク5の上停止位置から移動して反応ディスク4の上停止位置で停止する。更に、反応ディスク4の上停止位置から下へ移動して反応容器3内の吐出位置で停止する(ステップS35)。
【0076】
吐出位置で停止した後、サンプル分注プローブ16は、図9(c)に示すように、反応容器3内に分析用試料を吐出する(ステップS36)。
【0077】
分析用試料を吐出した後、サンプル分注プローブ16は、吐出位置から上へ移動して反応ディスク4の上停止位置で停止する。次いで、反応ディスク4の上停止位置から移動してホームポジションで停止する。そして、1回目に分注した下層試料の1回又は複数回の分注終了後、その上層試料の分注を終えたサンプル分注プローブ16は、洗浄槽71の上層洗浄位置で停止する(ステップS37)。
【0078】
上層洗浄位置で停止した後、洗浄ポンプ72が洗浄槽71へ洗浄液を供給すると共に、サンプル分注ポンプ16a及びチューブを介して供給される洗浄液により、サンプル分注プローブ16の上層試料に接触した内外面の洗浄を行う(ステップS38)。
【0079】
洗浄が行われた後、サンプル分注プローブ16は、次の被検試料の分注に備えて、ホームポジションで停止する(ステップS39)。
【0080】
以上述べた本発明の実施例によれば、サンプル分注プローブ16の吸引範囲W1に中心軸161に対して平行な段差のない内面により構成される小さな内径Φ1を有する流路を設け、この流路内に流体を吸引することにより、空気及びダミー試料の層を崩壊させることなく分析用試料の吸引を行うことができる。これにより、分析用試料の希釈を低減することができる。
【0081】
また、サンプル分注プローブ16の吸引範囲W1を含む接触範囲W2に、緩やかな傾斜面S1及び平行面S2により構成される無段差の滑らかな外面を形成することにより、サンプル分注プローブ16接触範囲W2の外面に付着する試料を洗い落としやすい形状にすることができる。
【0082】
更に、吸引範囲W1以外の支持範囲W3の外径を吸引範囲W1よりも大きくして、支持範囲W3の部分で保持して移動させることにより、サンプル分注プローブ16を停止させたとき、試料の分注精度を低下させる要因となるサンプル分注プローブ16の振動を抑えることができる。
【0083】
更にまた、下層試料の分注終了後、サンプル分注プローブ16を下層洗浄位置で停止させることにより、サンプル分注プローブ16の接触範囲W2の内外面を、洗浄液を用いて洗浄することができる。
【0084】
以上により、試料間のキャリーオーバを低減して、下層試料を精度よく分注することができる。
【符号の説明】
【0085】
D 距離
S1 傾斜面
S2 平行面
W1 吸引範囲
W2 接触範囲
W3 支持範囲
16 サンプル分注プローブ
16a サンプル分注ポンプ
16b 試料検出器
17 試料容器
161 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬を分注して、その混合液を測定する自動分析装置において、
前記試料を収容する試料容器と、
前記試料容器内の試料を吸引して、吐出する分注を行う管状の分注プローブと、
前記分注プローブを前記試料容器内へ移動して、前記試料容器内の試料の内の下層に位置する下層試料の吸引が可能な下層吸引位置で停止させるプローブ移動手段とを備え、
前記分注プローブは、
前記試料容器内の試料を吸引する開口部を有する一端から、吸引した試料を含む流体の端部までの吸引範囲では、所定の内径を有する流路を形成し、
前記下層吸引位置で停止したときに前記試料容器内の試料と接触する前記吸引範囲を含む接触範囲では、前記一端から離れるに従い、外径が単調に増加して無段階的に傾斜する傾斜面を有する無段差の外面を形成すると共に、前記流路に連なる前記所定の内径よりも大きい内径を有する流路を形成していることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記接触範囲の前記吸引範囲以外の部分の外径は、前記吸引範囲の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記下層試料を用いて分析する検査項目を設定する検査項目設定手段を有し、
前記プローブ移動手段は、前記検査項目設定手段により設定された検査項目を分析するときの分注において、前記下層吸引位置で前記分注プローブを停止させるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記試料容器内の試料の液面をこの液面と前記分注プローブの一端との接触により検出する検出手段、及び前記試料容器内の試料の内の前記下層試料の上側に位置する上層試料を用いて分析する検査項目を設定する検査項目設定手段を有し、
前記分注プローブ移動手段は、前記検査項目設定手段により設定された検査項目を分析するときの分注において、前記検出手段により検出される位置から、前記上層試料の吸引が可能な距離下方へ移動させた前記下層吸引位置よりも上方の上層吸引位置で前記分注プローブを停止させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記流体は、前記分注プローブ内に吸引される空気、この空気の後に吸引される分析に使用されない試料、及びこの試料の後に吸引される分析に使用される試料により構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項6】
試料を吸引して、吐出する分注を行う自動分析装置の分注プローブにおいて、
前記自動分析装置の試料容器内の試料を吸引する開口部を有する一端から、吸引した試料を含む流体の端部までの吸引範囲では、所定の内径を有する流路を形成し、
前記試料容器内の試料の内の下層に位置する下層試料及びこの下層試料の上側に位置する上層試料と接触する前記吸引範囲を含む接触範囲では、前記一端から離れるに従い、外径が単調に増加して無段階的に傾斜する傾斜面を有する無段差の外面を形成すると共に、前記流路に連なる前記所定の内径よりも大きい内径を有する流路を形成していることを特徴とする自動分析装置の分注プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−232248(P2011−232248A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104313(P2010−104313)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】