説明

自動分析装置及びその方法

【課題】検体試料の増量又は減量に係わらず低濃度から高濃度までの測定範囲で高精度に成分濃度を分析すること。
【解決手段】被検体から採取された検体試料に対する複数の分析項目毎に検体試料の検体量の増量又は減量を可能とし、検体試料と分析項目に応じた試薬とから反応液を生成し、反応液の吸光度データと試薬に応じた検量線定数とに基づいて分析項目の濃度を算出する自動分析装置において、複数の分析項目毎に、検体試料の反応液量と、当該検体試料の反応液量に対して異なる量の試薬ブランクの反応液量と、試薬ブランクの吸光度データとに基づいて試薬ブランク補正値を算出する補正手段と、補正手段により補正された試薬ブランクの補正値と検量線定数と反応液の吸光度データとに基づいて分析項目の濃度を算出する濃度算出手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般患者等の被検体から採取された検体試料の成分の分析項目毎に濃度を算出する自動分析装置及びその方法に関し、例えば検体試料の通常の標準検査又は再検査に応じて検体試料の検体量を増量又は減量する自動分析装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、一般患者等の被検体から採取された血液や尿等の検体試料の体液中に含まれる成分を分析する。この分析では、被検体から採取された検体試料と試薬とを反応管内に分注して混合し、この混合液に光を照射して透過した光の吸光度を測定し、この吸光度から分析項目毎に各成分の濃度を算出する。この成分濃度の算出は、例えば図9に示すように例えばグルコース(尿)等の分析項目別の検量線Qを用いる。この検量線Qは、分析項目毎に試薬ブランク値BLKとキャリブレータCとにより設定され、検量線定数(ファクタ:傾き)Kを有する。検体試料と試薬との混合液に光を照射して吸光度aが測定されると、この吸光度aから検量線Qを用いて成分濃度dが算出される。この成分濃度dは、例えば報告書に印字出力される。
【0003】
自動分析装置により検体試料の成分の濃度を分析する場合、通常の標準検査において標準検体量の検体試料を用いて当該検体試料の濃度の分析を行った後、この分析結果の成分の濃度が例えば予測する濃度値よりも大幅に大きいか又は大幅に小さいと、検体試料に対する再検査が行われる。この再検査では、分析結果の成分の濃度値に応じて標準検体量の検体試料の増量又は減量、例えば成分の濃度が大幅に大きければ検体試料を減量し、成分の濃度が大幅に小さければ検体試料を増量して再検査を行う。
【0004】
例えば図9に示す検量線Qは、標準検体量の検体試料を用いて作成される。一般患者の成分濃度を分析するときの分析項目には、検量線Qの直線性範囲が広く、かつ基準値範囲が低濃度側にあるものがある。このような分析項目の成分濃度を検量線Qによって分析する場合、検体試料の量を標準検体量と異なった量で分析する必要がある。例えば検体試料の量は、標準検体量よりも減量することである。
【0005】
一方、一般患者の標準検体量は、基準値範囲における成分濃度の分析の感度を高めるために増量することが行われる。検体量の増量により検量線Qの検量線定数Kは、大きくなって例えば検量線定数Kとなり、検量線Qになる。これにより、成分濃度の分析の感度は高くなる。
【0006】
しかしながら、検量線Qと検量線Qとの各試薬ブランク値BLKが共に同一値、例えば「0」であればよいが、検量線Qの試薬ブランク値BLKが検量線Qの試薬ブランク値BLKよりも高ければ、正確に成分濃度を算出することができなくなる。すなわち、検量線Qは、直線性範囲が広く、基準値範囲が低濃度から高濃度にある。これに対して検量線Qは、直線性範囲が検量線Qよりも狭く、基準値範囲が低濃度側にあり、検量線Qよりも低濃度側で基準値範囲が頭打ちになり、正確な成分濃度の分析ができなくなる。例えば、検量線Qを用いれば、成分濃度を例えばd10まで分析可能であるが、検量線Qを用いれば、成分濃度d10よりも少ない成分濃度d20までしか分析可能でない。このため、複数の分析項目毎に成分濃度の分析は、高濃度用と低濃度用とに分けて行う必要がある。しかるに、分析作業は、非常に非能率になる。高濃度用と低濃度用とに分けて各分析項目毎に成分濃度の分析を行うことは、再検査でも同様である。
【0007】
自動分析装置に関する技術としては、例えば特許文献1がある。この特許文献1は、分析測定項目毎に一般患者に必要な使用検体量(V0)と微量検体患者に必要な使用検体量(V1)との各データが予め書き込まれたメモリ部と、依頼測定項目、一般患者か微量検体の患者かの区別などを含む分析依頼票のデータ入力器と、この入力された分析依頼票データとメモリ部の読み出しデータとに基づいて一般患者か微量検体患者かを識別しその識別された方の検体量を吸引し反応管へ分注する試料分配器と、微量検体項目を識別した場合には、V0/V1の比により試薬ブランク補正値を演算し、その補正値と一般患者の使用検体量による算出された検量線定数とにより濃度を演算する微量検体項目の演算手段とを具備することを開示しています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2535891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、検体試料の増量又は減量に係わらず低濃度から高濃度までの測定範囲で高精度に成分濃度を分析できる自動分析装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の自動分析装置は、被検体から採取された検体試料に対する複数の分析項目毎に検体試料の検体量の増量又は減量を可能とし、検体試料と分析項目に応じた試薬とから反応液を生成し、反応液の吸光度データと試薬に応じた検量線定数とに基づいて分析項目の濃度を算出する自動分析装置であって、複数の分析項目毎に、検体試料の反応液量と、当該検体試料の反応液量に対して異なる量の試薬ブランクの反応液量と、試薬ブランクの吸光度データとに基づいて試薬ブランク補正値を算出する補正手段と、補正手段により補正された試薬ブランクの補正値と検量線定数と反応液の吸光度データとに基づいて分析項目の濃度を算出する濃度算出手段とを具備する。
【0011】
本発明の請求項10に記載の自動分析方法は、被検体から採取された検体試料に対する複数の分析項目毎に検体試料の検体量の増量又は減量を可能とし、検体試料と分析項目に応じた試薬とから反応液を生成し、反応液の吸光度データと試薬に応じた検量線定数とに基づいて分析項目の濃度を算出する自動分析方法であって、検体試料の検体量の増量又は減量に応じて検量線定数の試薬ブランクを補正し、補正された試薬ブランクの補正値と検量線定数と反応液の吸光度データとに基づいて分析項目の濃度を算出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検体試料の増量又は減量に係わらず低濃度から高濃度までの測定範囲で高精度に成分濃度を分析できる自動分析装置及びその方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る自動分析装置の一実施の形態を示す構成図。
【図2】同装置におけるキャリブレーション部により作成される検量線を示す図。
【図3】同装置における試薬ブランク補正部により算出される試薬ブランク補正値を示す図。
【図4】同装置における表示部の表示画面に表示された検査及び分析項目の設定画面の一例を示す図。
【図5】同装置における表示部の表示画面に表示された標準/再検査における標準検体量/再検検体量の設定画面の一例を示す図。
【図6】同装置における表示部の表示画面に表示された試薬ブランク/キャリブレータの検体量の設定画面の一例を示す図。
【図7】同装置における表示部の表示画面に表示された検量線表示画面の一例を示す。
【図8】同装置における自動分析フローチャート。
【図9】標準検査及び再検査における検量線を用いた濃度の算出を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は自動分析装置の構成図を示す。分析部1は、試薬庫2と、ディスクサンプラ3と、反応機構4とを有する。試薬庫2は、環状の試薬ラック5に複数の試薬ボトル6が収納されている。複数の試薬ボトル6には、それぞれ複数の分析項目毎の各試薬が収容されている。この試薬庫2は、図示しない駆動部により回転移動する。
ディスクサンプラ3は、円板状に形成され、複数の試料容器7が設けられている。これら試料容器7内には、それぞれ一般患者等の被検体から採取された血液や尿等の検体試料が収容されている。ディスクサンプラ3は、図示しない駆動部により回転移動する。
【0015】
反応機構4は、環状に形成された反応機構用の試薬庫8と、この試薬庫8の外周側でかつ試薬庫8と同心円状に設けられた環状の反応ディスク9とを有する。試薬庫8は、環状の試薬ラック10に複数の試薬ボトル11が収納されている。これら試薬ボトル11には、それぞれ複数の分析項目毎の各試薬が収容される。反応ディスク9には、複数の反応容器12が設けられている。これら反応容器12には、それぞれ検体試料と試薬とが注入されて混合され、反応液が生成される。
【0016】
第1の試薬分注アーム13が試薬庫2に近接して設けられている。この第1の試薬分注アーム13には、第1の試薬分注プローブ14が設けられている。この第1の試薬分注アーム13は、第1の試薬分注プローブ14を試薬庫2における試薬ボトル6の吸引位置と、反応機構4における試薬ボトル11の吐き出し位置との間に移動する。第1の試薬分注プローブ14は、各試薬ボトル6に収容されている各試薬を吸引し、この試薬を試薬ラック10の試薬ボトル11に吐き出す。
【0017】
試料分注アーム15がディスクサンプラ3に近接して設けられている。試料分注アーム15には、試料分注プローブ16が設けられている。この試料分注アーム15は、試料分注プローブ16をディスクサンプラ3における試料容器7の吸引位置と、反応機構4における反応容器12の吐き出し位置との間に移動する。試料分注プローブ16は、ディスクサンプラ3の試料容器7に収容されている検体試料を吸引し、この検体試料を反応ディスク9の反応容器12に吐き出す。
【0018】
第2の試薬分注アーム17が反応ディスク9に近接して設けられている。この第2の試薬分注アーム17には、第2の試薬分注プローブ18が設けられている。この第2の試薬分注アーム17は、第2の試薬分注プローブ18を試薬ラック10における試薬ボトル11の吸引位置と、反応ディスク9における反応容器12の吐き出し位置との間に移動する。第2の試薬分注プローブ18は、試薬ラック10の試薬ボトル11に収容されている試薬を吸引し、この試薬を反応ディスク9の反応容器12に収容されている試料検体内に吐き出す。
【0019】
攪拌ユニット19が反応ディスク9の外周側に設けられている。この攪拌ユニット19は、反応容器12内に注入された検体試料と試薬とを攪拌する。洗浄ユニット20が反応ディスク9の外周側に設けられている。この洗浄ユニット20は、反応容器12の洗浄を行う。
測光ユニット21は、反応容器12内に注入された検体試料と試薬との混合液に光を照射し、この混合液を透過した光を受光し、混合液の吸光度の測定信号を出力する。
【0020】
ソフトウエアコントロールセンタ(SCC)30は、分析部1を動作制御し、測光ユニット21から出力される測定信号を入力して例えばグルコース(尿)等の分析項目の濃度を算出する。このソフトウエアコントロールセンタ30は、CPUから成る主制御部31を有する。この主制御部31には、検査データ記憶部32と、分析項目記憶部33と、プログラムメモリ34と、報知部35と、操作部36とが接続されている。又、主制御部31は、分析制御部37と、データ入力部38と、キャリブレーション部39と、試薬ブランク補正部40と、濃度算出部41とに対してそれぞれ指令を発して動作制御する。
【0021】
分析制御部37は、試薬庫2を回転移動すると共に、第1の試薬分注アーム13を移動制御して第1の試薬分注プローブ14を試薬庫2における試薬ボトル6の吸引位置に移動させ、ここで第1の試薬分注プローブ14を吸引動作させて試薬ボトル6に収容されている試薬を吸引する。次に、分析制御部37は、第1の試薬分注アーム13を移動制御して第1の試薬分注プローブ14を反応機構4における試薬ボトル11の吐き出し位置に移動させ、ここで第1の試薬分注プローブ14を吐き出し動作させて試薬を試薬ラック10の試薬ボトル11に吐き出す。
【0022】
分析制御部37は、ディスクサンプラ3を回転移動すると共に、試料分注アーム15を移動制御して試料分注プローブ16をディスクサンプラ3における試料容器7の吸引位置に移動させ、ここで試料分注プローブ16を吸引動作させて試料容器7に収容されている検体試料を吸引する。次に、分析制御部37は、試料分注アーム15を移動制御して試料分注プローブ16を反応機構4における反応容器12の吐き出し位置に移動させ、ここで試料分注プローブ16を吐き出し動作させて検体試料を反応ディスク9の反応容器12に吐き出す。
【0023】
分析制御部37は、反応機構4における試薬庫8と反応ディスク9とをそれぞれ回転移動し、第2の試薬分注アーム17を移動制御して第2の試薬分注プローブ18を試薬ラック10における試薬ボトル11の吸引位置に移動させ、ここで第2の試薬分注プローブ18を吸引動作させて試薬ラック10の試薬ボトル11に収容されている試薬を吸引する。次に、分析制御部37は、第2の試薬分注アーム17を移動制御して第2の試薬分注プローブ18を反応ディスク9における反応容器12の吐き出し位置に移動させ、ここで第2の試薬分注プローブ18を吐き出し動作させて試薬を反応ディスク9の反応容器12に収容されている試料検体内に吐き出す。
【0024】
なお、第2の試薬分注プローブ18が試薬ラック10における試薬ボトル11の吸引位置に移動して試薬を吸引し、次に、第2の試薬分注プローブ18が反応ディスク9における反応容器12の吐き出し位置に移動して試薬を反応ディスク9の反応容器12に収容されている試料検体内に吐き出し、この後、第2の試薬分注プローブ18が元の位置に戻るまでを1サイクルとする。
【0025】
分析制御部37は、攪拌ユニット19を動作制御し、反応容器12内に注入された検体試料と試薬とを攪拌させる。分析制御部37は、洗浄ユニット20を動作制御し、反応容器12を洗浄させる。
データ入力部38は、測光ユニット21から出力される反応容器12内の混合液の吸光度の測定信号を入力し、デジタルの測定信号に変換する。
【0026】
検査データ記憶部32には、一般患者等の被検体から採取された血液や尿等の検体試料の識別番号の情報と、検体試料に対して分析を必要とする複数の分析項目の情報と、標準検査及び再検査に関する情報となどの検体試料の検査に関する情報が記憶されている。再検査は、再検査「1」、再検査「2」、…、再検査「n」等の複数の再検査に関する情報が記憶されている。
分析項目記憶部33には、検体試料に対して分析を必要とする複数の分析項目の情報と、これら分析項目毎に使用される各試薬の名称や試薬量などの試薬に関する情報と、標準検査時に必要とする標準検体量と、再検査時に必要とする標準検体量となどの分析項目のパラメータに関する情報が記憶されている。
【0027】
プログラムメモリ34には、予め自動分析プログラムが記憶されている。この自動分析プログラムは、被検体から採取された検体試料に対する複数の分析項目毎に検体試料の検体量の増量又は減量を可能とし、検体試料と分析項目に応じた試薬とから反応液を生成し、反応液の吸光度データと試薬に応じた検量線定数とに基づいて分析項目の濃度を算出するときに、検体試料の検体量の増量又は減量に応じて検量線定数の試薬ブランクを補正し、補正された試薬ブランクの補正値と検量線定数と反応液の吸光度データとに基づいて分析項目の濃度を算出する。
【0028】
キャリブレーション部39は、標準検体量の検体試料と試薬とを収容した反応容器12に対して光を照射し、その透過光を受光して測光ユニット21から出力された測定信号をデータ入力部38から取り込み、この測定信号に基づいて図2に示すような標準検査の検量線Q10を作成する。この検量線Q10は、分析項目毎に試薬ブランク値BLK10とキャリブレータC10とにより設定され、検量線定数(ファクタ:傾き)K10を有する。このキャリブレーション部39は、作成した検量線Q10の情報を例えば分析項目記憶部33に記憶する。
【0029】
試薬ブランク補正部40及び濃度算出部41は、主制御部31がプログラムメモリ34に予め記憶されている自動分析プログラムを実行することにより動作する。すなわち、試薬ブランク補正部40は、検体試料の検体量の増量又は減量に応じて検量線定数K10の試薬ブランク値BLK10を補正する。検体試料の検体量は、複数の分析項目毎に標準検体量又は再検査に必要な再検検体量として設定される。しかるに、試薬ブランク補正部40は、再検査に必要な再検検体量の増量又は減量に応じて検量線定数K10の試薬ブランク値BLK10を補正する。
具体的に試薬ブランク補正部40は、試薬ブランクの反応液量Vbtと、標準検査又は再検査により増量又は減量した検体試料の反応液量Vxtとの比(Vbt/Vxt)を求め、この比(Vbt/Vxt)と試薬ブランクの吸光度データEbとを乗算して試薬ブランク補正値Eb′、
Eb′=(Vbt/Vxt)×Eb …(1)
を算出する。試薬ブランクの反応液量Vbtは、予め設定された試料と試薬とを混合した液量である。標準検査又は再検査により増量又は減量した検体試料の反応液量Vxtは、検体試料と試薬とを混合した液量である。
【0030】
試薬ブランク補正値Eb′は、図3に示すように増量又は減量した検体試料に応じ、検量線定数K10を変えずに検量線Q10を図3の図面上で平行移動するときの移動量に相当する。検量線Q10は、試薬ブランク補正値Eb′により補正することにより検量線Q10′になる。
なお、試薬ブランク値BLK10の吸光度データEbは、例えば水を収容した反応容器12に対して光を照射し、その透過光を受光して測光ユニット21から出力された測定信号に基づいて求められる。試薬ブランク値BLK10は、例えば水を用いて求めると「0」である。
試薬ブランク補正部40は、各分析項目毎でかつ標準検査又は再検査毎に、各検量線の試薬ブランク補正値Eb′を算出する。
【0031】
濃度算出部41は、試薬ブランク補正部40により補正された試薬ブランク補正値Eb′と検量線定数K10と反応液の吸光度データExとに基づいて分析項目の濃度Cxを算出する。具体的に濃度算出部41は、反応液の吸光度データExと試薬ブランク補正値Eb′との差分(Ex−Eb′)を求め、この差分(Ex−Eb′)と検量線定数K10とを乗算して成分濃度Cx
Cx=Df×K10×(Ex−Eb′) …(2)
を算出する。Dfは容量を補正(試料の量の違いによる希釈倍率の違いを試薬ブランクの量に合わせて補正)する理論係数(希釈倍率係数)である。
【0032】
なお、成分濃度Cxは、次式によっても表される。
Cx={[(Cs−Cb)/(Es−Eb)]×(Ex−Eb′)+Cb}×Df
…(3)
ここで、Csは標準試料の表示値、Cbは試薬ブランクの濃度、Esは標準試料の吸光度データを表す。
【0033】
濃度算出部41は、各分析項目毎でかつ標準検査又は再検査毎に、各分析項目の各成分濃度Cxを算出する。
報知部35は、濃度算出部41により算出された成分濃度Cxを報知するもので、印刷部42と、表示部43とを有する。印刷部42は、例えばプリンタ等から成り、成分濃度Cxを例えば印刷用紙等の記録媒体に報告書形式で印刷して出力する。
表示部43は、例えば液晶ディスプレイ等から成り、成分濃度Cxを液晶ディスプレイの表示画面に報告書形式で表示出力する。又、表示部43は、操作部36に対して操作された内容、例えば検体試料毎に標準検査又は再検査のいずれであるかの選択や、複数の分析項目の中から必要とする分析項目の選択等の設定画面を表示する。
【0034】
操作部36は、例えばキーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどから成り、検体試料毎に標準検査又は再検査のいずれであるかの選択と、複数の分析項目の中から必要とする分析項目の選択と、分析項目毎の検量線Q等の設定と、分析項目毎の検量線Qにおける試薬ブランク値BLK及びキャリブレータCの設定等との操作が行われる。
【0035】
操作部36は、表示部43にタッチキーパネルを用いると、操作部36と表示部43とを一体化できる。図4は表示部43の表示画面に表示された標準/再検査及び分析項目の設定画面50の一例を示す。この設定画面50には、標準検査の選択設定タッチボタン51と、再検査「1」「2」の各選択設定タッチボタン52、53と、例えばグルコース(尿)等の各分析項目の各選択設定タッチボタン54〜56とが表示されている。これら標準検査の選択設定タッチボタン51、再検査「1」「2」の各選択設定タッチボタン52、53及び各選択設定タッチボタン54〜56は、それぞれタッチ操作されると、例えば表示色が変化し、選択されたことを表示する。再検査「1」「2」は、例えば試薬ブランク値BLKや検量線定数K10の異なる各検量線が設定されている。
【0036】
表示部43には、以下の各設定画面を表示可能とする。図5は表示部43の表示画面に表示された標準/再検査における標準検体量/再検検体量の設定画面57の一例を示す。この設定画面57には、例えば標準検体量の設定欄59と、再検査「1」の設定欄60と、再検査「2」の設定欄61とが表示されている。
図6は試薬ブランク/キャリブレータの検体量の設定画面62の一例を示す。この設定画面62には、各検体試料の名称及びその濃度を設定するための各欄63と、各検体試料の検体量を設定するための各欄64とを有する。
図7は検量線表示画面65の一例を示す。この検量線表示画面65には、分析項目に応じた例えば検量線Q10が表示される。
【0037】
次に、上記の如く構成された装置の分析動作について図8に示す自動分析フローチャートに従って説明する。
表示部43の表示画面には、図4に示すような標準/再検査及び分析項目の設定画面50が表示される。この設定画面50において標準検査の選択設定タッチボタン51と、検体試料の検査に必要な分析項目の選択設定タッチボタン54がタッチ操作されると、これら選択設定タッチボタン51と選択設定タッチボタン54とは、それぞれ表示色が変化し、選択されたことを表示する。
【0038】
又、表示部43の表示画面には、図5に示すような標準検体量/再検検体量の設定画面57が表示される。この設定画面57において例えば標準検体量の設定欄59に検体試料の検査に必要な分析項目の標準検体量が設定されると共に、例えば再検査「1」の設定欄60に同分析項目の再検査に必要な再検検体量が設定される。
【0039】
又、表示部43の表示画面には、図6に示すような試薬ブランク/キャリブレータの検体量の設定画面62が表示される。この設定画面62において欄63に検体試料の名称及びその濃度が設定されると共に、欄64に検体試料の検体量が設定される。これら試薬ブランク/キャリブレータは、検体試料として例えば水が設定される。
【0040】
一方、キャリブレーション部39は、標準検体量の検体試料と試薬とを収容した反応容器12に対して光を照射し、その透過光を受光して測光ユニット21から出力された測定信号をデータ入力部38から取り込み、この測定信号に基づいて図2に示すような標準検査の検量線Q10を作成する。この検量線Q10は、分析項目毎に試薬ブランク値BLK10とキャリブレータC10とにより設定され、検量線定数(ファクタ:傾き)K10を有する。このキャリブレーション部39は、作成した検量線Q10の情報を例えば分析項目記憶部33に記憶する。
【0041】
主制御部31は、ステップ#1において、標準検査又は再検査のいずれであるかを判断する。図4に示す標準/再検査及び分析項目の設定画面50において例えば標準検査の選択設定タッチボタン51がタッチ操作されているので、主制御部31は、標準検査であることを判断する。
【0042】
次に、主制御部31は、分析制御部37に対して指令を発し、分析部1を動作させる。この分析部1において試薬庫2は、回転移動する、これと共に第1の試薬分注アーム13は、移動して第1の試薬分注プローブ14を試薬庫2の試薬ボトル6の吸引位置に移動させる。ここで第1の試薬分注プローブ14は、吸引動作して試薬ボトル6に収容されている試薬を吸引する。次に、第1の試薬分注アーム13は、移動して第1の試薬分注プローブ14を反応機構4における試薬ボトル11の吐き出し位置に移動させる。ここで第1の試薬分注プローブ14は、吐き出し動作して試薬を試薬ラック10の試薬ボトル11に吐き出す。
【0043】
ディスクサンプラ3は、回転移動する。これと共に試料分注アーム15は、移動して試料分注プローブ16をディスクサンプラ3における試料容器7の吸引位置に移動する。ここで試料分注プローブ16は、吸引動作して試料容器7に収容されている検体試料を吸引する。次に、試料分注アーム15は、移動して試料分注プローブ16を反応機構4における反応容器12の吐き出し位置に移動させる。ここで試料分注プローブ16は、吐き出し動作して検体試料を反応ディスク9の反応容器12に吐き出す。
【0044】
反応機構4における試薬庫8と反応ディスク9とは、それぞれ回転移動する。第2の試薬分注アーム17は、移動して第2の試薬分注プローブ18を試薬ラック10における試薬ボトル11の吸引位置に移動させる。ここで第2の試薬分注プローブ18は、吸引動作して試薬ラック10の試薬ボトル11に収容されている試薬を吸引する。次に、第2の試薬分注アーム17は、移動して第2の試薬分注プローブ18を反応ディスク9における反応容器12の吐き出し位置に移動させる。ここで第2の試薬分注プローブ18は、吐き出し動作させて試薬を反応ディスク9の反応容器12に収容されている試料検体内に吐き出す。
【0045】
次に、攪拌ユニット19は、反応容器12内に注入された検体試料と試薬とを攪拌する。
次に、測光ユニット21は、反応容器12内に注入された検体試料と試薬との混合液に光を照射し、この混合液を透過した光を受光し、混合液の吸光度の測定信号を出力する。データ入力部38は、測光ユニット21から出力される反応容器12内の混合液の吸光度の測定信号を入力し、デジタルの測定信号に変換する。
【0046】
検体試料の検体量は、複数の分析項目毎に標準検体量又は再検査に必要な再検検体量として設定される。試薬ブランク補正部40は、ステップ#2において、検体試料の検体量の増量又は減量に応じて検量線定数K10の試薬ブランク値BLK10を補正する。すなわち、試薬ブランク補正部40は、上記式(1)に従い、試薬ブランクの反応液量Vbtと増量又は減量した検体試料の反応液量Vxtとの比(Vbt/Vxt)を求め、この比(Vbt/Vxt)と試薬ブランクの吸光度データEbとを乗算して試薬ブランク補正値Eb′を算出する。
この試薬ブランク補正値Eb′は、例えば再検査時における標準検体量よりも検体量を増量した再検検体量に応じ、例えば図3に示すように検量線定数K10を変えずに検量線Q10を図3の図面上で平行移動するときの移動量に相当する。なお、検体量が一般の標準検査で必要な標準検体量であれば、試薬ブランク補正値Eb′は、略「0」である。しかるに、試薬ブランク補正値Eb′は、検体量の増量又は減量に応じた値になる。
【0047】
次に、濃度算出部41は、ステップ#3において、上記式(2)に従い、反応液の吸光度データExと試薬ブランク補正値Eb′との差分(Ex−Eb′)を求め、この差分(Ex−Eb′)と検量線定数K10とを乗算して成分濃度Cxを算出する。
次に、報知部35における印刷部42は、濃度算出部41により算出された成分濃度Cxを例えば印刷用紙等の記録媒体に報告書形式で印刷して出力する。又、表示部43は、濃度Cxを例えば液晶ディスプレイの表示画面に報告書形式で表示出力する。
【0048】
このように上記一実施の形態によれば、検体試料の検体量の増量又は減量に応じて検量線定数の試薬ブランクを補正し、この試薬ブランク補正値Eb′と検量線定数K10と反応液の吸光度データExとに基づいて分析項目の成分濃度Cxを算出する。これにより、検体試料の増量又は減量に係わらず低濃度から高濃度までの測定範囲で高精度に成分濃度Cxを分析できる。試薬ブランク補正値Eb′を用いて検量線Q10を補正するので、検体試料の検体量の増量又は減量に係わらず分析項目に応じた1つの検量線Q10を一元化でき、試薬コストの低減を図れる。この場合、例えばグルコース(尿)等の分析項目別の検量線Q10は、グルコース(尿)等の分析項目に使用する試薬に限らず、全ての分析項目に使用する各試薬の検量線に適用できる。従って、全ての分析項目に応じた各検量線Q10を一元化でき、試薬コストの低減を図れる。
【0049】
又、例えば再検査時における検体試料の検体量の増量又は減量に応じて試薬ブランク補正値Eb′を算出し、この試薬ブランク補正値Eb′を用いて検量線Q10を平行移動することにより検体量の増量又は減量に応じた検量線Q10′を算出するので、検体試料の検体量を増量又は減量したときに新たに試薬ブランク値を測定する必要がなく、かつ高濃度用と低濃度用とに分けて分析項目毎に成分濃度の分析を行う必要もない。これにより、成分濃度Cxを分析が効率良くできる。
【0050】
再検査は、例えばそれぞれ検量線の異なる再検査「1」「2」等の設定が可能である。これら再検査「1」「2」にそれぞれ設定されている各検量線についても検体試料の検体量の増量又は減量に応じて試薬ブランク補正値Eb′を容易に算出し、再検査での成分濃度の分析を行うことができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、上記一実施の形態において検量線Q10等は、直線として説明しているが、これに限らず、多点を繋いだ曲線等から成る検量線についても適用可能である。このような多点から成る検量線は、試薬ブランク補正値Eb′を用いて曲線の曲率を維持した状態で検量線を平行移動すればよい。
【符号の説明】
【0052】
1:分析部、2:試薬庫、3:ディスクサンプラ、4:反応機構、5:試薬ラック、6:試薬ボトル、7:試料容器、8:試薬庫、9:反応ディスク、10:試薬ラック、11:試薬ボトル、12:反応容器、13:第1の試薬分注アーム、14:第1の試薬分注プローブ、15:試料分注アーム、16:試料分注プローブ、17:第2の試薬分注アーム、18:第2の試薬分注プローブ、19:攪拌ユニット、20:洗浄ユニット、21:測光ユニット、30:ソフトウエアコントロールセンタ(SCC)、31:主制御部、32:検査データ記憶部、33:分析項目記憶部、34:プログラムメモリ、35:報知部、36:操作部、37:分析制御部、38:データ入力部、39:キャリブレーション部、40:試薬ブランク補正部、41:濃度算出部、42:印刷部、43:表示部、50:標準/再検査及び分析項目の設定画面、51:標準検査の選択設定タッチボタン、52,53:再検査の各選択設定タッチボタン、54〜56:分析項目の各選択設定タッチボタン、57:標準検体量/再検検体量の設定画面、59:標準検体量の設定欄、60:再検査「1」の設定欄、61:再検査「2」の設定欄、62:試薬ブランク/キャリブレータの検体量の設定画面、63:検体試料の名称及びその濃度を設定するための欄、64:検体試料の検体量を設定するための欄、65:検量線表示画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から採取された検体試料に対する複数の分析項目毎に前記検体試料の検体量の増量又は減量を可能とし、前記検体試料と前記分析項目に応じた前記試薬とから反応液を生成し、前記反応液の吸光度データと前記試薬に応じた検量線定数とに基づいて前記分析項目の濃度を算出する自動分析装置において、
複数の分析項目毎に、検体試料の反応液量と、当該検体試料の反応液量に対して異なる量の試薬ブランクの反応液量と、前記試薬ブランクの吸光度データとに基づいて試薬ブランク補正値を算出する補正手段と、
前記補正手段により補正された前記試薬ブランクの補正値と前記検量線定数と前記反応液の前記吸光度データとに基づいて前記分析項目の前記濃度を算出する濃度算出手段と、
を具備したことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記検体試料の検体量は、前記複数の分析項目毎に標準検体量又は再検査に必要な再検検体量に設定され、
前記補正手段は、前記標準検体量又は前記再検査に必要な前記再検検体量のいずれか一方の増量又は減量に応じて前記検量線定数の前記試薬ブランクを補正する、
ことを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記試薬ブランクの反応液量と前記増量又は前記減量した前記検体試料の反応液量との比を求め、この比と前記試薬ブランクの前記吸光度データとを乗算して前記試薬ブランク補正値を算出することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記検体試料に対する標準検査又は再検査であっても前記検体試料の前記検体量に応じて前記検量線定数の試薬ブランクを補正することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記各分析項目毎でかつ標準検査又は再検査毎に前記試薬ブランク補正値を算出することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記濃度算出手段は、前記反応液の前記吸光度データと前記試薬ブランク補正値との差分を求め、この差分と前記検量線定数とを乗算して前記濃度を算出することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記濃度算出手段は、前記各分析項目毎でかつ標準検査又は再検査毎に前記濃度を算出することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記濃度算出手段により算出された前記濃度を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記検体試料毎に前記標準検査又は前記再検査のいずれであるかの選択と、前記複数の分析項目の中から必要とする前記分析項目の選択とを少なくとも行う操作部を備えたことを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項10】
被検体から採取された検体試料に対する複数の分析項目毎に前記検体試料の検体量の増量又は減量を可能とし、前記検体試料と前記分析項目に応じた前記試薬とから反応液を生成し、前記反応液の吸光度データと前記試薬に応じた検量線定数とに基づいて前記分析項目の濃度を算出する自動分析方法において、
前記検体試料の前記検体量の増量又は減量に応じて前記検量線定数の試薬ブランクを補正し、
前記補正された前記試薬ブランクの補正値と前記検量線定数と前記反応液の前記吸光度データとに基づいて前記分析項目の前記濃度を算出する、
ことを特徴とする自動分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−163580(P2012−163580A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129213(P2012−129213)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2006−309360(P2006−309360)の分割
【原出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】