説明

自動分析装置及びその検査の割当方法

【課題】
検体1003を前処理するための複数の前処理ディスク1006,1007と、前処理された検体を分注し検査するための検査装置1009を持つ自動分析装置において、できるだけ休みなく前処理された検体を検査装置1009に分注するように、前処理セルへ検査を割り当て、また前処理種別を配置することにより、検査のスループットを大きくする。
【解決手段】
同じ検体の同じ前処理種別の検査をまとめて、複数の検査を複数の前処理セルに割り当てる際に、それぞれの前処理セルには前処理にかかるサイクル数以上の検査を割り当て、また、最後の前処理セルに、前から順に割当可能な最大の検査の数を割り当てた際に最後の前処理セルに割り当てられる検査の数よりも、多くの検査を割り当てる。また、最後の前処理セルに割り当てられた検査数を使って、前処理種別の並べ替え方に対してスループットを計算し、それらのうちスループットの大きなものの並べ方を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの検体に対して試薬を加えたり、電気抵抗を測定することで検体を検査する自動分析装置に関わり、特に検体の特性を測定する前に、一旦、希釈処理や溶解処理などの前処理をする自動分析装置に関わる。前処理の目的は、例えば、検体の希釈を行い、検体量を増やすことで多くの検査を実施できるようにすることである。
【背景技術】
【0002】
検体を一旦前処理して分析する自動分析装置としては特許文献1に記載された生化学自動分析装置がある。この生化学自動分析装置は微量の検体から多くの検査を行うために前処理として、検体を一旦希釈するための前処理ディスクを1つ持ち、そこで希釈された検体は別の取り出し口から反応ディスクに送られ、検査されるようになっている。この発明では、このような装置で希釈のために検体を前処理ディスクの前処理容器(「前処理セル」という)に入れる動作と、反応ディスクへの取り出し動作を記述している。
【0003】
しかし、特許文献1記載の自動分析装置では、検体を1つの前処理ディスクで前処理しているため、1つの前処理セルから複数の検査用の検体を反応ディスクに分注する場合、それらを分注して送り終わるまで、前処理ディスクを停止する必要がある。従って、反応ディスクに検体を送っている間、前処理動作を進行させることができなくなるため、スループット(単位時間に検査できる検査数)が低くなることがある。この問題点を解決するために、特許文献2記載の自動分析装置では、2つの前処理ディスクを用意し、それらを順に使うことで、全体の処理時間の短縮を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−194004号
【特許文献2】特開2009−68840号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2記載の自動分析装置では、2つの前処理ディスクを用意し、それらを順に使うことが示されているが、その際に、1つの前処理セルで作成される検体量には上限があるので、すべての検査を行うためには複数の前処理セルを用意しなければならない場合がある。そのため、(1)複数の検査を、複数の前処理セルの内のどの前処理セルに割り当てたら効率がよいかを決定する必要がある。また、(2)前処理種別が複数あり、それぞれに前処理の工数(「サイクル数」という)が異なる場合にはどの前処理種別から先に行えば効率が良いかを決定する必要がある。特許文献2記載の自動分析装置においては、この点は何ら考慮されていない。
【0006】
本発明は、これらの検査の割当と前処理種別の順序の決定方法を与え、スループットの良い自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決するために、複数の前処理ディスクの前処理セルに巡回して検体を分注し、一部が前処理している間、他の一部は、前処理された前処理検体を検査装置に分注する機構を持つ自動分析装置において、同じ検体の同じ前処理種別の検査をまとめ、それらを複数の前処理セルに割り当てるとき、それぞれの前処理セルにその前処理にかかるサイクル数以上の数の検査を割り当て、また、最後の前処理セルに、前から順に割当可能な最大の検査の数を割り当てた際に最後の前処理セルに割り当てられる検査の数よりも、多くの検査を割り当てることを特徴とするものである。
【0008】
また、複数の前処理種別がある場合は、それぞれの前処理種別の最後の前処理セルに割り当てられた検査数を使って、前処理種別の並べ方に対してどれだけのスループットが出るかを計算し、それらのうちでスループットの高い順序を選ぶことを特徴とするものである。
【0009】
具体的には、本発明の自動分析装置は、検体を希釈処理などの前処理を行って検査する検査部と、該検査部を制御する制御部からなる自動分析装置において、前記検査部は、前記検体が提供される搬入装置と、それぞれ複数の前処理セルを備える複数の前処理ディスクと、前記搬入装置から前記検体を前記複数の前処理ディスクの前処理セルに巡回して分注する分注装置と、前記前処理ディスクの前処理セルから前記検体を分注して検査を実行する検査装置からなり、前記前処理ディスクの複数の前処理セルは、複数種別の前処理を行うものであり、前処理種別ごとに、1つの前処理セルで検体を前処理するときに必要なサイクル数と、そのとき作成される前処理検体量が定まっており、前記制御部は、装置を制御する装置制御部と、前処理セルへの検査の割当部からなり、前記検査装置は、前記前処理セルへの検査の割当部で割り当てられた検査の数だけ前記前処理セルから検体を分注して検査を実行するものであり、前記前処理セルへの検査の割当部は、同一前処理種別の検査をまとめ、同一前処理種別の複数の検査を、複数の前処理セルに割り当てる際に、それぞれの前処理セルにはその前処理に必要なサイクル数以上の個数の検査を割り当て、かつ、最後の前処理セルの割当を、前から順に割当可能な最大の検査の数を割り当てた際に最後の前処理セルに割り当てられる検査の数よりも、多くすることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の自動分析装置において、前記検査部は、2個の前処理ディスクを備え、前記分注装置は、前記検体を当該2個の前処理ディスクの前処理セルに交互に分注するものでよい。
【0011】
また、本発明の自動分析装置において、前記前処理セルへの検査の割当部は、同一前処理種別の検査をまとめ、同一前処理種別の複数の検査を、複数の前処理セルに割り当てる際に、それぞれの前処理セルにはその前処理に必要なサイクル数以上の個数の検査を割り当て、かつ、最後の前処理セルの割当を、最後の前処理セルに割当可能な最大の数とするものでよい。
【0012】
また、本発明の自動分析装置において、前記搬入装置に提供される前記検体には検体識別子の情報が付けられており、前記検体識別子に対して、前記検体に要求される検査の集まりが指定された検査依頼データを持ち、前記検査の検査名に対して、検査するときの前処理種別と検査に必要な検体量を対応させた検査仕様データを持ち、前記前処理種別に対して、検体を1つの前処理セルで前処理するときに必要なサイクル数と、そのとき作成される前処理検体量を対応させた前処理仕様データを持ち、前記前処理への検査の割当部は、前記検査依頼データ、前記検査仕様データおよび前処理仕様データに基づいて前記前処理セルへの検査の割当を行うものでよい。
【0013】
本発明の自動分析装置は、前記制御部の中の前記装置制御部は、前処理種別の並び替えを行う際に、前記前処理セルへの検査の割当部が求めた最後の前処理セルに割り当てられた検査の数の情報を使って、検査効率の良い前処理種別の並び替え方を定めることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の自動分析装置において、前処理種別の並べ替えを行う際に、最後の前処理セルに割り当てられた検査の数の情報に加えて、1つ前の検体の最後の前処理セルに割り当てられた検査数の情報も使って前処理種別の並び替えを決めるものでよい。
【0015】
また、本発明の自動分析装置において、前処理種別の並べ替えを行う際に、最後の前処理セルに割り当てられた検査の数の情報に加えて、1つ後の検体の最初の前処理セルを作成するサイクル数を予測して前処理種別の並び替えを決めるものでよい。
【0016】
また、本発明の自動分析装置において、前処理種別の並び替えの中から解を求めるときに、すべての並び替えを行うのではなく、限られた個数の並び替えを行い、その中でスループットの良い順序を決定するものでよい。
【0017】
また、本発明の自動分析装置において、検査の中に必ず最初に検査しなければならない検査がある場合は、該検査を最初とし、前の検査の最後の検査数の情報を使わずに前処理種別を並び替えるものでよい。
【0018】
また、本発明の自動分析装置において、検査の中に必ず最後に検査しなければならない検査があるときは、その検査を最後として、後ろの検体の最初の前処理セルを作成するサイクル数の予測を使わないものでよい。
【0019】
本発明の自動分析装置における前処理セルへの検査の割当方法は、検体が提供される搬入装置と、それぞれ複数の前処理セルを備える複数の前処理ディスクと、前記搬入装置から前記検体を前記複数の前処理ディスクの前処理セルに巡回して分注する分注装置と、割り当てられた検査の数に応じて前記前処理ディスクの前処理セルから前記検体を分注して検査を実行する検査装置からなり、検体を希釈処理などの前処理を行って検査する検査部と、前記検査部を制御する制御部とから構成され、前記前処理ディスクの複数の前処理セルは、複数種別の前処理を行うものであり、前処理種別ごとに、1つの前処理セルで検体を前処理するときに必要なサイクル数と、そのとき作成される前処理検体量が定まっている自動分析装置における前処理セルへの検査の割当方法であって、同一前処理種別の検査をまとめ、同一前処理種別の複数の検査を複数の前処理セルに割り当てる際に、それぞれの前処理セルにはその前処理に必要なサイクル数以上の個数の検査を割り当て、かつ、最後の前処理セルの割当を、前から順に割当可能な最大の検査の数を割り当てた際に最後の前処理セルに割り当てられる検査の数よりも、多くすることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の自動分析装置における前処理セルへの検査の割当方法は、同一前処理種別の検査をまとめ、同一前処理種別の複数の検査を複数の前処理セルに割り当てる際に、それぞれの前処理セルにはその前処理に必要なサイクル数以上の個数の検査を割り当て、かつ、最後の前処理セルの割当を、最後の前処理セルに割当可能な最大の数とするものでよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、検体を希釈処理などの前処理を施すことで、微量な検体で多くの検査を実施できる自動分析装置において、複数の前処理ディスクを用いて、高いスループットの分析を行うことができる。
【0022】
次に本発明の作用効果を、詳しく説明する。
ある前処理種別Kを必要とする検査をT1, T2, …, Tnとする。また、前処理種別Kの前処理を行うためにはCycleサイクルの時間が必要とする。このとき次のようにm個の前処理セルに前処理された検体C1, C2, …, Cmが作成され、それぞれの前処理セルに割り当てられた検査の個数をcount(C1), count(C2), …, count(Cm)とする。もし、すべてのi=1, 2, …, m に対して
count(Ci) ≧ Cycle
ならば、2つの前処理ディスクを交互に使えば、前処理セルC1を作成してから最後のテストTnを検査装置である反応ディスクに送るまで休み無く、反応ディスクに前処理された検体を送り続けることができる。つまり、前処理セルCiからCycle個数以上の検体を反応ディスクに送ることができるから、その間にもう一方の前処理ディスクを使って前処理セルCi+1に前処理された検体を作ることができ、前処理セルCiから反応ディスクに検体を送り終わるときには前処理セルCi+1の準備が終わっているからである。
【0023】
さらに、各前処理セルにCycle個以上の検査を割当て、最後の前処理セルに多くの検査を割り当てれば、次の前処理種別の検体を作成する処理を行っている間、その最後の前処理セルに割り当てられた検査用の検体を反応ディスクに送ることができるので、次の前処理種別に移るとき、反応ディスクへ送る作業を止めなくてよく、スループットを向上することができる。
【0024】
この動作を図5と図6を使って具体例で説明する。前処理種別Kの検査(検体1の検査5002)が10個あり、その前処理には4サイクルかかり、1つの前処理セルに最大6個の検査を割り当てることができるとする。図5の5001は2個の前処理セルに順に
6個、4個
のように、前の前処理セルから順に割当可能な最大の検査を割り当てたときの検査の進行を表している。また、次の検査(検体2の検査5003)では前処理に6サイクルかかるとする。ここで、Aは搬入装置から前処理ディスクへの分注を表し、Bは前処理ディスクから検査装置への分注、Cは検査装置での検査を表している。空白は装置が動作していないことを表す。図5では次の検査(検体2の検査5003)の前処理に6サイクル要すため前に15サイクル目と16サイクル目に検査装置が動作しておらず、全部終わるのに20サイクルかかっている。
【0025】
図6の6001は、前処理種別Kの検査(検体1の検査6002)を2個の前処理セルに順に
4個、6個
のように、最後の前処理セルに多く割当てたときの検査の進行を表している。この場合は後ろの前処理セルに割り当てられた6個の検査が検査装置でなされている間に次の検査(検体2の検査6003)の6サイクルの前処理が終わってしまうため、検査装置が休み無く働くことができ、全部で18サイクル目までで検査が終了して、スループットが高くなる。
図6は2個の前処理セルに順に、4個、6個の検査を割り当てるものであるが、2個の前処理セルに順に5個、5個の検査を割り当てると、全部で19サイクル目までで検査を終了し、図5のものに比べるとスループットが改善される。つまり、同一前処理種別の複数の検査を、複数の前処理セルに割り当てる際に、最後の前処理セルの割当を、前から順に割当可能な最大の検査の数を割り当てた際に最後の前処理セルに割り当てられる検査の数よりも、多くすることにより、前から順に割当可能な最大の検査の数を割り当てた場合に比べて、スループットを向上させることができる。
【0026】
さらに、本発明では、前処理種別の並び替えについて、それぞれの前処理種別の最後の前処理セルに割り当てられた検査数を使って、スループットを評価し、その値が良いものを選んでいる。それぞれの前処理種別ごとに十分な個数の検査が要求されている場合は最後の前処理セルより前の前処理セルには前処理に要求されるサイクル数以上の数の検査が割り当てられていることが期待でき、また、同一の前処理に要求されるサイクル数は一定であるから、最後の前処理セルに割り当てられた検査の数を使ってスループットを計算した結果は、すべての割り当て方と並べ方の中から最適なものを選択したものと同等のスループットになる可能性が高い。すなわち、少ない割り当て方と並び替え方を試すだけで良いスループットが得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の1実施例の構成を示す図
【図2】検査依頼データのデータ構造を示す図
【図3】検査仕様データのデータ構造を示す図
【図4】前処理仕様データのデータ構造を示す図
【図5】検査の割当の工夫の余地があるタイムチャート図
【図6】検査の割当が最適なタイムチャート図
【図7】装置制御部の処理フローを表す図
【図8】前処理セルへの検査の割当部の処理フローを表す図
【図9】同一前処理種別の前処理セル割当の処理フローを表す図
【図10】前処理種別の並び替えの処理フローを表す図
【図11】最後の前処理セルに多くの検査を割り当てる処理の進行を示す図
【図12】前処理種別の順序の評価例のための設定表
【図13】改善の余地がある前処理種別の並べ方に対するタイムチャート図
【図14】効率の良い前処理種別の並べ方に対するタイムチャート図
【図15】本発明を実装する計算機システム構成例を示す図
【図16】本発明の他の実施例の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に従って本発明の自動分析装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0029】
図1は本発明の実施例1の構成図である。本発明は検体を前処理し、検査を実施する検査部1001とそれを制御する制御部1013の2つの部分からなっている。検査部1001は、次々に検体1003が届く搬入装置1002、それぞれ複数の前処理セル1008を備える前処理ディスク1(1006)と前処理ディスク2(1007)、搬入装置1002の決まった場所の検体1003をどちらかの前処理ディスクに分注する分注装置1005、および、どちらかの前処理ディスクから前処理された検体を取り出して分注し検査を実施する検査装置1009からなっている。また、検体1003には検体識別子1004の情報が付けられて、それぞれの検体を区別することができるようになっている。
【0030】
次にこの検査部1001の基本的な動きを説明する。まず、搬入装置1002に検体識別子1004が付けられた検体1003が次々に到着する。到着した検体1003は順次搬入装置1002の中を進められ、分注する特定の場所にくる。分注装置1005は、搬入装置1002の特定の場所にまだ検査が必要な検体があり、次の分注対象である前処理ディスクの分注位置(P1あるいはP3)にある前処理セル1008が空いていれば、そこに検体を分注して希釈等の前処理をさせ、検査装置に送るための位置(P2またはP4)にその前処理セル1008を移動させる。分注装置1005は、一方の前処理ディスクに分注した後、次に他方の前処理ディスクに変え、交互に分注していくようにする。検査装置1009も検体を取り出す対象の前処理ディスクを交互に変える。検査装置1009は対象となっている前処理ディスクの分注位置(P2あるいはP4)にある前処理セルに前処理された検体があり、検査の必要があれば、その検体を必要な数だけ分注し、次々に内部の検査工程に送る。
【0031】
次に制御部1013を説明する。制御部1013は、装置制御部1014と前処理セルへの検査の割当部1015からなる。また、検体に対してどのような検査を行わなければならないかを表すデータである検査依頼データ1010、それぞれの検査ではどのような前処理を行わなければならないか、そのためにどれだけの量の検体が必要かを表す検査仕様データ1011、前処理にどれだけのサイクル数が必要でそれだけの前処理された検体ができるかを表す前処理仕様データ1012を持っている。
【0032】
装置制御部1014は、上述の検査部1001の動作が行われるように検査部1001を制御する。すなわち、搬入装置1002のある決まった位置にある検体1003に対して前処理セルへの検査の割当部1015を呼び出し、どれだけの前処理セルを作成し、そのどの前処理セルにどの検査を割り当てるかを決定し、その決定に従い、前処理ディスクに交互に検体を分注し、交互に検査装置に送られるように制御する。
【0033】
前処理セルへ検査を割当てる処理の大まかな処理フローを説明しておく。先ず処理1016で同一前処理種別の検査をまとめ、次に処理1017で同一前処理種別を行う複数の前処理セルの内の最後の前処理セルに多くの検査を割り当てるようにする。このように最後の前処理セルへの検査の割当を多くすることにより、次の前処理種別の前処理に多くのサイクル数が要求されても、この最後の前処理セルに割り当てられた検査に対応する検体を検査装置1009に分注し送り続けることにより、検査装置1009を休み無く動かすことができ、スループット向上に貢献する。この処理のより詳細な処理フローは改めて図8で述べる。
【0034】
図2を使って検査依頼データ1010のデータ構造を表す。検査依頼データ1010は、それぞれの検体に対してどれだけの検査をしなければならないかを表し、大きく2つのフィールドからなっている。すなわち検体識別子のフィールド2001と、その検体にどれだけの検査が要求されているかを表すフィールド2002である。フィールド2002にはその検体に対して行わなければならない検査の名前が列挙されている。
【0035】
図3は検査仕様データ1011を表している。このデータは、それぞれの検査がどの前処理を必要とし、その前処理された検体のどれだけを使うかを表しており、3つのフィールドからなっている。すなわち検査名3001と、その検査に必要な前処理の種別が記述された前処理種別3002と、その検査に必要な前処理後の検体量が記述された必要な検体量3003である。
【0036】
図4は前処理仕様データ1012を表している。このデータは、それぞれの前処理にかかる時間と、その結果どれだけの前処理後検体ができるかを表している。このデータは3つのフィールドからなっている。すなわち、前処理の種別4001と、その前処理にかかる時間を表す必要なサイクル数4002、前処理をした後に作成される検体量4003である。作成される検体量4003から検査装置へ分注可能な数が定まる。なお、図4において、1倍希釈のサイクル数が4サイクルとなっているが、これは検体量を確保するために元検体を2回分注するためである。
【0037】
図7を使って、装置制御部の処理フローを詳細に説明する。これは、2つの前処理ディスクを交互に使いながら検査を実施するための制御を行う。また、検体に対して、前処理セルへの検査の割当部に依頼して、前処理セルとそのセルへの検査の割当を作成してもらい、これ実行する。まず、条件判定処理7001で、搬入装置の分注位置が空であるかを調べ、この条件が成立するときは、条件判定処理7002で、搬入装置に検体があるかを調べ、この条件が成立するときは、処理7003で、検体を1つ分注位置に送る。次に、条件判定処理7004で、分注位置に検体がありまだその検体に対して割当計画が作成されていないかを調べ、この条件が成立するときは、処理7005で、前処理セルへの検査の割当部に依頼して割当計画を作成する。最後に、条件判定処理7006で、分注位置に検体があるかを調べ、この条件が成立するときは、処理7007で、次の前処理種別と、それに割り当てる検査の集合を割当計画から取得し分注装置と前処理ディスクを制御して直前に前処理したのと別の前処理ディスクのセルにその前処理種別の前処理検体を作成してそれらの検査を割り当てて検査を実施する。
【0038】
図8を使って、前処理セルへの検査の割当部の処理フローを詳細に説明する。まず、処理8001で、この処理では検体が指定され、その検体に対してどのような前処理セルを作成し、それらの前処理セルにどのような検査を割り当てるかの割当計画を作成する。次に、処理8002で、指定された検体の検体識別子から、検査依頼データを検索してどの検査を行わなければならないかを検索する。次に、処理8003で、検査仕様データを検索し、それらの検査を同一の前処理種別ごとに分ける。次に、処理8004で、前処理種別ごとに分けられた検査の集合を次に説明する「同一前処理種別の前処理セル割当」の方法を使って、1つあるいは複数の前処理セルに割り当てる。最後に、処理8005で、各前処理種別ごとの割当で最後の前処理セルに割り当てられた検査の個数を使って、次に説明する前処理種別の並び替えを使って必要なサイクル数が最小になる並び替えを作成し、それを割当計画とする。
【0039】
図9を使って、同一前処理種別の前処理セル割当の処理フローを詳細に説明する。まず、処理9001で、割り当てる検査の集合を T1, T2, …, Tn とする。次に、処理9002で、その前処理種別の前処理を行うために必要なサイクル数を CYCLE とする。次に、処理9003で、T1, T2, …, Tn を前から順に、その前処理種別の前処理セルに作成される量に割り当てられるだけ割り当てていく。最後に、処理9004で、予め決められた回数の間、処理9005を繰り返す。条件判定処理9005で、最後から2番目の前処理セルにCYCLEより多くの検査が割り当てられているかを調べ、この条件が成立するときは、処理9006で、その中に最後の前処理セルに容量的に移せるものがあれば1つ移す。判定処理9005で条件が成立しないときには、処理9007で、同様に前々とたどって行って最後から2番目の以前の前処理セルへの割当をCYCLE以上に保って、最後の前処理セルに移せる検査があるか調べ、もしあれば移す。
【0040】
図11に、例をあげて、このときの前処理セルへの検査の割当の変化を記述する。この図11では全部で22個の検査があり、1つの前処理セルから検査装置へ10個の検体を分注できるので、1つの前処理セルには最大で10個の検査を割り当てることができ、この前処理には4サイクルの時間がかかるものとする。このとき、まず最初に11001のように前から順に、割当可能な最大の数となるように、詰めて割り当てていくと、結果として前の前処理セルから順に
10個、10個、2個
の検査が割り当てられる。次に11002に示すように、最後の前処理セルに割り当てられた検査数が少ないので一つ前から検査を最後に移す。このとき一つ前の前処理セルに前処理にかかるサイクル数(この場合は4)の検査が無い場合は同様に前にたどっていく。この処理をマイグレートと呼ぶことにする。図11ではマイグレートを7回行った結果を11005に記述してある。
【0041】
図10を使って、前処理種別の並び替えの処理フローを詳細に説明する。まず、処理10001で、前処理種別の種類をm個とする。次に、処理10002で、m個の前処理種別のすべての並び替えについて、処理10003以下の一連の処理を繰り返す。まず、処理10003で、それぞれの前処理種別の最後の前処理セルに割り当てられた検査数をL1, L2, …,Lmとする。次に、処理10004で、それぞれの前処理に必要なサイクル数をC1, C2, …, Cm とする。次に、処理10005で、一つ前の検体の最後の検査数をL0とする。次に、処理10006で、一つ後の検体の最初の前処理に必要なサイクル数をCm+1とする。最後に、処理10007で、L0,L1, L2, …, Lm とC1, C2, …, Cm, Cm+1 を2つの前処理ディスクを交互に使って前処理し、反応ディスクに送ったとき反応ディスクへの分注の空きの個数を記録する。最後に、処理10008で、これらの並び替えの中で最も反応ディスクへの分注に空きのなかった並び替えを採用する。
【0042】
図12、図13、図14を使って、図10の動作を具体例で説明する。ここでは図12の表に記述されたように、3種類の前処理種別があり、それぞれ次のような前処理のサイクル数と最後の前処理セルに割り当てられた検査数であるとする。
前処理種別=1倍希釈
前処理のサイクル数=4
最後の前処理セルに割り当てられた検査数=6
前処理種別=2倍希釈
前処理のサイクル数=2
最後の前処理セルに割り当てられた検査数=2
前処理種別=5倍希釈
前処理のサイクル数=2
最後の前処理セルに割り当てられた検査数=4
図13に、これを2倍希釈、1倍希釈、5倍希釈の順に前処理した場合の検査の進行を、図14に、1倍希釈、2倍希釈、5倍希釈の順に前処理した場合の検査の進行を記述する。ただし、1つ前の検体から3回の検査を繰り越して、後ろの検体の最初の前処理サイクルは4サイクルと予測されているとする。このとき、図13では検査装置が6サイクル目と7サイクル目に動作せず、図14では4サイクル目だけ動作しないので1サイクル分図14の方が良いスループットとなる。このように並べ方により効率が違うので図10のフローではすべての並べ替え方に対して、検査し終わるまでに何サイクルかかるかを評価し、最も良いものを採用すれば、スループットを高くすることができる。
【0043】
自動分析装置は検体が血液などであるので長時間置いておくことは好ましくない場合があり、その意味では本発明は分析結果改善にも貢献する可能性がある。
【0044】
最後に図15は、本装置を実現する計算機システム例である。本システムの構成要素である図1の制御部10013のプログラム、検査依頼データ1010、 検査仕様データ1011、前処理仕様データ 1012を図15の補助記憶装置15004に記憶しておき、実行時に記憶装置15003に読み込み、CPU15002で実行し、検体の到着センサやバーコードリーダなどの入力装置15006やディスプレイ、スピーカなどの出力装置15005を用いて入力の状況や検査の結果を確認することで本発明の装置を実現することができる。また、別の実装の方法としては、図1の各部を直接ハードウェアで実現することもできる。
【実施例2】
【0045】
この実施例は、前処理種別の並び替えの中から解を求めるときに、限られた個数の並び替えを行い、その中でスループットの良い順序を決定するものである。この実施例では、実施例1の図10の前処理種別の並び替えの処理フローにおいて、すべての前処理種別の並び替えについて求めている部分を変更する。前処理種別がn個ある場合は、その並び替えはn!通りとなる。前処理種別が5個程度なら
5!=120通り
で、制御部はそれほどの負荷なく実装できるが、例えば、前処理種別が10個になると
10!=3628800通り
となり、制御部が実時間で動作しなくなる。したがって、すべての並び替えを求めるのではなく、上限を限って並び替えを調べることで、実時間で動作可能になる。そのためには、図10の処理10002のループにおいて上限を限ってループさせればよい。
また他の実施方法としては図10の処理10002のループにおいて上限を限って、かつ、乱数を使ってランダムな並び替え方を生成して、そのなかで最もスループットの良い並び替えを採用する方法もある。
また、他の実装方式として、並べ方の前のいくつかが決まった時点で、その並べ方を続けたときの最良評価のものを見積もることで、分岐限定法を使って最良のものを求めることもできる。
【実施例3】
【0046】
図16を使って前処理ディスクが2つだけでなく3つ以上ある場合の実施方法を説明する。図16は図1の構成に対して前処理ディスク16001を追加したものである。この制御方法としては図7の7007で2つの前処理ディスクを交互に使っていたものを前処理ディスク1、前処理ディスク2、前処理ディスク3、前処理ディスク1、・・・のように巡回して使うようにすればよい。前処理ディスクが4つ以上になっても、このように巡回させて使うことで複数の前処理ディスクを同時に使うことができる。
【実施例4】
【0047】
この実施例は、検体に付けられている検査の中に、必ず、最初に実施しなければならない検査がある場合のものである。これを実施するためには実施例1の図10において、その検査を最初に実施する並び替えだけを調べ、また、前の検査の最後の検査数の情報L0を無視して、例えば0と置いて、その中で最適なスループットになるものを選択すればよい。
【実施例5】
【0048】
この実施例は、検体に付けられている検査の中に、必ず、最後に実施しなければならない検査があった場合の実施例である。これを実施するためには実施例1の図10において、その検査を最後に実施する並び替えだけを調べ、また、次の検体の最初の前処理に必要なサイクル数Cm+1を無視して、例えば0と置いて、その中で最適なスループットになるものを選択すればよい。
【符号の説明】
【0049】
1001 … 検査部
1002 … 搬入装置
1003 … 検体
1004 … 検体識別子
1005 … 分注装置
1006 … 前処理ディスク1
1007 … 前処理ディスク2
1008 … 前処理セル
1009 … 検査装置
1010 … 検査依頼データ
1011 … 検査仕様データ
1012 … 前処理仕様データ
1013 … 制御部
1014 … 装置制御部
1015 … 前処理セルへの検査の割当部
1016 … 同一前処理種別の検査をまとめる処理
1017 … 前処理セルへの検査の割当処理
15002 … CPU
15003 … 記憶装置
15004 … 補助記憶装置
15005 … 入力装置
15006 … 出力装置
16001 … 前処理ディスク3。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を希釈処理などの前処理を行って検査する検査部と、該検査部を制御する制御部からなる自動分析装置において、
前記検査部は、前記検体が提供される搬入装置と、それぞれ複数の前処理セルを備える複数の前処理ディスクと、前記搬入装置から前記検体を前記複数の前処理ディスクの前処理セルに巡回して分注する分注装置と、前記前処理ディスクの前処理セルから前記検体を分注して検査を実行する検査装置からなり、
前記前処理ディスクの複数の前処理セルは、複数種別の前処理を行うものであり、前処理種別ごとに、1つの前処理セルで検体を前処理するときに必要なサイクル数と、そのとき作成される前処理検体量が定まっており、
前記制御部は、装置を制御する装置制御部と、前処理セルへの検査の割当部からなり、
前記検査装置は、前記前処理セルへの検査の割当部で割り当てられた検査の数だけ前記前処理セルから検体を分注して検査を実行するものであり、
前記前処理セルへの検査の割当部は、同一前処理種別の検査をまとめ、同一前処理種別の複数の検査を、複数の前処理セルに割り当てる際に、それぞれの前処理セルにはその前処理に必要なサイクル数以上の個数の検査を割り当て、かつ、最後の前処理セルの割当を、前から順に割当可能な最大の検査の数を割り当てた際に最後の前処理セルに割り当てられる検査の数よりも、多くすることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記検査部は、2個の前処理ディスクを備え、前記分注装置は、前記検体を当該2個の前処理ディスクの前処理セルに交互に分注することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記前処理セルへの検査の割当部は、同一前処理種別の検査をまとめ、同一前処理種別の複数の検査を、複数の前処理セルに割り当てる際に、それぞれの前処理セルにはその前処理に必要なサイクル数以上の個数の検査を割り当て、かつ、最後の前処理セルの割当を、最後の前処理セルに割当可能な最大の数とすることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記搬入装置に提供される前記検体には検体識別子の情報が付けられており、
前記検体識別子に対して、前記検体に要求される検査の集まりが指定された検査依頼データを持ち、
前記検査の検査名に対して、検査するときの前処理種別と検査に必要な検体量を対応させた検査仕様データを持ち、
前記前処理種別に対して、検体を1つの前処理セルで前処理するときに必要なサイクル数と、そのとき作成される前処理検体量を対応させた前処理仕様データを持ち、
前記前処理への検査の割当部は、前記検査依頼データ、前記検査仕様データおよび前処理仕様データに基づいて前記前処理セルへの検査の割当を行うことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の自動分析装置において、
前記制御部の中の前記装置制御部は、前処理種別の並び替えを行う際に、前記前処理セルへの検査の割当部が求めた最後の前処理セルに割り当てられた検査の数の情報を使って、検査効率の良い前処理種別の並び替え方を定めることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5記載の自動分析装置において、
前処理種別の並べ替えを行う際に、最後の前処理セルに割り当てられた検査の数の情報に加えて、1つ前の検体の最後の前処理セルに割り当てられた検査数の情報も使って前処理種別の並び替えを決めることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項5記載の自動分析装置において、
前処理種別の並べ替えを行う際に、最後の前処理セルに割り当てられた検査の数の情報に加えて、1つ後の検体の最初の前処理セルを作成するサイクル数を予測して前処理種別の並び替えを決めることを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項5記載の自動分析装置において、前処理種別の並び替えの中から解を求めるときに、すべての並び替えを行うのではなく、限られた個数の並び替えを行い、その中でスループットの良い順序を決定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項6記載の自動分析装置において、
検査の中に必ず最初に検査しなければならない検査がある場合は、該検査を最初とし、前の検査の最後の検査数の情報を使わずに前処理種別を並び替えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項7記載の自動分析装置において、
検査の中に必ず最後に検査しなければならない検査があるときは、その検査を最後として、後ろの検体の最初の前処理セルを作成するサイクル数の予測を使わないことを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
検体が提供される搬入装置と、それぞれ複数の前処理セルを備える複数の前処理ディスクと、前記搬入装置から前記検体を前記複数の前処理ディスクの前処理セルに巡回して分注する分注装置と、割り当てられた検査の数に応じて前記前処理ディスクの前処理セルから前記検体を分注して検査を実行する検査装置からなり、検体を希釈処理などの前処理を行って検査する検査部と、
前記検査部を制御する制御部とから構成され、
前記前処理ディスクの複数の前処理セルは、複数種別の前処理を行うものであり、前処理種別ごとに、1つの前処理セルで検体を前処理するときに必要なサイクル数と、そのとき作成される前処理検体量が定まっている自動分析装置における前処理セルへの検査の割当方法であって、
同一前処理種別の検査をまとめ、同一前処理種別の複数の検査を複数の前処理セルに割り当てる際に、それぞれの前処理セルにはその前処理に必要なサイクル数以上の個数の検査を割り当て、かつ、最後の前処理セルの割当を、前から順に割当可能な最大の検査の数を割り当てた際に最後の前処理セルに割り当てられる検査の数よりも、多くすることを特徴とする自動分析装置における前処理セルへの検査の割当方法。
【請求項12】
請求項11記載の自動分析装置における前処理セルへの検査の割当方法であって、
同一前処理種別の検査をまとめ、同一前処理種別の複数の検査を複数の前処理セルに割り当てる際に、それぞれの前処理セルにはその前処理に必要なサイクル数以上の個数の検査を割り当て、かつ、最後の前処理セルの割当を、最後の前処理セルに割当可能な最大の数とすることを特徴とする自動分析装置における前処理セルへの検査の割当方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−58975(P2011−58975A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209629(P2009−209629)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】