説明

自動分析装置及びその測光値補正方法

【課題】高精度な測定値を得ることが可能な自動分析装置及びその測光値補正方法を提供すること。
【解決手段】検体と試薬の反応液が出射する出射光のうち所定波長域の光量を測光する測光装置31の測光値をもとに検体を分析する自動分析装置とその測光値補正方法。自動分析装置は、測光器31aの、複数の波長におけるそれぞれの分光感度と、複数の波長でそれぞれ測光した出射光のそれぞれの基準分光測光値とを用いて補正係数を演算する補正係数演算部42と、補正係数をもとに、分析時に測光器が測光した反応液の実測値を試薬の製造ロット毎に補正して補正測光値とする測光値補正部31bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とが反応した反応液の光学的特性の測定によって検体を分析する自動分析装置及びその測光値補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、検体と試薬とが反応した反応液の光学的特性の測定によって検体を分析している(例えば、特許文献1参照)。このような自動分析装置には、標識物質(試薬)との酵素反応によって光を出射する基質を含む基質液を使用し、基質が出射する光の強度を測光することにより検体を分析する免疫分析用のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−305058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基質が出射する出射光のピーク波長は、測光手段の感度測定に使用する光源(LED)のピーク波長とが略一致している。このため、免疫分析用の自動分析装置は、従来、出射光のピーク波長の光を基準として基質が出射する出射光の測光値を補正していた。しかしながら、測光手段は、分光感度の分光特性が同一型番であっても完全に同一ではなく、分光感度波長領域内に入射する光の測光量全体で数%程度のばらつきがある。また、基質液は、製造ロットが異なると、反応液が出射する出射光のピーク波長や半値幅等の発光特性が変化することが知られていた。このため、出射光の測光値を特定の単一波長を基準として補正しても、精度の高い測定値を得ることが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高精度な測定値を得ることが可能な自動分析装置及びその測光値補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体と試薬の反応液が出射する出射光の強度を測定する測光手段の測光値をもとに前記検体を分析する自動分析装置において、前記測光手段の、複数の波長におけるそれぞれの分光感度と、前記複数の波長でそれぞれ測光した前記出射光のそれぞれの基準分光測光値とを用いて補正係数を演算する補正係数演算手段と、前記補正係数をもとに、分析時に前記測光手段が測光した前記反応液の実測値を前記試薬の製造ロット毎に補正して補正測光値とする補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記複数の波長におけるそれぞれの分光感度を記憶する記憶手段と、前記試薬を収容した試薬容器に貼付された情報記録媒体から前記基準分光測光値を読み出す読出手段と、を備え、前記補正係数演算手段は、前記記憶手段が記憶する前記分光感度と、前記読出手段が読み出した前記基準分光測光値とを用いて前記補正係数を演算することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記複数の波長は、所定の出射光のピーク波長を含むと共に、前記出射光に含まれる波長領域内で等間隔に選択されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記補正係数は、同一の波長における前記分光感度と前記基準分光測光値との積の総ての波長に関する総和を前記複数の波長の数で除した値であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、分光強度が既知の光源と分光手段とを備えており、前記複数の分光感度は、前記光源が出射した光を前記分光手段によって分光した光の前記測光手段による実測値と前記分光強度とをもとに演算した値であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記測光手段は、前記反応液が出射した出射光の強度を減光する減光手段を有しており、前記補正係数演算手段は、前記光源から出射された光の前記複数の波長における前記測光手段の各分光実測値を、同一の波長における前記光源の各分光強度と前記減光手段の実分光減光比との積で除した値をそれぞれ前記複数の波長における分光感度として前記補正係数を演算することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、測定値既知の検体を用いた実測値と前記補正測光値とを比較し、前記補正測光値が正常であるか否かを判定する判定部を有することを特徴とする。
【0013】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置の測光値補正方法は、検体と試薬の反応液が出射する出射光の強度を測定する測光手段の測光値をもとに前記検体を分析する自動分析装置の測光値補正方法であって、複数の波長における前記測光手段のそれぞれの分光感度と、前記複数の波長でそれぞれ測光した前記出射光のそれぞれの基準分光測光値とを用いて補正係数を演算する補正係数演算工程と、前記補正係数をもとに、分析時に前記測光手段が測光した前記反応液の実測値を前記試薬の製造ロット毎に補正して補正測光値とする補正工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の自動分析装置の測光値補正方法は、上記の発明において、前記複数の波長におけるそれぞれの分光感度を記憶する記憶工程と、前記試薬を収容した試薬容器に貼付された情報記録媒体から前記基準分光測光値を読み出す読出工程と、を含み、前記補正係数演算工程は、前記記憶工程で記憶した前記分光感度と、前記読出工程で読み出した前記基準分光測光値とを用いて前記補正係数を演算することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の自動分析装置の測光値補正方法は、上記の発明において、前記複数の波長は、所定の出射光のピーク波長を含むと共に、前記出射光に含まれる波長領域内で等間隔に選択されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の自動分析装置の測光値補正方法は、上記の発明において、前記補正係数は、同一の波長における前記分光感度と前記基準分光測光値との積の総ての波長に関する総和を前記複数の波長の数で除した値であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の自動分析装置の測光値補正方法は、上記の発明において、前記自動分析装置は、分光強度が既知の光源と分光手段とを備えており、前記複数の分光感度は、前記光源が出射した光を前記分光手段によって分光した光の前記測光手段による実測値と前記分光強度とをもとに演算した値であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の自動分析装置の測光値補正方法は、上記の発明において、前記測光手段は、前記反応液が出射した出射光の強度を減光する減光手段を備えており、前記補正係数演算工程は、前記光源から出射された光の前記複数の波長における前記測光手段の各分光実測値を、同一の波長における前記光源の各分光強度と前記減光手段の実分光減光比との積で除した値をそれぞれ前記複数の波長における分光感度として前記補正係数を演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、同一の波長における分光感度と基準分光測光値とをもとに演算した補正係数を用いて、分析時に測光手段が測光した反応液の実測値を試薬の製造ロット毎に補正して補正測光値とするので、精度の高い補正測光値を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す自動分析装置が備える測光装置を測光値補正部、制御部、補正係数演算部、入力部及び記憶部等と共に示す模式図である。
【図3】図3は、製造ロットの異なる3つの基質液の反応液が出射する出射光の基準分光発光特性(基準分光測光値)の例を示す図である。
【図4】図4は、同一型番の3つの測光器が使用する光電子増倍管に関するメーカーから提示された分光感度特性の例を示す図である。
【図5】図5は、出射光の基準分光測光値と測光器の分光感度とをもとにした測光値感度積の計算を説明する図である。
【図6】図6は、実施の形態1の自動分析装置の測光値補正方法を説明するフローチャートである。
【図7】図7は、実施の形態2の自動分析装置が備える測光装置の構成を測光値補正部、制御部、補正係数演算部、入力部及び記憶部等と共に示す模式図である。
【図8】図8は、図7に示す測光装置の白色光源と分光器との間に反応液を保持した反応容器を配置して実測値を測定する手順を説明する図である。
【図9】図9は、実施の形態2の自動分析装置の測光値補正方法を説明するフローチャートである。
【図10】図10は、実施の形態3において使用する測光装置の構成を測光値補正部、判定部を有する制御部、補正係数演算部、入力部及び記憶部等と共に示す模式図である。
【図11】図11は、測光装置の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、この発明の自動分析装置及びその測光値補正方法に係る実施の形態を、酵素免疫測定法(EIA)による被検血液の抗原抗体反応によって免疫検査を実施する分析装置を例に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の構成を示す模式図である。図2は、図1に示す自動分析装置が備える測光装置を測光値補正部、制御部、補正係数演算部、入力部及び記憶部等と共に示す模式図である。自動分析装置1は、図1に示すように、検体と試薬との間の反応物の作用による発光基質の発光量を測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構4とを備えている。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の免疫学的な分析を自動的に行なう。
【0023】
測定機構2は、検体移送装置21、チップ格納部22、検体分注装置23、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、第1試薬庫26、第2試薬庫27、第1試薬分注装置28、第2試薬分注装置29、酵素反応テーブル30、測光装置31、反応管移送装置32及び反応管移送装置33を備えている。測定機構2の各構成部位は、所定の動作処理を行なう単数又は複数のユニットを備えている。
【0024】
検体移送装置21は、図1に示すように、複数の検体容器21aを保持した複数の検体ラック21bを図中の矢印方向に順次搬送する。検体容器21aに収容された検体は、検体の提供者から採取した血液又は尿などである。
【0025】
チップ格納部22は、複数のチップを整列したチップケースが設置されている。チップ格納部22は、このケースからチップを検体分注装置23のノズルに供給する。このチップは、感染症項目測定時のキャリーオーバー防止のため、検体分注装置23のノズル先端に装着され、検体分注ごとに交換されるディスポーザブルタイプの検体分注用チップである。
【0026】
検体分注装置23は、検体の吸引及び吐出を行なうチップが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降及び自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備えている。検体分注装置23は、図1に示すように、検体移送装置21によって所定位置に移動された検体容器21a内の検体をチップによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送された反応管に吐出して検体を所定タイミングでBFテーブル25上の反応管に分注する。
【0027】
免疫反応テーブル24は、それぞれ配置された反応管内で検体と分析項目に対応する所定の試薬とを反応させるための反応ラインを複数有している。免疫反応テーブル24は、免疫反応テーブル24の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、免疫反応テーブル24に配置された反応管を所定タイミングで所定位置に移送する。免疫反応テーブル24は、図1に示すように、前処理、前希釈用の外周ライン24a、検体と固相担体試薬との免疫反応用の中周ライン24b及び検体と標識試薬との免疫反応用の内周ライン24cを有する3重の反応ライン構造を形成してもよい。
【0028】
BFテーブル25は、所定の洗浄液を吸引吐出して検体又は試薬における未反応物質を分離するBF(Bound-Free)分離を実施するBF洗浄処理を行なう。BFテーブル25は、BFテーブル25の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、BFテーブル25に配置された反応管10を所定タイミングで所定位置に移送する。BFテーブル25は、BF分離に必要な磁性粒子を集磁する集磁機構と、BF洗浄液を反応管10内に吐出・吸引してBF分離を実施するBF洗浄ノズル(吐出ノズル,吸引ノズル)を有するBF洗浄部25a(図1参照)と、集磁された磁性粒子を分散させる撹拌機構(図示せず)とを有している。
【0029】
BF洗浄部25aは、吐出ノズルと吸引ノズルを複数組有している。吐出ノズルは、図示しない洗浄液タンクから供給されたBF洗浄液を反応管10内に吐出する。吸引ノズルは、反応管10内のBF洗浄液を吸引し、吸引したBF洗浄液を図示しない排水タンクに排出する。
【0030】
第1試薬庫26は、図1に示すように、第1試薬を収容した第1試薬容器26aを複数収納する。第1試薬庫26は、モータ等の駆動部によって中心を通る回転軸の周りに回転され、収納した第1試薬容器26aを矢印で示す周方向に搬送する。第1試薬は、分析対象である検体に含まれる抗原又は抗体と特異的に結合する反応物質を不溶性担体である磁性粒子に固着させた試薬である。ここで、第1試薬容器26aには、収容した第1試薬に関する試薬情報を記録したバーコードラベル等の情報記録媒体(図示せず)が外面に貼付されている。前記情報記録媒体は、第1試薬庫26の外周に設けた読出装置26bによって読み出され、制御部41へ出力される。
【0031】
第2試薬庫27は、図1に示すように、第2試薬を収容した第2試薬容器27aや基質液を収容した基質液容器27bを複数収納する。第2試薬庫27は、モータ等の駆動部によって中心を通る回転軸の周りに回転され、収納した第2試薬容器27aや基質液容器27bを矢印で示す周方向に搬送する。第2試薬は、磁性粒子と結合した抗原又は抗体と特異的に結合する標識物質(例えば、酵素)を含む試薬である。基質液は、標識物質との酵素反応によって光を出射する基質を含む試薬である。
【0032】
ここで、基質液容器27bには、収容した基質液に関する基質液の製造ロット番号、複数の波長でそれぞれ測光した出射光の複数の基準分光測光値等を記録したバーコードラベル等の情報記録媒体M(図2参照)が外面に貼付されている。また、基準分光測光値とは、基質液を製造した際にキャリブレータ等を用いて分析を行い、その際に反応液が出射した出射光を複数の波長のそれぞれにおいて測光した補正係数計算上の基準となる測光値をいう。更に、出射光の基準分光測光値を測光する複数の波長は、ピーク波長を含むと共に、出射光に含まれる波長領域内で等間隔に選択する。
【0033】
情報記録媒体Mは、新たな基質液容器27bをセットした際に、図2に示すように、第2試薬庫27の外周に設けた読出装置27cによって読み出され、記憶部46に記憶される。これは、第2試薬容器27aについても読出装置27cによって同様に実行される。
【0034】
第1試薬分注装置28は、鉛直方向への昇降及び自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備えている。第1試薬分注装置28は、第1試薬庫26によって吸引位置に搬送される第1試薬容器26a内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させてBFテーブル25によって第1試薬吐出位置に搬送される反応管10に吐出することによって試薬を分注する。また、第1試薬分注装置28は、第2試薬庫27によって吸引位置に移動される基質液容器27b内の基質液をプローブによって吸引し、アームを旋回させてBFテーブル25によって基質液吐出位置に搬送される反応管10に吐出することによって基質液を分注する。
【0035】
第2試薬分注装置29は、第1試薬分注装置28と同様の構成を有し、第2試薬庫27によって吸引位置に搬送された第2試薬容器27a内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送された反応管10に吐出することによって試薬を分注する。
【0036】
酵素反応テーブル30は、保持した反応管10に注入された基質液内の基質が発光可能となる酵素反応処理を行なうための反応ラインである。
【0037】
測光装置31は、反応管10が保持する反応液が出射する光の量を含む強度を測定する装置であり、図2に示すように、測光器31a、測光器31aが測光した測光値を補正する測光値補正部31b及び光学フィルタ31cを備えている。
【0038】
測光器31aは、図2に示すように、反応液Lrが出射する化学発光で生じた微弱な出射光を光電子増倍管によって所定波長域で一括して測光する。測光器31aの分光感度は、測光器31aのメーカーから提供される感度特性図をもとに、例えば、基準分光測光値を測光する複数の波長に対応した複数の波長の各分光感度を、予め入力部43から入力して記憶部46に記憶させておき、これを補正係数演算部42が読み出して使用する。但し、測光器31aの分光感度は、自動分析装置1の内部又は外部で予め前記波長毎に測定したものを記憶部46に記憶させ、使用してもよい。
【0039】
測光値補正部31bは、少なくとも演算機能と記憶機能を有するCPU等が使用され、分析時に測光器31aが測光した反応液の実測値を対応する製造ロットの補正係数で除算した値を反応液の補正測光値とする。この補正測光値は、制御部41を介して分析部44へ出力され、検体の分析結果(分析値)が演算される。光学フィルタ31cを使用した場合、測光値補正部31bは、光学フィルタ31cにより減光された実測値と実減光比とをもとに測光値を算出する。
【0040】
光学フィルタ31cは、反応液の発光強度が強い場合に反応管10と測光器31aとの間に配置され、測光器31aに入射する光を減光する。
【0041】
反応管移送装置32は、鉛直方向への昇降及び自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を行ない、液体を収容した反応管10を所定タイミングで、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、酵素反応テーブル30、図示しない反応管供給部及び図示しない反応管廃棄部の所定位置に移送するアームを備えている。また、反応管移送装置33は、鉛直方向への昇降及び自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を行ない、液体を収容した反応管10を所定タイミングで、酵素反応テーブル30、測光装置31、図示しない反応管廃棄部の所定位置に移送するアームを備えている。
【0042】
制御機構4は、制御部41、補正係数演算部42、入力部43、分析部44、記憶部46、出力部47及び送受信部48を備えている。測定機構2及び制御機構4が備えているこれらの各部は、制御部41と電気的に接続されている。制御機構4は、一又は複数のコンピュータシステムを用いて実現され、測定機構2に接続する。制御機構4は、自動分析装置1の各処理にかかわる各種プログラムを用いて、測定機構2の動作処理の制御を行なうと共に、測定機構2における測定結果の分析処理等を行なう。
【0043】
制御部41は、制御機能を有するCPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各構成部位の処理及び動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。制御部41は、記憶部46が記憶するプログラムをメモリから読み出すことにより自動分析装置1の制御を実行する。
【0044】
補正係数演算部42は、図2に示すように、基準分光測光値を測定した際と同じ複数の波長における記憶部46から読み出した測光器31aの複数の分光感度と、試薬の製造ロット毎に複数の波長のそれぞれの波長で測光された複数の基準分光測光値とをもとに基質液の製造ロット毎の補正係数を予め記憶された所定のプログラムによって演算する。補正係数演算部42は、演算した製造ロット毎の補正係数を記憶部46に出力し、記憶させる。このとき、補正係数演算部42は、同一の波長における基準分光測光値と測光器31aの分光感度との積の総ての波長に関する総和を複数の波長の数で除算することによって補正係数を演算する。
【0045】
ここで、図3は、製造ロットの異なる3つの基質液の反応液L1〜L3が出射する出射光の基準分光発光特性(基準分光測光値)の例を示す。このように、基質液の製造ロットが異なると、反応液が出射する出射光は、ピーク波長や半値幅に係る分光発光特性が変化するという特性を有している。このため、補正係数は、基質液の製造ロットを考慮する必要がある。
【0046】
また、図4に同一型番の3つの測光器31aが使用する光電子増倍管Pt1〜Pt3に関するメーカーから提示された分光感度特性の例を示す。図4に示すように、測光器31aは、同一型番であっても波長によって感度特性が僅かに相違している。従って、測光器31aは、同一型番であっても、感度波長領域内に入射する光の測光値が数%〜数10%程度ばらつく。このため、補正係数は、測光器31aの分光感度も考慮する必要がある。この結果、実施の形態1においては、出射光に含まれる波長領域内で等間隔に選択した複数の波長の基準分光測光値と、対応する波長における測光器31aの分光感度とをもとに平均値としての補正係数を求めるのである。
【0047】
具体的には、補正係数Cは、複数の波長の数をnとすると、出射光の基準分光測光値E(λn)と測光器31aの分光感度S(λn)とをもとに、次に示す一般式(1)によって基質液の製造ロット毎に計算される。
【0048】
【数1】

【0049】
即ち、基質液の補正係数は、図5に示すように、出射光の基準分光測光値と、対応する波長における測光器31aの分光感度との積である測光値感度積を複数の波長、例えば、7つの波長(λ1,…,λ7)において求める。
【0050】
次に、7つの波長(λ1,…,λ7)における7つの測光値感度積から補正係数を演算する。このとき、表1に示すように、測光値感度積の7つの波長(λ1,…,λ7)に関する総和(=5.16)を波長の数(=7)で除すことによって補正係数C(=0.74)を演算する。
【0051】
【表1】

【0052】
入力部43は、種々の情報を入力するキーボード、出力部47を構成するディスプレイの表示画面上における任意の位置を指定するためのマウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部44は、測定機構2の測光装置31から取得した補正測光値に基づいて検体の分析結果(分析値)の演算処理等を行なう。
【0053】
記憶部46は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを備えており、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部46は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み出すことができる補助記憶装置を備えていてもよい。記憶部46は、基質液容器27bに貼付された情報記録媒体Mから読み出した複数の波長における各基準分光測光値、複数の波長における測光器31aの各分光感度及び前記各分光感度と各基準分光測光値とをもとに測光補正部31bが算出した基質液の製造ロット毎の補正係数等を記憶する。
【0054】
出力部47は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、制御部41の制御のもと、分析に関する諸情報を出力する。出力部47は、ディスプレイ等を用いて構成された表示部47aを備えている。
【0055】
送受信部48は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式に従った情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。
【0056】
以上のように構成される自動分析装置1は、図1に図示しない反応管供給部より、BFテーブル25の所定位置に反応管移送装置32によって反応管10が移送され、反応管10内に磁性粒子を含む第1試薬が第1試薬分注装置28から分注される。そして、検体移送装置21によって所定位置に移送された検体容器21a内から、チップ格納部22から供給されたチップを装着した検体分注装置23によって、BFテーブル25上の反応管10に検体が分注される。
【0057】
次に、反応管10は、分注された第1試薬と検体がBFテーブル25の撹拌機構によって撹拌された後、反応管移送装置32によって、免疫反応テーブル24の中周ライン24bに移送される。中周ライン24bにおいて一定時間反応させることによって、反応管10には、第1試薬中の磁性粒子と検体中の抗原とが結合した反応物が生成される。その後、反応管10は、反応管移送装置32によってBFテーブル25に移送され、反応管10内の未反応物質をBF分離によって除去する第1BF洗浄処理が行われる。
【0058】
このようにして未反応物質がBF分離された後の反応管10には、標識抗体を含む標識試薬が第2試薬として第2試薬分注装置29から分注され、撹拌機構によって撹拌される。この結果、反応管10には、反応物と標識抗体とが結合した免疫複合体が生成される。
【0059】
そして、免疫複合体が生成された反応管10は、反応管移送装置32によって免疫反応テーブル24の内周ライン24cに移送され、一定時間反応させた後、BFテーブル25に移送される。次いで、反応管10に対して、未反応の標識抗体をBF分離によって除去する2回目の第2BF洗浄処理が行われる。その後、第2試薬分注装置29によって反応管10に基質を含む基質液が分注された後、再度撹拌される。
【0060】
次に、反応管10は、反応管移送装置32によって酵素反応テーブル30に移送され、一定時間酵素反応させた後、反応管移送装置33によって測光装置31に移送される。酵素反応を経た基質は、免疫複合体の酵素作用により光を発する。測光装置31は、基質から発せられる光を測定する。そして、分析部44は、測光装置31が測定した光量をもとに検出対象の抗原量を求める分析処理を行なう。
【0061】
この分析処理に際し、測光値補正部31bは、基質反応液が出射した出射光の実測値を補正測光値に補正する。以下、自動分析装置1が、制御部41の制御のもとに実行する本発明の自動分析装置の測光値補正方法を図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0062】
先ず、測光器31aの分光感度を読み出す(ステップS100)。次に、出射光の基準分光測光値を読み出す(ステップS102)。ここで、分光感度及び基準分光測光値は、複数の波長に関する値をそれぞれ記憶部46から読み出す。
【0063】
次いで、読み出した分光感度と基準分光測光値とをもとに、補正係数演算部42が補正係数を演算する(ステップS104)。そして、演算した補正係数を基質液の製造ロット毎に記憶する(ステップS106)。この操作は、補正係数演算部42が補正係数に係る情報を記憶部46へ出力することによって実行される。ここまでは、検体の分析開始前の準備段階に実行される。
【0064】
そして、検体の分析が開始されると、制御部41へ入力される分析依頼情報をもとに、用いる基質液の製造ロット毎の補正係数を測光値補正部31bが記憶部46から読み出す(ステップS108)。
【0065】
次に、測光値補正部31bは、測光器31aが測光した反応液の実測値を取得する(ステップS110)。次いで、測光値補正部31bは、取得した反応液の実測値を対応する製造ロットの補正係数で除算して補正測光値を演算する(ステップS112)。
【0066】
その後、測光値補正部31bは、総ての反応液の測光が終了したか否かを判定する(ステップS114)。総ての反応液の測光が終了していない場合(ステップS114,No)、測光値補正部31bは、ステップS110に戻って引き続くステップを続行する。総ての反応液の測光が終了している場合(ステップS114,Yes)、測光値補正部31bは、自動分析装置の測光値補正方法を終了する。
【0067】
以上のように、自動分析装置1は、複数の波長における基準分光測光値と対応する複数の波長における分光感度とをもとに予め基質液の製造ロット毎の補正係数を算出し、記憶部46に記憶しておく。そして、自動分析装置1は、分析の際、記憶した補正係数を記憶部46から読み出し、反応液の実測値を製造ロット毎の補正係数で除算することによって補正測光値とする。このため、自動分析装置1は、高精度な補正測光値を得ることができる。
【0068】
ここで、測光値補正部31bは、次式(2)によって反応液の実測値Qaから補正測光値Qcを算出する。このとき、例えば、複数の波長の数が7つの場合、式(2)においては、n=7、E(λn)=E(λ7)、S(λn)=S(λ7)となる。
【0069】
【数2】

【0070】
式(2)に示すように、反応液の補正測光値Qcは、実測値Qaを測光器31aの分光感度S(λn)を含む項によって除算している。このため、本発明の自動分析装置の測光値補正方法によれば、測光器31aの分光感度特性が波長によって僅かに相違しても、補正測光値Qcは、分光感度特性の相違による影響が相殺され、異なる自動分析装置1から得られた反応液の補正測光値Qcをそのまま直接相互比較することができる。
【0071】
しかも、本発明の自動分析装置の測光値補正方法によれば、出射光の発光領域全体に及ぶ複数の波長における測光器31aの各分光感度と出射光の各基準分光測光値とをもとに製造ロット毎に補正係数を算出している。このため、本発明によれば、図3に示したように、基質液の製造ロット毎に出射光のピーク波長や半値幅に係る発光特性が変化しても、補正測光値Qcを真の測光値に近づけることができる。
【0072】
(実施の形態2)
次に、本発明の自動分析装置の測光値補正方法に係る実施の形態2について説明する。実施の形態1の自動分析装置の測光値補正方法は、測光器31aのメーカーから提供された分光感度を使用して測光値感度積を波長毎に計算した。これに対し、実施の形態2は、自動分析装置の内部に組み込んだ白色光源を用いて測光手段の分光感度を測定している。図7は、実施の形態2の自動分析装置が備える測光装置の構成を測光値補正部、制御部、補正係数演算部、入力部及び記憶部等と共に示す模式図である。ここで、以下に説明する各実施の形態においては、実施の形態1で説明した自動分析装置1と同一の構成要素には同一の符号を使用する。
【0073】
図7に示すように、測光装置31Aは、測光器31aと対向する位置に分光強度が既知の白色光源31dが配置され、白色光源31dと測光器31aとの間に分光器31eが配置されている。分光器31eは、例えば、回折格子によって白色光源31dが出射する白色光を分光して測光器31aへ入射させる。ここで、白色光源31dを使用して測光器31aの分光感度を測定する際、測光装置31Aには、反応管10を配置しない。
【0074】
そして、測光装置31Aの白色光源31dを点灯し、分光器31eによって白色光が分光された複数の波長のそれぞれの光を測光器31aによって順次測光する。このとき、測光値補正部31bは、分光された各波長の光の実測値P(λm)を同じ波長における白色光源31dの分光強度R(λm)で除算することによって測光器31aの波長毎の分光感度S(λm)(=P(λm)/R(λm))を算出する。測光値補正部31bが算出した分光感度S(λm)は、記憶部46へ出力されて記憶される。
【0075】
補正係数演算部42は、試薬の製造ロット毎に複数の波長のそれぞれで測光した出射光の基準分光測光値E(λm)と、以上のようにして対応する複数の波長において求めた分光感度S(λm)とを記憶部46から読み出し、測光値感度積E(λm)・S(λm)から上述した補正係数Cを基質液の製造ロット毎に算出し、記憶部46に記憶しておく。この場合、実施の形態2では、測光値感度積E(λm)・S(λm)は、E(λm)・S(λm)=E(λm)・P(λm)/R(λm)で表現され、総ての波長に関する和を波長の数で除算することによって補正係数Cを次式(3)によって算出する。
【0076】
【数3】

【0077】
そして、図8に示すように、分析時に酵素作用により発する反応液Lrの出射光を測光する際は、白色光源31dを消灯し、分光器31eを測光路から外すと共に、反応液を保持した反応管10を配置し、反応液が出射する出射光を測光器31aによって一括して測定する。このとき、反応液の発光強度が強い場合には、図8に示すように、測光器31aの前に減光用の光学フィルタ31cを配置する。測光値補正部31bは、このようにして測定した反応液の実測値Qaと式(3)から算出した補正係数Cとを用いて式(2)によって補正測光値Qcを算出する。このとき、例えば、波長の数が7つの場合、式(3)ではN=7となる。
【0078】
以下、実施の形態2に係る自動分析装置の測光値補正方法を図9に示すフローチャートを参照して説明する。
【0079】
先ず、白色光源31dを点灯して測定した測光値をもとに測光値補正部31bが測光器31aの波長毎の分光感度を演算する(ステップS200)。次に、測光器31aの波長毎の分光感度を記憶する(ステップS202)。演算した波長毎の分光感度は、記憶部46へ入力して記憶される。次いで、出射光の複数の基準分光測光値を読み出す(ステップS204)。
【0080】
そして、補正係数演算部42は、分光感度と基準分光測光値とを記憶部46から取得し、これらの値をもとに補正係数を演算する(ステップS206)。そして、演算した補正係数を基質液の製造ロット毎に記憶する(ステップS208)。この操作は、補正係数演算部42が補正係数に係る情報を記憶部46へ出力することによって実行される。ここまでは、検体の分析開始前の準備段階に実行される。
【0081】
その後、検体の分析が開始されると、制御部41へ入力される分析依頼情報をもとに、用いる基質液の製造ロット毎の補正係数を測光値補正部31bが記憶部46から読み出す(ステップS210)。
【0082】
次に、測光値補正部31bは、測光器31aが測光した反応液の実測値を取得する(ステップS212)。次いで、測光値補正部31bは、取得した反応液の実測値を対応する製造ロットの補正係数で除算して補正測光値を演算する(ステップS214)。
【0083】
その後、測光値補正部31bは、総ての反応液の測光が終了したか否かを判定する(ステップS216)。総ての反応液の測光が終了していない場合(ステップS216,No)、測光値補正部31bは、ステップS212に戻って引き続くステップを続行する。総ての反応液の測光が終了している場合(ステップS216,Yes)、測光値補正部31bは、自動分析装置の測光値補正方法を終了する。
【0084】
以上のように、実施の形態2の自動分析装置の測光値補正方法は、測光器31aが測定した実測値を補正する際、測光器31aの分光感度の測定を自動分析装置1の測光装置31Aで行い、出射光の各基準分光測光値と測定した測光器31aの各分光感度とをもとに製造ロット毎に補正係数を算出するので、高精度な補正測光値を得ることができる。
【0085】
また、実施の形態2は、上述のように測光器31aの実測値を測光器31aの分光感度S(λn)によって除算している。このため、実施の形態2においても、異なる自動分析装置1から得られた反応液の補正測光値をそのまま直接相互比較することができ、上述した実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0086】
(実施の形態3)
次に、本発明の自動分析装置の測光値補正方法に係る実施の形態3について説明する。実施の形態2の自動分析装置の測光値補正方法は、自動分析装置1の内部に組み込んだ白色光源を用いて測光手段の分光感度を測定した。これに対し、実施の形態3の自動分析装置は、減光用の光学フィルタを使用した場合の補正測光値が正常であるか否かを判定する判定部を有している。図10は、実施の形態3において使用する測光装置の構成を測光値補正部、判定部を有する制御部、補正係数演算部、入力部及び記憶部等と共に示す模式図である。
【0087】
図10に示すように、測光装置31は、測光器31aの反応液Lrが出射する出射光の入射側に減光用の光学フィルタ31cが配置され、制御部41は判定部41aを有している。判定部41aは、測定値既知の検体を用いた実測値と補正測光値とを比較し、補正測光値の妥当性を判定する。このとき、判定部41aは、例えば、測定値既知の検体を用いた実測値の±10%以内であれば補正測光値が正常であると判定し、それ以外の場合には補正測光値が異常であると判定する。
【0088】
ここで、測光器31aの前に配置する減光用の光学フィルタ31cとしては、波長選択性がないと言われるND(neutral density)フィルタが使用される。しかし、NDフィルタであっても実際の減光比(実減光比)が波長によって異なっている。このため、異なる自動分析装置1から得られた測光値を相互比較するうえで、光学フィルタ31c毎の波長による実減光比の違い(波長特性)を排除する必要がある。そこで、実施の形態3では、以下のようにして測光値を補正する。
【0089】
即ち、補正係数を算出する際の複数の波長のそれぞれの波長において光学フィルタ31cの実減光比Kf(λ)を算出する。実減光比Kf(λ)は、光学フィルタ31c装着時に分光器31eを介して測定した白色光源31dから出射された光の測光器31aの各波長における実測値qa(λf)と光学フィルタ31c非装着時に同様に測定した測光器31aの各波長における実測値qa(λ)とを用いて次式(4)で与えられる。
【0090】
【数4】

【0091】
そして、補正係数を演算する演算工程においては、実減光比Kf(λ)を用いて上述した式を変形した次式(5)によって測光値感度積E(λn)・S(λn)を算出する。
【0092】
【数5】

【0093】
そして、測光値感度積E(λn)・S(λn)の複数の波長に関する値の総和を波長の数で除算することによって補正係数Cを算出する。その後、測光値演算工程では、実施の形態1と同様に、反応液の実測値Qaを製造ロットが同じ補正係数Cで割ることにより補正測光値Qcを算出する。
【0094】
式(5)によれば、測光値感度積E(λn)・S(λn)は、実施の形態2の測光値感度積E(λn)・S(λn)に比べると実減光比Kf(λ)で割られている。このため、式(5)の測光値感度積E(λn)・S(λn)を用いた補正係数から演算した補正測光値は、光学フィルタ31cの波長特性が排除され、光学フィルタ31c毎の相違が相殺されている。
【0095】
そして、上述のようにして算出した補正測光値Qcは、キャリブレータのように測定値が既知の検体を分析した際の反応液の実測値Qaと比較することによって判定部41aが値の妥当性を判定する。即ち、補正測光値Qcが、実測値Qaの±10%を超えている場合、判定部41aは、補正測光値Qcが異常であると判定する。補正測光値Qcが異常である場合としては、測光値の補正が適正に実行されていない、試薬である基質液の製造ロットの相違、測光器31aや光学フィルタ31cが正規品でない等の理由が考えられる。従って、補正測光値Qcが異常であると判定部41aが判定した場合には、表示部47aにエラー表示をすることによって該当部位のメンテナンスを喚起する。
【0096】
このように実施の形態3によれば、実施の形態1,2の効果に加え、補正測光値Qcの値の妥当性までを判定することができるため、補正測光値Qcが異常な場合に異常原因に対処することができる。
【0097】
尚、実施の形態1〜3は、複数の波長として波長λ1〜λ7の7つの波長を用いたが、7つの波長に限定されるものではない。例えば、実施の形態2においては、図11に示す測光装置31のように、白色光源31dに代えて、赤、緑、青の異なる波長の光を出射するLED31f〜31hを配置する。そして、それぞれ赤、緑、青の異なる3つの波長において測光器31aの分光感度を測定する。
【0098】
このようにして測定した3つの波長における分光感度S(λn)(=P(λn)/R(λn))と基準分光測光値E(λn)とをもとに、上述した測光値感度積E(λn)・S(λn)から補正係数Cを基質液の製造ロット毎に算出し、反応液の実測値Qaを補正測光値Qcに補正してもよい。
【0099】
この場合、測光装置31にLED31f〜31hを設けるのに代えて、予め酵素反応テーブル30に反応管10に類似し、赤、緑、青の異なる波長の光を出射する試験管型のLEDをセットしておき、必要に応じてこのLEDを測光装置31へ移送して分光感度を測定するようにしてもよい。
【0100】
また、実施の形態3の判定部は、実施の形態2の制御部41に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、本発明の自動分析装置及びその測光値補正方法は、測光手段の分光感度が自動分析装置毎に異なり、反応液が出射する出射光が基質液の製造ロット毎に異なっても、高精度な測定値を得るのに有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 自動分析装置
2 測定機構
21 検体移送装置
22 チップ格納部
23 検体分注装置
24 免疫反応テーブル
25 BFテーブル
26 第1試薬庫
27 第2試薬庫
28 第1試薬分注装置
29 第2試薬分注装置
30 酵素反応テーブル
31 測光装置
32 反応管移送装置
33 反応管移送装置
31a 測光器
31b 測光値補正部
31c 光学フィルタ
4 制御機構
41 制御部
41a 判定部
42 補正係数演算部
43 入力部
44 分析部
46 記憶部
47 出力部
48 送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬の反応液が出射する出射光の強度を測定する測光手段の測光値をもとに前記検体を分析する自動分析装置において、前記測光手段の、複数の波長におけるそれぞれの分光感度と、前記複数の波長でそれぞれ測光した前記出射光のそれぞれの基準分光測光値とを用いて補正係数を演算する補正係数演算手段と、
前記補正係数をもとに、分析時に前記測光手段が測光した前記反応液の実測値を前記試薬の製造ロット毎に補正して補正測光値とする補正手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記複数の波長におけるそれぞれの分光感度を記憶する記憶手段と、
前記試薬を収容した試薬容器に貼付された情報記録媒体から前記基準分光測光値を読み出す読出手段と、
を備え、
前記補正係数演算手段は、前記記憶手段が記憶する前記分光感度と、前記読出手段が読み出した前記基準分光測光値とを用いて前記補正係数を演算することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記複数の波長は、所定の出射光のピーク波長を含むと共に、前記出射光に含まれる波長領域内で等間隔に選択されることを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記補正係数は、同一の波長における前記分光感度と前記基準分光測光値との積の総ての波長に関する総和を前記複数の波長の数で除した値であることを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
分光強度が既知の光源と分光手段とを備えており、
前記複数の分光感度は、前記光源が出射した光を前記分光手段によって分光した光の前記測光手段による実測値と前記分光強度とをもとに演算した値であることを特徴とする請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記測光手段は、前記反応液が出射した出射光の強度を減光する減光手段を有しており、
前記補正係数演算手段は、前記光源から出射された光の前記複数の波長における前記測光手段の各分光実測値を、同一の波長における前記光源の各分光強度と前記減光手段の実分光減光比との積で除した値をそれぞれ前記複数の波長における分光感度として前記補正係数を演算することを特徴とする請求項4又は5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
測定値既知の検体を用いた実測値と前記補正測光値とを比較し、前記補正測光値が正常であるか否かを判定する判定部を有することを特徴とする請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
検体と試薬の反応液が出射する出射光の強度を測定する測光手段の測光値をもとに前記検体を分析する自動分析装置の測光値補正方法であって、
複数の波長における前記測光手段のそれぞれの分光感度と、前記複数の波長でそれぞれ測光した前記出射光のそれぞれの基準分光測光値とを用いて補正係数を演算する補正係数演算工程と、
前記補正係数をもとに、分析時に前記測光手段が測光した前記反応液の実測値を前記試薬の製造ロット毎に補正して補正測光値とする補正工程と、
を含むことを特徴とする自動分析装置の測光値補正方法。
【請求項9】
前記複数の波長におけるそれぞれの分光感度を記憶する記憶工程と、
前記試薬を収容した試薬容器に貼付された情報記録媒体から前記基準分光測光値を読み出す読出工程と、
を含み、
前記補正係数演算工程は、前記記憶工程で記憶した前記分光感度と、前記読出工程で読み出した前記基準分光測光値とを用いて前記補正係数を演算することを特徴とする請求項8に記載の自動分析装置の測光値補正方法。
【請求項10】
前記複数の波長は、所定の出射光のピーク波長を含むと共に、前記出射光に含まれる波長領域内で等間隔に選択されることを特徴とする請求項9に記載の自動分析装置の測光値補正方法。
【請求項11】
前記補正係数は、同一の波長における前記分光感度と前記基準分光測光値との積の総ての波長に関する総和を前記複数の波長の数で除した値であることを特徴とする請求項10に記載の自動分析装置の測光値補正方法。
【請求項12】
前記自動分析装置は、分光強度が既知の光源と分光手段とを備えており、
前記複数の分光感度は、前記光源が出射した光を前記分光手段によって分光した光の前記測光手段による実測値と前記分光強度とをもとに演算した値であることを特徴とする請求項11に記載の自動分析装置の測光値補正方法。
【請求項13】
前記測光手段は、前記反応液が出射した出射光の強度を減光する減光手段を備えており、
前記補正係数演算工程は、前記光源から出射された光の前記複数の波長における前記測光手段の各分光実測値を、同一の波長における前記光源の各分光強度と前記減光手段の実分光減光比との積で除した値をそれぞれ前記複数の波長における分光感度として前記補正係数を演算することを特徴とする請求項11又は12に記載の自動分析装置の測光値補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−47762(P2011−47762A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195654(P2009−195654)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】