説明

自動分析装置及びラック搬送方法

【課題】試料を保持したラックを分析ユニットに搬送して試料を分析する装置に適用され、分析ユニットの数が1台であっても2台以上に増設されてもラックの搬送系を複雑にせずに済む自動分析装置を提供する。
【解決手段】自動分析装置は、複数のラックを待機させた状態で回転及び停止し得るラック待機ディスクを有し、各分析ユニットとラック待機ディスクの間には専用のラック往復搬送ラインが設けられる。各ラック往復搬送ラインには単一のラックだけが導かれ、ラックは試料採取処理後にラック待機ディスクに戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析されるべき試料を保持するラックを搬送しその試料を分析ユニットに採取する自動分析装置及びそのようなラックを搬送する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血漿,血清,尿などの生体試料の分析結果は、病状を診断する上での多くの情報をもたらす。特開平10−339732号公報は、そのような生体試料を自動的に分析する装置を記載している。この先行技術では、複数の分析ユニットをベルトコンベアからなる搬送ラインに沿って配置し、該搬送ラインの一端側にラック供給部を配置し他端側にラック回収部を配置している。試料を保持したラックはベルトコンベアからなる搬送ラインを介して1つ以上の分析ユニットに立ち寄った後ラック回収部に回収される。
【0003】
さらに、特開平10−339732号公報は、一般試料のラック供給部の他に、標準液ラック及びコントロール検体ラックを反復して供給するための供給部を設け、これら2つの供給部を搬送ラインに接続する構成を開示している。
【0004】
また、特表平8−510554号公報は、ループ状のコンベアの周辺に、該コンベアへのサンプルキャリアの積み込み装置,コンベアからの荷下ろし装置及び複数の分析モジュールを配置し、ループ状コンベアと各分析モジュールの間には複数のサンプルキャリアを回転させ得るターンテーブルを配置する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−339732号公報
【特許文献2】特表平8−510554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特開平10−339732号公報及び特表平8−510554号公報に記載された自動分析装置のように、複数の分析ユニットへのラック搬送のために共通に使用される長大なコンベアによって多数のラックを搬送する場合には、搬送コンベア上に1個所でも障害が生じると、ラックの進行が妨げられ、装置全体のラック搬送動作が続行できなくなる。
【0007】
また、上述した先行技術では、自動分析装置が分析ユニットを1台だけ備えた最小単位の構成である場合に装置全体が大型になりすぎ、分析ユニットを2台以上備えるように増設する場合には共通の搬送コンベアを変更しなければならない。
【0008】
本発明の目的は、自動分析装置が1台の分析ユニットを有する最小単位で構成された場合でも装置全体を小型にでき、分析ユニットを増設する際に既存の搬送系を変更せずに済むような自動分析装置及びラック搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、試料を保持する複数のラックを待機させた状態で回転及び停止し得るラック待機ディスクにラック供給部からのラックを受け入れ、試料の分析処理を行う分析ユニットに対応して設けられたラック往復搬送装置によりラック待機ディスクから分析ユニットの試料採取位置に向けて単一のラックを搬送し、分析処理のための試料が分析ユニットの試料採取位置にて採取された後の単一の処理後ラックをラック往復搬送装置によりラック待機ディスクに戻し、該ラック待機ディスク上の処理後ラックをラック回収部に向けて搬出するように構成している。
【発明の効果】
【0010】
装置全体を小型にでき、分析ユニットを増設する際に既存の搬送系を変更せずに済むような自動分析装置及びラック搬送方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した一実施例としての自動分析装置の概略構成を示す平面図。
【図2】図1の自動分析装置におけるラック供給部及びラック回収部付近の構成を説明するための斜視図。
【図3】図1の自動分析装置におけるラック待機ディスク付近の概略構成を説明するための斜視図。
【図4】ラック待機ディスクと分析ユニットのサンプリング機構との関係を説明するための部分的平面図。
【図5】ラック管理テーブルを説明するための図。
【図6】図1の自動分析装置における蒸発保護室付近の概略断面図。
【図7】2台の分析ユニットを組み合わせた配置の一例を示す概略平面図。
【図8】2台の分析ユニットを組み合わせた配置の他の例を示す概略平面図。
【図9】3台の分析ユニットを組み合わせた配置の一例を示す概略平面図。
【図10】3台の分析ユニットを組み合わせた配置の他の例を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施例に関し図1〜図6を参照して説明する。この実施例における自動分析装置は、血漿,血清又は尿の試料を分析するように構成されている。図1の自動分析装置は1台のラック分配ユニット1と1台の分析ユニット2を組み合わせた最小単位の構成例であるが、図7以降に示すように1台のラック分配ユニットに対し2台以上の分析ユニットを組み合わせるように構成させることができる。1つの分析ユニットは、各々の分析されるべき試料に関して複数の分析項目を分析処理することができる。
【0013】
図2は、図1の自動分析装置におけるラック供給部3及びラック回収部4付近の斜視図である。図3は、図1の自動分析装置におけるラック待機ディスク5付近の斜視図である。図4は、図1の自動分析装置におけるラック待機ディスク5と、分析ユニット2のサンプリング機構26との関係を説明するための部分的平面図である。図5は、情報記憶部18におけるラック管理テーブルを説明するための図である。図6は、図1の自動分析装置における蒸発保護室とラック待機ディスクの関係を説明するための概略断面図である。
【0014】
ラック分配ユニット1は、採取前の試料を保持する処理前ラックをラック待機ディスク5の方へ供給し得るラック供給部3,分析ユニット2のサンプリング機構により試料採取処理がなされた処理後ラックを回収するためのラック回収部4,複数のラックを保持した状態で回転動作し所望のラックを所望位置に位置づけるように停止し得るラック待機ディスク5,処理前ラックをラック供給部3からラック待機ディスク5の方へ導くためのラック供給ライン6、及び処理後ラックをラック待機ディスクからラック回収部4の方へ導くためのラック回収ライン7を具備する。
【0015】
ラック9は、ほぼ矩形の箱状の保持体であって、好ましくは複数の試料容器を装填し得る複数の受け入れ室を有する。患者検体のような一般試料を収容した一般試料容器,検量線作成用のキャリブレータの液(標準液)を収容したキャリブレータ容器,精度管理(quality control)用の検体であるコントロール検体を収容した精度管理用容器,特殊な洗剤を含む洗浄液を収容した洗浄液容器などには、外壁に収容液の識別情報を示す識別情報媒体が設けられる。試料容器内の検体情報としての識別情報は、受付番号,受付年月日,患者氏名,患者番号,検体種別,依頼分析項目などである。各種容器が装填された患者検体用の一般ラック,キャリブレータラック,精度管理用ラック,洗浄液ラックなどにはラック識別情報を示す識別情報媒体が設けられる。ラックの識別情報は、収容液名,ラック番号,製造ロット番号などである。識別情報媒体としては、バーコードラベルや磁気記録媒体などが用いられる。
【0016】
ラック供給部3及びラック回収部4は、図2に示すように、処理前ラックを1ピッチずつ移動させる押し出しレバー10,35を有する。ラック供給ライン6に移されたラックに関しては、ラック識別情報及び/又はそのラック上の容器の容器識別情報(検体識別情報)がバーコード読取装置17により読み取られ、制御部19に伝達される。ラック供給部3において、多数のラックが並べられるエリアを形成するトレイ54上のラックの列の最後尾のラックの後面が押し出しレバー10によって押されることによりラックの列が移動され、先頭のラックがラック供給ライン6の入口位置P1に押し出されて突き当たりの壁に設けられたラック検知器13に接触すると、その信号が制御部19に伝達され押し出しレバー10の動作が停止される。押し出しレバー10は回動するベルト12aに取り付けられており、そのベルト12aはモータ11aにより駆動される。
【0017】
ラック回収ライン7により送られてきた処理後ラックがそのラインの出口位置P4に到達すると、出口P4の背面で待機していた押し出しレバー35がラック押し出し動作をする。ラック回収部4は多数の処理後ラックを受け入れるエリアを有するトレイ55を備える。押し出しレバー35は回動するベルト12bに取り付けられており、ベルト12bはモータ11bにより駆動される。トレイ55上に既にいくつかのラックが存在していれば、押し出しレバー35は1ピッチずつラック列を後方から押し出す。
【0018】
ラック分配ユニット1と分析ユニット2との間のラックの移動は、図3に示すような分析側接続ライン22を介して実行される。分析側接続ライン22は1つの分析ユニットに専用のものであり、単一のラックだけを受け入れるように制御部19により動作制御される。分析側接続ライン22の先端付近には分析ユニット2の試料採取位置A1が形成されており、単一のラックはラック待機ディスク5と試料採取位置A1の間を往復する。
【0019】
ラック待機ディスク5は、処理前ラック,処理後ラック,コントロールラック,キャリブレータラック,洗浄液ラック,再測定待ちラックなどを混在状態で、保持できるように制御部19により動作制御される。図3に示すように、ラック待機ディスク5は、仕切り部材20によって仕切られた複数のラック受入れ部57を備えており、各ラック受入れ部57が、ラック供給部3側から処理前ラックを受け入れるための処理前ラック受入れ位置と、保持している処理後ラックをラック回収部の方へ搬出するための処理後ラック搬出位置と、分析ユニット2に向けて処理前ラックを搬出するための分析用アクセス位置と、電解質分析項目用の測定部65の試料採取位置へのラック出し入れ位置に停止できるように、回転動作を制御部19により制御される。分析用アクセス位置は試料採取位置A1からのラックを受け入れる位置を兼ねている。ラック待機ディスク5の位置決めのために駆動機構21は、ポジションセンサを備えている。
【0020】
ラック待機ディスク5は、蒸発保護室60の内部に回転可能に配置されている。蒸発保護室60内は、後述する加湿器36によって室内の空気の湿度が外気より高められている。この場合の湿度は、例えば80パーセント以上に維持される。図2,図3,図4から理解されるように、ラック供給ライン6においては、処理前ラックがモータ15aによって駆動されるベルト16に取り付けられたラック移動爪14によってラック待機ディスク5のラック受入れ部57の方へ移動される。また、ラック回収ライン7においては、処理後ラックがモータ15bによって駆動されるベルトに取り付けられたラック移動爪34によってラック待機ディスク5上から出口位置P4の方へ移動される。図3の例では、ラック待機ディスク5に15個のラックを保持することができる。ラック待機ディスク5の側面、仕切り部材20、ディスクの底板などはラック及びラック移動爪が出入り可能に形成されている。ラック待機ディスクは駆動機構21により正回転及び逆回転が可能に駆動される。
【0021】
蒸発保護室60には、ラック供給ライン6及びラック回収ライン7の他に、分析側接続ライン22も接続される。ラック待機ディスク5の分析用アクセス位置T3と分析側接続ライン22上の試料採取位置A1との間のラックの移動は、モータ24によって駆動されるベルト25に取り付けられたラック移動爪23によって実行される。これらの移動動作は制御部19によって制御される。
【0022】
図1及び図4に示すように、分析ユニット2は、円状に多数配列された反応容器28の列を所定の方向に所定角度回転し停止することを繰り返す反応ディスク27を有する。この反応ディスクは、正逆両方向に回転可能であってもよい。また、分析ユニット2は、複数の分析項目のために用いられる試薬を収容した複数の試薬容器29を乗せた試薬ディスク50、試薬容器29から反応容器28へ分析項目に応じた試薬液を分注する試薬分注機構30、及び試料採取位置A1に到達したラックに保持されている試料容器8から反応容器28へピペットノズルによって分析項目に応じた試料を分注する試料サンプリング機構26を具備する。反応容器28内にて試料と試薬の混合により生じた反応液は、光源51から発せられ反応容器28を透過した光を受光する多波長光度計52により測定され、測定データが制御部19により処理されて分析結果がプリンタ33及び画面表示装置31に表示される。
【0023】
患者検体のような試料を収容した試料容器8が検査施設に受け付けられると、それらの試料容器はラック9に装填され、操作パネル32から制御部19に操作者により検体情報及び分析情報が入力される。検体情報は少なくとも検体番号及び試料毎の分析すべき項目の情報を含む。ラック供給部3には、一般試料のラックよりも先頭側に、精度管理用ラック(コントロールラック),キャリブレータラック,洗浄液ラックなどの特定のラックが投入される。図1の自動分析装置の分析動作の開始前に、これらの特定のラックがラック待機ディスク5に搬送される。ラック供給ライン6による搬送の途中で、特定のラックに関しバーコード読取装置17により容器及び/又はラックの識別情報が読み取られ、制御部19に伝達される。制御部19は、読み取り情報に基づいて特定ラック上に保持されている液の種類を判断して記憶し、その後の特定ラックの搬送制御に役立てる。
【0024】
自動分析装置による分析動作が開始されると、ラック供給部3にセットされている複数の一般ラック全体が押し出しレバー10によりラック供給ラインの方へ移動され、先頭のラックがラック検知器13により検知されると移動が停止される。ラック供給ライン6におけるラック9の移動方向は、ラック供給部3における移動方向とほぼ直行し、ラック回収ラインにおけるラックの移動方向は、ラック回収部4における移動方向とほぼ直行している。ラック供給ライン6にて搬送されるラック9は、バーコード読み取り装置17により検体識別情報又はラック識別情報が読み取られ、制御部19に伝達される。制御部19は、予め操作パネル32から入力され情報記憶部18に記憶されている各分析すべき試料に関する情報と読み取られた情報を照合し、分析ユニット2に対して各試料のための分析項目に応じた分析動作をするように制御する。
【0025】
ラック移動爪14によりラック供給ライン6に沿って移動されたラックが、ラック供給ライン6の出口位置P2まで搬送される間に、制御部19は、記憶されている情報に基づいてラック待機ディスク5において空いているラック受入れ部57を探して記憶し、空いている受入れ部を搬入位置T1に位置づけるようにラック待機ディスク5を回転動作する。出口位置P2上の処理前ラックは対向する搬入位置T1に位置づけられた空の受入れ部57にラック移動爪14により搬入される。
【0026】
ラック待機ディスク5に形成されている複数のラック受入れ部57は、ラックの進入方向が、法線方向とは交差し且つ該法線方向に直行する方向とも交差するように配置されている(図4参照)。このようなラック受入れ部の配置形態によれば、ディスクの直径が小さくても数多くのラックを収容できる。処理前ラックをラック待機ディスク5に移し終えたラック移動爪14は、ラック供給ライン6の入口位置P1側の端部にある待機位置まで戻り、次の新たなラックの搬送に備える。ラック待機ディスク5上に処理が終了した回収待ちの処理後ラックがあれば、そのラックをラック回収ライン7の入口位置P3に対向する搬出位置T2に位置づけ、ラック移動爪34により待機ラックをラック待機ディスク5からラック回収ライン7へ搬出する。
【0027】
ラック待機ディスク5に受け取られた処理前ラックは、ラック待機ディスク5の回転により分析用アクセス位置T3まで移動される。分析用アクセス位置T3に停止された単一の処理前ラックは、ラック移動爪23によりラック待機ディスク5から引き出され、さらに分析側接続ライン22に沿って移動し、分析側接続ライン22上の試料採取位置A1に導かれる。これにより、単一のラックはその全長がラック待機ディスク5の回転を妨害しない離れた位置に置かれるので、ラックが試料採取位置A1にて試料採取操作を受けている間に、ラック待機ディスク5は他のラックの搬送のための回転動作を実行することができる。
【0028】
分析ユニット2の試料採取位置A1では、旋回するアームにより上下方向及び水平方向に動き得るピペットノズルを有する試料サンプリング機構26により試料採取が実行される。ラック9に保持されている複数の試料容器8の内、まず先頭の試料容器内の試料が分析項目に応じて所定量ピペットノズル内に吸入され、その吸入された試料が反応ディスク27の反応容器28内へ吐出される。同じ試料につき複数の分析すべき項目があれば、同じ試料容器の試料が反応容器を違えて同様に吸入及び吐出される。先頭の試料容器の試料採取が済むと、ラック9はラック移動爪23により1ポジション分移動され、2番めの試料容器に対して同じような試料採取動作が実行される。以下順次サンプリング機構26による試料採取動作が行われ、最後の試料容器に関する採取動作が終わると、この単一のラックは、ラック移動爪23により、ラック待機ディスク5の方へ戻るように分析側接続ライン22を経て搬送される。ラックがラック待機ディスク5に到達する前に、制御部19は、空いているラック受入れ部57を分析用アクセス位置T3に位置づけるように、ラック待機ディスクの回転動作を制御する。
【0029】
ラック移動爪23の動作によりラック待機ディスク5の空のラック受入れ部57に装填された1回目の試料採取を終えたラックは、分析ユニット2による採取済み試料の各分析項目に関する分析結果が得られるまで、ラック待機ディスク5上にて待機される。分析結果が思わしくなく再度の分析測定が必要な試料がある場合には、該当するラックが分析用アクセス位置T3に再び位置づけられ、分析ユニット2の試料採取位置に搬送され、必要な試料に対する採取動作が実行され、再度分析測定され、採取動作を終えたラックがラック待機ディスクに戻される。
【0030】
1回目の試料採取を終えたラックに関し再度の測定の必要がないという分析結果が得られた場合には、そのラックは搬出位置T2に位置づけられ、ラック移動爪34によりラック回収部4の方へ搬出される。再度の試料採取を終えたラックも同様にラック回収部4の方へ搬出される。ラック移動爪34は、搬出位置T2からの処理後ラックをラック回収ライン7の出口位置P4まで搬送する。出口位置P4のラックは押し出しレバー35によりラック回収部4のトレイ55上に押し出され、回収される。
【0031】
一方、試料サンプリング機構26から分析項目毎に試料を受け取った反応容器28には試薬分注機構30によって分析項目に応じた所定量の試薬が添加され、試料と試薬の混合液の反応が開始される。反応容器28内の反応液は、多波長光光度計52により反応生成物の測定に適した波長で測定され、その吸収特性,蛍光特性,発光特性などから分析すべき項目の試料中の濃度が演算され、算出された分析結果が画面表示装置(例えばCRT)31及び/又はプリンタ33に出力される。
【0032】
制御部19は、情報記憶部18に記憶されている各ラック毎の情報に基づいて作成されるラック管理テーブルを用いて、各ラックの搬送を制御し管理する。ここで、図5を参照してラック管理テーブルについて説明する。図5のテーブルでは、ラック待機ディスク5が後述する図7又は図8に示されるように2台の分析ユニットにそれぞれ専用の分析側接続ラインにより接続されている場合を想定している。
【0033】
ラック待機ディスク5の各ラック受入れ部(ラックポジション)57におけるラックの有無は、ラック管理テーブルに対して制御部19により1又は0で設定される。各分析ユニットに専用の分析側接続ライン上のラックの有無に関しても、制御部はラック管理テーブルに対し1又は0で設定する。1はラックが存在することを示し、0はラックが無いことを示す。ラック待機ディスク5上のラック受入れ部の数は15個を想定しているが、図5の例では、ラック待機ディスク5上に8個のラックが存在し、1番の分析ユニットにだけ単一のラックが存在することを示している。つまり、ラック待機ディスクと分析側接続ラインの合計で、9個のラックが存在することが認識されている。
【0034】
制御部19は、この合計のラックの数Nがラック待機ディスク5に保持可能なラックの数、すなわちラック受入れ部の数Mを超えないように、ラック供給部3からのラックの供給タイミング及びラック回収部4へのラックの回収のタイミングを判断し、ラックの搬送を制御する。言い換えれば、制御部は、ラック待機ディスク上に実際に保持されているラックの数と全部の専用の往復搬送路に存在するラックの数との総数が、ラック待機ディスク上に保持可能なラックの数よりも少ないときに限り、ラック供給部からの新たなラックをラック待機ディスクが処理前ラック受入れ位置にて受け入れるように、ラックの搬送を制御する。
【0035】
この場合のラックの総数には、自動分析装置の分析動作の間中ラック待機ディスクからラック回収部の方へ回収されることがないように管理される精度管理用ラック(コントロールラック),キャリブレータラック(校正用ラック),洗浄液ラックなどの特定のラックも含まれる。制御部は、ラック待機ディスクにいつでも緊急ラックを受け入れられるように、少なくとも1つの空のラックポジション(ラック受入れ部)を確保するようにラックの数を管理する。
【0036】
緊急に分析測定を要する試料の容器が装填された緊急ラックは、他のラックの試料処理中であっても、ラック供給部3のラック列の先頭に割り込むようにセットされる。この緊急ラックはバーコード読み取り装置17により検体ID又はラックIDの読み取りがなされた後、直ちにラック待機ディスク5に搬送される。制御部19は読み取り情報と情報記憶部18に予め記憶されている緊急検体の分析情報とに基づいて、緊急ラックの分析対象試料が現在ラック供給ライン6上にあることを情報記憶部18に記憶させると共に、その後の緊急ラックの搬送動作を制御する。
【0037】
緊急ラックがラック待機ディスク5に受け入れられたときに、分析ユニット2の試料採取位置A1にて先の一般試料に対する試料採取処理が実行中であれば、その一般試料の採取操作を一時的に中断させる。すなわち、試料採取位置A1上の一般ラックがラック待機ディスクの空いているラック収納部に一時的に退避するようにラック待機ディスクに戻され、続いて緊急ラックが対応する分析ユニット用の分析用アクセス位置T3に位置づけられる。これらの位置情報は情報記憶部に記憶される。そして、ラック往復搬送手段としてのラック移動爪23により緊急ラックを試料採取位置A1まで搬送し、緊急分析項目用の試料採取をサンプリング機構26により実行する。
【0038】
緊急試料の採取動作を終了した緊急ラックはラック移動爪23によりラック待機ディスク5に戻される。続いて、一時的にラック待機ディスクに退避していた一般ラックを分析用アクセス位置に位置づけ、一切のラックが存在しなくなった分析側接続ライン22にラック移動爪23でもって一般ラックを試料採取位置A1に戻し、中途になっていた試料採取動作を再開する。この間に、緊急ラックはラック待機ディスク5からラック回収部4の方へ搬出され、回収される。試料採取位置A1にて採取動作の完了した一般ラックはラック待機ディスク5に戻され、再測定の必要がなければ搬出位置T2に位置づけられラック回収部4に向けて搬出される。
【0039】
図3に示す蒸発保護室60は、保護室内の空気の湿度を外気の湿度よりも高めてラック待機ディスク5上の各種ラックに保持されている各種試料及び洗浄液の蒸発を防止するための加湿器36を具備する。加湿器を備えた蒸発保護室の例を図6に示す。蒸発保護室60は、上部に開閉可能な透光性の蓋61を有し、外部とは実質的に隔離された部屋62を備える。部屋62内には、ラック待機ディスク5が駆動機構21によって回転可能であるように配置されている。蒸発保護室60は、ラック供給ライン6,ラック回収ライン7,分析側接続ライン22などのラック搬送路に接続されているが、それらとの境界には空気の出入りを制限する遮蔽物が設けられている。
【0040】
そのような遮蔽物の1つの例は、ラックの通過時に開くように動作制御される開閉扉である。この場合、扉は横方向にスライド可能になっており、ラックの通過タイミングに合わせて駆動機構によりスライドされる。ラックの通過後はスライド扉が駆動機構により閉じられる。遮蔽物の他の例は、複数の短冊状の柔軟な合成樹脂製のシートを境界に並べたものである。シートは上端部のみ固定し、下端及び両側端はフリーの状態にされる。ラックが境界を通過する際には、ラック自体がシートを押しのけて進むことができるので、駆動機構が不要である。
【0041】
図6に示す加湿器36は、上部が開放された水収容皿37と、下端が水収容皿内の水に浸漬されている多孔性で表面積の大きい蒸発補助部材38と、送風用のファン39と、水位を調節するために液面を検出する水位センサ41を備える。水収容皿には電磁弁42を介して水槽63からの水が送液ポンプ64により供給される。送液ポンプ64の動作は水位センサ41による検出信号に応じて制御される。蒸発補助部材38は例えば布である。
この布には毛細管現象によって水収容皿37から水が吸い上げられ、ファン39によって送り込まれる空気が張設されている複数枚の布の面に沿って部屋62の方へ流れる。空気が布の張設領域を通過するときに湿気を帯びるので、部屋62には湿度が高められた空気が送り込まれる。
【0042】
部屋62内には湿度センサ40が配置されており、部屋62内の湿度を監視する。湿度が予め設定されている値以下になると、制御部19は、湿度センサ40からの検出信号が設定値以下であることを判断し、ファン39を稼動させ、部屋62に向けて高湿度空気を送り込むように制御する。また、制御部19は、水位が所定値以下になった場合に、電磁弁42を開にし送液ポンプ64を駆動して水収容皿に水を補給させる。このようにして、部屋62内は一定以上の高い湿度に保たれるので、ラック待機ディスク5に架設されている各ラックに保持された試料の乾燥を低減でき、試料を長時間にわたって変質させないように保つことができる。
【0043】
ラック待機ディスク5上には、精度管理試料,キャリブレータ,洗浄液などの必要の都度に分析ユニットに反復して供給される液を収容した容器を装填した特定のラックが常時保持されている。これらのラックは長時間にわたり各容器のキャップが外された状態で蒸発保護室60内に置かれる。しかし、蒸発保護室60内が高い湿度に保たれているので、コントロール検体やキャリブレータの蒸発を阻止でき、結果的に長期間の間にわたり変質されずに済む。また、蒸発保護室60内は、室温よりも低温(摂氏5〜10度の一定温度)に保たれるように温度制御されるので、試料等のさらなる劣化防止が可能である。
【0044】
図1の自動分析装置の構成は、1台のラック分配ユニット1に対して1台の分析ユニット2を組み合わせただけの最小単位の構成を示している。この図1の自動分析装置は、さらに分析ユニットを増設することが簡単である。増設される分析ユニットの専用の分析側接続ラインをラック待機ディスク5と連絡できるように配置し、ラック待機ディスク5を増設用の分析用アクセス位置にもラックが停止されるように動作制御するだけでよい。
【0045】
図7及び図8は、1台のラック分配ユニット1に2台の分析ユニット2a及び2bを組み合わせたそれぞれの例を示しており、図9及び図10は、1台のラック分配ユニット1に3台の分析ユニット2a,2b及び2cを組み合わせたそれぞれの例を示している。いずれの場合も、ラック分配ユニット1に機械的な変更を加えることなく、分析ユニットの増設が可能である。
【0046】
図7のような組み合わせ例を図7及び図4を参照して説明する。ラック供給部3からラック供給ライン6に移されたラックは、バーコード読取装置17により検体ID又はラックIDが読み取られ、制御部19により各試料と依頼されている分析項目の関係が照合され、分析情報が情報記憶部18に記憶される。制御部19は、情報記憶部18に記憶された分析情報に基づいて、各ラックをどちらの分析ユニットに搬送すべきかを判断し、その結果を情報記憶部18に記憶させる。ラック供給ライン6から搬入位置T1にてラック待機ディスク5に引き渡されたラックの搬送先の分析ユニットが、ラック待機ディスク5から遠い方に配置されている分析ユニット2bであった場合、ラック待機ディスク5は、分析ユニット2bの専用の往復搬送路である分析側接続ライン22bに対応する分析用アクセス位置T4に該当ラックを位置づけるように制御部19により回転制御される。
【0047】
ラック搬送機構としての分析側接続ライン22bは、図3に示したと同様のラック移動爪を有するので、該当する単一のラックがラック移動爪により分析側接続ライン22bの一端側に移され、さらに分析ユニット2bの試料採取位置A2まで搬送される。試料採取位置A2は分析側接続ライン22bの他端側にある。分析ユニット2bにより分析処理すべき試料は、試料採取位置A2にて試料サンプリング機構26bのピペットノズルによってラック上の試料容器から反応ディスク27bの反応容器に分注される。試料採取を終了した処理後ラックは元の分析側接続ライン22bによりラック待機ディスク5の方へ搬送される。ラック待機ディスク上の空いているラック受入れ部57にラック移動爪により移された処理後ラックは、ラック待機ディスク5の回転動作により搬出位置T2に位置づけられ、ラック回収ライン7を経てラック回収部4に回収される。
【0048】
ラック供給部3からラック待機ディスク5に受け入れられた処理前ラックが、もう1つの分析ユニット2aにより分析処理されるべきものである場合は、図1を用いて説明した例と同様に搬送処理動作されるので、重複を避けるためにここでは説明を省く。図8の例は、図7の例とは増設した分析ユニット2bの配置方向が異なるだけであり、ラックの搬送動作は図7の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。図8の例では、分析ユニット2bが分析ユニット2aに対して回転対称に配置されているので、専用の分析側接続ラインを極めて短くすることができる。
【0049】
2つの分析ユニット2aと2bは、分析処理動作が互いに独立して実行されるので、全体で多種類の分析項目を効率的に測定することができる。また、ラック待機ディスク5から2つの分析ユニットへラックを搬送する場合は、一方の分析ユニットが先のラックに関し試料採取処理を行っている間に、他方の分析ユニットに後のラックを搬送するように、制御部19により搬送制御される。これにより、それぞれの分析ユニットにおける試料処理能力が低下されない。また、各分析ユニットは、共通のラック待機ディスクとの間の専用の往復搬送装置をそれぞれ備えているので、一方の分析ユニットの往復搬送装置が搬送処理上のトラブルによりラック搬送が困難になった場合であっても、他方の分析ユニットに一方の分析ユニットと同じ分析項目を処理できるように設定しておくことにより、全体の分析操作を続行することが可能である。これにより、自動分析装置全体が使用できないというダメージを避けることができる。
【0050】
図9及び図10の例は、図7又は図8の例の構成にさらに分析ユニット2cを増設したものである。増設した分析ユニット2cも、専用の往復搬送装置を備えており、先に述べた例と同様なラック搬送処理がなされる。自動分析装置を設置する検査施設における利用できる床面積の実状に応じて、図9のような配置にするか図10のような配置にするかが適宜選ばれる。
【0051】
図7乃至図10に示されるように複数の分析ユニットをラック分配ユニットに接続する場合には、その内の1台又は2台を異なる分析手法を用いる分析ユニットとすることが可能である。例えば、図9のような配置構成の自動分析装置であれば、分析ユニット2a及び2bに生化学分析項目を分析処理する生化学分析ユニットを配置し、分析ユニット2cに免疫分析項目を分析処理する免疫分析ユニットを配置するようにできる。
【0052】
生化学分析ユニットと免疫分析ユニットを含んでいる自動分析装置では、生化学分析項目と免疫分析項目の両方を分析すべき試料を保持する両分析用ラックに対し、制御部19は特殊な取り扱いをする。すなわち、バーコード読取装置17による読み取り情報に基づいて両分析用ラックであることが判断されると、制御部19は、両分析用ラックがラック分配ユニット1のラック待機ディスク5に受け入れられたとき、その両分析用ラックを生化学分析ユニット2a及び2bに向けて搬送するのに先立って、ラック待機ディスク5から免疫分析用の分析ユニット2cの分析用アクセス位置に位置づけて分析ユニット2cの試料採取位置に専用の往復搬送装置によって搬送し、先ず免疫分析項目用の試料を採取させる。その後、免疫分析ユニットにて試料採取処理を受けた両分析用ラックをラック待機ディスク5に戻し、生化学分析ユニット2a又は2bに対応する分析用アクセス位置にそのラックを位置づけ、ラック待機ディスクから試料採取位置まで搬送し生化学分析項目用の試料を採取させる。その後、両分析用ラックを回収のためにラック待機ディスクに戻す。
【0053】
免疫分析項目は、生化学分析項目に比べて試料同士のコンタミネーションの影響を受けやすいのであるが、このような搬送上の制御を行うことにより免疫分析項目に関する分析結果に対する精度低下をもたらす悪影響を低減することができる。
【0054】
上述した実施例によれば、ラック分配ユニットに接続する分析ユニットを増設する際に種々の配置形態を選択できるので、設置される検査施設のニーズに合わせて柔軟に対応できる自動分析装置を提供できる。
【0055】
本発明を適用した自動分析装置における特徴の1つは、試料を保持している試料採取処理前ラックを分析ユニットに向けてラック供給部から搬出し、該分析ユニットにより試料採取処理を受けた処理後ラックをラック回収部に回収するようにラックを搬送する方法に関係する。読取装置による試料又はラックの識別情報の読み取り結果に基づいて読み取り対象とされたラックが一般試料を保持する一般ラックであるか又は精度管理用検体を保持するコントロールラックであるかが判断される。この場合、コントロールラック、処理前ラック及び処理後ラックは複数ラックを保持し得るラック待機ディスクに混在状態で保持される。そして、一般ラックは、ラック待機ディスクから分析ユニットの試料採取位置へ搬送し、試料採取処理後にラック待機ディスクに戻した後、ラック待機ディスクからラック回収部に向けて搬出される。しかし、コントロールラックは、ラック待機ディスクから分析ユニットの試料採取位置へ搬送して精度管理用検体の採取処理後にラック待機ディスクに戻した後、次の測定時期までラック待機ディスク上にて待機させられる。
【0056】
このような構成により搬送系の構成を簡素化でき、精度管理用検体のように必要に応じ反復使用される特定試料と患者検体のような一般試料とを容易に管理できる。望ましい実施例では、ラック待機ディスクには精度管理用ラックの他に校正用試料を保持する校正用ラック又は洗浄液を保持する洗浄液ラックが保持され、分析ユニットが校正用試料又は洗浄液を次に必要とする時期まで、校正用ラック又は洗浄液ラックはラック待機ディスク上に待機させられる。
【0057】
自動分析装置における他の特徴は、試料容器を保持しているラック上から試料を採取し該採取された試料に関し分析指示されている分析項目を分析する分析ユニットと、該分析ユニットによる試料採取前の処理前ラックを分析ユニットに向けて供給し分析ユニットに対し試料採取処理された処理後ラックを回収するラック分配ユニットと、処理前ラックに関し試料又はラックの識別情報を読み取る読取装置とを備えた自動分析装置に関係する。
ラック待機ディスクは、精度管理用検体を保持しているコントロールラックと処理前ラックと処理後ラックとを混在状態で待機させ得るものであり、ラック供給部からの処理前ラックを受け入れ得る処理前ラック受入れ位置と、分析ユニットへのアクセス位置と、ラック回収部に向けて処理後ラックを搬出し得る処理後ラック搬出位置とに停止するように回転動作する。分析ユニットへのアクセス位置と分析ユニットの試料採取位置との間では往復搬送装置によりラックが往復移動される。制御部は、読取装置による読み取り情報に基づいて読み取り対象のラックが一般試料を保持する一般ラックであるか又はコントロールラックであるかを判断すると共に、アクセス位置にて受け取ったラックが一般ラックであるときは該一般ラックを処理後ラック搬出位置からラック回収部に向けて搬出させ、アクセス位置にて受け取ったラックがコントロールラックであるときは次の測定時期までラック待機ディスク上に待機させるようにラックの搬送を制御する。
【0058】
ラック待機ディスクを適正に配置することにより、分析ユニットが1台だけの最小単位の自動分析装置の構成であっても装置全体が小型になる。また、分析ユニットを増設するときは最小単位の構成をそのまま利用できる。
【0059】
望ましい実施例では、ラック待機ディスクは上記ラック分配ユニット内に配置されており、さらに取り扱い易くなっている。処理前ラック受入れ位置と処理後ラック搬出位置とを共用させることにより搬送路数が減ぜられる。特に望ましい形態では、ラック待機ディスクが外気よりも空気湿度が高い状態に保たれる蒸発保護室内に配置される。これにより患者検体のような一般試料が万一ラック待機ディスクに長時間保持されたとしても乾燥を防止でき、反復使用される精度管理検体のような特定試料は乾燥による成分濃度の変化を防止できる。蒸発保護室は湿度センサを有する加湿器を具備しており、該加湿器は蒸発保護室内を所定湿度以上に保つように動作制御される。
【0060】
緊急に測定を要する試料を保持する緊急ラックがラック待機ディスクに受け入れられたときは、分析ユニットにて試料採取処理中のラックへの処理を中断させて該中断ラックを一時的にラック待機ディスクに退避させた後、緊急ラックをラック待機ディスクから分析ユニットの試料採取位置へ搬送し試料採取処理後に緊急ラックをラック待機ディスクに戻し、次いで中断ラックをラック待機ディスクから分析ユニットの試料採取位置へ搬送して中断ラックに対する試料採取処理が再開される。
【0061】
自動分析装置におけるもう1つの特徴は、自動分析装置が複数の分析ユニットを有するものに関係する。この場合、ラック待機ディスクは、複数の分析ユニットの夫々へのアクセス位置にも停止するように回転動作される。各分析ユニット毎に専用に設けられた往復搬送路では、ラック待機ディスク上における各分析ユニットに対応するアクセス位置と各分析ユニットの試料採取位置との間にラックを往復移動する。制御部は、各専用の往復搬送路によって単一のラックだけが往復搬送され、先のラックが搬送先の分析ユニットの試料採取位置からラック待機ディスクに戻った後に、同じ搬送先分析ユニット向けの次のラックを専用の往復搬送路を介して搬送するようにラックの搬送を制御する。
【0062】
このような構成により、共通の搬送系を変更することなく、分析ユニットの増設が可能であり、分析装置全体を大型化せずに済む。また、ラックを送るべき分析ユニットを簡単に選択することができ、予定している分析ユニットへ混乱なくかつ迅速に適正なラックを提供することができる。
【0063】
望ましい実施例では、制御部は、ラック待機ディスクに実際に保持されているラックの数と全部の専用の往復搬送路に存在するラックの数との総数が、ラック待機ディスク上に保持可能なラック数よりも少ないときに限り、ラック供給部からの新たなラックがラック待機ディスクに処理前ラック受入れ位置にて受け入れられるように、ラックの搬送を制御する。これにより、ラック搬送処理上の混乱を避けることができる。
【0064】
自動分析装置における複数の分析ユニットが、生化学分析項目を分析する生化学分析ユニット及び免疫分析項目を分析する免疫分析ユニットを含んでいる場合には、制御部は、生化学分析項目と免疫分析項目の両方を分析すべき試料を保持する両分析用ラックがラック待機ディスクに受け入れられたとき、生化学分析ユニットに向けて搬送するのに先立って両分析用ラックをラック待機ディスクから免疫分析ユニットへ搬送し、その後免疫分析ユニットにて試料採取処理を受けた両分析用ラックをラック待機ディスクに戻した後、その両分析用ラックをラック待機ディスクから生化学分析ユニットの試料採取位置に搬送するように、ラックの搬送を制御する。これにより、試料同士のキャリオーバによる影響を受けやすい免疫分析項目の分析結果を信頼できるように保つことができる。
【0065】
また、制御部は、いずれかの分析ユニットにて採取された試料の分析結果に基づいて再測定すべきか否かが決定されるまでの間、試料採取処理を受けたラックをラック待機ディスク上にて待機させ、再測定が必要なときに該待機ラックを再びラック待機ディスクから該当分析ユニットの試料採取位置へ搬送するように、ラックの搬送を制御する。
【符号の説明】
【0066】
1 ラック分配ユニット
3 ラック供給部
4 ラック回収部
5 ラック待機ディスク
6 ラック供給ライン
7 ラック回収ライン
9 ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持しているラック上から採取された試料を分析する分析ユニットと、
前記分析ユニットにラックを供給するラック供給部と、
前記分析部での分析が終了したラックを回収するラック回収部と、
複数のラックを載置可能であり、かつ前記ラック供給部からのラックを受け入れ得るラック受入れ位置、前記分析ユニットへのアクセス位置、及び前記ラック回収部に向けてラックを搬出し得るラック搬出位置、のそれぞれの位置に停止するように回転動作させ得るラック待機ディスクと、
前記ラック待機ディスクのアクセス位置と、分析ユニットの試料採取位置との間で、ラックを往復移動させる、往復搬送路と、
を備え、
前記分析ユニットにて採取された試料の分析結果に基づいて再測定すべきか否かが決定されるまでの間、試料採取処理を受けたラックを前記ラック待機ディスク上にて待機させ、再測定が必要なときに該待機ラックを再び前記ラック待機ディスクから前記分析ユニットの試料採取位置へ搬送するように、ラックの搬送を制御する制御部を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
ラック上の試料又はラックの識別情報を読み取る読取装置を備え、
該読取装置の読み取り結果に基づいて読み取り対象とされたラックが一般試料を保持する一般ラックであるか又は精度管理用検体を保持するコントロールラックであるかを判断し、コントロールラックは前記ラック待機ディスクから前記分析ユニットの試料採取位置へ搬送して試料採取処理し、前記ラック待機ディスクに戻した後、次の測定時期まで前記ラック待機ディスク上にて待機させるように制御する制御部を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記ラック待機ディスクに校正用試料を保持する校正用ラック又は洗浄液を保持する洗浄液ラックを保持させ、前記分析ユニットが前記校正用試料又は前記洗浄液を次に必要とする時期まで、前記校正用ラック又は前記洗浄液ラックを前記ラック待機ディスク上に待機させるように前記制御部が制御することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−204129(P2010−204129A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144412(P2010−144412)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【分割の表示】特願2008−35446(P2008−35446)の分割
【原出願日】平成12年1月12日(2000.1.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】