説明

自動分析装置及び自動分析方法

【課題】キャリーオーバーの影響を確実に回避することが可能となる自動分析装置及び自動分析方法を提供する。
【解決手段】電極部内に導入した被検液の電極電位を計測し、前記被検液を前記電極部内から排出した後に、前記電極部内に導入した校正液の電極電位を計測し、前記校正液及び前記被検液の各電極電位を基に、被検液の電解質濃度を測定する自動分析装置であって、前記被検液の電極電位と前記校正液の電極電位との電位差が予め定められた値を超えたか否かを判断する判断部と、予め定められた態様で前記電極部内を洗浄する洗浄部と、前記被検液の電極電位と前記校正液の電極電位との電位差が予め定められた値を超えたことを前記判断部が判断した場合、次の被検液を導入する前に、前記洗浄部に前記予め定められた態様で前記電極部内を洗浄させる制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動分析装置及び自動分析方法に関し、特に、血液や尿の被検液をサンプリングして、被検液に含まれる成分の濃度、あるいは活性値などを、検査試薬との化学反応を利用して光学的、電気的に測定する分析装置及び自動分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動分析装置において、被検液をサンプリングし、被検液を計測した後に、被検液で汚染された部位を洗浄し、キャリーオーバーが次の被検液の測定データへ影響を与えないようにしている。キャリーオーバーの影響を回避するために、サンプリング回数やサンプリング量を基に、洗浄条件(洗浄回数、洗浄時間)を変更する方法がある(例えば、特許文献1)。また、被検液の種別(血清、尿)を予め測定パラメータとして登録し、被検液の種別に応じて、例えば、被検液が血清の場合は洗浄回数を1回に、被検液が尿の場合は洗浄回数を2回に変更する方法も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−225608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載された自動分析装置では、異常な濃度をもつ被検液(例えば、重症患者の尿検体)が単発でサンプリングされた場合、被検液を十分に洗浄することができず、キャリーオーバーが生じる。そして、キャリーオーバーの影響を次の被検液の測定データが受ける。
【0005】
また、被検液の種別に応じて洗浄条件を変更する上記方法では、例えば、ユーザが被検液の種別を誤って設定した場合、同じく、被検液を十分に洗浄することができず、キャリーオーバーが生じるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するものであり、電極部内の被検液を十分に洗浄し、キャリーオーバーの影響を確実に回避することが可能な自動分析装置及び自動分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明は、電極部内に被検液を導入する毎に、電極部内がキャリーオーバーの影響を受けているか否かを判断することに着目した。
具体的に、この発明の第1の形態は、電極部内に導入した被検液の電極電位を計測し、前記被検液を前記電極部内から排出した後に、前記電極部内に導入した校正液の電極電位を計測し、前記校正液及び前記被検液の各電極電位を基に、被検液の電解質濃度を測定する自動分析装置であって、前記被検液の電極電位と前記校正液の電極電位との電位差が予め定められた値を超えたか否かを判断する判断部と、予め定められた態様で前記電極部内を洗浄する洗浄部と、前記被検液の電極電位と前記校正液の電極電位との電位差が予め定められた値を超えたことを前記判断部が判断した場合、次の被検液を導入する前に、前記洗浄部に前記予め定められた態様で前記電極部内を洗浄させる制御部と、を有することを特徴とする自動分析装置である。
また、この発明の第2の形態は、電極部内に導入した被検液の電極電位を計測し、前記被検液を前記電極部内から排出した後に、前記電極部内に導入した校正液の電極電位を計測し、前記校正液及び前記被検液の各電極電位を基に、被検液の電解質濃度を測定する自動分析装置であって、前記被検液の電極電位が予め定められた値を超えたか否かを判断する判断部と、予め定められた態様で前記電極部内を洗浄する洗浄部と、前記被検液の電極電位が予め定められた値を超えたことを前記判断部が判断した場合、次の被検液を導入する前に、前記洗浄部に前記予め定められた態様で前記電極部内を洗浄させる制御部と、を有することを特徴とする自動分析装置である。
さらに、この発明の第3の形態は、電極部内に導入した被検液の電極電位を計測し、前記被検液を前記電極部内から排出した後に、前記電極部内に導入した校正液の電極電位を計測し、前記校正液及び前記被検液の各電極電位を基に、被検液の電解質濃度を測定する自動分析装置であって、前記校正液の電極電位が予め定められた値を超えたか否かを判断する判断部と、予め定められた態様で前記電極部内を洗浄する洗浄部と、次の前記被検液を導入する前に導入した前記校正液の電極電位が予め定められた値を超えたことを前記判断部が判断した場合、次の被検液を導入する前に、前記洗浄部に前記予め定められた態様で前記電極部内を洗浄させる制御部と、を有することを特徴とする自動分析装置である。
さらに、この発明の第4の形態は、電極部内に導入した被検液の電極電位を計測し、前記被検液を前記電極部内から排出した後に、前記電極部内に導入した校正液の電極電位を計測し、前記校正液及び前記被検液の各電極電位を基に、被検液の電解質濃度を測定する自動分析装置であって、前記被検液を前記電極部内に導入し、該導入した前記被検液を該電極部内から排出するまでの期間中に、所定の複数回だけ前記被検液の電極電位を計測する計測部と、前記所定の複数回だけ計測した前記被検液の電極電位の変化が予め定められた値を超えたか否かを判断する判断部と、予め定められた態様で前記電極部内を洗浄する洗浄部と、前記被検液の電極電位の変化が予め定められた値を超えたことを前記判断部が判断した場合、次の被検液を導入する前に、前記洗浄部に前記予め定められた態様で前記電極部内を洗浄させる制御部と、を有することを特徴とする自動分析装置である。
さらに、この発明の第6の形態は、プローブにより被検液を電極部内に吸引する被検液吸引ステップと、前記導入した前記被検液の電極電位を計測する被検液計測ステップと、前記被検液計測ステップの後に、前記吸引した前記被検液を前記電極部内から排出すると共に、前記プローブにより校正液を前記電極部内に吸引する校正液吸引ステップと、前記吸引した前記校正液の電極電位を計測する校正液計測ステップと、前記被検液の電位と前記校正液の電位との電位差を求めるステップと、前記被検液の電位と前記校正液の電位との電位差が予め定められた値を超えた場合、次の前記被検液吸引ステップの前に、予め定められた態様で、前記電極部内を洗浄することを特徴とする自動分析方法である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によると、次の被検液を導入する前に、電極部内を十分に洗浄することにより、キャリーオーバーの影響を確実に回避することが可能となる。
【0009】
また、この発明の第1の形態によると、被検液の電極電位と校正液の電極電位との電位差から、被検液が異常な濃度をもつこと、あるいは、被検液の種別を誤認したことを判断可能となる。したがって、前記被検液の電極電位と校正液の電極電位との電位差を基にして、制御部が洗浄部に電極部内を十分に洗浄させることが可能となる。
【0010】
さらに、この発明の第2の形態によると、被検液の電極電位から、被検液の電解質濃度がユーザの想定する値を超えたことを判断可能となる。
【0011】
さらに、この発明の第3の形態によると、校正液の電極電位から、校正液の電解質濃度がユーザの想定する値を超えたことを判断可能となる。
【0012】
さらに、この発明の第4の形態によると、被検液の電極電位の変化から、被検液の電解質濃度がユーザの想定する値を超えていることを判断可能となる。
【0013】
さらに、この発明の第6の形態によると、被検液の電極電位と校正液の電極電位との電位差を基にして、制御部が洗浄部に電極部内を校正液の吸排動作を所定の回数繰り返させたので、電極部内を十分に洗浄させることが可能となる。また、電極部内を洗浄する予め定められた態様として、被検液の電解質濃度を測定するときの校正液の吸排動作を用いたので、電極部内を洗浄するための特別な手段を設けずに済む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1実施形態に係る自動分析装置の構成を説明する図である。
【図2】自動分析装置の機能ブロック図である。
【図3】被検液及び校正液の吸排動作と、被検液の電極電位等とを対応させて示すタイムチャートである。
【図4】自動分析装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の第2実施形態において、被検液及び校正液の吸排動作と、被検液の電極電位等とを対応させて示すタイムチャート図である。
【図6】この発明の第3実施形態において、被検液及び校正液の吸排動作と、被検液の電極電位等とを対応させて示すタイムチャート図である。
【図7】この発明の第4実施形態において、被検液及び校正液の吸排動作と、被検液の電極電位等とを対応させて示すタイムチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
(構成)
この発明の第1の実施形態に係る自動分析装置の構成について図1及び図2を参照して説明する。図1は、自動分析装置の各構成を概念的に示した構成図、図2は、自動分析装置の機能ブロック図である。
【0016】
この自動分析装置を用いて、被検液と校正液とを交互に吸引し、吸引した被検液と校正液との各電極電位を計測し、被検液に含まれる成分の濃度、あるいは活性値などを測定する。
【0017】
先ず、制御部31は、切替弁(図示省略)の動作、及び、ポンプ10の作動を制御する。ポンプ10の作動によりプローブ11内が陰圧になり、プローブ11が反応セル12から被検液を所定量吸引する。吸引された被検液はチューブを通って、電極センサ20(電極部)内に流入する。電極センサ20内には、被検液に含まれるナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオンなどの各電解質に選択的に応答するイオン選択性電極21と、この電極の基準となる参照電極22とが設けられている。
【0018】
制御部31は、イオン選択性電極21と参照電極22と電極間の起電力を基に被検液中の電解質の濃度を求める。このイオン選択性電極21及び参照電極22は、被検液に含まれる生化学検査項目や免疫検査項目などの成分を分析する自動分析装置や電解質を専用に測定する装置に装着されて用いられる。
【0019】
このイオン選択性電極21では、被検液に含まれる特定のイオンに対して選択的に応答する感応物質を含む成分により構成される感応膜の電位を、内部電極を介して出力ピンに出力する。また、参照電極22では、被検液に対して発生する一定な電位を、内部電極を介して出力ピンに出力する。そして、イオン選択性電極21及び参照電極22間の電位差である起電力を測定することにより、特定イオンの濃度を求めることができる。
【0020】
また、制御部31は、切替弁(図示省略)の動作、及び、ポンプ10の作動を制御する。ポンプ10の作動によりプローブ11内が陰圧になり、プローブ11が校正液カップ13から校正液を所定量吸引する。また、吸引された校正液はチューブを通って、電極センサ20内のイオン選択性電極21と参照電極22とに流入する。ポンプ10の作動により校正液ボトル15から校正液カップ13にチューブを通って校正液が送り出される。また、校正液の吸引に伴って、被検液を電極センサ20内から廃液ボトル16に排出させる。
【0021】
また、ポンプ10の作動により、参照電極内部液ボトル14から参照電極内部液が押し出され、チューブを通って参照電極22に流入し、ここで、被検液又は校正液と合流する。
【0022】
被検液がイオン選択性電極21と参照電極22とに満ちると、ポンプ10の作動を一時停止する。電位計23は、イオン選択性電極21で発生した電位を測定し、デジタルデータとして制御部31に出力する。また、電位計23は、参照電極22で発生した電位を測定し、デジタルデータとして制御部31に出力する。この2つの電位のデータを制御部31は、内部メモリーに記憶させる。電位差算出部33は、この2つの電位の電位差を算出する。2つの電位の電位差を算出する電位差算出部33を図2に示す。制御部31は、2つの電位の電位差を内部メモリーに記憶させる。内部メモリーである記憶部36を図2に示す。
【0023】
2つの電位の電位差(上記のイオン選択性電極21で発生した電位と参照電極22で発生した電位との電位差)が、被検液の電極電位に相当する。
【0024】
一方で、校正液がイオン選択性電極21と参照電極22とに満ちると、ポンプ10の作動を一時停止する。電位計23は、イオン選択性電極21で発生した電位を測定し、デジタルデータとして制御部31に出力する。また、電位計23は、参照電極22で発生した電位を測定し、デジタルデータとして制御部31に出力する。この2つの電位のデータを制御部31は、内部メモリーに記憶させる。電位差算出部33は、この2つの電位の電位差を算出する。制御部31は、2つの電位の電位差を内部メモリーに記憶させる。
【0025】
2つの電位の電位差(上記のイオン選択性電極21で発生した電位と参照電極22で発生した電位との電位差)が、校正液の電極電位に相当する。
【0026】
また、電位差算出部33は、被検液の電極電位及び校正液の電極電位の電位差を求め、電解質濃度算出部34は、その電位差を基に、電解質濃度対応テーブル37を参照し、被検液の電解質濃度を演算する。電解質濃度対応テーブル37は、被検液の電極電位及び校正液の電極電位の電位差と、被検液の電解質濃度との対応関係を表したテーブルである。
【0027】
以上のように、制御部31は、切替弁の動作及びポンプ10の作動を制御することにより、電極センサ20内に被検液を吸引することにより、被検液の電極電位を計測する。
【0028】
また、制御部31は、切替弁の動作及びポンプ10の作動を制御することにより、電極センサ20内に校正液を吸引し、その後、校正液を排出することにより、電極センサ20内を予め定められた条件で洗浄する。ポンプ10及び切替弁が洗浄部に相当している。
【0029】
前記自動分析装置においては、被検液の電極電位と校正液の電極電位との電位差が予め定められた値を超えたことを第1の洗浄条件とし、第1の洗浄条件を満たしたと判断部32が判断した場合、制御部31が洗浄部に予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させるようにした。具体的には、判断部32は、内部メモリーである記憶部36に記憶した、被検液の電極電位と校正液の電極電位との電位差と、同じく記憶部36に記憶した、予め定められた被検液の電位差とを比較する。判断部32からの比較結果を受け、制御部31は、判断結果が上記の第1の洗浄条件を満たしている場合、洗浄部に洗浄させる。
【0030】
次に、電極センサ20内を洗浄する予め定められた態様について図1及び図3を参照にして説明する。図3は、被検液及び校正液の吸排動作を示すタイムチャートである。
【0031】
制御部31は、切替弁の動作及びポンプ10の作動を制御し、被検液を電極センサ20内に吸引してから、吸引した被検液を電極センサ20内から排出するまでの動作(被検液の吸排動作)後に、電極センサ20内を洗浄させる。
【0032】
電極センサ20内を洗浄する予め定められた態様は、校正液を電極センサ20内に吸引してから、吸引した校正液を電極センサ20内から廃液ボトル16に排出するまでの動作(校正液の吸排動作)を所定の回数だけ繰り返す態様である。被検液の電極電位と校正液の電極電位との電位差に応じて、校正液の吸排動作の繰り返し回数が予め定められている。電極センサ20内を洗浄する予め定められた態様として、被検液の電解質濃度を測定するための校正液の吸排動作(元々ある吸排動作)を用いたので、電極センサ20内を洗浄するための特別な手段を設けずに済む。被検液の吸排動作後に、校正液の吸排動作を2回繰り返す態様(元々ある吸排動作、及び、新たな校正液の吸排動作)を図3に示す。
【0033】
なお、電極センサ20内を洗浄する予め定められた態様としては、洗浄剤を電極センサ20内に吸引し、その後、洗浄剤を電極センサ20内から排出する動作を所定回数だけ繰り返す態様であっても良い。洗浄剤カップ17を図1に示す。
【0034】
(動作)
次に、この自動分析装置の動作について図4を参照にして説明する。図4は、自動分析装置の動作を示すフローチャートである。
【0035】
始めに、判断部32は、全部の被検液の電極電位の計測が終了しているか否かを判断する(ステップS01)。全部の被検液の電極電位の計測が終了していないと判断部32が判断した場合(ステップS01;No)、制御部31は、切替弁の動作及びポンプ10の作動を制御し、プローブ11により被検液を電極センサ20内に吸引する(被検液吸引ステップS02)。
【0036】
電位計23は、イオン選択性電極21で発生した電位と、参照電極22で発生した電位との2つの電位を計測する。制御部31は、2つの電位の電位差を基に被検液の電極電位(A)を計測する(被検液計測ステップS03)。
【0037】
被検液計測ステップS03の後に、制御部31は、切替弁の動作及びポンプ10の作動を制御し、電極センサ20内から被検液を排出し、被検液の排出に対応させて、プローブ11により校正液を電極センサ20内に吸引する(校正液吸引ステップS04)。
【0038】
電位計23は、イオン選択性電極21で発生した電位と、参照電極22で発生した電位との2つの電位を計測する。制御部31は、2つの電位の電位差を基に校正液の電極電位(B)を計測する(校正液計測ステップS05)。
【0039】
次に、制御部31は、被検液の電極電位と校正液の電極電位との電位差(A−B)を演算する(ステップS06)。ステップS06の後に、電位差(A−B)が予め定められた値を超えている否かを判断部32が判断する(C>A−B?)(ステップS07)。なお、ステップS06から07を以下のようにしても良い。被検液の電極電位と校正液の電極電位との電位差(A−B)を基に被検液の電解質濃度を演算し(ステップS06)、被検液の電解質濃度が予め定められた値を超えているか否かを判断部32が判断する(ステップS07)。この場合のステップS06では、前述したように、被検液の電解質濃度は、被検液の電極電位と校正液の電極電位との電位差(A−B)を基に、電解質濃度対応テーブル37を参照にして演算する。
【0040】
電位差(A−B)が予め定められた値を超えていないと判断部32が判断した場合(ステップS07;No)、全部の被検液の電極電位の計測が終了しているか否かを制御部31が判断するステップS01に戻る。
【0041】
一方、電位差(A−B)が予め定められた値を超えていると判断部32が判断した場合(ステップS07;Yes)、制御部31は、切替弁の動作及びポンプ10の作動を制御し、予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させる(ステップS08)。その後、全部の被検液の電極電位の計測が終了しているか否かを制御部31が判断するステップS01に戻る。予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄したので、キャリーオーバーの影響を回避することが可能となる。
【0042】
予め定められた態様は、前述したように、校正液の吸排動作を所定回数繰り返す態様である。その予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させた後に、全部の被検液の電極電位の計測が終了しているか否かを制御部31が判断するステップS01に戻る。
【0043】
前記実施形態では、被検液を電極センサ20内に吸引し、校正液を電極センサ20内に吸引するものとして、ポンプ10及びプローブ11を用いたが、これに限らない。被検液及び校正液を電極センサ20内へ導入するものであれば良い。
【0044】
また、被検液の成分の濃度を電気的に測定する自動分析装置に本発明を適用したものを示したが、被検液の成分の濃度を光学的に測定する自動分析装置に本発明を適用しても良い。
【0045】
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2の実施形態に係る自動分析装置について図2及び図5を参照にして説明する。図5は被検液及び校正液の吸排動作と、被検液の電極電位等とを対応させて示すタイムチャート図である。
【0046】
この第2の実施形態に係る自動分析装置において、被検液の電極電位が予め定められた値を超えたことを第2の洗浄条件とし、第2の洗浄条件を満たしたと判断部が判断した場合、制御部が洗浄部に予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させるようにした。具体的には、判断部32は、記憶部36に記憶された被検液の電極電位と、同じく記憶部36に記憶された予め定められた被検液の電極電位差とを比較する(図4に示すステップS07に相当)。判断部32からの比較結果を受けて、制御部31は、比較結果が上記の第2の洗浄条件を満たしている場合、洗浄部に洗浄させる。第2の実施形態において、自動分析装置の動作が第1の実施形態と異なる点は、図4に示すステップS07の動作である。被検液の電極電位が予め定められた値を超える高い値を示したことにより、予測されるキャリーオーバーの影響を回避することができる。
【0047】
なお、この第2の実施形態において、予め定められた態様は、被検液の電極電位に応じて、校正液の吸排動作を所定の回数だけ繰り返す形態である。被検液の吸排動作後に、校正液の吸排動作を2回繰り返す態様を図5に示す。
【0048】
[第3の実施の形態]
次に、この発明の第3の実施形態に係る自動分析装置について図2及び図6を参照にして説明する。図6は、被検液及び校正液の吸排動作と、被検液の電極電位等とを対応させて示すタイムチャート図である。
【0049】
この第3の実施形態に係る自動分析装置において、校正液の電極電位が予め定められた値を超えたことを判断部が判断した場合、制御部が洗浄部に予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させるようにした。
【0050】
ここで、例えば、次の被検液を吸引する前に吸引された校正液の電極電位が予め定められた値を超えたことを第3の洗浄条件とし、第3の洗浄条件を満たしたと判断部が判断した場合、制御部が洗浄部に予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させる。具体的には、判断部32は、記憶部36に記憶された校正液の電極電位と、同じく記憶部36に記憶された予め定められた校正液の電極電位差とを比較する(図4に示すステップS07に相当)。判断部32からの比較結果を受けて、制御部31は、比較結果が上記の第2の洗浄条件を満たしている場合、洗浄部に洗浄させる。第3の実施形態において、自動分析装置の動作が第1の実施形態と異なる点は、図4に示すステップS07の動作である。それにより、例えば、電極センサ20内に吸引された校正液の電極電位が徐々に変化していく場合に、キャリーオーバーの影響を確実に回避することができる。
【0051】
また、被検液を吸引する前に吸引された校正液、及び、次の被検液を吸引する前に吸引された校正液の両方の電極電位の電位差が予め定められた値を超えたことを第3の洗浄条件とし、第3の洗浄条件を満たしたことを判断部が判断した場合、制御部が洗浄部に予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させるようにしても良い。それにより、例えば、電極センサ20内に吸引された校正液の電極電位が急激に変化する場合に、キャリーオーバーの大きな影響を回避することができる。
【0052】
さらに、上記両方の第3の洗浄条件を満たしたことを判断部が判断した場合、制御部が洗浄部に予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させるようにしても良い。
【0053】
なお、この第3の実施形態において、予め定められた態様は、校正液の電極電位に応じて、校正液の吸排動作を所定の回数だけ繰り返す形態である。被検液の吸排動作後に、校正液の吸排動作を2回繰り返す態様(元々ある吸排動作、及び、新たな校正液の吸排動作)を図6に示す。
【0054】
[第4の実施の形態]
次に、この発明の第4の実施形態に係る自動分析装置について図2及び図7を参照にして説明する。図7は、被検液及び校正液の吸排動作と、被検液の電極電位の変化とを対応させて示すタイムチャート図である。
【0055】
この第4の実施形態に係る自動分析装置において、被検液の電極電位の変化が予め定められた値を超えたことを第4の洗浄条件とし、第4の洗浄条件を満たしたと判断部が判断した場合、制御部が洗浄部に予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させるようにした。所定時に取得した被検液の電極電位と、前の所定時に取得した被検液の電極電位の差を算出するための電位変化算出部35を図2に示す。制御部31は、電位変化算出部35により算出された結果を記憶部36に記憶させる。判断部32は、記憶部36に記憶された電位変化算出部35による算出結果を読み出し、記憶部36に記憶された予め定められた被検液の電極電位の変化量と比較する(図4に示すステップS07に相当)。判断部32による比較結果を受けて、制御部31は、比較結果が上記の第4の洗浄条件を満たしている場合、洗浄部に洗浄させる。第4の実施形態において、自動分析装置の動作が第1の実施形態と異なる点は、図4に示すステップS07の動作である。
【0056】
被検液を電極センサ20内に吸引してから電極センサ20内から排出するまでの期間中に、電位計23は、イオン選択性電極21で発生した電位と参照電極22で発生した電位とを、所定の複数回(例えば、80ポイント)計測する。電位差算出部33は、80ポイントの計測データを基に、各ポイントでの被検液の電極電位の変化量を求める。判断部32は、各ポイントで被検液の電極電位の変化量が予め定められた値を超えたか否かを比較する。制御部31は、判断部32による比較結果を受けて、いずれかのポイントでの比較結果が被検液の電極電位の変化量が予め定められた値を超えた場合、予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させるようにした。各ポイントでの被検液の電極電位を求めたので、キャリーオーバーの影響に対するより精確な判断をすることが可能となる。
【0057】
なお、制御部31は、被検液の電極電位の変化量が予め定められた値を超えるようなポイントが所定数を超えた場合、予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させるようにしても良い。
【0058】
さらに、判断部32は、被検液の電極電位の最低値と最高値との差が、予め定められた値を超えたか否かを比較し、制御部31は、判断部32による比較結果を受けて、比較結果が予め定められた値を超えた場合、予め定められた態様で電極センサ20内を洗浄させても良い。
【0059】
制御部31が求めた被検液の電極電位の変化を図7に実線で、また、想定される被検液の電極電位の変化を図7に二点差線でそれぞれ示す。
【0060】
なお、この第4の実施形態において、予め定められた態様は、被検液の電極電位の変化に応じて、校正液の吸排動作を所定の回数だけ繰り返す形態である。被検液の吸排動作後に、校正液の吸排動作を2回繰り返す態様(元々ある吸排動作、及び、新たな校正液の吸排動作)を図7に示す。
【0061】
上記各実施形態では、第1から第4の各洗浄条件を満たしたとき、制御部31が洗浄部に電極センサ20内を洗浄させるものを示した。これに限らず、2以上の洗浄条件を組み合わせて1又は複数の新たな洗浄条件としても良い。この場合、組み合わせた複数の新たな洗浄条件いずれか1つを満たしたと判断部32が判断した場合、制御部31が洗浄部に電極センサ20内を洗浄させるようにしても良い。また、組み合わせた複数の新たな洗浄条件の全てを満たしたと判断部32が判断した場合、制御部31が洗浄部に電極センサ20内を洗浄させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
10 ポンプ 11 プローブ 12 反応セル 13 校正液カップ
14 参照電極内部液ボトル 15 校正液ボトル 16 廃液ボトル
17 洗浄剤カップ 20 電極センサ 21 イオン選択性電極
22 参照電極 23 電位計 31 制御部 32 判断部
33 電位差算出部 34 電解質濃度算出部 35 電位変化算出部
36 記憶部 37 電解質濃度対応テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極部内に導入した被検液の電極電位を計測し、前記被検液を前記電極部内から排出した後に、前記電極部内に導入した校正液の電極電位を計測し、前記校正液及び前記被検液の各電極電位を基に、被検液の電解質濃度を測定する自動分析装置であって、
前記被検液の電極電位と前記校正液の電極電位との電位差が予め定められた値を超えたか否かを判断する判断部と、
予め定められた態様で前記電極部内を洗浄する洗浄部と、
前記被検液の電極電位と前記校正液の電極電位との電位差が予め定められた値を超えたことを前記判断部が判断した場合、次の被検液を導入する前に、前記洗浄部に前記予め定められた態様で前記電極部内を洗浄させる制御部と、
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
電極部内に導入した被検液の電極電位を計測し、前記被検液を前記電極部内から排出した後に、前記電極部内に導入した校正液の電極電位を計測し、前記校正液及び前記被検液の各電極電位を基に、被検液の電解質濃度を測定する自動分析装置であって、
前記被検液の電極電位が予め定められた値を超えたか否かを判断する判断部と、
予め定められた態様で前記電極部内を洗浄する洗浄部と、
前記被検液の電極電位が予め定められた値を超えたことを前記判断部が判断した場合、次の被検液を導入する前に、前記洗浄部に前記予め定められた態様で前記電極部内を洗浄させる制御部と、
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
電極部内に導入した被検液の電極電位を計測し、前記被検液を前記電極部内から排出した後に、前記電極部内に導入した校正液の電極電位を計測し、前記校正液及び前記被検液の各電極電位を基に、被検液の電解質濃度を測定する自動分析装置であって、
前記校正液の電極電位が予め定められた値を超えたか否かを判断する判断部と、
予め定められた態様で前記電極部内を洗浄する洗浄部と、
次の前記被検液を導入する前に導入した前記校正液の電極電位が予め定められた値を超えたことを前記判断部が判断した場合、次の被検液を導入する前に、前記洗浄部に前記予め定められた態様で前記電極部内を洗浄させる制御部と、
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
電極部内に導入した被検液の電極電位を計測し、前記被検液を前記電極部内から排出した後に、前記電極部内に導入した校正液の電極電位を計測し、前記校正液及び前記被検液の各電極電位を基に、被検液の電解質濃度を測定する自動分析装置であって、
前記被検液を前記電極部内に導入し、該導入した前記被検液を該電極部内から排出するまでの期間中に、所定の複数回だけ前記被検液の電極電位を計測する計測部と、
前記所定の複数回だけ計測した前記被検液の電極電位の変化が予め定められた値を超えたか否かを判断する判断部と、
予め定められた態様で前記電極部内を洗浄する洗浄部と、
前記被検液の電極電位の変化が予め定められた値を超えたことを前記判断部が判断した場合、次の被検液を導入する前に、前記洗浄部に前記予め定められた態様で前記電極部内を洗浄させる制御部と、
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
前記予め定められた態様は、校正液を前記電極部内に導入し、該導入した前記校正液を電極部内から排出する動作を所定の回数だけ繰り返す態様を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項6】
プローブにより被検液を電極部内に吸引する被検液吸引ステップと、
前記導入した前記被検液の電極電位を計測する被検液計測ステップと、
前記被検液計測ステップの後に、前記吸引した前記被検液を前記電極部内から排出すると共に、前記プローブにより校正液を前記電極部内に吸引する校正液吸引ステップと、
前記吸引した前記校正液の電極電位を計測する校正液計測ステップと、
前記被検液の電位と前記校正液の電位との電位差を求めるステップと、
前記被検液の電位と前記校正液の電位との電位差が予め定められた値を超えた場合、次の前記被検液吸引ステップの前に、予め定められた態様で、前記電極部内を洗浄することを特徴とする自動分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−175275(P2010−175275A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15351(P2009−15351)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】