説明

自動分析装置及び自動分析装置の精度管理方法

【課題】オペレータの無駄な拘束時間を低減し、試薬を無駄にすることのない自動分析装置及び自動分析装置の精度管理方法を提供すること。
【解決手段】検体を試薬と反応させることによって検体の分析を行う自動分析装置及び自動分析装置の精度管理方法。自動分析装置1は、標準試料又は精度管理試料を分析した際、分析結果における異常の有無を判定し、分析結果が異常であると判定した場合に、精度管理試料又は検体の分析作業を停止させる制御判定部25を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置及び自動分析装置の精度管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、1日の分析開始時や、試薬切れによってロット番号の異なる試薬ボトルに試薬が変更された場合等に標準試料や精度管理試料を分析し、オペレータが分析結果に基づく測定値から正確性を確認した後、検体の分析を続行している。そして、自動分析装置は、分析中も、所定検体数を分析する都度、精度管理試料を自動的に分析することによって正確性の確認、即ち、精度管理を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−248090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動分析装置のオペレータは、1日の分析作業を開始する際、試薬毎の検量線を作成するため、検量線作成対象となる試薬と標準試料のラックをセットし、分析開始ボタンを押して搬送経路へ流す。そして、オペレータは、前記試薬と標準試料の測光結果が出た後、測光結果が正常か否かを確認し、正常な場合に精度管理試料のラックをセットし、分析開始ボタンを押して搬送経路へ流す。この精度管理試料の測光結果が出た後、オペレータは、同様に測光結果が正常か否かを確認し、正常な場合に一般検体のラックをセットしてその日の分析作業を開始する。このため、オペレータは、一般検体の分析が開始されるまでは、他の作業があったとしても、自動分析装置から離れることができず、拘束時間が無駄になるという問題があった。
【0005】
また、分析中に精度管理を自動的に行った場合、自動分析装置は、分析結果に異常があっても、分析結果にリマークを付して検体の分析を続行してしまう。このため、このような場合には、標準試料や精度管理試料の分析結果に異常を生じた以降の検体を再検に回さなければならず、試薬や分析時間が無駄になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オペレータの無駄な拘束時間を低減し、試薬を無駄にすることのない自動分析装置及び自動分析装置の精度管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体を試薬と反応させることによって前記検体の分析を行う自動分析装置であって、標準試料又は精度管理試料を分析した際、分析結果における異常の有無を判定し、前記分析結果が異常であると判定した場合に、前記精度管理試料又は検体の分析作業を停止させる制御手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、分析結果の異常を告知する告知手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記試薬のロット番号が変更された場合、ロット番号が変更された当該試薬による前記検体の分析に先行して、当該試薬による前記標準試料と精度管理試料の分析を行わせることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記標準試料又は前記精度管理試料のロット番号ごとの測定結果の平均値、或いは事前に設定した標準試料又は精度管理試料の判定基準値をもとに分析結果における異常の有無を判定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記制御手段は、前記標準試料,精度管理試料又は検体を分注する分注装置の動作異常の有無と、前記標準試料又は前記精度管理試料の測定値の異常の有無との少なくとも一方をもとに前記分析結果における異常の有無を判定することを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、検体を試薬と反応させることによって前記検体の分析を行う自動分析装置の精度管理方法であって、標準試料又は精度管理試料を分析した際、分析結果における異常の有無を判定する判定工程と、前記分析結果が異常であると判定した場合に、前記精度管理試料又は検体の分析作業を停止させる制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置の精度管理方法は、上記の発明において、分析結果の異常を告知する告知工程を備えていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の自動分析装置の精度管理方法は、上記の発明において、前記試薬のロット番号が変更された場合、ロット番号が変更された当該試薬による前記検体の分析に先行して、当該試薬によって前記標準試料と精度管理試料を分析させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の自動分析装置の精度管理方法は、上記の発明において、前記判定工程は、標準試料又は精度管理試料のロット番号ごとの測定結果の平均値、或いは事前に設定した標準試料又は精度管理試料の判定基準値をもとに分析結果における異常の有無を判定することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の自動分析装置の精度管理方法は、上記の発明において、前記判定工程は、前記標準試料,精度管理試料又は検体を分注する分注装置の動作異常の有無と、前記標準試料又は前記精度管理試料の測定値の異常の有無との少なくとも一方をもとに前記分析結果における異常の有無を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、標準試料又は精度管理試料を分析した際、所定値を基準に分析結果における異常の有無を判定し、分析結果が異常であると判定した場合に、精度管理試料又は検体の分析作業を停止するので、オペレータの無駄な拘束時間を低減し、試薬を無駄にすることのない自動分析装置及び自動分析装置の精度管理方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の自動分析装置及び自動分析装置の精度管理方法にかかる実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の概略構成を模式的に示す図である。図2は、自動分析装置の試料分注部の構成を示す模式図である。
【0019】
自動分析装置1は、試料および試薬を反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内の液体に対する光学的な測定を行う測定機構1Aと、測定機構1Aの駆動制御を行うと共に、測定機構1Aにおける測定結果の分析を行う分析制御機構1Bとを有している。自動分析装置1は、これら二つの機構1A,1Bが連携することによって複数の試料の免疫学的な分析を自動的かつ連続的に行う。以後、例えば、自動分析装置1が不均一系反応を用いた免疫学的な測定を行うものとして説明する。
【0020】
測定機構1Aは、図1に示すように、ラック移送部2、担体試薬容器保持部5、試薬容器保持部6、反応容器保持部7、試料分注部9、担体試薬分注部12、液体試薬分注部13、反応容器移送部14、B/F洗浄部17、攪拌部18及び測光部19等を備えている。
【0021】
ラック移送部2は、複数のラック3をセットすると、これらを矢印で示すように順次試料分注部9へ自動的に移送する。ラック3は、試料容器4を搭載する凹部が長手方向に沿って複数設けられている。試料容器4は、患者から採取した試料Spが収容されている。ここで、試料容器4には、収容した試料に関する試料情報を記録した記録媒体が貼付されている(図示せず)。このため、測定機構1Aは、図1に示すように、試料容器4に貼付された記録媒体から試料情報を読み取る読取部CR1がラック移送部2の近傍に設けられている。
【0022】
担体試薬容器保持部5は、担体試薬容器5aを保持するホイールと、このホイールの底面中心に取り付けられ、その中心を通る鉛直線を回転軸としてホイールを回転させる駆動手段とを有している。そして、担体試薬容器保持部5は、図1に示すように、担体試薬を収容した複数の担体試薬容器5aを保持している。試薬容器保持部6及び反応容器保持部7も担体試薬容器保持部5と同様に、ホイールおよびこのホイールを回転させる駆動手段をそれぞれ有している。
【0023】
試薬容器保持部6は、図1に示すように、各種液体試薬をそれぞれ収容した複数の試薬容器6aを保持している。試薬容器保持部6は、試薬の劣化や変性を抑制するために室温よりも低温に設定されている。ここで、担体試薬容器5a及び試薬容器6aは、内部に収容する担体試薬や試薬に関する試薬情報を記録した記録媒体がそれぞれ貼付されている(図示せず)。このため、担体試薬容器保持部5及び試薬容器保持部6は、担体試薬容器5aに貼付された記録媒体から試薬情報を読み取る読取部CR2、試薬容器6aに貼付された記録媒体から試薬情報を読み取る読取部CR3が近傍に設けられている。
【0024】
反応容器保持部7は、図1に示すように、分注される試料と試薬とを反応させる反応容器8を外周縁に沿って保持している。反応容器保持部7は、保持する反応容器8を人間の体温と同程度の温度に保温している。ここで、反応容器8は、試料Spの分析毎に使い捨てられる使い捨てタイプの合成樹脂製の容器である。
【0025】
試料分注部9は、ラック移送部2と反応容器保持部7の近傍に配置され、ラック3上の試料容器4に収容されている試料Spを反応容器保持部7が保持する反応容器8に分注する。試料分注部9は、図1に示すように、水平方向の動作線上に未使用のチップ9bを保持するチップ格納部10と、使用済みのチップ9bをプローブ9aから取り外して廃棄するチップ廃棄部11とが設けられている。試料分注部9は、試料Spを分注するたびにプローブ9aの先端のチップ9bを新たなチップ9bに交換する。
【0026】
そして、試料分注部9は、図2に示すように、金属等の導電性材料から成る細管状のプローブ9aの先端に着脱自在に装着されるプラスチック等の絶縁性材料から成るチップ9bによって試料Spを分注する。このため、試料分注部9は、プローブ移送部91、シリンジ92、シリンジ93、液面検知部94、詰り検知部95及び分注制御部96を有している。
【0027】
プローブ移送部91は、プローブ9aを鉛直方向に昇降駆動すると共に、水平方向に回転駆動させることによってプローブ9aを鉛直方向と水平方向に移送する。
【0028】
シリンジ92は、図2に示すように、シリンダ92aおよびピストン92bを有しており、プローブ移送部91がプローブ9aを移送するのにあわせてチップ9bの先端から外部へエアーを押し出す。ピストン92bは、ピストン駆動部92cと接続され、分注制御部96の制御のもと、シリンダ92aの内部を図1においてシリンダ92aに沿って上下方向へ摺動させる。これにより、シリンジ92は、シリンダ92a内部のエアー圧力を、電磁弁V1、チューブT1、電磁弁V2及びチューブT2の順に経由してプローブ9aへと伝達し、エアーをチップ9bの先端から外部へ押し出す。
【0029】
シリンジ93は、図2に示すように、シリンダ93aおよびピストン93bを有しており、チップ9bの先端で試料Spを吸引または吐出する圧力をチップ9bに伝達する。ピストン93bは、ピストン駆動部93cに接続され、分注制御部96の制御のもと、シリンダ93aの内部を図1で上下方向へ摺動させる。これにより、シリンジ93は、シリンダ93a内部のエアー圧力を、電磁弁V3、チューブT3、電磁弁V2及びチューブT2の順に経由してプローブ9aへと伝達し、チップ9bの先端における試料Spの吐出圧または吸引圧を発生する。ここで、シリンジ93が分注する試料Spの分注量は微量(数マイクロリットル〜数十マイクロリットル程度)である。従って、シリンダ93aは、シリンダ92aの容積に比べて著しく容積が小さい。
【0030】
ここで、電磁弁V1,V2,V3は、図2に示すように、三方弁である。電磁弁V1のチューブT1及びシリンダ92aと接続されていないポートと、電磁弁V3のチューブT3及びシリンダ93aと接続されていないポートは、大気に解放されており、エアーを外部から吸引し、或いは外部へ吐出することができる。なお、図2は配線を省略しているが、電磁弁V1,V2,V3の開閉動作も分注制御部96の制御に基づいて行われている。
【0031】
液面検知部94は、プローブ9a下端の試料容器4に収容されている試料Spの液面への接触を電気的に検知する。液面検知部94は、図2に示すように、電極94a、静電容量検出部94b及び判定部94cを有している。電極94aは、試料容器4の近傍(チップ9bの先端で試料Spを吸引する際の試料吸引位置の近傍)に設けられている。静電容量検出部94bは、プローブ9aと電極94aとの間の静電容量を検出する。判定部94cは、静電容量検出部94bから出力される信号に基づいてプローブ9aと試料Spとの接触の有無を判定する。
【0032】
静電容量検出部94bは、静電容量方式を採用した従来の液面検知装置における静電容量検出部と同様に構成され、所定の周波数の交流信号を発振して印加する発振回路と、プローブ9aから出力される信号を増幅する増幅回路と、増幅回路の出力を整流する整流回路と、整流回路の出力を平滑化する平滑回路とを備えている。
【0033】
判定部94cは、図2に示すように、増幅回路94dと比較回路94eとを有している。増幅回路94dは、静電容量検出部94bからの出力を所定の増幅率で増幅する。比較回路94eは、増幅回路94dの出力を基準値と比較し、その基準値に達した場合に所定の液面検知信号(デジタル信号)を分注制御部96へ出力し、その基準値に達しない場合に液面検知エラー信号を分注制御部96へ出力する。ここで、プローブ9aと電極94aとの間の静電容量は、プローブ9aへのチップ9bの装着の有無によって異なっている。このため、判定部94cは、プローブ9aが移動する際にプローブ9aからのチップ9bの脱落を検知することも可能である。
【0034】
詰り検知部95は、チューブT2に接続されてプローブ9aに加わるエア圧力の変化に基づいてプローブ9aの詰りを検知する。詰り検知部95は、図2に示すように、圧力センサ95aと信号処理部95bとを備えている。圧力センサ95aは、プローブ9aに加わるエアー圧力の変化を検出し、この検出結果に対応する電気信号(アナログ信号)を生成する。信号処理部95bは、圧力センサ95aからの出力に対して増幅、A/D変換等の信号処理を施し、この信号処理の結果に基づくプローブ9aの詰り検知信号を分注制御部96へ出力する。
【0035】
分注制御部96は、図2に示すように、制御判定部25から入力される制御信号をもとに試料分注部9の分注動作を制御するもので、CPU(Central Processing Unit)等を用いて実現される。このとき、分注制御部96は、液面検知部94から入力される液面検知信号(デジタル信号)と液面検知エラー信号並びに詰り検知部95から入力されるプローブ9aの詰り検知信号を制御判定部25へ出力する。
【0036】
担体試薬分注部12及び液体試薬分注部13は、鉛直方向に昇降駆動すると共に、水平方向に回転駆動して、プローブによって担体試薬や液体試薬を分注するものであり、試料分注部9と略同様の構成を有している。
【0037】
担体試薬分注部12は、図1に示すように、担体試薬容器保持部5と反応容器保持部7の近傍に配置され、担体試薬容器保持部5上の担体試薬容器5aに収容されている担体試薬を反応容器8に分注する。
【0038】
液体試薬分注部13は、試薬容器保持部6と反応容器保持部7の近傍に配置され、試薬容器保持部6上の試薬容器6aに収容されている液体試薬を反応容器8に分注する。担体試薬分注部12及び液体試薬分注部13は、プローブの先端にチップを装着することは想定していないが、試料分注部9と同様、分注するたびにプローブの先端のチップを新たなチップに交換するような構成とすることも可能である。
【0039】
反応容器移送部14は、鉛直方向に昇降駆動すると共に、水平方向に回転駆動して反応容器8を移送し、反応容器8を反応容器保持部7に設置すると共に、設置した反応容器8を反応容器保持部7から取り除く。このため、反応容器移送部14の水平方向の動作線上には、未使用の反応容器8を保持する反応容器格納部15と、使用後の反応容器8を廃棄する反応容器廃棄部16とが設けられている。
【0040】
B/F洗浄部17、攪拌部18及び測光部19は、図1に示すように、反応容器保持部7の外周に配置されている。
【0041】
B/F洗浄部17は、吐出ノズルと吸引ノズルとを有している。B/F洗浄部17は、生理食塩水等のB/F洗浄液を吐出ノズルから吐出して反応容器8をB/F洗浄すると共に、B/F洗浄後のB/F洗浄液を吸引ノズルによって反応容器8から吸引して廃棄することで、担体試薬のB/F洗浄を行う。
【0042】
攪拌部18は、反応容器8の内部に収容された液体を攪拌棒によって攪拌する。測光部19は、反応容器8内の反応液から発光する光を検出する。測光部19は、微弱な光を検出可能な光電子増倍管を有する。なお、反応液から発生する蛍光を測定する場合には、測光部19として励起光を照射する光源を設ける。
【0043】
分析制御機構1Bは、図1に示すように、データ生成部21、入力部22、出力部23、記憶部24及び制御判定部25を備えている。
【0044】
データ生成部21は、測定機構1Aにおける測定結果に基づいて試料Spの分析データを生成する。入力部22は、試料Spの分析に必要な情報及び自動分析装置1の動作指示信号が入力され、キーボードやマウス等が使用される。
【0045】
出力部23は、液晶、プラズマ、有機EL、CRT等のディスプレイ装置や音声や警報音によって各種情報を発生するスピーカが使用され、分析結果を含む情報をディスプレイ装置に表示し、又はスピーカから告知すると共に、制御判定部25を介して分析結果を記憶部24へ出力する。
【0046】
記憶部24は、分析結果を含む情報を記憶する。制御判定部25は、分析結果が異常であると判定した場合に、精度管理試料又は検体の分析作業を停止させる制御手段であり、記憶部24が記憶するプログラムをメモリから読み出すことによって自動分析装置1の各種動作の制御等を行う。また、制御判定部25は、例えば、1日の分析開始時や分析中に試薬切れによって交換した担体試薬容器5a及び試薬容器6aのロット番号が異なる場合には、精度管理のために自動分析装置1に標準試料を分析させて新たな検量線を作成すると共に、精度管理試料を分析させる。更に、制御判定部25は、検体分析値の精度管理のため、検体の分析中に自動分析装置1に所定頻度で精度管理試料を分析させる。
【0047】
そして、制御判定部25は、標準試料又は精度管理試料を分析した際に、その分析結果を判定し、分析結果が正常である場合には精度管理試料又は検体の分析作業を続行し、異常である場合には精度管理試料又は検体の分析作業を停止させる。このとき、制御判定部25は、標準試料,精度管理試料又は検体を分注する試料分注部9の動作異常の有無と、標準試料又は精度管理試料の測定値の異常との少なくとも一方をもとに分析結果における異常の有無を判定する。なお、制御判定部25は、分注制御部96から入力される液面検知エラー信号とプローブ9aの詰り検知信号とをもとに試料分注部9の動作異常の有無を判定する。
【0048】
ここで、以下の説明においては、試料分注部9の動作異常の有無の判定を「メカ動作チェック」と呼び、測定値の異常の有無の判定を「測定値チェック」と呼ぶ。このとき、メカ動作チェックは、標準試料や精度管理試料を分析する際の試料分注部9の機械的な動作のみによって分析結果における異常の有無を判定し、検体の分析を開始するので、分析を早く終了したい場合の選択肢である。一方、測定値チェックは、標準試料や精度管理試料の測定値が出るのを待って分析結果における異常の有無を判定し、検体の分析を開始する。このため、測定値チェックは、試薬や血清、尿、全血等の貴重な検体を無駄にしたくない場合の選択肢である。
【0049】
従って、分析制御機構1Bは、反応液が発光した光を検出した測光部19からの光信号を受信すると、データ生成部21が反応容器8内の反応液の発光量を算出する。また、データ生成部21では、前述した反応液の発光量の算出結果に加えて標準試料から得られる検量線や分析パラメータなどの情報を参照することによってその反応液の成分を定量的に求め、試料Spの分析データを生成する。このようにして得られた分析データは、出力部23から出力される一方、記憶部24に格納して記憶される。
【0050】
更に、標準試料又は精度管理試料を分析した際、分析結果を自動判定する自動判定モードを選択する場合、オペレータは、出力部23の前記したディスプレイ装置の画面上のアイコンをマウスでクリックしてユーザ設定メニューを選択する。すると、出力部23のディスプレイ装置は、図3に示すユーザ設定メニュー画面M1を表示する。このユーザ設定メニュー画面M1上で「自動判定設定メニュー」の項目を選択してOKボタンB1を押下することにより、図4に示す自動判定設定メニュー画面M2に切り替わる。
【0051】
自動判定設定メニュー画面M2上で、前記と同様に、「メカ動作チェックのみ」、「メカ動作チェック及び測定値チェック」或いは「自動判定をしない」のいずれかを選択してOKボタンB2を押下する。但し、「メカ動作チェックのみ」又は「メカ動作チェック及び測定値チェック」を選択した場合は、更に詳細設定ボタンB3を押下する。すると、「自動判定をしない」を選択した場合は初期画面に戻る。一方、「メカ動作チェックのみ」又は「メカ動作チェック及び測定値チェック」を選択した場合は、図5に示す項目詳細設定メニュー画面M3が表示される。
【0052】
項目詳細設定メニュー画面M3は、分析対象項目について測定した今回の測定値である今回値を前回値と比較可能であるか否かを選択する画面であり、前回値と比較可能であれば有効を選択し、前回値と比較可能でなければ無効を選択する。そして、項目詳細設定メニュー画面M3上で選択を終了した後、OKボタンB4を押下することにより、自動判定モードが終了する。このとき、ユーザ設定メニューにおける上記各種選択項目は、入力部22から制御判定部25へ出力され、分析結果の判定処理において利用される。
【0053】
以上の構成を有する自動分析装置1における分析処理の概要を、不均一系反応の一例である酵素免疫測定法(EIA)のうち、特に2ステップのサンドイッチ法(非競合法)を用いることによって試料中の所定の抗原の濃度を測定する場合について以下に説明する。
【0054】
先ず、試料Sp中の所定の抗原に特異的に結合する抗体によって感作された固相担体を含む担体試薬を担体試薬分注部12によって反応容器8に分注する。次に、試料分注部9によってその反応容器8に試料Spを分注し、攪拌部18で担体試薬と試料Spとを混合して1回目の免疫反応(抗原抗体反応)を行わせる。
【0055】
この1回目の免疫反応の後、B/F洗浄部17においてB/F反応液のB/F洗浄を行い、抗体と特異的に結合せずに遊離している試料Sp(抗原を含む)や抗体を固相担体から分離除去する。次いで、B/F洗浄後の反応液に標識物質である酵素(第1試薬)を液体試薬分注部13によって過剰に加え、2回目の免疫反応を行わせる。この2回目の免疫反応後にもB/F洗浄部17にて反応液の2回目のB/F洗浄を行い、余剰のために遊離している標識物質等を固相担体から分離除去する。
【0056】
その後、2回目のB/F洗浄後の反応液に標識物質である酵素が活性を発現する発色基質(第2試薬)を液体試薬分注部13によって分注し、反応液中の標識物質との間で発色反応を行わせ、この発色反応によって発色した光量を測光部19で測定する。
【0057】
次に、データ生成部21が、測光部19における測定によって得られたデータと抗原の濃度が既知の標準試料から得られたデータ(検量線)との比較演算を行い、分析対象の抗原の試料Sp中の濃度を定量的に求めて分析データを生成し、試料Spの分析に係る一連の作業が終了する。
【0058】
このとき、自動分析装置1は、1日の分析開始時や担体試薬や試薬切れによる交換によって担体試薬容器5aや試薬容器6aのロット番号が変更したような場合には標準試料や精度管理試料を分析し、分析中には所定検体数を分析する都度、精度管理試料を分析することによって精度管理を行っている。ここで、例えば、自動分析装置1が標準試料や精度管理試料の分析から1日の分析を開始する場合における、本発明の自動分析装置の精度管理方法を、図6に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
【0059】
先ず、制御判定部25は、標準試料を分析する(ステップS100)。次に、制御判定部25は、標準試料の分析結果の判定処理を実行する(ステップS102)。次いで、制御判定部25は、標準試料の分析結果が正常か否かを判定する(ステップS104)。分析結果が正常の場合(ステップS104,Yes)、制御判定部25は、精度管理試料を分析する(ステップS106)。
【0060】
その後、制御判定部25は、精度管理試料の分析結果の判定処理を実行する(ステップS108)。次に、制御判定部25は、精度管理試料の分析結果が正常か否かを判定する(ステップS110)。次いで、制御判定部25は、分析結果が正常の場合(ステップS110,Yes)、ラック移送部2にセットされた複数のラック3の試料分注部9への移送を開始し、検体の分析を開始する(ステップS112)。
【0061】
そして、制御判定部25は、ラック3によって搬送されてくる総ての検体の分析が終了すると、分析作業を終了する(ステップS114)。
【0062】
一方、標準試料の分析結果が異常の場合(ステップS104,No)、制御判定部25は、引き続く分析を停止させる(ステップS116)。次に、制御判定部25は、出力部23を介して分析結果の異常を前記ディスプレイ装置に表示し、又はスピーカから告知する(ステップS118)。これにより、オペレータ又はサービスマンが、自動分析装置1のメンテナンスを行い、入力部22から異常が解消された旨が入力される。
【0063】
このため、制御判定部25は、異常の告知後、入力部22からの入力信号をもとに異常が解消されたか否かを判定する(ステップS120)。異常が解消されている場合(ステップS120,Yes)、制御判定部25は、ステップS100に戻って引き続くステップを繰り返す。異常が解消されていない場合(ステップS120,No)、制御判定部25は、異常が解消されるまでステップS120を繰り返す。
【0064】
また、精度管理試料の分析結果が異常の場合(ステップS110,No)、制御判定部25は、ステップS116に移行し、引き続くステップを繰り返す。
【0065】
ここで、制御判定部25が実行する分析結果の判定処理を図7に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0066】
先ず、制御判定部25は、図7に示すように、自動判定モードが選択されているか否かを判定する(ステップS200)。自動判定モードが選択されている場合(ステップS200,Yes)、制御判定部25は、メカ動作チェックが選択されているか否かを判定する(ステップS202)。一方、自動判定モードが選択されていない場合(ステップS200,No)、制御判定部25は、分析結果の判定処理を終了する。
【0067】
メカ動作チェックが選択されている場合(ステップS202,Yes)、制御判定部25は、メカ動作が正常か否かを判定する(ステップS204)。この判定は、分注制御部96から入力される情報をもとに行われる。メカ動作チェックが選択されていない場合(ステップS202,No)、制御判定部25は、ステップS206へ移行する。
【0068】
メカ動作が正常の場合(ステップS204,Yes)、制御判定部25は、測定値チェックが選択されているか否かを判定する(ステップS206)。一方、メカ動作が異常の場合(ステップS204,No)、制御判定部25は、出力部23を介してメカ動作の異常を前記ディスプレイ装置に表示するかスピーカから告知し(ステップS208)、分析結果の判定処理を終了する。この告知により、オペレータ又はサービスマンが、試料分注部9のプローブ9aの目詰まりのチェックや液面検知部94のメンテナンスを行うことになる。
【0069】
測定値チェックが選択されている場合(ステップS206,Yes)、制御判定部25は、試薬ロット番号が変更されているか否かを判定する(ステップS210)。この判定は、読取部CR2,CR3から入力される試薬情報をもとに行われる。一方、測定値チェックが選択されていない場合(ステップS206,No)、制御判定部25は、分析結果の判定処理を終了する。
【0070】
試薬ロット番号が変更されている場合(ステップS210,Yes)、制御判定部25は、今回値が前回値と比較可能であるか否かを判定する(ステップS212)。この判定は、前回値が正常値であったか否かの判定であり、ユーザ設定メニューにおいて選択され、入力部22から制御判定部25へ出力される情報にもとづいて実行される。即ち、前回値が異常値であった場合、今回値を前回値と比較することができないのに対し、前回値が正常値であれば、今回値を前回値と比較することができる。一方、試薬ロット番号が変更されていない場合(ステップS210,No)、制御判定部25は、今回値が正常であるか否かを判定する(ステップS214)。
【0071】
今回値を前回値と比較可能である場合(ステップS212,Yes)、制御判定部25は、今回値が正常であるか否かを判定する(ステップS214)。この判定は、標準試料又は精度管理試料のロット番号ごとに予め測定結果を蓄積しつつ平均値を求めておき、この平均値を前回値として今回値と比較し、今回値が事前に設定した前回値の許容範囲内の場合に正常と判定し、前回値の許容範囲を逸脱している場合に異常と判定する。
【0072】
一方、前回値が異常値であり、今回値を前回値と比較可能でない場合(ステップS212,No)、制御判定部25は、今回値が正常であるか否かを判定する(ステップS216)。この判定は、今回値が事前に設定した標準試料又は精度管理試料の判定基準値の所定許容範囲内の場合に正常と判定し、判定基準値の所定許容範囲を逸脱している場合に異常と判定する。
【0073】
前回値が正常である場合(ステップS214,Yes)、制御判定部25は、分析結果の判定処理を終了する。前回値が正常でない場合(ステップS214,No)、制御判定部25は、出力部23を介して測定値の異常を前記ディスプレイ装置に表示するかスピーカから告知し(ステップS218)、分析結果の判定処理を終了する。この告知により、オペレータ又はサービスマンが、自動分析装置1のメンテナンスを行うことになる。
【0074】
今回値が正常である場合(ステップS216,Yes)、制御判定部25は、分析結果の判定処理を終了する。従って、ステップS214において前回値が正常である場合も含め、分析結果の判定処理においては、標準試料及び精度管理試料は、今回値を基準に引き続く検体の分析を実行する。今回値が異常である場合(ステップS216,No)、制御判定部25は、出力部23を介して測定値の異常を前記ディスプレイ装置に表示するかスピーカから告知し(ステップS218)、分析結果の判定処理を終了する。この告知により、オペレータ又はサービスマンが、自動分析装置1のメンテナンスを行うことになる。
【0075】
以上のように、本発明は、標準試料や精度管理試料を分析した際、その分析結果が正常な場合には引き続いて精度管理試料や検体の分析を続行し、標準試料や精度管理試料の分析結果が異常な場合には、その旨を告知して異常が解消されるまで引き続く分析動作を停止する。このため、オペレータは、分析結果の異常が告知された場合だけ自動分析装置1の傍に戻ればよいので、無駄な拘束時間が低減される。
【0076】
そして、異常が解消された場合、本発明は、図6に示したように、改めて標準試料や精度管理試料の分析を開始して精度管理を実行し、自動分析装置1が正常であることを確認した後に、検体の分析を開始する。このため、自動分析装置1は、常に正常な状態で検体を分析するので、再検対象となる検体が殆どなくなり、試薬を無駄にすることがない。従って、本発明によれば、無駄な拘束時間を低減し、試薬を無駄にすることのない自動分析装置及び自動分析装置の精度管理方法が提供される。
【0077】
尚、上述の実施の形態は、自動分析装置1が標準試料や精度管理試料の分析から1日の分析を開始する場合における精度管理方法について接続した。しかし、本発明の自動分析装置の精度管理方法は、1日の分析開始時や担体試薬や試薬切れによる交換によって担体試薬容器5aや試薬容器6aのロット番号が変更された場合や分析中に所定検体数を分析する都度、精度管理試料を分析することによって精度管理を行う場合にも適用することができる。
【0078】
また、上述の実施の形態は、試料分注部9の動作異常の有無と、標準試料又は精度管理試料の測定値の異常とをもとに分析結果における異常の有無を判定した。しかし、試料分注部9に動作異常が発生すると、標準試料又は精度管理試料の分注量が変化し、従って測定値も異常となる。このため、試料分注部9の動作異常の有無か、標準試料又は精度管理試料の測定値の異常の少なくとも一方によって分析結果における異常の有無を判定すればよい。
【0079】
更に、上述の実施の形態は、免疫学的な分析を自動的かつ連続的に行う自動分析装置1の場合について説明した。しかし、本発明は、標準試料や精度管理試料を用いて装置の精度管理を行うものであれば生化学的な分析や遺伝子的な自動分析装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本実施の形態に係る自動分析装置の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】自動分析装置の試料分注部の構成を示す模式図である。
【図3】ユーザ設定メニュー画面の一例を示す図である。
【図4】自動判定設定メニュー画面の一例を示す図である。
【図5】項目詳細設定メニュー画面の一例を示す図である。
【図6】本発明の自動分析装置の精度管理方法を説明するフローチャートである。
【図7】制御判定部が実行する分析結果の判定処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 自動分析装置
1A 測定機構
1B 分析制御機構
2 ラック移送部
3 ラック
4 試料容器
5 担体試薬容器保持部
6 試薬容器保持部
7 反応容器保持部
8 反応容器
9 試料分注部
9a プローブ
9b チップ
91 プローブ移送部
92 シリンジ
93 シリンジ
94 液面検知部
95 詰り検知部
96 分注制御部
10 チップ格納部
11 チップ廃棄部
12 担体試薬分注部
13 液体試薬分注部
14 反応容器移送部
15 反応容器格納部
16 反応容器廃棄部
17 B/F洗浄部
18 攪拌部
19 測光部
21 データ生成部
22 入力部
23 出力部
24 記憶部
25 制御判定部
CR1〜CR3 読取部
Sp 試料
T1〜T3 チューブ
V1〜V3 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を試薬と反応させることによって前記検体の分析を行う自動分析装置であって、
標準試料又は精度管理試料を分析した際、分析結果における異常の有無を判定し、前記分析結果が異常であると判定した場合に、前記精度管理試料又は検体の分析作業を停止させる制御手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
分析結果の異常を告知する告知手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記試薬のロット番号が変更された場合、ロット番号が変更された当該試薬による前記検体の分析に先行して、当該試薬による前記標準試料と精度管理試料の分析を行わせることを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記標準試料又は前記精度管理試料のロット番号ごとの測定結果の平均値、或いは事前に設定した標準試料又は精度管理試料の判定基準値をもとに分析結果における異常の有無を判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記標準試料,精度管理試料又は検体を分注する分注装置の動作異常の有無と、前記標準試料又は前記精度管理試料の測定値の異常の有無との少なくとも一方をもとに前記分析結果における異常の有無を判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項6】
検体を試薬と反応させることによって前記検体の分析を行う自動分析装置の精度管理方法であって、
標準試料又は精度管理試料を分析した際、分析結果における異常の有無を判定する判定工程と、
前記分析結果が異常であると判定した場合に、前記精度管理試料又は検体の分析作業を停止させる制御工程と、
を含むことを特徴とする自動分析装置の精度管理方法。
【請求項7】
分析結果の異常を告知する告知工程を備えていることを特徴とする請求項6に記載の自動分析装置の精度管理方法。
【請求項8】
前記試薬のロット番号が変更された場合、ロット番号が変更された当該試薬による前記検体の分析に先行して、当該試薬によって前記標準試料と精度管理試料を分析させることを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置の精度管理方法。
【請求項9】
前記判定工程は、標準試料又は精度管理試料のロット番号ごとの測定結果の平均値、或いは事前に設定した標準試料又は精度管理試料の判定基準値をもとに分析結果における異常の有無を判定することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の自動分析装置の精度管理方法。
【請求項10】
前記判定工程は、前記標準試料,精度管理試料又は検体を分注する分注装置の動作異常の有無と、前記標準試料又は前記精度管理試料の測定値の異常の有無との少なくとも一方をもとに前記分析結果における異常の有無を判定することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一つに記載の自動分析装置の精度管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−133870(P2010−133870A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311453(P2008−311453)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】