説明

自動分析装置及び試薬容器

【課題】手作業による試薬容器の試薬格納部からの取り出し作業をなくしてオペレータの負担を軽減することが可能な自動分析装置と、この自動分析装置で使用するのに適した試薬容器を提供すること。
【解決手段】検体を試薬容器13から分注した試薬と反応させ、反応液の特性を測定することにより検体を分析する自動分析装置1と試薬容器13。自動分析装置は、試薬容器を把持する把持装置と、把持装置を所定方向へ移動自在に支持する昇降部材26とを有する把持搬送部Aと、容器支持台42と、試薬格納庫12近傍と廃棄位置との間で容器支持台の移送を案内するガイド41とを有する移送部Bと、把持搬送部及び移送部の作動を制御する搬送制御部15とを備えた搬送装置20が設けられ、搬送装置は、把持搬送部Aによって試薬格納庫12から試薬容器を把持して試薬格納庫近傍へ移送した容器支持台へ搬送し、容器支持台を移送部Bによって廃棄位置へ移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置及び試薬容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、血液や尿等の検体を試薬と反応させ、反応液の光学的特性を測定することにより前記検体を分析しており、試薬は試薬容器に収容して試薬保冷庫に格納されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−201771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の自動分析装置は、試薬容器の試薬が消耗したり、使用期限が経過したりした場合、オペレータが新たな試薬容器のロット番号,使用期限,薬品名等を確認した後、手作業で試薬容器を試薬保冷庫等の試薬格納部から取り出して廃棄し、新たな試薬容器を試薬格納部に格納している。このため、オペレータは、分析作業に加えて試薬容器の取り出しと格納という面倒な作業をしなければならなった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、手作業による試薬容器の試薬格納部からの取り出し作業をなくしてオペレータの負担を軽減することが可能な自動分析装置と、この自動分析装置で使用するのに適した試薬容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る自動分析装置は、検体を試薬容器から分注した試薬と反応させ、反応液の特性を測定することにより前記検体を分析する自動分析装置であって、前記試薬容器を把持する把持装置と、前記把持装置を所定方向へ移動自在に支持する上下動自在な昇降部材とを有する把持搬送部と、複数の試薬容器を支持する容器支持部材と、試薬格納庫近傍と廃棄位置との間で前記容器支持部材の移送を案内するガイドとを有する移送部と、前記把持搬送部及び前記移送部の作動を制御する搬送制御部と、を備えた搬送装置が設けられ、前記搬送装置は、前記把持搬送部によって前記試薬格納庫から前記試薬容器を把持して前記試薬格納庫近傍へ移送した前記容器支持部材へ搬送し、前記試薬容器が搬送された容器支持部材を前記移送部によって前記廃棄位置へ移送することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る自動分析装置は、上記の発明において、前記把持装置は、基準位置に対して同じ位置に設けられた試薬の分注口を把持して内容量が異なる前記複数の試薬容器を個々に把持することを特徴とする。
【0008】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項3に係る試薬容器は、自動分析装置で使用する内容量が個々に異なる試薬容器であって、試薬の分注口が基準位置に対して同じ位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動分析装置は、搬送装置が、試薬容器を試薬格納庫から取り出して廃棄位置へ移送し、本発明の試薬容器は、搬送装置が把持する試薬の分注口が基準位置に対して同じ位置に設けられているので、試薬容器の試薬格納庫からの取り出し作業を搬送装置によって行うことができ、オペレータの負担を軽減することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の自動分析装置及び試薬容器にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、図1の自動分析装置で使用する試薬保冷庫及び搬送装置を示す斜視図である。図3は、本発明の試薬容器の例を示す斜視図である。
【0011】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、測光装置8、洗浄装置9、攪拌装置10、試薬分注機構11及び試薬保冷庫12が設けられ、試薬保冷庫12に隣接して配置される搬送装置20を備えている。
【0012】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0013】
検体分注機構5は、反応ホイール6に保持された複数の反応容器7に検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応容器7に分注する。
【0014】
反応ホイール6は、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って複数の凹部6aが等間隔で設けられている。反応ホイール6は、各凹部6aの半径方向両側に測定光が通過する開口が形成されている。反応ホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に凹部6aの1個分回転する。
【0015】
反応容器7は、測光装置8の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂によって四角筒形状に成形された容量が数nL〜数十μLの微量なキュベットである。
【0016】
測光装置8は、図1に示すように、反応ホイール6の外周に配置され、反応容器7に保持された液体を分析する分析光(340〜800nm)を出射する光源と、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有している。測光装置8は、前記光源と受光器が反応ホイール6の凹部6aを挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。
【0017】
洗浄装置9は、図1に示すように、反応ホイール6の外周に配置され、反応容器7から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置9は、測光終了後の反応容器7から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置9は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器7の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0018】
攪拌装置10は、図1に示すように、反応ホイール6の外周に配置され、例えば、攪拌へらを試薬と検体の混合液中に浸漬して攪拌させ、或いは音波(表面弾性波)によって反応容器7に分注された試薬と検体の混合液を非接触で攪拌させる。
【0019】
試薬分注機構11は、反応ホイール6に保持された複数の反応容器7に試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬保冷庫12に格納された所定の試薬容器13から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0020】
試薬保冷庫12は、検体テーブル3及び反応ホイール6とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転される試薬格納庫であり、導入される冷気によって試薬容器13に収容した試薬を、劣化や変性を抑制するために所定温度に保冷する。試薬保冷庫12は、着脱自在な仕切り板によって扇形に区画された収納部12aが周方向に沿って複数形成され、各収納部12aに内容量の異なる複数の試薬容器13が収納される。試薬保冷庫12は、図2に示すように、通常は上部に蓋12bが被着され、蓋12bにはアクチュエータによって蓋面方向に沿って矢印方向にスライドさせて開口12cを開閉するシャッタ12dが取り付けられている。シャッタ12dは、検体を分析する際の他、試薬容器13を交換する際に開放される。複数の試薬容器13は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬の種類,ロット及び有効期限や試薬保冷庫12内のセットポジション等の情報を記録した情報記録媒体が設けられている。
【0021】
ここで、複数の試薬容器13は、図3に示すように、上部に試薬を分注する円筒状の分注口13aが設けられ、分注口13aはアルミ箔等のシール部材13bで封印されている。試薬容器13は、例えば、図3に示すように、内容量120mLの試薬容器13A、内容量60mLの試薬容器13B、内容量30mLの試薬容器13Cのように複数の種類があり、これら以外の内容量のものもある。このため、試薬保冷庫12は、大型の試薬容器13を収納するときには前記仕切り板を外し、大きな収納スペースを確保する。
【0022】
試薬容器13A〜13Cは、4面の外側壁のうち分注口13a側の端面に対応する外側壁13cを基準位置として分注口13aが同じ位置に設けられている。この場合、試薬容器13A〜13Cは、分注口13aの大きさも同じであると把持装置30による把持動作を画一的に統一することができるのでより好ましい。また、試薬容器13Aは、上部に分注口13aの他に摘み片13dが設けられている。ここで、試薬保冷庫12の外周には、図1に示すように、試薬容器13に設けた前記情報記録媒体に記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部15へ出力する読取装置14が設置されている。
【0023】
制御部15は、検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、測光装置8、洗浄装置9、攪拌装置10、試薬分注機構11、試薬保冷庫12、読取装置14、分析部16、入力部17、表示部18及び搬送装置20等と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部15は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。ここで、制御部15は、搬送装置20の作動を制御する搬送制御部としての機能も備えている。
【0024】
分析部16は、制御部15を介して測光装置8に接続され、受光器が受光した光量に基づく反応容器7内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部15に出力する。入力部17は、制御部15へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部18は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0025】
搬送装置20は、図2に示すように、把持搬送部Aと、移送部Bとを備え、移送制御部となる制御部15によって作動が制御される。
【0026】
把持搬送部Aは、図2及び図4に示すように、支持部材21、支持部材21に沿って昇降作動する昇降部材26及び試薬容器13を把持する把持装置30を備えている。
【0027】
支持部材21は、昇降部材26を水平に保持して昇降自在に支持する部材であり、図2及び図4に示すように、支持部材21にリニアガイド22が設けられている。リニアガイド22は、支持部材21に上下方向に取り付けたレール22aと、昇降部材26下面の支持部材21近傍に取り付けられ、レール22aに沿ってスライドするスライダ22bとを有している。
【0028】
また、支持部材21は、図4に示すように、本体21aの上部側部に支持台21bが取り付けられている。支持台21bは、下面にパルスモータが取り付けられ、前記パルスモータの駆動軸に取り付けたプーリ23が上面に配置されている。ここで、スライダ22bは、ねじ軸24と係合し、上部に取り付けたプーリ24aとプーリ23との間にタイミングベルト25が巻き掛けられている。ねじ軸24は、スライダ22bと共にボールねじを構成している。従って、昇降部材26は、前記モータが作動してタイミングベルト25を介して伝達されるねじ軸24の回転により、スライダ22bが上下動するのに伴って上方又は下方へ昇降する。
【0029】
昇降部材26は、図2及び図4に示すように、支持部材21近傍の下面にパルスモータ27が取り付けられ、パルスモータ27の駆動軸に取り付けたプーリ27aと他端側に設けたプーリ26aとの間にタイミングベルト28が巻き掛けられている。昇降部材26は、上面に長手方向に沿ってレール26bが設けられている。そして、昇降部材26は、レール26bにスライド自在に係合させたスライダにタイミングベルト28が連結されると共に、前記スライダに把持装置30のブラケット32の上部が連結されている。このため、把持搬送部Aは、パルスモータ27の回転がプーリ26a,27aを介してタイミングベルト28に伝達されると、前記スライダがレール26bに沿ってスライドし、把持装置30が図2に示す矢印X方向へ移動される。
【0030】
ここで、昇降部材26は、図4に示すように、位置検出センサS1,S2が上面に設けられている。位置検出センサS1,S2は、前記スライダに取り付けた検出片Cpを検出して把持装置30の矢印X方向に沿った移動ストロークを規制する。このとき、位置検出センサS1,S2は、前記スライダが位置検出センサS1の位置にあるとき、把持ブロック33c,34c(図7参照)が試薬保冷庫12に収納した試薬容器13の分注口13aの位置と一致し、前記スライダが位置検出センサS2の位置にあるとき、把持ブロック33c,34cがガイド41に沿って試薬保冷庫12近傍へ移動された容器支持台42の位置と一致するように、昇降部材26に設置する。
【0031】
把持装置30は、図5及び図6に示すように、ボックス状の収納部31がブラケット32に取り付けられ、チャック部材33,34と、カバー35を有している。チャック部材33,34は、スライダ33a,34a、支持板33b,34b、把持ブロック33c,34c(図7参照)、押圧板33d,34d及び当接板33e,34eを有しており、支持板33bには、把持する試薬容器の回転を規制する規制板33fが一体に設けられている。スライダ33a,34aは、収納部31の底面に長手方向に配置されたレ−ル36にスライド自在に係合されている。把持ブロック33c,34cは、図7に示すように、試薬容器13の分注口13aを把持する部分が凹状に成形されている。ここで、図5に示す把持装置30は、試薬容器13として小型(内容量30mL)の試薬容器13Cを把持している。
【0032】
また、把持装置30は、図6に示すように、押圧板33d,34dと収納部31内壁との間に押しばね37が配置され、当接板33e,34eのそれぞれにはカム板38a,38bが当接している。そして、収納部31の上部にはモータ38が設置され、モータ38の駆動軸にカム板38a,38bが偏心させて取り付けられている。把持装置30は、通常、モータ38への通電は停止され、押しばね37による押圧力によってスライダ33a,34aが接近する方向にチャック部材33,34が付勢されている。把持装置30は、モータ38へ通電することによりモータ38の駆動軸と共にカム板38a,38bが回転することにより、スライダ33a,34aが引き離される方向に移動する。
【0033】
移送部Bは、図2に示すように、ガイド41と容器支持台42とを有しており、容器支持台42がガイド41に案内されて廃棄位置と試薬保冷庫12近傍との間を矢印Y方向に移動する。このとき、廃棄位置とは、容器支持台42が、図2に示すガイド41の一方に停止している位置をいう。試薬保冷庫12近傍とは、図8に示すように、容器支持台42が、試薬保冷庫12の蓋12bに設けた開口12c近傍に停止している位置をいう。このとき、図8に点線で示す容器支持台42の位置が廃棄位置である。
【0034】
容器支持台42は、ガイド41にリニアガイド装置のスライダを取り付けると共に、スライダがタイミングベルトに連結されている。そして、容器支持台42は、タイミングベルトをステッピングモータで駆動することにより、スライダと共にガイド41に沿って移動される。容器支持台42は、内容量の異なる複数の試薬容器13を個別に配置する収納部42aが複数設けられている。
【0035】
ここで、把持搬送部Aと移送部Bとの間のガイド41の近傍には、支柱51が設けられ、支柱51にシールブレイク54が配置されている。シールブレイク54は、試薬保冷庫12に格納する試薬容器13のシール部材13bを開封するもので、アーム54aの先端近傍にピン54bが取り付けられている。アーム54aは、支柱51の上部に取り付けたモータ52と支柱51下部に配置したプーリとの間に掛け渡したタイミングベルト53に基部が取り付けられ、モータ52の駆動により支柱51に沿って上下方向に移動する。ピン54bは、アーム54aが下降したときに、シール部材13bを穿孔して試薬分注機構11の分注ノズルを挿通する孔を形成する。このとき、試薬容器13は、分注口13aにキャップをねじ止めして封印する構造の場合には、シールブレイク54に代えて、キャップを自動で取り外す自動取外し機構を支柱51に設ける。
【0036】
また、支柱51は、中間の一方の側面に容器支持台42に設けた各収納部42aにおける試薬容器13の有無を確認するセンサ55が設けられている。更に、支柱51は、センサ55と対向する他方の側面に読取装置56が取り付けられている。読取装置56は、読取装置14と同様に、ガイド41に沿って移動する容器支持台42の収納部42aに収容された試薬容器13に設けた情報記録媒体に記録された情報を読み取り、制御部15へ出力する。このとき、読取装置56は、容器支持台42によって搬入又は搬出される試薬容器13の情報記録媒体を読み取るが、斜め方向から読み取るように支柱51に取り付けられている。
【0037】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転する反応ホイール6によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器7に試薬分注機構11が試薬容器13から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、反応ホイール6によって周方向に沿って搬送され、検体分注機構5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。そして、検体が分注された反応容器7は、反応ホイール6によって攪拌装置10へ搬送され、分注された試薬と検体が順次攪拌されて反応する。
【0038】
このようにして検体と試薬が反応した反応液は、反応ホイール6が再び回転したときに測光装置8を通過し、光源から出射された分析光が透過する。このとき、反応容器7内の試薬と検体の反応液は、受光部で測光され、制御部15によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄装置9によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0039】
このとき、自動分析装置1は、分析開始前に試薬残量,使用期限、検体数や検査項目数等の情報を確認し、分析予定の検体数や予定検査項目数から試薬交換の要否を確認するが、検体の追加や検査項目の追加等によって分析中に試薬がなくなる場合がある。このような場合、自動分析装置1は、分析を一時的に中断すると共に、制御部15が取得している情報から交換対象の試薬容器13の位置を特定し、制御部15によって試薬保冷庫12を回転させる。このようにして、自動分析装置1は、交換対象の試薬容器13を試薬保冷庫12の開口12cの位置へ移動させると共に、搬送装置20によって容器支持台42をガイド41に沿って図8に示す試薬保冷庫12近傍へ移動させておく。そして、自動分析装置1は、制御部15による制御の下に、搬送装置20によって試薬容器13を以下のようにして交換する。
【0040】
先ず、搬送装置20は、把持搬送部Aを駆動し、把持装置30を試薬保冷庫12の開口12c上部へ移動する。次に、搬送装置20は、パルスモータによってスライダ22bを移動させ、昇降部材26を支持部材21に沿って下降させる。この間に、搬送装置20は、把持装置30を駆動し、モータ38に通電してカム板38a,38bを回転させ、図9に示すように、当接板33e,34eをそれぞれ左右方向に引き離す。これにより、把持装置30は、スライダ33a,34aがレ−ル36に沿ってそれぞれ左右方向に離れ、把持ブロック33c,34c間が分注口13aを把持可能な距離だけ引き離される。
【0041】
次いで、昇降部材26の下降が停止すると、搬送装置20は、把持装置30のモータ38を逆転させ、カム板38a,38bによる当接板33e,34eの押圧を解除する。これにより、把持装置30は、押しばね37による押圧力によってスライダ33a,34aが接近する方向にチャック部材33,34が付勢され、把持ブロック33c,34cによって試薬容器13の分注口13aが把持される。
【0042】
分注口13aの把持の際、把持装置30は、チャック部材33の規制板33fが試薬容器13の外側壁13cに当接するので、試薬容器13の回転が規制される。このため、把持装置30は、例えば、図10に示すように、大型(内容量120mL)の試薬容器13Aを把持する場合であっても、図5に示す試薬容器13Cを把持する場合と同様に、規制板33fが試薬容器13の外側壁13cに当接し、把持する試薬容器13の回転を規制する。従って、試薬容器13は、内容量が異なることによってサイズが相違していても、常に同じ姿勢で把持装置30に把持されるので、容器支持台42への載置或いは試薬保冷庫12への格納に支障を来たすことがない。また、試薬容器13は、外側壁13cを基準位置として分注口13aが同じ位置に設けられている。このため、試薬容器13の内容量が異なることによって容器相互間でサイズが相違していても、把持装置30は、常に同一のチャッキング動作によって分注口13aを把持することができるという利点を有している。
【0043】
その後、搬送装置20は、昇降部材26を支持部材21に沿って上昇させる。次に、搬送装置20は、パルスモータ27を駆動して前記スライダをレール26bに沿ってスライドさせ、把持装置30を支持部材21側へ移動させる。これにより、搬送装置20は、把持装置30が把持した試薬容器13を容器支持台42の真上へ移動する。
【0044】
次いで、搬送装置20は、昇降部材26を支持部材21に沿って下降させ、把持装置30が把持した試薬容器13を容器支持台42の収納部42aに収容する。このとき、搬送装置20は、センサ55からの出力に基づいて収納部42aにおける試薬容器13の有無を確認し、空の収納部42aに試薬容器13を収容する。その後、搬送装置20は、把持装置30を駆動し、モータ38に通電する。これにより、把持装置30は、カム板38a,38bが回転して当接板33e,34eを左右方向に引き離し、把持ブロック33c,34cによる分注口13aの把持が開放される。
【0045】
このようにして分注口13aの把持を開放した後、搬送装置20は、昇降部材26を支持部材21に沿って上昇させ、把持装置30を待機させる。次に、搬送装置20は、試薬保冷庫12近傍の容器支持台42をガイド41に沿って廃棄位置へ移動させる。これにより、オペレータが、容器支持台42上の試薬容器13を新たな試薬容器13に交換する。
【0046】
次いで、搬送装置20は、新たな試薬容器13を載せた容器支持台42をガイド41に沿って試薬保冷庫12近傍へ移動させる(図8参照)。このとき、容器支持台42上の新たな試薬容器13は、貼付した情報記録媒体が読取装置56によって読み取られ、記録された情報が制御部15へ出力される。このため、オペレータが交換した新たな試薬容器13が誤った試薬容器13の場合には、表示部18は、制御部15から入力される制御信号により試薬容器13が誤っている旨の警報を表示する。
【0047】
その後、搬送装置20は、昇降部材26を支持部材21に沿って下降させつつ、把持装置30を駆動し、モータ38に通電してカム板38a,38bを回転させて、把持ブロック33c,34cが分注口13aを把持可能な距離だけ引き離す。このとき、搬送装置20は、予めセンサ55からの出力に基づいて収納部42aにおける試薬容器13の有無を確認し、試薬容器13が存在する収納部42aの直上に把持装置30を配置しておく。
【0048】
このようにして、昇降部材26の下降が停止すると、搬送装置20は、把持装置30のモータ38を逆転してカム板38a,38bによる当接板33e,34eの押圧を解除する。これにより、把持装置30は、押しばね37による押圧力によってチャック部材33,34が付勢され、把持ブロック33c,34cによって試薬容器13の分注口13aが把持される。
【0049】
次に、搬送装置20は、昇降部材26を支持部材21に沿って上昇させた後、パルスモータ27を駆動して把持装置30を試薬保冷庫12の開口12cの上部へ移動させる。次いで、搬送装置20は、昇降部材26を支持部材21に沿って下降させた後、把持装置30の把持ブロック33c,34cによる試薬容器13の分注口13aの把持を開放する。これにより、新たな試薬容器13が試薬保冷庫12に格納される。
【0050】
このようにして新たな試薬容器13が試薬保冷庫12へ格納されて試薬容器13の交換が終了したら、搬送装置20は、昇降部材26を支持部材21に沿って上昇させ、把持装置30を待機させる。そして、自動分析装置1は、制御部15による制御の下、一時的な分析の中断を解除し、分析を再開する。
【0051】
以上のように、自動分析装置1は、試薬容器13を交換する場合、搬送装置20が試薬保冷庫12からその試薬容器13を取り出し、容器支持台42に載せて廃棄位置まで搬送する。このため、オペレータは、廃棄位置まで搬送された容器支持台42上の試薬容器13を新たな試薬容器13と交換するだけでよいので、試薬保冷庫12から交換対象の試薬容器13を取り出し、新たな試薬容器13を格納する場合に比べて負担が軽減される。また、試薬容器13は、外側壁13cを基準位置として分注口13aが同じ位置に設けられているので、内容量が異なることによって容器相互間でサイズが相違していても、常に把持装置30による同一のチャッキング動作によって分注口13aを把持することができる。このため、試薬容器13は、自動分析装置で使用するのに適している。
【0052】
また、本発明の自動分析装置1は、試薬容器13の交換に際し、試薬容器13に設けた情報記録媒体の情報を読取装置56によって読み取り、試薬容器13の適否を確認する。このため、自動分析装置1は、誤った試薬容器13を試薬保冷庫12から取り出すという人的ミスの発生を回避することができ、信頼性が向上する。
【0053】
なお、自動分析装置1は、試薬保冷庫12が1つの場合について説明したが、第一試薬用の試薬保冷庫と第二試薬用の試薬保冷庫に分けて2つ配置してあってもよい。また、本発明の自動分析装置は、自動分析装置1を1ユニットとして複数ユニット組み合わせた構成としてもよい。
【0054】
また、自動分析装置1は、分析中に試薬容器13を交換する場合について説明したが、自動分析装置1は、分析開始前に試薬残量,使用期限、検体数や検査項目数等の情報に基づいて確認した結果、使用期限の経過や試薬切れ等によって試薬容器13の交換が必要になる場合がある。このような場合には、分析開始前に上述の手順の下に試薬容器13の交換が行われる。
【0055】
ここで、交換対象の試薬容器13が空の場合には、自動分析装置1は、容器支持台42によって廃棄位置まで搬送した試薬容器13を廃棄位置近傍に設けた廃棄手段によって廃棄するように構成してもよい。更に、自動分析装置1は、把持搬送部Aの把持装置30を昇降部材26に沿った矢印X方向へ移動させ、移送部Aの容器支持台42をガイド41に沿って移動させ、また、シールブレイク54を支柱51に沿って移動させるのに、それぞれタイミングベルト28,53を使用したが、実施の形態で説明した使用目的が達成されれば、ボールねじ等からなる送りねじ等、他の公知の手段を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の自動分析装置で使用する試薬保冷庫及び搬送装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の試薬容器の例を示す斜視図である。
【図4】本発明の自動分析装置で使用する搬送装置の把持搬送部を拡大した斜視図である。
【図5】本発明の自動分析装置で使用する搬送装置の把持装置が小型の試薬容器を把持した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の自動分析装置で使用する搬送装置の把持装置からカバーをした状態を示す斜視図である。
【図7】図6に示す把持装置を下側から見た斜視図である。
【図8】搬送装置の移送部によって容器支持台を試薬保冷庫近傍へ移送した状態を示す斜視図である。
【図9】把持装置のチャック部材をそれぞれ左右方向に引き離した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の自動分析装置で使用する搬送装置の把持装置が大型の試薬容器を把持した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 反応ホイール
7 反応容器
8 測光装置
9 洗浄装置
10 攪拌装置
11 試薬分注機構
12 試薬保冷庫
13 試薬容器
13A〜13C 試薬容器
14 読取装置
15 制御部
16 分析部
17 入力部
18 表示部
20 搬送装置
21 支持部材
22 リニアガイド
23 プーリ
24 ねじ軸
25 タイミングベルト
26 昇降部材
27 パルスモータ
28 タイミングベルト
30 把持装置
31 収納部
32 ブラケット
33,34 チャック部材
35 カバー
36 レ−ル
37 押しばね
38 モータ
41 ガイド
42 容器支持台
51 支柱
52 モータ
53 タイミングベルト
54 シールブレイク
55 センサ
56 読取装置
A 把持搬送部
B 移送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を試薬容器から分注した試薬と反応させ、反応液の特性を測定することにより前記検体を分析する自動分析装置であって、
前記試薬容器を把持する把持装置と、前記把持装置を所定方向へ移動自在に支持する上下動自在な昇降部材とを有する把持搬送部と、
複数の試薬容器を支持する容器支持部材と、試薬格納庫近傍と廃棄位置との間で前記容器支持部材の移送を案内するガイドとを有する移送部と、
前記把持搬送部及び前記移送部の作動を制御する搬送制御部と、
を備えた搬送装置が設けられ、
前記搬送装置は、前記把持搬送部によって前記試薬格納庫から前記試薬容器を把持して前記試薬格納庫近傍へ移送した前記容器支持部材へ搬送し、前記試薬容器が搬送された容器支持部材を前記移送部によって前記廃棄位置へ移送することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記把持装置は、基準位置に対して同じ位置に設けられた試薬の分注口を把持して内容量が異なる前記複数の試薬容器を個々に把持することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
自動分析装置で使用する内容量が個々に異なる試薬容器であって、試薬の分注口が基準位置に対して同じ位置に設けられていることを特徴とする試薬容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−20360(P2008−20360A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193191(P2006−193191)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】