説明

自動分析装置

【課題】簡単な操作によって装置の性能チェックを行う。
【解決手段】試料分析用の試薬カートリッジと同じ外形をした性能チェック用カートリッジを用いて装置の性能チェックを行う。性能チェック用カートリッジは、装置の性能チェック用の試薬を保持するとともに、処理条件及び判定条件を二次元ドットコードの形態で保持する。自動分析装置は、性能チェック用カートリッジに記録されている処理条件に従って、性能チェック用カートリッジに封入された試薬を用いて吸光度測定を行い、測定結果を性能チェック用カートリッジに記録されている判定条件と照合して装置性能のチェックを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者から採取した検体に対して複数項目の分析を自動で行うことのできる自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者から採取された血液や尿などの検体を分析し、医師の診断のためのデータを提供する装置として自動分析装置がある。特開平5−232123号公報には、患者ID番号が付与されたラックにセットされた一患者分の複数種別のサンプルを測定し、複数項目の測定データを組み合わせて論理チェックにかけることにより、装置の異常と患者の異常とを切り分けて検出する自動分析装置が記載されている。特開2000−258430号公報には、ラックIDを有する検体ラックに、それぞれ検体IDを有する複数の検体を保持し、検体IDやラックIDを読み取って、各ラックを依頼された分析項目に対応する分析モジュールに搬送し、分析モジュールでは反応容器に検体試料と試薬を分注して測定を行う自動分析装置が記載されている。特表2002−503346号公報には、複数のチャンバー又はキュベットを包含するシステム試薬キャリアを用いた分析システムが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−232123号公報
【特許文献2】特開2000−258430号公報
【特許文献3】特表2002−503346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平5−232123号公報に記載された自動分析装置は、保冷庫に予め用意した試薬をディスペンサにより反応ディスクにセットされたサンプルに送液・混合して分析を行うため、項目に応じただけの試薬を保冷庫に用意しなければならず、多数項目の分析を行おうとすれば大型の保冷庫が必要となり、装置が大型化する。特開2000−258430号公報に記載の自動分析装置は、一人の患者から採取した複数種の検体を用いて複数項目の分析を行うものではない。特表2002−503346号公報は、複数のチャンバー又はキュベットを包含するシステム試薬キャリアを開示するが、そのシステム試薬キャリアを用いた分析方法の詳細については記載されていない。
【0005】
本発明は、簡単な操作によって多数の分析項目を信頼性高く分析することのできる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による自動分析装置は、装置の性能チェックを試料分析用の試薬カートリッジと同じ外形をした性能チェック用カートリッジを用いて行う。性能チェック用カートリッジは、装置の性能チェック用の試薬を保持するとともに、装置の性能チェックのための処理条件及び判定条件を二次元ドットコードの形態で保持している。自動分析装置は、性能チェック用カートリッジに付随して記録されている処理条件に従って、性能チェック用カートリッジに封入された試薬を用いて吸光度測定を行い、測定結果を性能チェック用カートリッジに付随して記録されている判定条件と照合して装置性能をチェックする。性能チェック用カートリッジを用いた装置性能のチェックによって性能に問題がないと判定された場合には、試料の分析を可能とし、性能が低下していて正常な分析ができないと判定された場合には、試料の分析ができないように装置を遮断する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、性能チェック専用のカートリッジを利用することで、従来の機械的チェックや電気的チェックでは判定できなかったシステム全体の性能チェックを、通常の分析動作と同様な方法で簡便に行なうことができる。また、性能チェックの判定基準となる閾値情報をカートリッジ側に記憶させたことにより、ユーザーによる情報入力が不要になる、溶液成分の変更など性能チェック専用カートリッジの仕様変更時に自動分析装置側の設定変更が不要になるなどのメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明による自動分析装置の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の自動分析装置において用いられる試薬カートリッジの例を示す斜視図である。図2は、試薬カートリッジを図1の(A)の方向から見た側面図である。
【0009】
試薬カートリッジ101は例えばポリプロピレン製であり、図示の例では1つの測光キュベットと3つの試薬キュベットを備えている。102は測光キュベットである。103は第1試薬キュベット、104は第2試薬キュベット、105は第3試薬キュベットである。本実施例の試薬カートリッジ101は第3キュベットまで備えているが、他の実施例として、第2キュベットと第3キュベットを一体化して新たな第2キュベットとした構成でもよい。測光キュベット102は分析前において空であり、自動分析装置により試料及び試薬が注入され攪拌された後、測光部で分析が行われる。
【0010】
分析に必要な試薬が一種類の場合には、第1試薬キュベット103及び第2試薬キュベットに同じ試薬が入る。また、必要な試薬が二種類の場合は、第1試薬キュベット103、第2試薬キュベット104にそれぞれの試薬が入る。必要な試薬が三種類の場合は第1試薬キュベット103、第2試薬キュベット104、第3試薬キュベット105にそれぞれの試薬が入る。
【0011】
試薬カートリッジ101は、その試薬カートリッジによる検査項目に必要な試薬がそれぞれの試薬キュベットに予め注入され、測光キュベット102は空の状態で、上面全面をシールして密閉されている。シールには、その試薬カートリッジで検査できる検査項目が印字されている。例として、総タンパク分析用試薬カートリッジのシールには「TP」、グルコース分析用試薬カートリッジのシールには「GLU」、尿酸分析用の試薬カートリッジのシールには「UA」と印字されている。さらにシールは、分析に必要な検体種別に対応して色マーキングされている。例として、試料として血清を使用する試薬カートリッジのシールは黄色、尿を使用する試薬カートリッジのシールは緑色、全血を使用する試薬カートリッジのシールは赤色、その他の検体を必要とする試薬カートリッジのシールは青色でマーキングされている。このような色分けにより、ユーザーは分析に必要な検体試料の準備が容易となる。
【0012】
試薬カートリッジ101は、自動分析装置の性能チェック用カートリッジとしても用いられる。性能チェック用カートリッジは、例えば、試薬カートリッジ101の第1試薬キュベット103に0.1N−NaOH溶液が250μl、第2試薬キュベット104に4−ニトロフェノール/0.1N−NaOH溶液が100μl、測光キュベット102は空の状態で、上面全面をシールして密閉されている。シールには「CHECK」と印字され、色マーキングは無く無色透明である。また、第2試薬キュベット104の4−ニトロフェノール/0.1N−NaOH溶液の濃度が異なる2種類の性能チェック用カートリッジが用意されていてもよく、このとき、4−ニトロフェノール/0.1N−NaOH溶液の吸光度は2.5Abs又は5.0Absである。すなわち、複数の性能チェック用カートリッジについて、4−ニトロフェノール/0.1N−NaOH溶液の濃度は少なくとも2種類としてもよい。2種類の性能チェック用カートリッジの場合、無色透明のシールにはそれぞれ「CHECK1」、「CHECK2」と印字されている。
【0013】
試薬カートリッジ後部のパネル106には、図2に例示するようなドットコード(2次元コード)を印刷したシール107が貼られている。ドットコードは、情報記録部として機能し、ドットコードシール107には、以下の情報が所定の位置にコード化されて格納されている。
(1)製造年月日及び有効期限
(2)シリアル番号
(3)試料として必要な検体種別
(4)試料の必要量と分注タイミング
(5)第一試薬の必要量と分注タイミング
(6)第二試薬の必要量と分注タイミング
(7)第三試薬の必要量と分注タイミング
(8)測光方式
(9)測光タイミング
(10)測光の主波長/副波長
(11)吸光度から濃度への変換式
(12)分析の種類(通常分析、又は、性能チェックの判別情報)
自動分析装置の性能チェック用カートリッジとして用いられる試薬カートリッジ101のドットコードシールには、上記の情報に加えて、次の情報がコード化されて格納されている。
(13)吸光度差の上限値すなわち閾値
(14)吸光度差の下限値すなわち閾値
(15)2種類以上の性能チェック用カートリッジを用いるときの吸光度差比の上限値すなわち閾値
(16)2種類以上の性能チェック用カートリッジを用いるときの吸光度差比の下限値すなわち閾値
【0014】
これらの情報は自動分析装置内部のドットコード読み取り部により読み取られ、同じく自動分析装置内部にあるRAMに格納される。これらの情報を装置側ではなくカートリッジ側に記憶させることにより、ユーザーによる情報入力が不要になる、カートリッジの仕様変更時に自動分析装置側の設定変更が不要になる、情報制御が簡易化してスループットが向上する、などのメリットがある。
【0015】
シールで上面を密封された試薬カートリッジ101は、分析に使用される前は冷蔵庫に保管されている。また、試薬カートリッジは使い捨てであり、分析終了後はユーザーにより溶液が入ったカートリッジごと自動分析装置から取り外されて廃棄される。
【0016】
以下、図3と図4を用いて本発明の自動分析装置について説明する。図3は、本発明による自動分析装置の全体構成例を示す模式図、図4は平面模式図である。
【0017】
自動分析装置は商用電源に接続され、電源スイッチ(図示せず)をONにすることで自動分析装置に電源が投入される。メイン制御部10は自動分析装置全体の動作を制御する。メイン制御部は、主に、CPU、ROM、リアルタイムクロックで構成される。また、メイン制御部10が参照する一時記憶用メモリとしてRAM33が接続されている。
【0018】
恒温槽15の内部に、試薬カートリッジ101のキャリアとなるローター16が設けられている。恒温槽15にはヒーターが取り付けられており、恒温槽制御部14により恒温槽15内部の空気の温度が37℃に保温される。ローター16はステップモーター11の制御により回転可能であり、周方向に最大40個の試薬カートリッジを搭載することができる。各試薬カートリッジは、ドットコードシール107が貼られた後部パネル106が外周側を向くようにしてローター16に設置される。
【0019】
アーム18は垂直移動制御用ステップモーター13により上下に移動し、回転制御用ステップモーター12により水平面内で回転することができる。アーム18の先端には、垂直下方に延びるプローブ19が取り付けられている。プローブ19は主に試料や洗浄液の吸引・吐出を行う。プローブ19は、試薬カートリッジ101の測光キュベット102及び各試薬キュベット103、104、105を密閉するシールを貫通できるように、先端が注射針のように鋭角になっている。プローブ19にはヒーター(図示せず)が取り付けられ、アーム制御部17により37℃に保温される。さらに、プローブ19は液面検知にも利用され、アーム制御部17がプローブ19とグランド電位間の静電容量の変化を検出することで液面を検知する。本機能は試料及び洗浄液の液量チェックに使用される。プローブ19の下降時にアーム制御部10が試料又は洗浄液の液面を検出するとメイン制御部10に検出信号を送る。20はプローブ19のホームポジションとなるハウジングである。
【0020】
21a〜21dは試料容器であり、アーム回転軸からプローブ19までの水平距離を半径とする円周40上に配置される。各試料容器21a〜21dにはメイン制御部10が識別するための位置情報が割り当てられ、試薬カートリッジが必要とする試料が入った容器の位置情報がドットコードに格納される。試料容器21a〜21dは必要な検体種別を示す試薬カートリッジのシールと同じ色にマーキングされている。一例として、21aは血清又は血漿用の試料容器であり黄色にマーキング、21bは全血用の試料容器であり赤色にマーキング、21cは尿用の試料容器であり緑色にマーキング、21dはその他の検体種別用の試料容器であり青色にマーキングされている。各試料容器21a〜21dは自動分析装置からの取外しが可能であり、試料容器が配置される位置の側には試料容器と同じ色マーキングがされ、ユーザーが試料容器の配置を間違えないようになっている。
【0021】
22a〜22dは洗浄液容器であり、アーム回転軸からプローブ19までの水平距離を半径とする円周40上に配置される。各洗浄液容器22a〜22dは自動分析装置からの取外しが可能であり、洗浄液容器が配置される位置の側には洗浄液容器と同じ色マーキングがされ、ユーザーが洗浄液容器の配置を間違えないようになっている。
【0022】
44は第1試薬の吸引部であり、各試薬カートリッジの第1試薬キュベットの中心を通る円周41と、アーム回転軸からプローブ19までの水平距離を半径とする円周40との接点にある。試薬カートリッジの第1試薬キュベットに入った第1試薬をプローブ19によって吸引する際には、試薬吸引の前にローター16を回転して対象となる試薬カートリッジの第1試薬キュベットの中心を吸引部44に合わせる。
【0023】
45は試薬カートリッジ101の測光キュベット102に対する吸引・吐出部であり、各試薬カートリッジの測光キュベット102の中心を通る円周42と、アーム回転軸からプローブ19までの水平距離を半径とする円周40との交点にある。試薬カートリッジ101の測光キュベット102に試料や試薬をプローブ19から吐出したり吸引したりする際には、その吸引・吐出の前にローター16を回転して対象となる試薬カートリッジ101の測光キュベット102の中心を吸引・吐出部45に合わせる。
【0024】
46は第2試薬及び第3試薬の吸引部であり、各試薬カートリッジ101の第2試薬キュベット104と第3試薬キュベット105の中心を通る円周43と、アーム回転軸からプローブ19までの距離を半径とする円周40との交点にある。試薬カートリッジの第2試薬キュベットに入った第2試薬をプローブ19によって吸引する際には、試薬吸引の前にローター16を回転して対象となる試薬カートリッジの第2試薬キュベット104の中心を吸引部46に合わせる。また、試薬カートリッジの第3試薬キュベットに入った第3試薬をプローブ19によって吸引する際には、試薬吸引の前にローター16を回転して対象となる試薬カートリッジの第3試薬キュベット105の中心を吸引部46に合わせる。
【0025】
恒温槽15、ローター16、アーム18、プローブ19、ハウジング20、試料容器21a〜21d、洗浄液容器22a〜22dは開閉可能なフタ(図示せず)で覆われる。フタに取り付けられた断熱材は恒温槽15の上部を覆い、恒温槽15内部の空気温度を一定に保つ効果がある。フタの近傍にはフタ開検出スイッチ及びフタロック機構(図示せず)が取り付けられている。フタが開くとフタ開検出スイッチがONとなり、検出信号をメイン制御部10へと送る。また、メイン制御部10からの制御によりフタロック機構が作動して、フタをロックすることができる。分析動作中フタは常にロックされる。
【0026】
洗浄ステーション23は、プローブ19の内側及び外側の洗浄を行う場所である。精製水による洗浄では、ポンプ部25の駆動により洗浄ステーション23の内壁から精製水が噴出してプローブの外側を洗浄し、吸引・吐出部24とポンプ部25の駆動によりプローブ19内部から精製水を吐出してプローブ内部の洗浄を行う。また洗浄液による洗浄の時は、プローブ19が洗浄液容器22a〜22dで吸引した洗浄液を洗浄ステーション内で吐出する。洗浄に使用された廃液は自動分析装置の外部へと排出される。
【0027】
吸引・吐出部24は、メイン制御部10からの制御により試料、試薬、洗浄液等の吸引及び吐出を行う。また、ポンプ部25と連動してプローブ19内部の精製水による洗浄を行う。水タンク26は、プローブ洗浄に必要な精製水を貯蔵する。水タンク26には水量低下検出スイッチ(図示せず)が取り付けられ、精製水が所定量以下の場合は検出信号をメイン制御部10へと送る。
【0028】
光源部27、光学系部28、光検出部29は分光光度計の構成要素であり、試薬カートリッジの測光キュベットに対して吸光度測定を行うために使用される。光源部27はハロゲンランプを備える。ハロゲンランプは、自動分析装置の立ち上げチェック処理以降は常に点灯している。
【0029】
光学系部28は、回転式波長選択フィルター、レンズ、スリットを備える。回転式波長選択フィルターは12波長分の干渉フィルターを円状に搭載している。メイン制御部10により回転式波長選択フィルターを回転して、光軸47上に所望の干渉フィルターを配置できる。回転式波長選択フィルターにより選択できる波長は、例えば340nm、380nm、405nm、450nm、480nm、508nm、546nm、576nm、600nm、660nm、700nm、800nmである。
【0030】
光検出部29は、フォトダイオード及び増幅器を備える。光検出部29は、ローター16下の光軸47上に配置される。フォトダイオードにより検出された光量は電圧として出力され、増幅器により増幅される。増幅されたアナログ電圧値はA/Dコンバータ30によりデジタルデータに変換され、メイン制御部10に取り込まれる。
【0031】
31はドットコード読み取り部であり、光軸48に対して垂直に配置された、試薬カートリッジのパネル106に貼付されたドットコードを光学的に読み取る。読み取ったデータはメイン制御部10に送られる。
【0032】
32は表示・操作部である。表示・操作部32は、タッチパネルLCD及びSTARTボタンとSTOPボタンを備える。タッチパネルLCDは、ユーザーに対してメッセージや分析結果を表示するとともに、ユーザーがパネル上の所定の位置を押すことで処理を選択することができる。STARTボタンは分析動作の開始を行うために使用される。STOPボタンは分析動作の途中中断を行うために使用される。
【0033】
34は記憶部であり、分析結果を、患者ID、及び分析日時と共に格納する。記憶部34は過去の分析結果を格納することができる。また、記憶部34には分析動作をプロテクトされているかどうかを示すビット情報を格納している。記憶部34に格納されたデータは自動分析装置の電源がオフの状態でも保存される。35は自動分析装置に標準インターフェース経由で接続された外部プリンタである。外部プリンタ35はオプションであり、分析結果をプリントアウトするときに使用される。
【0034】
図5は、図3及び図4に示した自動分析装置の制御系のブロック図である。図中のメインCPU201はメイン制御部10に備えられる。また、反応槽ヒーター用CPU202は恒温槽制御部14に備えられ、プローブヒータ用CPU203はアーム制御部17に備えられる。
【0035】
以下、図6を参照して本発明の自動分析装置の動作フローを説明する。
電源スイッチをオンにすると、立ち上げ時チェック処理がスタートする。立ち上げ時チェック処理では、まずメイン制御部10はフタ開検出スイッチによりフタが閉まっていることをチェックする(S11)。フタが閉まっていることを確認した後、さらにメイン制御部10はフタロック機構を制御してフタにロックをかける。次に、メイン制御部10は各ステップモーターを正常に制御できるかどうかをチェックする(S12)。
【0036】
続いて、精製水によるプローブ19の洗浄を行うが、その前に水量低下検出スイッチにより水タンク26内の精製水量が所定量以上であることをチェックする。プローブ19の洗浄においては、メイン制御部10がプローブ19の先端を洗浄ステーション23の内部まで移動した後、ポンプ部25を制御して洗浄ステーション23の外壁から水を噴出しプローブ19の外側を洗浄する。同時に、ポンプ部25及び吸引・吐出部24を制御してプローブ19の内部から水を吐出させることで、プローブ19内部の洗浄を行う(S13)。
【0037】
次に、3種類の洗浄液によるプローブ19洗浄を行うが、その前に各洗浄液の液量チェックを行う。つまり、プローブ19が洗浄液の液面を検出する高さから液量を算出して所定量以上あることを確認する。その後、プローブ19内部に所定量の洗浄液を吸引して、プローブ内部及び外部の洗浄を行う。その後、プローブ19を洗浄ステーション23に移動し、洗浄液を吐出する。その後、洗浄ステーション23にて精製水によりプローブ19内部・外部の水洗いを行う。以上を各洗浄液に対して行う(S14)。最後に、ハロゲンランプを点灯し、340nmの干渉フィルターを光軸上にセットしたときの光量が所定値以上であることを光検出部29によりチェックする(S15)。
【0038】
以上で、立ち上げ時チェック処理は終了であり、自動分析装置としての分析準備は終了となる。続いて、ユーザーによる分析準備について説明する。
【0039】
最初に、ユーザーは冷蔵庫から分析項目に対応する試薬カートリッジ101を取り出し、自動分析装置のローター16にセットする(S21)。ローター16上のどの位置に試薬カートリッジ101をセットするかは任意である。次に、ローター16に搭載した全試薬カートリッジのシールの色から患者の分析に必要な試料(血清、血漿、全血、尿など)を判断し、試料を試料容器に注入した後(S22)、試料容器を自動分析装置にセットする(S23)。最後に、ユーザーが患者のIDを表示・分析部32から入力する(S24)。
【0040】
以上で、ユーザーによる分析準備は終了となる。ここで、表示・操作部のSTARTボタンを押すと分析を開始する。以下、分析シーケンスについて説明する。
【0041】
まず、メイン制御部10は記憶部34内の分析動作プロテクトに関するビット情報を参照し、ビットがセットされていないことを確認する。ビットがセットされている場合には、表示・操作部32に分析動作がプロテクトされている旨、及びサービスセンターへの連絡を依頼する旨のメッセージを表示し、分析動作を終了させる。続いて、メイン制御部10は、ステップモーター11の制御によりローター16を回転し、光軸48上に各試薬カートリッジを順番に配置して、ドットコード読み取り部31により試薬カートリッジのドットコードを読み取る(S16)。読み取られたドットコード内の情報はRAM33に格納される。RAM33に格納されたドットコード情報のうち、上記「(2)シリアル番号」が記憶部34に格納されている過去に分析した試薬カートリッジのシリアル番号と一致したら、それは分析済みの試薬カートリッジであるので、カートリッジの取り出しを要求するメッセージを表示・操作部32に表示して分析実行を終了する。また、未分析の試薬カートリッジであっても、RAM33に格納された上記「(1)製造年月日及び有効期限」の情報から試薬カートリッジの有効期限が切れている判定した場合は、同様にエラーメッセージを表示・操作部32に表示して分析実行を終了する。
【0042】
試薬カートリッジ101のスキャンを終了すると、1回の分析動作に必要な試料を特定できるので、続いて試料量のチェックを行う。プローブ19を分析で採取する試料容器に移動して試料の液面を検出した高さから試料量を算出する(S17)。その後、プローブ19を洗浄ステーション23へ移動し精製水で洗浄する。分析実行においては、各試薬カートリッジに対して吸光度測定を行い(S18)、濃度に換算した結果を表示・操作部32に出力する(S19)。なお、ステップ16のカートリッジスキャンによって、ローター16にセットされた試薬カートリッジの中に「(12)分析の種類」が性能チェックになっている試薬カートリッジ、すなわち性能チェック用カートリッジが含まれている場合には、メイン制御部10は、他の試薬カートリッジを用いた分析に先行して、性能チェック用カートリッジを用いた分析を実行する。
【0043】
図7に、一例としてグルコース(GLU)分析用の試薬カートリッジに対する吸光度測定のフローを示す。また、図8に吸光度の時間変化、試薬/試料の分注タイミング及び測光タイミングの例を示す。
【0044】
分析前の試薬カートリッジには、同一の試薬が第1試薬キュベットに250μl、第2試薬キュベットに130μl入っており、シールで密閉されている。本試薬カートリッジは試料として血清を用いるためシールは黄色にマーキングされ、さらに分析項目を示すために「GLU」と印字されている。また、試薬カートリッジに貼付されたドットコードシールには、上記「(3)試料となる検体種別」として「血清又は血漿」、「(4)試料の必要量と分注タイミング」として「5μl/最初の試薬分注から0分後」、「(5)第一試薬の必要量と分注タイミングとして「200μl/最初の試薬分注から0分後」、「(6)第二試薬の必要量と分注タイミング」として「100μl/最初の試薬分注から7分30秒後」、「(8)測光方式」として「2ポイントエンド方式」、「(9)測光タイミング」として「最初の試薬分注から7分後/12分30秒後」、「(10)測光の主波長/副波長」として「主波長340nm/副波長450nm」、「(11)吸光度から濃度への変換式」として「濃度=200.804×(吸光度差−(−0.05145))mg/dl」、「(12)分析の種類」として「通常分析」が、すなわち分析手順や処理手順などに関する情報が格納されている。
【0045】
ドットコードシールから読み取られ、RAM33に格納されている情報に従って、メイン制御部10は装置各部を制御して、まず、第1試薬キュベット内の試薬及び試料を測光キュベットへ分注する(S31)。ここでは、試薬カートリッジの第1試薬キュベットの中心を吸引部44に合わせるようにローター16を回転する。その後、アーム18を回転させてプローブ19を吸引部44に移動し、先端がシールを貫通して第1試薬キュベットに挿入されるようにプローブ19を下降させ、第1試薬キュベットから200μlの試薬を吸引する。続いて、RAM33に格納されている試料としての検体種別情報、本例では「血清又は血漿」を参照する。検体種別と試料容器は1対1に対応しているので、メイン制御部10は血清が入った試料容器21aを特定できる。血清試料容器位置21aへプローブ19を移動した後、血清試料容器から5μlの血清を吸引する。続いて、測光キュベットの中心を吸引・吐出部45に合わせるようにローター16を回転する。その後、プローブ19を吸引・吐出部45に移動し、プローブ19を下降させる。プローブ先端がシールを貫通して測光キュベットに挿入されたら、試薬及び試料を測光キュベットに吐出する。続いて、測光キュベット内にある試薬と試料の混合液をプローブ19により吸引・吐出をすることで攪拌する。その後、洗浄ステーション23へプローブを移動し、プローブ19の内部・外部を精製水で洗浄する。
【0046】
RAM33の参照から、試薬+試料吐出までに至る各ハードウェアの制御シーケンス例を図9に示す。最初、メイン制御部10はRAM33を参照して検体種別情報を読み取る。検体種別情報から、メイン制御部10は試料容器の位置を特定する。本例の場合、試料容器21aの位置を特定する。次に、プローブ19によって試料容器21aから試料を吸引する動作に移る。そのために、メイン制御部10は、垂直移動用ステップモーター13を制御してアーム18を上昇させる。次に、回転制御用ステップモーター12を制御してアーム18を所定角度回転させ、プローブ19を試料容器21aの上方に位置決めする。その後、垂直移動用ステップモーター13を制御してアーム18を下降させ、プローブ19の先端が試料容器21a中の試料中に充分な深さ入ったらアーム18の下降運動を止める。このとき、アーム制御部17はプローブ19とグランド電位間の静電容量の変化を検出して液面をモニタしている。次に、メイン制御部10は吸引・吐出部24を制御し、プローブ19によって試料容器21a中の試料を決められた量だけ吸引する。
【0047】
次に、メイン制御部10は、ステップモーター11を制御してローター16を回転させ、分析に使用する試薬カートリッジ101の測光キュベット102中心を吸引・吐出部45に位置決めする。なお、このローター16の回転移動は、プローブ19によって試料容器21aから試料を吸引する動作と同時並列的に実行してもよい。
【0048】
一方で、メイン制御部10は、垂直移動用ステップモーター13を制御してアーム18を上昇させ、試料の吸引を完了したプローブ19を試料容器21aから引き抜き、回転制御用ステップモーター12を制御してアーム18を回転させ、プローブ19を吸引・吐出部45の上方に位置決めする。その後、メイン制御部10は、垂直移動用ステップモーター13を制御してアーム18を試薬カートリッジ101の測光キュベット102に向けて下降させ、シールを破ってプローブ19の先端を測光キュベット102内に挿入する。プローブ19の先端が測光キュベット102の内部に入ったらアーム18の下降を止め、吸引・吐出部24を制御してプローブ19の先端から測光キュベット102内に吸引した試薬及び試料を吐出する。
【0049】
最初の試薬分注から7分後に、メイン制御部10は装置各部を制御して、試薬が入った測光キュベットに対して吸光度測定を行う(S32)。ここでは、試薬カートリッジの測光キュベットの中心を光軸47に合わせるようにローター16を回転する。その後、光源部27、光学系部28、光検出部29で構成される分光光度計により、主波長340nm/副波長450nmにて吸光度測定を行う。図8に示した例の場合、測定結果は吸光度=+0.36505Absである。
【0050】
最初の試薬分注から7分30秒後に、メイン制御部10は装置各部を制御して、第2試薬キュベット内の試薬を測光キュベットに分注する(S33)。ここでは、試薬カートリッジの第2試薬キュベットの中心を吸引部46に合わせるようにローター16を回転する。その後、プローブ19を吸引部46に移動して第2試薬キュベットから100μlの試薬を吸引する。次に、プローブ19を上昇させた後、測光キュベットの中心を吸引・吐出部45に合わせるようにローター16を回転する。その後、アーム18を回転させてプローブ19を吸引・吐出部45に移動し、試薬を測光キュベットに吐出する。続いて、測光キュベット内にある試薬と試料の混合液をプローブ19により吸引・吐出をすることで攪拌する。その後、洗浄ステーション23へプローブを移動し、プローブ19の内部・外部を精製水で洗浄する。
【0051】
最初の試薬分注から12分30秒後に、メイン制御部10は装置各部を制御して、試薬と試料の混合液が入った測光キュベットに対して吸光度測定を行う(S34)。ここでは、試薬カートリッジの測光キュベットの中心を光軸47に合わせるようにローター16を回転する。その後、光源部27、光学系部28、光検出部29で構成される分光光度計により、主波長340nm/副波長450nmにて吸光度測定を行う。本例での測定結果は図9より吸光度=+0.68875Absである。
【0052】
2回測定した吸光度の差+0.68875−(+0.36505)=+0.32370Absを、RAM33に格納されている吸光度から濃度への変換式「濃度=200.804×(吸光度差−(−0.05145))mg/dl」に代入して、グルコース濃度として「75.3mg/dl」との結果を得る(S35)。
【0053】
最初の試薬カートリッジに対する分析項目の濃度測定が終わると、次の試薬カートリッジから最後の試薬カートリッジまでローター16にセットされている全ての試薬カートリッジに対して順次、各試薬カートリッジに設定されている分析項目の濃度測定を行う。ここで、試料として使用する検体種別が同じである試薬カートリッジをまとめて測定するように測定順番を決定するのが望ましい。例えば、試料として血清を使用する試薬カートリッジが20個、尿を使用する試薬カートリッジが10個、自動分析装置に搭載されている場合は、先に20個の血清用試薬カートリッジに対して連続して濃度測定を行い、続いて10個の尿用試薬カートリッジに対して連続して濃度測定を行う。メイン制御部10は、カートリッジスキャンによって得られた各試薬カートリッジの情報を、分析順序に関するアルゴリズムに当てはめて、分析のスケジューリングを行う。
【0054】
分析結果は表示・操作部32に表示され、患者ID、日時、使用した試薬カートリッジのシリアル番号とともに記憶部34に保存される。外部プリンタ35が接続されている場合は、分析結果をプリントアウトして正常終了となる。記憶部34には、過去の分析データを記憶できるので、表示・操作部32から過去の分析データを選択して外部プリンタから常時プリントアウトすることができる。
【0055】
以下、図10及び図11を参照してユーザーによる性能チェック準備及び性能チェックシーケンスについて説明する。
【0056】
最初に、ユーザーは冷蔵庫から「CHECK1」、「CHECK2」と印字された性能チェック用カートリッジを各1個を取り出し、自動分析装置のローター16にセットする(S41)。ローター16上のどの位置に性能チェック用カートリッジをセットするかは任意である。ここで、表示・操作部のSTARTボタンを押すと性能チェックを開始する。以下、性能チェックシーケンスについて説明する。
【0057】
まず、メイン制御部10はステップモーター11の制御によりローター16を回転し、光軸48上に各性能チェック用カートリッジを順番に配置して、ドットコード読み取り部31により性能チェック用カートリッジのドットコードを読み取る(S42)。読み取られたドットコード内の情報はRAM33に格納される。RAM33に格納されたドットコード情報のうち、上記「(2)シリアル番号」が記憶部34に格納されている過去に性能チェックしたカートリッジのシリアル番号と一致したら、それは性能チェック済みのカートリッジであるので、カートリッジの取り出しを要求するメッセージを表示・操作部32に表示して性能チェック実行を終了する。また、未チェックのカートリッジであっても、RAM33に格納された上記「(1)製造年月日及び有効期限」の情報から性能チェック用カートリッジの有効期限が切れている判定した場合は、同様にエラーメッセージを表示・操作部32に表示して分析実行を終了する。
【0058】
性能チェック実行においては、各性能チェック用カートリッジに対して吸光度測定を行う(S43)。図11に、一例として「CHECK1」と印字された性能チェック用カートリッジに対する吸光度測定のフローを示す。また、図12に吸光度の時間変化、溶液/試料の分注タイミング及び測光タイミングの例を示す。
【0059】
性能チェック用カートリッジに貼付されたドットコードシールには、上記「(5)第一試薬の必要量と分注タイミング」として「200μl/最初の試薬分注から0分後」、「(6)第二試薬の必要量と分注タイミング」として「50μl/最初の試薬分注から7分30秒後」、(8)測光方式として「2ポイントエンド方式」、「(9)測光タイミング」として「最初の試薬分注から7分後/12分30秒後」、「(10)測光の主波長/副波長」として「主波長405nm/副波長800nm」、「(12)分析の種類」として「性能チェック1」、「(13)吸光度差の上限値」として「0.55Abs」、「(14)吸光度差の下限値」として「0.45Abs」が、すなわちチェック手順や判定基準などに関する情報が格納されている。
【0060】
ドットコードシールから読み取られ、RAM33に格納されている情報に従って、メイン制御部10は装置各部を制御して、まず、第1試薬キュベット内の溶液を測光キュベットへ分注する(S51)。ここでは、試薬カートリッジの第1試薬キュベットの中心を吸引部44に合わせるようにローター16を回転する。その後、アーム18を回転させてプローブ19を吸引部44に移動し、先端がシールを貫通して第1試薬キュベットに挿入されるようにプローブ19を下降させ、第1試薬キュベットから200μlの溶液を吸引する。続いて、測光キュベットの中心を吸引・吐出部45に合わせるようにローター16を回転する。その後、プローブ19を吸引・吐出部45に移動し、プローブ19を下降させる。プローブ先端がシールを貫通して測光キュベットに挿入されたら、溶液を測光キュベットに吐出する。その後、洗浄ステーション23へプローブを移動し、プローブ19の内部・外部を精製水で洗浄する。
【0061】
最初の溶液分注から7分後に、メイン制御部10は装置各部を制御して、溶液が入った測光キュベットに対して吸光度測定を行う(S52)。ここでは、性能チェック用カートリッジの測光キュベットの中心を光軸47に合わせるようにローター16を回転する。その後、光源部27、光学系部28、光検出部29で構成される分光光度計により、主波長340nm/副波長800nmにて吸光度測定を行う。図12に示した例の場合、測定結果は吸光度=+0.01408Absである。
【0062】
最初の溶液分注から7分30秒後に、メイン制御部10は装置各部を制御して、第2試薬キュベット内の溶液を測光キュベットに分注する(S53)。ここでは、性能チェック用カートリッジの第2試薬キュベットの中心を吸引部46に合わせるようにローター16を回転する。その後、プローブ19を吸引部46に移動して第2試薬キュベットから50μlの溶液を吸引する。次に、プローブ19を上昇させた後、測光キュベットの中心を吸引・吐出部45に合わせるようにローター16を回転する。その後、アーム18を回転させてプローブ19を吸引・吐出部45に移動し、溶液を測光キュベットに吐出する。続いて、測光キュベット内にある第1溶液と第2溶液の混合液をプローブ19により吸引・吐出をすることで攪拌する。その後、洗浄ステーション23へプローブを移動し、プローブ19の内部・外部を精製水で洗浄する。
【0063】
最初の溶液分注から12分30秒後に、メイン制御部10は装置各部を制御して、第1溶液と第2溶液の混合液が入った測光キュベットに対して吸光度測定を行う(S54)。ここでは、試薬カートリッジの測光キュベットの中心を光軸47に合わせるようにローター16を回転する。その後、光源部27、光学系部28、光検出部29で構成される分光光度計により、主波長340nm/副波長800nmにて吸光度測定を行う。本例での測定結果は図12より吸光度=+0.52357Absである。
【0064】
2回測定した吸光度の差+0.52357−(+0.01408)=+0.50949Absを計算する(S55)。
【0065】
「CHECK1」のカートリッジに対する吸光度測定が終わると、「CHECK2」のカートリッジに対して吸光度測定を行う。
【0066】
図10に戻り、2個の性能チェック用カートリッジに対する吸光度測定が終わると、2つの吸光度差測定値をそれぞれの上下限値(閾値)と比較する(S44)。
ここで、2つの吸光度差測定値が、性能チェック用カートリッジ後部のパネルから読み込まれたドットコードによって指定された上下限値から外れていた場合、メイン制御部10は記憶部34内の分析動作プロテクトに関するビットをセットし(S45)、表示・操作部32に、2つの吸光度差測定値、分析動作をプロテクトした旨、及びサービスセンターへの連絡を依頼する旨のメッセージを表示する(S46)。また、2つの吸光度差測定値が、性能チェック用カートリッジ後部のパネルから読み込まれたドットコードによって指定された上下限値(閾値)の範囲内に収まっている場合には、表示・操作部32に、性能チェック結果がOKである旨のメッセージと2つの吸光度差測定値を表示する(S46)。
【0067】
性能チェック結果は、日時、使用した性能チェック用カートリッジのシリアル番号とともに記憶部34に保存される。外部プリンタ35が接続されている場合は、チェック結果をプリントアウトすることができる。記憶部34には、過去の性能チェック結果を記憶できるので、表示・操作部32から過去の性能チェック結果を選択して外部プリンタから常時プリントアウトすることができる。
【0068】
本実施例では、2つの吸光度差測定値とそれぞれの上下限値との比較のみで合否判定しているが、代わりに吸光度差測定値の比を上下限値(閾値)と比較して合否判定してもよい。濃度に対する吸光度の比例性は、ランベルト・ベールの法則に基づく定量分析において重要である。吸光度の比例性が悪くなる要因として、分光光度計における迷光などがある。吸光度の比例性は吸光度差比を計算することで評価できる。たとえば、本実施例で「CHECK2」カートリッジの吸光度差測定値が+1.03243Absのとき吸光度差の比は2.026となり、吸光度差比の上下限値と比較して合否判定を行なうことも可能である。このときの上下限値(閾値)はドットコードに格納される。
【0069】
また、性能チェック用カートリッジの種類は1種類でも3種類以上でもよい。3種類以上のときは吸光度差の比も複数種類得られるので、それぞれに対して上下限値を設定して合否判定を行なうことができる。
【0070】
また、本実施例では通常分析と性能チェックを別々に実施したが、通常分析と自動分析装置の性能チェックを同時に行なうことも可能である。一例として、性能チェック専用カートリッジをローターに2個搭載(ローター上の場所は任意)した場合、通常分析用の試薬カートリッジをローターに最大38個搭載することができ、性能チェックに続けて通常分析を処理することも容易に実現できる。この場合には、前述のように、分析前のカートリッジスキャンによって、ローター16にセットされた試薬カートリッジの中に性能チェック用カートリッジが含まれていることが分かるので、メイン制御部10は最初に分析すべきカートリッジとして性能チェック用カートリッジを指定し、他の試薬カートリッジを用いた分析に先行して、性能チェック用カートリッジを用いた分析を実行する。性能チェック結果は、通常分析結果と並列して表示される。性能チェック結果がNGの場合は、表示・操作部32にその旨のメッセージを表示して通常分析を中止する。本例により、性能チェックのみを行なう時間を省略することができる。
【0071】
本実施例のように、性能チェック専用のカートリッジを利用することで、従来の機械的チェックや電気的チェックでは判定できなかったシステム全体の性能チェックを、通常の分析動作と同様な方法で簡便に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】試薬カートリッジの例を示す斜視図。
【図2】試薬カートリッジの側面図。
【図3】本発明による自動分析装置の全体構成例を示す模式図。
【図4】本発明による自動分析装置の平面模式図。
【図5】自動分析装置の制御系のブロック図。
【図6】本発明の自動分析装置の動作フロー図。
【図7】吸光度測定の一例のフロー図。
【図8】通常分析における吸光度の時間変化、試薬/試料の分注タイミング及び測光タイミングの例を示す図。
【図9】各ハードウェアの制御シーケンス例を示す図。
【図10】本発明の性能チェックのフロー図。
【図11】吸光度測定の一例のフロー図。
【図12】性能チェックにおける吸光度の時間変化、試薬/試料の分注タイミング及び測光タイミングの例を示す図。
【符号の説明】
【0073】
10…メイン制御部、11…ステップモーター、12…回転制御用ステップモーター、13…垂直移動制御用ステップモーター、14…恒温槽制御部、15…恒温槽、16…ローター、17…アーム制御部、18…アーム、19…プローブ、20…ホームポジション、21a〜21d…試料容器、22a〜22d…洗浄液容器、23…洗浄ステーション、24…吸引・吐出部、25…ポンプ部、26…水タンク、27…光源部、28…光学系部、29…光検出部、31…ドットコード読み取り部、32…表示・操作部、44…第1試薬の吸引部、45…測光キュベットに対する吸引・吐出部、46…第2試薬及び第3試薬の吸引部、101…試薬カートリッジ、102…測光キュベット、103…第1試薬キュベット、104…第2試薬キュベット、105…第3試薬キュベット、106…パネル、107…ドットコードシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1試薬が封入された第1試薬キュベット、第2試薬が封入された第2試薬キュベット、測光キュベット、及び分析条件と吸光度に関する判定条件とを含む処理情報を記録した情報記録部を有する性能チェック用カートリッジを保持するカートリッジ保持部と、
前記第1試薬と前記第2試薬とを前記測光キュベットへ分注するプローブと、
光源、波長選択部、及び光検出器を有し、前記性能チェック用カートリッジの測光キュベットに対して吸光度測定を行う光学測定部と、
前記性能チェック用カートリッジの前記情報記録部に記録された前記処理情報を取込む情報取込み部と、
前記情報取込み部で取込まれた前記処理情報に応じて、前記プローブ及び前記光学測定部を制御する制御部と、
前記光学測定部の出力に基づいて前記性能チェック用カートリッジの前記測光キュベット内の溶液の吸光度を算出する計算部と、
前記算出された吸光度を前記情報取込み部で取込まれた前記判定条件と照合して許容範囲内にあるかどうかを判定する判定部と
を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、前記判定部は、前記第2試薬キュベットに封入された第2試薬の濃度が異なる複数の性能チェック用カートリッジから得られる吸光度を前記判定条件と照合することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、2種類の前記第2試薬の濃度に応じた吸光度比を前記判定条件と照合することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、表示部を有し、前記判定部は算出された吸光度が許容範囲から外れているときに前記表示部に警告を表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
測光キュベットと試薬が封入された試薬キュベットと情報記録部とを有する試薬カートリッジを複数保持して回転可能なローターと、
前記ローターを回転駆動するローター駆動部と、
前記試薬カートリッジの情報記録部から情報を読み取る情報読み取り部と、
液体を吸引し吐出することのできる1本のプローブと、
前記プローブを駆動するプローブ駆動部と、
光源と波長選択部と光検出器を備え、前記試薬カートリッジの測光キュベットに対して吸光度測定を行う光学測定部と、
前記情報読み取り部によって読み取った情報を記憶する記憶部と、
装置各部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記情報読み取り部によって読み取った情報に基づいて前記ローターに保持された試薬カートリッジ中に装置の性能チェック用の試薬カートリッジがあることを検知したとき、当該性能チェック用の試薬カートリッジの情報記録部から読み取った処理情報に従って前記ローター駆動部、前記プローブ駆動部及び前記光学測光部を制御して吸光度測定を行い、得られた吸光度を当該性能チェック用の試薬カートリッジの情報記録部から読み取った判定条件と照合して許容範囲内にあるかどうかを判定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5記載の自動分析装置において、前記制御部は、前記性能チェック用の試薬カートリッジによる分析が最初に実行されるように装置各部を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項5記載の自動分析装置において、前記制御部は、前記試薬キュベットに封入された試薬の濃度が異なる複数の性能チェック用カートリッジから得られる吸光度を前記判定条件と照合することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項7記載の自動分析装置において、2種類の前記試薬の濃度に応じた吸光度比を前記判定条件と照合することを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項5記載の自動分析装置において、表示部を有し、前記制御部は算出された吸光度が許容範囲から外れているときに前記表示部に警告を表示することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−256084(P2007−256084A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81035(P2006−81035)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】