説明

自動分析装置

【課題】検液の実際の温度を測定可能とする自動分析装置を提供すること。
【解決手段】試薬および検体を分注したキュベットCを収容したキュベットホイールを人体の体温と同一温度の環境下で回転移動して、試薬および検体からなる検液の吸光度を逐次測光することにより、検体を分析する自動分析装置において、キュベットCに分注された試薬および検体からなる検液の温度を逐次測定する非接触温度センサ315をキュベットCの回転軌跡の上方に備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分析、免疫検査等の分析を自動で行う自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学分析等の分析を自動で行う自動分析装置が広く知られている。自動分析装置は、検体供給部、分析部、データ処理部を有している。検体供給部は、採取管を搭載したラックを逐次供給するものである。分析部は、反応槽および試薬保冷庫を有している。反応槽は、内部にキュベットホイールと測定光学系を備え、試薬保冷庫から分注された試薬と、検体供給部から分注された検体とをキュベットホイールに収容された反応容器で反応させ、測定光学系を用いて試薬と検体とからなる検液を測定する。そして、測定値からデータ処理部が分析結果を取得する(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、反応槽は、円板状の蓋で覆ってあり、内部の温度を人体の体温と同一の温度(摂氏37度)を維持する恒温槽を構成している。そして、反応容器に収容した検液(試薬および検体の混合液)が、反応槽内部の温度と同一であることを前提に分析を行い、その温度を検液の温度として表示していた。このため、定期的に反応容器に温度計を挿入することにより検液の温度を測定し、表示温度の信頼性を確保していた。
【0004】
【特許文献1】特許第3152711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、試薬保冷庫は、円板状の蓋により覆ってあり、試薬が変質しないように保冷してある。したがって、反応容器が反応槽(恒温槽)に収容してあるからといって、検液の温度が反応槽の温度と同一であるとは限らない。たとえば、試薬および検体を分注した直後の検液の温度は、反応槽の温度よりも低いことが容易に想定される。このため、表示した検液の温度と実際の検液の温度とは相違し、表示した検液の温度の信頼性は不十分であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、検液の実際の温度を測定可能とする自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、反応容器に試薬と検体とを分注し、所定の温度環境下で試薬と検体とからなる検液を測定することにより検体を分析する自動分析装置において、反応容器に分注された試薬と検体とからなる検液の温度を非接触で測定する非接触温度測定手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記発明において、前記非接触温度測定手段を前記反応容器の開口上方に配設したことを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記発明において、前記非接触温度測定手段を反応容器の側方に配設したことを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記発明において、前記非接触温度測定手段が測定した検液の温度を表示する表示手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明は、試薬および検体を分注した反応容器を収容したホイールを所定の温度環境下で回転移動して、試薬および検体からなる検液を逐次測定することにより、検体を分析する自動分析装置において、反応容器に分注された試薬および検体からなる検液の温度を非接触で逐次測定する非接触温度測定手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記発明において、前記非接触温度測定手段を前記反応容器の回転軌跡の上方に配設したことを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記発明において、前記非接触温度測定手段を前記反応容器の回転軌跡の側方に配設したことを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記発明において、予め定めた検液の温度変化と、非接触温度測定手段が逐次測定した検液の温度変化とを比較して、検液の液量を推定する液量推定手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記発明において、前記非接触温度測定手段が測定した検液の温度を表示する表示手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる自動分析装置は、反応容器に分注された試薬と検体とからなる検液の温度を非接触で測定する非接触温度測定手段を備えたので、検液の実際の温度が測定可能となる。
【0017】
また、非接触温度測定手段が測定した検液の温度を表示する表示手段を備えたので、自動分析装置のオペレータは、検液の実際の温度を確認できる。
【0018】
さらに、検液の液量を推定する液量推定手段を備えたので、反応容器に分注してある検液の液量を推定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態にかかる自動分析装置を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
本発明にかかる自動分析装置は、生化学分析、免疫検査等の分析を自動で行う自動分析装置に適用可能であるが、ここでは、臨床検査等に用いられる生化学分析装置を例に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
まず、図1〜図4を参照し、実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を説明する。なお、図1は本発明の実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示す正面図、図2は検体供給部および分析部の構成を示す平面図、図3は検体供給部および分析部の構成を示す概念斜視図、図4はキュベットと非接触温度センサとの位置関係を示す概念図である。図5は本発明の実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
自動分析装置1は、図1に示すように、検体供給部2、分析部3、データ処理部4を有している。検体供給部2は、採取管21(たとえば、採血管)を搭載したラック20を分析部3に逐次供給可能である。本実施の形態にかかるラック20は、10本の採取管21が搭載可能であり、150検体分をセット可能である。採取管21には、採取した検体(たとえば血液)が収容してあり、その側面には、検体を識別する識別コードラベル(図示せず)が貼付してある。この識別コードラベルは、検体に関する情報が表示してある。
【0023】
図2に示すように、検体供給部2は、ラック供給コンベア22、ラック搬送コンベア23、ラック回収コンベア24を備えている。ラック供給コンベア22は、搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメント22aを複数備えたコンベアであり、アタッチメント22aの相互間にラック20を搭載可能である。したがって、ラック20は、ラック供給コンベア22上で整列し、アタッチメント22aに支承されて倒伏することがない。
【0024】
ラック搬送コンベア23は、検体供給位置にラック20を搬送するものであり、コンベアにより構成してある。ラック搬送コンベア23は、ラック20を間欠的に搬送可能であり、ラック20上の採取管21を検体供給位置に逐次移送可能である。また、ラック搬送コンベア23の搬送方向手前側には、識別コードリーダ25が配設してあり、検体供給位置に搬送する採取管21に収容してある検体の情報を取得可能である。
【0025】
ラック回収コンベア24は、ラック供給コンベア22と同様に、搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメント24aを複数備えたコンベアであり、ラック搬送コンベア23から搬送されたラック20をアタッチメント24aの相互間に収容することにより、ラック20を回収可能である。回収されたラック20は、ラック回収コンベア24上で整列し、アタッチメント24aに支承されて倒伏することがない。
【0026】
分析部3は、反応槽31、第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33を備えている。反応槽31は、分析部3の略中央部に配設してある。反応槽31は、内部に加温装置(図示せず)と温度センサ(図示せず)とを備えるとともに、円板状の蓋312により覆ってあり、内部の温度を人体の体温と同一の温度(摂氏37度)で維持する恒温槽を構成している。また、反応槽31は、図3に示すように、内部にキュベットホイール313および測定光学系314を備え、検液(検体と試薬の混合液)の吸光度から分析結果を取得可能である。
【0027】
キュベットホイール313は、リング状に成形された環状の部材であり、間欠して回転可能である。キュベットホイール313の径外方向略中央には、収容凹部313aが周方向に等間隔(以下、この間隔を1ピッチという)で設けてある。また、キュベットホイール313の内側側面と外側側面とには、収容凹部313aに挿通し、キュベットホイール313の外側から内側に光束を案内する測光窓313bが設けてある。収容凹部313aには、キュベットと称される反応容器(以下、「キュベットC」という)が収容してある。キュベットCは、角筒形状の透明容器であり、上方部が開口している。したがって、光束は、キュベットホイール313の外側からキュベットCを通過してキュベットホイール313の内側に案内される。
【0028】
キュベットホイール313の外側となる位置には、キュベットホイール313の径内方向に光を照射する光源314aが設けてあり、光源314aと分析対象となるキュベットを結ぶ直線上には測光センサ314bが設けてある。光源314aは、試薬と検体とが反応したキュベットC内の検液を分析するための照射光(340〜800nm)を出射するものである。測光センサ314bは、キュベットC内の検液を透過し、測光窓313bを通過した平行光を測光するものである。これら光源314aおよび測光センサ314bは、上述した測定光学系314を構成する。
【0029】
測定光学系314は、光源314a、測光センサ314bのほか、キュベットホイールの外側となる位置にコリメーションレンズ314cを、キュベットホイールの内側となる位置にフィルタ(図示せず)を備えている。コリメーションレンズ314cは、光源314aが出射した光を平行光に収束させるものである。フィルタは、検液に特異的に吸収される波長の光を選択する光学フィルタであり、測定項目毎に予め定めたものが使用される。
【0030】
図4に示すように、キュベットCの回転軌跡の上方、すなわち、キュベットCの開口上方には、検液の温度を逐次測定する非接触温度センサ315を備えている。非接触温度センサ315は、たとえば、赤外線ビームを利用した赤外線センサであって、高速で温度測定が可能である。したがって、キュベットCが非接触温度センサ315の下方を通過するごとに検液の温度を測定可能であり、非接触温度センサ315の下方を通過する全てのキュベットCに収容された検液の温度を測定可能である。
【0031】
上述したキュベットホイール313は、4.5秒かけて反時計方向に(1周−1ピッチ)/4回転し(以下「1周期」という)、キュベットホイール313が18秒かけて4周期すると(1周−1ピッチ)回転する。この結果、キュベットCは、4周期で時計方向に1ピッチ移動することになる。
【0032】
ここで、キュベットホイール313が検体供給位置に近接する位置が第一検体分注位置となり、当該第一検体分注位置と略対向する位置が第一試薬分注位置となる。また、第一検体分注位置から時計方向に第一検体分注位置と第一試薬分注位置との間を略二分する位置が第二試薬分注位置となり、第一検体分注位置から反時計方向に第一検体分注位置と第一試薬分注位置との間を略二分する位置が第二検体分注位置となる。さらに、第二試薬分注位置の反時計方向近傍位置が第一攪拌位置となり、第二検体分注位置の時計方向近傍位置が第二攪拌位置となる。またさらに、第二検体分注位置の反時計方向近傍位置が洗浄・乾燥位置となる。
【0033】
そして、反応槽31を覆う蓋312には、これら第一検体分注位置、第二検体分注位置、第一試薬分注位置、第二試薬分注位置、第一攪拌位置、第二攪拌位置、洗浄位置に対応して、図2に示すように、第一検体分注孔312a、第二検体分注孔312b、第一試薬分注孔312c、第二試薬分注孔312d、第一攪拌孔(図示せず)、第二攪拌孔(図示せず)、洗浄孔312gが設けてある。
【0034】
第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33は、反応槽31の左部に配設してある。第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33は、それぞれ、内部に冷却装置(図示せず)と温度センサ(図示せず)とを備えるとともに、円盤状の蓋322,332により覆ってあり、内部の温度を所定の温度以下とする保冷庫を構成している。第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33は、内部にターンテーブル(図示せず)を備えている。
【0035】
ターンテーブルは、間欠して回転可能であり、ターンテーブルの上面には、中央部から径外方向に延在する仕切りが複数配設してある。仕切りは、ワンタッチで着脱可能であって、ターンテーブルを任意の領域に画成可能である。
【0036】
各ターンテーブルには、図3に示すように、それぞれ複数の試薬ボトルBが開栓した状態で収容してある。各試薬ボトルBには、検査項目に対応する所定の試薬が収容してあり、その外周面には試薬を識別する識別コードラベル(図示せず)が貼付してある。識別コードラベルは、試薬に関する情報を表示するものであり、たとえば、試薬の種類、容量、製造ロット番号、有効期限等が表示してある。
【0037】
第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33には、それぞれ識別コードリーダ323,333が配設してある。識別コードリーダ323,333は、試薬ボトルBに貼付した識別コードラベルを読み取るものであり、試薬ボトルBに収容した試薬に関する情報を取得可能である。したがって、任意の試薬ボトルBを任意のタイミングで試薬供給位置に移送可能である。
【0038】
また、試薬ボトルの回転軌跡の上方、すなわち、試薬ボトルBの開口上方には、試薬の温度を逐次測定する非接触温度センサ324,334(図5参照)を備えている。非接触温度センサ324,334は、たとえば、赤外線ビームを利用した赤外線センサであって、高速で温度測定が可能である。したがって、試薬ボトルBが非接触温度センサ324,334の下方を通過するごとに試薬の温度を測定可能であり、非接触温度センサ324,334の下方を通過する全ての試薬ボトルBに収容された試薬の温度を測定可能である。
【0039】
そして、第一試薬保冷庫32および第二試薬保冷庫33を覆う蓋322,332には、図2に示すように、試薬供給位置に対応して、それぞれ第一試薬孔322a、第二試薬孔332aが設けてある。
【0040】
また、分析部3は、検体分注ユニット34、第一試薬分注ユニット35および第二試薬分注ユニット36を備えている。
検体分注ユニット34は、検体供給位置に移送された採取管21からキュベットCに所定量の検体を分注するものであり、アーム341とプローブ342とを有している。アーム341は、検体供給位置と第一検体分注位置との間、および、検体供給位置と第二検体分注位置との間を回動可能、かつ上下方向に昇降可能である。プローブ342は、検体を吸引する部分であり、アーム341の降下時に静電容量を監視することにより、採取管21に収容された検体の液面を検出可能である。また、検体供給位置と第一検体分注位置とを結ぶ軌跡上には、洗浄部343が設けてある(図2参照)。洗浄部343には、図示せぬ洗浄水タンクから洗浄水が供給され、プローブ342を洗浄可能である。
【0041】
第一試薬分注ユニット35および第二試薬分注ユニット36は、試薬供給位置に移送された試薬ボトルBからキュベットCに所定量の試薬を分注するものであり、検体分注ユニット34と同様に、それぞれ、アーム351,361とプローブ352,362とを有している。アーム351,361は、試薬供給位置と試薬分注位置との間を回動可能、かつ上下方向に昇降可能である。プローブ352,362は、試薬を吸引する部分であり、アーム351,361の降下時に静電容量を監視することにより、試薬ボトルBに収容された試薬の液面を検出可能である。また、試薬供給位置と試薬分注位置とを結ぶ軌跡上には、洗浄部353,363が設けてある(図2参照)。洗浄部353,363には、図示せぬ洗浄水タンクから洗浄水が供給され、プローブ352,362を洗浄可能である。
【0042】
さらに、分析部3は、第一攪拌ユニット37および第二攪拌ユニット38を備えている。
第一攪拌ユニット37および第二攪拌ユニット38は、第一攪拌位置と第二攪拌位置に移送されたキュベットCの混合液(検体と試薬)を攪拌して反応を促進させるものであり、それぞれ、回転アーム371,381と撹拌棒372,382とを備えている。回転アーム371,381は、回転(公転)可能、かつ上下方向に昇降可能であって、平面視略三角形状を有している。撹拌棒372,382は、回転アーム371,381の各頂部近傍に配設してある。撹拌棒372,382は、回転アーム371,381と独立して回転(自転)可能である。また、撹拌棒372,382の公転軌跡上には、洗浄部373,383が設けてある(図2参照)。洗浄部373,383は、図示せぬ洗浄水タンクから洗浄水が供給され、撹拌棒372,382を洗浄可能である。
【0043】
またさらに、分析部3は、洗浄・乾燥ユニット39を備えている。
洗浄・乾燥ユニット39は、キュベットホイール313が四周期するごと、すなわち1周−1ピッチ回転するごとに上下方向に昇降可能であって、複数のノズル391を有している。これらノズルは、キュベットから分析を終了した検液を吸引する吸引ノズル、キュベットに洗浄液を供給する洗浄ノズル、キュベットから洗浄液を吸引する吸引ノズル、キュベットに圧縮空気を供給するエアノズル等のノズルである。
【0044】
上述した検体供給部2、分析部3の各ユニットおよび構成要素は、制御部5に接続してあり、統括的に制御可能である。制御部5は、たとえば、マイクロコンピュータ等を採用可能である。制御部5は、自動分析装置1の各部の作動を制御するとともに、試薬のロットや有効期限等が設定範囲外の場合、分析作業を規制するように分析部3を制御する。
【0045】
制御部5には、データ処理部4(以下、DPR4という)が接続してある。DPR4は、制御部5が取得した各種データを処理する部分である。DPR4は、入力部41と出力部42とを備えている。入力部41は、たとえば、キーボードやマウス等であり、検体数や検査項目等の各種情報が入力可能である。出力部42は、たとえば、ディスプレイパネルやプリンタ等であり、分析結果を含む分析内容や警報等の各種情報が出力可能である。
【0046】
また、DPR4は、制御部5を介して測光センサ314bと接続してあり、測光センサ314bが測光した光量(吸光度)に基づいて、検体の成分濃度等を分析可能である。吸光度は、測光センサ314bによって予めブランク試料に関する光量を測定しておくことにより比較対照が可能である。この分析結果は、出力部42に出力可能である。
【0047】
さらに、DPR4は、制御部5を介して非接触温度センサ315,324,334と接続してあり、非接触温度センサ315,324,334が測定した検液温度、第一試薬温度、第二試薬温度を出力部42に出力可能である。したがって、入力部41からDPR4に検液温度等の表示を要求すると、検液温度等がディスプレイパネルに表示される。
【0048】
また、DPR4は、非接触温度センサ315が逐次測定した検液温度に基づいて、キュベットC内の検液の液量を推定可能である。ここで、検液の液量は、図6に示すように、予め標準液量の温度変化曲線(以下、「標準温度曲線」という)を記憶しておき、非接触温度センサ315が逐次測定した温度変化曲線(以下「測定温度曲線」という)と比較することにより求められる。たとえば、図6に示すように、測定温度曲線が標準温度曲線よりも急激な温度変化(上昇)である場合には、検液の液量が標準液量よりも少ないと推定し、測定温度曲線が標準温度曲線よりも緩やかな温度変化(上昇)である場合には、検液の液量が標準液量よりも多いと推定することにより求められる。そして、入力部41からDPR4に検液の液量の表示を要求すると、推定された検液の液量がディスプレイパネルに表示される。また、検液の液量に異常がある場合には、その旨をディスプレイパネルに表示される。
【0049】
つぎに、上述した本実施の形態にかかる自動分析装置の作用を説明する。
分析を開始すると、検体供給部2では、分析部3に検体を供給する。具体的には、ラック供給コンベア22がラック20をラック搬送コンベア23に供給し、ラック搬送コンベア23が当該ラック20を検体供給位置に搬送する。
【0050】
一方、分析部3では、試薬保冷庫32,33および検体供給部2から試薬および検体をキュベットCに分注し、これらの混合液の反応を測光することにより分析する。具体的に説明する。
【0051】
まず、第一試薬保冷庫32において、分析項目に対応する試薬が収容してある試薬ボトルBを試薬供給位置に移動する。このとき、非接触温度センサ323の下方を通過した全ての試薬ボトルBに収容した試薬の温度が測定される。そして、分析項目に対応する試薬ボトルBが試薬供給位置に移動すると、第一試薬分注ユニット35が、試薬ボトルBから第一試薬を吸引して第一試薬分注位置に位置するキュベットCに第一試薬を分注する。そして、分注を終えたプローブ352は洗浄部353で洗浄される。
【0052】
キュベットホイール313が回転し、第一試薬が分注されたキュベットCが検体分注位置に移動すると、検体分注ユニット34が検体供給位置に搬送された採取管21から検体を吸引して、検体分注位置に位置するキュベットCに検体を分注する。そして、分注を終えたプローブ342は洗浄部343で洗浄される。
【0053】
そして、キュベットホイール313が4周期回転すると、第一試薬と検体を分注したキュベットCは、上述したように、第一試薬を分注した位置から時計方向に1ピッチ移動したことになる。したがって、当該キュベットCと反時計方向に隣り合うキュベットCに第一試薬を分注可能となる。
【0054】
その後、キュベットホイール313が回転し、キュベットCが第一攪拌位置に移動すると、第一攪拌ユニット37がキュベットCに収容された第一試薬と検体の混合液を攪拌する。このとき、前回攪拌に用いた撹拌棒372が洗浄部373において洗浄される。
【0055】
そして、キュベットホイール313が回転し、攪拌された混合液を収容したキュベットCが第二試薬分注位置に移動すると、第二試薬が分注可能となる。ここで、通常の分析において第二試薬を分注することはなく、必要に応じて第二試薬を分注する。第二試薬を分注する場合には、第一試薬を分注する場合と同様に、第二試薬保冷庫33において、分析項目に対応する試薬が収容してある試薬ボトルBを試薬供給位置に移動する。このとき、非接触温度センサ333の下方を通過した全ての試薬ボトルBに収容した試薬の温度が測定される。そして、分析項目に対応する試薬ボトルBが試薬供給位置に移動すると、第二試薬分注ユニット36が、試薬ボトルBから第二試薬を吸引して第二試薬分注位置に位置するキュベットCに第二試薬を分注する。そして、分注に用いられたプローブ362は洗浄部363で洗浄される。
【0056】
さらに、キュベットホイール313が回転し、混合液に第二試薬を分注したキュベットCが第二攪拌位置に移動すると、第二攪拌ユニット38がキュベットCに収容された混合液が攪拌可能となる。ここで、第二試薬を分注してない場合には攪拌する必要はない。
【0057】
そして、試薬および検体を混合攪拌した検液を収容したキュベットCが測定光学系314を横切るごとに測光センサ314bが測光する。そして、DPR4は、測光センサ314bが測光した光量(吸光度)に基づいて、検体の成分濃度等を分析する。
【0058】
また、検液を収容したキュベットCが非接触温度センサ315の下方を通過するごとに非接触温度センサ315がキュベットCに収容した検液の温度を測定し、DPR4がキュベットCごとに検液の温度を逐次取得する。
【0059】
そして、DPR4は、取得した検液の温度に基づいて、測定温度曲線を求め、測定温度曲線と予め記憶してある標準温度曲線とを比較することにより、検液の液量を推定する。そして、DPR4は、求めた検液の温度と液量を記憶し、入力部41から検液の温度、検液の液量の表示が要求されると、検液の温度、検液の液量をディスプレイパネルに表示する。また、検液の温度、検液の液量に異常がある場合には、その旨をディスプレイパネルに表示して、オペレータに注意を促す。
【0060】
このようにして検液の測光が終了したキュベットCは、洗浄・乾燥位置において洗浄・乾燥ユニット39が内部の検液が吸引されて廃棄されるとともに、洗浄水タンクから供給された洗浄水によって内部が洗浄された後、圧縮空気により乾燥される。そして、キュベットCは、再び第一試薬分注ユニット35によって第一試薬が分注され、分析に使用される。
【0061】
上述した実施の形態1にかかる自動分析装置1によれば、検液を収容したキュベットCが非接触温度センサ315の下方を通過するごとに、非接触温度センサ315が検液の温度を測定し、キュベットCごとに検液の温度を逐次取得するので、キュベットCに収容した検液の実際の温度を測定できる。
【0062】
また、入力部41からDPR4に検液温度の表示を要求すると、検液温度がディスプレイパネルに表示されるので、自動分析装置1のオペレータは、キュベットCに収容した検液の実際の温度を確認できる。
【0063】
さらに、入力部41からDPR4に検液の液量の表示を要求すると、推定された検液の液量がディスプレイパネルに表示されるので、自動分析装置1のオペレータは、キュベットCに収容した検液の液量を確認できる。
【0064】
また、試薬を収容したボトルBが非接触温度センサ324,334の下方を通過するごとに、非接触温度センサ324,334が試薬の温度を測定し、試薬ボトルBごとに試薬の温度を逐次取得するので、ボトルBに収容した試薬の実際の温度を測定できる。
【0065】
また、入力部41からDPR4に試薬温度の表示を要求すると、試薬温度がディスプレイにパネルに表示されるので、自動分析装置1のオペレータは、試薬ボトルBに収容した試薬の実際の温度を確認できる。
【0066】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2にかかる自動分析装置は、上述した実施の形態1にかかる自動分析装置と、非接触温度センサの配設位置を除いて異なるところはない。したがって、図7に基づいて、非接触温度センサの配設位置についてのみ説明する。なお、図7は本発明の実施の形態2にかかる自動分析装置のキュベットと非接触温度センサの位置関係を示す概念図である。
【0067】
図7に示すように、キュベットCの回転軌跡の側方、すなわち、キュベットCの側方には、測光窓313bを介して検液の温度(キュベットCの表面温度)を逐次測定する非接触温度センサ615を備えている。非接触温度センサ615は、たとえば、赤外線ビームを利用した赤外線センサものであって、高速で温度測定が可能である。したがって、キュベットCが通過するごとに検液の温度を測定可能であり、非接触温度センサ615の側方を通過する全ての検液の温度を測定可能である。
【0068】
そして、検液を収容したキュベットCが非接触温度センサ615の側方を通過するごとに非接触温度センサ615が検液の温度を測定し、キュベットCごとに逐次温度情報を取得する。
【0069】
非接触温度センサ615は制御部5に接続してあり、制御部5はDPR4に接続してある。したがって、DPR4は、非接触温度センサ615が測定した検液温度を出力部42に出力可能である。したがって、入力部41から検液温度の表示を要求すると、検液温度がディスプレイに表示される。また、検液の温度に異常がある場合には、その旨がディスプレイパネルに表示される。
【0070】
また、DPR4は、非接触温度センサ615が逐次測定した検液温度に基づいて、キュベットC内の検液の液量を推定可能である。そして、入力部41からDPR4に検液の液量の表示を要求すると、推定された検液の液量がディスプレイパネルに表示される。また、検液の液量に異常がある場合には、その旨がディスプレイパネルに表示される。
【0071】
上述した実施の形態2にかかる自動分析装置1によれば、検液を収容したキュベットCが非接触温度センサ615の側方を通過するごとに、非接触温度センサ615が検液の温度を測定し、キュベットCごとに逐次検液の温度情報を取得するので、キュベットCに収容した検液の実際の温度を測定できる。
【0072】
また、入力部41からDPR4に検液温度の表示を要求すると、検液温度がディスプレイパネルに表示されるので、自動分析装置1のオペレータは、キュベットCに収容した検液の実際の温度を確認できる。
【0073】
さらに、入力部41からDPR4に検液の液量の表示を要求すると、推定された検液の液量がディスプレイパネルに表示されるので、自動分析装置1のオペレータは、キュベットCに収容した検液の液量を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示す正面図である。
【図2】検体供給部および分析部の構成を示す平面図である。
【図3】検体供給部および分析部の構成を示す概念斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置のキュベットと非接触温度センサとの位置関係を示す概念図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示すブロック図である。
【図6】予め記憶した標準温度曲線と測定温度曲線との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2にかかる自動分析装置のキュベットと非接触温度センサとの位置関係を示す概念図である。
【符号の説明】
【0075】
1 自動分析装置
2 検体供給部
3 分析部
31 反応槽
313 キュベットホイール
313b 測光窓
314 測定光学系
315 非接触温度センサ
32 第一試薬保冷庫
324 非接触温度センサ
33 第二試薬保冷庫
334 非接触温度センサ
4 データ処理部
41 入力部
42 出力部
5 制御部
615 非接触温度センサ
B 試薬ボトル
C キュベット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に試薬と検体とを分注し、所定の温度環境下で試薬と検体とからなる検液を測定することにより検体を分析する自動分析装置において、
反応容器に分注された試薬と検体とからなる検液の温度を非接触で測定する非接触温度測定手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記非接触温度測定手段を前記反応容器の開口上方に配設したことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記非接触温度測定手段を反応容器の側方に配設したことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記非接触温度測定手段が測定した検液の温度を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項5】
試薬および検体を分注した反応容器を収容したホイールを所定の温度環境下で回転移動して、試薬および検体からなる検液を逐次測定することにより、検体を分析する自動分析装置において、
反応容器に分注された試薬および検体からなる検液の温度を非接触で逐次測定する非接触温度測定手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
前記非接触温度測定手段を前記反応容器の回転軌跡の上方に配設したことを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記非接触温度測定手段を前記反応容器の回転軌跡の側方に配設したことを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項8】
予め定めた検液の温度変化と、非接触温度測定手段が逐次測定した検液の温度変化とを比較して、検液の液量を推定する液量推定手段を備えたことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記非接触温度測定手段が測定した検液の温度を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一つに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−303880(P2007−303880A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130463(P2006−130463)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】