説明

自動分析装置

【課題】
血液・尿など生体試料を測定するシステムでは、夜間・緊急などの対応を含め、装置の運転を停止することが難しい場合がある。このような場合に、障害等が発生した場合、データをバックアップするのに時間がかかる。また、個人情報を含むファイルを使用施設の外部に持ち出すことに対して、特別の配慮が必要である。
【解決手段】
第一の記憶媒体のほかに第二の記憶媒体をシステムに接続可能とし、第一の記憶媒体に記録するのとあわせて第二の記憶媒体にも記憶する。さらに、記憶にあたって個人情報が用意に削除ないしは読取不可能な状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液,尿等の生体試料の化学的,物理的性質を測定する自動分析装置に係り、特に装置内情報を記憶する記憶手段を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液,尿等の生体サンプルの化学的,物理的性質を測定する自動分析装置は、疾病の診断に用いられる特性上、緊急に測定の実施を求められることがある。そのため、昼夜を問わず常時稼動であることが求められる。
【0003】
一方、自動分析装置(自動分析システム)においては未知の試料を測定していることに加え、その測定対象となる物質の種類の増加,測定方法の高度化,複雑化により、複数の原因による予測の困難な障害が発生する可能性が高まっている。このような未知の障害に遭遇した場合、障害を発生した当該システムの運用稼動を停止させ、原因究明を行うことが望ましい。しかし、当該システムを保有する医療機関,検査機関において、障害発生後も依然として新たな測定が必要とされる場合においては、当該問題点が致命的なものでない限りにおいて、当該システムの運用操業を継続し、同時に障害については別個に解析することが望ましい。この場合、当該システムに保存された情報をもとに解析する場合や、別個のシステムに当該システムの測定に関わる諸条件を改めて設定し、再現実験が行われる。
【0004】
このようなシステムにおいては、システムの設定,システムに用いる消耗品および廃棄物の管理,測定対象となる個々の項目に対する校正,試料単位の測定項目の選択,試料単位の測定結果および既知試料の測定の定期的な実施とその長期的な管理といった機能が搭載されている場合がある。そのため、真に問題となった装置以外で再現実験を行うためには、上記のような情報がすべてそろっていることが必要である。
【0005】
このようなシステムでは、近年ではその操作を行うユーザーインターフェースとして、Microsoft Windows (登録商標)をはじめとする一般的なオペレーションシステムを用いたパーソナルコンピュータシステムをその操作部として利用することが可能となり、さらにその拡張性を活用した周辺機器が利用となった。
【0006】
そこで、前記のように解決に時間がかかる状況となった場合を検討すると以下のような方法があげられる。例えば、システムの情報を記憶した媒体を外部のシステムにおいて複製し、別のシステムにおいて解析する方法や、システムの再現や解析に必要と思われる情報のみを、外部記憶手段に改めて記憶する方法である。
【0007】
例えば特許文献1には、複数の記憶装置を備えて、情報のバックアップを行う分析装置が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−281258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載の技術では予め定めたルールに従いバックアップ動作を実行する。例えば、自動電源OFF前、測定開始,STAT開始,ポーズ,ポーズ解除などの操作時のような装置の状態が変化する条件をトリガーとしてバックアップ動作を行う。または手動でバックアップを開始することも記載されている。
【0010】
しかしながら、このような情報を含むファイルのバッチ処理による複製作業は、近年のシステムの大型化,複雑化に伴い膨大情報量の複製を必要とするため、複製作業自体に一定の時間がかかり、当該複製作成時間においてはシステムを一時的に休止しなければならない可能性もあり、現実には実施困難な場合も想定される。
【0011】
また、前記複製された情報をたとえば医療機関から持ち出して解析する場合においては、個人情報の保護の観点から個人情報に関する情報を選択的に消去する必要があった。
【0012】
本発明は、このようなシステム情報のバックアップ方法に関して、臨床検査の実態に鑑み解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その方法として、常時システムの情報を保持する保存媒体を少なくとも二つ以上用意し、この書き込み動作を同時とみなせるタイミングで行うことで障害時点における複製作業を不要とする。さらに、少なくとも一方の保存媒体をシステムから取り外し可能とし、任意の時点において保存媒体を取り外し可能とする。さらに、あらかじめ個人情報を含むファイルについては特定可能として、これをシステムから保存媒体を取り除く場合には消去するか、もしくは暗号化することにより、システムに接続した場合にのみ読み取り可能とする。この構成とすることにより、システムはシステムを停止することなく、外部にて障害の解析等を実施し、かつ個人情報の保護を可能とする。またシステムの処理が十分な速度が得られない場合については、システム全体の稼動状況を鑑みて、あらかじめ設定したタイミングにおいて、当該バックアップ作業を実施するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、システムに関する情報をシステムから取得するにあたり、システムの停止時間を実質的になしで得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の好適な実施例を図1により説明する。システムは、入力手段としてのキーボード101,表示画面102,CPUシステム103からなり、このCPUシステム103は、分析部110と接続されている。分析部110には、試料容器を架設する部分111と試料容器に付された情報読取手段112と、試料容器に収められた液体試料を分取する手段113と、分取された試料を処理する手段114と、処理された試料の化学的,物理的性質を測定する手段115と、測定結果をCPUシステム103に伝達する手段を備える。CPUシステム103には、第一の記録媒体としてハードディスク104と、第二の記録媒体としてハードディスク105を備える。また、本システムは、上位の情報システム120と通信手段121により接続されている。ここで通信手段を介して伝達される個々の検体に対する測定項目の選択内容を「依頼内容」と称する場合がある。試料を処理する手段114には、公知例 特開2000−46842に示すような自動分析システムを用いることができる。
【0017】
試料容器が試料容器を架設する部分111に架設されると、試料容器は試料容器情報読取手段112により情報を読み取られ、当該情報は分析部110を介してCPU103に送付され、CPU103は通信手段121を介して上位情報システム120にシステム
IDとあわせて問合せを行う。問合せを受けた上位情報システム120は、あらかじめ試料を患者から採取するに先立って決定した測定項目を格納しており、この格納情報のうち、システムIDに該当する測定項目を通信手段121を介してCPU103に送付し、
CPU103は測定項目を分析部110に送付する。尚、検体に関する情報および、検体と依頼に関する情報については入力装置101によってシステムに対して直接行っても良い。分析部110は、分析に関わる液体試料の分取手段113,試料処理手段114および測定手段115を連携させ、測定結果を得る。測定結果はCPU103に送付される。CPU103はこれを第一の記録媒体104および第二の記録媒体105に同時に記録し、さらに第一の記憶媒体104に記録された表示画面102に表示し、かつ通信手段121を介して上位情報システム120に報告される。
【0018】
ここで、システムにおけるファイルに収められる情報の概要を図2に示す。ファイルシステム201は複数のファイルから構成されており、個人情報ファイルとして処理情報
202には検体の属性に関する情報と、システム内部で当該検体を追跡可能な内部処理番号を関連付ける。これ以外のファイルは個人情報を直接含まないファイルとなっており、依頼情報203には、前記内部処理番号と測定項目の関係が記録されている。結果情報
204には前記内部処理番号と測定結果の関係が記録されている。これ以外の情報は、システムでの測定を行ううえで必要とされる情報であって、個々の測定項目や測定にかかわる構成要素の組合せに対してあらかじめ行われた既知濃度の物質の測定に基づく校正情報205,測定に用いられる試薬や消耗品の残量を管理する物品管理情報206,装置の実際の動作を障害に備えて記録する装置動作情報207,測定システムに対して既知濃度の物質を定期的に測定し、個々の分析項目が適切に測定可能であることを証明するための精度管理情報208等がある。ここに示される情報はあくまでも分析システムとして一般的なものであって、これ以外にもシステムにとって必要な情報がある場合もある。また、ここで示すファイル構成は、個人情報がシステムにとって必要ではあるものの、実質的にはシステム内部ではほぼすべての処理が内部処理番号にて処理が可能であることを説明するものであって、このように個人情報を含むデータ要素については特定のファイルに限定して記憶することが可能であることを示すものである。
【0019】
このような構成において、図3に示すような記憶媒体の取り外し画面によってディスクの選択画面301において、取り外しディスクの選択画面が表示され、前記第一のハードディスク104をシステムから取り外す場合にはメインハードディスク302を、前記第二のハードディスク105を取り外す場合にはセカンダリハードディスク303を選択する。システムには少なくともひとつのハードディスクを備えていることが必要であるため、ここでは、どちらか一方を取り外す画面となっている。さらに、個人情報を消去するためにチェックボックス304を備え、この画面から個人情報の消去を指示できる。当該処理をこの時点でキャンセルする場合にはキャンセルボタン305もしくは307を押す。また、記録媒体を取り除く場合には306を押す。このような操作により、システムは、記録媒体の取り外しを適切に行うことができるようにする。
【0020】
また、図4に示すようにKEY情報401を第一の記憶媒体104に格納しておき、図5に示すようにCPU103から、個人情報を含む処理情報ファイル202に対する書き込み,読み出しにおいて、暗号化プロセス501を備えることも可能である。この場合に、処理情報ファイルは、書き込み時点で暗号化により、一般的には解読不可能なデータとして格納され、改めて読み出す場合に暗号化プロセス501を介してCPU103においては、キー情報とともに解読可能なデータとして利用可能とする。この構成であれば、図3における記憶媒体の除去において、チェックボックス304は必要とならない。ただし、これらの機能の割付けについては、第一の記憶媒体104における障害等が発生することを鑑み、さらにキー情報を安全に保管する手段等を考慮する必要がある。
【実施例2】
【0021】
次にシステムの締め切り処理について説明する。締め切り処理とは、システムを利用している施設において、緊急検査等の可能性が低い時間帯において、システムの管理を主に実行する担当者が行う、もしくは設定ものとする。ここでは、最終の締切りタイミングを2006/07/25の午前6時の時点として実行するものとする。実際に締め切りは、あらかじめ設定しておく方式をとっても、事後に締め切りを実施してもよい。すでに、測定等が終了した時点での締切り時刻に対して、これ以前のデータについて締め切りを実行する場合には、締め切り時刻602を設定し、締め切り開始処理607を実行する。また、定期的に締め切りを実行するように設定する場合には、定期処理チェックボックス603を設定し、実施頻度604を選択し、実行する。実施頻度については、施設の状況に応じて決定すればよい。たとえば検体処理量が多い場合は、半日おきに実行する、毎日実施するといった運用方法も考えられる。また、ワーキングデータベースが十分に広い場合は、一週間単位で締め切りを実施してもよい。締め切り処理が実施されると、図7に示すように、第一の記録媒体104には最終の締め切り時点以降のファイルが動作ファイル702として残してある。実際のシステムは、この動作ファイル702をもとに動作するものとする。一方、第二の記録媒体105には、前記動作ファイルと同等の動作ファイル703と、それ以前の締め切りによって格納された動作ファイル704から708が格納されている。各ブロックに示されたファイルは、実際にはディレクトリ構造を備え、図5に示すのと同等の構造をもつことが望ましい。このように構造自体を保持することによって、データの解析や保存,バックアップ,復帰のための措置においても特段の処理をすることなく実行できる。
【0022】
また、図8に示すように、締め切り動作の詳細については、締切開始802を行うと、まず第二の記録媒体105に保管エリアを確保803する。保管エリアの名称はたとえば締切時刻を明示するもの704であることが望ましい。エリアを確保したのち、現時点のファイルを前記保管エリア704に複写804し、完全に複写が完了した時点でチェック805を行い、適正に複写が確認されたことをもって、現在の動作ファイル703において、複写済みの情報を削除806する。これによって、過不足なくファイルが保管され、処理が終了する807。
【0023】
なお実施例2で示すように、保管を目的とするだけであれば、複写のタイミングはミリセコンドオーダで同時でなくともかまわないため、システムに逐次複写をするように設定し、システムの処理状況、たとえばCPU103と分析部110との間の通信の状況が頻繁である場合には、処理を行わず、あらかじめ設定しておいた時点、たとえば繁忙な時間帯以降の比較的余裕のある時点で、第二の記憶媒体に複写を自動的に行ってもよい。また、記憶媒体としては、ハードディスクドライブが容量,信頼性,アクセス速度の観点から現時点ではもっとも良いと考えられる。しかしながら、これに代わる半導体メモリや、
CD−ROMおよびDVD−ROM等でも良い。書き込み専用メディアである場合には、あらかじめ当該メディアを設置しておき、締切時刻を過ぎた時点で自動的に書き込み、イジェクトされていることにより、明示的にバックアップがとられたことがわかる。
【0024】
また、精度管理試料の測定結果および統計情報については、長期にわたってレビューする可能性が高いため、動作ファイルに過去分についても長期に保存することが望ましい場合がある。これらの用途に応じて、保存するファイルについては適切に選択,設定する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1における分析システムと記憶媒体の接続形態を説明した図。
【図2】実施例1におけるシステムのファイル構成を説明した図。
【図3】実施例1における記憶媒体を取り外すための画面を説明した図。
【図4】実施例1における個人情報保護のためのキー情報の配置を説明した図。
【図5】実施例1における暗号化プロセスを説明した図。
【図6】実施例2における締め切り情報を説明した図。
【図7】実施例2における締め切り情報によるファイルの構成を説明した図。
【図8】実施例2における締め切り処理を説明した図。
【符号の説明】
【0026】
101 キーボード
102 表示画面
103 CPUシステム
104 第一の記録媒体
105 第二の記録媒体
110 分析部
111 試料容器を架設する部分
112 試料容器情報読取手段
113 液体試料を分取手段
114 試料処理手段
115 測定手段
120 上位の情報システム
121 通信手段
201 ファイルシステム
202 処理情報
203 依頼情報
204 結果情報
205 校正情報
206 物品管理情報
207 装置動作情報
208 精度管理情報
301 ディスクの選択画面
302,303 選択ボタン
304 個人情報消去チェック
305 キャンセルボタン
306 記録媒体除去ボタン
401 KEY情報
501 暗号化プロセス
602 締め切り時刻
603 定期処理チェックボックス
604 実施頻度選択ボックス
607 締め切り開始処理
702 動作ファイル
703 同等の動作ファイル
704〜708 格納された動作ファイル
802 締切開始
803 保管エリアを確保
804 動作ファイルを前記保管エリアに複写
805 複写完了チェック
806 複写済み情報削除
807 処理終了する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体サンプルの測定結果を含む情報を記憶する記憶手段を備えた自動分析装置において、
前記記憶手段を少なくとも2つ備え、
前記測定結果を含む情報を、前記記憶手段の少なくとも2つにほぼ同時に記憶するように該記憶手段を制御する制御手段を備え、
かつ、前記少なくとも2つの記憶手段のうちの少なくとも1つの記憶手段は、外部に取り外し可能であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記測定結果を含む情報は、
測定結果、及び測定した試料の提供者を特定する情報を含み、
かつ前記外部に取り外し可能な記憶手段に記憶する情報は、該試料の提供者を特定する情報が削除されて記憶されるように制御する制御手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記測定結果を含む情報は、
測定結果、及び測定した試料の提供者を特定する情報を含み、
かつ前記外部に取り外し可能な記憶手段に記憶する情報は、該試料の提供者を特定する情報を暗号化して記憶されるように制御する制御手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
予め定めた期間に得られた情報をグループ化し、グループ化された情報を、前記外部に取り外し可能な記憶手段以外の記憶手段から削除するように制御する制御手段を備えたことを特徴する自動分析装置。
【請求項5】
生体サンプルの測定結果を含む情報を記憶する記憶手段を備えた自動分析装置において、
前記記憶手段を少なくとも2つ備え、
前記少なくとも2つの記憶手段のうちの少なくとも1つの記憶手段は、外部に取り外し可能であり、
かつ前記測定結果を含む情報を、前記外部に取り外し可能な記憶手段以外の記憶手段に一旦記憶した後、後から前記外部に取り外し可能な記憶手段に記憶するように該記憶手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記測定結果を含む情報は自動分析装置の運転状況、及び自動分析装置に保持される部材の量を含むことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項4記載の自動分析装置において、
精度管理情報については、これを前記外部に取り外し可能な記憶手段以外の記憶手段に記憶することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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