説明

自動分析装置

【課題】
試料の分取動作の中で、分取ノズルに付着した水滴による試料の薄まりを抑えること。
【解決手段】
試料を前記試料容器から分取し、前記反応容器へ吐出するためのノズルを備えた試料分取機構と、該ノズルを前記試料容器と前記反応容器の間で移動させるノズル移動機構と、を備えた自動分析装置において、前記ノズルの洗浄機構を複数種類備え、該ノズルの試料の分取量に応じて前記ノズルの洗浄機構を選択的に使用するように制御する洗浄機構制御機構を備えた自動分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿などの生体試料の定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に試料を所定量分取するための試料分取装置を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動分析装置は、患者数の多い大病院,中小病院,医院から検査を請負う検査センターなどにおいて、効率良く分析を行うのになくてはならない装置になっている。
【0003】
自動分析装置では、試料容器に入れられた試料が試料分取ノズルにより分析項目に応じて分取される。試料の分取プロセスでは、一般的に(1)試料の分取、(2)ノズル外壁に付着した試料の除去、(3)試料を反応容器へ吐出、(4)ノズル内壁および外壁の除去、の工程を備える。
【0004】
試料の除去は、一般的には水を分取ノズルに供給して行っている。また、分取ノズルの除去能力を高めるために、除去剤を用いる方法(例えば特許文献1に記載),オゾンガスを用いる方法(例えば特許文献2に記載),超音波振動を用いる方法(例えば特許文献3に記載)等の手段が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−280813号公報
【特許文献2】特開平6−288879号公報
【特許文献3】特開平4−9670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
臨床検査では、分析コストの低減が求められており、それに対応して試薬の使用量の低減が求められている。試薬の使用量が低減できれば試料の使用量も低減できるため、試料を採取する被検者の負担も少なくできる。
【0007】
試料の使用量が少なくなると、従来はあまり問題にならなかった試料分取ノズルへの残留試料や、ノズル洗浄後の残留水の相対的な影響が大きくなってくる。従来の自動分析装置ではそのような問題に対して十分考慮されているとは言えない部分もあった。
【0008】
本発明の目的は、試料の分取動作の中でも特に微量な試料の分取動作における分取ノズルに付着した水滴量を軽減することが可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0010】
試料を前記試料容器から分取し、前記反応容器へ吐出するためのノズルを備えた試料分取機構と、該ノズルを前記試料容器と前記反応容器の間で移動させるノズル移動機構と、を備えた自動分析装置において、
前記ノズルの洗浄機構を複数種類備え、該ノズルの試料の分取量に応じて前記ノズルの洗浄機構を選択的に使用するように制御する洗浄機構制御機構を備えた自動分析装置。
【0011】
前記ノズル洗浄機構はノズルが移動する軌道上に配置されても良い。
【0012】
試料容器は試料容器の位置を移動させる試料容器移動機能の上に載置されていても良い。この試料容器移動機構は例えば、複数の試料容器を周上に配置するサンプルディスクを備えた物でも良い。この場合、サンプルディスクと表現しているが必ずしも円板状である必要はない。そのため「ディスクの周上」という表現を用いているが、円板状のディスクの場合は円周上と読み替えることができる。
また、試料容器を1つまたは複数搭載できる試料容器ホルダーを用い、この試料容器ホルダーを移動させる形態のものであっても良い。
【0013】
反応容器搭載機構も同様である。反応ディスクのような形態であっても良いし、反応容器が直線的に移動できるようなものであっても良い。
【0014】
前記ノズル洗浄機構(以下、除去手段とも表現する)は、試料分取ノズルに付着する試料を除去する構成であればどのような形態であっても良い。例えば、試料分取ノズルにエアー,除去水、または除去剤を噴射する方式でノズル外壁に付着した試料を除去する。また、除去水や除去剤で試料をぬぐう方式として、除去水や除去剤の流路を備え、試料分取ノズルが流路を移動する間にノズル先端に付着した試料を除去しても良い。
【0015】
前記除去手段が備える複数の方法は、第一として、試料分取ノズルの除去位置を変化させ、ノズルの除去範囲を限定する構成であればどのような形態であっても良い。例えば、ノズルが移動する軌道付近に除去水や洗浄剤の噴射口を備え、試薬分取ノズルが同軌道上に移動してきた際に、除去水や洗浄剤の噴射によりノズル先端に付着した試料を除去する。また、ノズルが移動する軌道上に除去水や除去剤の流路を備え、試料分取ノズルが流路を移動する間にノズル先端に付着した試料を除去しても良い。
【0016】
また前記除去手段が備える複数の方法は、第二として、分取ノズルの除去能力を高めることで除去後の分取ノズルに付着する水滴量を減らしても良い。分取ノズルの除去能力を高めるために、オゾンガスを用いる方法,超音波振動を用いる方法を用いても良い。その他の方法として、分取ノズルの撥水性を向上させても良い。
【0017】
上記分取ノズルに付着した試料を除去するための除去手段を試料の分取量に応じて切り替える手段として、ユーザが除去手段の設定を切り替え可能な構成であればどのような形態であっても良い。例えば、操作画面から試料の分取量と共にノズルの除去方法を設定する方法である。また、自動分析装置の外部に備えられた切り替えスイッチなどで選択しても良い。この手段を用いて、特に分取量の少ない試料分取において、分取ノズルに付着する水滴量を減らすための除去方法を選択することができる。
【0018】
また、同一試料を複数回にわたり連続して分取する動作において、分取ノズルに付着する水滴による試料の薄まりを抑制する手段として、同一試料間で分取回数を減らす手段があっても良い。例えば、従来個別に実施していた分取動作を、1回の分取動作で複数回の試料を纏めて分取し、その後個別に試料を反応容器へ吐出する。上記の分取回数は、従来予定されていた分取回数より少ない回数でも良い。上記手段により分取ノズルが試料を分取する回数が減り、結果的に分取ノズルに付着する水滴による試料の薄まりを抑制することが可能となる。上記分取動作の切り替えは、ユーザが分析パラメータの設定時に任意に設定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、試料の分取動作の中でも特に微量な試料の分取動作における分取ノズルに付着した水滴量を軽減することが可能となるため、分取ノズルに付着した水滴による試料の薄まりを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態では、試料分取機構に備えられたノズルに関して、試料分取の際、ノズル外壁に付着した残留物を除去するための除去手段を複数の方式を備える。この除去手段は、例えば、試料分取ノズルにエアー,除去水、または除去剤を噴射する方式である。除去水や除去剤で試料をぬぐう方式(洗浄方式)として、除去水や洗浄剤の噴射口を備え、試薬分取ノズルが同軌道上に移動してきた際に、除去水や洗浄剤の噴射によりノズル先端に付着した試料を除去する。
【0021】
除去手段が備える複数の方法は、分取ノズルの除去能力を高める方式であっても良い。試料分取ノズルに付着した残留物の除去能力を高めるために、オゾンガスを用いる方法,超音波振動を用いる方法,エアーブローを用いても良い。また別の方法として、分取ノズルの撥水性を向上させても良い。
【0022】
ノズル外壁に付着した残留物を除去するための除去手段を水や洗浄剤を用いた場合、ノズル外壁に付着した水滴を除去するための構成として、エアーポンプを用いても良い。また、水滴を拭き取るために紙,布,脱脂綿などを用いても良い。これらの紙,布,脱脂綿などで水を拭き取る場合、これらを交換する交換機構を必要とする。さらに別の方法として、ノズル外壁に付着した水滴を振動によりふるい落としても良い。
【0023】
上記の試料分取ノズルに付着した試料を除去するための除去手段を試料の分取量に応じて切り替える手段として、ユーザが除去手段の設定を切り替え可能な構成であればどのような形態であっても良い。例えば、操作画面から試料の分取量と共にノズルの除去方法を設定する方法である。また、自動分析装置の外部に備えられた切り替えスイッチなどで選択しても良い。この手段を用いて、特に分取量の少ない試料分取において、分取ノズルに付着する水滴量を減らすための除去方法を選択することができる。
【0024】
また、同一試料を複数回にわたり連続して分取する動作において、分取ノズルに付着する水滴による試料の薄まりを抑制する手段として、同一試料間で分取回数を減らす手段があっても良い。例えば、従来個別に実施していた分取動作を、1回の分取動作で複数回の試料を纏めて分取し、その後個別に試料を反応容器へ吐出する。上記の分取回数は、従来予定されていた分取回数より少ない回数でも良い。上記手段により分取ノズルが試料を分取する回数が減り、結果的に分取ノズルに付着する水滴による試料の薄まりを抑制することが可能となる。上記分取動作の切り替えは、ユーザが分析パラメータの設定時に任意に設定することができる。
【0025】
各試料分取機構は試料を採取し、前記反応容器に試料を吐出する動作を繰り返す。複数のノズルを有することにより一つの試料分取機構が試料採取後に反応ディスクへ試料を吐出している最中にその他のノズルが試料の採取を行うことにより試料採取の待機時間を埋めることが可能となり、高速処理を実現することが可能となる。
【0026】
複数の試料分取機構が独立に分取動作可能であることにより頻繁に試料容器からの採取動作が可能となるが、これに伴い試料容器の採取位置への移動時間が短くなるため試料容器を所定の場所へ移動する時間がなくなり、ひいては処理能力を落とす要因となるが、各試料分取機構が複数の試料採取位置から採取可能とすることにより処理能力の低下を防ぐことができる。
【0027】
逆に単一の試料分取機構であれば、別の分取ノズルとの干渉等の問題がない分、試料分取機構が単純となり、装置製造コストを低減できる。また、複数の分取機構と比べ、分取機構設置に必要なスペースも抑えられるため装置全体としての設置床面積が小さくできる。ただし、本実施例では試料の高速度処理に主眼を置くため、以下では複数の試料分取機構について記述する。
【0028】
ノズルは試料採取位置と前記反応ディスクとの往復運動が可能な移動機構を備えれば良く、試料分取機構の移動軌跡は直線的であっても湾曲であっても良いが、各々の試料分取機構が独立に動作可能となるために互いに干渉しない手段を有することが必要である。例えば同一平面内での試料分取機構が動作を行う場合、試料採取位置と反応ディスクとの間にて互いの動作を拘束させないよう試料分取機構の動作軌跡上に逃げ位置を設け、軌跡が干渉しないように機構を配置する。もしくは機構の移動部を上下に配置することにより互いに干渉しないようにする。もしくは試料採取位置と反応ディスクとの中点に回転軸を設け、この回転軸により複数の試料分取機構を試料採取位置または反応ディスクに移動させる機構が考えられる。回転軸による移動の場合、複数の試料採取位置または複数の反応ディスク位置に試料分取機構を移動させるため各試料分取機構に回転軸以外の移動手段を有することがあってもよい。
【0029】
またノズルに液面検知機能を備え、前記液面検知機能にて試料容器内に確実に試料を採取するにあたり最低限度の試料があるかどうかの確認を行っても良い。複数の試料分取機構を有する分析装置の場合、任意の試料分取機構にて試料容器内に確実に試料を採取するのに十分量の試料がないと判定された時点でその判断結果を元に次に同一の試料から採取を行う試料分取装置は予定していた試料容器からの試料採取を中止し次に採取を行う試料容器へ採取元を変更することにより不要動作を減らすことが可能となる。
【0030】
また、ノズルに詰まり検知機能を備え、前記詰まり検知機能にて試料容器内に流路内の詰まりの発生要因の存在有無を確認しても良い。複数の試料分取機構を有する分析装置の場合、任意の試料分取機構にて試料容器内に詰まり要因が存在するとされた時点で、その判断結果を元に次に同一試料から採取を行う。試料分取装置は予定していた試料容器からの試料採取を中止し、次に採取を行う試料容器へ採取元を変更することにより無駄動作を減らすことが可能となる。
【0031】
また、ノズルが何らかの異常により動作不可能となった場合でも、独立に動作可能な複数の試料分取機構を有することにより、全ての試料分取機構が異常により動作不可能とならなければ、正常動作中の試料分取機構にて分析動作を継続することが可能となる。
【0032】
また、複数のノズルのうち少なくとも1つのノズルが動作可能であれば、複数の試料分取機構のうち動作可能な試料分取機構のみを動作させることで分析を実行することが可能となる。
【0033】
試料分取では流路内での薄まり回避を目的として反応容器に分取する量以外にダミーを吸引している。このダミーは最終的には除去槽へ吐出・廃棄される。複数の試料分取機構を有することにより処理能力は上がるが、例えば小児試料のように試料量が極端に少ない場合などは処理能力を落としてでも該当試料に依頼された全ての項目を分析することの方が価値がある。例えば試料容器の情報により全ての試料分取機構を使うのではなく特定の試料分取機構のみで試料の採取・分取を行うことにより少量の試料の場合であっても依頼された全ての項目を分析できるようにする。前記例のように試料容器種別にて動作の切り分けを行う場合、例えば操作画面から本機能の有効/無効を設定できるようにすることにより、より付加価値の高い装置を提供できる。
【0034】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
図1は本発明の実施例の上面図、図2は斜視図を示す。反応ディスク36には反応容器35が円周上に並んでいる。反応ディスク36の内側に試薬ディスク42が、外側に試薬ディスク41が配置されている。試薬ディスク41,42にはそれぞれ複数の試薬容器
40が円周上に載置可能である。1つの試薬容器40には2つの試薬が入る。反応ディスク36の近くにサンプル容器10を載せたラック11を移動する搬送機構12が設置されている。試薬ディスク41と試薬ディスク42の上にレール25,26が配置され、レール25にはレールと平行な方向および上下方向に移動可能な試薬ノズル20,21が、レール26にはレールと3軸方向に移動可能な試薬ノズル22,23が設置されている。試薬ノズル20,21,22,23はそれぞれ試薬用ポンプ24と接続している。反応容器
35と搬送機構12の間には、回転及び上下動可能なサンプルノズル15,16が設置されている。
【0036】
サンプルプローブ15,16は回転軸を中心に円弧を描きながら移動してサンプル容器から反応容器へのサンプル分取を交互に行う。お互いの動きが干渉しないよう、プローブ高さを変えられる機構を備え、分取タイミングと高さの調整を予めプログラムされた通りに実行するようになっている。
【0037】
更に別のサンプル分取機構の構成を図3および図4を用いて説明する。図3はサンプルプローブの軌跡を装置上面から示したもの、図4はサンプルプローブの構造を装置前面から示したものである。サンプルプローブ15,16はラック11上のサンプルプローブによる吸引位置にあるサンプル容器61と反応容器35のうちサンプルプローブにて試料吐出位置となる反応容器62に移動する。サンプルプローブ15は前記サンプル容器61と反応容器62に加え除去位置63の3個所に移動可能であり65はサンプルプローブ15の軌跡を示している。一方サンプルプローブ16は前記サンプル容器61と反応容器62に加え除去位置64の3箇所に移動可能であり66はサンプルプローブ16の軌跡を示している。
【0038】
サンプルプローブ15はサンプル容器61と反応容器62との前後方向の移動を図には示していない駆動源によりレール71に沿って移動可能でありさらに除去位置63とサンプル容器61および反応容器62との左右方向の移動を図には示していない駆動源によりレール73に沿って移動可能である。前後方向の移動動作と左右方向の移動動作とは、どちらか一方の動作に対し他方が追従して動作を行う。これによりサンプルプローブヘッド75はレール71とレール73により構成される平面内を移動可能となるとともに、上下動作機構を有するノズル77により3次元空間を移動可能となる。
【0039】
同様にサンプルプローブ16はサンプル容器61と反応容器62との前後方向の移動を図には示していない駆動源によりレール72に沿って移動可能でありさらに除去位置63とサンプル容器61および反応容器62との左右方向の移動を図には示していない駆動源によりレール74に沿って移動可能である。前後方向の移動動作と左右方向の移動動作とは、どちらか一方の動作に対し他方が追従して動作を行う。これによりサンプルプローブヘッド76はレール72とレール74により構成される平面内を移動可能となるとともに、上下動作機構を有するノズル78により3次元空間を移動可能となる。
【0040】
またサンプルプローブ15,16は液面検知機能および詰まり検知機能を有し、サンプルプローブ15,16はそれぞれサンプル用ポンプ14に接続している。サンプルプローブ15,16はそれぞれ独立な駆動系により制御されている。
【0041】
36の周囲には、攪拌装置30,31,光源50,検出光学装置51,容器除去機構
45が配置されている。容器除去機構45は除去用ポンプ46に接続している。サンプルプローブ15,16,試薬プローブ20,21,22,23,攪拌装置30,31のそれぞれの動作範囲に除去ポート54が設置されている。サンプル用ポンプ14,試薬用ポンプ24,除去用ポンプ46,検出光学装置51,反応容器35,試薬ディスク41,試薬プローブ20,21,22,23,サンプルプローブ15,16はそれぞれコントローラ60に接続している。
【0042】
この装置を用いての分析手順を説明する。
【0043】
サンプル容器10には血液等の検査対象の試料が入れられ、ラック11に載せられて搬送機構12によって運ばれる。
【0044】
サンプルプローブ15または16によりサンプル容器61内の試料は採取された試料は、反応容器62へ分取される。
【0045】
サンプルプローブ15の初期位置は除去位置63でありサンプルプローブ16の初期位置は除去位置64である。
【0046】
サンプルプローブ15は試料吸引位置へレール71およびレール73上を移動し、試料容器61上でサンプルプローブヘッド75が下降動作を行い試料吸引後に上昇し反応容器62へ吸引した試料を吐出するために移動し、サンプルプローブ16は試料吸引位置61へレール72およびレール74上を移動し、試料容器61上でサンプルプローブヘッド
76が下降動作を行い試料吸引後に上昇し反応容器62へ吸引した試料を吐出するために移動する。
【0047】
一定量の試薬が試薬ディスク41又は42に設置された試薬容器40から試薬プローブ20又は21又は22又は23から分取され、攪拌装置30,31にて攪拌し、一定時間反応した後検出光学装置51により測定され、測定結果として、図には明示されていない制御コンピュータに出力される。測定項目がさらに依頼されている場合は上記のサンプリングを繰り返し、サンプルプローブ15が反応容器35に採取した試料を吐出している最中にサンプルプローブ16がサンプル容器10から採取を行う。以後同一サンプル容器
10の測定項目を終了した時点で次のサンプル容器10からサンプルプローブ15又は
16にて試料が採取され、サンプルプローブ15又は16でラック11上にある全てのサンプル容器10について、設定された全ての測定項目のサンプリングが終了するまで繰り返される。
【0048】
サンプルプローブ15又は16と試薬プローブ20又は21又は22又は23とは任意の組合せが可能である。これによりサンプルプローブ15又は16のいずれかがなんらかの異常により動作の継続が不可能となった場合でも他方のサンプルプローブにて分析装置上に配置される全ての試薬項目に対し分析動作を継続することが可能となる。
【0049】
またサンプリングプローブ15又は16のいずれか一方がすでに異常があることがわかっている場合、異常があるサンプルプローブのみを有効として分析を開始することができる。
【0050】
またサンプルプローブ15または16いずれかにて、各々が有する詰まり検知機能によりサンプル容器10内の試料に詰まり要因が混入していると試料切れと判定された場合には、詰まりを検出したサンプルプローブは除去ポート54にて流路除去を行い、他方のサンプルプローブは該当試料からの採取動作を中止しラック11上の次のサンプル容器10からの試料採取に遷移することが可能である。状態判断により急遽ラック11上のサンプル容器10を試料採取位置への移動動作が間に合わない場合においても、サンプルプローブ15又は16は複数の位置より試料の採取が可能であるため必要以上の空きサイクルを発生させることなく分析動作を継続することが可能である。
【0051】
また特に幼児試料のようにサンプル容器内の試料が極端に少ない場合はサンプルプローブ15または16のいずれか一方のみを使用することで試料採取時に必要となる、サンプルプローブ内での薄まり防止のための反応容器35には吐出されず除去槽へ廃棄されるダミーを減らすことができる。
【0052】
サンプルプローブ15からサンプルを吸引する場合、図5に示したフロー図に従い分取動作を実行する。図5で示すフロー図によれば、同一試料を複数回にわたり連続して分取動作を行う場合(言い換えると、多項目分析の場合)、図6に示したフロー図に従い分取動作を決定し、図7に示したフロー図に従い分析項目別の洗浄方法を決定する。このフォロー図によると、分取量に応じて予め設定された除去方法を実行するデフォルト設定と、ユーザが選択した除去方法を実行するユーザ設定が選択できる。さらに、試料の分取順番を分取量の少ないサンプルから分取することもできる。図8および図9にユーザが操作する操作画面の具体例を示す。
【0053】
図8で示した分析パラメータ画面には、試料の分取量入力手段79,試料ノズル除去方法の選択手段80を備える。ここでは、試料の分取量入力手段79から、分取量を入力し、試料ノズル除去方法の選択手段80から予め用意されたリストから任意の除去方法を選択することができる。例えば、図8で試料ノズル除去方法の選択手段80を選択すると、ユーザが予め用意されたリスト任意の除去方法を選択することができる。図10に試料の分取量と除去方法の組合せを示す。
【0054】
試料分取動作の選択手段81から試料の分取動作を選択することができる。また、試料分取動作の選択手段81を選択すると、試料の分取方法の選択手段82を選択できる。さらに、試料分取方法の選択手段82で分析項目ごとの設定を選択すると通常の分取順番と分取量の少ないサンプル分取する順番を選択できる。
【0055】
図6で示すフロー図によれば、同一試料を複数回にわたり連続して分取動作を行う場合(言い換えると、多項目分析の場合)、ユーザが試料の吸引および吐出動作を任意に選択することができる。ユーザがユーザ設定を選択すると、分取量の少ない項目から試料を分取する方式と1回の分取動作で試料を纏めて分取する方式を選択できる。分取量の少ない項目から分取する方式では、分取量の少ない項目から分析項目別に分取する方式(分取方法3)と、分取量の少ない項目を纏めて分取する方式(分取方法4)を有する。分取量下位群は分取量が少ない項目の試料を、分取量中位群は分取量が中間の項目の試料を、分取量上位群は分取量が多い項目の試料を、それぞれ分取する。(分取方法4)分取量に関して、分取量下位群とは例えば分取量が最小の試料群、分取量中位群とは例えば分取量が2番目に少ない試料群、分取量上位群とは例えば分取量が3番目に少ない試料群を指す。1回の分取動作で試料の必要量を分取する方式において、試料吐出方法は試料の分取量に応じて切り替えても良い。具体的な手段としては、分取量の少ない順番、または分取量の多い順番が挙げられる。上記で記載した1回の分取動作で試料の必要量を分取する方式(分取方法2)では、サンプルプローブに付着した水滴を試料に持ち込む回数を軽減できるため、水滴によるサンプル濃度の薄まりを軽減できる。
【0056】
また、図7で示すフロー図によれば、試料の分取量に応じて除去方法を切り替えることができる。このフロー図によると、分取量に応じて予め設定された除去方法を実行するデフォルト設定と、ユーザが選択した除去方法を実行するユーザ設定が選択できる。デフォルト設定では、予め定められた分取量に対応した除去方法W1が選択される。ユーザ設定では、ユーザが複数の除去方法(除去方法W1,除去方法W2,除去方法W3)から選択できる。図8にユーザが操作する操作画面の具体例を示す。
【0057】
図8で示した分析パラメータ画面には、試料の分取量入力手段79,試料ノズル除去方法の選択手段80を備える。ここでは、試料の分取量入力手段79から、分取量を入力することができる。また、試料ノズル除去方法の選択手段80から予め用意されたリストから任意の除去方法を選択できる。試料ノズル除去方法の選択手段80を選択すると、予め用意されたリストの中から任意の除去方法を選択することができる。上記リストは、例えば図10に示されるリストから選択することができる。
【0058】
図9にユーザが分取動作および試料ノズル除去方法を選択する操作画面の具体例を示す。図9で示した分析パラメータ画面には、試料の分取量入力手段79,試料ノズル除去方法の選択手段80,試料分取動作の選択手段81,同一試料分取方法の選択手段82、および同一試料分取順番の選択手段83を備える。ここでは、試料の分取量入力手段79から、分取量を入力することができる。試料ノズル除去方法の選択手段80から予め用意されたリストから任意の除去方法を、また試料分取動作の選択手段81から試料の分取順番を、同一試料分取方法の選択手段82から試料の分取方法を、同一試料分取順番の選択手段83から試料の分取順番を、それぞれ選択することができる。
【0059】
試料ノズル除去方法の選択手段80を選択すると、予め用意されたリストの中から任意の除去方法を選択することができる。上記リストは、例えば図10に示されるリストから選択することができる。同一試料分取動作の選択手段81では、予め定められた分注動作とユーザが任意に選択できる分取動作を選択することができる。また、試料分取方法の選択手段82を選択すると、試料の吸引と吐出を繰り返し行う“個別”、分取量の同じ試料を纏めて吸引して試料を吐出す“分取量別”、1回の分取動作で試料の必要量を分取する“1回”を選択することができる。また、試料分取順番の選択手段83を選択すると、予め定められた順番で分取する“通常”と同一試料の中で分取量の少ない順番で分取する
“分取量の少ない順番”を選択することができる。
【0060】
以上のように自動分析装置の試料分注に関する実施例で説明したが、本発明の分取量や液性に応じて適切な洗浄方式を適宜選択することは、試薬分注,希釈液分注,洗剤分注の前後での分注機構の洗浄を同様な方式とすることで同様な課題の解決に対し同様の効果を得ることができる。また、攪拌動作前後の攪拌子の洗浄に関しても同様に、攪拌対象の分取された液の分取量や液性に応じて適宜洗浄方式を選択することで、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明を適用した自動分析装置の上面図。
【図2】本発明を適用した自動分析装置の斜視図。
【図3】本発明のサンプル分取プローブの動作を上から見た図。
【図4】本発明のサンプル分取プローブを横から見た図。
【図5】本発明を適用した自動分析装置において、試料の分取動作を決定するためのフロー図。
【図6】本発明の第1の実施例で、試料の分取動作を決定するためのフロー図。
【図7】本発明の第2の実施例で、試料の分取動作で、試料ノズルに付着した残留物を除去する除去手段を決定するためのフロー図。
【図8】本発明の実施例で、ユーザが操作する操作画面を示す図。
【図9】本発明の実施例で、ユーザが操作する操作画面を示す図。
【図10】本発明における試料の分取量と除去方法の組合せを説明した表。
【符号の説明】
【0062】
10 サンプル容器
11 ラック
12 搬送機構
14 サンプル用ポンプ
15,16 サンプルノズル
20,21,22,23 試薬ノズル
24 試薬用ポンプ
25,26 レール
30,31 攪拌装置
35 反応容器
36 反応ディスク
40 試薬容器
41,42 試薬ディスク
45 容器除去機構
46 除去用ポンプ
50 光源
51 検出光学装置
54 除去ポート
60 コントローラ
61 サンプル吸引位置のサンプル容器
62 サンプル吐出位置の反応容器
63 サンプルノズル1の除去位置
64 サンプルノズル2の除去位置
65 サンプルノズル15の軌跡
66 サンプルノズル16の軌跡
71,72 サンプルノズル15用レール1
73,74 サンプルノズル16用レール2
75 サンプルノズル15用ヘッド
76 サンプルノズル16用ヘッド
77 サンプルノズル15用ノズル
78 サンプルノズル16用ノズル
79 試料の分取量入力手段
80 試料ノズル除去方法の選択手段
81 試料分取動作の選択手段
82 試料分取方法の選択手段
83 同一試料分取順番の選択手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を前記試料容器から分取し、前記反応容器へ吐出するためのノズルを備えた試料分取機構と、
該ノズルを前記試料容器と前記反応容器の間で移動させるノズル移動機構と、
を備えた自動分析装置において、
前記ノズルの洗浄手段を複数種類備え、
該ノズルの試料の分取量に応じて前記ノズルの洗浄手段を選択的に使用するように制御する洗浄手段制御方式を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記試料分取機構を用いて同一試料を複数回にわたり連続して分取する場合は、前記分取動作は分取量の少ない項目から分取動作を行うように制御する試料分取機構制御手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動分析装置において、
前記洗浄手段制御方式は、いずれの種類の洗浄手段を使用するかを予め指定する洗浄手段指定手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−209339(P2008−209339A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48388(P2007−48388)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】