説明

自動分析装置

【課題】コンタミネーションの発生を抑制しつつ、試薬注入後に迅速に撹拌することができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】反応容器8を搬送する反応ディスク9と、反応容器8に試料を注入する試料分注装置12と、試料が注入された反応容器8に試薬を注入する試薬分注装置15A,15Bと、反応容器8内の試料及び試薬を撹拌する撹拌装置16とを備えた自動分析装置において、撹拌装置16で撹拌する反応容器8の位置を、試薬分注装置15Bで試薬を注入する反応容器8の位置Cと同じにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象である試料に試薬等を混合して試料の成分を分析する分析装置に係り、特に試薬と試料の撹拌を行う機能を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学自動分析装置や免疫自動分析装置などの自動分析装置は、例えば、複数の反応容器を搬送する搬送装置と、反応容器に試料プローブで試料を注入する試料分注装置と、試料が注入された反応容器に試薬プローブで試薬を注入する試薬分注装置と、反応容器内の試料及び試薬を撹拌棒で撹拌する撹拌装置とを備えている。このような自動分析装置に用いる分析方法は、酵素反応を利用した分析方法や抗原抗体反応を利用した分析方法などが開発されている。抗原抗体反応を利用した分析方法の一例としては、標識された抗原と未標識の抗原と抗体とを反応させ、標識された抗原と未標識の抗原とが競合的に抗体と結合することを利用した方法がある。この分析方法を用いる場合、標識された抗原と未標識の抗原とが競合的に反応するため、試薬注入後、迅速に試料及び試薬を混合することが望ましい。
【0003】
ここで従来、例えば、試薬分注装置の試薬プローブ(試薬分注ノズル)に撹拌翼を設けた構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、試薬分注装置の試薬プローブで試薬を注入するときに、その試薬プローブを反応容器内の混合液中で上下動することにより撹拌するようになっている。これにより、試薬注入と撹拌とをほぼ同時に行うようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−148166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。
すなわち、上記従来技術では、試薬分注装置の試薬プローブに撹拌翼を設けているため、試薬プローブの構造が複雑化し、その洗浄機構に何らかの工夫を施さなければ、コンタミネーションが発生する可能性が高くなっていた。かといって、例えば試薬分注装置及び撹拌装置を独立して設けた場合、試薬分注装置で試薬を注入する位置から撹拌装置で試料及び試薬を撹拌する位置までの反応容器の搬送に時間を要すると、試薬注入後に迅速に試料及び試薬を混合することができないという課題が生じていた。
【0006】
本発明の目的は、コンタミネーションの発生を抑制しつつ、試薬注入後に迅速に混合することができる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、反応容器を搬送する搬送装置と、前記反応容器に試料を注入する試料分注装置と、前記試料が注入された前記反応容器に試薬を注入する試薬分注装置と、前記反応容器内の試料及び試薬を撹拌する撹拌装置とを備えた自動分析装置において、前記撹拌装置で撹拌する前記反応容器の位置を、前記試薬分注装置で試薬を注入する前記反応容器の位置と同じにする。
【0008】
本発明においては、撹拌装置で撹拌する反応容器の位置(以降、撹拌位置と称す)を、試薬分注装置で試薬を注入する反応容器の位置(以降、試薬分注位置と称す)と同じにする。すなわち、試薬分注装置で試薬を注入した反応容器を搬送装置で搬送することなくそのままの位置とし、撹拌装置で撹拌する。これにより、反応容器の搬送時間を削減することができ、試薬注入後に迅速に混合することができる。また、例えば試薬分注装置の試薬プローブに撹拌翼を設ける場合とは異なり、コンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0009】
(2)上記目的を達成するために、また本発明は、反応容器を搬送する搬送装置と、前記反応容器に試料を注入する試料プローブ及び前記試料プローブを回動する機構を有する試料分注装置と、前記試料が注入された前記反応容器に試薬を注入する試薬プローブ及び前記試薬プローブを回動する機構を有する試薬分注装置と、前記反応容器内の試料及び試薬を撹拌する撹拌棒及び前記撹拌棒を回動する機構を有する撹拌装置とを備えた自動分析装置において、前記撹拌装置の撹拌棒で撹拌する前記反応容器の位置を、前記試薬分注装置の試薬プローブで試薬を注入する前記反応容器の位置と同じにする。
【0010】
(3)上記目的を達成するために、また本発明は、反応容器を搬送する搬送装置と、前記反応容器に試料を注入する試料分注装置と、前記試料が注入された前記反応容器に試薬を注入する試薬分注装置と、前記反応容器内の試料及び試薬を撹拌する非接触式の撹拌装置とを備えた自動分析装置において、前記撹拌装置で撹拌する前記反応容器の位置を、前記試薬分注装置で試薬を注入する前記反応容器の位置と同じにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンタミネーションの発生を抑制しつつ、試薬注入後に迅速に混合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本発明の自動分析装置の一実施形態の構成を表す概略図であり、図2は、本発明の自動分析装置の一実施形態における試料分注位置及び試薬分注位置を一例として表す平面図である。
【0014】
これら図1及び図2において、自動分析装置は、大別して、試料の成分を分析する分析部1と、この分析部1を制御する制御部2とで構成されている。制御部2は、インターフェイス3を介し分析部1を制御する制御装置4と、試料の分析に関する情報を記憶する記憶装置5と、情報を入力するための入力装置6と、情報を表示するための表示装置7とを備えている。
【0015】
分析部1は、複数の透光性の反応容器8を反応ラインとして環状に配列保持し回転駆動する反応ディスク9と、試料が収容された試料容器10を保持し回転駆動する試料ディスク11と、試料ディスク11の試料採取位置にある試料容器10内の試料を反応容器8に分注する試料分注装置12と、分析項目に対応する第1の試薬が収容された試薬容器13を保持し回転駆動する第1の試薬ディスク14Aと、第1の試薬ディスク14Aの試薬採取位置にある試薬容器13内の第1の試薬を反応容器8に分注する第1の試薬分注装置15Aと、分析項目に対応する第2の試薬が収容された試薬容器13を保持し回転駆動する第2の試薬ディスク14Bと、第2の試薬ディスク14Bの試薬採取位置にある試薬容器13内の第2の試薬を反応容器8に分注する第2の試薬分注装置15Bと、反応容器8内の試料及び試薬を撹拌する撹拌装置16と、反応容器8内の反応液の吸光度を測定する多波長光度計17と、測定が終了した反応容器8から反応液を除去し洗浄する反応容器洗浄装置18とを備えている。
【0016】
反応ディスク9は、反応容器8を、試料分注装置12で試料を分注する位置A(試料分注位置と称す)、試薬分注装置15Aで第1の試薬を分注する位置B(試薬分注位置と称す)、及び試薬分注装置15Bで第2の試薬を分注する位置C(試薬分注位置と称す)へ搬送するととともに、多波長光度計19の光軸上を通過させるため、1サイクル毎に、図中反時計回りに所定の反応容器8の数だけ回転して停止する動作を繰り返すようになっている。多波長光度計17は、検出すべき波長位置に対応する複数の検知器(図示せず)を有し、反応ディスク9が回転状態のときに反応容器8内の反応液を透過した光を検知するようになっている。
【0017】
試料分注装置12は、支承軸19を中心にして回動可能に取り付けたアーム20と、このアーム20の先端に取り付けた試料プローブ21と、アーム20を回動する駆動機構(図示せず)と、試料プローブ21を上下動する駆動機構と、試料プローブ21に接続されたシリンダ(図示せず)を駆動する駆動機構(図示せず)とを備えている。そして、例えばアーム20の回動により試料プローブ21が試料ディスク11の試料採取位置に移動し、試料プローブ21が下降した後、シリンダの駆動によって試料容器10内の試料を試料プローブ21に吸引する。そして、試料プローブ21が上昇し、アーム20の回動により試料プローブ21が反応ディスク9の試料分注位置Aに移動し、試料プローブ21が下降した後、シリンダの駆動によって試料プローブ21から反応容器8に試料を吐出する。その後、試料プローブ21が洗浄機構(図示せず)に移動して洗浄される。これらの一連の動作が繰り返し行われ、反応容器8に試料を注入するようになっている。
【0018】
試薬分注装置15Aは、支承軸22Aを中心にして回動可能に取り付けたアーム23Aと、このアーム23Aの先端に取り付けた試薬プローブ24Aと、アーム23Aを回動する駆動機構(図示せず)と、試薬プローブ24Aを上下動する駆動機構と、試薬プローブ24Aに接続されたシリンダ(図示せず)を駆動する駆動機構(図示せず)とを備えている。そして、例えばアーム23Aの回動により試薬プローブ24Aが試薬ディスク14Aの試薬採取位置に移動し、試薬プローブ24Aが下降した後、シリンダの駆動によって試薬容器13内の第1の試薬を試薬プローブ24Aに吸引する。そして、試薬プローブ24Aが上昇し、アーム23Aの回動により試薬プローブ24Aが反応ディスク9の試薬分注位置Bに移動し、試薬プローブ24Aが下降した後、シリンダの駆動によって試薬プローブ24Aから反応容器8に第1の試薬を吐出する。その後、試薬プローブ24Aが洗浄機構(図示せず)に移動して洗浄される。これらの一連の動作が繰り返し行われ、反応容器8に第1の試薬を注入するようになっている。
【0019】
同様に、試薬分注装置15Bは、支承軸22Bを中心にして回動可能に取り付けたアーム23Bと、このアーム23Bの先端に取り付けた試薬プローブ24Bと、アーム23Bを回動する駆動機構(図示せず)と、試薬プローブ24Bを上下動する駆動機構と、試薬プローブ24Bに接続されたシリンダ(図示せず)を駆動する駆動機構(図示せず)とを備えている。そして、例えばアーム23Bの回動により試薬プローブ24Bが試薬ディスク14Bの試薬採取位置に移動し、試薬プローブ24Bが下降した後、シリンダの駆動によって試薬容器13内の第2の試薬を試薬プローブ24Bに吸引する。そして、試薬プローブ24Bが上昇し、アーム23Bの回動により試薬プローブ24Bが反応ディスク9の試薬分注位置Cに移動し、試薬プローブ24Bが下降した後、シリンダの駆動によって試薬プローブ24Bから反応容器8に第2の試薬を吐出する。その後、試薬プローブ24Bが洗浄機構(図示せず)に移動して洗浄される。これらの一連の動作が繰り返し行われ、反応容器8に第2の試薬を注入するようになっている。
【0020】
撹拌装置16は、支承軸25を中心にして回動可能に取り付けたアーム26と、このアーム26の先端に取り付けた例えばへら状の撹拌棒27と、アーム26を回動する駆動機構(図示せず)と、撹拌棒27を上下動する駆動機構とを備えている。そして、例えばアーム26の回動により撹拌棒27が反応ディスク9の撹拌位置に移動し、撹拌棒27が反応容器8内で上下動することにより、反応容器8内の試料及び試薬を撹拌するようになっている。そして、本実施形態の大きな特徴として、撹拌装置16の撹拌棒27で撹拌する反応容器8の位置(以降、撹拌位置と称す)は、第2の試薬分注装置15Bの試薬プローブ24Bで試薬を注入する試薬分注位置Cと同じになっている。
【0021】
次に、本実施形態における自動分析装置の動作を説明する。
【0022】
例えば入力装置6のスタートスイッチ(図示せず)を押すと、反応容器洗浄装置18により反応容器8の洗浄が開始される。さらに、水ブランクの測定が行なわれ、この測定値は以後測定される吸光度の基準となる。
【0023】
反応ディスク9の1サイクルの動作の繰り返しにより、洗浄済みの反応容器8が試料分注位置Aまで進むと、試料ディスク11が回転駆動して所望の試料容器10が試料採取位置に移動する。同時に、第1の試薬ディスク14Aが回転駆動して所望の試薬容器13が試薬採取位置に移動し、第2の試薬ディスク14Bが回転駆動して所望の試薬容器13が試薬採取位置に移動する。そして、試料分注装置12の試料プローブ21が動作し、試料ディスク11の試料採取位置にある試料容器10から試料を吸引し、反応ディスク9の試料分注位置Aにある反応容器8に吐出する。
【0024】
反応ディスク9の1サイクルの動作の繰り返しにより、試料が注入された反応容器8が試薬分注位置Bまで進むと、第1の試薬分注装置15Aの試薬プローブ24Aが動作し、第1の試薬ディスク14Aの試薬採取位置にある所望の試薬容器13から第1の試薬を吸引し、反応ディスク9の試薬分注位置Bにある反応容器8に吐出する。また、第1の試薬が注入された反応容器8が試薬分注位置Cまで進むと、第2の試薬分注装置15Bの試薬プローブ24Bが動作し、第2の試薬ディスク14Bの試薬採取位置にある所望の試薬容器13から第2の試薬を吸引し、反応ディスク9の試薬分注位置Cにある反応容器8に吐出する。そして、第2の試薬分注装置15Bの試薬プローブ24Bが洗浄機構に移動した後、撹拌装置26の撹拌棒27が動作し、反応ディスク9の試薬分注位置Cにある反応容器8内の試薬及び試料を撹拌する。攪拌が完了した反応容器8内の反応液は、多波長光度計17の光軸上を通過する際に吸光度が測定される。
【0025】
以上のように本実施形態においては、撹拌装置16の撹拌棒27で撹拌する撹拌位置を、第2の試薬分注装置15Bの試薬プローブ24Bで試薬を分注する試薬分注位置Cと同じにすることにより、反応容器8の搬送時間を削減することができ、第2の試薬注入後に迅速に混合することができる。また、第2の試薬分注装置15Bの試薬プローブ24Bに撹拌翼を設ける場合とは異なり、コンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0026】
なお、上記一実施形態においては、第2の試薬が注入された後の反応容器9内の試料及び試薬を撹拌する撹拌装置16を設け、この撹拌装置16による撹拌位置を、第2の試薬分注装置15Bによる試薬分注位置Cと同じにする場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば第1の試薬が注入された後、かつ第2の試薬が注入される前の反応容器8内の試料及び試薬を撹拌する撹拌装置を設け、この撹拌装置による撹拌位置を、第1の試薬分注装置15Aによる試薬分注位置Aと同じにしてもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。なお、試薬分注装置や撹拌装置の数は、1つや2つに限られず、多数設けてもよいことは言うまでもない。
【0027】
また、上記一実施形態においては、撹拌装置16は、反応容器8内の試料及び試薬を撹拌する撹拌棒27を備えた接触式のものを例にとって説明したが、これに限られず、非接触式のものでもよい。この非接触式の撹拌装置の一例としては、図3に示すように、圧電素子28からの超音波による音響放射圧の効果によって反応容器8内に旋回流Dを生じさせ、攪拌するものがあげられる。このような変形例においても、試薬分注装置による試薬分注位置と撹拌装置による撹拌位置とを同じにすることにより、上記一実施形態同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の自動分析装置の一実施形態の構成を表す概略図である。
【図2】本発明の自動分析装置の一実施形態における試料分注位置及び試薬分注位置を一例として表す平面図である。
【図3】本発明の自動分析装置の一変形例を構成する非接触式の撹拌装置の概略構造を表す図である。
【符号の説明】
【0029】
8 反応容器
9 反応ディスク(搬送装置)
12 試料分注装置
15A 第1の試薬分注装置
15B 第2の試薬分注装置
16 撹拌装置
21 試料プローブ
24A 試薬プローブ
24B 試薬プローブ
27 撹拌棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器を搬送する搬送装置と、前記反応容器に試料を注入する試料分注装置と、前記試料が注入された前記反応容器に試薬を注入する試薬分注装置と、前記反応容器内の試料及び試薬を撹拌する撹拌装置とを備えた自動分析装置において、
前記撹拌装置で撹拌する前記反応容器の位置を、前記試薬分注装置で試薬を注入する前記反応容器の位置と同じにしたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
反応容器を搬送する搬送装置と、前記反応容器に試料を注入する試料プローブ及び前記試料プローブを回動する機構を有する試料分注装置と、前記試料が注入された前記反応容器に試薬を注入する試薬プローブ及び前記試薬プローブを回動する機構を有する試薬分注装置と、前記反応容器内の試料及び試薬を撹拌する撹拌棒及び前記撹拌棒を回動する機構を有する撹拌装置とを備えた自動分析装置において、
前記撹拌装置の撹拌棒で撹拌する前記反応容器の位置を、前記試薬分注装置の試薬プローブで試薬を注入する前記反応容器の位置と同じにしたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
反応容器を搬送する搬送装置と、前記反応容器に試料を注入する試料分注装置と、前記試料が注入された前記反応容器に試薬を注入する試薬分注装置と、前記反応容器内の試料及び試薬を撹拌する非接触式の撹拌装置とを備えた自動分析装置において、
前記撹拌装置で撹拌する前記反応容器の位置を、前記試薬分注装置で試薬を注入する前記反応容器の位置と同じにしたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−58216(P2008−58216A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237304(P2006−237304)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】