説明

自動分析装置

【課題】
小型で試薬搭載数が多く、処理能力の高い自動分析装置を提供する。
【解決手段】
反応ディスクの中と外にそれぞれ試薬ディスクを設け、試薬プローブで両方の試薬ディスクからの共通の位置に吐出可能とし、それぞれの試薬ディスクにサイクルごとに複数の試薬プローブのうちの1本ずつが交互にアクセスするように構成する。これにより、第1試薬と第2試薬を両方の試薬ディスクに配置可能であり、装置サイズを大きくすることなく試薬搭載数を増やし、サイクルの時間を短くして処理能力が高い自動分析装置が実現可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液等の成分を自動的に分析する自動分析装置に係り、特により多くの試薬を搭載でき、かつ時間あたりの処理能力の高い自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の生体試料を自動的に分析し、結果を出力する自動分析装置は、患者数の多い大病院,中小病院,医院から検査を請け負い検査を行う検査センターなどにおいて効率良く分析を行うのになくてはならない装置になっている。
【0003】
そのような自動分析装置は、コンパクトでより多種類の分析ができ、かつ処理速度の高いものが望まれており、従来種々のものが提案されている。例えば特開平5−10957号公報には同心円状に試薬を載置可能にした試薬ディスクを2つ設け、かつ同心円状の各試薬容器列に対応して独立して可動可能な試薬プローブを設けた自動分析装置が開示されている。すなわち、試薬ディスクを同心円状に配置することにより、試薬の搭載可能数を多くし、かつ試薬プローブを各試薬容器列に対応して独立して可動可能に設けることにより、処理速度の低下を防ごうというものである。
【0004】
【特許文献1】特開平5−10957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特開平5−10957号公報に記載の技術では1つの試薬ディスク上の試薬容器列にアクセスする複数の試薬プローブは同一の回転軸を中心にして動作する構造となっている。
【0006】
この場合、同一試薬ディスク上の試薬容器からの試薬は反応ディスク上の同一の分注位置にある反応容器にしか分注することができない。また、異なる試薬ディスク上の試薬容器からの試薬は反応ディスク上の異なる位置にしか分注することができない。
【0007】
すなわち、試薬容器の配置で規定された組み合わせの試薬しか吸引できず、ランダムな組み合わせの分析を高処理能力で行うことができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、試薬ディスク上の試薬の配置の自由度が高く、かつ多くの数の試薬を搭載し、時間あたりの処理能力の高い自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題解決手段は次の通りである。
【0010】
複数の試薬容器を周上に配置する試薬ディスクと、複数の反応容器を周上に配置する反応ディスクと、を備え、前記試薬容器に収容された試薬と試料を前記反応容器中で反応させ、該反応を分析する機構を備えた自動分析装置において、前記試薬ディスクを複数備え、更に前記試薬容器から吸引した試薬を反応容器に吐出する試薬分注プローブを備え、前記試薬プローブは前記複数の試薬ディスク上の各々の試薬容器から吸引した試薬を反応ディスク上の同一の分注位置で反応容器に吐出可能であるように配置されている自動分析装置。これは下記の通り言い換えることができる。
【0011】
複数の試薬容器を周上に配置する試薬ディスクと、複数の反応容器を周上に配置する反応ディスクと、を備え、前記試薬容器に収容された試薬と試料を前記反応容器中で反応させ、該反応を分析する機構を備えた自動分析装置において、前記試薬ディスクを複数備え、かつ前記複数の試薬ディスクのそれぞれの周上に配置された異なる試薬容器から、前記反応ディスク上の同一の反応容器へ該反応ディスクを動かすことなく試薬の分注が可能な試薬分注プローブを備えた自動分析装置。「反応ディスク上の同一の反応容器へ反応ディスクを動かすことなく試薬の分注が可能」とは反応ディスク上の同じ分注位置に分注が可能であるということを言い換えたものであり、反応ディスクが動かないように固定されていることを意味するのではない。試薬ディスク,反応ディスクと表現しているが必ずしも円板状である必要はない。そのため「ディスクの周上」という表現を用いているが、円板状のディスクの場合は円周上と読み替えることができる。また、円板状のディスクの円周上に試薬容器を配列し、円板を回転させることにより試薬容器を移動させても良いし、クローズドループのベルトコンベアの上に試薬容器を載置し、ベルトを駆動させることにより試薬容器を移動させても良い。その場合は、試薬容器の移動軌跡は円周状でなくてもよく、自由な形状の移動軌跡を設定することが可能になる。
【0012】
また、複数の試薬ディスクのそれぞれの円周上に配置された異なる試薬容器から、前記反応ディスク上の複数の反応容器へ該反応ディスクを動かすことなく試薬の分注が可能であり、独立して動作可能な前記複数の反応容器のそれぞれに対応した複数の試薬分注プローブを備えた自動分析装置の構成であっても良い。「反応ディスク上の複数の反応容器へ試薬の分注が可能」とは、試薬分注位置が複数あることと同義である。すなわち、複数の試薬分注位置のそれぞれに対して試薬分注プローブを備えることを意味する。
【0013】
また、前記試薬分注プローブは前記複数の試薬ディスクの間を結ぶレールに沿って往復動が可能な移動機構を備えても良い。レールは複数の試薬ディスク上の試薬容器から試薬の吸引ができれば良く、その形状は直線的であっても、湾曲していても良い。また試薬分注プローブの移動機構はレールに沿って試薬分注プローブが移動できれば何でも良く、例えば上方に架設したレールにそってモータを取り付けた分注プローブがぶら下がっている構造、下方に架設したレール上を試薬分注プローブが走る構造でも良い。
【0014】
また、レールに沿って往復動が可能な試薬分注プローブは複数設けられても良いし、該レールが複数設けられていても良い。1つのレールに設けられる試薬分注プローブの数は試薬ディスクの数と同数であることが望ましい。試薬分注プローブの数が多くても、分注プローブの動作が互いに干渉するためである。レールの数は多いほうが高速処理が可能であるが、多すぎても試薬分注動作のための試薬ディスク停止時間が長くなる等の問題が生じるので、搭載する試薬の種類,数,処理能力等に応じて適宜選択することが望ましい。
【0015】
また、複数の試薬ディスクの少なくとも1つは前記反応ディスクの内側に中心軸を同じにして設けられていることが好ましい。分析装置のコンパクト化のためには、スペース効率を上げる必要がある。例えば、反応ディスクをリング状にし、該リングの内側に円板状の試薬ディスクを設けることにより、スペース効率を向上させることができる。もちろん試薬ディスクを同心円状に配置することもできる。反応ディスクと試薬ディスクの中心軸を同じにする方が機械的な構造は簡単になるが、必要に応じて中心軸をずらして設けることももちろん可能である。
【0016】
また、試薬分注プローブの少なくとも1つは、前記レールにほぼ垂直方向に往復動可能な移動機構を備えていても良い。上記構成は試薬分注プローブの機構は複雑になるが、一方、アクセスできる試薬容器位置の範囲は広くなるので分析の自由度は向上する。この機構を設けるかどうかは必要に応じて取捨選択されるべきものである。
【0017】
また、試薬容器が同一の分析項目に使用される第1試薬と第2試薬の双方を1つのパッケージに収納可能で、パッケージごとに交換可能な構成を備えても良い。
【発明の効果】
【0018】
以上に示したように、本発明においては第1試薬と第2試薬を搭載する試薬ディスクを2つもち、1回のサイクル中にそれぞれの試薬ディスクから1本の試薬プローブでのみ試薬を吸引するので、多くの試薬を搭載し、時間あたりの処理能力の高い自動分析装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1実施例の斜視図であり、図2は上面図である。筐体62上の反応ディスク36には54個の反応容器35が円周上に並んでいる。反応ディスク36の内側に試薬ディスク42が、外側に試薬ディスク41が配置されている。試薬ディスク41,42にはそれぞれ複数の試薬容器40が円周上に載置可能である。1つの試薬容器40には2つの試薬が入る。反応ディスク36の近くにサンプル容器10を載せたラック11を移動する搬送機構12が設置されている。試薬ディスク41と試薬ディスク42の上にレール25,26が配置され、レール25にはレールと平行な方向および上下方向に移動可能な試薬プローブ20,21が、レール26にはレールと3軸方向に移動可能な試薬プローブ22,23が設置されている。試薬プローブ20,21,22,23はそれぞれ試薬用ポンプ24と接続している。反応容器35と搬送機構12の間には、回転及び上下動可能なサンプルプローブ15,16が設置されている。サンプルプローブ15,16はそれぞれサンプル用ポンプ14に接続している。36の周囲には、攪拌装置30,31,光源50,検出光学装置51,容器洗浄機構45が配置されている。容器洗浄機構45は洗浄用ポンプ46に接続している。サンプルプローブ15,16,試薬プローブ20,21,22,23,攪拌装置30,31のそれぞれの動作範囲に洗浄ポート54が設置されている。サンプル用ポンプ14,試薬用ポンプ24,洗浄用ポンプ46,検出光学装置51,反応容器35,試薬ディスク41,試薬プローブ20,21,22,23,サンプルプローブ15,16はそれぞれコントローラ60に接続している。
【0020】
反応ディスク36には図3に示したようにサンプル分注位置,第1タイミング試薬分注位置,第2タイミング試薬分注位置,第3タイミング試薬分注位置,攪拌位置,測定位置,洗浄位置が決められている。また反応ディスクは定められたサイクル時間を単位として11ピッチずつ半時計回りに回転して停止する。すなわちあるサイクルで1の位置にあった反応容器は次のサイクルでは2の位置に進む。
【0021】
この装置を用いての分析は次の手順で行われる。
【0022】
サンプル容器10には血液等の検査対象の試料が入れられ、ラック11に載せられて搬送機構12によって運ばれる。まず、サンプルプローブ15が特定位置にあるサンプル容器10から1番目のテストに必要な量の試料を吸引する。1番目のサイクルで、反応ディスク上1の位置にある反応容器35にサンプルプローブ15から所定の量の試料を吐出する。その間に試薬プローブ20は試薬ディスク41上の1つの試薬容器40から、1番目のテストに対応する第1試薬を所定量吸引する。
【0023】
2番目のサイクルでは当該反応容器は反応ディスク上2の位置に進む。ここで、試薬プローブ20は第1試薬を所定量当該反応容器に吐出する。その間にサンプルプローブ15は洗浄される。
【0024】
3番目のサイクルでは、当該反応容器は反応ディスク上3の位置で、攪拌装置30により試薬と試料が攪拌される。その間に試薬プローブ20は洗浄される。
【0025】
4番目のサイクルでは、当該反応容器が反応ディスク上4の位置に回転する最中に光源50と検出光学装置51の間を通過し、光学的な測定が行われる。反応ディスクの回転中に攪拌装置30は洗浄ポート54で洗浄される。
【0026】
9番目,14番目,19番目,24番目,29番目,34番目,39番目のサイクルでも同様に光学的な検出が行われる。
【0027】
1番目のテストが第2試薬を第2タイミングで分注するものである場合は、16番目のサイクルで試薬プローブ22が試薬ディスク41上の試薬容器40から第2試薬を吸引し、17番目のサイクルで反応ディスク上17の位置にある当該反応容器に吐出する。18番目のサイクルで攪拌装置31により反応ディスク上18の位置にある当該反応容器内の液を攪拌する。その間に試薬プローブ22を洗浄する。
【0028】
1番目のテストが第2試薬を第3タイミングで分注するのものである場合は、26番目のサイクルで試薬プローブ22が試薬ディスク41上の試薬容器40から第2試薬を吸引し、27番目のサイクルで反応ディスク上27の位置にある当該反応容器に吐出する。28番目のサイクルで攪拌装置31により反応ディスク上28の位置にある当該反応容器内の液を攪拌する。その間に試薬プローブ22を洗浄する。
【0029】
第2試薬を分注して攪拌してから光学的測定を繰り返した後、44番目のサイクルおよび49番目のサイクルで反応ディスク上44または49の位置で容器洗浄機構45により当該反応容器の液を吸引して洗浄液を注入する。また、54番目のサイクルで洗浄液を完全に吸引する。
【0030】
検出光学装置51で複数回行われた光学的測定結果はコントローラ60に送られて、1番目のテストの測定項目の濃度を計算される。
【0031】
2番目のテストは、まず1番目のサイクル中にサンプルプローブ16で特定位置にあるサンプル容器10から2番目のテストに必要な量の試料を吸引する。2番目のサイクルで、反応ディスク上1の位置にある反応容器35にサンプルプローブ16から所定の量の試料を吐出する。その間に試薬プローブ21は試薬ディスク42上の1つの試薬容器40から、2番目のテストに対応する第1試薬を所定量吸引する。
【0032】
3番目のサイクルでは当該反応容器は反応ディスク上2の位置に進む。ここで、試薬プローブ21は第1試薬を所定量当該反応容器に吐出する。その間にサンプルプローブ16は洗浄される。
【0033】
4番目のサイクルでは、当該反応容器は反応ディスク上3の位置で、攪拌装置30により試薬と試料が攪拌される。その間に試薬プローブ21は洗浄される。
【0034】
5番目のサイクルでは、当該反応容器が反応ディスク上4の位置に回転する最中に光源50と検出光学装置51の間を通過し、光学的な測定が行われる。反応ディスクの回転中に攪拌装置30は洗浄ポート54で洗浄される。
【0035】
10番目,15番目,20番目,25番目,30番目,35番目,40番目のサイクルでも同様に光学的な検出が行われる。
【0036】
2番目のテストが第2試薬を第2タイミングで分注するのものである場合は、17番目のサイクルで試薬プローブ23が試薬ディスク42上の試薬容器40から第2試薬を吸引し、18番目のサイクルで反応ディスク上18の位置にある当該反応容器に吐出する。19番目のサイクルで攪拌装置31により反応ディスク上18の位置にある当該反応容器内の液を攪拌する。その間に試薬プローブ23を洗浄する。
【0037】
2番目のテストが第2試薬を第3タイミングで分注するのものである場合は、27番目のサイクルで試薬プローブ23が試薬ディスク42上の試薬容器40から第2試薬を吸引し、28番目のサイクルで反応ディスク上27の位置にある当該反応容器に吐出する。29番目のサイクルで攪拌装置31により反応ディスク上28の位置にある当該反応容器内の液を攪拌する。その間に試薬プローブ23を洗浄する。
【0038】
第2試薬を分注して攪拌してから光学的測定を繰り返した後、45番目のサイクルおよび50番目のサイクルで反応ディスク上44または49の位置で容器洗浄機構45により当該反応容器の液を吸引して洗浄液を注入する。また、55番目のサイクルで洗浄液を完全に吸引する。
【0039】
検出光学装置51で複数回行われた光学的測定結果はコントローラ60に送られて、2番目のテストの測定項目の濃度を計算される。
【0040】
3番目のテストでは、1番目のテストを同じ工程を2サイクル遅れて繰り返す。4番目のテストでは、2番目のテストと同じ工程を2サイクル遅れて繰り返す。以下順次同様の工程が繰り返され、複数のテストにおいて試料中の測定項目の濃度が分析される。
【0041】
この実施例においては、奇数番目のサイクルにおいて試薬ディスク41からは奇数番目のサイクルに試薬プローブ20が、偶数番目のサイクルに試薬プローブ22がアクセスして試薬を吸引するので、同じサイクルに2つのプローブが同時にアクセスすることがない。同様に試薬ディスク42には奇数番目のサイクルには試薬プローブ23が、偶数番目のサイクルには試薬プローブ21がアクセスして試薬を吸引するので、同じサイクルに同時に2つのプローブがアクセスすることがない。従ってサイクルの時間を短くし、一定時間に分析できる数を増やすことができる。
【0042】
また、1回のサイクル中にそれぞれの試薬ディスクから1つの試薬プローブのみが試薬を吸引するため、試薬を吸引する時間や、プローブを移動する時間を長く取ることができ、安定して精度の高い試薬分注が可能である。
【0043】
また、2つの試薬ディスクは独立に回転可能であり、1回のサイクル中にそれぞれの試薬ディスクから1つの試薬プローブのみが試薬を吸引するため、同時に吸引する試薬の組み合わせが自由に選択でき、分析項目が不規則な組み合わせでも対応できる処理能力の高い分析が可能である。
【0044】
また、この実施例の場合は、奇数番目のテストに用いる試薬を第1試薬,第2試薬共に試薬ディスク41から吸引し、偶数番目のテストに用いる試薬を第1試薬,第2試薬共に試薬ディスク42から吸引するため、同じ検査項目に用いる第1試薬と第2試薬を同じ側の試薬ディスクに入れておくことができる。そのため、試薬交換を同じ側の試薬ディスクに対して行えばよく、試薬交換の手間が省け、間違いも少なくなる。
【0045】
また、この実施例の場合は、試薬容器40に2つの試薬を入れておけるので、1つの検査項目に対応する第1試薬と第2試薬を1つの試薬容器40に入れておくことができ、1度に第1試薬と第2試薬を交換できるので、試薬交換の手間が省け、間違いも少なくなる。
【0046】
また、この実施例の場合は、反応ディスク36上の第1タイミング試薬供給位置には偶数番目のサイクルに試薬プローブ20が、奇数番目のサイクルに試薬プローブ21がアクセスして第1試薬を吐出するので、1つのサイクル内に2つのプローブがアクセスすることがない。同様に、反応ディスク36上の第2タイミング試薬供給位置および第3タイミング試薬供給位置には、奇数番目のサイクルには試薬プローブ22、偶数番目のサイクルには試薬プローブ23がアクセスして第2試薬を吐出するので、1つのサイクル内に2つのプローブがアクセスすることがない。また、第1タイミング試薬吐出位置と第2タイミング試薬吐出位置および第3タイミング試薬吐出位置は離れているため、それぞれの位置へのプローブがアクセスが同時に行うことができる。したがって、サイクル内に試薬の吐出に要する時間を1回分のみ取ればよく、サイクル時間を短くして、一定時間内に分析できる数を増やすことができる。
【0047】
また、1回のサイクル内に試薬を同じ位置に1つのプローブのみが試薬を吐出するので、吐出にかけられる時間を長くでき、再現性が高く、精度の高い吐出ができる。したがって分注される試薬の量の精度が高く、精度の高い分析が可能である。
【0048】
またこの実施例の場合は、試薬プローブ20と試薬プローブ23は奇数番目のサイクルに試薬を吸引して偶数番目のサイクルに試薬を吐出し、試薬プローブ21と試薬プローブ22は偶数番目のサイクルに試薬を吸引して奇数番目のサイクルに試薬を吐出するので、それぞれのプローブは2回のサイクルの時間の中で試薬の吸引,吐出,洗浄を行えばよく、動作時間を余裕を持たせて安定した動作をさせることができる。
【0049】
また、それぞれの試薬プローブの動作時間を長く取れるので、プローブの移動範囲を長く取れ、その結果試薬ディスクを大きくすることができ、多くの種類の検査に必要な試薬を同時に試薬ディスクに搭載しておくことができる。
【0050】
また、この実施例の場合は、試薬プローブ20と試薬プローブ21の吐出位置が一致しているため、どちらのプローブで第1試薬を吐出した場合でも等価なタイミングでの分注が可能であり、等しい条件での反応仮定の分析が可能である。
【0051】
また、この実施例の場合は、試薬プローブ22と試薬プローブ23がレール26に対して直交した方向に移動することができ、共通の第2タイミング試薬位置および第3タイミング試薬位置にアクセスして第2試薬を吐出することができるので、第2試薬の混合タイミングが異なる複数の種類の反応を分析することができ、分析可能な項目の種類を増やすことができる。
【0052】
また、試薬プローブ22と試薬プローブ23の吐出位置が共通しているので、等価な条件での分析が可能である。
【0053】
また、試薬プローブ20と試薬プローブ21が共通のレール25上にあり、試薬プローブ22と試薬プローブ23が共通のレール26上にあることからプローブの設置面積が少なくてすみ、装置のコンパクト化が可能である。
【0054】
また、試薬ディスク41と試薬ディスク42は、反応ディスク上の試薬吐出位置をはさんで、反応ディスク36の外側と内側にあるために、2つの試薬ディスク間の距離が短く設置でき、2つの反応ディスクと試薬吐出位置の上部に設置するレール25,26が短くてすみ、装置のコンパクト化が可能である。
【0055】
また、試薬ディスク41と試薬ディスク42が近接して設置してあるため、共通した試薬吐出位置までの距離が短く、試薬プローブの移動距離が短くてすみ、サイクル時間を短くして一定時間に分析できる数を増やすことができる。
【0056】
また、この実施例の場合は、サンプルプローブ15とサンプルプローブ16が交互に試料吸引と試料吐出を繰り返すために、1つのサイクルにはサンプル容器10と反応容器35にそれぞれ1つのサンプルプローブしかアクセスしないため、サイクルの時間を短くし、一定時間に分析できる数を増やすことができる。
【0057】
また、サンプルプローブ15,サンプルプローブ16のそれぞれは2つのサイクルで試料の吸引と吐出と洗浄を行えばよいので、余裕を持った時間で分注とプローブ移動が行え、分注量の精度を高くすることができ、分析精度を高くすることが可能である。
【0058】
また、この実施例の場合には、サンプルプローブ15で分注を行ったテストに対しては、第1試薬は試薬ディスク41上から試薬プローブ20で分注し、第2試薬は試薬ディスク41から試薬プローブ22で分注される。サンプルプローブ16で分注を行ったテストに対しては、第1試薬は試薬ディスク42上から試薬プローブ21で分注し、第2試薬は試薬ディスク42から試薬プローブ23で分注される。したがってサンプルプローブ15,試薬ディスク41,試薬プローブ20,試薬プローブ22が第1のセット,サンプルプローブ16,試薬ディスク42,試薬プローブ21,試薬プローブ23が第2のセットとなり、別のセットと組み合わされることはない。したがって、試薬ディスク41に配置した試薬に対応する分析項目に対しては、サンプルプローブ15,試薬プローブ20,試薬プローブ22を用いたキャリブレーションのみが必要であり、試薬ディスク42に配置した試薬に対応する分析項目に対しては、サンプルプローブ16,試薬プローブ21,試薬プローブ23を用いたキャリブレーションのみが必要である。それぞれのセットでのキャリブレーションのみが必要なので、キャリブレーションの回数を少なくして試薬と時間の無駄を省くことができ、プローブ間の特性の違いによる分析結果の差の発生をなくすこと
ができる。
【0059】
また、仮に試薬分注の第1タイミングと、第2または第3のタイミングが偶数サイクル分ずれていたら、第1試薬と第2試薬を1つのサイクル中に同じサイクルから吸引しなければならなくなるが、本実施例の場合は、試薬分注の第1タイミングと、第2または第3のタイミングが奇数サイクル分ずれているため、第1試薬と第2試薬を吸引する試薬ディスクが交互に繰り返される。
【0060】
本実施例の場合は、反応容器35数が54個であり1サイクルで反応容器が11ピッチ分回転するので、5サイクルで反応容器は1周プラス1ピッチ分回転する。したがって、反応ディスク上のある位置にある反応容器が、1ピッチ隣り合った位置に移動するのは5サイクル後になる。これがもし偶数サイクルで反応容器が1周プラス1ピッチ分回転するように構成されている場合は、1ピッチ隣り合った位置に移動するのが偶数サイクル後ということになる。その場合は、偶数サイクル分ずつの時間差で移動される位置が連続することになる。その場合、第1試薬を分注するタイミングと第2試薬を分注するタイミングを偶数サイクルと奇数サイクルとに分けようとすると、吐出位置が遠く離れてしまい、試薬プローブを離れた位置に設置する必要がある。本実施例では奇数サイクルで反応容器が1周プラス1ピッチ分回転するように構成している為、第1試薬と第2試薬の吐出位置を近くに設置でき、装置を小型に構成可能である。これは、奇数サイクルで反応容器が1周マイナス1ピッチ分回転するように構成しても同じ効果が得られる。
【0061】
また、本実施例の場合は、奇数サイクルで反応容器位置が1ピッチ分ずれるように構成されるため、検出光学装置51の測定位置を加速状態または減速状態で通過するために測定ができない反応容器の列が連続したタイミングとなる。この連続したタイミングを反応過程の測定に関係のない、反応容器洗浄のタイミングに合わせることができるので、反応過程には測定が欠如するタイミングがない連続した分析ができ、短時間で反応する項目から長時間で反応する項目まで広い種類の項目の分析が可能である。
【0062】
別の使用形態では、図1,図2,図3と同様な構成の装置において、1サイクルごとに反応ディスク36が時計回りに43ピッチ分回転する。この場合でも反応ディスク上1の位置にあった反応容器は次のサイクルでは反応ディスク上2の位置に移動する。この場合は、5サイクルのうち4回検出光学装置51の位置を通過するので、測定回数が多くなり、分析の精度を高くすることができる。
【0063】
図4は本発明の第2実施例の試薬ディスクである。この場合試薬ディスク41には試薬容器40が二重円周上に配置される。試薬ディスク42にも同様に配置される。この実施例の場合は、小さな試薬ディスクに多くの試薬を配置できるので、装置のサイズを大きくすることなく分析できる項目数を多くすることができる。
【0064】
図5は本発明の第3実施例の試薬ディスクである。この場合試薬容器40は扇形の形状をしており、1つの容器に1種類の試薬が入れられる。試薬ディスク41と試薬ディスク42の両方にこの形の試薬容器が入る。この実施例の場合は、試薬容器を円周上に配置したときの隙間が小さく取れるので、個々の試薬容器の容量を大きくすることができ、試薬を交換しないでできる分析数を多くすることができる。また装置のサイズを大きくすることなく分析できる項目数を多くすることができる。
【0065】
図6は本発明の第4実施例の上面図である。図2と異なるのは、サンプルプローブ15とサンプルプローブ16が隣り合った位置の反応容器に吐出すること、試薬プローブ20と試薬プローブ21が隣り合った位置の反応容器に吐出すること、試薬プローブ22と試薬プローブ23が隣り合った位置の反応容器に吐出すること、攪拌装置30および攪拌装置31はそれぞれ2つの攪拌棒を持ち、隣り合う2つの反応容器内の液を同時に攪拌することである。
【0066】
この実施例は次のように動作する。サンプルプローブ15とサンプルプローブ16は同時にサンプル容器10内の試料を吸引し、反応ディスク36上の隣り合った位置の反応容器に試料を吐出する。次のサイクルで、試薬プローブ20と試薬プローブ21がそれぞれの反応容器に対応する第1試薬を吐出する。次のサイクルで攪拌装置30がそれぞれの反応容器内の液を同時に攪拌する。その後光学的測定を何度か繰り返した後、試薬プローブ22と試薬プローブ23がそれぞれの反応容器に第2試薬を吐出する。
【0067】
この実施例では、2つの反応容器で行うテストに関わる試料,試薬の吐出を隣り合う反応容器で同時に行うため、一定時間に可能な分析の数を増やすことができる。
【0068】
また、この実施例では、2つのサンプルプローブによる試料吐出、および2組の試料プローブによる第1試薬吐出,第2試薬吐出を、ごく近傍である隣り合った反応容器位置で行うため装置サイズをコンパクト化できる。
【0069】
また、この実施例では、サンプルプローブ15で分注するテストに関する第1試薬と第2試薬を試薬ディスク41内に、サンプルプローブ16で分注するテストに関する第1試薬と第2試薬を試薬ディスク42内に、それぞれまとめて配置しておけるので、試薬の交換が単純化され、間違えることがない。
【0070】
図7は本発明の第5実施例の上面図である。図2と異なるのは、サンプルプローブ,レール25上の試薬プローブおよびレール26上の試薬プローブがそれぞれ1本であることである。
【0071】
この実施例は次のように動作する。サンプル容器10中の試料はサンプルプローブ15で反応ディスク36上の反応容器35に分注される。偶数番目のサイクルには、試薬プローブ20が試薬ディスク41上から試薬を吸引して反応容器に吐出し、試薬プローブ22が試薬ディスク42上から試薬を吸引して反応容器に吐出する。奇数番目のサイクルには、試薬プローブ20が試薬ディスク42上から試薬を吸引して反応容器に吐出し、試薬プローブ22が試薬ディスク41上から試薬を吸引して反応容器に吐出する。第1タイミング試薬吐出位置と第2または第3タイミング試薬吐出位置は奇数サイクル分離れているため、1つのテストに対応する第1タイミング試薬と第2または第3タイミング試薬は必ず同じ側の試薬ディスクから供給される。
【0072】
この実施例の場合は、試薬プローブ20および試薬プローブ22が試薬ディスク41および試薬ディスク42の両方から試薬を吸引するので、試薬プローブの数が少なくてすみ、装置の低価格化が可能である。
【0073】
またこの実施例の場合は、試薬ディスク41に配置した試薬を用いる分析と試薬ディスク42に配置した試薬を用いる分析を共通した試薬プローブ及びサンプルプローブで行うために、プローブの特性に左右されずに再現性の高い分析結果が得られる。
【0074】
またこの実施例の場合には、各サイクル中にそれぞれの試薬ディスクから行われる吸引が1本の試薬プローブのみなので、サイクル時間を短く取れ、一定時間中に分析可能な数を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施例の分析装置の斜視図。
【図2】第1実施例の分析装置の上面図。
【図3】第1実施例の主要部分の説明図。
【図4】第2実施例の試薬ディスクの構成図。
【図5】第3実施例の試薬ディスクの構成図。
【図6】第4実施例の分析装置の上面図。
【図7】第5実施例の分析装置の上面図。
【符号の説明】
【0076】
10…サンプル容器、11…ラック、12…搬送機構、14…サンプル用ポンプ、15,16…サンプルプローブ、20,21,22,23…試薬プローブ、24…試薬用ポンプ、25,26…レール、30,31…攪拌装置、35…反応容器、36…反応ディスク、40…試薬容器、41,42…試薬ディスク、45…容器洗浄機構、46…洗浄用ポンプ、50…光源、51…検出光学装置、54…洗浄ポート、60…コントローラ、62…筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬容器を周上に配置する試薬ディスクと、
複数の反応容器を周上に配置する反応ディスクと、
を備え、前記試薬容器に収容された試薬と試料を前記反応容器中で反応させ、該反応を分析する機構を備えた自動分析装置において、
前記試薬ディスクは第一と第二の2つのディスクからなり、
該試薬ディスクに配置された試薬容器から吸引した試薬を反応容器に吐出する試薬分注プローブと、を備え、
奇数番目のサイクルにおいて第一の試薬ディスクに配置された試薬容器から前記反応ディスク上の反応容器へ試薬を分注し、
偶数番目のサイクルにおいて第二の試薬ディスクに配置された試薬容器から前記反応ディスク上の反応容器へ試薬を分注するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記2つの試薬ディスクは独立に回転可能であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動分析装置において、
奇数番目のテストに用いる試薬を第1試薬,第2試薬共に前記第一の試薬ディスクから分注し、
偶数番目のテストに用いる試薬を第1試薬,第2試薬共に前記第二の試薬ディスクから分注するように前記制御手段が制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の自動分析装置において、
前記試薬容器は第1試薬,第2試薬を収容するものであることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−64769(P2008−64769A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302491(P2007−302491)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【分割の表示】特願2006−293464(P2006−293464)の分割
【原出願日】平成14年7月10日(2002.7.10)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】