説明

自動分析装置

【課題】 被検試料から蒸発した成分による汚染を防ぐことが可能な自動分析装置を提供する。
【解決手段】 ダクト64の他端部に配置され、分析部カバー19を閉じると分析制御部30の制御部32から出力される制御信号に基づいてファン65が作動し、サンプラ部6外の空気を吸引開口部68からサンプラ部6内に吸気する。更に、その吸気した空気や、サンプラ部6内の試料容器17から蒸発したサンプルの蒸発成分を含む空気をダクト64を介して吸気し、吸気した空気や蒸発成分を外部に排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検試料の成分を分析する自動分析装置に係り、特に、ヒトの血液や尿などの体液中に含まれる成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目などを対象とし、反応容器に分注した被検体から採取した被検試料と、分析を行う測定項目に該当する試薬との混合液の反応によって生ずる色調などの変化を、光の透過量を測定することにより、被検試料中の様々な成分の濃度や酵素の活性を測定する。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料毎に分析条件の設定により測定可能になった多数の項目の中から、検査に応じて選択された測定項目の測定が行われる。そして、被検試料及び測定項目に該当する試薬は、サンプル及び試薬分注プローブで反応容器に分注され、反応容器に分注された被検試料及び試薬の混合液は撹拌子で撹拌され、撹拌された混合液は測光部で測定される。更に、サンプル及び試薬分注プローブ、反応容器、撹拌子などの分析ユニットは、洗浄された後に繰り返し測定に使用される。
【0004】
ところで、測定項目の標準試料及び被検試料などのサンプルを収容した試料容器や測定項目の試薬を収容した試薬ボトルを、サンプラ部や試薬庫に収納した後、高速で作動する分析ユニットへの接触による危険から装置の操作者の安全を確保するために、試料容器、試薬ボトル、分析ユニットなどを覆うカバーを閉じてから測定を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−227797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カバーを閉じた状態で測定を行うと、被検試料に例えば尿及び血清が含まれ、血清にアンモニアの測定項目が含まれている場合、サンプラ部の試料容器内の尿から蒸発した多量のアンモニアがカバーの内側で滞留し、この滞留したアンモニアによって反応容器内のアンモニアを測定する血清の混合液などが汚染される。これにより、その混合液の分析データが悪化する問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、サンプルから蒸発した成分による汚染で分析データが悪化するのを防ぐことが可能な自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る本発明の自動分析装置は、被検試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記被検試料を試料容器から吸引して前記反応容器に吐出するサンプル分注プローブと、前記サンプル分注プローブが前記試料容器から被検試料を吸引するための開口部を備えた前記試料容器を収容するサンプラ部と、前記反応容器、前記サンプル分注プローブ、及び前記開口部を覆う分析部カバーと、前記サンプラ部内を前記自動分析装置外部と連通させて、前記サンプラ部内の空気を排気する排気手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る本発明の自動分析装置は、被検試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記被検試料を試料容器から吸引して前記反応容器に吐出するサンプル分注プローブと、前記サンプル分注プローブが前記試料容器から被検試料を吸引するための開口部を備えた前記試料容器を収容するサンプラ部と、前記反応容器の近傍に位置して前記自動分析装置外部の空気を吸気するための吸気口と、前記開口部の近傍に位置して内部の空気を排気するための排気口と、前記反応容器、前記サンプル分注プローブ、及び前記開口部を覆う分析部カバーと、前記吸気口から吸気した空気を前記排気口から排気する排気手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
更に、請求項8に係る本発明の自動分析装置は、被検試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記被検試料を試料容器から吸引して前記反応容器に吐出するサンプル分注プローブと、前記サンプル分注プローブが前記試料容器から被検試料を吸引するための第1の開口部を備えた前記試料容器を収容するサンプラ部と、前記自動分析装置外部の空気を吸気するための吸気口を備え且つ前記反応容器の上面開口部を覆う反応容器カバーと、前記反応容器、前記サンプル分注プローブ、及び前記第1の開口部を覆う分析部カバーと、前記吸気口から外部の空気を吸気して前記反応容器カバー内に送給する送給手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、試料容器から蒸発したサンプルの蒸発成分が反応容器の近傍に拡散するのを防ぎ、精度よく測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明による自動分析装置の実施例1を、図1乃至図4を参照して説明する。
図1は、実施例1に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各項目の標準試料や被検体から採取された血清及び尿などの被検試料の測定を行う分析ユニットを有する分析部18と、分析部18における各分析ユニットの測定動作の制御を行う分析制御部30と、標準試料や被検試料の測定により分析部18から出力された標準試料データや被検試料データを処理して検量線の作成や分析データの生成を行うデータ処理部40とを備えている。
【0013】
また、自動分析装置100は、データ処理部40で作成された検量線や生成された分析データを出力する出力部50と、各項目の標準試料や検量線に関する分析条件の入力や、各種コマンド信号の入力などを行う操作部70と、分析制御部30、データ処理部40、及び出力部50を統括して制御するシステム制御部80とを備えている。
【0014】
図2は、分析部18の構成の詳細を示した図である。この分析部18は、標準試料や被検試料のサンプルを収容した試料容器17及びこの試料容器17を保持するディスクサンプラ61等を有するサンプラ部6と、サンプルに含まれる各項目の成分に対して選択的に反応する第1試薬や第1試薬と対をなす第2試薬が入った試薬ボトル7とを備えている。
【0015】
また、試薬ボトル7を収納する試薬ラック1と、第1試薬の入った試薬ボトル7を収納した試薬ラック1を収納する試薬庫2と、第2試薬の入った試薬ボトル7を収納した試薬ラック1を収納する試薬庫3と、吐出されたサンプル及び試薬を収容する上側が開口した反応容器4及び円周上に複数の反応容器4を保持する反応ディスク53等を有する反応部5とを備えている。そして、試薬庫2、試薬庫3、及びディスクサンプラ61は夫々回動し、反応ディスク53は回転して分析制御部30により制御された位置に停止する。
【0016】
更に、試料容器17からサンプルを吸引して反応容器4に吐出する分注動作を行うサンプル分注プローブ16と、試薬庫2,3の試薬ボトル7から第1及び第2試薬を吸引して反応容器4に吐出する分注動作を行う第1及び第2試薬分注プローブ14,15と、第1試薬分注プローブ14、第2試薬分注プローブ15、及びサンプル分注プローブ16を夫々回動及び上下動可能に保持する第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、及びサンプル分注アーム10とを備えている。
【0017】
更にまた、反応容器4内に吐出されたサンプル及び第1試薬からなる混合液や、サンプル、第1試薬、及び第2試薬からなる混合液を撹拌する撹拌ユニット11と、混合液を収容した反応容器4を測定する測光ユニット13と、反応容器4内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応容器4内を洗浄・乾燥する洗浄ユニット12と、前述した各分析ユニットを支持する支持体20と、開閉自在に各分析ユニットを覆うための分析部カバー19とを備えている。
【0018】
測光ユニット13は、回転移動する反応容器4に光を照射して、標準試料を含む混合液を透過した光を吸光度に変換して標準試料データを生成した後、データ処理部40に出力する。また、被検試料を含む混合液を透過した光を吸光度に変換して被検試料データを生成した後、データ処理部40に出力する。
【0019】
そして、測定後の反応容器4、サンプル分注プローブ16、第1及び第2試薬分注プローブ14,15、撹拌ユニット11などの各分析ユニットは、洗浄された後、再び測定に使用される。
【0020】
分析制御部30は、分析部18の各分析ユニットを駆動する機構を備えた機構部31と、機構部31の各機構を制御する制御部32とを備えている。機構部31は、試薬庫2、試薬庫3、及びサンプラ部6のディスクサンプラ61を夫々回動する機構、反応部5の反応ディスク53を回転する機構、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、及び撹拌ユニット11を夫々回動及び上下移動する機構、洗浄ユニット12を上下移動する機構等を備えている。
【0021】
図1のデータ処理部40は、分析部18から出力された標準試料データや被検試料データから検量線の作成や分析データの生成を行う演算部41と、演算部41で作成された検量線や生成された分析データなどを保存する記憶部42とを備えている。
【0022】
演算部41は、分析部18の測光ユニット13から出力された各項目の標準試料データから検量線を作成して記憶部42に保存すると共に出力部50に出力する。また、分析部18の測光ユニット13から出力された各項目の被検試料データに対して、その項目の検量線を記憶部42から読み出し、その読み出した検量線を用いて濃度や活性値などの分析データを生成して記憶部42に保存すると共に出力部50に出力する。
【0023】
記憶部42は、ハードディスクなどを備え、演算部41から出力された検量線を項目毎に保存し、演算部41から出力された分析データを被検試料毎に保存する。
【0024】
出力部50は、データ処理部40から出力された検量線、分析データなどを印刷出力する印刷部51及び表示出力する表示部52を備えている。そして、印刷部51は、プリンタなどを備え、データ処理部40から出力された検量線、分析データなどを予め設定されたフォーマットに基づいて、プリンタ用紙に印刷出力する。表示部52は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、各項目の標準試料や検量線などの分析条件を設定するための標準試料設定画面や検量線設定画面などの表示や、データ処理部40から出力された検量線、分析データなどの表示を行う。
【0025】
操作部70は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各項目の標準試料や検量線などの分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検体の被検試料毎の測定する項目の選択、各項目のキャリブレーション操作、被検試料測定操作などの様々な操作が行われる。
【0026】
システム制御部80は、図示しないCPUと記憶回路を備え、操作部70から供給される操作者のコマンド信号、各項目の標準試料や検量線などの分析条件、被検体情報、被検試料毎の測定項目などの情報を記憶した後、これらの情報に基づいて、分析部18を構成する各分析ユニットを一定サイクルの所定のシーケンスで測定動作させる制御、或いは検量線の作成、分析データの生成と出力に関する制御などシステム全体の制御を行なう。
【0027】
次に、図2乃至図4を参照して、分析部18におけるサンプラ部6の構成の詳細を説明する。図3は、サンプラ部6の構成の詳細を示した図である。また、図4は、図3に示したサンプラ部6を説明するために自動分析装置100の概観を示した図である。
【0028】
図3(a)は、分析部18のサンプラ部6、反応部5、支持体20、及び分析部カバー19を上から見た図である。また、図3(b)は、図3(a)に示した断面線69におけるサンプラ部6の断面を拡大して正面から見た図である。
【0029】
サンプラ部6は、サンプルを収容した試料容器17と、この試料容器17を回動可能に保持するディスクサンプラ61と、ディスクサンプラ61を収納するサンプラケース62と、サンプラケース62内の試料容器17を覆うための着脱自在のサンプラカバー63と、サンプラケース62内と自動分析装置100の外部の間を連通しているダクト64とを備えている。
【0030】
また、ダクト64を介してサンプラケース62及びサンプラカバー63内を吸気して外部に排気するファン65と、分析部カバー19を閉じたときにファン65を作動させる近接センサ66とを備えている。
【0031】
サンプラケース62は、支持体20で支持され、上側にディスクサンプラ61よりも大きな円形の開口部を形成し、底面近傍の側面の一部に吸気口67を形成している。
【0032】
サンプラカバー63は、サンプラケース62の開口部を覆うためにサンプラケース62の上側に配置され、サンプル分注プローブ16が試料容器17からサンプルの吸引が可能なように吸引開口部68を有している。
【0033】
ダクト64は、一端面がサンプラケース62の吸気口67に接合し、他端部が図4に示した自動分析装置100の外装カバー101の近傍に位置されている。
【0034】
ファン65は、ダクト64の他端部に配置され、分析部カバー19を閉じると分析制御部30の制御部32から出力される制御信号に基づいて作動し、分析部カバー19を開けると停止するようになっている。そして、分析部カバー19を閉じると、サンプラカバー63の外側の空気をサンプラカバー63の吸引開口部68からサンプラケース62及びサンプラカバー63で構成する空間内に吸気する。更に、その吸気した空気や、サンプラケース62及びサンプラカバー63内の試料容器17から蒸発したサンプルの蒸発成分を含む空気をダクト64を介して吸気し、吸気した空気や蒸発成分を排気口106から外部に排気する。
【0035】
近接センサ66は、分析部カバー19の縁部に配置された例えば磁石及び支持体20に配置されたリードスイッチにより構成される。そして、分析部カバー19を閉じたときに磁石がリードスイッチに近接してリードスイッチのリード片を動作させ、リードスイッチをONする。このスイッチONの信号が制御部32に出力される。制御部32では、近接センサ66からの信号に基づいてファン65を作動させる。
【0036】
このように、分析部カバー19を閉じたときに、ダクト64を介してサンプラ部6内の空気を外部に排気することにより、試料容器17内の蒸発しやすい成分を含むサンプルから蒸発した成分がサンプラ部6内に滞留して高濃度になるのを防ぐことができる。また、サンプラ部6内のサンプルの蒸発成分が拡散して分析部カバー19とサンプラ部6の間に滞留し、反応容器4近傍におけるサンプルの蒸発成分が高濃度になるのを防ぐことができる。
【0037】
これにより、サンプルの蒸発成分による反応容器4内の混合液や、そのサンプルを収容していない試料容器17内のサンプルの汚染を防ぐことができる。
【0038】
また、分析部カバー19を開けた状態ではサンプルの蒸発成分が外気中に拡散し、サンプラ部6内や反応容器4の近傍で滞留しないので、分析部カバー19を開けたときにファン65を停止させることにより、不用な動作を省くことができる。
【0039】
なお、サンプラカバー63がない状態で分析部カバー19を閉じても、分析部カバー19内の空気及びサンプラケース62内の試料容器17から蒸発したサンプルの蒸発成分を含む空気を、ダクト64を介して外部に排気することができる。これにより、サンプルの蒸発成分による反応容器4内の混合液や、そのサンプルを収容していない試料容器17内のサンプルの汚染を防ぐことができる。
【0040】
図4は、自動分析装置100の概観を示した図である。自動分析装置100の外面は、上側に配置された分析部18の分析部カバー19、及びこの分析部カバー19の下側に配置された外装カバー101により構成される。
【0041】
分析部カバー19は、自動分析装置100の背面側の分析部カバー19の縁部に一片が固定され、他片が分析部18の支持体20に固定された2つの蝶番20aを回動軸として、図4に示した矢印R1方向に開閉自在に支持体20に保持されている。
【0042】
外装カバー101は、自動分析装置100の操作者が操作する図示した正面側の正面カバー102、右側面カバー103、左側面カバー104、及び背面カバー105により構成されている。そして106は、右側面カバー103に設けた分析部18のサンプラ部6内の吸気された空気を外部に排気するための排気口である。
【0043】
このように、右側面カバー103に排気口106を設けることにより、サンプラ部6からのサンプルの蒸発成分を含む排気が操作者に触れるのを防ぐことができる。
【0044】
なお、ダクト64からの排気を排気口106に設けた外部ダクトを介して左側面カバー又は背面カバーに設けた排気口から排出させるようにしてもよい。また、自動分析装置100の底部から排出させるようにしてもよい。
【0045】
以上述べた本発明の実施例1によれば、サンプラ部6にダクト64及びファン65を設け、分析部カバー19を閉じているときに、サンプラ部6内の試料容器17から蒸発したサンプルの蒸発成分を含む空気を、分析部カバー19とサンプラ部6の間の空気から隔離して外部に排気することにより、サンプル蒸発成分による反応容器4内の混合液や試料容器17内のサンプルの汚染を防ぐことができる。これにより、分析データの悪化を防ぎ、精度よく測定することができる。
【0046】
また、分析部カバー19を開けたときにファン65を停止させることにより、不用な動作を省くことができる。
【0047】
更に、排気口を正面側以外の位置に設けることにより、サンプラ部6内で蒸発したサンプルの蒸発成分が操作者に触れるのを防ぐことができる。
【実施例2】
【0048】
以下、本発明による自動分析装置の分析部の実施例2を、図5を参照して説明する。図5は、実施例2に係る分析部18aのサンプラ部及び分析部カバーの構成の詳細を示した図である。そして、図5(a)は、分析部18aの反応部5、分析部カバー、及びサンプラ部を上から見た図である。また、図5(b)は、図5(a)に示した分析部18aの各ユニットの断面線69aにおける断面を正面から見た図である。
【0049】
図5に示した実施例2が図3における実施例1と異なる点は、分析部カバーに吸気口及び排気口を設けた点と、この吸気口から吸気して排気口から排気するファンを分析部カバーの排気口の近傍に配置した点である。なお、実施例2において図2と同様であるユニットは同じ符号を付与し、説明を省略する。
【0050】
分析部18aの分析部カバー19aは、反応部5の近傍の図示した左側面に設けた外部の空気を吸気するための吸気口19a1と、サンプラ部6aの近傍の右側面に設けた内部の空気を排気するための排気口19a2とを有している。なお、吸気口を反応部5の近傍の左側面及び背面、又は反応部5の近傍の背面に設けるようにしてもよい。
【0051】
サンプラ部6aは、サンプルを収容した試料容器17と、試料容器17を回動可能に保持するディスクサンプラ61と、ディスクサンプラ61を収納するサンプラケース62と、吸引開口部68を有するサンプラケース62を覆うためのサンプラカバー63と、分析部カバー19aの排気口19a2の近傍に配置されたファン65aと、分析部カバー19aを閉じたときにファン65aを作動させる近接センサ66aとを備えている。なお、ファンを吸気口近傍に配置するようにしてもよい。
【0052】
ファン65aは、支持体20で支持され、分析部カバー19aを閉じると作動し、分析部カバー19aを開けると停止するようになっている。そして、分析部カバー19aを閉じたとき、分析部カバー19aの吸気口19a1から分析部カバー19a内に外部の空気を吸気する。吸気した外部の空気を、分析部カバー19a内の空気及びサンプラ部6a内から拡散した空気と共に、図6の矢印で示した反応部5の近傍からサンプラ部6aの近傍を経由して分析部カバー19aの排気口19a2から外部へ排気する。
【0053】
近接センサ66aは、分析部カバー19aの縁部に配置された例えば磁石及び支持体20に配置されたリードスイッチにより構成される。そして、分析部カバー19aを閉じたときに磁石がリードスイッチに近接してリードスイッチのリード片を動作させて、リードスイッチをONする。このスイッチONの信号が制御部32に出力される。制御部32では、近接センサ66aからの信号に基づいてファン65aを作動させる。
【0054】
なお、分析部カバー19aを平板とし、外装カバーの上端面に分析部カバー19aを載置するような構成としてもよい。そして、外装カバーの左側面に吸気口を設け、外装カバーの右側面に排気口を設けるようにしてもよい。
【0055】
このように、分析部カバー19aを閉じたときに、外部の空気を吸気口19a1から吸気して排気口19a2から排気することにより、試料容器17内の蒸発しやすい成分を含むサンプルから蒸発した成分がサンプラ部6a内に滞留して高濃度になるのを防ぐことができる。また、サンプラ部6a内のサンプルの蒸発成分が拡散して分析部カバー19aとサンプラ部6aの間に滞留し、反応容器4近傍におけるサンプルの蒸発成分が高濃度になるのを防ぐことができる。
【0056】
これにより、サンプルの蒸発成分による反応容器4内の混合液や、そのサンプルを収容していない試料容器17内のサンプルの汚染を防ぐことができる。
【0057】
また、分析部カバー19aを開けたときにファン65aを停止させることにより、不用な動作を省くことができる。
【0058】
更に、分析部カバー19aの側面に排気口19a2を設けることにより、サンプラ部6a内からの排気が操作者に触れるのを防ぐことができる。
【0059】
なお、サンプラカバー63がない状態で分析部カバー19aを閉じても、分析部カバー19a内の空気及びサンプラケース62内の試料容器17から蒸発したサンプルの蒸発成分を含む空気を、排気口19a2から排気することができる。これにより、サンプルの蒸発成分による反応容器4内の混合液や、そのサンプルを収容していない試料容器17内のサンプルの汚染を防ぐことができる。
【0060】
以上述べた本発明の実施例2によれば、分析部カバー19aの反応部5及びサンプラ部6aの近傍に吸気口19a1及び排気口19a2を設け、分析部カバー19aを閉じたときに吸気口19a1から外部の空気を吸気し、排気口19a2から排気することにより、サンプル蒸発成分による反応容器4内の混合液や試料容器17内のサンプルの汚染を防ぐことができる。これにより、分析データの悪化を防ぎ、精度よく測定することができる。
【0061】
また、分析部カバー19aを開けたときにファン65aを停止させることにより、不用な動作を省くことができる。
【0062】
更に、排気口を正面側以外の位置に設けることにより、サンプラ部6a内で蒸発したサンプルの蒸発成分が操作者に触れるのを防ぐことができる。
【実施例3】
【0063】
以下、本発明による自動分析装置の分析部の実施例3を、図6及び図7を参照して説明する。図6は、実施例3に係る分析部18bの反応部、サンプラ部、及び分析部カバーの構成の詳細を示した図である。そして、図6(a)は、分析部18bの反応部、サンプラ部、及び分析部カバーを上から見た図である。また、図6(b)は、図6(a)に示した分析部18bの各ユニットの断面線69bにおける断面を正面から見た図である。更に、図7は、図6(a)に示した分析部18bの各ユニットの断面線69cにおける断面を左側面から見た図である。
【0064】
図6に示した実施例3が図3における実施例1と異なる点は、サンプラ部からダクト及びファンを除き、反応部に反応容器4の開口部を覆うための反応部カバー及びこの反応部カバー内に外部の空気を送給するためのダクト及びファンを設けた点である。また、分析部カバーに外部の空気を吸気するための吸気口を設けた点である。なお、実施例3において図3と同様であるユニットは同じ符号を付与し、説明を省略する。
【0065】
分析部18bのサンプラ部6bは、サンプルを収容した試料容器17と、試料容器17を回動可能に保持するディスクサンプラ61と、ディスクサンプラ61を収納するサンプラケース62と、吸引開口部68を有するサンプラカバー63とを備えている。
【0066】
反応部5bは、混合液を収容した反応容器4と、円周上に複数の反応容器4を保持する反応ディスク53と、回転移動する反応容器4の円軌道に合わせて上側が開口した円形の流路を形成し、その流路内に反応容器4が配置される反応槽54と、反応槽54の開口部を覆うための反応部カバー55と、この反応部カバー55内と一端部が連通接続し、他端部が分析部カバー19bの吸気口19b1に近接して配置されたダクト56とを備えている。
【0067】
また、分析部カバー19bの背面に設けられた吸気口19b1から外部の空気を吸気し、吸気した空気をダクト56を介して反応部カバー55内側に送給するファン57と、分析部カバー19bを閉じたときにファン57を作動させる近接センサ58とを備えている。
【0068】
反応部カバー55は、反応槽54の上側に配置され、ダクト56の一端部に接続している。そして、サンプル分注プローブ16及び第1及び第2試薬分注プローブ14,15が反応容器4内にサンプル及び第1及び第2試薬を吐出可能なように3つの吐出口55aを有している。また、撹拌ユニット11が反応容器4内の混合液を撹拌可能なように2つの撹拌口55bを有している。更に洗浄ユニット12が反応容器4内を洗浄可能なように洗浄口55cを有している。
【0069】
ファン57は、ダクト56の他端部に配置され、分析部カバー19bを閉じると作動し、分析部カバー19bを開けると停止するようになっている。そして、分析部カバー19bを閉じると、外部の空気を吸気口19b1から吸気して反応部カバー55内に送給する。その送給された空気は、吐出口55a、撹拌口55b、及び洗浄口55cから分析部カバー19b内に排気され、更に分析部カバー19bと支持体20の隙間から外部に排気される。
【0070】
なお、分析部カバー19bに排気口を設け、この排気口から反応部カバー55内に送給された空気を排気させるようにしてもよい。
【0071】
近接センサ58は、分析部カバー19bの縁部に配置された例えば磁石及び支持体20に配置されたリードスイッチにより構成される。そして、分析部カバー19bを閉じたときに磁石がリードスイッチに近接してリードスイッチのリード片を動作させて、リードスイッチをONする。このスイッチONの信号が制御部32に出力される。制御部32では、近接センサ58からの信号に基づいてファン57を作動させる。
【0072】
このように、分析部カバー19bを閉じたときに、外部の空気を吸気口19b1から吸気して反応部カバー55内に送給し、吐出口55a、撹拌口55b、及び洗浄口55cから排気させることにより、サンプラ部6b内のサンプルの蒸発成分が拡散して分析部カバー19bとサンプラ部6bの間に滞留し、反応容器4近傍におけるサンプルの蒸発成分が高濃度になるのを防ぐことができる。
【0073】
また、分析部カバー19bを開けたときにファン57を停止させることにより、不用な動作を省くことができる。
【0074】
以上述べた本発明の実施例3によれば、反応部5bに反応部カバー55、ダクト56、及びファン57を設け、また分析部カバー19bに吸気口19b1を設けて、分析部カバー19bを閉じているときに、反応部カバー55内に外部の空気を送給することにより、サンプル蒸発成分による反応容器4内の混合液の汚染を防ぐことができる。これにより、分析データの悪化を防ぎ、精度よく測定することができる。
【0075】
また、分析部カバー19bを開けたときにファン57を停止させることにより、ファン57の不用な動作を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例1に係る分析部の構成の詳細を示す図。
【図3】本発明の実施例1に係るサンプラ部の構成の詳細を示す図。
【図4】本発明の実施例1に係る自動分析装置の概観を示す図。
【図5】本発明の実施例2に係る分析部の分析部カバー及びサンプラ部の構成の詳細を示す図。
【図6】本発明の実施例3に係る分析部の反応部、サンプラ部、及び分析部カバーの構成の詳細を示す図。
【図7】本発明の実施例3に係る分析部の反応部及び分析部カバーの構成の詳細を示す図。
【符号の説明】
【0077】
4 反応容器
5,5b 反応部
6,6a,6b サンプラ部
16 サンプル分注プローブ
17 試料容器
18,18a,18b 分析部
19,19a,19b 分析部カバー
20 支持体
20a 蝶番
61 ディスクサンプラ
62 サンプラケース
63 サンプラカバー
64 ダクト
65 ファン
67 吸気口
68 吸引開口部
100 自動分析装置
103 右側面カバー
106 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記被検試料を試料容器から吸引して前記反応容器に吐出するサンプル分注プローブと、
前記サンプル分注プローブが前記試料容器から被検試料を吸引するための開口部を備えた前記試料容器を収容するサンプラ部と、
前記反応容器、前記サンプル分注プローブ、及び前記開口部を覆う分析部カバーと、
前記サンプラ部内を前記自動分析装置外部と連通させて、前記サンプラ部内の空気を排気する排気手段とを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記排気手段の排気口を前記自動分析装置の正面以外の位置に設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
被検試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記被検試料を試料容器から吸引して前記反応容器に吐出するサンプル分注プローブと、
前記サンプル分注プローブが前記試料容器から被検試料を吸引するための開口部を備えた前記試料容器を収容するサンプラ部と、
前記反応容器の近傍に位置して前記自動分析装置外部の空気を吸気するための吸気口と、
前記開口部の近傍に位置して内部の空気を排気するための排気口と、
前記反応容器、前記サンプル分注プローブ、及び前記開口部を覆う分析部カバーと、
前記吸気口から吸気した空気を前記排気口から排気する排気手段とを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
前記吸気口及び前記排気口を前記分析部カバーに設けたことを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記排気手段の排気口を前記自動分析装置の正面以外の位置に設けたことを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記排気手段は、前記自動分析装置外部の空気を前記吸気口から前記分析部カバー内に吸気し、吸気した空気を前記反応容器の近傍から前記開口部の近傍を経由して前記排気口から排気するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記分析部カバーは、前記反応容器、前記サンプル分注プローブ及び前記サンプラ部を載置する支持体に開閉自在に取り付けられ、
前記排気手段は、前記分析部カバーを閉じたときに、排気するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
被検試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記被検試料を試料容器から吸引して前記反応容器に吐出するサンプル分注プローブと、
前記サンプル分注プローブが前記試料容器から被検試料を吸引するための第1の開口部を備えた前記試料容器を収容するサンプラ部と、
前記自動分析装置外部の空気を吸気するための吸気口を備え且つ前記反応容器の上面開口部を覆う反応容器カバーと、
前記反応容器、前記サンプル分注プローブ、及び前記第1の開口部を覆う分析部カバーと、
前記吸気口から外部の空気を吸気して前記反応容器カバー内に送給する送給手段とを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
前記反応容器カバーは、少なくとも前記サンプル分注プローブが吸引した被検試料を前記反応容器内に吐出するための第2の開口部を有し、
前記送給手段は、前記反応容器カバー内に送給した空気を前記第2の開口部から排気するようにしたことを特徴とする請求項8に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−82930(P2008−82930A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264452(P2006−264452)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】