説明

自動分析装置

【課題】コストを上げることなく、高精度の測定再現性が得られる自動分析装置を提供する。
【解決手段】反応ディスク104外周の円周上に反応容器105と反応容器検出機構を配置し、反応容器105の通過を検出する検出器204を軌道上に配置し、反応容器105を挟む位置に光源113と分光検出器114を配置して反応容器105を透過する光量を測定する自動分析装置において、反応ディスク回転時に、検出器204による反応容器105の通過検出を基に反応ディスク回転速度を算出し、算出速度を用いて測光開始と測光終了のタイミングを補正する。反応ディスク回転時に、分光検出器114の出力信号を基に反応ディスク回転速度を算出し、算出速度を用いて測光開始と測光終了のタイミングを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関し、特に反応ディスクの外周の円周上に複数の反応容器を配置し、反応容器を挟んで光源と分光検出器を配置して、反応容器を透過する光量を測定する回転反応器の測定方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反応ディスクの外周の円周上に複数の反応容器を配置し、反応容器を挟んで光源と分光検出器を配置して反応容器を透過する光量を測定する回転反応器が知られている。このような反応器による測定においては、各セルに対応した検知板からセル位置を検出し、測光開始位置を決定している。また、エンコーダの信号と測光データからセル位置を検出して測光開始位置を決定する測定方式もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記検知板寸法や、検知板とセル間寸法およびセル取り付け位置には誤差が存在する。このため、それぞれの誤差を考慮すると、測光開始から終了までの時間を短くする必要が出てくる。現方式では、これらの誤差を極力相殺すべく、検知板位置から測光開始位置の時間を調整可能としているが、反応容器総数が増えると、全反応容器における寸法誤差は相殺しきれない。この問題を解決するために、各セルに対して個々に時間調整値を持たせるシステムを搭載した場合でも、反応ディスクの速度ムラによるばらつきは残り、この分、測光可能時間を短くしなければならない。また、エンコーダから位置情報を直接検出して測光開始位置を算出する方式もあるが、必要になる分解能を持つエンコーダは非常に高価でありコスト的に現実的ではない。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、コストを上げることなく、高精度の測定再現性が得られる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、反応ディスク外周の円周上に反応容器と反応容器検出機構を配置し、反応容器位置を検出する検出器を軌道上に少なくとも一つ配置し、反応容器を挟んで光源と分光検出器を配置して反応容器の光量を測定する測定方式において、反応ディスク回転中に、検出器から得られる反応容器位置間隔時間から反応ディスク回転速度を逐次算出し、算出された速度から測光開始位置と測光終了時間を決定することを特徴とする。
【0006】
すなわち、本発明は、反応ディスク外周の円周上に反応容器と反応容器検出機構を配置し、前記反応容器の通過を検出する検出器を軌道上に少なくとも一つ配置し、前記反応容器を挟む位置に光源と分光検出器を配置して前記反応容器を透過する光量を測定する自動分析装置において、前記反応ディスク回転時に、前記検出器による前記反応容器の通過検出を基に前記反応ディスク回転速度を算出し、算出速度を用いて測光開始と測光終了のタイミングを補正する自動分析装置である。
【0007】
反応ディスク外周の円周上に反応容器と反応容器検出機構を配置し、前記反応容器の通過を検出する検出器を軌道上に少なくとも一つ配置し、前記反応容器を挟む位置に光源と分光検出器を配置して前記反応容器を透過する光量を測定する自動分析装置において、前記反応ディスク回転時に、前記分光検出器の出力信号を基に前記反応ディスク回転速度を算出し、算出速度を用いて測光開始と測光終了のタイミングを補正する自動分析装置である。
【0008】
反応ディスク外周の円周上に反応容器と反応容器検出機構を配置し、前記反応容器の通過を検出する検出器を軌道上に少なくとも一つ配置し、前記反応容器を挟む位置に光源と分光検出器を配置して前記反応容器を透過する光量を測定する自動分析装置において、前記反応ディスク回転時に、前記分光検出器の出力信号を用いて前記反応容器と隣りの反応容器との間を検出し、検出結果を基に前記反応ディスク回転速度を算出し、算出速度を用いて測光開始と測光終了のタイミングを補正する自動分析装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、速度ムラによる測光開始および測光終了時間のばらつきが補正可能であるため、測光可能時間を長くでき、データ再現性を向上できる。なお、本方式はエンコーダや平滑制御モータコントローラなどの部品を追加することなく、現状機構で実現可能であるため、コストアップすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、自動分析装置の原理的な全体構成概略図である。まずは、自動分析装置の説明と測光の流れについての概要を解説する。図1において、操作部101から検体の分析測定項目を選択し、スタートボタンを押下して実行すると、インターフェース102より、分析部103に送信される。分析装置では、分析指示に従い、反応ディスク104を回転させて、反応容器105に順番に検体分注106、試薬分注109、攪拌112を行う。そして、光源113、多波長光度計114を用いて、通過する反応容器105の吸光度を測定し、濃度演算を行う。測定後の反応容器105は洗浄機構115により、洗浄される。分析部103は検体の分析項目の濃度演算結果を、インターフェース102より、操作部101に送信することで、ユーザは依頼した検体の分析項目の濃度を知ることができる。なお、107は検体容器支持ディスク、108は検体容器セットポジション、110は試薬容器支持ディスク、111は試薬容器線とポジションである。
【0011】
図2は反応ディスクと検知器、反応容器(セル)の概要図である。図3は反応容器を通過した時の吸光度と検知板の検出タイミングでのクロックに関して表した説明図である。図4は図3において、最適な測光可能領域への測光タイミングに速度ムラによるずれが生じた場合についての説明図である。
【0012】
現在の自動分析装置では、反応ディスク201には、検知板202と反応容器203が1対1の関係で対応しており、同数セットされている。この検知板202が反応ディスク201の回転中に検出器204により検出されると、図3のように検出器の検知信号が出力される。この出力立下りから、設定されているタイミング(T1)を消化した時点を測光開始タイミングとしている。このT1は、全ての反応容器に対して、一値のみ存在する場合と、各セルに対して一つずつ調整して存在する場合がある。基本的に、この調整値は、部品交換しない限り変更されることはない。一方で、モータ定速駆動時には、少なからず速度ムラが生じる。反応ディスクの駆動も例外ではなく、その結果、図4のように測光開始タイミングのばらつき原因になる。検知器パルス幅は周速度に依存し、速いとき短くなる。そして、測光時間は通常固定であるため、測光開始と測光終了のタイミングも同様にばらつくことになる。このばらつきを考慮すると、セル内平坦部以外を測光しないようするため、測光可能時間を減らさなければならず、その分、測光データの積算平均効果が薄れ、再現性の点で不利になる可能性がある。
【0013】
ここで、速度ムラを算出し、その結果から測光開始タイミングや測光終了タイミングの少なくとも一方を補正すれば、ばらつきを考慮する必要が少なくなるため、測光可能時間が増し、再現性をより向上できる。
【0014】
次に本実施例について説明する。
通常、測光開始タイミングを調整する作業を行う際は反応ディスクを分析時と同様の速度で回転させる。反応容器1つずつに対して、測光開始タイミングを決定できるシステムの場合には、検知板検出出力立下り信号からの特定時間幅Tx(N)を反応容器の数Nだけ記憶させる。このとき、各検知板の検出時間幅を、基準時間幅TD1(N)として反応容器の数だけ記憶させる。分析動作時は、速度ムラにより、各検知板の検出時間幅が基準時間幅TD1(N)から若干ずれることになる。そのときの各検知板の検出時間幅TD2(N)をそれぞれ算出し、調整時に記憶した基準時間幅TD1(N)との比較を行う。例えば分析動作時の方が速く回転していた場合、Tx(N)が固定だと測光開始タイミングが遅れてしまう。これを防ぐために、Tx(N)に対して(TD1(N)−TD2(N))分だけ補正することで測光開始タイミングがずれないようにすることができる。この補正手段としては、例えば図5のように、特定時間幅Tx(N)をクロックパルスで与え、このパルス数を速度ムラに応じて増減させる方式が考えられる。
【0015】
この方式では次のような応用も可能である。仮に、図4よりも、速度ムラにより回転速度が速まっている場合には本実施例の方式により測光開始タイミングを補正したとしても、測光時間が固定であると、測光終了タイミングが測光可能領域外となるため、データ不正の原因になる。したがって、測光時間もクロックパルスで規定し、速度ムラ補正によって増減させる制御を行えば、想定以上の速度ムラによるデータ不正を防ぐことが可能になる。
【0016】
本実施例では検知板を利用して補正値を決定しているが、反応容器の測光データからも速度の算出が可能である。反応容器そのものの測光データでは、反応液の濃度や、反応容器の劣化などにより波形が変化し、基準データとして利用しにくいため、反応容器と隣りの反応容器との間を検出する信号を利用して速度ムラ補正を行っても良い。従って、検知板を用いなくとも、測光データから補正値に利用する方式も同様の効果があると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】自動分析装置の概要図。
【図2】反応ディスクと検知器、反応容器の概要図。
【図3】周速度が正常のときの説明図。
【図4】周速度が速いときの説明図。
【図5】周速度が速いときの補正イメージの説明図。
【符号の説明】
【0018】
101 操作部、102 インターフェース、103 分析部、104 反応ディスク、105 反応容器、106 検体分注、109 試薬分注、112 攪拌、113 光源、114 多波長光度計、115 洗浄機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ディスク外周の円周上に反応容器と反応容器検出機構を配置し、前記反応容器の通過を検出する検出器を軌道上に少なくとも一つ配置し、前記反応容器を挟む位置に光源と分光検出器を配置して前記反応容器を透過する光量を測定する自動分析装置において、
前記反応ディスク回転時に、前記検出器による前記反応容器の通過検出を基に前記反応ディスク回転速度を算出し、算出速度を用いて測光開始と測光終了のタイミングを補正することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
反応ディスク外周の円周上に反応容器と反応容器検出機構を配置し、前記反応容器の通過を検出する検出器を軌道上に少なくとも一つ配置し、前記反応容器を挟む位置に光源と分光検出器を配置して前記反応容器を透過する光量を測定する自動分析装置において、
前記反応ディスク回転時に、前記分光検出器の出力信号を基に前記反応ディスク回転速度を算出し、算出速度を用いて測光開始と測光終了のタイミングを補正することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
反応ディスク外周の円周上に反応容器と反応容器検出機構を配置し、前記反応容器の通過を検出する検出器を軌道上に少なくとも一つ配置し、前記反応容器を挟む位置に光源と分光検出器を配置して前記反応容器を透過する光量を測定する自動分析装置において、
前記反応ディスク回転時に、前記分光検出器の出力信号を用いて前記反応容器と隣りの反応容器との間を検出し、検出結果を基に前記反応ディスク回転速度を算出し、算出速度を用いて測光開始と測光終了のタイミングを補正することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate