説明

自動分析装置

【課題】反応容器を洗浄して繰り返し使用しても信頼性の高い分析結果を得ることができる自動分析装置を提供すること。
【解決手段】反応容器5を洗浄した後、検体と試薬とを反応容器5内で反応させ、この反応の結果を分析光学系11で測光することによって前記検体の分析を行う自動分析装置1において、分析光学系11は、反応容器5の洗浄前の吸光度および洗浄後の吸光度を測定し、水残り判定部17は、反応容器5の洗浄前の吸光度および洗浄後の吸光度をもとに洗浄後の反応容器5に水残りがあるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応容器内で反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって検体の成分を分析する自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、検体および試薬を反応容器に分注し、検体と試薬とを反応させた後、この検体と試薬との反応液の吸光度を測定して自動的に検体を分析する分析装置が知られている。この分析装置は、反応液の測定を終了した後の反応容器を洗浄する際、洗浄液として洗浄剤やイオン交換水・蒸留水などの純水を用いる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第2577350号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、反応容器は、反応液の特性を測定後、自動的に洗浄され繰り返し使用する過程において、洗浄後の反応容器に水残りがあるか否かを確認せずに次の検体の分析を行っていた。このため、反応容器を吸引乾燥する処理において乾燥が不十分である場合にもこの反応容器が次の分析に用いられ、水が残った状態で分析処理が行われることになり、結果的に分析データの精度が低下するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、反応容器を洗浄して繰り返し使用しても信頼性の高い分析結果を得ることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる自動分析装置は、反応容器を洗浄した後、検体と試薬とを反応容器内で反応させ、この反応の結果を測光器で測光することによって前記検体の分析を行う自動分析装置において、前記反応容器の洗浄前の吸光度および洗浄後の吸光度を測定する測光手段と、前記反応容器の洗浄前の吸光度および洗浄後の吸光度をもとに洗浄後の反応容器に水残りがあるか否かを判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記測光手段は、前記測光器であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記判定手段は、短波長側での洗浄前後の反応容器の吸光度差が、長波長側での洗浄前後の反応容器の吸光度差に比して大きい場合に水残りがあると判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記判定手段は、最短波長での洗浄前後の反応容器の吸光度差が、最長波長での洗浄前後の反応容器の吸光度差に比して大きい場合に水残りがあると判定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記判定手段は、最短波長での洗浄前後の反応容器の吸光度差が、最長波長での洗浄前後の反応容器の吸光度差に比して大きい場合、最短波長および最長波長を除く各吸光度における洗浄前後での反応容器の吸光度差を求め、最短波長および最長波長を含む各波長の吸光度差が短波長側に向けて順次大きくなっている場合に、水残りがあると判定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記判定手段が水残りがあると判定した場合、該判定された反応容器の使用不可に関する情報を報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記判定手段は、分析処理を開始する前の前処理時に行う反応容器の洗浄前後の吸光度をもとに分析開始前の反応容器に水残りがあるか否かを判定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記反応容器の洗浄前の吸光度は、分析処理を開始する前の前処理として行う反応容器の洗浄時における洗浄前の吸光度であり、前記判定手段は、該洗浄前の吸光度を、各反応容器の水残り判定に共通して用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる自動分析装置は、反応容器を洗浄した後、検体と試薬とを反応容器内で反応させ、この反応の結果を測光器で測光することによって前記検体の分析を行う際、測光手段が、前記反応容器の洗浄前の吸光度および洗浄後の吸光度を測定し、判定手段が、前記反応容器の洗浄前の吸光度および洗浄後の吸光度をもとに洗浄後の反応容器に水残りがあるか否かを判定するようにしているので、水残りがあると判定された反応容器を使用しないように設定することによって、水残りのある反応容器が分析に用いられることはなく、分析データの精度低下を抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態である自動分析装置について説明する。なお、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一符号を付している。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である自動分析装置の概要構成を示す模式図である。この自動分析装置1は、血球成分を含む血液や尿等の検体を自動分析する装置であり、図1に示すように、試薬テーブル2,3、キュベットホイール4、検体容器移送機構8、検体分注機構10、分析光学系11、洗浄機構12、第1攪拌装置13、第2攪拌装置14、および制御機構15を備えている。
【0017】
試薬テーブル2,3は、図1に示すように、それぞれ周方向に配置される複数の試薬容器2a,3aを保持し、図示しない駆動手段によって回転されて試薬容器2a,3aを周方向に搬送する。このとき、試薬テーブル2には、第1試薬を保持した試薬容器2aが配置され、試薬テーブル3には、第2試薬を保持した試薬容器3aが配置されている。複数の試薬容器2a,3aは、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬の種類、ロット及び有効期限等の情報を記録した情報記録媒体(図示せず)が付されている。ここで、試薬テーブル2,3の外周には、情報記録媒体に記録された各試薬容器の試薬情報を読み取り、制御機構15に出力する図示しない読取装置が設置されている。
【0018】
キュベットホイール4は、図1に示すように、複数の反応容器5が周方向に沿って配列されており、試薬テーブル2,3を駆動する図示しない駆動手段とは異なる図示しない駆動手段によって回転されて反応容器5を周方向に移動させる。キュベットホイール4は、光源11aと分光部11bとの間に配置され、反応容器5を保持する保持部4aと光源11aが出射した光束を分光部11bへ導く円形の開口部4bとを有している。保持部4aは、キュベットホイール4の外周に周方向に沿って所定間隔で配置され、保持部4aの内周側に半径方向に延びる開口部4bが形成されている。
【0019】
反応容器5は、光源11aから出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する光学的に透明な素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス、環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂によって四角筒状に成形されたキュベットと呼ばれる容器である。反応容器5は、近傍に設けた作動機構である試薬分注機構6,7によって試薬テーブル2,3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。
【0020】
ここで、試薬分注機構6,7は、それぞれ水平面内を矢印で示すように回動すると共に、上下方向に昇降されるアーム6a,7aに試薬を分注するノズル6b,7bが設けられ、洗浄水によってノズル6b,7bを洗浄する図示しない洗浄手段を有している。
【0021】
検体容器移送機構8は、図1に示すように、配列された複数のラック9を矢印方向に沿って1つずつ歩進させながら移送する。ラック9は、検体を収容した複数の検体容器9aを保持している。ここで、検体容器9aは、検体容器移送機構8によって移送されるラック9の歩進が停止するごとに、検体分注機構10によって検体が各反応容器5に分注される。
【0022】
検体分注機構10は、図1に示すように、それぞれ水平面内を矢印で示すように回動すると共に、上下方向に昇降されるアーム10aに検体を分注する分注ノズル10bが設けられた作動機構であり、洗浄水によって分注ノズル10bを洗浄する図示しない洗浄手段を有している。
【0023】
分析光学系11は、試薬と検体とが反応した反応容器5内の液体試料に分析光(340〜800nm)を透過させて分析するための光学系であり、図1に示すように、光源11a、分光部11b及び受光部11cを有している。光源11aから出射された分析光は、反応容器5内の液体試料を透過し、分光部11bと対向する位置に設けた受光部11cによって受光される。
【0024】
洗浄機構12は、ノズル12aによって反応容器5内の液体試料を吸引して排出した後、ノズル12aによって洗剤や洗浄水等の洗浄液等を繰り返し注入し、吸引することにより、分析光学系11による分析が終了した反応容器5を洗浄する。
【0025】
第1攪拌装置13及び第2攪拌装置14は、反応容器5に分注された検体と試薬とを攪拌棒13a,14aによって攪拌し、反応を促進させる。
【0026】
つぎに、制御機構15について説明する。制御部16は、CPU等を用いて実現され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部16は、演算機能、記憶機能、制御機能及び計時機能等を備え、試薬テーブル2,3、試薬分注機構6,7、検体容器移送機構8、検体分注機構10、分析光学系11、洗浄機構12、攪拌装置13,14、水残り判定部17、入力部18、分析部19、出力部20、記憶部21等に接続されている。制御部16は、上記各部の作動を制御すると共に、入力される波長ごとの吸光度から検体の成分濃度等を分析する。また、制御部16は、試薬容器2a,3aの情報記憶媒体から読み取った情報に基づき、試薬のロットが異なる場合や有効期限外等の場合に分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警報を発する。
【0027】
水残り判定部17は、判定手段に対応し、分析部19により取得された洗浄前の反応容器5の吸光度と洗浄後の反応容器5の吸光度若しくは記憶部21に記憶されている吸光度情報22から洗浄後の反応容器5に水残りがあるか否かを判定する。
【0028】
入力部18は、キーボード、マウス等によって実現され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。入力部18は、図示しない通信ネットワークを介し、外部装置から検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を取得してもよい。
【0029】
分析部19は、分析光学系11によって測定された分析対象の反応容器5内の反応液を透過した後の光量から、その吸光度を算出する。そして、算出した吸光度から検体中の分析対象成分の濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。また、分析部19は、分析光学系11によって測定された水残り判定対象の反応容器5を透過した後の光量から、その吸光度を算出する。そして、算出結果を制御部16に出力する。
【0030】
出力部20は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等によって実現され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部20は、図示しない通信ネットワークを介し、外部装置に検体の分析結果を含む諸情報を出力してもよい。また、水残り判定部17にて、洗浄後の反応容器5に水残りがあると判定された場合、この反応容器5の使用不可情報を出力する。
【0031】
記憶部21は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを有し、分析情報を含む諸情報を記憶する。記憶部21は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。また、記憶部21は、洗浄前に測光した反応容器5の吸光度および洗浄後に測光した反応容器5の吸光度である吸光度情報22を記憶する。この吸光度情報22は、洗浄後の反応容器5の水残り判定を行う水残り判定部17で用いられる。
【0032】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部16の制御の下に作動し、回転するキュベットホイール4によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5に、検体分注機構10によってラック9に保持された複数の検体容器9aから検体が順次分注される。検体が順次分注された反応容器5には、試薬分注機構6,7が試薬容器2a,3aから順次試薬が分注される。試薬と検体とが分注された反応容器5は、キュベットホイール4が停止する都度、攪拌装置13,14によって順次攪拌されて試薬と検体とが反応し、キュベットホイール4が再び回転したときに分析光学系11を通過する。このとき、反応容器5内の試薬と検体とが反応した反応液は、分析光学系11で測光され、分析部19によって成分濃度等が分析される。そして、反応液の測光が終了した反応容器5は、洗浄機構12に移送されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0033】
このとき、分析光学系11と洗浄機構12とは、図2に示すように洗浄と分析とを繰り返し行う。本実施の形態1では、検体の分析を行う前に、前処理工程31を行い、分析前に反応容器5を洗浄し、洗浄後の反応容器5に水残りがあるか否かを判定する。先ず、反応容器5を測光し、洗浄前の吸光度データを取得する(図2(a))。次に、洗浄機構12が空の反応容器5の洗浄を行う。最初に洗浄液を吐出して反応容器5内を洗浄し(図2(b))、その洗浄液を吸引する(図2(c))。続いて、水を吐出して反応容器5内を洗浄し(図2(d))、水を吸引する(図2(e))。最後に吸引乾燥ノズルによって反応容器5内の乾燥を行い(図2(f))、測光して洗浄後の反応容器5の吸光度データを取得する(図2(g))。これらの吸光度データは、吸光度情報22として記憶部21に記憶される。
【0034】
次いで、制御部16は、水残り判定部17が前処理洗浄後の反応容器に水残りが無いと判定した場合、分析工程32に移行する。第1試薬分注機構6が試薬容器2a内の第1試薬を分注し(図2(h))、検体分注機構10が検体容器9a中の検体を分注した(図2(i))後、攪拌装置13若しくは14が反応容器5内の液体の攪拌を行う(図2(j))。その後、第2試薬分注機構7が試薬容器3a中の第2試薬を分注し(図2(k))、攪拌装置14若しくは13が反応容器5内の液体を攪拌し(図2(l))、分析光学系11が検体と試薬とを反応させた状態の液体の分光強度測定を行い(図2(m))、この測定結果を分析部19で分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。
【0035】
その後、洗浄機構12が、分析光学系11による測定が終了した後に搬送される反応容器5に収容されている反応液の吸引を行った(図2(n))後洗浄処理(図2(o)〜図2(s))し、洗浄終了後分析光学系11が、反応容器を測光する(図2(t))。水残り判定部17は、反応容器5の測光後、反応容器5内に水残りがあるか否かの判定を行い、水残りがないと判定した場合、図2(h)に示す第1試薬分注から始まる分析処理に戻り、次の検体の分析が行われ、上述した分析工程32が連続して繰り返し行われる。また、制御部16に分析の終了指示が出ている場合は、乾燥処理(図2(s))が終了した後、動作を停止する。
【0036】
水残り判定部17は、図3に示すような水の吸光度曲線の特性をもとに、長波長側の洗浄前の吸光度と洗浄後の吸光度との差と、短波長側の洗浄前の吸光度と洗浄後の吸光度との差とから、反応容器の水残りの判定を行うものである。図3において、吸光度曲線LAは、反応容器が空の状態の吸光度の波長依存性を示し、吸光度曲線LBは、反応容器に水が入っている状態の吸光度の波長依存性を示す。反応容器内が空の状態での吸光度と反応容器内に水が存在する状態での吸光度との吸光度差を各波長で比較すると、短波長側に向けてこの差が増大している。ここで、水残り判定部17は、吸光度曲線LAの最長波長での吸光度ALと吸光度曲線LBの最長波長での吸光度BLとの差(AL−BL)と、吸光度曲線LAの最短波長での吸光度ASと吸光度曲線LBの最短波長での吸光度BSとの差(AS−BS)とを比較し、吸光度差(AS−BS)が吸光度差(AL−BL)より大きい場合、水残りありと判定し、吸光度差(AS−BS)が吸光度差(AL−BL)以下である場合、水残り無しと判定するようにしている。これは、短波長と長波長との水の屈折率および吸収率の差異を利用したものであり、水残りがある場合、短波長側での吸光度変化が長波長の吸光度変化より大きくなるからである。なお、水残り判定部17は、測光した波長の最短波長の吸光度および最長波長の吸光度を用いて判定するようにしているが、これに限らず、長波長側の吸光度と短波長側の吸光度と比較して水残り判定を行っても良い。
【0037】
ここで、図4に示すフローチャートを参照して、この自動分析装置1による水残り判定処理手順について説明する。図4において、まず、分析光学系11は未使用若しくは空の反応容器5を測光し、取得された各波長の吸光度A1のうちの最短波長の吸光度A1Sおよび最長波長の吸光度A1Lを洗浄前の吸光度情報22として記憶部21に記憶する(ステップS102)。その後、反応容器5の洗浄処理を行い(ステップS104)、乾燥された反応容器5に対して分析光学系11が測光し、取得された各波長の吸光度B1のうちの最短波長の吸光度B1Sおよび最長波長の吸光度B1Lを洗浄後の吸光度情報22として記憶部21に記憶する(ステップS106)。
【0038】
その後、水残り判定部17は、最短波長での吸光度差(A1S−B1S)と最長波長での吸光度差(A1L−B1L)とを比較し、吸光度差(A1S−B1S)が吸光度差(A1L−B1L)以下であるか否かを判断する(ステップS108)。最短波長での吸光度差(A1S−B1S)が最長波長での吸光度差(A1L−B1L)以下でない場合(ステップS108:No)、水残り判定部17は水残りありと判定し、制御部16は、出力部20に水残り有りと判定された旨を報知するとともに、この反応容器の使用不可を設定した(ステップS110)後、ステップS112に移行する。
【0039】
一方、最短波長での吸光度差(A1S−B1S)が最長波長での吸光度差(A1L−B1L)以下である場合(ステップS108:Yes)、水残り判定部17は水残り無しと判定し、この反応容器を用いた分析処理を行う(ステップS112)。
【0040】
さらに、この反応容器の洗浄処理が行われ(ステップS114)、乾燥された反応容器に対して分析光学系11が測光し、各波長の吸光度B2のうちの最短波長での吸光度B2Sおよび最長波長での吸光度B2Lを分析処理時における洗浄後の吸光度情報22として記憶部21に記憶する(ステップS116)。
【0041】
その後、水残り判定部17は、ステップS108と同様に、最長波長での吸光度差(A1L−B2L)と、最短波長での吸光度差(A1S−B2S)とを比較し、吸光度差(A1S−B2S)が吸光度差(A1L−B2L)以下であるか否かを判断する(ステップS118)。吸光度差(A1S−B2S)が吸光度差(A1L−B2L)以下でない場合(ステップS118:No)、水残り判定部17は水残りありと判定し、制御部16は、出力部20に水残り有りと判定された旨を報知するとともに、この反応容器の使用不可を設定した(ステップS110)後、ステップS112に移行する。
【0042】
一方、最短波長の吸光度差(A1S−B2S)が最長波長での吸光度差(A1L−B2L)以下である場合(ステップS118:Yes)、水残り判定部17は、水残り無しと判定し、さらに、制御部16は、分析処理の終了指示が出ているか否かを判断し(ステップS120)、分析処理の終了指示が出ていない場合(ステップS120:No)には、ステップS112に移行し、上述した処理を繰り返し、分析処理の終了指示が出ている場合(ステップS120:Yes)には、本処理を終了する。
【0043】
ここで、従来の自動分析装置においては、洗浄後に水残りがあるか否かを確認する機構は無く、洗浄が完了した反応容器は次の検体処理へと移行される。したがって、水残りが発生した場合でも、反応容器は次の分析処理に用いられるため分析データに不具合の出る可能性がある。また、データに不具合が生じた場合、反応容器と検体および試薬とを調べなければ原因の特定は出来ない。
【0044】
これに対して、実施の形態1にかかる自動分析装置1においては、洗浄後に反応容器の水残りの判定を行い、水残りの発生した反応容器は分析に用いられないため、反応溶液が水残りした許容範囲以上の水と反応することは無い。したがって、分析データの分析精度の低下を抑えられると共に、データに不具合が発生した場合も、検体および試薬の調査に絞られるため、原因特定の時間短縮にも寄与する。また、分析処理前に、測光装置および洗浄装置を用いるため、測光データを確認することで、検体の分析処理前に装置の不具合を見いだすこともできる。
【0045】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、水残り判定部17が、最長波長の吸光度差と最短波長の吸光度差とを比較して水残りがあるか否かを判定していたが、本実施の形態2では、水残り判定部17が、最長波長の吸光度差と最短波長の吸光度差との比較に加え、最長波長の吸光度差と、最短波長および最長波長を除く全ての波長における吸光度差とを比較して水残りがあるか否かを信頼性高く判定するようにしている。
【0046】
ここで、図5に示すフローチャートを参照して、本実施の形態2による水残り判定処理手順について説明する。図5において、まず分析光学系11は、実施の形態1と同様に、未使用若しくは空の反応容器5を測光し、取得された各波長の吸光度A1を洗浄前の吸光度情報22として記憶部21に記憶する(ステップS202)。その後、反応容器5の洗浄処理を行い(ステップS204)、乾燥された反応容器5に対して分析光学系11が測光し、取得された各波長の吸光度B1を洗浄後の吸光度情報22として記憶部21に記憶する(ステップS206)。
【0047】
その後、水残り判定部17は、最短波長での吸光度差(A1S−B1S)と最長波長での吸光度差(A1L−B1L)とを比較し、吸光度差(A1S−B1S)が吸光度差(A1L−B1L)以下であるか否かを判断する(ステップS208)。最短波長での吸光度差(A1S−B1S)が最長波長での吸光度差(A1L−B1L)以下でない場合(ステップS208:No)、最短波長および最長波長を除く各波長での吸光度差を求め、最長波長を除く各吸光度差(A1−B1)が最長波長での吸光度差(A1L−B1L)以下であるか否かを判断する(ステップS210)。この場合、最短波長での吸光度差(A1S−B1S)が最長波長での吸光度差(A1L−B1L)以下であることを判断しているので、ステップS210では、最短波長および最短波長を除く各吸光度差(A1−B1)が最長波長での吸光度差(A1L−B1L)以下であるか否かを判断することになる。
【0048】
最長波長を除く各吸光度差(A1−B1)が最長波長での吸光度差(A1L−B1L)以下でない場合(ステップS210:No)、水残り判定部17は水残りありと判定し、制御部16は、出力部20に水残り有りと判定された旨を報知するとともに、この反応容器5の使用不可を設定した(ステップS212)後、ステップS214に移行する。
【0049】
一方、最短波長での吸光度差(A1S−B1S)が最長波長での吸光度差(A1L−B1L)以下である場合(ステップS208:Yes)および最長波長を除く各吸光度差(A1−B1)が最長波長での吸光度差(A1L−B1L)以下である場合(ステップS210:Yes)には、水残り判定部17は水残り無しと判定し、この反応容器5を用いた分析処理を行う(ステップS214)。
【0050】
さらに、この反応容器5の洗浄処理が行われ(ステップS216)、乾燥された反応容器5に対して分析光学系11が測光し、各波長の吸光度B2を分析処理時における洗浄後の吸光度情報22として記憶部21に記憶する(ステップS218)。
【0051】
その後、水残り判定部17は、ステップS208と同様に、最長波長での吸光度差(A1L−B2L)と、最短波長での吸光度差(A1S−B2S)とを比較し、吸光度差(A1S−B2S)が吸光度差(A1L−B2L)以下であるか否かを判断する(ステップS220)。吸光度差(A1S−B2S)が吸光度差(A1L−B2L)以下でない場合(ステップS220:No)、さらに最長波長を除く各波長の吸光度差(A1−B2)が最長波長での吸光度差(A1L−B2L)以下であるか否かを判断する(ステップS222)。
【0052】
最長波長を除く各波長の吸光度差(A1−B2)が最長波長での吸光度差(A1L−B2L)以下でない場合(ステップS222:No)、水残り判定部17は水残りありと判定し、制御部16は、出力部20に水残り有りと判定された旨を報知するとともに、この反応容器の使用不可を設定した(ステップS212)後、ステップS214に移行する。
【0053】
一方、最短波長の吸光度差(A1S−B2S)が最長波長での吸光度差(A1L−B2L)以下である場合(ステップS220:Yes)および最長波長を除く各吸光度差(A1−B2)が最長波長での吸光度差(A1L−B2L)以下である場合(ステップS222:Yes)には、水残り判定部17は、水残り無しと判定し、さらに、制御部16は、分析処理の終了指示が出ているか否かを判断し(ステップS224)、分析処理の終了指示が出ていない場合(ステップS224:No)には、ステップS214に移行し、上述した処理を繰り返し、分析処理の終了指示が出ている場合(ステップS224:Yes)には、本処理を終了する。
【0054】
なお、ステップS210,S222では、水残りが無い場合の上限値として、水残りがある場合と無い場合との吸光度差が最も小さくなる最長波長での吸光度差(A1L−B1L),(A1L−B2L)を用い、図3に示すように、水残りがある場合、各波長の洗浄前後の吸光度差は短波長側に向けて順次大きくなるため、すべての波長の吸光度差に関して吸光度差(A1−B1)≧吸光度差(A1L−B1L)、吸光度差(A1−B2)≧吸光度差(A1L−B2L)の関係が成り立つことになる。
【0055】
本実施の形態2にかかる自動分析装置1においては、実施の形態1と同様に、洗浄後に反応容器の水残りの判定を行い、水残りの発生した反応容器は分析には用いられないため、反応溶液が水残りした許容範囲以上の水と反応することは無い。したがって、分析データの分析精度の低下を抑えられると共に、データに不具合が発生した場合も、検体および試薬の調査に絞られるため、原因特定の時間短縮にも寄与する。また実施の形態2では、各波長の吸光度差を確認しているため、水残り判定の確実性を高めること、水以外での分析データへの影響も確認することが可能となる。
【0056】
なお、上述した実施の形態1,2に限らず、たとえば、検体の免疫学的な分析を行う自動分析装置に対して適用することも可能である。すなわち、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1である自動分析装置の概要構成を示す模式図である。
【図2】図1に示した自動分析装置による一連の処理概要を示す図である。
【図3】水残りがある場合とない場合との吸光度の波長依存性を示す図である。
【図4】実施の形態1による水残り判定処理手順を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態2による水残り判定処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 自動分析装置
2,3 試薬テーブル
2a,3a 試薬容器
4 キュベットホイール
5 反応容器
6,7 試薬分注機構
6b,7b 試薬分注ノズル
8 検体容器移送機構
9 ラック
9a 検体容器
10 検体分注機構
10b 検体分注ノズル
11 分析光学系
11a 光源
11b 分光部
11c 受光部
12 洗浄機構
13 第1攪拌装置
14 第2攪拌装置
15 制御機構
16 制御部
17 水残り判定部
18 入力部
19 分析部
20 出力部
21 記憶部
22 吸光度情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器を洗浄した後、検体と試薬とを反応容器内で反応させ、この反応の結果を測光器で測光することによって前記検体の分析を行う自動分析装置において、
前記反応容器の洗浄前の吸光度および洗浄後の吸光度を測定する測光手段と、
前記反応容器の洗浄前の吸光度および洗浄後の吸光度をもとに洗浄後の反応容器に水残りがあるか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記測光手段は、前記測光器であることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記判定手段は、短波長側での洗浄前後の反応容器の吸光度差が、長波長側での洗浄前後の反応容器の吸光度差に比して大きい場合に水残りがあると判定することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記判定手段は、最短波長での洗浄前後の反応容器の吸光度差が、最長波長での洗浄前後の反応容器の吸光度差に比して大きい場合に水残りがあると判定することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記判定手段は、最短波長での洗浄前後の反応容器の吸光度差が、最長波長での洗浄前後の反応容器の吸光度差に比して大きい場合、最短波長および最長波長を除く各吸光度における洗浄前後での反応容器の吸光度差を求め、最短波長および最長波長を含む各波長の吸光度差が短波長側に向けて大きくなっている場合に、水残りがあると判定することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記判定手段が水残りがあると判定した場合、該判定された反応容器の使用不可に関する情報を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記判定手段は、分析処理を開始する前の前処理時に行う反応容器の洗浄前後の吸光度をもとに分析開始前の反応容器に水残りがあるか否かを判定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記反応容器の洗浄前の吸光度は、分析処理を開始する前の前処理として行う反応容器の洗浄時における洗浄前の吸光度であり、前記判定手段は、該洗浄前の吸光度を、各反応容器の水残り判定に共通して用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−229140(P2009−229140A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72310(P2008−72310)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】