説明

自動分析装置

【課題】試薬保冷庫14内で結露水が試薬容器15に滴下することによる試薬と結露水とのコンタミネーションを防ぐとともに、結露の発生を抑えてバーコードのシール若しくは紙の歪みから来るバーコードの読み取り不良を改善すること。
【解決手段】試薬保冷庫14に冷気送風孔42を設置し、送風管14gを接続して保冷容器40内に冷気を送り込むことによって、試薬取出口41から冷気が放出されて外気の侵入を防いで結露水の発生を抑える。結露水の発生を抑えることによって、試薬と結露水とのコンタミネーションを防ぐとともに、バーコードのシール若しくは紙の湿気によって生ずる歪み等に因るバーコードの読み取り不良を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部の中空領域を低温流体が還流する保冷容器を備え、収納される試薬を保冷する試薬保冷庫を有する自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の試料を自動的に分析する装置として、試薬が分注された反応容器に試料を加え、反応容器内の試薬と試料の間で生じた反応を光学的に検出する自動分析装置が知られている。このような自動分析装置では、使用する試薬をたとえば12℃以下に保冷できる試薬保冷庫内に設置して、室温での試薬の変性を抑制し分析精度を保持している。この試薬保冷庫は、内部が中空である二重壁構造の保冷容器を有し、この保冷容器内部に冷却液を環流させることで、試薬保冷庫内を保冷している。
【0003】
ところが、試薬保冷庫内に湿気を含む外気が侵入すると、庫内と外気の温度差によって試薬保冷庫内壁および試薬取出口近傍に結露が発生する。このとき、試薬取出口の真下には試薬容器があり、結露水が試薬容器に滴下されると試薬に影響を及ぼす恐れがある。また、試薬容器側面に付されているバーコードも結露水によってシールまたは紙が歪み、読み取り不良の問題が発生する。これらの問題に対して、蓋上面を傾ける若しくは吸引予定の無い場合でも試薬容器の移送を継続させる方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−300847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の自動分析装置では、結露水が滴下によって混入しないように試薬容器の位置を調節するものであり、結露の発生自体を抑制するものではない。また、結露が発生する限り、バーコードのシールの歪みによって発生する読み取り不良の問題も解決には至らない。このため、結露水と試薬とのコンタミネーションの発生や、バーコードのシール材の歪みの発生が生じる場合があるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、結露の発生を確実に防止することができる試薬保冷庫を有した自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる自動分析装置は、試薬取出口を有する試薬保冷庫を備えた自動分析装置において、温度調節器によって設定温度に調節された冷気を前記試薬保冷庫内に送り込む冷気送風手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記冷気送風手段は、前記試薬保冷庫側壁、あるいは前記試薬取出口側壁に冷気送風孔を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記冷気送風孔は、前記試薬取出口に向けて冷気送風配管を保持し、該冷気送風配管を介して前記試薬保冷庫内に冷気を送り込むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記冷気送風配管は、前記試薬保冷庫接続部、あるいは試薬取出口接続部が直線状の配管であって、平行に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記試薬保冷庫は、前記冷気を排気する冷気排気孔を備え、該排気孔に前記温度調節器に繋ぐ冷気排気配管を接続して庫内の冷気を循環させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記排気孔は、前記冷気送風孔の正面に設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる自動分析装置では、試薬保冷庫側壁に冷気を送り込む配管を設置して試薬取出口から冷気を放出させることで、その放出される風圧によって外気が試薬保冷庫内に入り込むのを防ぐため、試薬保冷庫内に結露が発生せず、試薬が滴下した結露水によってコンタミネーションすることを防ぐという効果を奏する。また、試薬保冷庫内に結露が発生しないためにバーコードのシールが湿気によって歪むことはなく、バーコードの読み取り不良を改善するという効果を奏する。さらに、試薬保冷庫内に送り込まれて試薬取出口から排出されなかった冷気は試薬保冷庫内を循環するため、庫内の保冷をより均一にすることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について、液体試料を光学的に分析する自動分析装置に使用される試薬保冷庫を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における自動分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる自動分析装置1は、分析対象である試料および試薬を反応容器21にそれぞれ分注し、分注した反応容器21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の試料の分析を自動的に行う。
【0016】
測定機構2は、血液や尿等の液体試料を収容した複数の試料容器11aを保持し図中の矢印方向に順次移送する複数の試料ラック11bを移送する試料移送機構11と、アーム12aの先端部のプローブによる試料吸引後に反応容器21に試料を吐出して分注を行う試料分注機構12と、反応容器21への試料や試薬の分注、反応容器21の攪拌、洗浄または測光を行うために反応容器21を所定の位置まで移送する反応槽13と、反応容器21内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収納できる試薬保冷庫14と、アーム17aの先端部のプローブによる試薬吸引後に反応容器21に試料を吐出して分注を行う試薬分注機構17と、反応容器21に分注された試料と試薬との攪拌を行なう攪拌部18と、反応容器21内の液体の光学的特性を測定する測光部19と、測光部19による測定が終了した反応容器21を洗浄する洗浄部20とを備える。
【0017】
制御機構3は、CPU等を用いて構成され自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する制御部31と、試料の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する入力部32と、測光部19の測定結果をもとに試料を分析する分析部33と、試料の分析結果等を含む諸情報を記憶する記憶部34と、試料の分析結果を含む諸情報を出力する出力部35とを備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0018】
以上のように構成された自動分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器21に対して、試料分注機構12が試料容器11a中の試料を分注し、試薬分注機構17が試薬容器15中の試薬を分注した後、測光部19が試料と試薬とを反応させた状態の試料の分光光度測定を行い、この測定結果を分析部33が分析することで、試料の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄部20が測光部19による測定が終了した後に搬送される反応容器21を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0019】
つぎに、図1に示す試薬保冷庫14について詳細に説明する。図2は、実施の形態1に用いられる試薬保冷庫14を模式的に示す断面図である。
【0020】
試薬保冷庫14には複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器15が着脱自在に収納される。そして、図2に示すように、試薬保冷庫14には、本体部14cと、蓋14bとが設けられている。本体部14cは、外部が断熱部材14d、内部が保冷容器40で形成されている。
【0021】
本体部14c内部に設置されている試薬トレイ14aは、各試薬容器15が設置され、モータ14eが駆動することによって試薬保冷庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動して、所望の試薬容器15を試薬分注機構17による所定位置まで移送する。蓋14bは、開閉自在であり、試薬保冷庫14の上方に設けられ試薬の蒸発や変性を抑制する。また、蓋14bには試薬分注機構17のプローブの挿入口である試薬取出口41が備えられている。本体部14c外部の断熱部材14dは、保冷容器40による冷却効率を高める。
【0022】
保冷容器40には、冷却液の保冷容器40への流入および保冷容器40を環流した冷却液の流出のための配管が挿入可能である挿入口が設けられる。保冷容器40は、内部が中空である二重壁構造を有し、内部の中空領域14fを冷却液が還流可能となっている。設定温度に冷却された冷却液は、図示しない冷却液入口から中空領域14fに流れ、保冷容器40内を還流して図示しない冷却液出口から排出され、図示しない冷却器に送られる。冷却器で設定温度に調節された冷却液は、再び冷却液入口に送られて保冷容器40内を還流する。
【0023】
送風管14gは、保冷容器40の側壁上の試薬取出口41近傍に設置された冷気送風孔42に接続され、温度調節器43によって設定温度に調節された冷気を保冷容器40内に送り込む。送風管14gから保冷容器40内に送り込まれた冷気は、試薬取出口41から外部に放出される流れと試薬容器15の上部を通過する流れとの2つに分かれる。試薬容器15上部を通過する冷気は、後から送り込まれる冷気に押され保冷容器40内を循環するようになる。
【0024】
ここで、保冷容器40内を循環する冷気は、蓋14bと本体部14cの隙間等から外部へと放出されるが、試薬取出口41からの外部放出は送風管14gから絶えず送られている冷気がエアカーテンの効果を生むために、その流路によって保冷容器40内の冷気は、外部に放出されない。また、冷気の外部への放出量に比べて送風管14gからの挿入量が多いため、保冷容器40内に冷気が溜まり、その冷気によって保冷容器40の内部圧力が上がる。保冷容器40内の内部圧力が飽和状態に達すると、保冷容器40内を循環している冷気が送風管14gから送り出される冷気を押し上げて試薬取出口41から放出される冷気量が増加するため、試薬取出口41から放出される冷気の圧力は上がる。送風管14gから送り込まれる冷気の出力が一定の場合、試薬取出口41から放出される冷気の放出量は、冷気を送り始めて飽和したときに若干増加し、その後一定量で放出を続ける。
【0025】
図3に、送風管14gの設置例を示す。図3は、試薬保冷庫14における送風管14g近傍を一部破断した断面斜視図である。保冷容器側面に設置された冷気送風孔42は、試薬取出口41を覆うよう試薬取出口41の直径以上の幅で配置され、送風管14gから冷気が送風されている間は絶えず試薬取出口41から冷気が放出される。また、蓋14bと本体部14cとの隙間等からも絶えず冷気が放出されるため、外気が保冷容器40内に侵入することはなく、湿気を含んだ外気によって保冷容器40内に結露が発生することはない。
【0026】
さらに、保冷容器40の上部から平行に冷気を送り込むことで、冷気が保冷容器40を覆うような流れとなり、エアカーテンのような効果を生む。この効果は、試薬容器15の交換等で蓋14bを開閉する場合に、冷気がエアカーテンとなり蓋14bを開けている時にも外気の侵入を防止する効果がある。
【0027】
また、保冷容器40内に結露が発生しないことから、湿度によって発生するバーコードのシール材若しくは紙の歪み等の影響もなくなり、バーコードの読み取り不良も改善される。
【0028】
ここで、送風管14gは、図4に示す断面図のように、蓋14b内部を経由してもよい。送風管14gが蓋14b内部に配置されることによって、冷気送風孔42が試薬取出口41側壁に形成される。冷気送風孔42から送り込まれる冷気は、冷気送風孔42の正面の試薬取出口41側壁に進路を遮られ、保冷容器40内部に向かう進路と、試薬保冷庫14外部に放出される進路に分けられる。また、試薬取出口41が形成する内部空間には、冷気送風孔42から送り込まれる冷気によってエアカーテンの効果を生むため、外気の侵入を防ぐことができる。
【0029】
ここで、従来の自動分析装置においては、試薬取出口から外気が侵入し結露が発生していたため、蓋14b内部に傾斜をかけて結露水の滴下位置を調節する方法や、試薬トレイを回転させて結露水の滴下位置に試薬容器が来ないよう調節する方法によって試薬容器に結露水が混入しない対処はされているが、結露水が存在するために全く影響を受けないとは言えない。また、保冷容器40内の湿度が上昇するためにバーコードのシール材が歪み、バーコードの読み取りに影響を及ぼす場合もあった。
【0030】
これに対し、本実施の形態1では外気が保冷容器40に侵入することはないため、結露が発生せず、結露水も生じない。したがって、試薬が結露水とコンタミネーションを起こすこともなくなり、バーコードのシール材の歪みも解消される。また、若干の外気が入り込んでいる場合も、送風管14gの冷気によって暖かい湿った外気が分散されるために滴下するほどの大きな結露が発生しにくいという効果がある。
【0031】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、冷気排出孔44を設置して保冷容器40内の冷気を吸引することで容器内の循環を促進させるようにしている。
【0032】
図5は、本実施の形態2にかかる自動分析装置の試薬保冷庫の断面を示す模式図である。図5において、送風管14gから送り込まれた冷気は、実施の形態1と同様に、保冷容器40内に流れ込む流路と試薬取出口41から外部に放出される流路との2方向に分かれる。また、保冷容器40内に流れ込む冷気は、冷気送風孔42の反対側である正面に設置された冷気排出孔44に吸引される流路と、吸引されずに保冷容器40内を循環する流路との2方向に分かれる。冷気排出孔44によって吸引され排出管14hに送られた冷気は、温度調節器43で設定温度に調節されて送風管14gに送られ、再び保冷容器40内を循環する。
【0033】
ここで、保冷容器40内では、冷気が冷気送風孔42から冷気排出孔44に向かって引き寄せられるため、保冷容器40内に在る冷気の循環は、冷気排出孔44から引き寄せない場合と比べてより広く循環が可能となり、庫内全体の保冷をより安定化させる。また、保冷容器40上部に冷気排出孔44を設置したことによって、冷気送風孔42から送り込まれた冷気は実施の形態1よりも安定して保冷容器40上面を通過することとなり、エアカーテン作用がより効果的となる。さらに、適宜、試薬トレイ14aが回転するため、その回転による影響も受けながら保冷容器40内に冷気が分散され、冷気の循環効率および均一性が上がる。
【0034】
また、実施の形態1,2では、保冷容器40上方に孔を設けたが、冷気送風孔42は試薬取出口41からの冷気の放出が可能である任意の位置に設置しても良く、さらに、冷気排出孔44は保冷容器40内の冷気の循環を助長する位置であれば良い。また、実施の形態1,2では、冷気送風孔42は試薬取出口41を覆える程度であったが、試薬取出口41から冷気の放出があれば、縦横の長さは大きくとも小さくとも良く、円形でも楕円形でも良い。さらに、エアカーテン作用の効果を高めたい場合は、保冷容器40を取り巻く横の長さを長くすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の要部構成を示す模式図である。
【図2】図1に示した実施の形態1の自動分析装置の試薬保冷庫の断面を示す断面図である。
【図3】試薬保冷庫における送風管設置付近を模式的に示す断面斜視図である。
【図4】図1に示した実施の形態1の自動分析装置の試薬保冷庫の断面を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2にかかる自動分析装置の試薬保冷庫の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 自動分析装置
2 測定機構
3 制御機構
11 試料移送機構
11a 試料容器
11b 試料ラック
12 試料分注機構
12a,17a アーム
13 反応槽
14 試薬保冷庫
14a 試薬トレイ
14b 蓋
14c 本体部
14e モータ
14f 中空領域
14g 送風管
14h 排出管
15 試薬容器
17 試薬分注機構
18 攪拌部
19 測光部
20 洗浄部
21 反応容器
31 制御部
32 入力部
33 分析部
34 記憶部
35 出力部
40 保冷容器
41 試薬取出口
42 冷気送風孔
43 温度調節器
44 冷気排出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬取出口を有する試薬保冷庫を備えた自動分析装置において、
温度調節器によって設定温度に調節された冷気を前記試薬保冷庫内に送り込む冷気送風手段を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記冷気送風手段は、前記試薬保冷庫側壁、あるいは前記試薬取出口側壁に冷気送風孔を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記冷気送風孔は、前記試薬取出口に向けて冷気送風配管を保持し、該冷気送風配管を介して前記試薬保冷庫内に冷気を送り込むことを特徴とする請求項1および2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記冷気送風配管は、前記試薬保冷庫接続部、あるいは前記試薬取出口接続部が直線状の配管であって、平行に配置されることを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記試薬保冷庫は、前記冷気を排気する冷気排気孔を備え、該排気孔に前記温度調節器に繋ぐ冷気排気配管を接続して庫内の冷気を循環させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記排気孔は、前記冷気送風孔の正面に設置されることを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−270857(P2009−270857A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119711(P2008−119711)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】