説明

自動分析装置

【課題】 設置面積を増大させること無しに試薬の収容室数を増加する。
【解決手段】 試薬ラック22b,22cは、共通の軸心周りを個別に回転可能に支持され、軸心に沿って並んで配置される。試薬ラック22b,22cは、回転機構によって個別に回転される。分注プローブ28a,28bは、試薬ラック22b,22cに収容された試薬ボトル21から試薬を吸引する。直線移動機構は、試薬ラック22b,22cと分注プローブ28a,28bとの前記軸心方向についての相対的な位置関係を変化させるように、分注プローブ28a,28bをそれぞれ移動させる。試薬ラック22b,22cはそれぞれ、試薬を収容可能で上部に開口を有した試薬室を、上記の軸心を中心とする円に沿って配列した状態で複数保持する。上側である試薬ラック22bは、分注プローブ28a,28bの通過経路となる切欠部221を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器に収容された血液や尿などの試料に試薬を混合した混合液の性質に基づいて上記の試料を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置では、複数の反応容器に分注された試料に対して、複数の検査項目のそれぞれに応じた試薬を混合させる。このため、実施可能な検査の項目数を増加させるためには、多くの種類の試薬を用意する必要がある。そして、このような事情から、多種類の試薬を収容できる試薬庫が必要とされており、そのための種々の工夫がなされた自動分析装置が知られている。
【0003】
例えば、多数の試薬ボトルを多重円状に配列した試薬庫を備えた自動分析装置が知られている(特許文献1を参照)。
【0004】
あるいは、分析用および補助用の試薬庫をそれぞれ設け、試薬自動ローディング機構を使って補助用の試薬庫から分析用の試薬庫に試薬ボトルを移動させる自動分析装置が知られている(特許文献2を参照)。
【特許文献1】特許第3274325号公報
【特許文献1】特許第4033060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自動分析装置では、1つの試薬ボトルの容積および高さを一定とすると、試薬ボトルを増加させるほど試薬庫の占有面積が大きくなるため、自動分析装置がその設置面積が増大するように大型化してしまう。
【0006】
一方、特許文献2の自動分析装置では、分析用および補助用の試薬庫を水平方向に並べて配置するため、自動分析装置がその設置面積が増大するように大型化してしまう。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、設置面積を増大させること無しに試薬の収容室数を増加した自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による自動分析装置は、反応容器に収容された試料および試薬の混合液の性質に基づいて前記試料を分析する自動分析装置において、共通の軸心周りを個別に回転可能に支持され、前記軸心に沿って並んで配置された複数の保持部材と、前記複数の保持部材を個別に回転させる回転機構と、前記試薬を吸引するプローブと、前記複数の保持部材と前記プローブとの前記軸心方向についての相対的な位置関係を変化させるように、前記複数の保持部材および前記プローブの少なくとも一方を移動させる移動機構とを具備し、前記複数の保持部材はそれぞれ、前記試薬を収容可能で上部に開口を有した試薬室を、前記軸心を中心とする円に沿って配列した状態で複数保持し、前記複数の保持部材のうちの最下段以外に位置する前記保持部材は、当該保持部材に対して相対的に移動される前記プローブの通過経路となる切欠きまたは孔を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設置面積を増大させること無しに試薬の収容室数を増加できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る自動分析装置について説明する。
【0011】
図1は本実施形態に係る自動分析装置100の一部の構成を示す斜視図である。
【0012】
この自動分析装置100は、サンプル部1、試薬部2および反応部3を含む。
【0013】
サンプル部1は、試料容器11a,11b、サンプラ12a,12b、ラック13、アーム14、分注プローブ15およびポンプ16を含む。
【0014】
試料容器11a,11bは、キャリブレータ、精度管理用試料、あるいは被検試料などのサンプルを収容する。試料容器11bは、小児などから採取した微量の被検試料を吸引可能に収容する。つまり試料容器11bは、試料容器11aよりも水平断面が小さく、収容された微量の被検試料の水面を試料容器11aよりも高くすることができる。
【0015】
サンプラ12aは、多数の試料容器11aを円周状に2列配列してセットできる。サンプラ12aは、回転することによって、セットされている試料容器11aを上記の円周に沿って移動させる。サンプラ12aにおける試料容器11aをセットする位置のそれぞれは、キャリブレータ用のセット位置または精度管理用試料のセット位置に予め割り当てられている。キャリブレータを収容した試料容器11aは前者のセット位置にセットされ、精度管理用試料を収容した試料容器11aは後者のセット位置にセットされる。
【0016】
サンプラ12bは、多数のラック13をセットできる。ラック13は、複数の試料容器11a,11bを直線状に配列してセットできる。ラック13は、試料容器11a,11bの配列方向に直交する方向に沿って配列される。サンプラ12bは、ラック13をその配列方向に移動させる。またサンプラ12bは、サンプルを吸引する位置においては、ラック13をその配列方向に直交する方向にも移動させる。ラック13における試料容器11a,11bをセットする位置のそれぞれは、被検試料のセット位置に予め割り当てられており、被検試料を収容した試料容器11a,11bがこのセット位置にセットされる。
【0017】
アーム14は、回動が可能なように一端において支持されている。アーム14の他端には、分注プローブ15が取り付けられている。アーム14は、分注プローブ15を鉛直方向に移動可能なように支持する。かくしてアーム14は、分注プローブ15を円弧状の軌道に沿って移動させたり上下動させる。
【0018】
分注プローブ15は、内部に細い空洞を有していて、この空洞にアーム14を介してポンプ16が接続されている。分注プローブ15は、ポンプ16によって空洞内が負圧とされることによって、サンプルを吸引する。そして分注プローブ15は、ポンプ16によって空洞内の負圧が解消されることによって、サンプルを吐出する。分注プローブ15の先端には、サンプルの液面を検出するためのセンサが設けられており、分注プローブ15の先端がサンプルの液面から例えば2mm程度の所定の深さまで入った際に液面を検出するようになっている。
【0019】
ポンプ16は、水などの圧力伝達媒体を吸引することによって分注プローブ15の空洞内を負圧とし、上記の圧力伝達媒体を吐出することによって分注プローブ15の空洞内の負圧を解消する。
【0020】
試薬部2は、試薬ボトル21、試薬ラック22a,22b,22c、アーム23a,23b,24a,24b、脚部25a,25b,26a,26bおよび分注プローブ27a,27b,28a,28bを含む。
【0021】
試薬ボトル21は、サンプルに対して選択的に反応する試薬を収容する。
【0022】
試薬ラック22a,22b,22cは、それぞれ複数の試薬ボトル21を収納する。試薬ラック22a,22b,22cはそれぞれ、上面を開口したほぼ円柱状の容器である。試薬ラック22a,22b,22cはそれぞれ、複数の試薬ボトル21を円周状に2列配列した状態で収容できる。試薬ラック22a,22b,22cは、図1では示されていない後述する回転機構によってそれぞれ回転される。かくして、試薬ボトル21の内部空間が試薬室として機能する。そして試薬ラック22b,22cは、試薬ボトル21を収容するとこで、試薬室を保持する保持部材として機能する。
【0023】
アーム23a,23b,24a,24bは、その一端が脚部25a,25b,26a,26bによってそれぞれ支持されている。アーム23a,23b,24a,24bの他端には、分注プローブ27a,27b,28a,28bがそれぞれ取り付けられている。アーム23a,23b,24a,24bは、脚部25a,25b,26a,26bによって支持されているのとは反対側の端部に分注プローブ27a,27b,28a,28bをそれぞれ支持する。
【0024】
脚部25a,25b,26a,26bは、図1では図示されていない周知の構造の回転機構によってそれぞれ回転されることによって、アーム23a,23b,24a,24bをそれぞれ回動させる。脚部25a,25b,26a,26bは、図1においてはその一部のみが示されていて、実際には図示されているよりも長い。そして脚部25a,25b,26a,26bは、図1では図示されていない周知の構造の直線移動機構によってそれぞれに鉛直方向に直線移動される。
【0025】
分注プローブ27a,27b,28a,28bは、アーム23a,23b,24a,24bおよび脚部25a,25b,26a,26bによって、それぞれ円弧状の軌道に沿って移動したり、上下動する。分注プローブ27a,27b,28a,28bは、内部に細い空洞を有していて、この空洞にアーム23a,23b,24a,24bおよび脚部25a,25b,26a,26bを介して図示しないポンプがそれぞれに接続されている。分注プローブ27a,27b,28a,28bは、分注プローブ15と同様にして、試薬を吸引・吐出する。
【0026】
反応部3は、反応容器群31、ディスク32、撹拌ユニット33a,33b、測光ユニット34および洗浄ユニット35を含む。
【0027】
反応容器群31は、第1および第2の測定チャネルにそれぞれ割り当てられる多数ずつの反応容器31a,31bを交互に、かつ円周状に配列して形成される。反応容器31a,31bは、サンプルと試薬との混合液を収容する。
【0028】
ディスク32は、反応容器群31を回転可能に保持する。ディスク32は、反時計回りに、一定角度を4分析サイクルの間に回転する。1分析サイクルは、例えば4.5秒である。一定角度は、例えば1つずつの反応容器31a,31bに相当する角度を360度に加えた角度とする。あるいは、1つずつの反応容器31a,31bに相当する角度を360度から差し引いた角度とする。ディスク32は、時計回りに回転させるようにしてもよい。
【0029】
撹拌ユニット33aは、2つの撹拌子を備える。撹拌ユニット33aは、反応容器31a,31bの上方にそれぞれ相当する2つの撹拌位置と、これとは異なる2つの洗浄位置との間で2つの撹拌子を移動させることができる。また撹拌ユニット33aは、2つの撹拌子を鉛直方向に移動させることができる。撹拌ユニット33aは、2つの洗浄位置において2つの撹拌子をそれぞれ洗浄する機能を備える。この撹拌ユニット33aは、反応容器31a,31bに分注されたサンプルと第1の試薬とを撹拌するために使用される。
【0030】
撹拌ユニット33bは、2つの撹拌子を備える。撹拌ユニット33bは、反応容器31a,31bの上方にそれぞれ相当する2つの各半日と、これとは異なる2つの洗浄位置との間で2つの撹拌子を移動させることができる。また撹拌ユニット33bは、2つの撹拌子を鉛直方向に移動させることができる。撹拌ユニット33bは、2つの洗浄位置において2つの撹拌子をそれぞれ洗浄する機能を備える。この撹拌ユニット33bは、反応容器31a,31bに分注されたサンプルと第1の試薬と第2の試薬とを撹拌するために使用される。
【0031】
測光ユニット34は、反応容器31a,31bが測光位置を通過する時に光を照射して、透過した光から設定波長の吸光度を測定する。そして測光ユニット34は、測定した吸光度を表す信号として分析信号を生成する。
【0032】
洗浄ユニット35は、洗浄ノズルおよび乾燥ノズルを備える。洗浄ユニット35は、洗浄ノズルにより、反応容器31a,31b内の混合液を吸引するとともに洗浄する。また洗浄ユニット35は、洗浄後の反応容器31a,31b内を乾燥ノズルにより乾燥する。洗浄ユニット35で洗浄および乾燥された反応容器31a,31bは、測定に再び使用される。
【0033】
さて、試薬ラック22aは、ディスク32の内側に配置されている。試薬ラック22aの回転軸心は、ディスク32の回転軸心にほぼ一致する。試薬ラック22b,22cは、それぞれの回転軸心がほぼ一致するように、その軸心方向に沿って並べて配置されている。すなわち試薬ラック22b,22cは、試薬ラック22bを上層として2層に配置されている。
【0034】
試薬ラック22bは、その回転軸心を中心とする円周方向についての一部に切欠部221が形成されている。この切欠部221は、試薬ラック22bの回転軸心に沿った方向に貫通している。
【0035】
試薬ラック22cには、図2に示すように切欠部221が形成されていない。
【0036】
ところで、一般に自動分析装置の外筐体の内部には冷却空間が設けられ、この冷却空間にて試薬を冷却しておくことが行われている。そこで自動分析装置100においても、試薬ラック22a,22b,22cが冷却空間内に配置されても良い。ただしこのような構造を実現する場合には、上側の試薬ラック22a,22bやディスク32の上端が自動分析装置100の外筐体の上端近傍に位置するように配置することが好ましい。すなわち、試薬ラック22b,22cは、図1に示される位置よりも下方に配置されることになる。
【0037】
図3,4は試薬ラック22b,22cを回転させる回転機構4の構成を示す図であり、図3は斜視図、図4は側面図である。
【0038】
回転機構4は、軸部材41,42、ギア43,44,45,46およびモータ47,48を含む。
【0039】
軸部材41,42は、それぞれの一端が試薬ラック22b,22cにそれぞれ固着されている。軸部材41,42は、図示しない個別の軸受けなどを介して自動分析装置100の筐体などにそれぞれ支持されている。軸部材42は、貫通孔を有しており、この貫通孔に軸部材41が挿入されている。軸部材41,42は、それぞれの回転を互いに妨げない。
【0040】
ギア43,44は、軸部材41,42にそれぞれ固着されている。ギア45,46は、ギア43,44にそれぞれ噛み合っている。ギア45,46は、モータ47,48のそれぞれの軸部材にそれぞれ固着されている。
【0041】
モータ47,48は、例えば電磁式の回転モータであり、それぞれの軸部材を回転する。
【0042】
次に以上のように構成された自動分析装置100の動作について説明する。
【0043】
なお、試薬ラック22b,22cに収容された試薬ボトル21からの試薬の吸引以外のプロセスについては周知の自動分析装置と同様なので、ここではその説明は省略する。そして以下では、試薬ラック22b,22cに収容された試薬ボトル21から試薬を吸引するための動作について説明する。以下においては、吸引対象となる試薬が収容されている試薬ボトル21を、対象試薬ボトル21xと称する。
【0044】
(1) 試薬ラック22bの外側列を形成する試薬ボトル21の1つが対象試薬ボトル21xである場合。
【0045】
(1-1) モータ47を回転させて、分注プローブ27a用の吸引位置Paに対象試薬ボトル21xを位置させる(図5に示す状態)。
【0046】
(1-2) 分注プローブ27aの先端が試薬ラック22bの上端よりも上方となるまでアーム23aを上昇させる。アーム23aは、直線移動機構30aによって脚部25aを鉛直方向に移動させることによって昇降可能である。
【0047】
(1-3) アーム23aを回転させて分注プローブ27aを対象試薬ボトル21xの直上に位置させる(図6に破線で示す状態)。アーム23aは、回転機構29aによって脚部25aを回転させることによって回転可能である。
【0048】
(1-4) 分注プローブ27aの先端が対象試薬ボトル21x内の試薬に到達するまでアーム23aを下降させる(図6に実線で示す状態)。
【0049】
(1-5) 分注プローブ27aにより対象試薬ボトル21x内の試薬を吸引する。
【0050】
(2) 試薬ラック22bの内側列を形成する試薬ボトル21の1つが対象試薬ボトル21xである場合。
【0051】
(2-1) モータ47を回転させて、分注プローブ27b用の吸引位置に対象試薬ボトル21xを位置させる。
【0052】
(2-2) 分注プローブ27bの先端が試薬ラック22bの上端よりも上方となるまでアーム23bを上昇させる。アーム23bは、直線移動機構30aと同様に設けられた別の直線移動機構によって脚部25bを鉛直方向に移動させることによって昇降可能である。
【0053】
(2-3) アーム23bを回転させて分注プローブ27bを対象試薬ボトル21xの直上に位置させる。アーム23bは、回転機構29aと同様に設けられた別の回転機構によって脚部25bを回転させることによって回転可能である。
【0054】
(2-4) 分注プローブ27bの先端が対象試薬ボトル21x内の試薬に到達するまでアーム23bを下降させる。
【0055】
(2-5) 分注プローブ27bにより対象試薬ボトル21x内の試薬を吸引する。
【0056】
(3) 試薬ラック22cの外側列を形成する試薬ボトル21の1つが対象試薬ボトル21xである場合。
【0057】
(3-1) モータ47を回転させて切欠部221を吸引位置Paに位置させる(図7に示す状態)。
【0058】
(3-2) モータ48を回転させて分注プローブ27a用の吸引位置Paに対象試薬ボトル21xを位置させる(図7に示す状態)。
【0059】
(3-3) 分注プローブ27aの先端が試薬ラック22bの上端よりも上方となるまでアーム23aを上昇させる。
【0060】
(3-4) アーム23aを回転させて、分注プローブ27aを対象試薬ボトル21xの直上に位置させる(図8に破線で示す状態)。
【0061】
(3-5) 分注プローブ27aの先端が対象試薬ボトル21x内の試薬に到達するまで、切欠部221を通してアーム23aを下降させる(図8に実線で示す状態)。
【0062】
(3-6) 分注プローブ27aにより対象試薬ボトル21x内の試薬を吸引する。
【0063】
なお、(3-1)および(3-2)の工程は、同時または逆順で行われても良い。
【0064】
(4) 試薬ラック22bの内側列を形成する試薬ボトル21の1つが対象試薬ボトル21xである場合。
【0065】
(4-1) モータ47を回転させて切欠部221を吸引位置Paに位置させる。
【0066】
(4-2) モータ48を回転させて分注プローブ27b用の吸引位置に対象試薬ボトル21xを位置させる。
【0067】
(4-3) 分注プローブ27bの先端が試薬ラック22bの上端よりも上方となるまでアーム23bを上昇させる。
【0068】
(4-4) アーム23bを回転させて、分注プローブ27bを対象試薬ボトル21xの直上に位置させる。
【0069】
(4-5) 分注プローブ27bの先端が対象試薬ボトル21x内の試薬に到達するまで、切欠部221を通してアーム23bを下降させる。
【0070】
(4-6) 分注プローブ27bにより対象試薬ボトル21x内の試薬を吸引する。
【0071】
なお、(4-1)および(4-2)の工程は、同時または逆順で行われても良い。
【0072】
以上のように本実施形態によれば、試薬ラック22b,22cに収容された全ての試薬ボトル21から試薬を吸引することが可能である。そして、試薬ラック22b,22cは2層に配置されているので、試薬ラック22b,22cによる自動分析装置100の設置面積の増加量は試薬ラック22cの設置面積程度である。試薬ラック22bにおける試薬ボトル21の最大収容数は、切欠部221を有しているために試薬ラック22cに比べれば少ないが、その差は小さい。かくして本実施形態によれば、試薬ラック22cの設置面積で、試薬ラック22cにおける試薬ボトル21の最大収容数の2倍近くの試薬ボトル21を収容することが可能である。
【0073】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0074】
試薬ラック22bと同様な構造の1つ以上の試薬ラックを、試薬ラック22bの上方に重ねて増設しても良い。ただしこの場合には、最上段の試薬ラックの上端よりも上方まで分注プローブ27a,27bを上昇させられるように、脚部25a,25bの長さを設定しておく。
【0075】
試薬ラック22bと同様な構造の1つ以上の試薬ラックを、試薬ラック22aの上方に重ねて増設しても良い。ただしこの場合には、最上段の試薬ラックの上端よりも上方まで分注プローブ28a,28bを上昇させられるように、脚部26a,26bの長さを設定しておく。
【0076】
試薬ラック22b,22bおよび上記のように増設される試薬ラックのうちの少なくとも一部は、試薬ボトル21を1列のみ配列して収容するもの、または3列以上に配列して収容するものであっても良い。
【0077】
試薬ラックの形状は円柱状以外の任意の形状であって良い。
【0078】
切欠部221は、分注プローブ27a,27bの上昇および下降を妨げないのであれば、どのような形状であっても良い。
【0079】
切欠部221に代えて、孔を形成しても良い。ただしこの場合には、試薬ラックに干渉せずに分注プローブ27a、27bを昇降できるようにアーム23a,23bの形状を工夫するか、あるいは分注プローブ27a、27bを十分に長くする必要がある。
【0080】
アーム23a,23bは昇降させずに試薬ラック22b,22bを昇降させるようにしても良いし、アーム23a,23bおよび試薬ラック22b,22bの双方を、分注プローブ27a,27bと試薬ラック22b,22bとの相対的な位置関係を変化させるように昇降させても良い。
【0081】
前記実施形態では、試薬ボトル21の内部が試薬室となっているが、内部空間を壁部材により区切ることによって複数の試薬室を形成した試薬ラックを用いることもできる。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動分析装置100の一部の構成を示す斜視図。
【図2】図1中の試薬ラック22cの構造を示す斜視図。
【図3】図1中の試薬ラック22b,22cを回転させる回転機構4の構成を示す斜視図。
【図4】図1中の試薬ラック22b,22cを回転させる回転機構4の構成を示す側面図。
【図5】図1中の試薬ラック22bの外側列を形成する試薬ボトル21から試薬を吸引するための試薬ラック22b,22cの状態の一例を示す図。
【図6】図1中の試薬ラック22bの外側列を形成する試薬ボトル21から試薬を吸引するためのアーム23aの動きを説明する図。
【図7】図1中の試薬ラック22cの外側列を形成する試薬ボトル21から試薬を吸引するための試薬ラック22b,22cの状態の一例を示す図。
【図8】図1中の試薬ラック22cの外側列を形成する試薬ボトル21から試薬を吸引するためのアーム23aの動きを説明する図。
【符号の説明】
【0084】
100…自動分析装置、1…サンプル部、2…試薬部、3…反応部、4…回転機構、21…試薬ボトル、22a,22b,22c…試薬ラック、221…切欠部、23a,23b,24a,24b…アーム、25a,25b,26a,26b…脚部、27a,27b,28a,28b…分注プローブ、31a,31b…反応容器、41,42…軸部材、43,44,45,46…ギア、47,48…モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に収容された試料および試薬の混合液の性質に基づいて前記試料を分析する自動分析装置において、
共通の軸心周りを個別に回転可能に支持され、前記軸心に沿って並んで配置された複数の保持部材と、
前記複数の保持部材を個別に回転させる回転機構と、
前記試薬を吸引するプローブと、
前記複数の保持部材と前記プローブとの前記軸心方向についての相対的な位置関係を変化させるように、前記複数の保持部材および前記プローブの少なくとも一方を移動させる移動機構とを具備し、
前記複数の保持部材はそれぞれ、前記試薬を収容可能で上部に開口を有した試薬室を、前記軸心を中心とする円に沿って配列した状態で複数保持し、
前記複数の保持部材のうちの最下段以外に位置する前記保持部材は、当該保持部材に対して相対的に移動される前記プローブの通過経路となる切欠きまたは孔を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記複数の保持部材はそれぞれ、前記軸心を中心として径が異なる複数の円に沿って複数列に配列した状態で複数の前記試薬室を保持することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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