説明

自動分析装置

【課題】異物等により吸光度に問題がある場合であっても、信頼性の高い吸光度データを得ることが可能な自動分析装置を実現する。
【解決手段】反応容器を透過した光の強度から複数の吸光度データを取得し、吸光度データ変化率を算出する(ステップS401、S402)。算出した吸光度データ変化率が許容範囲内か否かを判定し、範囲外の吸光度データを削除し正常な吸光度データだけを吸光度データとし分析する(ステップS403、S405)。分析データの基礎となっている測定データについて、アラーム発生条件設定値の条件を満たしたときには、その旨を示すアラームを付して表示する(ステップS406、S407)。ステップS403でデータ変化率が全て許容範囲内であれば、吸光度データをそのまま使用し演算する(ステップS404)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検査の分野において用いられる自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、臨床検査の分野で用いられる自動分析装置では、複数個の反応容器を順次移送しながら、各反応容器に対してサンプル分注、試薬分注、攪拌、測光および洗浄を行って、反応容器を繰り返し使用するものが一般的になっている。
【0003】
反応容器を繰り返し使用する自動分析装置では、反応容器としてダイレクト測光が可能な測光キュベットを使用する。反応開始前の所定のタイミングから反応開始後、洗浄前の所定のタイミングまでの間に、サンプルと試薬とが入れられた測光キュベットが測光部を通過するごとに光源からの光をその測光キュベットを通して測光し、吸光度などのデータを取得する。
【0004】
さらに、そのような自動分析装置においては、取得した複数の吸光度などのデータの中から測定項目に応じて予め設定された特定の測光ポイントでの測定データを用いて分析を行うようにした全反応過程測光方式を採用するものがある。
【0005】
自動分析装置は、吸光度を測定するために、円周上に連続的に並べられた測光キュベットを回転させながら透過光の光軸を順次測光キュベットに移動させて吸光度を測定する。例えば、このような目的を達成するための技術として、反応容器の円周上に、反応容器と同数の検知板(反応容器位置検知手段)を設けることにより、反応容器の位置を検知させる技術がある。このとき検知板からの信号に従って、反応容器を透過した光の、一定区間の光度を測定し、平均化を行い吸光度を決定している。
【0006】
このような手法では、反応液中に泡や反応容器のキズや汚れなどの異物が存在する場合、それによる透過光の遮断された光度も平均化されてしまう。このため、結果的には反応容器中の反応液の吸光度は高値と誤って読み取られてしまう。
【0007】
また、近年、検体の微量化や試薬のランニングコスト低減を目的に反応容器の小型化が進んでいるため、反応容器の光軸走査上の異物の影響がより問題視されている。
【0008】
このため、例えば、特許文献1には、反応容器の一方端から他方端におよぶ全区間に亘って吸光度の測光を行い、光軸の走査上に気泡などの異物などがあれば吸光度が上昇するため光度推移の波形解析をおこない異物部分を除外して精度の高い測定データに用いる自動分析装置の例が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2007−198739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来技術においては、反応容器の一方端から他方端におよぶ全区間に亘って吸光度を測光することにより異物の検出を行っているが、現在主流の自動分析装置では反応容器の位置検知手段により各々の反応容器の位置を検知しながら検知板からのタイミングを合わせて反応容器の一定区間の光度を測定している。しかも、反応容器の小型化による、反応容器測光範囲区間の減少にともない、測光における異物の影響の度合いが大きくなってきている。よって、多数の泡などによる異常が発生した場合吸光度にいくつもの段差が生じ、どちらが正常の吸光度であり、その吸光度をどう取り扱い処理すべきなのか、あるいは反応容器の汚れや反応液の撹拌不良などにより吸光度の波形が全体的に乱れを生じている場合の正常異常の判別方法など吸光度波形の取り扱い方法ロジックに問題が残っている。
【0011】
また、反応容器固有にキズ又は汚れが生じている場合にも、単に異物が存在するとしか判断できない。また、反応容器固有の吸光度波形の来歴情報が考慮されておらず、過去の波形と比較できないため、異常がある反応容器を何度も使用してしまい、データの信頼性に問題があった。
【0012】
また、異常吸光度データが検出された場合に、原因として考えられる、測光系(光源ランプの劣化、光度計の故障、反応槽の汚れ、反応槽水の気泡の発生、反応槽光源窓の異常など)の異常なのか、試料測定前直前に測定される、反応液として精製水を使い測光する水ブランク測定時(ブランク水不足なのか、気泡が巻き込んでいるのか、異物が存在しているのか)の異常なのか、試料測定時(反応液不足、反応液撹拌不足、気泡の巻き込み、フィブリンなどの異物)の異常なのか、反応容器固有(キズや汚れの付着)の異常なのか、異常発生の原因と異常発生箇所の特定ができず使用者は、対策に時間を要していた。
【0013】
本発明の目的は、異物等により吸光度に問題がある場合であっても、信頼性の高い吸光度データを得ることが可能な自動分析装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の自動分析装置は、次のように構成される。
【0015】
本発明の自動分析装置は、液体を収容する反応容器と、光を発生する光源と、この光源から発生され、上記反応容器を透過した光を測光する分光検知器と、この分光検知器で測光した測光データを記憶するメモリと、上記測光データを演算処理する演算手段とを有する。そして、上記演算処理手段は、一つの反応容器について複数の吸光度データを算出する吸光度データ算出部と、一つの反応容器について複数の吸光度データのそれぞれの変化率を算出する吸光度データ変化率算出部と、上記吸光度データ変化率が所定範囲内か否かを判断し、所定範囲外の変化率である吸光度データを徐外する異常吸光度データ検出部と、上記異常吸光度データ検出部により検出された異常吸光度データを除外し、所定範囲内の吸光度データを用いて、反応容器内の液体を分析する分析データ算出部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、異物等により吸光度に問題がある場合であっても、信頼性の高い吸光度データを得ることが可能な自動分析装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態が適用される自動分析装置の概略構成図である。図1において、自動分析装置1は、分析装置5と、制御コンピュータ6とを備えている。なお、図1における分析装置5は、その上面図を模式的に描いたものである。
【0019】
分析装置5の筐体上には、複数の反応容器35が円周上に配列された反応ディスク36が配置され、この反応ディスク36の内側に試薬ディスク42が配置され、外側に試薬ディスク41が配置されている。そして、その試薬ディスク41、2には、それぞれ複数の試薬容器40が円周上に載置されている。試薬ディスク41、42上では、1つの試薬容器40は、2つに区画され、通常、それぞれ異なる試薬が入れられる。
【0020】
反応ディスク36の近傍には、サンプル容器10が配置されるラック11を移動する搬送機構12が設けられている。また、試薬ディスク41、42の上方部には、レール25、26が設けられ、レール25には、レールと平行な方向および上下方向に移動可能な試薬プローブ20、21が架設され、レール26には、レールと3軸方向に移動可能な試薬プローブ22、23が架設されている。試薬プローブ20〜23は、それぞれ図示されていない試薬用ポンプが接続されている。
【0021】
反応ディスク36上の反応容器35と搬送機構12との間には、回転および上下動可能なサンプルプローブ15、16が設置されている。サンプルプローブ15、16には、それぞれ図示されていないサンプル用ポンプが接続されている。また、反応ディスク36の周囲には、攪拌装置30、31、光源50、測光装置51、容器洗浄機構45が配置されている。容器洗浄機構45には、図示されていない洗浄用ポンプが接続されている。
【0022】
サンプルプローブ15、16、試薬プローブ20〜23、および、攪拌装置30、31のそれぞれの動作範囲には、洗浄ポート54が設置されている。
【0023】
次に、分析装置5の動作について説明する。ここでは、2試薬系の分析法(2種類の試薬を、時間差を設けて検体に分注して反応させる分析法)に従った分析を行うときの動作を説明する。
【0024】
まず、血液などの検査対象の試料が入れられたサンプル容器10は、ラック11に載せられて搬送機構12によってサンプルプローブ15、16の近くまで搬送される。次に、サンプルプローブ15、16は、サンプル容器10から試料を採取し、所定の量を反応ディスク36上に並べられている反応容器35に分注する。
【0025】
続いて、試薬プローブ20、21は、試薬ディスク41または42に載置された試薬容器40から、所定量の第1の試薬を採取し、反応容器35に分注する。攪拌装置30、31は、適宜、反応容器35の試料と試薬とを攪拌する。その後、所定の時間経過後に、試薬プローブ22または23は、反応容器35に試薬ディスク41または42に配置された試薬容器40から所定量の第2の試薬を採取し、反応容器35に分注する。攪拌装置30、31は、適宜、反応容器35の試料と試薬とを攪拌する。
【0026】
さらに、所定の時間経過後に、測光装置51は、光源50が発する光を、反応容器35を通して測定することにより、試薬に反応した試料の吸光度などの測定データを取得し、その取得した測定データを、制御コンピュータ6へ出力する。
【0027】
以上のような分析装置5において、反応ディスク36は、所定時間毎に(例えば1分毎に)1回転+1反応容器分の回転動作と停止動作とを繰り返す。従って、その動作の繰り返しの中で、反応容器35は、停止するたびに1反応容器分ずつ、例えば、反時計回りに回転移動する。
【0028】
そして、反応ディスク36が停止しているときに、試料や試薬がそれぞれ所定の位置にある反応容器35に分注される。また、他の位置にある反応容器35が洗浄されたり、その中の試料が攪拌される。
【0029】
また、反応ディスク36が1回転+1反応容器分の回転動作をするとき、全ての反応容器35は、光源50と測光装置51との間を横切る。従って、測光装置51は、所定時間毎に(例えば1分毎に)、全ての反応容器35内の試薬が分注された試料について、その吸光度などの測定データを取得することができる。
【0030】
なお、図1には示していないが、測光に際しては、反応容器の数に応じた検知板を有する反応容器位置検知手段により、各々の反応容器の位置を検知しながらタイミングを合わせて測光することも可能である。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態に係わる自動分析装置における反応液の吸光度の測光を説明する図である。
【0032】
この図2は、反応容器の回転方向断面601と、透過光の光度推移602とを併せて示している。回転方向断面601は、隣り合う4つの反応容器35の断面を示す。反応容器620には、反応液604が入っている。透過光の光軸の走査605は、反応液604が存在するところが行われる。反応容器35は、反応ディスク36に載って回転するので、透過光の走査605は反応容器35を横切るように行われる。
【0033】
分光検知器51に測光される光度推移602は、測光データ619のように、反応容器35がないところの光度615、反応容器35の壁部分(全部が壁)の光度614、反応液が存在するところの光度613のように測光される。実際、反応液604の測光は、反応容器35の壁の影響や光度測定の立ち上がり尤度を考慮して、測光区間609、610、611、612に示すように各反応容器35の中心付近の一定区間だけで実施される。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係わる自動分析装置における吸光度測定のブロック図である。図3において、測光装置51は、分光器(分光検知器)511と、受光部512と、Logアンプ513と、ADC514とを備えている。
【0035】
光源50からの光は、反応液を透過し、この透過光501は、分光器511により波長別に分光され、受光部512にて電圧に変換される。そして、Logアンプ513にて増幅され、増幅された電圧データ(測光データ)は、ADC514にてデジタル値に変換され、制御コンピュータ6にて吸光度量が決定される。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態に係る自動分析装置の制御コンピュータ6の機能ブロック図である。図4に示すように、制御コンピュータ6は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、記憶装置などからなる情報処理装置60と、キーボード、マウスなどからなる入力装置80と、LCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示装置90とを備えている。
【0037】
また、情報処理装置60は、吸光度データ取得部61、吸光度データ変化率算出部62、補正後吸光度データ算出部63、分析データ算出部64、分析データ表示部65、吸光度データ変化率許容範囲設定部66、異常吸光度データデータ検出部67などの処理機能ブロックと、吸光度データ記憶部71、吸光度データ変化率記憶部72、補正後吸光度データ記憶部73、分析データ記憶部74、吸光度データ変化率許容範囲記憶部75などの記憶機能ブロックとを備えている。
【0038】
ただし、これらの機能ブロックは、本発明の一実施形態における機能ブロックであり、情報処理装置60は、このほかにも分析装置の動作制御などを行う他の多数の機能ブロックを有するが、それらの機能ブロックの説明は、省略する。
【0039】
以下、図5に示したフローチャートを参照して、図4に示した制御コンピュータ6を構成する機能ブロックのそれぞれの機能について説明する。
【0040】
吸光度データ取得部61は、測光装置51によって増幅された電圧データ(吸光度データ)をデジタル値に変換し吸光度データを取得する(ステップS401)。その取得した吸光度データを吸光度データ記憶部71に格納する。吸光度データ記憶部71では、複数の反応容器35各々について、測光時の定められた一定区間の吸光度データとして吸光度データ記憶部71に保管される。
【0041】
本明細書では、その一定区間内の時系列の生吸光度データを、m(i) (i=1,2・・・,n) とあらわす。ここで、iは、時系列の順番をあらわす数である。
【0042】
吸光度データ変化率算出部62は、上記時系列の測定データm(i)の吸光度データ変化率v(i)を算出し(ステップS402)、その算出した吸光度データ変化率を吸光度データ変化率記憶部72に格納する。
【0043】
吸光度データ変化率許容範囲設定部66は、入力装置80から入力される吸光度データ変化率チェック画面のチェック値をそれぞれ読み取って、その読み取ったチェック値を吸光度データ変化率許容範囲記憶部75に格納する。
【0044】
異常吸光度データ検出部67は、後述するように、一定区間内の時系列の吸光度データ毎に算出した、吸光度データ変化率が、吸光度データ変化率許容範囲記憶部75に記憶されているチェック値との範囲内に含まれているか否かを判定し(ステップS403)、そのチェック値の範囲内に含まれていなかったときには、その吸光度データを異常吸光度データとして検出する。補正後吸光度データ算出部63は吸光度データ記憶部71の吸光度データから異常吸光度データ箇所を削除し正常な吸光度データだけを算出し、処理後吸光度データとして、補正後吸光度データ記憶部73に格納する(ステップS405)。
【0045】
分析データ算出部64は、補正後吸光度データ記憶部73に記憶された吸光度データに基づき、その吸光度データが取得された試料の分析項目に応じて所定の演算を行い、その試料に対する分析データを算出する。そして、その算出した分析データを分析データ記憶部74へ格納する。分析データ表示部65は、分析データ記憶部74に格納されている分析データを表示装置90に表示する。その際、その分析データの基礎となっている測定データについて、異常吸光度データ検出部67によって異常吸光度データが検出されアラーム発生条件設定値の条件を満たしたときには、その分析データに対して、異常吸光度データが検出された旨を示すアラームを付して表示する(ステップS406、S407)。また、分析データ表示部65は、必要に応じて、吸光度データ記憶部71、吸光度データ変化率記憶部72および正常処理後吸光度データ記憶部73に格納されている吸光度データそのものをグラフなどの形で表示する。
【0046】
ステップS403で、吸光度データ変化率が、吸光度データ変化率許容範囲記憶部75に記憶されているチェック値との範囲内に含まれている場合は、データ算出部63は、吸光度データをそのまま使用し演算する(ステップS404)。
【0047】
なお、以上に説明した情報処理装置60の各処理機能ブロックの機能は、情報処理装置60の図示しないCPUが図示しない記憶装置に格納された所定のプログラムを実行することによって実現される。また、情報処理装置60の各記憶機能ブロックは、記憶装置上に構成されたテーブルやファイルによって実現される。
【0048】
次に、図6を参照して、吸光度データ変化率許容範囲の設定について説明する。ここで、図6は、本発明の一実施形態における制御コンピュータ6の吸光度データ変化率許容範囲設定画面の一例を示した図である。
【0049】
図6に示すように、分析作業者は、吸光度データ変化率チェック画面において上限値を設定する。ここでいう吸光度データは測光時の一定区間内例えば2msの測光において、0.2ms間隔で細分化測光し、AD変換し細分化した個々の吸光度データを示す。つまり、本発明の一実施形態における細分化された個々の吸光度データm(i)は、m(i) (i=1,2・・・,10)と表すことができる。
【0050】
信頼性を確保できないレベルの異常吸光度データを検出した旨を表示するアラーム条件設定は、上記設定した上限値を超えた吸光度データの検出数が、図6の異常吸光度検出アラーム設定部1000にて設定した異常データ割合(%)以上になった場合あるいは吸光度データ変化率全点のばらつき(SD)標準偏差が設定値以上になった場合に、吸光度データに異常を示したアラームを出力する。なお、吸光度データ変化率全点のばらつき(SD)標準偏差は、吸光度データ変化率算出部62または異常吸光度データ検出部67にて算出する。
【0051】
ここで、異常吸光度アラームを監視する測光ポイントは、本発明の一実施形態における自動分析装置の分析法である1ポイント分析法あるいはレート分析法など各分析法で設定されている測光ポイントにおいてのみ実施する。これは、例えば反応液撹拌直後の測光ポイントの吸光度データは不安定な状態であり、もともと測定データとしては必要の無い測定ポイントの吸光度であるため監視する必要が無く、むやみに異常吸光度データアラームを発生させないためである。
【0052】
アラーム監視する必要がある測定ポイントにおいての吸光度を算出するときは、吸光度データm(i)の異常を検出するために、例えば吸光度データm(i)がm(1)〜m(10)の10点ある場合、図6に示すように、異常データ割合(%)入力値“70”を入力していたならば、10点中7点が異常吸光度データであるときに異常測光データとしてアラーム出力するようにする。また、吸光度データ変化率全点のばらつき(SD)標準偏差が設定値“75”以上になった場合も、同様に異常を示すアラームを出力する。
【0053】
本発明の一実施形態における自動分析装置の反応容器は、試料分注、試薬分注、撹拌、測光、洗浄、試料分注、・・・、測光、洗浄と繰り返し使用される。また、試料測定する毎に反応容器の吸光度0補正をするために水ブランク測定を実施している。
【0054】
したがって、反応容器においてなんらかの異常で水ブランク測定を失敗したときには、0補正が上手くできなくなり測定結果に異常を出してしまう。そこで、水ブランク測定を失敗したときにはその反応容器をスキップして試料濃度測定に使用しない機能を備える。この機能はセルスキップ機能という。
【0055】
本発明の一実施形態におけるセルスキップ機能の条件設定は、気泡などの混入による突発的に発生した突発異常セルスキップ設定部2000と、反応容器のキズや汚れなどによる反応容器固有異常セルスキップ設定部3000の2通りのセルスキップ条件を設定できる。
【0056】
設定部2000における突発異常セルスキップ設定は、異常データ割合(%)及び吸光度データ変化率全点のばらつき(SD)標準偏差を設定し、異常データ割合(%)以上になった場合あるいは吸光度データ変化率全点のばらつき(SD)標準偏差が設定値以上になった場合に、セルスキップする。
【0057】
例えば、吸光度データm(i)がm(1)〜m(10)の10点ある場合、図6に示すように突発異常セルスキップ設定部2000にて、異常データ割合(%)入力値“70”を入力していたならば、10点中7点が異常吸光度データであるときにセルスキップする。あるいは、吸光度データ変化率全点のばらつき(SD)標準偏差が設定値“75”以上になった場合でも、同様にセルスキップを実施する。
【0058】
固有異常セルスキップ設定部3000における設定は、当該反応容器の水ブランク測定時の過去に測定した吸光度データm(i)’と今回測定した水測定時の吸光度データm(i)とを比較し、固有異常セルスキップ条件設定値を超えた場合は、キズおよび汚れなど当該反応容器固有の異常が考えられるため次回から当該反応容器を使用しなくする機能の設定である。
【0059】
例えば、図6に示すように、固有異常セルスキップ条件設定部3000に、一致率100プラスマイナス□(%)“5”、連続一致回数“3”、異常データ割合(%)“60”、吸光度データばらつき(SD)“60”が設定されている場合は、当該反応容器の今回測定した水ブランク測定時の吸光度データm(i)と過去2回分のm(i)’とm(i)”とを比較し、95〜105%の範囲で一致しており、かつ異常ポイント数の割合が60%以上、つまり当該反応容器の水ブランク測定時の吸光度データが過去2回分と比較し同じ箇所(i)で6点以上異常があり、かつ吸光度データm(i)、m(i)’、m(i)”、それぞれの標準偏差(SD)が3ラウンドとも60以上になった場合に固有異常セルスキップをする。
【0060】
図7は、図2に示した反応液異物混入無し時の試料測定時の吸光度データおよび吸光度データ変化率のグラフである。
【0061】
図7の右上段グラフは、図2の反応容器620にて反応液604を測光区間609で測光したときの吸光度データm(i)の推移を示しており全部で10ポイントm(1)〜m(10)測光している。また、吸光度データ変化率チェック値は、図6に示した吸光度データ変化率チェック画面の内容が設定されている。
【0062】
図2に示した測光区間609にて、試料測定時の吸光度データに異常があるどうかの判断および一連の処理を、上述した図5のフローチャートを参照して説明する。まず、情報処理装置60は、図7の右上段グラフに示すADC変換後の細分化された吸光度データm(i)を取得する(ステップS401)。そして、取得した吸光度データm(i)の吸光度データ変化率を求める(ステップS402)。
【0063】
吸光度データ変化率v(i)の求め方は、例えば測光区間609で測光したときの吸光度データ10ポイントm(1)〜m(10)の中で一番吸光度が小さい値で、それぞれの吸光度データ10ポイントの吸光度データから引いて求めた値である。一般的には次式(1)によって算出することができる。
【0064】
v(i)=m(i)−(m(n)の中で最小値) ・・・(1)
ただし上記式(1)において、i=1、2、・・・、nである(nは自然数)。
【0065】
通常反応液中の光軸の走査上に気泡などの異物が存在すると、透過光は妨げられ、光度は減少、つまり吸光度は増加する。したがって、吸光度が最も小さい箇所は、気泡などの異物の影響を最も受けていない吸光度データを意味する。よって、図6にて設定した異常吸光度データ変化率の上限値を超えた吸光度データは異物などの影響を受けたことになる。したがって、吸光度データm(i)の中で、異常吸光度データとして検出された吸光度データのみを削除して、正常な吸光度を算出する。
【0066】
本発明の一実施形態においては、吸光度データの変化率を求める方式として、式(1)の差分方式を利用して、異常吸光度を検出しているが、微分方式を利用しても良い。
【0067】
例えば、微分方式による吸光度変化率w(i)は、次式(2)によって算出することができる。
【0068】
w(i)={m(i+1)−m(i)}/{t(i+1)−t(i)} ・・・(2)
ただし、上記式(2)において、i=1、2、・・・、n−1である。
【0069】
また、通常、細分化した吸光度データの測光間隔は、iの値に関わらず同じなので、上記式(2)において、t(i+1)−t(i)=1とすることができる。したがって、次の式(2’)によって、w(i)を算出することができる。
【0070】
w(i)=m(i+1)−m(i) ・・・(2’)
ただし、上記式(2’)において、i=1、2、・・・、n−1である。
【0071】
微分方式による吸光度データ変化率w(i)を算出することにより、少しの吸光度データの変化に対して異常に大きい値の吸光度変化率が現れるため、吸光度の変化率の異常値を検出することができる。
【0072】
図7の右下段グラフは、図7の右上段グラフの吸光度データm(i)について、吸光度データ変化率v(i)を算出したときのグラフである。図7の左に示した表に、算出した吸光度データm(i)、吸光度データ変化率v(i)、吸光度データm(i)全体の標準偏差を示す。一般に、異常がなければ吸光度変化率は、0付近で一定し安定であるが、気泡などの異物が存在すると吸光度にギャップが生じ、異常に大きい吸光度変化率が現れる。そこで、このような吸光度変化率の異常値を検出して、異常と判定された吸光度のみ削除し、正常な吸光度データだけで吸光度を求める。
【0073】
図7の右下段グラフの場合は、最小値モード吸光度データ変化率v(i)全てが上限値“50”以内であるため(ステップS403における判断)、吸光度データm(i)10点全てを使い吸光度を算出する(ステップS404)。
【0074】
図8の右上段グラフは、図2に示した反応容器622にて反応液625を測光区間611で測光したときの吸光度データm(i)の推移を示しており、全部で10ポイントm(1)〜m(10)測光している。反応液625中には大きな気泡607が存在し、測光区間611中の光度推移617に示すように一部影響を及ぼしている状態である。
【0075】
図8の右下段グラフは、図8の上段グラフの吸光度データm(i)について、吸光度データ変化率v(i)を算出したときのグラフである。図8の左表は、算出した吸光度データm(i)、吸光度データ変化率v(i)、吸光度データm(i)全体の標準偏差を示す。
【0076】
吸光度データ変化率チェック値は、図6に示した吸光度データ変化率チェック画面の内容が設定されている。
【0077】
図8の右下段グラフの場合、気泡による異物607の影響により、吸光度データ変化率v(i)の10点中、4点が上限値“50”を超えたため(ステップS403における判断)、超えた4点に該当する異常吸光度データm(i)を削除して、残り6点の吸光度データm(i)を使い測定吸光度として算出する(ステップS405)。
【0078】
また、図6の吸光度データ変化率チェック画面にて設定したアラーム設定範囲以内かを判定し(ステップS406)、範囲外のときは吸光度データに異常であったこと及びその異常内容「反応液に大気泡発生」を示すアラームを出力する(ステップS407)。
【0079】
図8における右下段にグラフの場合、異常吸光度データが4点、つまり、異常データ割合が40%により、設定値“70”%未満であることと、吸光度データ全点(10点)のばらつきSD(標準偏差)が63により、設定値“75”以内であることから、異常を示すアラームを出力させることなく、異常吸光度データ4点を削除して吸光度を算出する。
【0080】
これにより、実際の生のデータから測光上問題無いレベルの気泡による異物などの影響であるならば、必要以上に余計なアラームを出力させることなく、信頼性の高いデータを提供することができる。
【0081】
ここで、吸光度変化率に異常が発生した場合、異常発生した位置は、図8に示したように、時系列ポイント及び吸光度変化率のデータから特定が可能である。よって、異常発生した位置も、表示手段に表示するように構成することも可能である。
【0082】
次に、図9の右上段グラフは、図2の反応容器623にて反応液626を測光区間612で測光したときの吸光度データm(i)の推移を示しており全部で10ポイントm(1)〜m(10)測光している。
【0083】
反応液626中には細かな気泡608が存在し、測光区間612中の光度推移618に示すように全体的に影響を及ぼしている状態である。図9の右下段グラフは、図9の右上段グラフの吸光度データm(i)について、吸光度データ変化率v(i)を算出したときのグラフである。
【0084】
図9の左表には、算出した吸光度データm(i)、吸光度データ変化率v(i)、吸光度データm(i)全体の標準偏差を示す。吸光度データ変化率チェック値は、図6に示している吸光度データ変化率チェック画面の内容が設定されている。
【0085】
図9の右下段グラフの場合、細かい気泡608による異物の影響により、吸光度データ変化率v(i)10点中、6点が上限値“50”を超えたため(ステップS403における判断)、超えた6点に該当する異常吸光度データm(i)を削除して、残り4点の吸光度データm(i)を使い測定吸光度として算出する(ステップS405)。
【0086】
図6に示した吸光度データ変化率設定画面にて設定したアラーム出力条件は、異常データ割合“70”%と吸光度データバラツキSD“75”である。
【0087】
図9の右下段グラフは異常データが6点つまり割合が60%であり、設定値70%以内に対してアラーム出力する条件ではない。一方、吸光度データm(i)全点10ポイントのバラツキSD値が92であり、設定値“75”を超えているためアラーム出力条件を満たすことになる。
【0088】
したがって、図9に示した吸光度データの場合、吸光度データとして範囲内である4点にて吸光度を算出しているが、求めた算出値は信頼性を確保されるレベルではないため、吸光度データのばらつき発生及び異常内容「反応液に細かい気泡発生」を知らせるアラームを出力させる。
【0089】
以上のように、算出する吸光度値は異常箇所を排除することによって、より信頼性の高いデータを得ることができる。また、異常吸光度が設定値よりも多い場合には、算出した測定結果に異常を知らせるアラームを出力させることができる。これによって、信頼性を確保されない測定データのみ使用者に知らせることができる。
【0090】
次に、セルスキップ機能について説明する。
【0091】
本発明の一実施形態における自動分析装置1は、必ず反応容器35毎に反応液の測光装置51にて吸光度を測光する前に、その都度、精製水を反応液として測光し、その値を試料測定時の反応液の吸光度値から、差し引くことで水ブランク補正を行い、反応容器35のキズや汚れの影響を少なくし、精度の良いデータを提供している。
【0092】
しかし、キズや汚れが一定レベルを超えた状態で、反応容器中の精製水を測光すると、水ブランク補正だけではキズや汚れの影響を除去しきれず信頼性を有するデータを提供することができない。
【0093】
通常、反応容器35にキズ、汚れや気泡などの影響がなければ水ブランクの吸光度データは安定して一定である。ここで、毎回測定する水ブランク吸光度データm(i)全点の値を記憶しておき、図6に示した吸光度データ変化率チェック画面にて設定したセルスキップ条件値に従い、過去の水ブランク吸光度データ分と今回測光した水ブランク吸光度データ分との数値を比較する。
【0094】
これにより、反応容器固有のキズまたは汚れなのか、それとも突発的な気泡などの影響なのかを判断することができる。当該反応容器にキズや汚れが有ると判断された場合は、次回より当該反応容器を使用しないように、自動的にセルスキップし、当該反応容器固有に異常がある旨のアラームを発生させる。
【0095】
その反応容器がセルスキップしている状態であっても、毎回その反応容器の水ブランク測光を実施することで、反応容器交換または反応容器洗浄により異常原因が排除されたときには、水ブランクの吸光度データが正常になった時点で自動的にセルスキップを解除し、正常に戻った旨を使用者に知らせる。
【0096】
セルスキップ機能のロジックを図11に示すフローチャートを参照して説明する。
【0097】
図10の右上段グラフは、図2の反応容器621にて反応液624を測光区間610で測光したときの水ブランク測定時の吸光度データm(i)の推移を示しており、全部で10ポイントm(1)〜m(10)測光している。グラフには当該反応容器621の1ラウンド前の水ブランク測定時の吸光度データm(i)´と2ラウンド前の水ブランク測定時の吸光度データm(i)”´も記述してある。吸光度データm(i)、m(i)’、m(i)”は、反応容器621の測光面光軸上にキズ606が存在し、測光区間610中の光度推移616に示すように影響を及ぼしている状態である。
【0098】
図10の右下段グラフは、図10の右上段グラフの吸光度データm(i)について、図6に示した光度データ変化率チェック画面の設定値に従い、吸光度データ変化率v(i)を算出したときのグラフである。反応容器621の1ラウンド前の水ブランク測定時の吸光度データm(i)’の最小値モード吸光度データ変化率v(i)’と2ラウンド前の水ブランク測定時の吸光度データm(i)”の最小値モード吸光度データ変化率v(i)”も記述してある。
【0099】
まず、情報処理装置60は、図10の右上段グラフに示すADC変換後の細分化された吸光度データm(i)を取得する(ステップS1101)。算出した吸光度データm(i)の吸光度データ変化率v(i)を求めるステップ(S1102)。図6に示した吸光度データ変化率チェック画面で設定された吸光度データ変化率チェック値と比較し、設定した範囲内に含まれているか否かで判定する(ステップS1103)。
【0100】
設定した吸光度データ変化率の上限値“50”を超えた吸光度データは異常吸光度データとして削除され、上限値以内の吸光度データのみで吸光度を算出する(ステップS1104)。
【0101】
図10の右下段グラフの場合今回水ブランク値として測定値した細分化吸光度データm(i)10点中、3点のみが上限値“50”以内であるため、範囲内の吸光度データ3点を使い吸光度を算出する(ステップS1103、S1106)。
【0102】
次に、図6に示した吸光度データ変化率チェック画面にて設定した突発異常セルスキップ条件設定値の範囲以内かを判定し(ステップS1105)、設定外のときは水ブランク吸光度データが異常であるため当該反応容器の水ブランク値が異常及びその内容「反応容器にキズ発生」を示すアラームを出力し(ステップS1109)、当該反応容器を使用せずセルスキップする(ステップS1110)。
【0103】
図10の右下段グラフの場合、今回測定した水ブランク値の吸光度データm(i)全点(10点)のばらつきSD(標準偏差)が“35”であり、設定値“75”以内であるが、異常吸光度データが7点つまり異常データ割合が70%であるため、セルスキップ条件を満たす(ステップS1105)。このため、当該反応容器にて水ブランク測定時に異常吸光度データを検出したことを示すアラームを出力させ(ステップS1109)、セルスキップにより当該反応容器を使用して試料を測定しない(ステップS1110)。ただし、今回は突発セルスキップ条件に該当のため次回水ブランク測定時に問題がなければそのまま反応容器は使用される。
【0104】
もし、ステップS1103で異常吸光度データが検出されなかった場合はそのまま吸光度デーm(i)全点をそのまま使い吸光度を算出する(ステップS1106)。ステップS1103で異常吸光度データが検出されなかった場合とステップS1105で突発異常セルスキップ条件の該当しなかった場合は、固有異常セルスキップ条件の範囲内であるかチェックする(ステップS1107)。
【0105】
まず、今回、当該反応容器で測定した水ブランク値の吸光度データ全点(この例では10点)を、過去の当該反応容器で測定した水ブランク値の吸光度データm(i)全点と一致しているか比較する。図6の固有異常セルスキップ条件設定値には、「一致率100プラスマイナス□(%)」に“5”が入力され、「連続一致ラウンド数」に“3”が入力されている。これは、3ラウンド連続して、今回測定した吸光度データm(i)10点を基準とし、m(i)に対応するそれぞれの過去のm(i)’とm(i)”とが95〜105%以内に入っており、かつ、セルスキップ条件設定値である「異常データ割合(%)」が“60”あるいは「吸光度データばらつき(SD)」が“60”(標準偏差が60)のいずれか一つが範囲外になったときに当該反応容器固有に異常があると判断し、セルスキップを実施する。
【0106】
図10の右上段のグラフをみると、今回の吸光度データm(i)全点(10点分)の95〜105%の範囲内に、1ラウンド前の吸光度データm(i)’全点と2ラウンド前の吸光度データm(i)”全点が入っている。つまり、3ラウンド連続して条件を満たしており、当該反応容器の吸光度データは安定していることを意味している。
【0107】
また、図10の左表をみると、今回の吸光度データ変化率v(i)と1ラウンド前のデータ変化率v(i)’および2ラウンド前の変化率v(i)”とも吸光度データばらつき(SD)の設定値60以内に対して、v(i)が36、v(i)’が34、V(i)”が35と設定値範囲内であり、吸光度データのばらつきは確認できなかった。
【0108】
しかし、図10の右下グラフをみてみると、異常データ割合が設定値“60”%に対して範囲外の70%に相当する7点異常吸光度データが3ラウンド連続して発生している。
【0109】
つまり、3ラウンド連続して水ブランク測定時の吸光度データ全点が安定して同じ値で、かつ、その吸光度データは3ラウンド連続して異常吸光度データ割合から信頼性のない吸光度データとして検出されていることから、突発的な泡などによる異物による原因でなく、反応容器固有の異常であり原因は吸光度データが安定なことからキズや汚れと考えることができる。このため、当該反応容器固有の異常としてセルスキップを実施し、アラーム出力し使用者に知らせる(ステップS1109、S1110)。
【0110】
ステップS1105にて固有異常セルスキップに該当した異常のある反応容器621(この反応容器が配置されている位置に配置される反応容器)は、セルスキップ中も水ブランクを測定し吸光度データの推移を監視し続ける。セルスキップ解除のためには反応容器固有の問題のため反応容器621を交換または洗浄によってキズあるいは汚れを落とし、正常の状態に戻す必要がある。
【0111】
したがって、キズ等があると判断した反応容器が配置された位置に配置される反応容器は、毎回、水ブランクを測定して吸光度データを監視しているため、交換または洗浄によって正常状態に戻った際にはセルスキップを解除する。
【0112】
以上述べた図5と図11の異常吸光度データチェックロジックを組み合わせることで、どのような原因で吸光度データ異常になったかを特定することができる。
【0113】
図12は、異常吸光度データ発生原因および発生箇所特定フローチャートである。図12のフローチャートを参照して、異常吸光度データ発生原因および発生箇所特定を説明する。
【0114】
まず、反応容器固有異常セルスキップの有無を確認する(ステップS1201)。当該反応容器を使い固有異常によりセルスキップをしたならば、当該反応容器固有の異常であるキズあるいは汚れであると特定することができるため、アラームを出力する(ステップS1201、S1202)。
【0115】
当該反応容器固有の異常であるキズあるいは汚れであると特定することができる理由として、固有異常によりセルスキップしたということは、当該反応容器にて試料測定直前に測定される水ブランク測定において、今回測定した吸光度データ全点が過去何ラウンド間連続して、例えば、図6の固有異常セルスキップ条件設定値“3”である場合、3ラウンド連続して同じ値であったことになる。
【0116】
つまり、3ラウンド連続して同じ値にであったにもかかわらず、吸光度データ変化率が異常レベルに達していたということは、測光系は安定しており、突発的な気泡などの異物の影響ではなく、反応容器固有の異常であるキズあるいは汚れであることがいえる。
【0117】
次に、突発異常のセルスキップの有無を確認する(ステップS1203)。突発異常のセルスッキプが発生しているならば、ブランク水吐出異常(気泡の巻き込み、異物の存在)もしくは測光系の異常(反応槽の汚れ、反応槽水の気泡の発生、光源ランプ劣化など)が考えられるため、アラームを出力する(ステップS1204)。
【0118】
突発異常のセルスキップは起きていないが、試料測定時の異常吸光度データアラーム設定レベルの異常であれば(ステップS1205)、反応液の異常(撹拌不良、気泡の巻き込みなど)もしくは測光系の異常(反応槽の汚れ、反応槽水の気泡の発生、光源ランプ劣化など)が考えられるため、アラームを出力する(ステップS1206)。
【0119】
以上のように、本発明の一実施形態によれば、光を反応容器を透過させ、複数点の吸光度を検出して、吸光度の変化率により、気泡によるデータを検出して、それを除外して反応液の吸光度を算出する。また、水ブランク測定により、吸光度の変化率を算出して、反応容器のキズ等を検出し、アラームを発生すると共に、そのキズ等がある反応容器は反応液の測定には使用しないように制御する構成となっている。
【0120】
したがって、信頼性が高い分析結果を得ることができるとともに、反応容器の異常を自動的に検出して、アラームを発生することができる自動分析装置を実現することができる。
【0121】
また、技術レベルのない使用者でも容易に原因と異常箇所が特定でき、早急に異常箇所の対策ができるため、コスト低減と装置の信頼性向上に貢献できる。
【0122】
なお、上述した例は、本発明を自動分析装置の反応ディスク上に配列された反応容器のキズ、反応容器内の気泡等の検出に適用した場合の例であるが、自動分析装置に使用される反応容器の製造過程において使用される容器検査装置にもホン発明は適用可能である。
【0123】
つまり、反応容器内に精製水を収容した状態ではなく、空の状態であっても、測定光を容器に透過させることにより、キズ等を検出することができるので、容器製造工程に使用される、容器外観検査装置にも本発明は適用可能である。
【0124】
また、反応容器を透過した光の受光強度が一定値以上の場合、透過光の光軸の走査レベルより反応液面が低いと判断することもできる。よって、本発明は、反応容器内の液面レベルの判定を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の一実施形態が適用される自動分析装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態における反応容器のキズや反応液の気泡と透過光光度波形との関係を示した図である。
【図3】本発明の一実施形態における吸光度測定のブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態における制御コンピュータの機能ブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係わる制御コンピュータにおける吸光度データ取得後の異常吸光度データを検出する処理フローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態における制御コンピュータの吸光度データ変化率設定画面の一例を示す図である。
【図7】図2に示した反応液中に異物混入無し時の試料測定時の吸光度データおよび吸光度データ変化率のグラフである。
【図8】図2に示した反応液中に気泡混入時の試料測定時の吸光度データおよび吸光度データ変化率のグラフである。
【図9】図2に示した反応液中に細かい気泡混入時の試料測定時の吸光度データおよび吸光度データ変化率のグラフである。
【図10】図2に示した反応容器にキズがある時の水ブランク測定時の吸光度データおよび吸光度データ変化率のグラフである。
【図11】本発明の一実施形態における制御コンピュータのセルスキップ実施判定処理のフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態における制御コンピュータの異常吸光度データ検出時のアラーム出力処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0126】
1・・・自動分析装置、5・・・分析装置、6・・・制御コンピュータ、10・・・サンプル容器、11・・・ラック、12・・・搬送機構、15・・・サンプルプローブ、20〜23・・・試薬プローブ、25、26・・・レール、30、31・・・攪拌装置、35・・・反応容器、36・・・反応ディスク、40・・・試薬容器、41、42・・・試薬ディスク、45・・・容器洗浄機構、50・・・光源、51・・・測光装置、54・・・洗浄ポート、60・・・情報処理装置、61・・・吸光度データ取得部、62・・・吸光度データ変化率算出部、63・・・補正後吸光度データ算出部、64・・・分析データ算出部、65・・・分析データ表示部、66・・・吸光度データ変化率許容範囲設定部、67・・・異常吸光度データ検出部、71・・・吸光度データ記憶部、72・・・吸光度データ変化率記憶部、73・・・補正後吸光度データ記憶部、74・・・分析データ記憶部、80・・・入力装置、90・・・表示装置、511・・・分光器、512・・・受光部、513・・・Logアンプ、514・・・ADC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する反応容器と、光を発生する光源と、この光源から発生され、上記反応容器を透過した光を測光する分光検知器と、この分光検知器で測光した測光データを記憶するメモリと、上記測光データを演算処理する演算手段とを有する自動分析装置において、
上記演算処理手段は、
一つの反応容器について複数の吸光度データを算出する吸光度データ算出部と、
一つの反応容器について複数の吸光度データのそれぞれの変化率を算出する吸光度データ変化率算出部と、
上記吸光度データ変化率が所定範囲内か否かを判断し、所定範囲外の変化率である吸光度データを徐外する異常吸光度データ検出部と、
上記異常吸光度データ検出部により検出された異常吸光度データを除外し、所定範囲内の吸光度データを用いて、反応容器内の液体を分析する分析データ算出部と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、表示手段を備え、
上記演算処理手段の吸光度データ算出部は、上記複数の吸光度データの変化率の標準偏差を算出し、上記異常吸光度データ算出部は、上記標準偏差が一定値以上か否かを判断するともに、上記吸光度データ変化率が上記所定範囲外である吸光度データの数が、上記一つの反応容器について複数の吸光度データの数に占める割合が一定割合以上か否かを判断し、上記標準偏差が一定値以上であるとき、上記吸光度データ変化率が上記所定範囲外である吸光度データの数が、上記一つの反応容器について複数の吸光度データの数に占める割合が一定割合以上であるとき、上記演算処理は、上記表示手段に、アラームを表示させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、上記反応容器に収容された液体が水の場合は、上記演算処理部は、上記吸光度データ変化率に基づいて、上記反応容器にキズ又は汚れがあるか否かを判断して、表示手段にアラームを表示させ、キズ又は汚れがあると判断した反応容器の配置位置を上記メモリに記憶させ、上記キズ又は汚れがあると判断した配置位置にある反応容器は、キズ又は汚れがないと判断するまで、液体の吸光度データの測定には使用しないことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、表示手段を備え、上記演算処理部は、上記吸光度データ変化率に基づいて、上記吸光度データ変化率が上記所定範囲外となった原因及び発生位置を判断し、上記表示手段に表示させることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−151519(P2010−151519A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327987(P2008−327987)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】