説明

自動分析装置

【課題】本発明は、基準試料および試薬が長時間保管可能な保冷機能を備え、従来装置と比べて省スペースかつ低コストな自動分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、生体試料と試薬を分注して反応させる反応容器と、前記反応容器で反応した反応液を分析して前記生体試料の成分を測定する分析手段を有し、前記試薬が入る試薬容器と、基準試料が入る基準試料容器をまとめて保冷保存する試薬・基準試料の保存載置機構を備えた自動分析装置において、前記試薬・基準試料の保存載置機構内に保冷保存されている前記試薬および前記基準試料の分注位置を同じ位置にしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿などの生体試料の定性・定量分析を自動的におこなう自動分析装置に係わり、特に試料を長時間保存可能な機構を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置では、試薬を装置上に長時間保存するための試薬容器保冷庫を備えているが、患者検体については長期保存の必要がないため、通常冷却機能を備えていない。
【0003】
また、自動分析装置では、あらかじめ濃度のわかっている標準試料(キャリブレータ)にて自動分析装置の較正(キャリブレーション)を行う必要がある。さらに、標準試料を定期的に測定することにより、較正曲線を補正するとともに、精度管理試料(コントロール)を定期的に測定し、分析結果の精度管理をおこなう。
【0004】
これら標準試料や精度管理試料などの基準試料は、長時間にわたり使用するため、通常は装置外の冷蔵庫で保管し、使用するときのみ冷蔵庫から取り出して自動分析装置に設置し用いるのが一般的である。
【0005】
これに対し、冷蔵庫から取り出し設置する煩雑さをなくすため自動分析装置上に、一般検体を設置するための試料載置機構とは別に、基準試料を長時間保管するための保冷構造を備えた基準試料容器載置機構を設けることが特許文献1に開示されている。
【0006】
さらに、試薬保冷庫内の試薬ターンテーブルの内側に基準試料の設置個所を設けること、また、試薬保冷庫内の試薬ターンテーブルの内側に複数の基準試料を設置するための基準試料ターンテーブルを設けることが特許文献2に記載されている。
【0007】
【特許文献1】実開昭57−41164号公報
【特許文献2】特許第3377299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
省スペース化した自動分析装置へのニーズは非常に高い。しかし、特許文献1記載の発明では、試料および試薬の設置のためには、患者検体を設置するための試料載置機構および基準試料を長時間設置するための保冷構造を備えた基準試料載置機構のほかに、試薬を長時間設置するための保冷構造を備えた試薬載置機構を有する。計3つの載置機構ユニットが必要となる。
【0009】
特許文献2記載の発明においては、基準試料と試薬の吸引口を別々に設ける必要があり、吸引口が増えるため標準試料および試薬の保冷性能の確保が難しくなる恐れがある。保冷性能を確保するために分注動作に同期したシャッタを設けることにより保冷性能を確保することも可能だが、そのためにコストが上がることは容易に想像がつく。
【0010】
これら、試料および試薬の設置および保管に係わるユニット数を減らすことが、自動分析装置の省スペース化のために有効であることは自明である。また、測定・分析項目の増加に対する試薬種類の多種化や測定・分析の精度向上に応える低コストな試薬保存管理の工夫も合わせて求められている。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑み、基準試料および試薬が長時間保管可能な保冷機能を備え、従来装置と比べて省スペースかつ低コストな自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明は、生体試料と試薬を分注して反応させる反応容器と、前記反応容器で反応した反応液を分析して前記生体試料の成分を測定する分析手段を有し、前記試薬が入る試薬容器と、基準試料が入る基準試料容器をまとめて保冷保存する試薬・基準試料の保存載置機構を備えた自動分析装置において、前記試薬・基準試料の保存載置機構内に保冷保存されている前記試薬および前記基準試料の分注位置を同じ位置にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試薬が入れられた試薬容器と、基準試料が入れられた基準試料容器をまとめて保冷保存する試薬・基準試料の保存載置機構を備え、前記試薬・基準試料の保存載置機構内に保冷保存されている前記試薬および前記標準試料の分注位置を同じ位置にしたので、自動分析装置の省スペース化が図られるとともに低コスト化ができる。また、基準試料と試薬が保冷保存されるので、長期に亘り測定・分析の精度向上が維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、図を用いて説明する。図1は免疫の自動分析装置の概略図である。
【0015】
この自動分析装置は、変質を来たさずに長時間保管する必要のある基準試料(標準試料または精度管理試料)および試薬を設置するための試薬・基準試料載置機構1(試薬・基準試料の保存載置機構)と、長時間保管する必要のない患者検体等の試料を設置する試料載置機構2を備える。試料載置機構2はターンテーブルなどの載置台に患者生体試料が置かれる患者生体試料設置位置101を有する。基準試料および試薬の分注位置を同じにするために、基準試料および試薬は同一円周上に設置されている。
【0016】
図1では、長時間保管する必要のない患者検体等の試料を収容するための機構が設けられているが、これら試料を複数設置した検体ラック等を用いて運用する装置に関しては、試料載置機構2を設ける必要はない。
【0017】
分注機構3は試薬と基準試料の分注ができる兼用の分注機構で、後述する基準試料容器、試薬容器、および反応容器の置かれた範囲を少なくとも移動できる移動機構を備えている。また、分注機構3で試料載置機構2の試料を分注させるようにすることも可能である。
【0018】
分注機構3は、試薬・基準試料載置機構1に設置された試薬を吸引した後、同じ試薬・基準試料載置機構1に設置された基準試料または試料載置機構2に設置された試料を吸引し、吸引した試薬と基準試料、または試料を反応機器4上の反応容器設置位置104に設置された反応容器へ吐出する。反応容器への試薬と試料等の分注動作はまとめて同時行う。こうして吸引した試薬と基準試料、または試料を一度にまとめて吐出する方が別々に分注するより時間が短くなるため、より効果的である。
【0019】
また、ここでは、同一の分注機構3により試薬および試料などを反応容器へ分注しているが、反応容器へ分注する試料量と試薬量が大幅に異なる場合は、その分注性能を確保するために、それぞれ異なる分注機構にて分注してもよい。この場合は、試料を分注するための分注機構は、試薬・基準試料載置機構1と試料容器載置機構2の両方に設置されている試料と試薬を分注できるようにする必要がある。
【0020】
試料、および試薬が反応容器へ吐出された後に、反応機器4上で試料および試薬の混合・反応がおこなわれ、所定時間の反応を終えた反応容器内の反応液は反応液吸引機構5により検出部6に送られ、分析される。反応容器は反応容器収納部7に収納されており、反応容器搬送機構8により反応機器4上の反応容器設置位置103へと移動する。また、分析終了後の反応容器は、反応容器搬送機構8で所定の廃棄コンテナ9に投棄される。
【0021】
図1では、反応容器が測定毎に廃棄する使い捨て方式としている。免疫自動分析装置では使い捨て方式は一般的だが、生化学自動分析装置では測定毎に洗浄するため、測定毎の使い捨ては行わないのが一般的である。
【0022】
次に、本発明の主要部に係る試料・試薬載置機構について、図2を用いて説明する。
【0023】
試薬・基準試料載置機構1に設置されている基準試料および試薬は、冷却ジャケット21によって冷却される。冷却ジャケット21には冷却水が循環している。
【0024】
また、冷却ジャケット21と冷却ユニット24は、冷却水循環のための流路である冷却水供給流路23と冷却水戻り流路24にて接続され、循環している冷却水は冷却ユニット22で所定の温度に冷却されている。
【0025】
基準試料および試薬が設置されている冷却ジャケット21内周部の保冷効果を高めるために、冷却ジャケット21の外周は断熱材25で、上部は断熱材入りのカバー26で覆われている。
【0026】
試薬・基準試料載置機構1に設置されている試料および試薬は、回転駆動の試薬・基準試料用のターンテーブル27により、分注機構3による吸引位置に移動する。
【0027】
試薬・基準試料載置機構1の構成について概略的に説明する。
【0028】
試薬・基準試料載置機構1は、試薬容器および基準試料容器を同一円周上に載置し、かつ回転するターンテーブル27と、ターンテーブル27の外周面、および底面の少なくとも一つを囲い、かつ試薬容器および基準試料容器が収納される収納室をもつ冷却ジャケット21と、冷却ジャケット21を外側から囲う断熱材25と、収納室を上から閉じる蓋カバー26を有する。ターンテーブル27は、モータ等の回転駆動源の回転軸に支持されて回転自在である。
【0029】
上述したように、試薬が入れられた試薬容器と、標準試料または精度管理試料等の基準試料が入る基準試料容器を一つにまとめて保冷保存する試薬・基準試料の保存載置機構を備える構成にした。また、試薬および基準試料の分注位置を同じ位置にするために、試薬容器および基準試料を同一円周上に設置できるように構成した。このような構成にすることにより、自動分析装置の省スペース化が図られるとともに低コスト化ができる。また、基準試料と試薬が保冷保存されるので、長期に亘り測定・分析の精度向上が維持される。
【0030】
さらに、本発明における基準試料容器および試薬容器について、図3および図4を用いて説明する。
【0031】
自動分析装置においては、基準試料容器として、基準試料が収容された基準試料用カップ(A)201、基準試料用カップ(B)202、基準試料用カップ(C)203などが、また試薬容器としては、試薬ボトル205が使われる。また試薬容器については、ある項目を測定するための複数の試薬ボトル205が試薬容器フレーム206等にまとめて収納し使用される。また、基準試料用カップ(A)201、基準試料用カップ(B)202、基準試料用カップ(C)203も基準試料容器フレーム204にまとめて収納される。
【0032】
試薬容器フレーム206と外形状が同様(大きさが同じ)の基準試料容器フレーム204を使い、基準試料容器フレーム204に、複数の基準試料をまとめることで、従来では試薬しか設置できなかった自動分析装置から脱却した。すなわち、試薬容器フレーム206、基準試料容器フレーム204を含めた基準試料と試薬が併せて置くことができる設置位置をもつ試薬・基準試料載置機構1を備えることで、基準試料と試薬を共用保管できる。
【0033】
標準試料や精度管理試料の基準試料は、キャリブレーションや精度管理のために、複数の基準試料を一度に分析することは一般的にある。従って、これらをまとめることにより、保管管理が容易になる。
【0034】
なお、ここでは、基準試料容器フレーム204は試薬容器フレーム206と外形状が同様としたが、試薬設置位置103に設置できるような外形状であれば、必ずしも同形状でなくてもかまわない。
【0035】
また、基準試料は、基準試料用カップ(A)201、基準試料用カップ(B)202、基準試料用カップ(C)203をターンテーブル27の設置位置(設置個所)に個別に置くことも基準試料容器フレーム204に収納してまとめて置くことも可能である。
【0036】
また、図3では、基準試料容器フレーム204には試料容器を、試薬容器フレーム206に試薬容器205をまとめて基準試料と試薬を分けた収納になっている。これとは違って、図4では一つまたは複数の基準試料用カップ(A.B.C)と一つまたは複数の試薬容器205をまとめて同じフレームにまとめて、試薬設置位置に設置してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例に係るもので、臨床検査用の自動分析装置の概要を示す図である。そして、図1(a)は、分注機構が試料載置機構のところにいる状態を示す図である。図1(b)は、分注機構が試薬・基準試料載置機構のところにいる状態を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係るもので、試薬・基準試料載置機構の断面図である。
【図3】本発明の実施例に係るもので、試薬・基準試料載置機構にターンテーブルに載置される試薬・基準試料の配置形態を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係るもので、試薬・基準試料載置機構にターンテーブルに載置される試薬・基準試料の配置形態を示すところの他の実施形態図である。
【符号の説明】
【0038】
1…試薬・基準試料の保存載置機構、2…試料載置機構、3…分注機構、4…反応機器、5…反応液吸引機構、6…検出部、7…反応容器収納部、8…反応容器搬送機構、9…廃棄コンテナ、21…冷却ジャケット、22…冷却ユニット、23…冷却水供給流路、24…冷却水戻り流路、25…断熱材、26…カバー、27…試薬・基準試料用のターンテーブル、101…患者生体試料設置位置、102…基準試料設置位置、103…試料・試薬設置位置、104…反応容器設置位置、201…基準試料用カップ(A)、202…基準試料用カップ(B)、203…基準試料用カップ(C)、204…基準試料容器フレーム、205…試薬ボトル、206…試薬容器フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料と試薬を分注して反応させる反応容器と、前記反応容器で反応した反応液を分析して前記生体試料の成分を測定する分析手段を有し、
前記試薬が入る試薬容器と、基準試料が入る基準試料容器をまとめて保冷保存する試薬・基準試料の保存載置機構を備えた自動分析装置において、
前記試薬・基準試料の保存載置機構内に保冷保存されている前記試薬および前記基準試料の分注位置を同じ位置にしたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記試薬・基準試料の保存載置機構は、試薬容器が置かれる試薬設置箇所と基準試料容器が置かれる基準試料設置箇所を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動分析装置において、
前記試薬・基準試料の保存載置機構は、一つもしくは複数の前記基準試料容器と一つもしくは複数の前記試薬容器を一つに統合して置く設置箇所を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
生体試料と試薬を分注して反応させる反応容器と、
前記反応容器で反応した反応液を分析して前記生体試料の成分を測定する分析手段と、
前記試薬が入る試薬容器と、基準試料が入る基準試料容器をまとめて保冷保存する試薬・基準試料の保存載置機構を有し、
前記試薬・基準試料の保存載置機構は、前記試薬容器および前記基準試料容器を同一円周上に載置し、かつ回転するターンテーブルと、前記ターンテーブルの外周面および底面の少なくとも一つを囲い、かつ前記試薬容器および前記基準試料容器が収納される収納室をもつ冷却ジャケットと、前記冷却ジャケットを外側から囲う断熱材と、前記収納室を上から閉じる蓋カバーを有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
生体試料と試薬を分注して反応させる反応容器と、
前記反応容器で反応した反応液を分析して前記生体試料の成分を測定する分析手段と、
前記試薬が入れられた試薬容器と、基準試料が入れられた基準試料容器をまとめて保冷保存する試薬・基準試料の保存載置機構を有し、
前記試薬・基準試料の保存載置機構は、前記試薬容器および前記基準試料容器を載置し、かつ回転するターンテーブルと、前記試薬容器が置かれるところの前記ターンテーブルに設けた試薬設置箇所と、前記基準試料容器が置かれるところの前記ターンテーブルに設けた基準試料設置箇所が同一円周上にあることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5記載の自動分析装置において、
前記試薬設置箇所は、複数の前記試薬を収容する試薬容器フレームが置かれる大きさを有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項6記載の自動分析装置において、
複数の前記基準試料容器を収納する基準試料容器フレームは、前記試薬設置箇所に置けるように外回りの大きさが前記試薬容器フレームと共通であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項5記載の自動分析装置において、
前記基準試料設置箇所は、複数の基準試料を収容する基準試料容器フレームが置かれる大きさを有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項8記載の自動分析装置において、
複数の前記試薬容器を収納する試薬容器フレームは、前記基準試料設置箇所に置けるように外回りの大きさが前記基準試料容器フレームと共通であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項5記載の自動分析装置において、
前記試薬設置箇所と前記基準試料設置箇所を同じ大きさの共用化された基準試料・試薬設置箇所とし、
前記基準試料容器と前記試薬容器がまとめて収納される基準試料・試薬容器フレームを前記基準試料・試薬設置箇所に設置可能としたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項1〜3の何れかに記載の自動分析装置において、
前記基準試料を前記反応容器へ注ぐ分注も、前記試薬を前記反応容器へ注ぐ分注も行うことができる兼用分注機構を備え、
前記兼用分注機構は、前記基準試料容器、前記試薬容器、および前記反応容器の置かれた範囲を少なくとも移動する移動機構を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項9記載の自動分析装置において、
前記基準試料および前記試薬を順番に吸引し、前記反応容器への分注は基準試料と試薬をまとめて一度で行うことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−159987(P2010−159987A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−728(P2009−728)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】