説明

自動分析装置

【課題】プローブおよびプローブの洗浄機構を備えた自動分析装置において、洗浄機構の維持・管理作業を簡略化するとともに、当該作業のコストを低減させることを可能とする技術の提供を目的とする。
【解決手段】自動分析装置の洗浄機構は、プローブ収容領域を形成する壁部およびプローブ洗浄領域を形成する内壁を有し、さらに当該内壁に対し、開口側を当該内壁の上端から装着し、嵌め込んでいくように構成され内壁に対して脱着可能な壁部カバーを有しているので、洗浄機構のプローブの洗浄領域に、残留した付着物が発生した場合は、壁部カバーを交換するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中に含まれる成分、特に血液や尿等に含まれる化学成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機関の検査室などで自動分析装置が用いられている。この自動分析装置は、反応管で血液や尿等の被検試料(以下、「検体」とする。)と試薬とを分注してこれらを反応させた後、反応によって生じる色調の変化を光測定することにより検体中の被測定物質または酵素の濃度や活性を測定する。
【0003】
この自動分析装置は一般に、検体を収容する検体容器が複数配置されるサンプラ(検体ディスク)、複数の試薬ボトル(試料容器)が配置される試薬庫および検体と試薬とを反応させる反応管を有している。また、試薬ボトルから目的の試薬を吸引(分取)し、検体容器から検体を吸引し、反応管に吐出するプローブと、このプローブを反応ディスクと、試薬庫またはサンプラとの間で移動させるアームとを有している。
【0004】
また従来、自動分析装置においては、血液や尿などの検体と反応管との間に配置され、洗浄水を溜めるように構成されたプローブ洗浄機構、または洗浄水を吐出しつつ排出させ、内部に一定量の洗浄水を滞留させるように構成されたプローブ洗浄機構が設けられている。このようなプローブ洗浄機構では、内部にプローブを入れてプローブの洗浄を行う(例えば、特許文献1)。
【0005】
当該文献の図1に記載のサンプリングプローブは洗浄槽の所定の位置まで水平移動し停止すると、洗浄ポンプ(図示せず)からサンプリングプローブ内に洗浄水が送水され、サンプリングプローブの内部が洗浄される。また、これと同時に、洗浄プールの内壁を貫通するように設けられた洗浄水パイプから、サンプリングプローブの先端部に対して洗浄水が連続的に噴水され、サンプリングプローブの外壁が洗浄される。このサンプリングプローブの内外の洗浄に用いられた洗浄水は、洗浄プールの底部に設けられたドレインを介して排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−133466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記説明した洗浄機構における内壁、特に洗浄水の吐出口と対向する内壁は、プローブの洗浄の度に洗浄水やプローブの外周面への付着物が当たる事になる。したがって、当該内壁部分は洗浄水や検体、試薬などによって経時的に状態が変化することがある。
【0008】
例えば、検体、試薬などは、概ね洗浄水等によって洗浄機構外に流出されるものであるが、洗浄機構の内壁部分に対し、極微量の洗浄水、検体、試薬等が残留してしまう可能性がある。このように残留した洗浄水や検体、試薬などは、内壁に付着してしまうため、結果として、この残留した付着物により洗浄機構におけるプローブの外壁の洗浄が不十分となり、その後の検査における分析結果に支障をきたすおそれがあった。
【0009】
このような事態を回避するため、特許文献1に記載されたような従来の自動分析装置においては、洗浄機構における内壁部分の状態が変化する前に、洗浄機構を交換する必要があった。
しかしながら、従来の自動分析装置では、洗浄機構における内壁部分の状態が変化したのみで、そのメンテナンスのために洗浄機構全体を取り外さなければならず、維持・管理作業が非常に煩雑であった。さらに、交換する度に新たな洗浄機構を用意しなければならず、メンテナンスのコストが嵩むという問題があった。
【0010】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、プローブおよびプローブの洗浄機構を備えた自動分析装置において、洗浄機構の維持・管理作業を簡略化するとともに、当該作業のコストを低減させることを可能とする技術の提供をすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、試料容器から試料または、試薬容器から試薬を吸引するプローブと、前記プローブを移動させる移動手段と、前記移動手段により移動された前記プローブの少なくとも吸引部分が収容される収容領域を形成する壁部と、該収容領域内に設けられ、該収容領域内に移動された該プローブにおける前記吸引部分の外面に対して洗浄液を放出する放出口と、少なくとも該壁部の内面を覆うとともに該壁部に対し脱着可能な壁部カバーと、を有する洗浄機構と、を備えたこと、を特徴とする自動分析装置である。
【0012】
また上記の課題を解決するために、請求項2記載の発明は、試料容器から試料または、試薬容器から試薬を吸引するプローブと、前記プローブを移動させる移動手段と、前記移動手段により移動された前記プローブの少なくとも吸引部分が収容される収容領域を形成する壁部と、該収容領域内に設けられ、該プローブの洗浄が行われる洗浄領域を形成するとともに該壁部に対し脱着可能な内壁と、該洗浄領域内に設けられ、該収容領域内に移動された該プローブにおける吸引部分の外面に対して洗浄液を放出する放出口と、を有する洗浄機構と、を備えたこと、を特徴とする自動分析装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、洗浄機構における少なくとも内側の面が脱着可能な壁部カバーによって覆われている。つまり、プローブの洗浄によって経時的に、当該内側の面に、付着物が残留してしまうことがあっても、当該残留物は壁部カバーに付着する。したがって、壁部カバーを交換するのみで洗浄機構の維持・管理作業を行うことができる。結果として、洗浄機構の維持・管理作業を簡略化することができ、さらには、洗浄機構全体の交換頻度を低減させることができ、コストを低減させることが可能である。
【0014】
また、請求項2記載の発明によれば、洗浄機構における外壁および内壁のうち内壁が脱着可能に構成されている。つまり、プローブの洗浄によって経時的に、当該内側の面に、付着物が残留してしまうことがあっても、当該残留物は内壁に付着する。したがって、内壁を交換するのみで洗浄機構の維持・管理作業を行うことができる。結果として、洗浄機構の維持・管理作業を簡略化することができ、さらには、洗浄機構全体の交換頻度を低減させることができ、コストを低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態にかかる自動分析装置の概略構成を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における各プローブの回動軌跡と洗浄機構との位置関係を示す概略上面図である。
【図3】本発明にかかる第1実施形態にかかる洗浄機構の外観を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる第1内壁、第2内壁に対し、壁部カバーが装着された状態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる洗浄機構と、第1内壁、第2内壁および壁部カバーの装着関係を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる自動分析装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明にかかる第2実施形態にかかる洗浄機構の外観を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について図1〜図9を参照して説明する。
【0017】
[第1実施形態]
(全体構成)
この発明の第1実施形態にかかる自動分析装置100の全体構成の概略について、図1を参照して説明する。図1は、第1実施形態にかかる自動分析装置100の概略構成を示す全体斜視図である。
【0018】
図1に示すようにこの実施形態にかかる自動分析装置100は、分析部310を備えている。分析部310は、試薬ラック111を収納した第1試薬庫110と、当該第1試薬庫110に並設され試薬ラック121を収納した第2試薬庫120と、を備え、検体の分析に使用する試薬を供給可能とする。また、分析部310は、第1試薬庫110の周囲に配置され反応管131を複数配置可能な反応ディスク130と、第1試薬庫110近傍に配置され、複数の検体容器141を搬送するサンプラ140と、を備え、検体を装置の各部へ搬送可能とする。また、分析部310は、試薬を反応管131へ搬送する分注アーム112、122と、検体を反応管131へ搬送するサンプリングアーム142とを備え、検体や、試薬を異なる容器間で分注・吐出可能とする。また、分析部310は、反応ディスク130の周囲に設置される攪拌ユニット150、測光ユニット160、反応管洗浄ユニット170を備え、検体の測定などを実行する。また自動分析装置100は、分注アーム112、122およびサンプリングアーム142に設けられたプローブの回動軌跡上に、当該プローブそれぞれの洗浄を行う洗浄機構200等が設けられている。
【0019】
〈試薬ラックおよび第1試薬庫〉
図1に示すように第1試薬庫110の内部には、複数の試薬ボトル180を環状に並べて設置可能な試薬ラック111が設けられている。この試薬ラック111に設置された試薬ボトル180には、標準試料や被検試料に含まれる各項目の成分に対して選択的に反応する第1試薬が入っている。また、この試薬ラック111は、後述する制御部300によって制御された試薬ラック駆動部311により、試薬ボトル180を収容した状態で回転可能にされている。
【0020】
〈第2試薬庫〉
また、第2試薬庫120は、図1に示すように第1試薬庫110の近傍に配置され、当該第1試薬庫110と同様の構成となっている。つまり第2試薬庫120内部には、試薬ボトル180を収容し、回転移動可能に構成された試薬ラック121を備える。また試薬ラック121には、標準試料や被検試料に含まれる各項目の成分に対して選択的に反応する第2試薬が入った試薬ボトル180が設置される。また、本発明における自動分析装置は、複数の試薬庫を有するものに限られず、例えばこの第2試薬庫120を備えない構成であってもよい。
【0021】
〈反応ディスク〉
また、図1に示すように反応ディスク130は、第1試薬庫110の周囲を囲うように円環状に形成される。この反応ディスク130には、自動分析装置100によって分析・測定を行うための検体および試薬を収容する反応管131が、当該反応ディスク130の形状に合わせて円環状に配列されて設置される。この反応管131は、上端が開放されており、この開口部分から第1・第2試薬や検体を分注可能とするため、開口部分が上方へ向くように反応ディスク130に設置される。また、反応ディスク130は、反応管131を収容したまま回転移動する。なお、本実施形態にかかる反応ディスク130は、本発明にかかる「分析手段」の一例に該当する。
【0022】
〈分注アーム〉
当該反応ディスク130の周囲には、分注アーム112が設けられる。この分注アーム112は、反応ディスク130の近傍で略垂直に立設する回動軸112aと、当該回動軸112aの上端に回動軸112aと略直交して回動可能に接続されたアーム部112bと、当該アーム部112bの回動軸112a側に対する他端に接続されたプローブ112cとを備えて構成される。分注アーム112は、回動軸112aを軸中心として、アーム部112bおよび当該アーム部112bの先端に接続されたプローブ112cが回動するように構成されている。このプローブ112cの回動範囲は、少なくとも第1試薬庫110に収容された試薬ボトル180の注入口181と、反応管131との間を往復可能とする範囲である。またプローブ112cは、アーム部112bに対し、上下動(昇降)可能に接続されている。またこのプローブ112cは、ポンプを備えており第1試薬庫110に収容された試薬ボトルの注入口181から試薬を吸引し、検体が収容された反応管131に吐出・分注する。
【0023】
また、図1に示すように反応ディスク130と第2試薬庫120の間には、分注アーム122が設けられている。分注アーム122は、分注アーム112と同様の構成となっており、回動軸122a、アーム部122bおよびプローブ122cを備えている。また、回動軸122aを軸中心とし、アーム部122bを介してプローブ122cが回動する。プローブ122cの回動範囲は、少なくとも第2試薬庫120に収容された試薬ボトル180の注入口181と、反応管131との間となる。また、プローブ122cは、アーム部122bに対し上下動可能に接続され、ポンプを備えており、第2試薬庫120に収容された試薬ボトル180の注入口181から試薬を吸引し、検体が収容された反応管131に吐出・分注する。なお、自動分析装置が単一の試薬庫のみを有して構成される場合は、当該第2試薬庫120に対応する分注アーム122は設けられない。
【0024】
〈サンプラ〉
また、図1に示すようにサンプラ140は、円盤状の外形を有し、第1試薬庫110、反応ディスク130および第2試薬庫120の近傍に配置される。また、このサンプラ140は上面に、所定個数の検体容器141を収容可能な検体ラック(不図示)を複数備えており、回転移動して検体容器141を検体ラックごと移動させる。当該検体容器141には、各項目の標準試料や被検試料などの検体が収容されている。
【0025】
〈サンプリングアーム〉
また、図1に示すように反応ディスク130とサンプラ140との間には、サンプリングアーム142が設置される。サンプリングアーム142は、分注アーム112、122と同様の構成となっており、回動軸142a、アーム部142bおよびプローブ142cを備えている。また、回動軸142aを軸中心とし、アーム部142bを介してプローブ142cが回動する。プローブ142cの回動範囲は、サンプラ140に収容された検体容器141と、反応管131との間となる。また、プローブ142cは、サンプラ140に収容された検体容器141から検体を吸引し、反応管131に吐出・分注する。
【0026】
〈攪拌ユニット〉
また、図1に示すように、攪拌ユニット150は反応ディスク130の近傍であって、サンプリングアーム142の位置より、反応ディスク130の回転方向における下流側へ配置される。サンプラ140にあった検体が分注され、かつ第1試薬庫110、第2試薬庫120にあった試薬が分注された各反応管131は、反応ディスク130の回転移動により、当該攪拌ユニット150の位置まで移動する。攪拌ユニット150は搬送されてきた反応管131に内蔵された、検体と試薬の混合液を攪拌する。このように検体と試薬とが、反応管131内で攪拌されることにより、検体内の特定の成分と試薬との反応が生じ、検体の吸光度が変化する。
【0027】
〈測光ユニット〉
また、図1に示すように、測光ユニット160は反応ディスク130の近傍であって、攪拌ユニット150の位置より、反応ディスク130の回転方向における下流側(進行方向側)へ配置される。攪拌された検体と試薬の混合液を有する反応管131は、反応ディスク130によって、攪拌ユニット150の攪拌位置から下流側に配置された測光ユニット160の位置(図1参照)まで移動する。測光ユニット160は、搬送されてきた反応管131に内蔵され、攪拌された検体と試薬の混合液の吸光度を測定する。このように測光ユニット160で検体の吸光度を測定することにより、検体内における特定の成分についての濃度を得ることができる。
【0028】
〈反応管洗浄ユニット〉
また、測光ユニット160により吸光度を測定され、分析が終了された検体と試薬の混合液は、反応管洗浄ユニット170により反応管131から廃棄される。また混合液が廃棄された状態の反応管131は、反応管洗浄ユニット170により洗浄される。
【0029】
(洗浄機構の構成)
次に本実施形態における試薬庫の構成につき、図1における洗浄機構200を例として図2〜5を用いて説明する。図2は、本発明の実施形態における各プローブの回動軌跡と洗浄機構200との位置関係を示す概略上面図である。図3は、本発明にかかる第1実施形態にかかる洗浄機構200の外観を示す概略斜視図である。図4は、本発明の第1実施形態にかかる第1内壁203、第2内壁204に対し、壁部カバー210が装着された状態を示す概略断面図である。図5は、本発明の実施形態にかかる洗浄機構200と、第1内壁203、第2内壁204および壁部カバー210の装着関係を示す概略斜視図である。なお、図2〜4における洗浄機構200は、プローブ142cを洗浄するためのものであるが、プローブ112c、122cを洗浄するための洗浄機構(不図示)も洗浄機構200と同様の構成である。
【0030】
図2に示すようにサンプリングアーム142は、サンプラ140と反応ディスク130との間に配置され、プローブ142cは、検体容器141と反応管131との間で回動される。また、図2に示すように、洗浄機構200は、このプローブ142cの回動軌跡上に配置される。この洗浄機構200は図2および図3に示すように、互いに対向して配置された第1壁部201、第2壁部202に囲われた領域(以下、「収容領域」という)内に略平板状の第1内壁203、第2内壁204が設けられている。この第1内壁203、第2内壁204と、第1壁部201、第2壁部202との間は、後述する壁部カバー210が装着可能となる間隔として形成される。
【0031】
図2および図4に示すようにこの第1内壁203には、第1内壁203を貫通する第1放出口205が設けられる。同様に第2内壁204には、図2、図3および図4に示すように第2内壁204を貫通する第2放出口206が設けられる。また第1内壁203における第2内壁204と対向する面と反対側の面(以下、「外面」という)には、第1放出口205に対応する位置に円筒状かつ両端が開口された第1パイプ207が設けられている。同様に第2内壁204における第1内壁203と対向する面と反対側の面(以下、「外面」という)には、第2放出口206に対応する位置に、第1パイプ207と同じ構造の第2パイプ208が設けられている。
【0032】
洗浄機構200では、図3に示すように第1壁部201において、第1内壁203の支持部が設けられるとともに、第1パイプ207を保持する保持溝が設けられている。同様に第2壁部202において、第2内壁204の支持部が設けられるとともに、第2パイプ208を保持する保持溝が設けられている。
【0033】
自動分析装置100では、この第1パイプ207、第2パイプ208へ図示しない洗浄液供給手段から洗浄液を供給する。洗浄液は、第1パイプ207、第2パイプ208から第1放出口205、第2放出口206を通じて、第1内壁203と第2内壁204との間のプローブ洗浄領域へ洗浄液が放出される。
【0034】
また図2および図3に示すように、第1壁部201と第2壁部202とは、その両端が互いに対向する方向に湾曲している。さらに第1壁部201および第2壁部202の両端は互いに対向している。この洗浄機構200における第1壁部201および第2壁部202の対向する両端の間は、回動されるプローブ142cが洗浄機構200に対して通過するときの収容領域に対する出口または入口をなすものとして設けられる(図2における符号200の左右両端参照)。したがって、洗浄機構200は、当該洗浄機構200における当該プローブ142cの出口および入口がプローブ142cの回動軌跡に対応した位置となるように、自動分析装置100に対して設置される(図2参照)。また、洗浄機構200の取付高さは、回動されるプローブ142cにおける少なくとも吸引部分が洗浄領域を通過する高さとなるように取り付けられる。
【0035】
なお、この吸引部分とはプローブ142cが検体容器141から検体を吸引するときに、プローブ142cが検体に浸かる部分をいう。プローブ112c、122cの洗浄機構(不図示)であれば、プローブ112c、122cが試薬に浸かる部分である。また、本実施形態にかかる洗浄機構200におけるプローブ142cの出口および入口は、本発明にかかる「切欠き」の一例に該当する。
【0036】
また洗浄機構200におけるプローブ142cの出口および入口の間隔は、回動されるプローブ142cが通過可能な長さとなるように形成される。このように構成することにより、プローブ142cの上下動を介さずに、プローブ142cが反応管131と検体容器141との間を回動されるのみで、上記プローブの洗浄領域および洗浄機構200における収容領域内にプローブ142cを収容することが可能となる。結果として、自動分析装置における検査工程の作業効率を向上させることが可能となる。
【0037】
図2に示すようにプローブ142cが回動され、洗浄機構200の収容領域に入り、第1内壁203と第2内壁204との間、すなわち洗浄領域に入ると、第1パイプ207、第2パイプ208に洗浄液が供給され、第1放出口205、第2放出口206から洗浄液が放出される。このように放出された洗浄液により、洗浄領域内にあるプローブ142cの外周面に付着した試薬、検体等を洗い流す。プローブ142cから流下する洗浄液は、図4に示すような底部211の廃液口212から、洗浄領域外へ流出する。この底部211とは、図5に示すように第1内壁203および第2内壁204を、洗浄液が流下する方向の端部側(以下、「下端」という)において接続するものであり、洗浄領域の底面をなすものである。
【0038】
また、洗浄機構200は、図3に示すように第1内壁203と第2内壁204とが、洗浄液が流下する方向(以下、「下方」という)において一体となるように連続している。また、洗浄機構200の下端側においては、自動分析装置100に取り付けるための取付部209が設けられている。なお、自動分析装置100側の取付構造については説明を割愛する。
【0039】
また、本実施形態における洗浄機構200は、図4および図5に示すように第1内壁203、第2内壁204および底部211を覆う壁部カバー210が設けられている。図4に示すように壁部カバー210は、第1内壁203、第2内壁204および底部211の形状、位置関係に対して、やや拡大した相似形となるような形状を有している。すなわち壁部カバー210は図4および図5に示すように、第1内壁203を被覆する部分、第2内壁204を被覆する部分および底部211を被覆する部分によって構成されており、底部211を覆う部分側が開口している。壁部カバー210のこの開口側を第1内壁203および第2内壁204の上端から装着される。さらに壁部カバー210は、第1内壁203および第2内壁204にガイドされるように、第1内壁203、第2内壁204および底部211に嵌め込まれるような形状を有している。
【0040】
またこの壁部カバー210は、開口側を第1内壁203および第2内壁204の上端から装着し、第1内壁203、第2内壁204に嵌め込んでいくように構成されているものである。このため図4および図5に示すように、壁部カバー210を第1内壁203、第2内壁204に嵌め込む際に、壁部カバー210における外面側が第1内壁203、第2内壁204の第1パイプ207、第2パイプ208に引っかからないようにしなければならない。したがって壁部カバー210は、当該第1パイプ207、第2パイプ208に対応する部分において切欠かかれた溝が形成されている。
【0041】
また、壁部カバー210には、当該壁部カバー210が第1内壁203、第2内壁204および底部211全体に装着されたとき、第1内壁203、第2内壁204の第1放出口205、第2放出口206に対応する位置に、当該第1放出口205、第2放出口206よりやや大きな開口が形成されている。さらに壁部カバー210には、図4および図5に示すように底部211の廃液口212に対応する位置に当該廃液口212よりやや多く形成された開口を有している。
【0042】
なお、上記説明した壁部カバー210としては、肉厚3mm以下のゴム材質により形成されることが好ましい。すなわち、壁部カバー210の肉厚が厚すぎると、洗浄機構200全体が大型化してしまうとともに、第1内壁203、第2内壁204への装着が困難となるおそれがある。またゴム材質を用いることで、その弾性により第1内壁203、第2内壁204への装着を容易にすることが可能である。
【0043】
さらには、プローブ洗浄のために洗浄液を洗浄領域に留めるためゴム硬度を70度以下にすることが好ましい。すなわち、この壁部カバー210は、プローブの洗浄中、第1放出口205、第2放出口206から放出された洗浄液が当たっている。ここで第1放出口205、第2放出口206へ供給される洗浄液の水量を常に一定に調整することは、洗浄液の供給を行うための部材全般および当該調整の制御の観点から困難である。しかし、供給される水量が一端増加してしまうと、放出口と対向する内壁に当たって洗浄領域外に飛び散ってしまうおそれがある。そこで第1内壁203、第2内壁204を覆う壁部カバー210をゴム硬度70度以下にすることにより、第1内壁203、第2内壁204へ向かって放出される洗浄液の水勢を、壁部カバー210に吸収させることが可能となる。これによって、洗浄液が洗浄領域外に飛び散ってしまうおそれを回避することが可能となる。さらに壁部カバー210の装着の容易化が可能となる。
【0044】
なおかつこのゴム材質としては、試薬、洗浄液等に対する耐性の観点から、シリコン(Si)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)等の合成ゴムを用いることが可能である。
【0045】
また本実施形態における自動分析装置100では、洗浄機構200において第1放出口205および第2放出口206、第1パイプ207および第2パイプ208が対向して設けられているが、必ずしも対向して配置される必要は無い。第1放出口205および第1パイプ207の組み合わせ、第2放出口206および第2パイプ208の組み合わせのうちいずれか一方のみであってもよい。
【0046】
また本実施形態における自動分析装置100では、壁部カバー210が第1内壁203、第2内壁204に対し被覆するように装着されるものであるが、これに限らず少なくとも第1内壁203、第2内壁204の互いに対向する面のみを被覆するように構成することも可能である。
【0047】
(制御)
次に、図6を用いて、自動分析装置100の制御構成について説明する。図6は、この発明の実施形態にかかる自動分析装置100の構成を示すブロック図である。
【0048】
図3に示すように自動分析装置100は、先に述べた分析部310の他に、データ処理部320、操作部330、表示部340、印刷部350および記憶部360を備える。また、これらの各部は制御部300によって制御される。
【0049】
制御部300は例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。記憶部360には、あらかじめ制御プログラムが記憶され、CPUが当該制御プログラムを適宜RAM上に展開することにより、制御部300として機能する。
【0050】
分析部310は、第1試薬庫110の試薬ラック111と第2試薬庫120の試薬ラック121とをそれぞれ駆動する試薬ラック駆動部311、分注アーム112、122とサンプリングアーム142をそれぞれ駆動するアーム駆動部312、反応ディスク130を駆動する反応ディスク駆動部313、サンプラ140を駆動するサンプラ駆動部314、を備えている。自動分析装置100の操作者が、操作部330を介し、自動分析装置100を稼働させる操作を行うと、制御部300は当該操作に基づき、上述の制御プログラムに基づき、分析部310の各駆動部を、あらかじめ定められた量だけ駆動するよう制御を行う。また、分析部310の各部は、それぞれの動作に合わせて同期して作動するように制御され、かつ連動するように駆動される。なお、本実施形態にかかる分注アーム112、122またはサンプリングアーム142と、アーム駆動部312とは、本発明にかかる「移動手段」の一例に該当する。
【0051】
(作用・効果)
以上説明した第1実施形態にかかる自動分析装置100の作用及び効果について説明する。
【0052】
第1実施形態にかかる自動分析装置100の洗浄機構200における壁部カバー210は、第1内壁203、第2内壁204に対し、開口側を第1内壁203および第2内壁204の上端から装着し、第1内壁203、第2内壁204に嵌め込んでいくように構成されているものである。したがって、洗浄機構によるプローブの洗浄によって経時的に、洗浄機構のプローブの洗浄領域に、流出しきらなかった試薬、検体、洗浄液等が残留し、付着物として残ってしまうことがあっても、当該付着物は壁部カバー210に付着する。したがって、壁部カバー210を交換するのみで洗浄機構の維持・管理作業を行うことができる。結果として、洗浄機構の維持・管理作業を簡略化することができ、さらには、洗浄機構全体の交換頻度を低減させることができ、コストを低減させることが可能である。
【0053】
(変形例)
以上説明した第1実施形態における自動分析装置100の洗浄機構200は、第1壁部201および第2壁部202と、第1内壁203および第2内壁204とを有して構成されているが、これに限られず例えば、第1内壁203、第2内壁204を設けず、第1壁部201および第2壁部202に、第1放出口205および第1パイプ207、第2放出口206および第2パイプ208を設けるように構成してもよい。この場合、壁部カバー210は、この第1壁部201、第2壁部202に装着される。
【0054】
このような構成においても、洗浄機構の維持・管理作業を簡略化することができ、さらには、洗浄機構全体の交換頻度を低減させることができ、コストを低減させることが可能である。
【0055】
[第2実施形態]
次にこの発明の第2実施形態にかかる自動分析装置について説明する。
【0056】
(全体構成)
第2実施形態にかかる自動分析装置100においては、前述の第1実施形態にかかる自動分析装置100と比較して洗浄機構200の収容領域の構成が異なる。その他の部分は第1実施形態にかかる自動分析装置100と同様である。以下、これらの相違点について図5および図7を参照して説明する。図7は、本発明にかかる第2実施形態にかかる洗浄機構200の外観を示す概略斜視図である。
【0057】
第2実施形態におけるデータ処理部220、操作部230、表示部240、印刷部250、記憶部260の構成は、図6に示す第1実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
【0058】
また、第2実施形態にかかる洗浄機構200のうち、第1壁部201、第1内壁203、第1放出口205および第1パイプ207、第2壁部202、第2内壁204、第2放出口206および第2パイプ208の位置関係、形状は第1実施形態と同様であるため、説明を割愛する。ただし、第2実施形態にかかる洗浄機構200においては、壁部カバー210が装着されないため、第1内壁203、第2内壁204と、第1壁部201、第2壁部202との間隔について、壁部カバー210の幅を考慮して構成する必要は無い。
【0059】
第2実施形態にかかる洗浄機構200は、第1内壁203、第2内壁204がゴム材質によって構成されている。すなわち、この第2実施形態にかかる第1内壁203、第2内壁204は、プローブの洗浄中、放出口から放出された洗浄液が当たっている。そこで第1内壁203、第2内壁204をゴム材質によって構成することにより、第1内壁203、第2内壁204へ向かって放出される洗浄液の水勢を、第1内壁203、第2内壁204自体に吸収させることが可能となる。これによって、洗浄液が洗浄領域外に飛び散ってしまうおそれを回避することが可能となる。この第1内壁203、第2内壁204のゴム硬度は70度以下にすることが好ましい。
【0060】
第2実施形態にかかる洗浄機構200の第1内壁203、第2内壁204に用いるゴム材質としては、試薬、洗浄液等に対する耐性の観点から、シリコン(Si)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)等の合成ゴムを用いることが可能である。
【0061】
また第2実施形態にかかる自動分析装置100の洗浄機構200は、第1内壁203、第2内壁204が、第1壁部201、第2壁部202から脱着可能に構成されている(例えば図5右側に示す符号203、204の取り外し)。例えば、洗浄機構200の高さ方向における中央付近に、第1内壁203、第2内壁204とほぼ同じ幅の嵌合溝(不図示)を設けておき、当該嵌合溝に第1内壁203、第2内壁204を嵌合させて装着させる。ここで、本実施形態にかかる第1内壁203、第2内壁204は、ゴム材質によって構成されているから、洗浄機構200の嵌合溝に対する固定が確実になる。
【0062】
また、第2実施形態にかかる洗浄機構200においても、洗浄機構によるプローブの洗浄によって経時的に、洗浄機構のプローブの第1内壁203、第2内壁204に、流出しきらなかった試薬、検体、洗浄液等が残留し、付着物として残ってしまうことがあっても、第1内壁203、第2内壁204を交換するのみで洗浄機構の維持・管理作業を行うことができる。結果として、洗浄機構の維持・管理作業を簡略化することができ、さらには、洗浄機構全体の交換頻度を低減させることができ、コストを低減させることが可能である。
【0063】
なお、第2実施形態における洗浄機構200は、第1内壁203、第2内壁204の全体をゴム材質によって構成したが、これに限らず、例えば図7に示すように第1内壁203、第2内壁204における洗浄領域側(図7におけるハッチング部分)のみをゴム材質で構成し、かつ取り外し可能としてもよい。また、洗浄機構200全体を上記説明したようなゴム材質によって構成してもよい。このように構成すれば、洗浄機構200を単一材料で構成することができ、歩留まり向上やコスト低減を図ることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
100 自動分析装置
110 第1試薬庫
111 試薬ラック
112 分注アーム
112a 回動軸
112b アーム部
112c プローブ
120 第2試薬庫
121 試薬ラック
122 分注アーム
122a 回動軸
122b アーム部
122c プローブ
130 反応ディスク
131 反応管
140 サンプラ
141 検体容器
142 サンプリングアーム
142a 回動軸
142b アーム部
142c プローブ
150 攪拌ユニット
160 測光ユニット
170 反応管洗浄ユニット
180 試薬ボトル
200 洗浄機構
201 第1壁部
202 第2壁部
203 第1内壁
204 第2内壁
205 第1放出口
206 第2放出口
207 第1パイプ
208 第2パイプ
209 取付部
210 壁部カバー
211 底部
212 廃液口
220 データ処理部
300 制御部
310 分析部
311 試薬ラック駆動部
312 アーム駆動部
313 反応ディスク駆動部
314 サンプラ駆動部
320 データ処理部
330 操作部
340 表示部
350 印刷部
360 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器から試料または、試薬容器から試薬を吸引するプローブと、
前記プローブを移動させる移動手段と、
前記移動手段により移動された前記プローブの少なくとも吸引部分が収容される収容領域を形成する壁部と、該収容領域内に設けられ、該収容領域内に移動された該プローブにおける前記吸引部分の外面に対して洗浄液を放出する放出口と、少なくとも該壁部の内面を覆うとともに該壁部に対し脱着可能な壁部カバーと、を有する洗浄機構と、を備えたこと、
を特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
試料容器から試料または、試薬容器から試薬を吸引するプローブと、
前記プローブを移動させる移動手段と、
前記移動手段により移動された前記プローブの少なくとも吸引部分が収容される収容領域を形成する壁部と、該収容領域内に設けられ、該プローブの洗浄が行われる洗浄領域を形成するとともに該壁部に対し脱着可能な内壁と、該洗浄領域内に設けられ、該収容領域内に移動された該プローブにおける前記吸引部分の外面に対して洗浄液を放出する放出口と、を有する洗浄機構と、を備えたこと、
を特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
前記移動手段は、一端に回動軸が設けられるとともに他端に前記プローブが設けられた回動アームを有し、該回動軸を中心に該回動アームを回動させることにより、前記試料容器または前記試薬容器に対し、該プローブを近接または離隔させ、
前記洗浄機構は、前記移動手段による前記プローブの回動軌跡上に配置され、
前記壁部は、前記収容領域を囲うとともに、前記プローブの回動軌跡と交わる通過部分において切欠きを有しており、
前記洗浄機構は、前記プローブが前記移動手段により移動されることにより、該プローブは前記洗浄機構における前記壁部の前記一端の切欠きから前記収容領域に入り、また前記他端の切欠きから該収容領域から出るように形成されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記壁部は略箱状の形状を有するとともにその内側が前記収容領域となっており、かつ該壁部の該収容領域における底面と直交する側面には、前記プローブを通過可能とする通過溝が設けられており、
前記壁部の前記収容領域内における底面と略直交する方向に、一対の内壁が設けられており、
前記内壁の少なくとも一方には前記放出口が設けられており、
前記底面には、前記放出口から放出された前記洗浄液を流出する廃液口が設けられ
前記移動手段により移動された前記プローブは前記通過溝から前記収容領域に入り、前記内壁の間で前記洗浄液により洗浄され、
前記壁部カバーは、前記内壁に対し脱着可能であること、
を特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記放出口は、前記壁部に設けられており、
前記壁部カバーは、前記壁部の少なくとも一部の形状に対応して被覆されるように、かつゴム部材により形成されており、かつ該壁部に沿って装着または取り外しされること
を特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−160078(P2010−160078A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2941(P2009−2941)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】