説明

自動分析装置

【課題】反応管を、その使用待機期間においても補助的に洗浄することにより、反応管を十分に洗浄された状態で使用することを可能とする。
【解決手段】反応部113は、反応管内での被検試料と試薬との反応の度合いを測定する。反応部113は、当該測定が終了した反応管を洗浄する。サンプル部111または試薬部112はシステム制御部160の制御の下に、洗浄後の反応管の内部に洗剤溶液を注入液として注入する。反応部113はシステム制御部160の制御の下に、注入液が注入されている反応管を新たに使用する必要が生じたことに応じて当該反応管を再洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応管内での被検試料と試薬との反応の度合いに基づいて被検試料を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動分析装置では、測定が終了した反応管は、洗浄されたのちに水が注入される。そして、反応管は、新たに使用する必要が生じるまでは、水が注入された状態が維持される。これは、反応管の乾燥を防ぐためである。
【特許文献1】特開平1−25423号公報
【特許文献2】特開平5−70112号公報
【特許文献3】特開2000−102661
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
反応管を使用する必要が生じた場合には、この反応管に注入されていた水が排出された上で、被検試料および試薬がそれぞれ分注される。
【0004】
このため、水の注入前の洗浄が不十分であった場合には、その状態の反応管が新たな測定のためにそのまま使用されてしまう恐れがあった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、反応管を、その使用待機期間においても補助的に洗浄することにより、反応管を十分に洗浄された状態で使用することが可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による自動分析装置は、反応管と、前記反応管内での被検試料と試薬との反応の度合いを測定する測定手段と、前記測定手段による測定が終了した前記反応管を洗浄する洗浄手段と、洗浄後の前記反応管の内部に洗剤溶液を注入液として注入する注入手段と、前記注入手段により前記注入液が注入されている前記反応管を新たに使用する必要が生じたことに応じて前記反応管を再洗浄する再洗浄手段とを備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、反応管を、その使用待機期間においても補助的に洗浄することにより、反応管を十分に洗浄された状態で使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0009】
図1は本実施形態に係る自動分析装置100の構成を示したブロック図である。
【0010】
自動分析装置100は図1に示すように、測定部110、分析制御部120、分析データ処理部130、出力部140、操作部150およびシステム制御部160を含む。
【0011】
測定部110はさらに、サンプル部111、試薬部112および反応部113を含む。サンプル部111は、測定項目毎のキャリブレータや、被検体から採取された被検試料(サンプル)を管理する。試薬部112は、測定項目に応じたサンプルの成分と化学反応させるための試薬を管理する。反応部113は、サンプルと試薬との反応液に関して、測定項目に応じた測定を行う。反応部113は、キャリブレータおよび被検試料についての測定結果をそれぞれ表すキャリブレータ信号および分析信号を分析データ処理部130に出力する。
【0012】
分析制御部120はさらに、機構部121および機構制御部122を含む。機構部121は、測定部110に含まれた後述する各種の可動要素を駆動する。機構制御部122は、機構部121の動作を制御する。
【0013】
分析データ処理部130はさらに、演算部131および記憶部132を含む。演算部131は、測定部110から出力されたキャリブレータ信号に基づいて、測定項目毎のキャリブレーションテーブルを作成する。演算部131は、測定部110から出力された分析信号とキャリブレーションテーブルとに基づいて、測定項目毎の分析データを算出する。記憶部132はハードディスクなどを備え、キャリブレーションテーブルや分析データなどを記憶する。演算部131は、キャリブレーションテーブルや分析データを、必要に応じて出力部140へ出力する。
【0014】
出力部140はさらに、印刷部141、表示部142およびオンライン部143を含む。印刷部141はプリンタなどを備え、演算部131から出力されたキャリブレーションテーブルや分析データを予め設定されたフォーマットでプリンタ用紙などに印刷する。表示部142はCRT(cathode-ray tube)やLCD(liquid crystal display)などを備え、演算部131から出力されたキャリブレーションテーブルや分析データを表示する。表示部142は、被検体のIDおよび氏名などを入力するための被検体情報入力画面、測定項目毎の分析条件を設定するための分析条件設定画面、被検試料毎の測定項目を選択設定するための測定項目設定画面などを、システム制御部160の制御の下に表示する。オンライン部143は、演算部131から出力されたキャリブレーションテーブルや分析データを、ネットワークを介して他の装置へ送信する。
【0015】
操作部150は、キーボード、マウス、ボタン、あるいはタッチキーパネルなどの入力デバイスを備える。操作部150は、測定項目毎の分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検試料毎の測定項目の選択入力、各測定項目のキャリブレーションや被検試料測定などのために操作者により操作される。操作部150は、操作者による操作の内容を表すコマンド信号をシステム制御部160へ出力する。
【0016】
システム制御部160は、CPUと記憶回路とを備え、自動分析装置100の各部を統括して制御する。具体的にはシステム制御部160は、操作部150から供給されるコマンド信号に基づいて、測定項目の分析条件、被検体情報、被検試料毎の測定項目などを判定し、これらの情報を記憶しておく。そしてシステム制御部160は、これらの情報に基づいて、一定サイクルの中の所定のシーケンスで測定を行うように測定部110の動作を制御する。システム制御部160は、所要のキャリブレーションテーブルの作成や所要の分析データの算出を行うように分析データ処理部130を制御する。さらにシステム制御部160は、キャリブレーションテーブルや分析データを所要の形態で出力するように出力部140を制御する。
【0017】
図2はサンプル部111、試薬部112および反応部113の構成を示す斜視図である。
【0018】
サンプル部111は、試料容器11a,11b、サンプラ12a,12b、ラック13、アーム14、サンプルプローブ15、ポンプ16、洗浄ユニット17、流路形成ユニット18およびポンプ19を含む。
【0019】
試料容器11a,11bは、キャリブレータ、精度管理用試料、あるいは被検試料などのサンプルを収容する。試料容器11bは、小児などから採取した微量の被検試料を吸引可能に収容する。つまり試料容器11bは、試料容器11aよりも水平断面が小さく、収容された微量の被検試料の水面を試料容器11aよりも高くすることができる。
【0020】
サンプラ12aは、多数の試料容器11aを円周状に2列配列してセットできる。サンプラ12aは、回転することによって、セットされている試料容器11aを上記の円周に沿って移動させる。サンプラ12aにおける試料容器11aをセットする位置のそれぞれは、キャリブレータ用のセット位置または精度管理用試料のセット位置に予め割り当てられている。キャリブレータを収容した試料容器11aは前者のセット位置にセットされ、精度管理用試料を収容した試料容器11aは後者のセット位置にセットされる。
【0021】
サンプラ12bは、多数のラック13をセットできる。ラック13は、複数の試料容器11a,11bを直線状に配列してセットできる。ラック13は、試料容器11a,11bの配列方向に直交する方向に沿って配列される。サンプラ12bは、ラック13をその配列方向に移動させる。またサンプラ12bは、サンプル吸引位置においては、ラック13をその配列方向に直交する方向にも移動させる。ラック13における試料容器11a,11bをセットする位置のそれぞれは、被検試料のセット位置に予め割り当てられており、被検試料を収容した試料容器11a,11bがこのセット位置にセットされる。
【0022】
アーム14は、回動が可能なように一端において支持されている。アーム14の他端には、サンプルプローブ15が取り付けられている。アーム14は、サンプルプローブ15を鉛直方向に移動させるために鉛直方向に移動可能である。かくしてアーム14は、サンプルプローブ15を円弧状の軌道に沿って移動させたり上下動させたりする。
【0023】
サンプルプローブ15は、内部に細い空洞を有していて、この空洞にアーム14の内部空間およびチューブを介してポンプ16が接続されている。サンプルプローブ15は、ポンプ16によって空洞内が負圧とされることによって、サンプルを吸引する。そしてサンプルプローブ15は、ポンプ16によって空洞内の負圧が解消されることによって、空洞内に保持していたサンプルを吐出する。サンプルプローブ15の先端には、サンプルの液面を検出するためのセンサが設けられており、サンプルプローブ15の先端がサンプルの液面から所定の深さまで入った際に液面を検出するようになっている。
【0024】
ポンプ16は、水などの圧力伝達媒体を吸引することによってサンプルプローブ15の空洞内を負圧とし、上記の圧力伝達媒体を吐出することによってサンプルプローブ15の空洞内の負圧を解消する。
【0025】
試薬部112は、c、試薬ラック22a,22b、アーム23a,23b,24a,24b、脚部25a,25b,26a,26bおよび試薬プローブ27a,27b,28a,28bを含む。
【0026】
試薬ボトル21は、サンプルに対して選択的に反応する試薬を収容する。
【0027】
試薬ラック22a,22bは、それぞれ複数の試薬ボトル21を収納する。試薬ラック22a,22bはそれぞれ、上面を開口したほぼ円柱状の容器である。試薬ラック22a,22bはそれぞれ、複数の試薬ボトル21を円周状に2列配列した状態で収容できる。試薬ラック22a,22bは、図1では示されていない後述する回転機構によってそれぞれ回転される。
【0028】
アーム23a,23b,24a,24bは、その一端が脚部25a,25b,26a,26bによってそれぞれ支持されている。アーム23a,23b,24a,24bの他端には、試薬プローブ27a,27b,28a,28bがそれぞれ取り付けられている。
【0029】
脚部25a,25b,26a,26bは、図1では図示されていない周知の構造の回転機構によってそれぞれ回転されることによって、アーム23a,23b,24a,24bをそれぞれ回動させる。脚部25a,25b,26a,26bは、図1においてはその一部のみが示されていて、実際には図示されているよりも長い。そして脚部25a,25b,26a,26bは、図1では図示されていない周知の構造の直線移動機構によってそれぞれに鉛直方向に直線移動される。
【0030】
試薬プローブ27a,27b,28a,28bは、アーム23a,23b,24a,24bおよび脚部25a,25b,26a,26bによって、それぞれ円弧状の軌道に沿って移動されたり、上下動されたりする。試薬プローブ27a,27b,28a,28bは、内部に細い空洞を有していて、この空洞にアーム23a,23b,24a,24bおよび脚部25a,25b,26a,26bを介して図示しないポンプがそれぞれに接続されている。試薬プローブ27a,27b,28a,28bは、サンプルプローブ15と同様の動作により、試薬を吸引・吐出する。
【0031】
反応部113は、反応管31、ディスク32、撹拌ユニット33a,33b、測光ユニット34および洗浄ユニット35を含む。
【0032】
反応管31は、多数が円周状に配列されている。反応管31は、サンプルと試薬との反応液を収容する。
【0033】
ディスク32は、反応管31を回転可能に保持する。ディスク32は、反時計回りに、一定角度を4分析サイクルの間に回転する。1分析サイクルは、例えば4.5秒である。ディスク32は、時計回りに回転させるようにしてもよい。
【0034】
撹拌ユニット33aは、2つの撹拌子を備える。撹拌ユニット33aは、反応管31の上方にそれぞれ相当する2つの撹拌位置と、これとは異なる2つの洗浄位置との間で2つの撹拌子を移動させることができる。また撹拌ユニット33aは、2つの撹拌子を鉛直方向に移動させることができる。撹拌ユニット33aは、2つの洗浄位置において2つの撹拌子をそれぞれ洗浄する機能を備える。この撹拌ユニット33aは、反応管31に分注されたサンプルと第1の試薬とを撹拌するために使用される。
【0035】
撹拌ユニット33bは、2つの撹拌子を備える。撹拌ユニット33bは、反応管31の上方にそれぞれ相当する2つの各半日と、これとは異なる2つの洗浄位置との間で2つの撹拌子を移動させることができる。また撹拌ユニット33bは、2つの撹拌子を鉛直方向に移動させることができる。撹拌ユニット33bは、2つの洗浄位置において2つの撹拌子をそれぞれ洗浄する機能を備える。この撹拌ユニット33bは、反応管31に分注されたサンプルと第1の試薬と第2の試薬とを撹拌するために使用される。
【0036】
測光ユニット34は、反応管31が測光位置を通過する時に光を照射して、透過した光から設定波長の吸光度を測定する。そして測光ユニット34は、測定した吸光度を表す信号として分析信号を生成する。
【0037】
洗浄ユニット35は、洗浄ノズルおよび乾燥ノズルを備える。洗浄ユニット35は、洗浄ノズルにより、反応管31内の反応液を吸引するとともに洗浄する。また洗浄ユニット35は、洗浄後の反応管31内を乾燥ノズルにより乾燥する。洗浄ユニット35で洗浄および乾燥された反応管31は、測定に再び使用される。
【0038】
次に以上のように構成された自動分析装置100の動作についての実施形態をいくつか説明する。なお、この自動分析装置100における特徴的な動作は洗浄ユニット35によって反応管31を洗浄した後の動作にあるので、以下ではこの点について説明する。その他の動作については、従来の他の自動分析装置と同様であって良い。
【0039】
(第1の実施形態)
第1の実施形態においてシステム制御部160は、反応管31毎の測定条件の一項目として、溶液満たしの要否に関するユーザ指定を受け付ける。また、溶液満たしが必要である場合には、使用する洗剤溶液の種類に関するユーザ指定を受け付ける。そして測定条件は、例えば図3に示すようなデータテーブルとしてシステム制御部160の内蔵メモリまたは図示しない外部記憶媒体に記憶させておく。
【0040】
そしてシステム制御部160は、洗浄が終了した反応管31を対象反応管として、図4に示すような処理を実行する。
【0041】
ステップSa1においてシステム制御部160は、対象反応管について溶液満たしが必要であると指定されているか否かを確認する。そして溶液満たしがユーザにより要求されているならば、システム制御部160はステップSa1からステップSa2へ進む。ステップSa2においてシステム制御部160は、溶液満たしに使用する洗剤溶液の種類が指定されているか否かを確認する。そして洗剤溶液の種類が指定されているならば、システム制御部160はステップSa2からステップSa3へ進み、指定されている種類の洗剤溶液を対象反応管に一定量分注する。
【0042】
一方、溶液満たしがユーザにより要求されているものの、それに使用する洗剤溶液の種類が指定されていないならば、システム制御部160はステップSa2からステップSa4へ進み、標準洗剤溶液として指定されている洗剤溶液を対象反応管に一定量分注する。
【0043】
具体的には、図3に示すように測定条件が設定されている場合、反応管番号が「1」である反応管31に対してはアルカリ性洗剤の溶液が、反応管番号が「2」である反応管31に対しては酸性洗剤の溶液がそれぞれ分注される。反応管番号が「3」である反応管31に関しては、アルカリ性洗剤および酸性洗剤のうちで標準洗剤溶液として指定されている方の溶液が分注される。なお、標準洗剤溶液は、固定的に定められていても良いし、ユーザにより任意に指定可能としても良い。
【0044】
なお、洗剤溶液は、試薬ボトル21にセットされている洗剤溶液を試薬プローブ27a,27b,28a,28bのいずれかにより対象反応管に分注しても良いし、試料容器11a,11bにセットされている洗剤溶液をサンプルプローブ15により対象反応管に分注しても良い。この場合、試薬プローブ27a,27b,28a,28bおよびサンプルプローブ15のうちで洗剤溶液の分注に用いられたものの洗浄を同時に実施したことになる。あるいは、洗剤溶液の分注用のプローブをサンプルプローブ15や試薬プローブ27a,27b,28a,28bとは別に設けて、このプローブによって洗剤溶液を対象反応管に分注することもできる。
【0045】
溶液満たしがユーザにより要求されていないならば、システム制御部160はステップSa1からステップSa5へ進み、サンプルプローブ15および試薬プローブ27a,27b,28a,28bのいずれかの内部水(純水)を対象反応管に注入する。
【0046】
なお、反応管31を新たに使用する必要が生じたならば、たとえば洗浄ユニット35によってその反応管31に入れられていた洗剤溶液または水を排出する。さらに必要に応じて、その反応管31を純水などで濯いだ上で、乾燥させる。
【0047】
かくしてこの第1の実施形態によれば、洗浄後で次に使用されるまでの待機状態にある反応管31に洗剤溶液を入れておくことができる。従って、待機状態においても反応管31を洗剤による化学的作用により補助的に洗浄でき、反応管31を新たに使用する際により清浄な状態とすることが可能である。
【0048】
さらに第1の実施形態によれば、このように反応管31に入れておく洗剤溶液の種類をユーザが任意に選択できるので、反応管31毎にそこに分注されるサンプルや試薬に適した洗剤溶液を用いての効率的な洗浄が行える。
【0049】
(第2の実施形態)
第2の実施形態においてシステム制御部160は、動作条件として、対象反応管での最後の測定項目に適合する洗浄剤溶液、アルカリ性洗剤溶液および酸性洗剤溶液のいずれを優先するかのユーザ指定を受け付ける。この指定は、反応管31毎に個別に受け付けるのではなく、各反応管31に共通の指定として受け付ける。
【0050】
そしてシステム制御部160は、洗浄が終了した反応管31を対象反応管として、図5に示すような処理を実行する。
【0051】
ステップSb1においてシステム制御部160は、自動分析装置100にセットされていて使用可能な洗剤溶液が、アルカリ性洗剤溶液のみであるか、酸性洗剤溶液のみであるか、それともそれらの両方であるかを確認する。
【0052】
アルカリ性洗剤溶液のみが使用可能であるならば、システム制御部160はステップSb1からステップSb2へ進む。そしてステップSb2においてシステム制御部160は、洗浄前に対象反応管を使用して、アルカリ性洗剤が適合する測定項目についての測定を実施したか否かを確認する。そしてそのような測定が実施されていたならば、システム制御部160はステップSb2からステップSb3へ進み、アルカリ性洗剤溶液を対象反応管へと分注する。
【0053】
一方、酸性洗剤溶液のみが使用可能であるならば、システム制御部160はステップSb1からステップSb4へ進む。そしてステップSb4においてシステム制御部160は、洗浄前に対象反応管を使用して、酸性洗剤が適合する測定項目についての測定を実施したか否かを確認する。そしてそのような測定が実施されていたならば、システム制御部160はステップSb4からステップSb5へ進み、酸性洗剤溶液を対象反応管へと分注する。
【0054】
しかし、アルカリ性洗剤溶液のみが使用可能であるのにアルカリ性洗剤が適合する測定項目についての測定が実施されていなかったり、酸性洗剤溶液のみが使用可能であるのに酸性洗剤が適合する測定項目についての測定が実施されていなかった場合には、システム制御部160はステップSb2またはステップSb4からステップSb6へ進む。そしてこの場合にはシステム制御部160はステップSb6において、純水を対象反応管へと注入する。
【0055】
ところで、アルカリ性洗剤溶液および酸性洗剤溶液の両方が使用可能であるならば、システム制御部160はステップSb1からステップSb7へ進む。ステップSb7においてシステム制御部160は、前述の動作条件として対象反応管での最後の測定項目に適合する洗浄剤溶液を優先とするよう指定されているか否かを確認する。そしてそのように指定されているならば、システム制御部160はステップSb7からステップSb8およびステップSb9へ進み、対象反応管での最後の測定項目がアルカリ性洗剤溶液または酸性洗剤溶液に適合するか、あるいはそのいずれにも適合しないかを確認する。
【0056】
対象反応管での最後の測定項目がアルカリ性洗剤溶液に適合するならば、システム制御部160はステップSb8からステップSb3へ進み、アルカリ性洗剤溶液を対象反応管へと分注する。対象反応管での最後の測定項目が酸性洗剤溶液に適合するならば、システム制御部160はステップSb9からステップSb5へ進み、酸性洗剤溶液を対象反応管へと分注する。対象反応管での最後の測定項目がアルカリ性洗剤溶液および酸性洗剤溶液のいずれにも適合しないならば、システム制御部160はステップSb9からステップSb6へ進み、純水を対象反応管へと分注する。
【0057】
前述の動作条件としてアルカリ性洗剤溶液または酸性洗剤溶液を優先とするよう指定されているならば、システム制御部160はステップSb7からステップSb10へ進む。そしてステップSb10においてシステム制御部160は、アルカリ性洗剤溶液および酸性洗剤溶液のうちの優先とするよう指定されている洗剤溶液(ここでは優先洗剤溶液と称する)に適合する測定項目についての測定が対象反応管を用いて行われていたか否かを確認する。そして該当する測定が行われていたならば、システム制御部160はステップSb10からステップSb11へ進み、優先洗剤溶液を対象反応管へと分注する。しかしながら、該当する測定が行われていなかったならば、システム制御部160はステップSb10からステップSb12へ進み、アルカリ性洗剤溶液および酸性洗剤溶液のうちの優先洗剤溶液ではない洗剤溶液(以下、非優先洗剤溶液と称する)に適合する測定項目についての測定が対象反応管を用いて行われていたか否かを確認する。そして該当する測定が行われていたならば、システム制御部160はステップSb12からステップSb13へ進み、非優先洗剤溶液を対象反応管へと分注する。なお、優先洗剤溶液に適合する測定項目および非優先洗剤溶液に適合する測定項目のいずれについても測定が行われていないならば、システム制御部160はステップSb12からステップSb6へ進み、純水を対象反応管へと注入する。
【0058】
かくしてこの第2の実施形態によれば、洗浄後で次に使用されるまでの待機状態にある反応管31に洗剤溶液を入れておくことができる。従って、待機状態においても反応管31を洗剤による化学的作用により補助的に洗浄でき、反応管31を新たに使用する際により清浄な状態とすることが可能である。
【0059】
さらに第2の実施形態によれば、測定が実施された測定項目に応じた適切な洗剤溶液が自動的に選択される。従って、そのような選択をユーザが行う必要がなく、ユーザの負担を軽減できる。
【0060】
さらに第2の実施形態によれば、ユーザが指定した動作条件に応じて、溶液満たしに使用する洗剤溶液の種類が例えば図6に示すように変更される。このため、ユーザのニーズに応じた柔軟な運用が可能である。
【0061】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0062】
(1) 洗剤溶液を長時間に渡って反応管31に入れておくと、洗浄剤成分の濃縮、析出、固化などが生じて、反応管31を再利用する際の濯ぎで洗浄剤成分を十分に除去できなかったり、濯ぎに要する時間を長くしなければならなかったりする恐れがある。そこで、溶液満たしの状態が長時間に渡り継続する場合に反応管31の再洗浄を行うと良い。これは、例えば図7に示すような処理をシステム制御部160が、溶液満たし状態にある反応管31のそれぞれを対象反応管として実行することにより実現できる。
【0063】
ステップSc1においてシステム制御部160は、対象反応管について溶液満たしの期間を制限することが要求されており、かつ溶液満たしの状態での経過時間があらかじめ定められた上限値以上となっているか否かを確認する。なお、対象反応管について溶液満たしの期間を制限するか否かおよび上限値については、ユーザニーズに拘わらずに固定的に定められても良いし、ユーザからの指示に応じて任意に定められても良い。また、対象反応管について溶液満たしの期間を制限するか否かおよび上限値については、反応管31のそれぞれに共通に定められても良いし、個別に定められても良い。
【0064】
そして上記の条件が成立する場合にのみシステム制御部160は、ステップSc3において対象反応管を再洗浄する。この再洗浄後の反応管31には、その乾燥を防ぐために新たに純水や洗剤溶液を注入する。
【0065】
(2) 第2の実施形態では、前述した3種類の動作のうちのいずれか2つまたは1つのみを実施しても良い。
【0066】
(3) 洗剤溶液は、アルカリ性洗剤溶液または酸性洗剤溶液に代えて、あるいはこれらの洗剤溶液に加えて、中性洗剤溶液、上記アルカリ性洗剤溶液とは成分が異なるアルカリ性洗剤溶液、あるいは上記酸性洗剤溶液とは成分が異なる酸性洗剤溶液などのような他の種類の洗剤溶液を用いることも可能である。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動分析装置100の構成を示したブロック図。
【図2】図1中のサンプル部111、試薬部112および反応部113の構成を示す斜視図。
【図3】測定条件を記述したデータテーブルの一例を示す図。
【図4】第1の実施形態における溶液満たしのためのシステム制御部160による処理を示すフローチャート。
【図5】第2の実施形態における溶液満たしのためのシステム制御部160による処理を示すフローチャート。
【図6】動作条件と溶液満たしに使用する洗剤溶液の種類との対応関係を示した図。
【図7】溶液満たしの状態が長時間に渡り継続する場合における反応管31の再洗浄のためのシステム制御部160による処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0069】
11a,11b…試料容器、12a,12b…サンプラ、13…ラック、14…アーム、15…サンプルプローブ、16…ポンプ、17…洗浄ユニット、18…流路形成ユニット、19…ポンプ、21…試薬ボトル、22a,22b…試薬ラック、23a,23b,24a,24b…アーム、25a,25b,26a,26b…脚部、27a,27b,28a,28b…試薬プローブ、31…反応管、32…ディスク、33a,33b…撹拌ユニット、34…測光ユニット、35…洗浄ユニット、100…自動分析装置、110…測定部、111…サンプル部、112…試薬部、113…反応部、120…分析制御部、121…機構部、122…機構制御部、130…分析データ処理部、131…演算部、132…記憶部、140…出力部、141…印刷部、142…表示部、143…オンライン部、150…操作部、160…システム制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応管と、
前記反応管内での被検試料と試薬との反応の度合いを測定する測定手段と、
前記測定手段による測定が終了した前記反応管を洗浄する洗浄手段と、
洗浄後の前記反応管の内部に洗剤溶液を注入液として注入する注入手段と、
前記注入手段により前記注入液が注入されている前記反応管を新たに使用する必要が生じたことに応じて前記反応管を再洗浄する再洗浄手段とを具備したことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
複数種類の洗剤溶液のうちの1つを前記注入液として選択する選択手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
複数種類の洗剤溶液および前記水から前記注入液を選択する選択手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記再洗浄手段は、前記注入液として前記洗剤溶液が注入され、かつそれが一定時間が経過した場合には、当該反応管を新たに使用する必要が生じなくとも当該反応管を再洗浄することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記測定手段は、複数の測定項目に関する測定を選択的に実施可能であり、
前記選択手段は、前記測定手段により実施された測定が前記複数の測定項目のいずれであるかに基づいて前記注入液を選択することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−160109(P2010−160109A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3842(P2009−3842)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】