説明

自動分析装置

【課題】分析作業の精度管理を各測定対象試料に関して行うことができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】測定対象試料と試薬とを入れて反応させる反応容器31と、試料容器11から測定対象試料を反応容器31に分注する試料分注機構4と、試薬容器21から試薬を反応容器31に分注する試薬分注機構5と、反応容器31に入れられた測定対象試料と試薬との混合液を振動させることにより攪拌する攪拌装置6とを備え、反応容器31の開口部に対向する位置に設けられたレーザ変位計9により、反応容器31内におけるレーザ変位計9に対向する面の高さを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料などの分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、測定対象試料(例えば、血清や尿などの生体試料)に試薬を混合した反応液の物性(例えば、吸光度)を測定することにより、その測定対象試料の分析を行うものである。
【0003】
このような自動分析装置において信頼性の高い分析結果を得るためには、分析作業における分注工程や攪拌工程などの各工程において、各機能(機構)が正常に、かつ規定の精度で動作しているかどうかを管理する精度管理を行うことが非常に重要である。
【0004】
自動分析装置の精度管理を行うものとしては、自動分析装置が正常であれば分析結果が規定範囲に入るように調整された精度確認用検体であるコントロール検体を精度管理対象の自動分析装置において分析し、その分析結果が規定範囲内であるかどうかを確認することにより、その自動分析装置の精度管理を行う技術が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−97946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、予め定めた間隔でコントロール検体の分析を行うことにより精度管理を行っており、分析結果が規定範囲外であって自動分析装置に異常があると判定された場合は、どの時点で異常が生じたか不明である。したがって、前回のコントロール検体の分析以降に分析された測定対象試料の分析結果は異常であるとみなされ、それらの測定対象試料は正常な自動分析装置で再度分析しなければならない。この場合、再分析用の測定対象試料や試薬が別途必要となり、また、再分析に伴う測定時間の確保が必要となっていた。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、分析作業の精度管理を各測定対象試料に関して行うことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、測定対象試料と試薬とを入れて反応させる反応容器と、試料容器から前記測定対象試料を前記反応容器に分注する試料分注機構と、試薬容器から前記試薬を前記反応容器に分注する試薬分注機構と、前記反応容器に入れられた前記測定対象試料と前記試薬との混合液を振動させることにより攪拌する攪拌手段と、前記反応容器の開口部に対向する位置に設けられた検出手段であり、前記反応容器内における該検出手段に対向する面の高さを検出する面位置検出手段とを備えたものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、分析作業の精度管理を各測定対象試料に関して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態における自動分析装置の全体構成を示す図である。
【図2】本実施の形態の自動分析装置における試料分注機構及び試薬分注機構を抜き出して示す図である。
【図3】レーザ変位計と反応容器内の検出対象面の関係を示す図である。
【図4】測定対象試料の分注時における時間とレーザ変位計からの電圧信号の関係を示す図である。
【図5】容器内走査処理におけるレーザ変位計と反応容器内の検出対象面の関係を示す図である。
【図6】容器内走査処理における走査位置とレーザ変位計からの電圧信号の関係を示す図である。
【図7】攪拌工程におけるレーザ変位計、反応容器内の検出対象面、及び攪拌機構の関係を示す図である。
【図8】攪拌工程における攪拌時間とレーザ変位計からの電圧信号の関係を示す図である。
【図9】レーザ変位計をその位置調整機構と共に抜き出して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【0013】
図1において、自動分析装置は、サンプルディスク1、試薬ディスク2、反応ディスク3、試料分注機構4、試薬分注機構5、攪拌機構6、測光機構7、洗浄機構8、変位計9、分析部カバー105、及び制御装置10等により概略構成されている。なお、図面の煩雑化を抑制するため、各構成間の配線(伝送線)等による接続は図示を省略する。
【0014】
サンプルディスク1は円盤形状を有しており、回転駆動装置(図示せず)によって周方向に回転駆動される。サンプルディスク1の平面上には、採取した測定対象試料(例えば、血清や尿などの生体検体)が入れられる複数の試料容器11が、そのサンプルディスク1の回転中心周りに同心円状に複数列(例えば、3列)配置されて固定されている。サンプルディスク1が回転駆動されることにより、試料容器11がサンプルディスク1の周方向に移動される。サンプルディスク1上に配置された複数の試料容器11には、それぞれ異なる測定対象試料が入れられている。
【0015】
試薬ディスク2は、円盤形状を有しており、回転駆動装置(図示せず)によって周方向に回転駆動される。試薬ディスク2の平面上には、測定対象試料と混合して反応させるための試薬が入れられた複数の試薬容器21が、その試薬ディスク2の回転中心周りに円状に配置されて固定されている。試薬ディスク2の試薬容器21が配置されている部分には、試薬容器21に入れられた試薬の温度を制御するための保冷庫22が備えられている。試薬ディスク2が回転駆動されることにより、試薬容器21が試薬ディスク2の周方向に移動される。試薬ディスク2上に配置された複数の試薬容器21には、それぞれ異なる試薬が入れられている。
【0016】
反応ディスク3は、円盤形状を有しており、回転駆動装置(図示せず)によって周方向に回転駆動される。反応ディスク3の平面上には、測定対象試料及び試薬をいれるための複数の反応容器31が、その反応ディスク3の回転中心周りに円状に配置されている。反応ディスク3が回転駆動されることにより、反応容器31が反応ディスク3の周方向に移動される。
【0017】
また、反応ディスク3は、その外周部に沿って配置された反応槽32を備えている。反応ディスク3はこの反応槽32内に収められ、反応槽32に対して相対的に回転駆動される。
【0018】
反応槽32は、測定対象試料と試薬の化学反応を促進するために、反応容器31内の反応液(測定対象試料と試薬の混合液)の温度を予め定めた温度に制御するための恒温槽であり、反応槽32内の温度(つまり、反応液の温度)を制御する温度調整機構33を備えている。温度調整機構33は、例えば、温度制御された恒温水を反応槽32に循環させることにより反応槽32内の反応液の温度を制御する。
【0019】
試料分注機構4は、位置の試料容器11の測定対象試料を指定された位置の反応容器31に分注する。試料ディスク1上の制御装置10により指定された位置の試料容器11に入れられた測定対象試料を反応ディスク3上の制御装置10により指定された位置の反応容器31に分注するものである。この試料分注機構4について図2を参照しつつ説明する。
【0020】
図2は、自動分析装置における試料分注機構4及び試薬分注機構5を抜き出して示す図である。なお、図2において、試薬分注機構5の構成については図中に括弧書きで符号を示している。
【0021】
図2において、試料分注機構4は、一端を試料容器11及び反応容器31の開口部に対向する向きに設けた管形状のプローブ41と、プローブ41の他端を支持するアーム43と、試料ディスク1と反応ディスク3の間に配置され(図1参照)、アーム43を水平方向(図2中θ方向)に回転可能に支持する支承軸42とを備えている。アーム43が、支承軸42を中心に回転駆動装置(図示せず)によりθ方向に回転駆動されることにより、プローブ41は試料ディスク1の試料容器11の開口部に対向する位置と反応ディスク3の反応容器31の開口部に対向する位置との間を往復する。また、アーム43は、支承軸42に対して垂直方向(図2中z方向)に移動可能に支持されており、駆動装置(図示せず)によりプローブ41と共に上下方向に直線駆動される。
【0022】
試料ディスク1及び試料分注装置4が駆動され、分注対象である測定対象試料が入れられた試料容器11の開口部とプローブ41が対向する位置に移動された状態でアーム43を上下駆動させ、プローブ41を試料容器11に挿入し測定対象試料の吸引を行う。また、試料ディスク1及び試料分注装置4が駆動され、測定対象試料を入れる反応容器31の開口部とプローブ41が対向する位置に移動された状態でアーム43を上下駆動させ、プローブ41を反応容器31に挿入し測定対象試料の吐出を行う。このようにして、試料分注機構4は、制御装置10により指定された位置の試料容器11の測定対象試料を指定された位置の反応容器31に分注する。
【0023】
試薬分注機構5は、試薬ディスク2の試薬容器21に入れられた試薬を反応ディスク3の反応容器31に分注するものである。なお、試薬分注機構5は、試料分注機構4と同様の構成を有しており説明を省略する。
【0024】
図1に戻る。
【0025】
攪拌機構6は、反応容器31に入れられた測定対象試料と試薬の混合液である反応液を攪拌するものであり、反応液を超音波を照射することにより流動させて攪拌する超音波攪拌機構である。攪拌機構6(超音波攪拌機構)は、反応ディスク3の外周部の外側に、反応ディスク3の回転中心方向に超音波を照射する方向に向けて配置されている。反応ディスク3が回転駆動され、反応ディスク3上の制御装置10により指定された位置の反応容器31が攪拌機構6の超音波照射側(攪拌位置)に移動された状態で、攪拌機構6から超音波を照射することにより、反応液の攪拌を行う。
【0026】
測光機構7は、反応容器内31の反応液の吸光度などの物性を測定するものであり、反応容器31内の反応液を測定するための光を放射する光源ランプ71と、光源ランプ71から放射され、反応容器31及びその反応容器31内に入れられた反応液を透過した光を測定する光度計72とを備えている。測光機構7における測定結果(吸光度)は伝送線路(図示せず)を介して制御装置10に送られる。
【0027】
洗浄機構8は、複数のノズル81と、ノズル81を上下方向に駆動する駆動機構(図示せず)とを備えている。反応ディスク3を駆動して、洗浄対象の反応容器31を洗浄機構8の下方(洗浄位置)に移動させた状態で、ノズル81を駆動して反応容器31内に挿入し、反応容器31内の反応液を吸引し、洗浄液を吐出及び吸引することにより反応容器31を洗浄する。
【0028】
変位計9は、試料容器11内の測定対象試料を反応容器に分注する位置(試料分注位置)、試薬容器21内の試薬を反応容器に分注する位置(試薬分注位置)、及び反応容器31中の反応液を攪拌する位置(攪拌位置)における反応容器31の開口部と対向するように複数(例えば3つ)配置され、反応容器内における変位計9に対向する面(以下、検出対象面と記載する)の上下方向の位置、つまり、高さを検出するもの(面位置検出手段)である。変位計9は、例えば、レーザ光91を反応容器内に照射し、検出対象面からの反射光を測定することにより、検出対象面の高さを算出するレーザ変位計である。なお、図1においては、図面が煩雑となるため複数の変位計のうち攪拌位置における変位計9を代表して示す。ここで、検出対象面とは、反応容器31が空の場合は反応容器31の底面(固体)であり、測定対象試料や試薬などが分注された後は、測定対象試料、試薬、或いはその混合液(反応液)の液面である。レーザ変位計9により検出された検出対象面の高さ情報は、例えば電圧信号に変換され、伝送線路(図示せず)を介して制御装置10に送られる。
【0029】
分析部カバー105は、自動分析装置における分析環境の悪化(埃等の混入や温度変化)、オペレータの動作部分との接触等を抑制するためのものであり、サンプルディスク1、試薬ディスク2、反応ディスク3、試料分注機構4、試薬分注機構5、攪拌機構6、測光機構7、洗浄機構8、及び変位計9は、分析部カバー105により覆われている。
【0030】
制御装置10は、自動分析装置全体の動作を制御する制御部101と、各種ソフトウェアや測定データ、設定値等を記憶する記憶部102と、各種測定結果などを表示する表示部103と、自動分析装置の動作状態をオペレータに報知する報知装置104とを備えている。
【0031】
表示部103は、測定対象試料の分析に用いる各種指令値の設定画面や、測定対象試料の分析結果(吸光度など)を表示する表示手段であると共に、GUI(Graphical User Interface)操作により各種指令値の入力を行う入力手段としての機能も有している。
【0032】
制御部101は、表示部103におけるGUI(Graphical User Interface)操作や制御装置10に設けられたキーボード(図示せず)へのコマンド入力に基づいて制御装置10を含む自動分析装置全体の動作を制御するものであり、記憶部102に記憶したソフトウェアに従って、サンプルディスク1、試薬ディスク2、及び反応ディスク3の回転動作(回転速度、回転停止位置など)、試料分注機構4、試薬分注機構5、攪拌装置6、測光機構7、及び洗浄機構8の動作、温度調整機構33の動作等を制御する。また、制御部101は、変位計9により検出された検出対象面の高さ情報等を用いて各種処理(後に詳述)を行い、自動分析装置における分注工程や攪拌工程などの各工程において、各機能(機構)が正常に、かつ規定の精度で動作しているかどうかを管理する精度管理を行う。
【0033】
報知装置104は、例えば、スピーカーであり、音(音声)によりオペレータに自動分析装置の動作状態を報知する。
【0034】
ここで、制御部101の処理内容の詳細について、図3〜図9を参照しつつ説明する。
【0035】
<容器位置検出処理>
容器位置検出処理は、その反応容器31の取り付け状態の良否を判定する処理である。
【0036】
図3は変位計9による反応容器31内の検出対象面の関係を示す図であり、図4は測定対象試料を分注する際の時間と変位計(レーザ変位計)9からの電圧信号(検出対象面の高さ情報)の関係を示す図である。図4において、横軸は時間を表しており、縦軸は変位計からの電圧信号(検出対象面の高さ情報)を表している。また、図3及び図4において、t0は測定対象試料の吐出開始時、t1は終了時を示している。
【0037】
図3に示すように、レーザ変位計9は、反応容器31内にレーザ光91を照射して反射光を計測することにより検出対象面の位置を検出し、電圧信号として制御装置10に出力する。図4に示すように、分注開始前(t<t0)の場合、反応容器31内は空であり、したがって、検出対象面は反応容器31の底面である。
【0038】
制御部101は、レーザ変位計9で検出された検出対象面の位置(反応容器31の底面位置)を示す電圧信号が予め定めた正常範囲内(例えば、仕様値の範囲内)である場合には、その電圧信号(反応容器31の底面位置)を記憶部102に記憶する。この反応容器31の底面位置は、各反応容器31に対して検出され、各反応容器31に対応して記憶される。逆に、反応容器31の底面位置(電圧信号)が予め定めた正常範囲外(例えば、仕様値の範囲外)である場合には、その反応容器31の取り付けが正常に行われていない(容器位置が異常である)と判定し、自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止すると共に、反応容器31の取り付け位置に異常があることを報知装置104によりオペレータに報知し、また、表示部103に表示する。容器位置検出処理は、複数の反応容器31のそれぞれに対して行われる。
【0039】
容器位置検出処理を行うことにより、例えば、取り付け器具の締め付け不良等に起因する反応容器31の取り付け不良を検出し、自動分析装置の破損などを抑制すると共に、オペレータの安全性を向上する。
【0040】
<器具動作量調整処理>
器具動作量調整処理は、試料分注機構4、試薬分注機構5、及び洗浄機構8の各反応容器31内への下降量、すなわち、挿入量を調整する処理である。
【0041】
制御部101は、記憶部102に記憶された各反応容器31の底面位置(検出対象面の位置)に基づいて、試料分注機構4、試薬分注機構5、及び洗浄機構8の各反応容器31内への下降量(挿入量)をそれぞれ演算し、この下降量を用いて各機構4,5,8の動作を制御する。演算処理としては、例えば、記憶部102に記憶された各反応容器31の底面位置と、反応容器31内に下降したときの各機構4,5,8の距離がそれぞれ最適値(例えば、設計値)となるように各機構4,5,8の下降量をそれぞれ演算する。
【0042】
器具動作量調整処理を行うことにより、各機構の各反応容器31に対する下降量をそれぞれ最適化する。例えば、下降量の最適化により洗浄機構8における洗浄液の吸い取り不良等を抑制することで反応液の薄まりを抑制し、分析精度の向上を図る。
【0043】
<分注量検出処理>
分注量検出処理は、各反応容器31に分注された測定対象試料、試薬、或いはそれらの混合液(反応液)の液量を検出する処理である。
【0044】
反応容器31の中に入れられた液体の容量は、反応容器31の形状(記憶部102に記憶された底面位置や断面積などの値)と反応容器31中の液面の位置から算出することができる。反応容器31の形状は一定であるので、反応容器31における液面の位置を検出し、この検出結果から反応容器31に分注された液体の容量を算出する。
【0045】
図4に示すように、試料分注機構4による測定対象試料の分注の最中(t0≦t<t1)の場合、検出対象面は測定対象試料の液面であり、その検出位置(電圧信号)は、反応容器31内への測定対象試料の分注(吐出)が進むに伴って増加する。
【0046】
制御部101は、試料分注機構4による測定対象試料の分注が終了した後(t1≦t)において、レーザ変位計9で検出された検出対象面の位置(測定対象試料の液面)を示す電圧信号が正常範囲であるかどうかを判定する。ここで、電圧信号(測定対象試料の液面位置)の正常範囲とは、例えば、予め定めた設定容量の許容誤差範囲から逆算される電圧信号の範囲である。制御部101は、電圧信号が正常範囲内であれば、反応容器31内の測定対象試料の容量が許容誤差範囲内であると判定し、その電圧信号(測定対象試料の液面位置)を記憶部102に記憶する。逆に、電圧信号が予め定めた正常範囲外である場合には、その測定対象試料の分注が正常に行われていない、つまり、反応容器31内の測定対象試料の容量が予め定めた許容誤差範囲から外れていると判定し、自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止すると共に、試料分注機構4に異常があることを報知装置104によりオペレータに報知し、また、表示部103に表示する。
【0047】
なお、試薬の分注における分注量検出処理も同様である。すなわち、試薬の分注が終了した後において、レーザ変位計9で検出された検出対象面の位置(反応液の液面)を示す電圧信号が正常範囲であるかどうかを判定し、正常範囲内であればその電圧信号を記憶部102に記憶し、正常範囲外であれば、分析作業を中止すると共に、試料分注機構4に異常があることを報知装置104によりオペレータに報知し、また、表示部103に表示する。
【0048】
分注量検出処理を行うことにより、測定対象試料、及び試薬の分注量を管理し、自動分析装置における精度管理を行う。
【0049】
<容器内走査処理>
容器内走査処理は、反応容器31内全体を走査することにより検出対象面の位置を連続的に検出するものである。
【0050】
図5は容器内走査処理におけるレーザ変位計9と反応容器31の関係を示す図であり、図6はレーザ変位計9により反応容器31内の検出対象面を走査した場合のx方向の位置とレーザ変位計9からの電圧信号(検出対象面の高さ情報)の関係を示す図である。図6において、横軸は反応容器31内のx方向の位置を表しており、縦軸は変位計からの電圧信号(検出対象面の高さ情報)を表している。
【0051】
図5において、レーザ変位計9は、x,y方向(水平方向)に駆動する駆動手段(図示せず)を有しており、反応用器31内の検出対象面の位置を走査して検出する。駆動手段としては、例えば、レーザ変位計9に対してx方向及びy方向にリニアガイドを設け、x方向駆動用、及びy方向駆動用のパルスモータからの駆動力をタイミングベルト等によりレーザ変位計9に伝達することによりx,y方向(水平方向)に駆動するものが考えられる。
【0052】
例えば、図5に示すように、測定対象試料の分注量が微量であり、測定対象試料が液滴34である場合の容器内走査処理について考える。レーザ変位計9により反応容器31の底面全体を走査した場合の検出結果において、液滴34の中心位置におけるx方向の検出結果は図6のように示される。図6において、x1は電圧信号が最大値を示したときの位置、すなわち、液滴34のx方向の中心位置を示し、x0は反応用器31の底面のx方向における中心を示している。
【0053】
制御部101は、検出結果における位置x1と位置x0を基に試料分注装置4による吐出位置を補正し、x1(測定対象試料の吐出位置)がx0(底面のx方向における中心)になるように試料分注装置4を制御する。例えば、制御部101は、位置x0と位置x1の差分を補正値として算出し、試料分注装置4を駆動する指令信号を補正値を適用することにより、試料分注装置4による測定対象試料の分注位置の補正を行う。制御部101は、y方向についても同様に試料分注装置4による測定対象試料の分注位置の補正を行う。また、測定対象試料の吐出位置が検出できない場合、例えは、測定対象試料が分注されていない場合、或いは、分注量が多く電圧信号が最大値(ピーク)を示さない場合は、その測定対象試料の分注が正常に行われていないと判定し、自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止すると共に、試料分注機構4に異常があることを報知装置104によりオペレータに報知し、また、表示部103に表示する。
【0054】
また、制御部101は、容器内走査処理を反応容器31の洗浄処理の後に行うことにより、洗浄液の吸引不良などの洗浄不良を検出して適正な処理を行う。例えば、容器内走査処理によって、反応容器31内に残留洗浄液が検出された場合は、洗浄機構8により洗浄液の吸引を行い、次に分析される測定対象試料、或いはその混合液である反応液への洗浄液の混入を抑制する。
【0055】
容器内走査処理を行うことにより、試料分注装置4による測定対象試料の分注(吐出)位置を反応容器31の底面の中心部とし、試薬分注後における攪拌状態の向上を図る。また、洗浄不良を抑制し、分析精度の向上を図る。
【0056】
<攪拌状態検出処理>
攪拌状態検出処理は、攪拌工程における反応液の攪拌状態を検出するものである。
【0057】
図7は攪拌工程における反応容器31内の反応液、攪拌機構6、及びレーザ変位計9の関係を示す図であり、図8は反応液の攪拌時間とレーザ変位計9による検出対象面(反応液の液面)の位置(電圧信号)の関係を示す図である。図8において、横軸は時間を表しており、縦軸はレーザ変位計9からの電圧信号(検出対象面の高さ情報)を表している。
【0058】
図7に示すように、攪拌位置に攪拌対象の反応液が入れられた反応容器31が移動され、攪拌機構6から反応容器31に対して超音波が照射されると、反応容器31内の反応液が流動(対流)し、これにより反応液が攪拌される。攪拌中における反応容器31中の反応液の液面は、反応液の上昇流側が盛り上がり、下降流側が沈み込む。
【0059】
レーザ変位計9は、攪拌中の反応液の液面の予め定めた検出点にレーザ光91を照射して反射光を計測することにより反応液の液面の位置を検出し、電圧信号として制御装置10に出力する。検出点としては、攪拌開始前後における液面の変化量が多い点が良く、例えば、攪拌により上昇流が生じる位置、或いは、下降流が生じる位置などが考えられる。
【0060】
検出点として、攪拌により下降流が生じる位置を設定した場合、攪拌中におけるレーザ変位計9からの電圧信号(検出対象面の高さ情報)は図8に示すようになる。図8において、電圧信号の最大値と最小値の差を最大変化幅Wとする。
【0061】
制御部101は、レーザ変位計9からの電圧信号を基に最大変化幅Wを演算し、最大変化幅Wを予め定めた攪拌正常範囲の最小値Wmin、及び最大値Wmaxと比較する。ここで、攪拌正常範囲は、攪拌機構6による反応液の攪拌が正常に行われているかどうかを判定するための基準範囲であり、予め記憶部102に記憶されている。Wmin≦W≦Wmaxの場合は、反応容器31内の反応液が正常に攪拌されていると判定する。一方、W<Wminの場合、反応液の攪拌が弱く、十分に攪拌されていない、つまり、攪拌状態に異常があると判定し、攪拌動作を含む自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止すると共に、攪拌機構6に異常があることを報知装置104によりオペレータに報知し、また、表示部103に表示する。反応液の攪拌が弱いと判定される場合としては、例えば、攪拌機構6の不具合等により反応液に照射される音圧が低くなっていることが考えられる。また、Wmax<Wの場合は、反応液の攪拌が強い、つまり、攪拌状態に異常があると判定し、攪拌動作を含む自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止すると共に、攪拌機構6に異常があることを報知装置104によりオペレータに報知し、また、表示部103に表示する。反応液の攪拌が強いと判定される場合としては、例えば、攪拌機構6の不具合等により反応液に照射される音圧が強くなっていることが考えられ、これは、反応液が反応容器31外に飛び散ることも懸念される状態である。
【0062】
なお、上記においては、最大変化幅Wと攪拌正常範囲を比較した結果に基づいて、攪拌機構6による反応液の攪拌が正常に行われているかどうかを判定したが、攪拌中における電圧信号の変化率(傾き)の最大値、或いは最小値を予め定めた基準値(基準範囲)と比較することにより反応液の攪拌が正常に行われているかどうかを判定しても良い。
【0063】
<検出範囲調整処理>
検出範囲調整処理は、検出対象面の推定位置に応じて、レーザ変位計9の上下方向における検出可能範囲の位置を調整するものである。
【0064】
図9は、レーザ変位計9を上下方向(z方向)の位置調整機構と共に抜き出して示す図である。
【0065】
図9において、レーザ変位計9の位置調整機構は、上下方向に設けられたリニアガイド92と、リニアガイド92の上端部及び下端部に設けられた2つのプーリ93,94と、2つのプーリ93,94に巻装され、リニアガイド92に沿って配置されたタイミングベルト95と、プーリ93に設けられ、制御部101からの指令に基づいてプーリ93を回転駆動するパルスモータ96とを備えている。レーザ変位計9は、リニアガイド92に摺動可能に支持されると共に、ベルト保持具97を介してタイミングベルト95に取り付けられており、制御部101からの指令によりパルスモータ96及びプーリ93を回転駆動させることによりリニアガイド92に沿って上下方向(z方向)に直線移動する。
【0066】
制御部101は、記憶部102に記憶された反応容器31の形状(底面位置、断面積など)から反応容器31における検出対象面の予測値を算出し、その予測値がレーザ変位計9の検出可能範囲内に入るようにレーザ変位計9の上下方向(z方向)の位置、つまり、高さを調整する。
【0067】
なお、レーザ変位計9からの検出信号を確認しながらレーザ変位計9を上下方向(z方向)に駆動し、電圧信号の変化から検出可能範囲に検出対象面が入ったことを検出しても良い。この場合、レーザ変位計9が初期位置から検出対象面が検出可能範囲に入る位置まで移動するのに要した駆動パルス数と検出した電圧信号から検出対象面の絶対位置を算出する。
【0068】
以上において、制御装置10の制御部101は、レーザ変位計9により検出された反応容器31内における反応液の液面の高さに基づいて、反応容器31内の液体の液量を検出する液量検出手段を構成し、レーザ変位計9により検出された反応容器31内における反応液の液面の高さに基づいて、反応容器31内の液体の攪拌状態を検出する攪拌状態検出手段を構成し、レーザ変位計9により検出された反応容器31の底面の高さに基づいて反応容器31の取り付け状態を検出する容器状態検出手段を構成し、レーザ変位計9により検出された反応容器31の底面の高さに基づいて、試料容器11から測定対象試料を反応容器31に分注する時の反応容器31の底面と試料分注機構4の相対高さ、及び試薬容器21から試薬を反応容器31に分注する時の反応容器31の底面に対する試薬分注機構5の相対高さを調整する分注高さ調整手段を構成し、レーザ変位計9により検出された反応容器31の底面の高さに基づいて、反応容器31を洗浄する洗浄機構8による洗浄時における反応容器31の底面に対する該洗浄機構8の相対高さを調整する洗浄高さ調整手段を構成し、予め定められた反応容器31の設計値に基づいて、反応容器31内における検出対象面の高さの予測値を演算し、予測値が検出可能範囲内に入るようにレーザ変位計9の高さを調整する検出範囲調整手段を構成し、検出対象面を走査することにより、その面の高さを連続的に検出する面走査手段を構成する。
【0069】
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
【0070】
制御装置10に測定条件等のパラメータ、及び自動分析開始の指示が入力され、試料容器11に入れられた測定対象試料の分析作業が開始される。
【0071】
まず、容器位置検出処理の準備として検出範囲調整処理を行い、レーザ変位計9の上下方向の位置(高さ)を調整する。
【0072】
次に、容器位置検出処理により反応容器31の取り付け状態の良否を判定する。反応ディスク3上の複数の反応容器31の全てに容器位置検出処理を行い、何れか1つでも取り付け状態に異常があると判定された場合は、自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止すると共に、反応容器31の取り付け位置に異常があることを報知装置104によりオペレータに報知し、また、表示部103に表示する。逆に、反応ディスク3上の全ての反応容器31において、取り付け状態が正常と判定された場合は、反応容器31のそれぞれについてその底面位置を記憶部102に記憶する。
【0073】
次に、器具動作調整処理を行い、記憶部102に記憶された反応容器31の底面位置に基づいて、試料分注機構4、試薬分注機構5、及び洗浄機構8の各反応容器31内への下降量(挿入量)を調整する。
【0074】
容器位置検出処理、及び器具動作調整処理が終了すると、次の試料分注工程の準備として検出範囲調整処理を行い、レーザ変位計9の上下方向の位置(高さ)を調整する。
【0075】
次に、試料分注機構4により試料容器11から反応容器31に測定対象試料が分注される試料分注工程に移行し、さらに、試薬分注機構5により試薬容器21から反応容器31に試薬が分注される試薬分注工程に移行する。
【0076】
試料分注工程において分注量検出処理を行うことにより各反応容器31に分注された測定対象試料の液量を検出し、その液量が許容誤差範囲内であると判定された場合は、次の工程に移行する。各反応容器31に分注された測定対象試料の液量が許容範囲外であると判定された場合は、自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止すると共に、測定対象試料の分注量に異常があることを報知装置104によりオペレータに報知し、また、表示部103に表示する。
【0077】
また、試薬分注工程において、反応容器31への測定対象試料の分注量が微量である場合、容器内走査処理を行うことにより反応容器31に対する測定対象試料の分注位置を検出し、分注位置が反応容器31の中央になるように補正する。
【0078】
さらに、試薬分注工程において、分注量検出処理を行うことにより各反応容器31に分注された試薬の液量を検出し、その液量が許容誤差範囲内であると判定された場合は、次の工程に移行する。各反応容器31に分注された試薬の液量が許容範囲外であると判定された場合は、自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止すると共に、測定対象試料の分注量に異常があることを報知装置104によりオペレータに報知し、また、表示部103に表示する。
【0079】
反応容器31に測定対象試料及び試薬が分注されると攪拌工程に移行する。攪拌工程においては攪拌状態検出処理を行う。攪拌状態検出処理において、攪拌工程における反応液の攪拌状態が正常であると判定した場合は、次の工程に移行し、逆に異常があると判定した場合は、攪拌動作を含む自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止すると共に、攪拌機構6に異常があることを報知装置104によりオペレータに報知し、また、表示部103に表示する。
【0080】
反応容器31に入れられた反応液(測定対象試料と試薬の混合液)が正常に攪拌されると、次に、反応容器内31の反応液の吸光度を測定する測光工程に移行する。測光工程において得られた反応液の吸光度は制御装置10に送られ、記憶部102に記憶される。
【0081】
測光工程を終えた反応容器31は、反応容器31を洗浄する洗浄工程に移行する。洗浄工程において、容器内走査処理を行うことにより反応容器31における残留洗浄液を検出し、反応容器31内に残留洗浄液が検出された場合は、洗浄機構8により洗浄液を再度吸引する。また、容器内走査処理によって、反応容器31内に残留洗浄液が検出されない場合は、次の測定対象試料に対する分析作業に移行する。
【0082】
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0083】
従来技術における自動分析装置においては、その自動分析装置が正常であれば分析結果が規定範囲に入るように調整された精度確認用検体であるコントロール検体を精度管理対象の自動分析装置において分析し、その分析結果が規定範囲内であるかどうかを確認することにより、その自動分析装置の精度管理を行っていた。しかし、自動分析装置におけるコントロール検体の最終的な分析結果により精度管理を行っているので、分析結果が規定範囲外であり、自動分析装置に異常があると判定された場合においても、何れの工程において異常が生じているかは不明である。したがって、異常が生じた工程を判定するには別途の調査が必要であり、作業効率の観点からみて改善の余地があった。また、予め定めた間隔をあけてコントロール検体の分析を行っており、自動分析装置に異常があると判定された場合、どの時点で異常が生じたか不明であり、前回のコントロール検体の分析以降に分析された測定対象試料の分析結果は異常であるとみなされる。したがって、それらの測定対象試料は正常な自動分析装置で再度分析しなければならず、分析に用いた測定対象試料及び分析に要した時間が無駄になり、さらに、再分析用の測定対象試料及び時間が必要であった。
【0084】
これに対し、本実施の形態においては、反応容器31の開口部に対向する位置に面位置検出手段としてのレーザ変位計9を備え、反応容器31内における検出対象面の高さを検出するように構成したので、分注工程においてレーザ変位計9により検出された反応容器31内における反応液の液面の高さに基づいて、反応容器内の反応液の液量を検出し、分注工程の分注量に関する精度管理を行うことにより、分析作業の精度管理を各測定対象試料に関して行うことができる。よって、再分析用の測定対象試料や試薬、及び再分析に伴い生じる測定時間の損失を抑制することができる。
【0085】
また、反応容器31の開口部に対向する位置に面位置検出手段としてのレーザ変位計9を備え、反応容器31内における検出対象面の高さを検出するように構成したので、攪拌工程においてレーザ変位計9により検出された反応容器31内における反応液の液面の高さに基づいて、反応容器内の反応液の攪拌状態を検出し、攪拌工程の攪拌状態に関する精度管理を行うことにより、分析作業の精度管理を各測定対象試料に関して行うことができる。よって、再分析用の測定対象試料や試薬、及び再分析に伴い生じる測定時間の損失を抑制することができる。
【0086】
さらに、分析作業における測定対象試料の分注工程、試薬の分注工程、及び反応液の攪拌工程において精度管理を行うので、分注工程以前、分注工程と攪拌工程の間の工程、或いは攪拌工程の後の工程のいずれの工程において異常が生じたかを判定することができ、従来技術と比較して作業効率を改善することができる。
【0087】
また、反応容器31の底面の位置を検出し、その検出結果を基に、例えば、取り付け器具の締め付け不良等に起因する反応容器31の取り付け不良を検出するようにしたので、反応容器31が他の部材に接触することにより、自動分析装置が破損するのを抑制する。
【0088】
さらに、反応容器31の底面の位置を検出して記憶部102に記憶し、その検出結果を用いて、その後に行う分注量検出処理などの各処理における検出結果を補正するようにしたので、その各処理における検出結果の精度を向上させることができる。
【0089】
また、少量の測定対象試料を反応容器の外周部に分注した場合は、攪拌時に試薬と混ざりにくい傾向にあるが、本実施の形態においては、反応容器31への測定対象試料の分注位置をその反応容器31の中心に分注するように構成したので、攪拌時における攪拌むらを抑制することができ、分析精度の低下を抑制することができる。
【0090】
さらに、洗浄工程における残留洗浄液の有無を検出し、残留洗浄液を除去するようにしたので、残留洗浄液による反応液の薄まりを抑制することができ、分析精度の低下を抑制することができる。
【0091】
本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0092】
本実施の形態は、上記第1の実施の形態におけるレーザ変位計9の代わりに超音波変位計を用いて検出対象面の高さを検出し、その検出結果に基づいて分注工程、及び攪拌工程の精度管理を行うものである。
【0093】
超音波変位計は、超音波を反応容器内に照射し、反応容器31内の検出対象面から反射してくる超音波を測定することにより、検出対象面の高さを検出するもの(面位置検出手段)である。超音波変位計により検出された検出対象面の高さ情報は、例えば電圧信号に変換され、伝送線路(図示せず)を介して制御装置10に送られる。
【0094】
その他の構成は、本発明の第1の実施の形態と同様である。
【0095】
以上のように構成した本実施の形態においては、反応容器31の開口部に対向する位置に面位置検出手段としての超音波変位計を備え、反応容器31内における検出対象面の高さを検出するように構成したので、分注工程において超音波変位計により検出された反応容器31内における反応液の液面の高さに基づいて、反応容器内の反応液の液量を検出し、分注工程の分注量に関する精度管理を行うことにより、分析作業の精度管理を各測定対象試料に関して行うことができる。よって、再分析用の測定対象試料や試薬、及び再分析に伴い生じる測定時間の損失を抑制することができる。
【0096】
また、反応容器31の開口部に対向する位置に面位置検出手段としての超音波変位計9を備え、反応容器31内における検出対象面の高さを検出するように構成したので、攪拌工程において超音波変位計により検出された反応容器31内における反応液の液面の高さに基づいて、反応容器内の反応液の攪拌状態を検出し、攪拌工程の攪拌状態に関する精度管理を行うことにより、分析作業の精度管理を各測定対象試料に関して行うことができる。よって、再分析用の測定対象試料や試薬、及び再分析に伴い生じる測定時間の損失を抑制することができる。
【0097】
本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0098】
本実施の形態は、上記第1の実施の形態におけるレーザ変位計9の代わりにCCDカメラを用いて検出対象面の画像を取得し、その画像に基づいて分注工程、及び攪拌工程の精度管理を行うものである。
【0099】
CCDカメラは、反応容器31内の検出対象面の画像を取得するもの(撮像手段)であり、CCDカメラにより検出された検出対象面の画像は、例えば電気信号に変換され、伝送線路(図示せず)を介して制御装置10に送られる。
【0100】
制御装置10の制御部101は、CCDカメラからの画像を記憶部102に記憶すると共に、表示部103に表示する。
【0101】
オペレータは、試料容器11内の測定対象試料を反応容器に分注する位置(試料分注位置)、及び試薬容器21内の試薬を反応容器に分注する位置(試薬分注位置)におけるCCDカメラから送られ、表示部103に表示された画像により、分注工程における試料分注機構4及び試薬分注機構5による分注状態、つまり、各分注機構4,5によって測定対象試料、及び試薬の分注が行われているかどうかを確認する。この確認工程において、例えば、分注が行われていない状態、或いは、反応容器31から反応液が漏れている状態など、分注状態に異常があることを確認した場合、オペレータは、攪拌動作を含む自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止する。
【0102】
また、オペレータは、反応容器31中の反応液を攪拌する位置(攪拌位置)におけるCCDカメラから送られ、表示部103に表示された画像により、攪拌工程における攪拌状態、つまり、攪拌機構6により反応容器31中の反応液が攪拌されているかどうかを確認する。この確認工程において、例えば、攪拌が行われていない状態、或いは、反応容器31から反応液が飛散している状態など、分注状態に異常があることを確認した場合、オペレータは、攪拌動作を含む自動分析装置の動作を停止して分析作業を中止する。
【0103】
また、CCDカメラは水平方向、及び垂直方向への移動手段を有しており、自動分析装置の分析部カバー105内部における、所望の部材の画像を取得することができる。駆動手段としては、例えば、CCDカメラに対してx方向、y方向及びz方向にリニアガイドを設け、x方向駆動用、y方向駆動用、z方向駆動用のパルスモータからの駆動力をタイミングベルト等によりCCDカメラに伝達することによりx,y方向(水平方向)、及びz方向(垂直方向)に駆動するものが考えられる。
【0104】
その他の構成は、本発明の第1の実施の形態と同様である。
【0105】
以上のように構成した本実施の形態においては、反応容器31の開口部に対向する位置に撮像手段としてのCCDカメラを備え、反応容器31内における検出対象面の画像を取得するように構成したので、分注工程においてCCDカメラにより撮像された反応容器31内における反応液の液面の画像を表示部103に表示し、この画像をオペレータが視覚的に確認して分注工程の精度管理を行うことにより、分析作業の精度管理を各測定対象試料に関して行うことができる。よって、再分析用の測定対象試料や試薬、及び再分析に伴い生じる測定時間の損失を抑制することができる。
【0106】
また、反応容器31の開口部に対向する位置に撮像手段としてのCCDカメラを備え、反応容器31内における検出対象面の画像を取得するように構成したので、攪拌工程においてCCDカメラにより撮像された反応容器31内における反応液の液面の画像を表示部103に表示し、この画像をオペレータが視覚的に確認して、攪拌工程の攪拌状態に関する精度管理を行うことにより、分析作業の精度管理を各測定対象試料に関して行うことができる。よって、再分析用の測定対象試料や試薬、及び再分析に伴い生じる測定時間の損失を抑制することができる。
【0107】
また、CCDカメラが分析部カバー105内において所望の位置の画像を取得することができるようにしたので、分析部カバー105を閉じたまま必要な部位の画像を表示部103に表示することが出来、視覚的に自動分析装置の各部の状態を確認することができる。また、自動分析装置に対して顔を近づけることなく各機構の動作確認ができるので、オペレータの安全性を確保することができる。
【0108】
なお、以上に説明した各実施の形態においては、面位置検出手段、或いは、撮像手段を試料分注位置、試薬分注位置、及び攪拌位置にそれぞれ設けるように構成したが、これに限られず、例えば、試薬分注位置、試料分注位置、攪拌位置のうちの何れか2つの位置、或いは、3つの位置を同じ位置となるように構成し、
その位置に面位置検出手段、或いは、撮像手段を設けるように構成しても良い。
【0109】
また、攪拌機構6として超音波攪拌装置を示して説明したが、これに限られず、反応容器31を振動させることにより反応容器31内の反応液を振動させて攪拌させる振動攪拌装置を用いても良い。
【符号の説明】
【0110】
1 試料ディスク
2 試薬ディスク
3 反応ディスク
4 試料分注機構
5 試薬分注機構
6 攪拌装置
7 測光機構
8 洗浄機構
9 変位計
10 制御装置
11 試料容器
21 試薬容器
22 保冷庫
31 反応容器
32 反応槽
33 温度制御部
41,51 プローブ
42,52 支承軸
43,53 アーム
71 光源ランプ
72 光度計
81 ノズル
91 レーザ光
92 リニアガイド
93,94 プーリ
95 タイミングベルト
96 パルスモータ
101 制御部
102 記憶部
103 表示部
104 報知装置
105 分析部カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象試料と試薬とを入れて反応させる反応容器と、
試料容器から前記測定対象試料を前記反応容器に分注する試料分注機構と、
試薬容器から前記試薬を前記反応容器に分注する試薬分注機構と、
前記反応容器に入れられた前記測定対象試料と前記試薬との混合液を振動させることにより攪拌する攪拌手段と、
前記反応容器の開口部に対向する位置に設けられた検出手段であり、前記反応容器内における該検出手段に対向する面の高さを検出する面位置検出手段と
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記面位置検出手段により検出された前記反応容器内における前記混合液の液面の高さに基づいて、前記反応容器内の液体の液量を検出する液量検出手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記面位置検出手段により検出された前記反応容器内における前記混合液の液面の高さに基づいて、前記反応容器内の液体の得攪拌状態を検出する攪拌状態検出手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記攪拌手段は、前記混合液に超音波を照射することにより攪拌する超音波攪拌装置であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記攪拌手段は、前記反応容器を振動させることにより攪拌する振動攪拌装置であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項3記載の自動分析装置において、
前記攪拌状態検出手段は、前記混合液の液面の高さの最小値から最大値までの変化幅に基づいて、前記反応容器に入れられた混合液の攪拌状態を検出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項3記載の自動分析装置において、
前記攪拌状態検出手段は、前記混合液の液面の高さの変化率に基づいて、前記反応容器に入れられた混合液の攪拌状態を検出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記面位置検出手段により検出された前記反応容器の底面の高さに基づいて前記反応容器の取り付け状態を検出する容器状態検出手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記面位置検出手段により検出された前記反応容器の底面の高さに基づいて、前記試料容器から前記測定対象試料を前記反応容器に分注する時の前記反応容器の底面と前記試料分注機構の相対高さ、及び前記試薬容器から前記試薬を前記反応容器に分注する時の前記反応容器の底面に対する前記試薬分注機構の相対高さを調整する分注高さ調整手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記面位置検出手段により検出された前記反応容器の底面の高さに基づいて、前記反応容器を洗浄する洗浄機構による洗浄時における前記反応容器の底面に対する該洗浄機構の相対高さを調整する洗浄高さ調整手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項1記載の自動分析装置において、
予め定められた前記反応容器の設計値に基づいて、前記反応容器内における前記検出手段に対向する面の高さの予測値を演算し、前記予測値が検出可能範囲内に入るように前記面位置検出手段の高さを調整する検出範囲調整手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記面位置検出手段は、前記反応容器内における前記検出手段に対向する面にレーザ光を照射することにより、その面の高さを検出するレーザ変位計であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記面位置検出手段は、前記反応容器内における前記検出手段に対向する面に超音波を照射することにより、その面の高さを検出する超音波変位計であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項14】
請求項12又は13記載の自動分析装置において、
前記反応容器内における前記検出手段に対向する面を走査することにより、その面の高さを連続的に検出する面走査手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項15】
測定対象試料と試薬とを入れて反応させる反応容器と、
試料容器から前記測定対象試料を前記反応容器に分注する試料分注機構と、
試薬容器から前記試薬を前記反応容器に分注する試薬分注機構と、
前記反応容器に入れられた前記測定対象試料と前記試薬との混合液を振動させることにより攪拌する攪拌手段と、
前記反応容器の開口部に対向する位置に設けられた撮像手段であり、前記反応容器内における該撮像手段に対向する面の画像を取得するCCDカメラと、
前記CCDカメラからの画像を表示する表示手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項16】
請求項15記載の自動分析装置において、
前記CCDカメラを前記混合液の分析を行う分析部を覆う分析部カバーの内部において移動させるカメラ移動手段を備え、
前記分析部カバーの内部の所望の場所の画像を取得することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−169579(P2010−169579A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13232(P2009−13232)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】