説明

自動分析装置

【課題】温度変化の影響を受けやすい測定項目に対して与える温度の影響を低減する自動分析装置を提供する。
【解決手段】自動分析装置100は、反応管51が連続して並べられ、この各反応管51を順々に試料分注位置及び試薬分注位置に搬送する反応ディスク5を有し、試料分注位置に搬送された反応管51に被検試料とその測定項目を割り当てるとともに、所定測定項目が割り当てられた反応管51の隣を空きの反応管51にするように、被検試料を分注する試料分注プローブ7と試薬を分注する第1試薬分注プローブ8と第2試薬分注プローブ9とを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検試料と試薬とを分注して撹拌し、混合液を測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、被検試料と試薬とを分注して混合液を測定する装置である。反応管に血液や尿等の被検試料と試薬とを分注してこれらを反応させた後、反応によって生じる色調の変化を光測定することにより検体中の被測定物質または酵素の濃度や活性を測定する。
【0003】
この自動分析装置は、反応ディスクに反応管を連続して並べ、反応ディスクを回動させることにより順々に反応管を被検試料の分注位置や試薬の分注位置に搬送し、この分注位置に待ちかまえている試料分注プローブや試薬分注プローブで被検試料や試薬を分注している。その後、自動分析装置が備える撹拌及び測光機構に搬送されることにより、混合液が光測定される。
【0004】
被検試料と試薬との反応速度、及び酵素の活性は、温度によって異なる。従って、自動分析装置では、反応ディスクの周囲を例えば37℃等に保たれた恒温槽や恒温された空気層で囲むことで反応ディスク及び反応管内の温度を一定に保っている。
【0005】
また、分析に使用しない反応管に温水を分注することで、反応管全体の温度を一定に保つ方法も提供されている(例えば、「特許文献1」参照。)。
【0006】
しかし、通常、反応管に分注される試薬は、その試薬庫に低温で保存されているため、試薬が分注された反応管を中心に局所的な温度低下が発生する。そのため、温度低下が発生した反応管に隣接する反応管は、その温度低下の影響を受けるおそれがある。この温度低下が発生した反応管の隣りに温度変化の影響を受けやすい測定項目が割り当てられている場合、その反応管内での反応速度又は酵素の活性が変化し、測定結果に悪影響を与えるおそれがある。温度変化の影響を受けやすい測定項目とは、温度変化に対する反応度合いや酵素の活性の変化が急峻である測定項目である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3983872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、測定結果が温度変化の影響を受けやすい測定項目に対して与える温度の影響を低減する自動分析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明に係る自動分析装置は、被検試料と測定項目に応じた試薬とを反応管に分注して混合液を測定する自動分析装置であって、前記反応管が連続して並べられ、この各反応管を順々に試料分注位置及び試薬分注位置に搬送する反応ディスクと、前記試料分注位置に搬送された前記反応管に前記被検試料とその測定項目を割り当てるとともに、その測定項目のうちの所定測定項目が割り当てられた前記反応管の隣を空きの反応管にする制御手段と、前記制御手段の割り当てに従って、前記反応管に前記被検試料を分注する試料プローブと、前記制御手段の割り当てに従って、前記反応管に前記測定項目に応じた前記試薬を分注する試薬プローブと、を備えること、を特徴とする。
【0010】
前記制御手段は、前記被検試料と前記測定項目とを対にした被検試料情報を予め記憶する測定項目記憶手段と、分注する試薬及び所定測定項目を特定する所定項目特定情報を測定項目毎に予め記憶するスキップ情報記憶手段と、前記試料分注位置に搬送されてきた前記反応管に対して少なくとも前記被検試料情報に基づいて前記被検試料と前記測定項目とを割り当てることで逐次作成され、その割り当て状況を示す状況テーブルを記憶する状況記憶手段と、を含み、前記所定項目特定情報と前記状況テーブルに基づき前記所定測定項目を割り当てた前記反応管の隣を空きの反応管にするようにしてもよい(請求項2記載の発明に相当)。
【0011】
前記制御手段は、前記試料分注位置にある前記反応管の隣に前記所定測定項目を割り当てると、前記試料分注位置にある前記反応管に空を割り当てるようにしてもよい(請求項3記載の発明に相当)。
【0012】
前記制御手段は、前記試料分注位置にある前記反応管の隣に前記測定項目のうちの前記所定測定項目又は前記空きが割り当てられていると、前記試料分注位置にある前記反応管に対する前記所定測定項目の割り当てをスキップして前記空を割り当てるようにしてもよい(請求項4記載の発明に相当)。
【0013】
前記反応ディスクは、複数に区画されて各々に前記被検試料及び前記試薬が分注可能な前記反応管を載置し、前記制御手段は、前記区画の一つに前記所定測定項目を割り当てると、その区画の隣りを空きにするようにしてもよい(請求項5記載の発明に相当)。
【0014】
前記制御手段は、前記反応管に前記所定測定項目を割り当て、且つその反応管に分注する前記試薬が所定量以上であると、その反応管の隣を空きの反応管にし、前記反応管に前記所定測定項目を割り当て、且つその反応管に分注する前記試薬が所定量未満であると、その反応管の隣には前記被検試料とその測定項目を割り当てるようにしてもよい(請求項6記載の発明に相当)。
【0015】
所定温度の液を保持する槽と、前記槽から液を分注する分注プローブと、を更に備え、前記制御手段は、前記分注プローブを制御して、前記空の反応管に前記液を分注させるようにしてもよい(請求項7記載の発明に相当)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、隣接する反応管へ試薬が分注されたことにより、混合液の温度が変化してしまい、その反応度合い又は酵素活性度合いに影響を与え、測定結果の安定性を害するといった問題が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】自動分析装置の構成を示す。
【図2】制御部の詳細構成を示す。
【図3】反応管の搬送を模式的に示す。
【図4】被検試料情報を模式的に示す。
【図5】第1の実施形態に係る状況テーブルを模式的に示す。
【図6】測定項目情報を模式的に示す。
【図7】第1の実施形態に係る自動分析装置の反応管に対する被検試料と測定項目の割り当ての動作を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係る自動分析装置の試薬の分注動作を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態に係る自動分析装置の反応ディスクを示す。
【図10】第2の実施形態に係る状況テーブルを模式的に示す。
【図11】第2の実施形態に係る自動分析装置の被検試料と測定項目の割当て動作を示すフローチャートである。
【図12】第3の実施形態に係る自動分析装置の反応管に対する被検試料と測定項目の割り当て動作を示すフローチャートである。
【図13】第3の実施形態に係る状況デーブルを模式的に示す。
【図14】第3の実施形態に係る測定項目情報を模式的に示す。
【図15】第4の実施形態に係る自動分析装置の試薬分注動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る自動分析装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1に示す自動分析装置100は、被検試料と試薬とを分注してその混合液の反応を分析することにより、被検試料に含まれる化学成分を分析する装置である。反応管51に血液や尿等の被検試料と試薬とを移してこれらを反応させた後、反応によって生じる色調の変化を光測定することにより検体中の被測定成分または酵素の濃度や活性を測定する。
【0020】
この自動分析装置100は、主に分析部14、データ処理部15、駆動装置16、及び制御部17を有する。
【0021】
分析部14は、被検試料と試薬とを分注してその混合液の反応を分析して、測定結果データを出力する。データ処理部15は、分析部14から出力された測定結果データを演算処理して検量線データや分析データを生成し、備え付けのモニタやプリンタに出力させる。駆動装置16は、モータやギア等及びポンプを含み構成され、駆動力や正圧又は負圧を発生して分析部14の各ユニットに伝達させることで、分析部14の各ユニットを駆動させる。制御部17は、後述するように、分析部14が有する各ユニットの駆動を制御する。
【0022】
自動分析装置100の分析対象である被検試料は、血液や尿等の液状物である。試薬は、被検試料に含まれる成分を化学反応させる液状の薬品である。
【0023】
この被検試料は、試料容器61に収納されている。試料容器61は、回動可能な円形状のディスクサンプラ6に載置される。
【0024】
試薬は、試薬容器4に収納されている。試薬容器4は、試薬庫2及び試薬庫3に載置される。試薬容器4には、被検試料の測定項目に対して選択的に反応する各種の第1試薬、又は第1試薬と対の各種の第2試薬が収容される。第1試薬が収容された試薬容器4は、試薬庫2に載置され、第2試薬が収容された試薬容器4は、試薬庫3に載置される。試薬庫2及び試薬庫3には、回動可能な円形状の試薬ラック1が収納されている。各試薬容器4は、この試薬ラック1に環状に並んで収納されている。
【0025】
被検試料及び試薬が分注される反応管51は、回動可能な円形状の反応ディスク5に環状に連続して並んでいる。この反応ディスク5は、恒温槽50で囲まれている。恒温槽50には、所定温度を有するお湯等の温度制御用液体が満たされており、反応ディスク5とこれに載置される反応管51は、この恒温槽50により一定の温度に保たれるようになっている。
【0026】
被検試料及び試薬の分注は、試料分注プローブ7、第1試薬分注プローブ8、及び第2試薬分注プローブ9により行われる。試料分注プローブ7、第1試薬分注プローブ8、及び第2試薬分注プローブ9は、各アーム10に取り付けられた所謂ストローであり、駆動装置16の一構成であるポンプによる負圧と正圧により、被検試料及び試薬を吸引及び吐出する。
【0027】
試料分注プローブ7は、ディスクサンプラ6と反応ディスク5の近傍に立設されている。この試料分注プローブ7は、ディスクサンプラ6の回動によって規定の吸引位置に搬送された試料容器61から被検試料を吸引し、反応ディスク5の回動によって規定の試料分注位置に搬送された反応管51に被検試料を吐出する。
【0028】
第1試薬分注プローブ8は、試薬庫2と反応ディスク5の近傍に立設されている。第1試薬分注プローブ8は、試薬庫2の試薬ラック1の回動によって規定の吸引位置に搬送された試薬容器4から第1試料を吸引し、反応ディスク5の回動によって規定の試薬分注位置に搬送された反応管51に第1試薬を吐出する。
【0029】
第2試薬分注プローブ9は、試薬庫3と反応ディスク5の近傍に立設されている。第2試薬分注プローブ9は、試薬庫3の試薬ラック1の回動によって規定の吸引位置に搬送された試薬容器4から第2試薬を吸引し、反応ディスク5の回動によって規定の試薬分注位置に搬送された反応管51に第2試薬を吐出する。
【0030】
これら試料分注プローブ7、第1試薬分注プローブ8、及び第2試薬分注プローブ9は、駆動装置16の駆動力がギア等により伝達されて独立して軸回転及び伸縮が可能なアーム10により支持され、アーム10の軸回転により、規定の吸引及び吐出位置に移動し、アーム10の伸縮により、吸引及び吐出のために昇降する。
【0031】
反応ディスク5の外周囲には、更に撹拌ユニット11、測光ユニット12、及び洗浄ユニット13が立設されている。被検試料及び試薬が分注された反応管51は、反応ディスク5の回動により順に撹拌ユニット11、測光ユニット12、及び洗浄ユニット13の撹拌、測定、及び洗浄位置に搬送される。
【0032】
撹拌ユニット11は、1サイクル毎に、撹拌位置に停止した反応管51内における被検試料+第1試薬や被検試料+第1試薬+第2試薬などの混合液を撹拌する撹拌手段である。
【0033】
測光ユニット12は、混合液を収容した反応管51を測光位置から測定する測定手段である。測光ユニット12は、反応管51を挟んで配置される光源と受光部を有し、例えば、混合液の吸光度を測光した後、その測定結果データをデータ処理部15に出力する。
【0034】
洗浄ユニット13は、洗浄・乾燥位置に停止した反応管51内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応管51内を洗浄・乾燥する。
【0035】
このような自動分析装置100において、制御部17による上記各ユニットの制御、特に被検試料や試薬の分注制御について図2に基づき更に詳細に説明する。図2は、制御部17の詳細な構成を示すブロック図である。
【0036】
制御部17は、試料分注制御部171、反応ディスク制御部172、試薬分注制御部173、及び操作部177を有する。
【0037】
反応ディスク制御部172は、反応ディスク5を1サイクル毎に所定角度回動させる。反応ディスク5を回動させるために、反応ディスク制御部172は、駆動装置16に対して1サイクル毎に駆動信号を出力する。駆動装置16は、駆動信号を受けて、反応ディスク5を所定角度回動させる。制御部17は、内部に基本クロックを発生させるクロック生成器を有しており、所定クロック数が1サイクルのカウントに相当する。
【0038】
図3は、この反応ディスク制御部172の制御による反応管51の搬送を示す模式図である。ここで、簡単のため、反応管51は、反応ディスク5の周に沿って24本が並び、反応ディスク制御部172は、1サイクル毎に反応ディスク5を1周−1セル分回動させるものとする。
【0039】
図3の(a)に示すように、反応ディスク制御部172は、1サイクル目に反応ディスク5を1周−1セル分回転させる。そうすると、反応ディスク5上の1番目として定義された載置位置の反応管51は、試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送され、被検試料が分注される。
【0040】
次に、図3の(b)に示すように、反応ディスク制御部172は、2サイクル目に反応ディスク5を1周−1セル分回転させる。そうすると、1番目の反応管51は、その搬送途中で測光ユニット12により内部の被検試料を測光されつつ、回転方向に一つ隣りに立設された第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送され、第1試薬が分注される。このとき、反応ディスク5上の2番目として定義された載置位置の反応管51は、試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送され、被検試料が分注される。
【0041】
次に、図3の(c)に示すように、反応ディスク制御部172は、3サイクル目に反応ディスク5を1周−1セル分回転させる。そうすると、1番目の反応管51は、その搬送途中で測光ユニット12により内部の混合液を測光されつつ、さらに回転方向に一つ隣りに搬送される。また、2番目の反応管51は、その搬送途中で測光ユニット12により内部の被検試料を測光されつつ、回転方向に一つ隣りに立設された第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送され、第1試薬が分注される。さらに、このとき、反応ディスク5上の3番目として定義された載置位置の反応管51は、試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送され、被検試料が分注される。
【0042】
このように、反応ディスク制御部172は、1サイクル毎に反応ディスク5を所定角度回動させることで、各反応管51を順々に被検試料の吐出位置S、第1試薬の吐出位置R1、撹拌位置T、第2試薬の吐出位置R2、測光位置M、及び洗浄位置Wに搬送させていく。
【0043】
試料分注制御部171は、被検試料の吐出位置Sに搬送された反応管51へ吐出する被検試料及びその測定項目を割り当てて、試料分注プローブ7を制御して被検試料を分注させる。具体的には、試料分注プローブ7のアーム10の回転及び伸縮させる駆動装置16を駆動又は待機させ、又は駆動装置16であるポンプに吐出のための正圧を発生又は待機させる。
【0044】
この試料分注制御部171は、アサイン処理部174、被検試料情報記憶部175、測定項目情報記憶部176、及び状況テーブル記憶部178を有する。
【0045】
アサイン処理部174は、被検試料の吐出位置Sに搬送された反応管51に対して被検試料と測定項目を割り当てる。ここで、割り当てとは、反応管51を特定する情報と被検試料と測定項目とを対応付けた情報の作成、又はこの作成した情報に依らずに、分注する被検試料及び測定項目に対応した第1試薬と第2試薬とを特定して、その特定した被検試料及び試薬の分注のための駆動を駆動装置16に直接指示することを含む。
【0046】
特に、このアサイン処理部174は、温度に対する影響が鋭敏な所定測定項目を割り当てた反応管51の隣りを空きの反応管51とする。隣りの反応管51に分注された第1試薬や第2試薬の温度の影響を受けるからである。
【0047】
割り当て対象の反応管51は、吐出位置Sに搬送されてきた反応管51であり、反応ディスク5上で定義された載置位置により特定される。アサイン処理部174は、この吐出位置Sに搬送されてきた反応管51をサイクルのカウントにより算出する。その他、センサ等で載置位置を特定してもよいし、反応ディスク制御部172から1サイクル毎に信号を受け取り、その信号をカウントしてもよい。
【0048】
被検試料と測定項目、又は空きの割り当てについては、被検試料情報記憶部175に記憶されている被検試料情報175a、状況テーブル記憶部178に記憶されている状況テーブル178a、及び測定項目情報記憶部176に記憶されている測定項目情報176aを参照して決定する。
【0049】
図4は、被検試料情報175aを示す模式図である。被検試料情報175aには、被検試料の提供元に関する被検者の患者ID、年齢、性別等の情報、ディスクサンプラ6上の載置位置で示される被検試料の位置情報、及びその被検試料の測定項目の一覧が含まれる。被検試料情報175aは、被検試料の数だけ記憶されている。
【0050】
被検試料情報175aの各パラメータは、自動分析装置100のコンソールに配置されたキーボードやマウス等の操作部177を用いて入力され、被検試料情報記憶部175に記憶され、例えば登録された順にジョブキューに入れられる。アサイン処理部174は、例えば先入れ先出しで被検試料情報175aを読み出し、吐出位置Sに搬送された反応管51への割り当てに用いる。
【0051】
図5は、状況テーブル178aを示す模式図である。状況テーブル178aは、前回サイクルまでの各反応管51への被検試料と測定項目との割り当て状況を示す。即ち、状況テーブル178aには、反応管51を特定する反応ディスク5上の載置位置を示す反応管番号、その反応管51に分注された被検試料を示す提供元に関する患者ID等の情報、及び測定項目、又は空きを示す情報が含まれる。
【0052】
アサイン処理部174は、反応管51へ被検試料及び測定項目を割り当てると、その割り当てた被検試料の提供元に関する情報と測定項目とを被検試料情報175aから読み出して状況テーブル178aに記録する。また、アサイン処理部174は、反応管51へ空きを割り当てると、その反応管51を特定する番号に空きを示す情報を対応付けて状況テーブル178aに記録する。
【0053】
図6は、測定項目情報176aを示す模式図である。測定項目情報176aは、被検試料の吸引量、第1試薬の種類及び吸引量、第2試薬の種類及び吸引量、及び所定の測定項目については温度影響フラグ176bが含まれている。温度影響フラグ176bは、被検試料と第1試薬や第2試薬との反応、又は第1試薬や第2試薬の酵素活性が温度に対して鋭敏であり、測定結果が温度に左右されやすいことを示している。測定項目情報176aは、測定項目の種類毎に記憶されている。
【0054】
この測定項目情報176aの各パラメータは、操作部177を用いて入力され、測定項目情報記憶部176に記憶される。
【0055】
アサイン処理部174は、吐出位置Sの隣りの反応管51に割り当てられた測定項目に対する測定項目情報176a、及び吐出位置Sの反応管51に割り当てようとする測定項目に対する測定項目情報176aの温度影響フラグ176bをスキップ情報として用いて、吐出位置Sの反応管51に測定項目を割り当てるか判断する。
【0056】
即ち、アサイン処理部174は、吐出位置Sの隣りの反応管51に割り当てた測定項目に温度影響フラグ176bが付帯していると、その吐出位置Sの反応管51に対しては、被検試料及び測定項目を割り当てない。また、アサイン処理部174は、読み出した被検試料情報175aから取り出した測定項目の測定項目情報176aに温度影響フラグ176bが付帯し、且つ吐出位置Sの隣りの反応管51に被検試料及び測定項目が割り当てられていると、その吐出位置Sの反応管51に対しては、被検試料及び測定項目を割り当てない。
【0057】
試薬分注制御部173は、第1試薬分注プローブ8及び第2試薬分注プローブ9を制御して、吐出位置R1,R2に搬送されてきた反応管51に第1試薬や第2試薬を分注し、又は第1試薬分注プローブ8及び第2試薬分注プローブ9をそのサイクル中待機させる。
【0058】
この試薬分注制御部173は、作成された状況テーブル178aを参照し、搬送されてきた反応管51に割り当てられた測定項目を特定するとともに、その特定した測定項目の測定項目情報176aから試薬の種類及び吸引量を特定し、第1試薬分注プローブ8及び第2試薬分注プローブ9のアーム10を駆動させる駆動装置16を制御して、その試薬をその吸引量だけ吸引及び吐出させる。状況テーブル178aに空きが記録されていれば、その記録に対応付けられている反応管51に対する第1試薬及び第2試薬の吸引及び吐出は待機させる。
【0059】
図7は、このような自動分析装置100の反応管51に対する被検試料と測定項目の割り当て動作を示すフローチャートである。
【0060】
まず、X番目の反応管51が試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送されてくると(S01)、アサイン処理部174は、状況テーブル178aのX−1番目の反応管51に割り当てられた測定項目を読み出す(S02)。
【0061】
状況テーブル178aから測定項目又は空きを読み出すと、アサイン処理部174は、読み出した測定項目の測定項目情報176aに温度影響フラグ176bが付されているか判断する(S03)。
【0062】
温度影響フラグ176bが付されていると(S03,Yes)、アサイン処理部174は、状況テーブル178aのX番目の反応管51に対して空きを記録する(S04)。更に、試料分注制御部171は、このサイクル中の試料分注プローブ7を待機させる(S05)。
【0063】
一方、温度影響フラグ176bが付されていなければ(S03,No)、アサイン処理部174は、ジョブキューに入れられている未処理で最上位にある被検試料情報175aに記録され、測定項目割り当て未処理で一覧の最上位にある測定項目を読み出す(S06)。空きが記録されている場合には、温度影響フラグ176bは付されていないため、S03において「No」として取り扱い、S06に進む。
【0064】
被検試料情報175aから測定項目を読み出すと、アサイン処理部174は、読み出した測定項目の測定項目情報176aに温度影響フラグ176bが付されているか判断する(S07)。
【0065】
温度影響フラグ176bが付されており(S07,Yes)、状況テーブル178aのX−1番目の反応管51に空きが記録されていなければ(S08,No)、アサイン処理部174は、状況テーブル178aのX番目の反応管51に対して空きを記録する(S04)。更に、試料分注制御部171は、このサイクル中の試料分注プローブ7を待機させる(S05)。
【0066】
温度影響フラグ176bが付されていないか(S07,No)、又は状況テーブル178aのX−1番目の反応管51に空きが記録されていれば(S08,Yes)、アサイン処理部174は、ジョブキューに入れられている未処理で最上位にある被検試料情報175aに記録されている被検試料の提供元と、測定項目割り当て未処理で一覧の最上位にある測定項目を、状況テーブル178aのX番目の反応管51に対して記録する(S09)。
【0067】
更に、試料分注制御部171は、このサイクル中に試料分注プローブ7を駆動させ、ジョブキューに入れられている未処理で最上位にある被検試料情報175aに記録されている載置位置情報に載置されている被検試料をX番目の反応管51に分注させる(S10)。
【0068】
図9は、状況テーブル178aに従って試薬を分注する動作を示すフローチャートである。尚、第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送された場合を例に採るが、第2試薬分注プローブ9の吐出位置R2に搬送されてきた場合も同様の動作をする。
【0069】
まず、X番目の反応管51が第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送されてくると(S21)、試薬分注制御部173は、状況テーブル178aのX番目の反応管51に割り当てられた測定項目を読み出す(S22)。
【0070】
読み出した測定項目が空きであると(S23,Yes)、試薬分注制御部173は、このサイクル中の第1試薬分注プローブ8を待機させる(S24)。
【0071】
読み出した測定項目が空きでなければ(S23,No)、試薬分注制御部173は、読み出した測定項目の測定項目情報176aから、第1試薬の種類と分注量を読み出す(S25)。
【0072】
そして、試薬分注制御部173は、駆動装置16に駆動信号を出力することで第1試薬の試薬ラック1を回動させ、読み出した第1試薬の載置位置を第1試薬分注プローブ8の吸引位置に合わせる(S26)。更に、試薬分注制御部173は、駆動装置16に駆動信号を出力することで第1試薬分注プローブ8に第1試薬を吸引させ、X番目の反応管51に吐出させる(S27)。
【0073】
このような自動分析装置100における被検試料情報175a、状況テーブル178a、及び測定項目情報176aを用いた割り当て処理について図4乃至6に基づく具体例を説明する。
【0074】
まず試料分注プローブ7の吸引位置には、患者ID「001」で示される被検試料が位置しており、その被検試料情報175aを参照して測定項目の最初である「A1」が割り当てられるとともに、1番目の反応管51にこの被検試料が吐出されているものとする。このとき、状況テーブル178aの1番目の反応管51には、被検試料を示す情報として患者ID「001」、測定項目を示す情報として「A1」が割り当てられている。
【0075】
この状態で、反応ディスク5が1周−1セル分だけ回動することで、2番目の反応管51が試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送され、1番目の反応管51が第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送されてくる。
【0076】
従って、この2番目の反応管51の隣りである1番目の反応管51に割り当てられた測定項目「A1」の測定項目情報176aと、測定項目「A2」の測定項目情報176aを参照する。測定項目「A2」は、患者ID「001」を含む被検試料情報175aに付帯する測定項目一覧の2番目に記録されているものである。
【0077】
測定項目「A1」の測定項目情報176aと測定項目「A2」の測定項目情報176aには、温度影響フラグ176bが付されていない。そこで、状況テーブル178aの2番目の反応管51には、被検試料を示す情報として患者ID「001」、測定項目を示す情報として「A2」を記録する。
【0078】
このとき、試料分注制御部171は、ディスクサンプラ6の駆動量を示す情報を読み出す。この駆動量を示す情報は、参照した被検試料情報175aに記録された被検試料の載置位置情報に対応して予め記憶されている。試料分注制御部171は、その駆動量を示す情報に従った駆動信号を駆動装置16に出力する。駆動量を示す情報に従った駆動信号は、例えば駆動装置16がパルス数に従って駆動するステッピングモータであれば、そのパルス数で区別される。駆動装置16は、駆動信号に従って駆動してディスクサンプラ6を回動させ、規定の吸引位置に載置位置情報が示す載置位置を合わせる。
【0079】
ディスクサンプラ6の駆動完了信号が駆動装置16から試料分注制御部171に出力されると、試料分注制御部171は、試料分注プローブ7のアーム10を回転及び伸縮させる駆動装置16に制御信号を出力させ、被検試料の吸引及び吐出をさせる。
【0080】
尚、被検試料が順番に並んで試料分注プローブ7の吸引位置に搬送され、その順に被検試料情報175aがジョブキューに入れられている場合には、ディスクサンプラ6の駆動量を調整する特別な制御は必要ない。また、被検試料情報175aに記録された全測定項目分の吸引を第1回目の吸引で一括して行う場合、際2回目以降は試料分注プローブ7の吸引のための特別な制御は必要ない。
【0081】
また、試薬分注制御部173は、第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送されてきた1番目の反応管51に割り当てられた測定項目を状況テーブル178aから「A1」と特定し、その測定項目「A1」の測定項目情報176aから第1試薬の種類と分注量とを特定する。
【0082】
そして、試薬分注制御部173は、第1試薬を収容した試薬ラック1を回動させるように駆動信号を駆動装置16に出力し、特定した第1試薬の試薬容器4を第1試薬分注プローブ8の吸引位置に位置させる。更に、試薬分注制御部173は、第1試薬分注プローブ8の駆動装置16に駆動信号を出力して、第1試薬分注プローブ8に吸引位置に位置した試薬容器4から第1試薬を吸引させて1番目の反応管51に吐出させる。
【0083】
次のサイクルで、反応ディスク5が更に1周−1セル分だけ回動することで、3番目の反応管51が試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送され、2番目の反応管51が第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送されてくる。
【0084】
3番目の反応管51が吐出位置Sに搬送されてきたとき、その隣りである2番目の反応管51に割り当てられた「A2」の測定項目情報176aと、患者ID「001」を含む被検試料情報175aに付帯する測定項目一覧の3番目に記録されている測定項目「A3」の測定項目情報176aを参照する。ここで、「A3」の測定項目情報176aには温度影響フラグ176bが付帯する。そこで、状況テーブル178aの3番目の反応管51には、何も分注しないことを示す「空き」を記録する。
【0085】
次のサイクルで、反応ディスク5が更に1周−1セル分だけ回動することで、4番目の反応管51が試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送され、3番目の反応管51が第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送されてくる。
【0086】
4番目の反応管51が吐出位置Sに搬送されてきたとき、その隣りである3番目の反応管51には「空き」が割り当てられているため、状況テーブル178aの4番目の反応管51には、被検試料を示す情報として患者ID「001」、測定項目を示す情報として「A3」を記録する。尚、厳密には、4番目の反応管51の隣りである5番目の反応管51に対する割り当ても参照される。
【0087】
このとき、試料分注制御部171は、患者ID「001」の被検試料情報175aに記録された被検試料の載置位置を、試料分注プローブ7の規定の吸引位置に合わせ、試料分注プローブ7のアーム10を回転及び伸縮させる駆動装置16に制御信号を出力させ、被検試料の吸引及び吐出をさせる。
【0088】
また、試薬分注制御部173は、第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送されてきた3番目の反応管51に割り当てられた測定項目を状況テーブル178aから「空き」と特定する。そのため、試薬分注制御部173は、第1試薬を収容した試薬ラック1及び第1試薬分注プローブ8の駆動装置16に対して、駆動信号を出力せず、これら試薬ラック1及び第1試薬分注プローブ8を待機させることで、3番目の反応管51に何らの試薬も分注させない。
【0089】
次のサイクルで、反応ディスク5が更に1周−1セル分だけ回動することで、5番目の反応管51が試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送され、4番目の反応管51が第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送されてくる。
【0090】
5番目の反応管51が吐出位置Sに搬送されてきたとき、その隣りである4番目の反応管51に割り当てられた「A3」の測定項目情報176aと、患者ID「001」を含む被検試料情報175aに付帯する測定項目一覧の5番目に記録されている測定項目「A4」の測定項目情報176aを参照する。ここで、「A3」の測定項目情報176aには温度影響フラグ176bが付帯する。そこで、状況テーブル178aの5番目の反応管51には、何も分注しないことを示す「空き」を記録する。
【0091】
次のサイクルで、反応ディスク5が更に1周−1セル分だけ回動することで、6番目の反応管51が試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送され、5番目の反応管51が第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送されてくる。
【0092】
次に、6番目の反応管51が吐出位置Sに搬送されてきたとき、その隣りである5番目の反応管51には「空き」が割り当てられているため、状況テーブル178aの6番目の反応管51には、被検試料を示す情報として患者ID「001」、測定項目を示す情報として「A4」を記録する。
【0093】
以下、測定項目情報176aがジョブキューに入れられている限り、その測定項目情報176aと状況テーブル178aと測定項目情報176aとを参照して、同様の制御が継続される。
【0094】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る自動分析装置100について説明する。
【0095】
第2の実施形態に係る自動分析装置100では、図9に示すように、載置される反応管51の一本一本が複数の区画に分割されている。例えば、反応ディスク5には、周方向に反応管51を支持する貫通孔52が所定間隔隔てて貫設されている。この貫通孔52には、内部に1枚の隔壁53を有する反応管51が載置される。この反応管51は、隔壁53によって一つの容器として画成されたAライン管51AとBライン管51Bとを有する。
【0096】
第2の実施形態に係る自動分析装置100では、このAライン管51AとBライン管51Bとを独立した反応管51として扱うものである。これにより、被検試料の吸引・吐出及び試薬の吸引・吐出を同時に2種類ずつ行うことができ、被検試料に複数の測定項目が割り当てられている場合、処理速度が向上する。
【0097】
即ち、被検試料の吐出位置Sには、Aライン管51AとBライン管51Bが同時に搬送されてくるため、図示しない一対の試料分注プローブ7を一本のアーム10に支持させることで、被検試料を同時に吸引してAライン管51AとBライン管51Bに同時に吐出させることができる。
【0098】
この第2の実施形態に係る自動分析装置100が作成する状況テーブル178aを図10に示す。
【0099】
状況テーブル178aは、前回サイクルまでの各反応管51への被検試料と測定項目との割り当て状況をライン毎に示す。即ち、状況テーブル178aは、反応管番号に対してAライン管の状況とBライン管の状況とがそれぞれ記録されている。Aライン管の状況とBライン管の状況として、それぞれその区画に分注された被検試料を示す提供元に関する患者ID等の情報、及び測定項目、又は空きを示す情報が記録される。
【0100】
アサイン処理部174は、反応管51のAライン管51Aへ被検試料及び空きを含む測定項目を割り当てると、その割り当てた被検試料の提供元に関する情報と測定項目とを被検試料情報175aから読み出して、Aライン管の状況に対応させて状況テーブル178aに記録する。また、アサイン処理部174は、反応管51のBライン管51Bへ被検試料及び空きを含む測定項目を割り当てると、その割り当てた被検試料の提供元に関する情報と測定項目とを被検試料情報175aから読み出して、Bライン管の状況に対応させて状況テーブル178aに記録する。
【0101】
アサイン処理部174の各ライン管51A,51Bへの割り当て処理では、吐出位置Sの隣りの反応管51とは、吐出位置Sに搬送されてきた反応管51内の隣りの区画を指す。即ち、アサイン処理部174は、区画の一つに割り当てた測定項目に温度影響フラグ176bが付帯していると、その隣りの区画に対しては、被検試料及び測定項目を割り当てない。また、アサイン処理部174は、読み出した被検試料情報175aから取り出した測定項目の測定項目情報176aに温度影響フラグ176bが付帯し、且つ測定項目を割り当てようとする区画の隣りに被検試料及び測定項目が割り当てられていると、その区画に対しては、被検試料及び測定項目を割り当てない。
【0102】
図11は、この第2の実施形態に係る自動分析装置100の被検試料と測定項目の割当て動作を示すフローチャートである。
【0103】
まず、X番目の反応管51が試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送されてくると(S31)、アサイン処理部174は、被検試料情報175aから未だ割り当てていない上位2つの測定項目を読み出す(S32)。
【0104】
アサイン処理部174は、読み出した2つの測定項目の各測定項目情報176aに温度影響フラグ176bが付されているか判断する(S33)。
【0105】
何れか一方に温度影響フラグ176bが付されていると(S33,Yes)、読み出した最上位の測定項目と被検試料情報175aに記録されている被検試料の提供元を、状況テーブル178aのX番目の反応管51且つAライン管51Aに対して記録する(S34)。更に、Bライン管51Bに対しては空きを記録する(S35)。
【0106】
このとき、試料分注制御部171は、Aライン管51Aに対応する試料分注プローブ7のみ、被検試料を吸引及び吐出させる(S36)。
【0107】
いずれにも温度影響フラグ176bが付されていなければ(S33,No)、状況テーブル178aのX番目の反応管51且つAライン管51Aに対して、読み出した最上位の測定項目と被検試料情報175aに記録されている被検試料の提供元を記録するとともに(S37)、更に状況テーブル178aのX番目の反応管51且つBライン管51Bに対して、読み出した2番目の測定項目と被検試料情報175aに記録されている被検試料の提供元を記録する(S38)。
【0108】
このとき、試料分注制御部171は、Aライン管51A及びBライン管51Bに対応する一対の試料分注プローブ7の両方ともに、被検試料を吸引及び吐出させる(S39)。
【0109】
尚、反応管51が3分割以上されている場合、温度の影響を考慮して、いずれか一つの区画のみに被検試料と測定項目を割り当てるか、一つおきに被検試料と測定項目を割り当てるようにすればよい。
【0110】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、温度に影響しやすい測定項目を割り当てた場合には、その隣の反応管51には何の被検試料及び測定項目も割り当てず、空きにする例を説明した。この他、反応管51に対する割り当て判断のパラメータとして、隣の反応管51に分注する試薬の量を加えてもよい。隣の反応管51に分注される試薬の量が少なければ、その反応管51からの温度の影響が少なくなるためである。
【0111】
図12は、このような自動分析装置100の反応管51に対する被検試料と測定項目の割り当て動作を示すフローチャートである。
【0112】
まず、X番目の反応管51が試料分注プローブ7の吐出位置Sに搬送されてくると(S41)、アサイン処理部174は、状況テーブル178aのX−1番目の反応管51に割り当てられた測定項目を読み出す(S42)。
【0113】
状況テーブル178aから測定項目又は空きを読み出すと、アサイン処理部174は、読み出した測定項目の測定項目情報176aに温度影響フラグ176bが付されているか判断する(S43)。
【0114】
温度影響フラグ176bが付されていると(S43,Yes)、アサイン処理部174は、ジョブキューに入れられている未処理で最上位にある被検試料情報175aに記録され、測定項目割り当て未処理で一覧の最上位にある測定項目、即ち割り当てようとする測定項目の測定項目情報176aから第1試薬及び第2試薬の分注量の総量を算出する(S44)。
【0115】
第1試薬及び第2試薬の分注量の総量が所定値以上であると(S45,Yes)、状況テーブル178aのX番目の反応管51に対して空きを記録する(S46)。更に、試料分注制御部171は、このサイクル中の試料分注プローブ7を待機させる(S47)。
【0116】
一方、第1試薬及び第2試薬の分注量の総計が所定値未満であると(S45,No)、アサイン処理部174は、被検試料情報175aに記録されている被検試料の提供元と、割り当てようとする測定項目を、状況テーブル178aのX番目の反応管51に対して記録する(S48)。
【0117】
更に、試料分注制御部171は、このサイクル中に試料分注プローブ7を駆動させ、被検試料情報175aに記録されている載置位置情報に載置されている被検試料をX番目の反応管51に分注させる(S49)。
【0118】
一方、温度影響フラグ176bが付されていなければ(S43,No)、アサイン処理部174は、割り当てようとする測定項目を読み出す(S50)。空きが記録されている場合には、温度影響フラグ176bは付されていないため、S43において「No」として取り扱い、S50に進む。
【0119】
被検試料情報175aから測定項目を読み出すと、アサイン処理部174は、読み出した測定項目の測定項目情報176aに温度影響フラグ176bが付されているか判断する(S51)。
【0120】
温度影響フラグ176bが付されており(S51,Yes)、状況テーブル178aのX−1番目の反応管51に空きが記録されておらず(S52,No)、且つX−1番目の反応管51に割り当てられた測定項目に対する試薬の分注量が所定量以上であれば(S45,Yes)、アサイン処理部174は、状況テーブル178aのX番目の反応管51に対して空きを記録する(S46)。更に、試料分注制御部171は、このサイクル中の試料分注プローブ7を待機させる(S47)。
【0121】
温度影響フラグ176bが付されていないか(S51,No)、状況テーブル178aのX−1番目の反応管51に空きが記録されているか(S52,Yes)、又はX−1番目の反応管51に割り当てられた測定項目に対する試薬の分注量が所定量未満であれば(S45,No)、アサイン処理部174は、被検試料情報175aに記録されている被検試料の提供元と、割り当てようとする測定項目を、状況テーブル178aのX番目の反応管51に対して記録する(S48)。
【0122】
更に、試料分注制御部171は、このサイクル中に試料分注プローブ7を駆動させ、被検試料情報175aに記録されている載置位置情報に載置されている被検試料をX番目の反応管51に分注させる(S49)。
【0123】
この第3の実施形態において、被検試料情報175a、状況テーブル178a、及び測定項目情報176aを用いたアサイン処理部174の割り当て処理について図4、13、及び14に基づき更に詳細に説明する。図13は、第3の実施形態に係る状況テーブル178aの一例を示す。図14は、第3の実施形態に係る測定項目情報176aの一例を示す。
【0124】
まず状況テーブル178aの1番目の反応管51には、被検試料を示す情報として患者ID「001」、測定項目を示す情報として「A1」が割り当てられ、2番目の反応管51には、被検試料を示す情報として患者ID「001」、測定項目を示す情報として「A2」が割り当てられているものとする。
【0125】
次に、3番目の反応管51が吐出位置Sに搬送されてきたとき、その隣りである2番目の反応管51に割り当てられた「A2」の測定項目情報176aと、患者ID「001」を含む被検試料情報175aに付帯する測定項目一覧の3番目に記録されている測定項目「A3」の測定項目情報176aを参照する。ここで、「A3」の測定項目情報176aには温度影響フラグ176bが付帯する。しかし、「A2」の測定項目情報176aに記録されている試薬の分注量は、所定値である300μLよりも少ない150μLである。そこで、状況テーブル178aの3番目の反応管51には、被検試料を示す情報として患者ID「001」、測定項目を示す情報として「A2」を記録する。即ち、3番目の反応管51には、被検試料と試薬とを吐出する。
【0126】
次に、4番目の反応管51が吐出位置Sに搬送されてきたとき、その隣りである3番目の反応管51には温度影響フラグ176bを付帯する「A3」が割り当てられているため、患者ID「001」を含む被検試料情報175aに付帯する測定項目一覧の4番目に記録されている測定項目「A4」の測定項目情報176aを参照する。
【0127】
ここで、「A4」の測定項目情報176aには所定量である300μL以上である300μLの分注量が試薬に対応付けられている。そこで、状況テーブル178aの4番目の反応管51には、何も分注しないことを示す「空き」を記録する。即ち、4番目の反応管51には、被検試料及び試薬を分注しない。
【0128】
次に、5番目の反応管51が吐出位置Sに搬送されてきたとき、その隣りである4番目の反応管51には「空き」が割り当てられているため、状況テーブル178aの5番目の反応管51には、被検試料を示す情報として患者ID「001」、測定項目を示す情報として「A4」を記録する。
【0129】
(第4の実施形態)
更に、第1乃至第3の実施形態では、温度に影響を受けやすい測定項目を割り当てた反応管51の隣を空きにすることで、この温度に影響を受けやすい測定項目を割り当てた反応管51に対する周囲の温度の影響を少なくするようにしたが、この隣の反応管51に所定温度を有するお湯等の温度制御用液体を分注するようにして、周囲の温度が伝播するのを遮蔽するようにしてもよい。
【0130】
図15は、この第4の実施形態に係る自動分析装置100の試薬分注動作を示すフローチャートである。尚、第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送された場合を例に採るが、第2試薬分注プローブ9の吐出位置R2に搬送されてきた場合も同様の動作をする。
【0131】
まず、X番目の反応管51が第1試薬分注プローブ8の吐出位置R1に搬送されてくると(S61)、試薬分注制御部173は、状況テーブル178aのX番目の反応管51に割り当てられた測定項目を読み出す(S62)。
【0132】
読み出した測定項目が空きであると(S63,Yes)、試薬分注制御部173は、このサイクル中、第1試薬分注プローブ8に恒温槽50から温度制御用液体を吸引させてX番目の反応管51に吐出させる(S64)。
【0133】
読み出した測定項目が空きでなければ(S63,No)、試薬分注制御部173は、読み出した測定項目の測定項目情報176aから、第1試薬の種類と分注量を読み出す(S65)。
【0134】
そして、試薬分注制御部173は、駆動装置16に駆動信号を出力することで第1試薬の試薬ラック1を回動させ、読み出した第1試薬の載置位置を第1試薬分注プローブ8の吸引位置に合わせる(S66)。更に、試薬分注制御部173は、駆動装置16に駆動信号を出力することで第1試薬分注プローブ8に第1試薬を吸引させ、X番目の反応管51に吐出させる(S67)。
【0135】
このように、各実施形態に係る自動分析装置は、反応ディスク5に反応管51を連続して並べ、この各反応管51を順々に吐出位置S及び吐出位置R1,R2に搬送する。そして、試料の吐出位置Sに搬送された反応管51に被検試料とその測定項目を割り当てるとともに、所定測定項目が割り当てられた反応管51の隣を空きの反応管51にするように試料分注プローブ7、第1試薬分注プローブ8、及び第2試薬分注プローブ9を制御する。
【0136】
これにより、隣接する反応管51へ試薬が分注されたことにより、混合液の温度が変化してしまい、その反応度合い又は酵素活性度合いに影響を与え、測定結果の安定性を害するといった問題が解決される。
【0137】
尚、本発明に係る自動分析装置として第1乃至第4の実施形態を例に挙げてそれぞれ説明したが、この第1乃至第4の実施形態のいずれを組み合わせて併用しても、本発明の目的は達成できる。
【0138】
例えば、第1乃至第4の実施形態の全てを組み合わせて、Aライン管51Aに温度の影響が大きい測定項目を割り当てた場合、Bライン管51B及び吐出位置Sの隣りに搬送されている反応管51を空きにしてもお湯を入れてもよいし、Bライン管51B及び吐出位置Sの隣りに搬送されている反応管51に分注される試薬が所定量以下の場合、これらに通常通り測定項目を割り当てるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1 試薬ラック
2 試薬庫
3 試薬庫
4 試薬容器
5 反応ディスク
50 恒温槽
51 反応管
51A Aライン管
51B Bライン管
52 貫通孔
53 隔壁
6 ディスクサンプラ
61 試料容器
7 試料分注プローブ
8 第1試薬分注プローブ
9 第2試薬分注プローブ
10 アーム
11 撹拌ユニット
12 測光ユニット
13 洗浄ユニット
14 分析部
15 データ処理部
16 駆動装置
17 制御部
171 試料分注制御部
172 反応ディスク制御部
173 試薬分注制御部
174 アサイン処理部
175 被検試料情報記憶部
175a 被検試料情報
176 測定項目情報記憶部
176a 測定項目情報
176b 温度影響フラグ
177 操作部
178 状況テーブル記憶部
178a 状況テーブル
100 自動分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料と測定項目に応じた試薬とを反応管に分注して混合液を測定する自動分析装置であって、
前記反応管が連続して並べられ、この各反応管を順々に試料分注位置及び試薬分注位置に搬送する反応ディスクと、
前記試料分注位置に搬送された前記反応管に前記被検試料とその測定項目を割り当てるとともに、その測定項目のうちの所定測定項目が割り当てられた前記反応管の隣を空きの反応管にする制御手段と、
前記制御手段の割り当てに従って、前記反応管に前記被検試料を分注する試料プローブと、
前記制御手段の割り当てに従って、前記反応管に前記測定項目に応じた前記試薬を分注する試薬プローブと、
を備えること、
を特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記被検試料と前記測定項目とを対にした被検試料情報を予め記憶する測定項目記憶手段と、
分注する試薬及び所定測定項目を特定する所定項目特定情報を測定項目毎に予め記憶するスキップ情報記憶手段と、
前記試料分注位置に搬送されてきた前記反応管に対して少なくとも前記被検試料情報に基づいて前記被検試料と前記測定項目とを割り当てることで逐次作成され、その割り当て状況を示す状況テーブルを記憶する状況記憶手段と、
を含み、
前記所定項目特定情報と前記状況テーブルに基づき前記所定測定項目を割り当てた前記反応管の隣を空きの反応管にすること、
を特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記試料分注位置にある前記反応管の隣に前記所定測定項目を割り当てると、前記試料分注位置にある前記反応管に空を割り当てること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記試料分注位置にある前記反応管の隣に前記測定項目のうちの前記所定測定項目又は前記空きが割り当てられていると、前記試料分注位置にある前記反応管に対する前記所定測定項目の割り当てをスキップして前記空を割り当てること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記反応ディスクは、
複数に区画されて各々に前記被検試料及び前記試薬が分注可能な前記反応管を載置し、
前記制御手段は、前記区画の一つに前記所定測定項目を割り当てると、その区画の隣りを空きにすること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記反応管に前記所定測定項目を割り当て、且つその反応管に分注する前記試薬が所定量以上であると、その反応管の隣を空きの反応管にし、
前記反応管に前記所定測定項目を割り当て、且つその反応管に分注する前記試薬が所定量未満であると、その反応管の隣には前記被検試料とその測定項目を割り当てること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項7】
所定温度の液を保持する槽と、
前記槽から液を分注する分注プローブと、
を更に備え、
前記制御手段は、
前記分注プローブを制御して、前記空の反応管に前記液を分注させること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−190769(P2010−190769A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36316(P2009−36316)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】