説明

自動分析装置

【課題】血液,尿などの生体サンプルの定性・定量分析を行う、複数の試薬容器を搭載する試薬ディスクを備えた自動分析装置において、容量の大きな試薬容器を搭載した場合であっても、試薬ディスクの回転動作に伴う試薬の液面揺れの影響による液面を計測誤差の少ない自動分析装置を提供すること。
【解決手段】試薬液面を計測する際に試薬容器を搭載した試薬ディスクを、予め定めた一定サイクル時間を1単位とした場合に、2単位以上を使って液面検知位置に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置において液体試料の液面を検知する液面検知装置にかかり、特に、試薬プローブが液面に接触した時の静電容量変化から液面を検知するようにした液面検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床用自動分析装置に適用される液面検知装置においては、測定データ精度の一層の向上要求に伴い、分注プローブに液面検知機能を付加させた構成が一般的になってきている。このプローブの液面検知機能として、最近では、静電容量を利用して当該プローブ自体を液面検知用電極として用いるものが知られている。
【0003】
この静電容量方式は、分注プローブと容器に収容された液体試料との間の微小な静電容量変化を計測し、プローブがその試料液面へ接触したときにその静電容量変化が大きくなることを利用して試料液面を検知するものである。
【0004】
このような静電容量方式においては、液体試料の静電容量変化を電気信号変化に変換する必要がある。その変換方式の最近の例としては、特開昭62−218818号公報や特開昭63−259420号公報に開示されたブリッジ回路方式が知られている。このブリッジ回路方式は、分注プローブと液体試料との間の微小な静電容量をその構成要素の一部としたブリッジ回路を備え、前記静電容量変化をブリッジ回路の出力信号変化に変換するものである。
【0005】
また、他の例としては、特開平02−59619号公報に開示された微分回路方式等が知られている。この微分回路方式は、分注プローブと液体試料との間の微小な静電容量に基づいて基準信号を微分する微分回路を備え、前記静電容量変化を微分回路の出力信号変化に変換するものである。
【0006】
上述した静電容量方式では、分注プローブと液体試料との間の微小な静電容量を正確に計測する必要があるが、試薬容器が試薬ディスク上に架設され、液面検知する際に試薬ディスク回転に伴う液揺れが原因で検知結果のばらつきを引き起こすことがあった。
【0007】
上述した試薬の揺れを抑える一例として、特開2000−275251号公報に開示された試薬容器が知られている。この試薬容器は、例えば回転テーブルなどの移送手段によって所定の位置まで移送され、この所定の位置にて、プローブなどの吸入ノズルによって内容物である試薬が分取される自動分析装置用の容器であって、この容器の移送時に該容器内の試薬にかかる遠心力による液面の揺れを抑えるために遠心力が最も小さい遠心基部と、遠心力が最も大きい遠心端部との間に、液収容範囲に対応する高さ領域を含んで上下にわたり、遠心方向に流体抵抗を生じるように構成したものである。
【0008】
また試薬の揺れを抑える別の例として、特許第3845305号公報では、試薬容器をベルトコンベアなどの手段によって直線的に移動させる場合に発生する揺れに対応した試薬容器を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62−218818号公報
【特許文献2】特開昭63−259420号公報
【特許文献3】特開平02−59619号公報
【特許文献4】特開2000−275251号公報
【特許文献5】特許第3845305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した静電容量方式では、分注プローブと液体試料との間の微小な静電容量を正確に計測する必要がある。一方で、自動分析装置は高速化し、病院や検査センター等で取り扱う処理検体数が増えたため、1日に必要な試薬量も増加し、試薬容器もより大容量なものが必要である。この自動分析装置の高速化により試薬容器が搭載される試薬ディスクも高速で回転するようになったため、試薬容器に対してより大きな遠心力がはたらく。結果、遠心力の増加が、試薬容器の大容量化と伴い、試薬の揺れが大きくなるが、試薬が揺れることによる試薬分注精度の悪化,試薬分注プローブの汚れ,試薬のデットボリュームの増加等が問題になる。
【0011】
このうち試薬分注精度を向上させるために、望ましいのは、容量の大きな試薬容器を使用しても、試薬の揺れが大きくならず、正確に液面を計測する方法である。本発明の目的は、上述のような考察に基づき、容量の大きな試薬容器を使用しても、正確に液面を計測することのできる自動分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した自動分析装置では、試薬液面を計測する際に試薬容器を搭載した試薬ディスクを、予め定めた一定サイクル時間を1単位とした場合に、2単位以上を使って液面検知位置に搬送する制御方法を備えている。請求項2に記載した自動分析装置は、試薬ディスク動作のうち、1単位目が2単位目以降に比べ移動距離が長いことを特徴とした制御方法を備えている。また、請求項3では試薬ディスク動作が2単位であること、請求項4では試薬ディスク動作の最後のサイクルで移動距離が試薬容器1個分の長さであること、請求項5では試薬ディスク動作は、最後のサイクルの開始が直前のサイクルの1.5秒後以降であること、請求項6では試薬ディスク動作の最後のサイクルで角速度が0.3rad/s以下であることを特徴とした制御方法を備えている。
【0013】
本発明の制御手段によれば、分析前に試薬量を計測し、分析中は事前に計測した試薬量と、試薬吸引量から試薬分注プローブの液面突っ込み量を決定している自動分析装置に対して有効である。本発明を備えた自動分析装置では、試薬量の計測が、試薬ディスクの動作を1サイクルで試薬量を計測する場合(従来法)と比べ1サイクル分余分に必要とするが、試薬の揺れに伴う液面の計測結果のばらつきを小さく抑えられる。本発明は、分析前と分析中の試薬ディスクの制御を区別している点に特徴がある。また本発明は、分析前の試薬ディスクの制御に特化しており、分析中の試薬ディスクの制御には関係しない。したがって、本発明の適用前後で分析中の単位時間当たりの処理能力に差がない。
【発明の効果】
【0014】
血液,尿などの生体サンプルの定性・定量分析を行う、複数の試薬容器を搭載する試薬ディスクを備えた自動分析装置において、容量の大きな試薬容器を搭載した場合であっても、試薬ディスクの回転動作に伴う試薬の液面揺れの影響による液面を計測誤差の少ない自動分析装置をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明が適用される自動分析装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例に係るもので、液体分注装置の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例に係るもので、試薬登録のフロー1を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係るもので、試薬登録のフロー2を示す図である。
【図5】本発明の実施例に係るもので、試薬登録の動作開始フローを示す図である。
【図6】本発明の実施例に係るもので、ディスク移動(第一ステップ)のフローを示す図である。
【図7】本発明の実施例に係るもので、試薬ディスクが1つの駆動手段によって制御された場合のディスク動作を示す図である。
【図8】本発明の実施例に係るもので、試薬ディスクが2つの駆動手段によって制御された場合のディスク動作を示す図である。
【図9】従来の自動分析装置における試薬ディスク動作の一例を示す図である。
【図10】従来の自動分析装置における試薬ディスクの動作と液面計測のタイミングを示す図である。
【図11】本発明の実施例に係るもので、試薬ディスクの動作と液面計測のタイミングを示す図である。
【図12】従来の自動分析装置における試薬ディスクの動作で、試薬ディスク回転後の液面変動シミュレーション結果である。
【図13】試薬ディスク動作について、従来法と本発明の液面検知のばらつきを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施例を図1から順を追って説明する。図1は、本発明を適用した自動分析装置の概略図で、分注機構およびそれの周辺部を示している。各部の構成や機能は従来のものと共通性がある為、詳細についての記述は省略する。サンプリング分注機構98のサンプリング分注アーム99は上下すると共に回転する。サンプリング分注アーム99に取り付けられたプローブ105で、左右に回転するサンプルディスク102に配置されたサンプル容器101内の試料を吸引し、反応容器106へ吐出するように構成されている。なお、プローブ105の先端側には、試料を吸引して吐出するノズルが垂下するように設けられている。
【0017】
本図からもわかるようにサンプル容器101のサンプルディスク102への配置はサンプルディスク102上へ直接配置する場合や試験管(図示は無い)上にサンプル容器101を載せる事も可能なユニバーサルな配置に対応可能な構造のものが一般的である。
【0018】
図1における自動分析装置の構成をさらに説明する。回転自在な試薬ディスク125上には分析対象となる複数の分析項目に対応する試薬のボトル112が配置されている。試薬分注機構110の可動アームに取り付けられた試薬分注機構のプローブにより、試薬ボトル112から反応容器106へ所定量の試薬が分注される。なお、試薬分注機構のプローブの先端には、試薬を吸引して吐出するノズルが垂下するように設けられている。
【0019】
サンプル分注機構のプローブ105は、サンプル用シリンジポンプ107の動作に伴ってサンプルの吸引動作、及び吐出動作を実行する。試薬分注機構110のプローブは、試薬用シリンジポンプ111の動作に伴って試薬の吸引動作、及び吐出動作を実行する。
【0020】
各サンプルのために分析すべき分析項目は、キーボード121、又はCRT118の画面のような入力装置から入力される。この自動分析装置における各ユニットの動作は、コンピュータ103により制御される。
【0021】
サンプルディスク102の間欠回転に伴ってサンプル容器101はサンプル吸引位置へ移送され、停止中のサンプル容器内にサンプル分注機構のプローブ105が降下される。その下降動作に伴ってプローブ105の先端がサンプルの液面に接触すると液面検出回路151から検出信号が出力され、それに基づいてコンピュータ103がサンプリング分注アーム99の駆動部の下降動作を停止するよう制御する。
【0022】
分注プローブ105内に所定量のサンプルを吸引した後、分注機構のプローブ105は上死点まで上昇する。サンプル分注機構のプローブ105がサンプルを所定量吸引している間は、プローブ105とサンプル用ポンプ107の流路間に生じる吸引動作中の流路内圧力変動を圧力センサ152で検出する。なお、ここで検出される圧力信号は圧力検出回路153で監視され、吸引動作中の圧力変動に異常を発見した場合は所定量吸引されていない可能性が高い。このため、分析が行われた後に出される当該分析結果に対しアラームを付記し注意を促すようにしている。
【0023】
さて、サンプルを所定量吸引後、サンプリング分注アーム99が水平方向に旋回し、反応ディスク109上の反応容器106の位置でプローブ105を下降し、反応容器106内へ保持していたサンプルを吐出する。サンプルが入った反応容器106が試薬添加位置まで移動された時に、試薬分注機構110のプローブは、該当する分析項目に対応した試薬ボトル112から反応容器106へ所定量の試薬を分注する。
【0024】
反応容器106の移送中に複数の反応容器106が光源114からの光束を横切り、各混合物の吸光度、あるいは発光値が測定手段としての光度計115により測定される。吸光度信号は、A/D変換器116を経由しインターフェース104を介してコンピュータ103に入り、分析項目の濃度が計算される。
【0025】
分析結果は、インターフェース104を介してプリンタ117に印字出力するか、又は表示部のCRT118に画面出力すると共に、メモリとしてのハードディスク122に格納される。表示部に表示する異常のアラームに加えて、報知音による異常報知の併用も可能である。
【0026】
測光が終了した反応容器106は、洗浄機構119の位置にて洗浄される。洗浄用ポンプ120は、反応容器106へ洗浄水を供給すると共に、反応容器106から反応液を排出する。図1の例では、サンプルディスク102に同心円状に3列のサンプル容器101がセットできるように3列の容器保持部が形成されており、サンプル分注プローブ105によるサンプル吸引位置が各々の列に1個ずつ設定されている。
【0027】
上述の試薬分注について詳しく説明する。試薬分注機構110のプローブが試薬ボトル112から所定量の試薬を吸引後、反応容器106に試薬を吐出する。このときに、試薬分注機構110のプローブに組み込まれた静電容量検知センサ201がプローブと容器または容器収容体の間の静電容量を測定する。なお、静電容量検知センサ201は、図2を引用して述べる第1電極と第2電極等により形成される。
【0028】
静電容量検知センサ201で測定された信号は、静電容量検出回路202で監視し、試薬の吐出中の静電容量に異常を発見した場合は、試薬が所定量吸引されていない可能性が高いため、当該分析結果に対しアラームを付加する。なお、静電容量検出回路202は、図2を引用して述べる静電容量測定部6,空吸い検出部13により形成される。
【0029】
静電容量検出回路202は、分注時に泡や空気が混入するのを判定する異常判定手段に含まれる。静電容量検出回路202は、各ユニットと同様、コンピュータ103により制御される。上記実施例で述べた分注動作の監視では、サンプル分注機構のプローブではサンプル吸引時の流路内の圧力変動、試薬分注機構のプローブでは試薬吐出時のプローブと試薬容器の間の静電容量を測定している。別の監視方法として、サンプル分注機構のプローブでサンプル吐出時のプローブとサンプル容器の間の静電容量、試薬分注機構のプローブでは試薬吸引時の流路内の圧力変動を測定しても良い。
【0030】
また、監視のタイミングは分注機構のプローブにおける吸引、または吐出のいずれのタイミングで測定しても良い。異常判定に利用する情報は、分注機構のプローブにおける吸引と吐出のいずれか一方、または両方を利用しても良い。分注動作の電気的な物理量の測定対象として、電気伝導度およびインダクタンスを利用しても良い。
【0031】
この場合、図1の静電容量検知センサと静電容量検出回路の代わりに、信号検知センサと信号検出回路を備える。例えば、流速の測定結果を利用する場合、流速検知センサと流速検出回路を備える。また、監視対象の液体に磁気粒子を含む場合、液体の磁場強度を測定して、分注動作の異常判定に利用しても良い。この場合、図1の静電容量検知センサと静電容量検出回路の代わりに、磁気検知センサと磁気検出回路を備える。
【0032】
サンプル、及び試薬の分注に伴って試料容器101内のサンプル、及び試薬ボトル112内の試薬の液面が検出される。サンプル、及び試薬が加えられた反応容器106内の混合物は、攪拌器113により攪拌される。
【0033】
次に、試薬の液量管理について詳しく説明する。自動分析装置は、分析前に試薬ディスク125上に配置された試薬ボトル112の液量を算出する。このプロセスは、予め登録された情報に基づき液量を算出するので、以後、試薬登録と呼ぶ。試薬登録では、試薬ボトル112に付随された試薬ID(図示なし)の読み取り、または、ユーザによる登録情報に従い液量を算出する。このとき、自動分析装置は試薬ディスク125上の試薬ボトル112を分注場所へ搬送する。試薬ボトル112が分注場所に搬送されると、試薬分注機構110のプローブに組み込まれた静電容量検知センサ201がプローブと容器または容器収容体の間の静電容量を測定する。この液量算出結果に基づき、分析開始後、自動分析装置は試薬の液量管理を行う。分析中は試薬登録と同様に、自動分析装置は、試薬ディスク125上の試薬ボトル112を分注場所に搬送する。
【0034】
図2は、本発明に係る液体分注装置の1つの実施例を示す。ノズルは、内側ノズル部分である移動媒体管(チューブ)2と、これを覆う電気シールド1の同軸二重管構造になっている。ノズルの部品構造であるシールド1とチューブ2は、ステンレススチールなどの導電性の材料から作られ、シールド1は接地される。
【0035】
ノズル先端部(チューブ2の先端)は、試料,試薬又は試料と試薬との反応液(以下単に液体と略称する)を吸引、および吐出する部分である。また、ノズルが導電性のシールド1で覆われているため、一方の検出電極であるノズル先端部(チューブ2の先端)の露出面積が最小にされ、これによってノズルに対する他方の電極である第2容器収容体12以外の部分とノズルとの間の静電容量の測定への影響が少なくなる。また、シールド1は、磁気シールドにもなっているために、モータ9等によって生じる外界からのノイズに起因する液面検出の誤動作が防止される。
【0036】
ノズルは、制御部8及びモータ9によるノズル上下機構10の制御により上下動を可能としている。液体が吸引される容器11は容器収容体12に納められている。容器収容体12はアルミニウムなどの導電性の材料で作られ、接地されている。チューブ2及び容器収容体12は静電容量式の2つの電極として、静電容量測定部6に接続されている。電極間の静電容量を測定することによって、液面検出ができる。ノズル側のチューブ2は、第1電極になる。容器収容体12は第2電極になる。
【0037】
静電容量測定部6は電気的な物理量の測定手段で、2つの電極間の静電容量を測定検出する。また、第2電極を容器収容体12から液体が吐出されるところの別の容器(図示なし)に代えることも可能である。この場合は、別の容器(図示なし)はステンレスやアルミニウムなどの導電性の材料で作られ、接地される。静電容量測定部6と制御部8との間には液面判定部7が接続されている。この液面判定部7で、ノズル先端部が容器中の液面への接触の有無を判定する。
【0038】
次に上記液体分注装置の動作について説明する。ノズルは容器11に入っている液体を吸引するために、ノズル上下機構10によって下降する。静電容量測定部6は検出電極であるチューブ2と容器収容体12との間の静電容量を測定し、出力信号を液面判定部7に送る。2つの電極間の静電容量は、静電容量測定部6により測定される。
【0039】
ノズル上下機構10の下降動作によりノズル先端が液面に接触すると、液面判定部7は制御部8に液面検出信号を送る。この液面検出信号を受けて制御部8はモータ9を停止させ、ノズルの下降を停止させる。なお、2つの電極は、液面を検出する液面検出手段としての機能も併せて備えているのである。
【0040】
ノズル先端が液面に接触した状態で、シリンジ5の動作により容器11内の液体は所定量だけチューブ2に吸引される。その後、ノズルはノズル上下機構10の上昇動作により上昇され、図示しないノズル水平移動機構により水平方向に移動され、さらにノズルはノズル上下機構10により別の容器(図示なし)の上に下降される。
【0041】
ノズルは別の容器(図示なし)の上に下降された後、シリンジ7の動作により、チューブ2に吸引された液体が別の容器(図示なし)に吐出される。なお、チューブ2は水等の移動媒体(液体)で満たされ、シリンジ5の動作に応じて移動する液体が吸引及び吐出媒体となっている。
【0042】
制御部8は、ノズルのチューブ2に液体を吸引する場合、吸引された液体の液面がチューブ2及びその中の移動媒体に接触しないようにノズルの上下動作及びシリンジの動作を制御する。ノズルのチューブ2に吸引された液体が別の容器(図示なし)に吐出されるとき、チューブ2と別の容器(図示なし)との間の静電容量を測定し、その静電容量の変化から空吸い検出器13で分注動作の異常判定を行う。分注動作に異常が発生した場合には、空吸い検出器13はその旨の信号をアラーム発生器14に送り、アラーム発生器14よりアラームを発生させる。
【0043】
こうしたアラーム報知により、分注動作に異常が発生した検査に対し、再検査依頼を行う等の対策が講じられ得る。上記空吸い検出器13は、分注時に泡や空気が混入するのを判定する異常判定手段に含まれる。
【0044】
次に、本発明を適用した場合の動作フローを図3で説明する。試薬登録を開始すると、自動分析装置は試薬ディスク,反応セル、および分注プローブ等のリセット動作を行う。リセット動作は各ユニットの動作確認で、例えば、試薬ディスクは初期設定位置へ移動する。このとき、位置特定手段で試薬ディスクを初期設定位置へ搬送する。
【0045】
リセット動作後、自動分析装置は試薬ディスク上に搭載された試薬容器の液量測定を行う。試薬登録では、情報読取り手段(例えば、バーコードリーダ)で、試薬容器に貼付された情報伝達手段(例えば、二次元バーコード)の読取りを行い、試薬容器の配置場所,試薬項目,ロット、および使用期限を特定する。情報伝達手段として、RFIDを利用しても良い。このとき、使用期限切れの試薬に対してはアラームを表示して、オペレータに試薬容器の交換を知らせる。
【0046】
次に、試薬容器の個数から試薬登録に掛かる時間を算出し、PCのスクリーンに結果を表示する。最後に、予定通り試薬登録を完了した場合、登録結果をスクリーンに表示する。試薬登録が中断した場合は登録結果を表示せず、アラームをスクリーンに表示する。
【0047】
試薬登録が中断した場合で、登録結果のある試薬に対して結果をスクリーンに表示しても良い。この場合のフロー図を図4に示す。試薬登録が中断した場合、登録結果のみ表示し、未登録や計測で異常が発生した試薬に対して結果を表示せず、試薬登録が中断したことを示すアラームをスクリーンに表示しても良い。
【0048】
次に、試薬登録時の試薬ディスクの動作について説明する。図3および図4のフロー図によれば、1個目の試薬容器が分注場所にあれば、直前に試薬ディスクの回転なく、試薬液面を計測する。試薬ディスク上に複数の試薬容器がある場合、2個目以降の試薬容器は試薬ディスクの動作制御で2ステップ使って分注場所に搬送される。例えば、試薬容器を2ステップで分注場所に搬送する場合、試薬容器を分注場所の1個隣に搬送する第1ステップと、分注場所に移動する第2ステップに分かれる。
【0049】
第1ステップの動作について、図6のフロー図に従い説明する。1個目の試薬登録後、2個目の試薬容器が分注場所の1個隣にある場合、第1ステップは省略される。2個目の試薬容器が分注場所の2個以上離れた位置にある場合、試薬容器と分注場所の位置関係から試薬ディスクの回転方向および移動速度を選択して、試薬容器を分注場所の1個隣へ搬送する。
【0050】
第2ステップでは、試薬容器を分注場所の1個隣から分注場所へ搬送する。その後、試薬液面を計測して、液量の算出、および有効テスト数を算出する。2個目の試薬容器に対する液面の計測終了後、順次、3個目以降の試薬容器に対して液面を計測する。試薬登録の動作開始から完了までのプロセスは、図5のフロー図に従う。
【0051】
次に、試薬ディスク上に複数の試薬容器が搭載された場合の液面計測の順序を説明する。液面計測の順序は、例えば、試薬ディスクの位置番号で昇べき順に行う。試薬登録を開始すると、試薬ディスクはリセット動作で初期設定位置へ移動する。最初に試薬登録する試薬容器の位置に関係なく初期設定位置は固定であり、最初に試薬登録する試薬容器が分注場所にない場合は、その試薬容器は分注場所に搬送される。液面計測直前の試薬ディスクの移動は、試薬の揺れが小さくなるよう搬送するのが望ましい。
【0052】
例えば、試薬ディスク上に搭載された試薬容器が1つで、試薬容器が初期設定位置にあり、かつ初期設定位置が分注場所の場合、液面計測直前の試薬ディスクの回転はない。この場合の液面計測では、試薬ディスク回転に伴う試薬の揺れが発生しない。
【0053】
別の条件で、登録された試薬容器が1つで、かつ試薬容器が分注場所にない場合、リセット動作後、液面計測直前に試薬容器は分注場所へ搬送される。このとき、試薬ディスク回転に伴う液揺れを小さくするようにするために、いくつかの機能が必要となる。第一に、試薬ディスクは複数の位置特定手段(図示なし)を有する。
【0054】
試薬ディスクが1つの駆動手段によって制御される構成で、図7(a)に示すように試薬容器が設置されている場合の試薬ディスクの動作について説明する。試薬ディスクの位置番号で昇べき順に行う場合、液面計測はNo.6,7,11,12の順序で実施される。図7(b)に示すように、液面計測前に試薬容器No.6を分注場所へ移動させるとき、試薬ディスクに備えられた位置特定手段にて試薬容器を初期設定位置から分注場所へ移動させる。
【0055】
別の構成として、試薬ディスクが内周と外周に個別の駆動手段を備え、個々に試薬ディスクを制御する構成がある。このとき、個々の試薬ディスクには複数の位置特定手段(図示なし)を備える。図8(a)に示すように試薬容器が設置されていると、試薬ディスクの位置番号で昇べき順に行う場合、液面計測はNo.6,7,11,12の順序で実施される。
【0056】
この構成では、試薬ディスクの内周と外周が独立して動き、かつそれぞれに試薬容器を初期設定位置から分注場所へ移動させる。図8(b)の場合、試薬ディスクの内周を回転させ、液面計測前に試薬容器No.6を分注場所へ移動させる。
【0057】
特別なケースとして、リセット動作後、最初に試薬登録を行う試薬容器が分注場所にある場合、液面計測直前に試薬ディスクの移動が不要となるため、それ以外の場合に比べて、試薬ディスク回転に伴う試薬の揺れがなく、より正確に液面を計測できる。
【0058】
次に、試薬登録時の試薬ディスクの制御方法について説明する。図9は従来の自動分析装置における試薬ディスク動作の一例を示す。試薬容器と分注場所との位置関係から試薬ディスクの回転方向および移動速度を選択して、計測前に試薬容器を分注場所に搬送する。図9(a)および(b)に示すように、試薬ディスクの回転方向は、移動距離が小さくなるように選択する。図9(c)および(d)では移動距離が同じなので、予め登録された回転方向および移動速度を選択する。
【0059】
次に、従来の自動分析装置における試薬ディスクの動作と液面計測のタイミングについて説明する。図10(a)および(b)に示すように、試薬容器が分注場所に搬送された後、分注プローブが動作する。試薬登録前の試薬容器の位置によらず試薬ディスクの動作時間が一定の場合、試薬容器が分注場所から離れた場所にあると、試薬ディスクを早く搬送しなければならない。
【0060】
移動速度が大きいと、試薬ディスクの回転に伴う遠心力が大きくなり、試薬ディスク回転に伴う試薬の揺れが大きくなる。試薬の揺れは計測結果のばらつきを大きくするので、揺れを小さくするように試薬ディスクの動作方法を工夫するのが望ましい。
【0061】
このための手段として、本発明では試薬ディスクの動作制御を2つのステップに分ける方法を提案する。図11(a)に示すように、試薬容器は第1ステップで試薬分注場所の1つ手前に、第2ステップで試薬分注場所に移動される。また図11(b)に示すように、第1と第2ステップの間隔は、液面計測時に試薬ディスク回転に伴う揺れの影響を小さくするよう、十分な間隔を確保する必要がある。
【0062】
第1と第2ステップの間隔として、液揺れシミュレーション結果を参考に決定する。図7および図8に示すように試薬容器の配置を内周10個と外周25個に設定した場合で、試薬容器は試薬ディスクの外周に配置し、試薬ディスクの動作半径は230mm、角速度が7.5rad/sの条件でシミュレーションを行った。また、試薬容器は、断面積1800mm2と600mm2相当の2つに分割された試薬容器で、容器内部に試薬ディスク回転に伴う液揺れを抑制するよう、仕切り板を備えた試薬容器のうち、断面積1800mm2の試薬容器をモデルとした。図12に分注場所における液揺れシミュレーション結果を示す。
【0063】
図12に示すように、試薬容器内の水位変動は、試薬ディスクの回転後0.6〜0.7秒で最大となり、1.5秒後には試薬容器内の水位変動は0mmとなる。この条件では、第2ステップの開始を第1ステップの動作後1.5秒以降と設定することで、試薬ディスク回転に伴う揺れの影響を抑制できる。
【0064】
また、試薬ディスク回転に伴う揺れの影響を小さくするための別の手段として、試薬ディスクを動作径に応じた角速度で回転させる。例えば、図7および図8に示すように試薬容器の配置を内周10個と外周25個に設定した場合、試薬容器1個分を移動させるのに必要な移動距離(または回転角)は内周では0.63rad(=36°)、外周では0.25rad(=14.4°)となる。試薬ディスクの動作サイクルが一定時間の場合、移動距離が大きいほど試薬ディスクの角速度が大きくなる。
【0065】
試薬ディスクの角速度は、移動距離や試薬の液性(粘性,接触角、および界面活性剤の有無)にあわせて選択すれば、試薬ディスク回転に伴う揺れの影響を抑制できる。例えば、試薬容器を外周に配置した場合、試薬ディスクの動作半径は230mm、試薬容器1個が断面積1800mm2と600mm2相当の2つに分割された試薬容器を備えた自動分析装置において、液面高さの測定結果を図13に示す。
【0066】
図13に示す通り、試薬ディスクの回転が、1ステップ方式と本発明の2ステップ方式で液面高さを比較した場合、初期設定位置から左右3個隣までの場所ではばらつきがいずれも0.1mm以下である。一方、初期設定位置から4個以上離れた場所では1ステップ方式でばらつきが最大で4.0mmある。
【0067】
試薬ディスクの動作を2サイクルにして、かつ2サイクル目の移動距離を試薬容器1個分で、角速度:0.3rad/sとした場合の結果を図13(b)に示す。初期設定位置と、それ以外の場所での液面高さの測定結果は、1ステップ方式に比べて、2ステップ方式はばらつきも小さく、最大のばらつきは0.4mmとなる。図13は試薬容器を試薬ディスクの外周に配置した場合の結果だが、試薬容器を試薬ディスクの内周に配置した場合、2サイクル目の移動距離は、試薬容器1個分で、角速度は0.7rad/sとなる。この条件では、図13と同様に、試薬ディスク回転に伴う揺れの影響を抑制できる。
【0068】
本発明の構成に依れば、液面計測直前の試薬ディスクの移動量が試薬容器1個分で、従来の装置に比べ、試薬ディスク回転に伴う揺れの影響を抑制できる。したがって、液面計測のばらつきを小さくすることができ、正確に液面を計測することのできる自動分析装置を提供できる。
【符号の説明】
【0069】
1 シールド
2 移動媒体管(チューブ)
3 検出電極
5 シリンジ
6 静電容量測定部
7 液面判定部
8 制御部
9 モータ
10 上下機構
11 容器
12 容器収容体
13 空吸い検出器
14 アラーム発生器
98 サンプリング機構
99 サンプリングアーム
101 サンプル(試料)容器
102 サンプルディスク
103 コンピュータ
104 インターフェース
105 (サンプル分注)プローブ
106 反応容器
107 サンプル用シリンジポンプ
109 反応ディスク
110 試薬分注機構
111 試薬用シリンジポンプ
112および112(a),(b),(c),(d) 試薬ボトル
113 撹拌器
114 光源
115 光度計
116 A/D変換器
117 プリンタ
118 CRT
119 洗浄機構
120 洗浄用ポンプ
121 キーボード
122 ハードディスク
125 試薬ディスク
126 試薬分注場所
130 試薬ディスク回転方向
131 試薬ディスク(内側)回転方向
140 2サイクルの試薬ディスク動作において第1サイクル後の試薬容器の位置(分注場所の手前)
151 液面検出回路
152 圧力センサ
153 圧力検出回路
201 静電容量検知センサ
202 静電容量検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を収容する試薬容器と、
前記試薬容器に備えられた試薬情報を伝達する情報伝達手段と、
前記情報伝達手段から試薬情報を読取るための情報読取り手段と、
複数の前記試薬容器を載置して、試薬容器を搬送する試薬容器搬送機構と、
前記試薬容器搬送機構に備えられた搬送機構の位置を特定するための位置特定手段と、
該試薬容器搬送機構を、予め定めた一定のサイクル時間を単位として動作制御する制御機構とを備えた自動分析装置であって、
前記試薬容器搬送機構の試薬容器停止位置の少なくとも1箇所に、該試薬容器に収容された試薬の液面を検知する液面検知機構を備え、
試薬の液面を検知する必要のある試薬容器を、前記液面検知機構が備えられた試薬容器停止位置に搬送する場合、前記サイクル時間を連続した2サイクル以上をかけて搬送するよう前記制御機構が制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記連続した2サイクル以上での試薬容器の移動距離は、最初のサイクルでの試薬容器の移動距離が、それに続くサイクルでの試薬容器の移動距離に比べ長いことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記連続した2サイクル以上は、2サイクルであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記連続した2サイクル以上での試薬容器の移動距離は、最後のサイクルでの試薬容器の移動距離が、試薬容器1個分であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記連続した2サイクル以上での試薬容器の移動は、最後のサイクルでの試薬容器の動作サイクル開始が、直前のサイクルの1.5秒後以降であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記連続した2サイクル以上での試薬容器の移動は、最後のサイクルでの試薬容器の角速度が、0.3rad/s以下であることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−190811(P2010−190811A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37325(P2009−37325)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】