自動分析装置
【課題】結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止可能な自動分析装置を提供すること。
【解決手段】蓋1は、試薬ボトル48を収容する試薬庫40の開口部を覆う。蓋1は、テーパー形状を有する試薬吸引孔2を備える。試薬吸引孔2の径は、蓋1の表面から裏面にいくに従って長くなるように設計される。
【解決手段】蓋1は、試薬ボトル48を収容する試薬庫40の開口部を覆う。蓋1は、テーパー形状を有する試薬吸引孔2を備える。試薬吸引孔2の径は、蓋1の表面から裏面にいくに従って長くなるように設計される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬庫を備える自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試薬ボトルを収容する試薬庫を備える自動分析装置がある。試薬庫は、試薬の劣化を防止するために試薬ボトルを保冷している。この保冷機能を備える試薬庫において、結露が発生する。結露は、試薬庫内と外気温との温度差に起因し、外気と接する試薬庫の壁面に発生することが多い。特に試薬庫の蓋に形成された貫通孔(試薬吸引孔)に結露が発生しやすい。この結露により発生した水滴は、試薬庫内に落下する。落下地点に試薬ボトルのボトル口がある場合、試薬ボトル内に水滴が入り、試薬が汚染されてしまう。試薬が汚染されると、測定結果の精度が劣化してしまう。
【0003】
特許文献1記載の自動分析装置は、二重構造を有する蓋の隙間に発熱体を設けて加熱し、蓋の表面温度を常に30〜40°に保つことで、結露を防止する。しかし、この構造は、複雑であり、高価である。また、加熱された蓋により試薬ボトルが加熱されてしまう。
【0004】
特許文献2記載の自動分析装置は、傾斜された裏面(試薬庫内部に面する蓋の面)を備える蓋、又は裏面が吸湿剤を収容可能な蓋を備えている。しかし、蓋の裏面全体を傾斜させると、傾斜角が大きくなるにつれて蓋の高さが増してしまう。また、吸湿剤が収容され、さらにこの吸湿剤が湿気を吸収するために、蓋の裏面は、網目構造を有していなくてはならず、構造が複雑になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56―140258号公報
【特許文献2】特開平08―262030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に係る自動分析装置は、開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、テーパー形状を有する貫通孔を備える蓋と、を具備する。
【0008】
本発明の第2局面に係る自動分析装置は、開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、第1径を有する貫通孔が形成された蓋と、前記蓋に接合される構造物であって、前記蓋との接合部分から末端部分にいくに従って前記第1径から前記第1径よりも長い第2径へと変化する径を有する第2の貫通孔が形成されたテーパー部と、を具備する。
【0009】
本発明の第3局面に係る自動分析装置は、開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、貫通孔が形成された蓋と、前記蓋の前記貫通孔の周囲に設けられる吸水部と、を具備する。
【0010】
本発明の第4局面に係る自動分析装置は、試薬ボトルを収容し、開口部を有する試薬庫と、前記試薬ボトル内の試薬を吸引するプローブと、前記開口部の一部を覆うために前記試薬庫に取り付けられる第1の蓋部と、前記開口部の前記一部領域以外の領域を覆うために前記試薬庫に着脱可能に取り付けられ、前記プローブが通過するための貫通孔が形成された第2の蓋部と、を具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止可能な自動分析装置の提供を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る自動分析装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1の蓋が外された試薬庫の内部を示す図。
【図3】実施例1に係る蓋の構造を示す図。
【図4】図3の内壁に設けられた内壁とボトル口との位置関係を立体的に示す図。
【図5】実施例2に係る蓋の構造を示す図。
【図6】実施例3に係る蓋の裏面を示す図。
【図7】図6の7―7断面図。
【図8】図6の他の7―7断面図。
【図9】実施例3に係り、試薬吸引孔を含む一部分のみを着脱可能な構造を有する蓋の斜視図。
【図10】図9の着脱部と、着脱部が外された蓋とを示す図。
【図11】図9の着脱部の裏面を示す図。
【図12】図9の他の着脱部の裏面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、自動分析装置は、筐体の上面にステージ100を有している。
【0015】
ステージ100の中央付近には、反応ディスク10が配置される。反応ディスク10は、反応管12を搬送する円周状の搬送路であり、反応ディスク10には、反応管12が円周状に一列に配列される。反応ディスク10は、特定の反応管12が所定のサンプル吐出位置12Aに位置決めされるように回動する。
【0016】
ステージ100の正面側の辺に沿って、サンプル庫20が配置される。サンプル庫20は、サンプルが収容されたサンプル容器22を一列に並べて保持し、特定のサンプル容器22を搬送路上のサンプル吸引位置22Aに移動させる。
【0017】
反応ディスク10とサンプル庫20との間にはサンプルアーム30が配置されている。サンプルアーム30の先端には、サンプルプローブ32が取り付けられている。サンプルアーム30は、その回転軸回りの回転軌道に沿ってサンプルプローブ32を回転可能させ、所定の位置で上下動する。具体的には、サンプルアーム30は、サンプルプローブ32回転軌道に沿って回転させて、サンプル吸引位置22A上に配置する。そしてサンプルアーム30は、サンプル吸引位置22Aにあるサンプル容器22内へサンプルプローブ32を下降させる。下降されたサンプルプローブ32は、サンプル容器22内のサンプルを所定量だけ吸引する。サンプルプローブ32がサンプルを吸引し終わると、サンプルアーム30は、サンプルプローブ32を上昇させる。サンプルプローブ32を上昇し終わると、サンプルアーム30は、サンプルプローブ32を回転軌道に沿って回転させ、反応ディスク10上のサンプル吐出位置12Aへ配置する。その後、サンプルプローブ32は、サンプル吐出位置12Aに配置された反応管12に、サンプルを所定量だけ吐出する。
【0018】
反応ディスク10の近傍には、試薬庫40が配置される。試薬庫40は、円筒形状を有する容器であり、開口部を有している。試薬庫40には、開口部を覆うための蓋1が開閉可能又は着脱可能に取り付けられている。蓋1は、後述する第1試薬プローブ52や第2試薬プローブ62が試薬庫40内部へ侵入するための複数の貫通孔2(内側の第1試薬吸引孔2A、外側の第1試薬吸引孔2B、内側の第2試薬吸引孔2C、外側の第2試薬吸引孔2D)を備えている。
【0019】
図2は、蓋1が外された試薬庫40の内部を上から眺めた図である。図2に示すように、試薬庫40は、同心円状に配置され、互いに独立して回転軸ZA回りに回転可能な内側ディスク42と外側ディスク44とを保持する。内側ディスク42と外側ディスク44とのそれぞれには、複数の試薬ラック46(46A、46B)が着脱可能に配置されている。試薬ラック46は、複数の試薬ボトル48(48A、48B)を着脱可能に保持する。各試薬ボトル48は、サンプルの各測定項目に選択的に反応する第1試薬、又は第1試薬に対応する第2試薬を収容する。試薬ボトル48は、内容量に応じた形状を有している。なお典型的には、試薬ボトル48は、円形の試薬庫40にできるだけ多く収容できるように、台形形状を有している。図2においては、代表的に用いられている2種類の試薬ボトル48A、48Bが示されている。例えば、試薬ボトル48Aには第1試薬が充填され、試薬ボトル48Bには第2試薬が充填されている。試薬ラック48は、同一形状の試薬ボトル48のみを保持可能である。例えば、試薬ラック46Aは試薬ボトル48Aを、試薬ラック46Bは試薬ボトル48Bを保持する。
【0020】
各試薬ボトル48には、後述する試薬プローブ52や62が試薬ボトル48内へ進入するための開口部48a(以下、ボトル口と呼ぶことにする)が設けられている。各試薬ボトル48は、ボトル口48aが円周状に配列されるように試薬庫40に配置される。
【0021】
試薬庫40は、内側ディスク42を回転させて、内側ディスク44上の特定の第1試薬ボトル48Aのボトル口48aを内側の第1試薬吸引孔2Aの真下に位置させる。同様に試薬庫40は、外側ディスク44を回転させて、外側ディスク44上の特定の第1試薬ボトル48Aのボトル口48aを外側の第1試薬吸引孔2Bの真下に位置させる。また、試薬庫40は、内側ディスク42を回転させて、内側ディスク42上の特定の第2試薬ボトル48Bのボトル口48aを内側の第2試薬吸引孔2Cの真下に位置させる。同様に試薬庫40は、外側ディスク44を回転させて、外側ディスク44上の特定の第2試薬ボトル48Bのボトル口48aを外側の第2試薬吸引孔2Dの真下に位置させる。
【0022】
試薬の劣化を防止するために、試薬庫40は、試薬ボトル48を保冷するための保冷機能を有している。試薬庫40内が保冷されることにより、試薬庫40内部と外部との温度差により、蓋1の試薬吸引孔2に面する内壁に結露が発生しやすい。結露により、蓋1の内壁に水滴が発生する。発生された水滴は、重力により内壁を伝って試薬庫40の内部へ落下する。本実施形態に係る蓋1には、結露により発生された水滴がボトル口48aを通じて試薬ボトル48内への進入を防止するための構造を有している。この構造の詳細については、後述する。
【0023】
図1に示すように、反応ディスク10の近傍には第1試薬アーム50と第2試薬アーム60とが配置される。第1試薬アーム50の先端には第1試薬プローブ52が、第2試薬アーム60の先端には第2試薬プローブ62が取り付けられている。
【0024】
第1試薬アーム50は、第1試薬プローブ52を回転軌道に沿って回転させ、試薬庫40上の第1試薬吸引位置2A又は2Bに配置する。次に第1試薬アーム50は、第1試薬プローブ52を下降させ、内側の第1試薬吸引位置2Aに配置された第1試薬ボトル48A内へ、又は外側の第1試薬吸引位置2Bに配置された第1試薬ボトル48A内へ各ボトル口48aを介して進入させる。第1試薬ボトル48A内へ進入された第1試薬プローブ52は、第1試薬を所定量だけ吸引する。第1試薬プローブ52が第1試薬を吸引し終わると、第1試薬アーム50は、第1試薬プローブ52を上昇させる。第1試薬プローブ52を上昇させ終わると、第1試薬アーム50は、第1試薬プローブ52を回転軌道に沿って回転させ、反応ディスク10上の第1試薬吐出位置12Bへ配置する。その後、第1試薬プローブ52は、第1試薬吐出位置12Bに配置された反応管12に第1試薬を所定量だけ吐出する。
【0025】
同様に第2試薬アーム60は、第2試薬プローブ62を回転軌道に沿って回転させ、試薬庫40上の第2試薬吸引位置2C又は2Dに配置する。次に第2試薬アーム60は、第2試薬プローブ62を下降させ、内側の第2試薬吸引位置2Cに配置された第2試薬ボトル48B内へ、又は外側の第2試薬吸引位置2Dに配置された第2試薬ボトル48B内へ各ボトル口48aを介して進入させる。第2試薬ボトル48B内へ進入された第2試薬プローブ62は、第2試薬を所定量だけ吸引する。第2試薬プローブ62が第2試薬を吸引し終わると、第2試薬アーム60は、第2試薬プローブ62を上昇させる。第2試薬プローブ62を上昇させ終わると、第2試薬アーム60は、第2試薬プローブ62を回転軌道に沿って回転させ、反応ディスク10上の第2試薬吐出位置12Cへ配置する。その後、第2試薬プローブ62は、第2試薬吐出位置12Cに配置された反応管12に第2試薬を所定量だけ吐出する。
【0026】
反応ディスク10の近傍には、撹拌部70が配置される。撹拌部70は撹拌子を備える。撹拌子は、反応ディスク10上の撹拌位置に配置された反応管12内のサンプルと第1試薬、又はサンプルと第1試薬と第2試薬とを撹拌し、混合液を生成する。
【0027】
また、ステージ100の内部には、測光部80が設けられている。測光部80は、測光中、発光体から連続的に光を発生させ、反応ディスク10の測光位置(図示せず)に光を照射し続けている。反応管12は、測光中、測光位置に照射されている光を横切るように反応ディスク10により回動されている。測光部80は、反応管12内の混合液を透過した光を検出し、検出された光の光量を測定する。
【0028】
また反応ディスク10の近傍には、洗浄部90が配置されている。洗浄部90は、複数本の洗浄ノズルと乾燥ノズルとを備えている。洗浄部90は、反応ディスク10の洗浄位置にある反応管12を洗浄ノズルにより洗浄し、乾燥ノズルにより乾燥する。
【0029】
以下、本実施形態に係る自動分析装置に特徴的な蓋1について以下の実施例1〜実施例3において詳細に説明する。なお、上記構成に依れば蓋1は、内側の第1試薬吸引孔2Aと、外側の第1試薬吸引孔2Bと、内側の第2試薬吸引孔2Cと、外側の第2試薬吸引孔2Dとを備えている。しかしながら、以下の説明を簡潔に行なうため、特に区別する必要のない場合、これら4つの試薬吸引孔2A、2B、2C、2Dを単に試薬吸引孔2と呼ぶことにする。また、蓋1の両面のうち、試薬庫40の内部に面する面を裏面、試薬庫40の外部に面する面を表面と呼ぶことにする。
【実施例1】
【0030】
図3は、実施例1に係る蓋1の構造を示す図であり、試薬吸引孔2を試薬庫40の径方向に沿って切断する断面図である。なお、試薬庫40の内側ディスク42又は外側ディスク44の回転方向は、紙面の手前から奥、又は奥から手前方向である。蓋1は、第1試薬プローブ52や第2試薬プローブ62が通過するための貫通孔(試薬吸引孔)2を有する。蓋1は、断熱材で形成された骨格部3と、骨格部3の表面を被覆する樹脂性の被覆部4とを備える。試薬吸引孔2に面する蓋1の内壁5は、外気に接するため結露が発生しやすい。蓋1は、結露により発生される水滴が、ボトル口48aを通って試薬ボトル48内へ落下することを防止するための特徴的な構造を有している。
【0031】
水滴が試薬ボトル48内へ落下することを防止するために、試薬吸引孔2(換言すれば、内壁5)は、テーパー形状を有している。すなわち、蓋1の表側から裏側にかけて径が大きくなるように試薬吸引孔2は、蓋1に形成されている。蓋1の表側の試薬吸引孔2の径r1は、ボトル口48aの径r1と略同一である。蓋1の裏側の試薬吸引孔2の径r2は、径r1に比して十分大きい。具体的には、径r1は10〜12mm程度に、r2は20mm程度に設計される。
【0032】
試薬吸引孔2の内壁5に水滴が発生した場合、発生された水滴は、重力により蓋1の裏側の内壁5の縁6まで導かれ、落下する。この縁6は、試薬吸引孔2がテーパー形状を備えていることにより、ボトル口48aの真上に位置していない。従って試薬庫40の内側ディスク42又は外側ディスク44が回転していない場合、縁6から落下する水滴は、ボトル口48aを通って試薬ボトル48内へ入ることはなく、試薬ボトル48の外部等、試薬庫40の内部に落下する。
【0033】
しかしながら、試薬庫40の内側ディスク42又は外側ディスク44が回転している場合、縁6から落下した水滴が回転している試薬ボトル48に入ってしまう可能性がある。これを防止するため蓋1には、水滴を寄せ集めるための内壁5の最下点(以下、滴下点と呼ぶことにする)が設けられる。
【0034】
図4は、蓋1の内壁5に設けられた滴下点7とボトル口48aとの位置関係を立体的に示す図である。図4に示すように、蓋1の裏面の試薬吸引孔2に隣接する位置には、隆起部分が形成されている。この隆起部分の先端が滴下点7となる。この滴下点7は、ボトル口48aの回転軌道T上の真上に位置しない箇所に設けられる。例えば、試薬庫40の径方向上にある内壁5の2箇所に設けられる。また、滴下点7間部分は、緩やかな曲線状に形成される。これにより、内壁5に発生された水滴Wは、重力により滴下点7に導かれる。
【0035】
この緩やかな曲線上の縁の頂点8からも水滴が落下する場合がある。従って、頂点8は、ボトル口48aの回転軌道T上の真上に位置しない箇所に設けられるとよい。
【0036】
上記構成により、試薬吸引孔に面する蓋の内壁は、テーパー形状を有している。この内壁に発生された水滴は、重力により内壁を伝い、滴下点へ寄せ集められる。上述したように、滴下点は、ボトル口の回転軌道上の真上にない。従って、滴下点から落下する水滴が試薬ボトル内へ入ることはない。
【0037】
特許文献1に記載の技術は、水滴が試薬ボトルへ落下することを防止するために、試薬庫の蓋に電熱線を取り付けていた。このような特許文献1に記載の技術を実現するためには、高価で複雑な構造が必要である。しかし実施例1に係る蓋1は、試薬吸引孔2をテーパー形状に形成することのみで、水滴が試薬ボトル48へ落下することを防止できる。また、特許文献2に記載の技術は、蓋の裏面全体を傾斜させるため、傾斜分だけ蓋が高くなっていた。従って、特許文献2に記載の技術は、自動分析装置の省スペース化の要請に適うものではない。しかし実施例1に係る蓋1は、試薬吸引孔2の体積が大きくなるのみで、蓋1の容積は変化しない。
【0038】
かくして実施例1に係る自動分析装置は、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止できる。
【実施例2】
【0039】
実施例2に係る試薬庫40の蓋も、試薬吸引孔2に面する蓋の内壁に発生された水滴を試薬ボトル48に落下させないための構造を有している。
【0040】
図5は、実施例2に係る蓋200の構造を示す図である。図5に示すように、蓋200は、深さに応じて径の変化しない貫通孔(試薬吸引孔)2を有している。試薬吸引孔2を塞がないように、テーパー形状を有する貫通孔が形成された構造物201が蓋200の裏面に接合されている。以下、この構造物をテーパー部201と呼ぶことにする。
【0041】
テーパー部201の貫通孔に面する内壁203は、実施例1の蓋1の内壁5と略同一の形状を有している。具体的には、内壁203(換言すれば、テーパー部201の貫通孔))は、蓋200に接合される接合部分側から接合部分側とは反対側の末端部分側にかけて、径が大きくなるように形成されている。接合部分側の貫通孔の径r1は、試薬吸引孔2の径と略同一である。このように貫通孔と試薬吸引孔2との位置が一致するように、テーパー部201は蓋200の裏面に接合されている。従って、テーパー部201の内壁203と蓋200の内壁5とは、段差がなく、滑らかに接合される。また、貫通孔203の径r1は、ボトル口48aの径r1とも略同一である。末端部分側の貫通孔の径r2は、径r1に比して十分大きい。具体的には、径r1は10〜12mm程度に、r2は20mm程度に設計される。テーパー部201の材料は、特に限定されない。例えば、蓋200と同じ材料を用いて形成される。また、内壁203には、滴下点205が設けられてもよい。この滴下点205は、実施例1の滴下点7と同様に、ボトル口48aの回転軌道上の真上にない。なお、テーパー部201の高さは、ボトル口48aにぶつからない高さを有するように設計されていることを明記しておく。
【0042】
蓋200とテーパー部201とは、個別に形成される。例えば、蓋200とテーパー部201とは、金属等の鋳型を用いた型抜成形によりそれぞれ形成される。
【0043】
上記構成により、蓋200には、テーパー形状を有する構造物であるテーパー部201が接合されている。蓋200やテーパー部201の内壁に発生された水滴は、重力によりこれら内壁を伝い、テーパー部201に設けられた滴下点205へ寄せ集められる。上述したように、滴下点205は、ボトル口48aの回転軌道上の真上にない。従って、滴下点205から落下する水滴が試薬ボトル48内へ入ることはない。また上述のように、実施例2に係る蓋200には、水滴の試薬ボトル48への落下防止に関する工夫が施されていない。テーパー形状を有する構造物であるテーパー部201を蓋200に接合するのみで、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を防止している。
【0044】
かくして実施例2に係る自動分析装置は、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止できる。
【0045】
なお上記構成においては、テーパー部201は、蓋200とは別に製造されるとした。しかしながら、テーパー部は、蓋と一体に形成されてもよい。この場合、蓋とテーパー部とは、例えば、金属製等の1枚の鋳型を用いた型抜成形により一体成形される。
【実施例3】
【0046】
実施例3に係る試薬庫40の蓋も、試薬吸引孔2に面する蓋の内壁に発生された水滴を試薬ボトル48に落下させないための構造を有している。
【0047】
図6は、実施例3に係る蓋300の裏面を示す図である。図7は、図6の7―7断面図である。すなわち、図7は、蓋300の試薬吸引孔2Aを試薬庫の径方向に沿って切断する断面図である。図6と図7とに示すように蓋300の裏面における試薬吸引孔2の周囲には、吸水シート301が貼り付けられている。吸水シート301は、例えば、吸水性のポリマー樹脂等の吸水部(図示せず)と、吸水剤を内包する布地等の包装部(図示せず)とを含んでいる。吸水部の種類は、特に限定されず、吸水機能があれば何でもよい。吸水シートを蓋へ貼り付ける方法は、両面テープや、接着剤での接着等による一般的な方法が採用される。包装部は、通気性が良い構造、例えば、網目構造を有しているとよい。この場合、吸水部により吸収された水分は、吸水部の全体に分散される。吸水部内の水分は、時間経過とともに蒸発し、包装部をして試薬庫内へ発散する。従って、吸水シート301を半永久的に使用することができる。なお、通常、試薬庫40には空気ダクト(図示せず)が設けられており、蒸発した水分は、空気ダクトを介して自動分析装置の筐体外へ放出される。従って、吸水シート301から蒸発した水分により再び結露が発生することはない。
【0048】
図6や図7に示すように、吸水シート301は、第1試薬プローブ52や第2試薬プローブ62が通るための貫通孔302を備える。貫通孔302の径r4は、試薬吸引孔2の径r1に比して小さく設計される。貫通孔302と試薬吸引孔2とが重なるように、吸水シート301は蓋300に貼り付けられる。これにより、内壁5に発生される水滴を確実に吸水することができる。また、径r4は、第1試薬プローブ52や第2試薬プローブ62と吸水シート301とが接触しない程度に大きく設計される。吸水シート301が試薬吸引孔2に接触することを防止するための他の方法として、図8に示すように、蓋の内壁にテーパーを設けても良い。
【0049】
図6に示すように、吸水シート301は、試薬吸引孔2の数と同数だけ用意される。なお、吸水シート301は、隣合う吸水シート301に重ならない程度の大きさや形状に形成される。例えば、吸水シートは、円形形状を有し、吸水シートの半径は、隣合う試薬吸引孔2の中心間間隔の半分以下に設計される。なお、蓋300に張り付けられる各吸水シート301の大きさや形状は、同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
特許文献2に記載の技術では、試薬庫の蓋の裏面を網目構造にし、その中に吸湿材を挿入していた。そのため特許文献2に係る試薬庫の蓋は、複雑な構造を有していた。一方、実施例3に係る蓋300は、上記の様に通常の構造を有している。そして蓋300の裏面であって、水滴が集まりやすい試薬吸引孔の周囲に吸水シートが貼り付けられている。上記構成により、蓋300の試薬貫通孔2に面する内壁に発生された水滴は、重力により内壁を伝って吸水シート301へ導かれ、吸水シート301により吸収される。このように実施例3は、簡便な構造で、結露により蓋300の内面に発生される水滴の試薬ボトル48内への落下を防止している。
【0051】
吸水シート301を半永久的に使用できない場合(例えば、吸水シート301の粘着性が弱くなった場合や、水分の蒸発が水滴の吸収に追いつかない場合)、メンテナンス時等において吸水シート301を交換する必要がある。上述のように蓋300は、開閉可能又は着脱可能に試薬庫40に取り付けられている。従って吸水シート301を交換する際、ユーザは、蓋300を開け、又は取り外すことによって交換作業を行なうことができる。
【0052】
上記構成においては、吸水シート301は、試薬吸引孔2の数と同数用意され、試薬吸引孔2の周囲にのみ貼り付けられるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、試薬吸引孔2の数と同数の貫通孔302を有する一枚の吸水シートが、試薬吸引孔2を塞がないように蓋の裏面に貼られても良い。この場合、吸水シートが試薬吸引孔を完全に塞がないように、貫通孔間の相対的な位置は、試薬吸引孔間の相対的な位置に応じて位置決めされている。吸水シートが一枚の場合、複数枚の場合に比して水滴を吸収できる量が多い。また、吸水シートが一枚の場合、複数枚の場合に比して交換の手間が少ない。
【0053】
試薬ボトル48内の試薬が蒸発し、吸水シートに吸収される場合がある。従って、上記のように複数枚の吸水シートを貼り付ける方が、一枚の吸水シートを貼り付ける場合に比して衛生的に良い。
【0054】
上記のように、吸水シート301を交換する際、蓋300を外さなければならない。また、吸水シート301の交換以外にも、第1試薬プローブ52や第2試薬プローブ62の位置調整等、メンテナンスのために蓋300を外なければならないことがある。しかし、蓋300が容易にはずせない場合や、位置調整を必要とする構造を有する場合であると、吸水シート301の交換に手間がかかってしまう。また蓋300を開けると、試薬庫40全体が外気に曝されてしまい、試薬が汚染される危険性がある。そこで、試薬吸引孔2を含む蓋300の一部分のみを着脱可能にすると良い。
【0055】
図9は、試薬吸引孔2を含む一部分のみを着脱可能な構造を有する蓋400の斜視図である。図9に示すように、蓋400は、試薬庫40に対して固定して装着される固定部410と、固定部410に対してスライド可能に設けられた可動部420と、固定部410に対して着脱可能に設けられた着脱部430とを備える。
【0056】
固定部410と可動部420とは、試薬庫40の開口部の一部を覆っている。固定部410は、可動部420をスライド方向にスライド可能に支持する支持部412を有している。支持部412は、蓋400の略中央に位置している。スライド方向は、蓋400の中心軸ZB周りの方向である。可動部420は、ユーザによりスイッチ414等が押されている間、スライド開閉用モータ416によりスライド方向にスライドされる。可動部420の表面には、取っ手422が設けられている。ユーザは、この取っ手422を把持してスライド方向に力を加えることにより、可動部420をスライド方向に手動でスライドさせることもできる。ユーザは、自動又は手動で可動部420を開けることにより、試薬庫40内部の試薬ボトル48を交換する。
【0057】
着脱部430は、試薬庫40の開口部のうち、固定部410と可動部420とが覆う領域以外の領域を覆う。着脱部430には、第1試薬プローブ52の回転軌道に沿う第1溝432と第2試薬プローブ62の回転軌道に沿う第2溝434とが形成されている。第1溝432には、内側の第1試薬吸引孔2Aと外側の第1試薬吸引孔2Bとが形成されている。また、第2溝434には、内側の第2試薬吸引孔4Cと外側の第2試薬吸引孔4Dとが形成されている。第1溝432と第2溝434との間には、着脱部430を着脱するために利用される取っ手436が設けられている。
【0058】
図10は、着脱部430と、着脱部430が外された蓋400とを示す図である。図10に示すように、着脱部430には係合爪438が、固定部410には係合爪438に係合される掛け金414が設けられている。また、着脱部430には螺子450が通過するための貫通孔440が形成されている。また、固定部410には螺子450に対応する螺子穴416が形成されている。係合爪438を掛け金414に係合し、又、螺子450を螺子穴416に螺合することにより着脱部430を固定部410に固定させることができる。
【0059】
着脱部430の着脱を検知するために、着脱部430の突起部分442に磁性体が埋め込まれている。また、この磁性体からの磁気を検出する磁気センサ460がステージ100の試薬庫40近傍に設けられている。突起部分442の磁性体と磁気センサ460とは、着脱部430が固定部410に取り付けられている場合に互いに近接する位置に設けられる。着脱部430が固定部410に取り付けられている間、磁気センサ460は、磁性体からの磁気を検出している。磁気を検出している間、磁気センサ460は、図示しないコントローラに動作信号を出力する。この動作信号を受けている間、コントローラは、自動分析装置を動作可能モードに設定する。動作可能モードにおいては、自動分析装置の動作が維持される。一方、着脱部430が固定部410から外されている場合、磁気センサ460が磁性体からの磁気を検出できない。磁気を検出しない間、磁気センサ460は、図示しないコントローラに停止信号を出力する。この停止信号を受けている間、コントローラは、自動分析装置を動作停止モードに設定する。こ動作停止モードにおいては、自動分析装置の動作が停止される。
【0060】
図11は、着脱部430の裏面を示す図である。図11に示すように、着脱部430に設けられた試薬吸引孔2A、2B、2C、2Dの周囲には、吸水シート301がそれぞれ貼り付けられている。なお、図12に示すように、試薬吸引孔の数と同数の貫通孔を有する一枚の吸水シート301´が、試薬吸引孔2A、2B、2C、2Dを完全に塞がないように着脱部430の裏面に貼り付けられていても良い。
【0061】
上記構成により、着脱部430を蓋400に設けることで、試薬吸引孔2付近のみを個別に着脱することできる。従って、吸水シート301、301´の交換等のメンテナンスを容易に行なうことができる。
【0062】
かくして実施例3に係る自動分析装置は、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止できる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上本発明によれば、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止できる自動分析装置の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…蓋、2…試薬吸引孔、2A…内側の第1試薬吸引孔、2B…外側の第1試薬吸引孔、2C…内側の第2試薬吸引孔、2D…外側の第2試薬吸引孔、10…反応ディスク、12…反応管、12A…サンプル吐出位置、12B…第1試薬吐出位置、12C…第2試薬吐出位置、20…サンプル庫、22…サンプル容器、22A…サンプル吸引位置、30…サンプルアーム、32…サンプルプローブ、40…試薬庫、48…試薬ボトル、48a…ボトル口、50…第1試薬アーム、52…第1試薬プローブ、60…第2試薬アーム、62…第2試薬プローブ、70…撹拌部、80…測光部、90…洗浄部、100…ステージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬庫を備える自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試薬ボトルを収容する試薬庫を備える自動分析装置がある。試薬庫は、試薬の劣化を防止するために試薬ボトルを保冷している。この保冷機能を備える試薬庫において、結露が発生する。結露は、試薬庫内と外気温との温度差に起因し、外気と接する試薬庫の壁面に発生することが多い。特に試薬庫の蓋に形成された貫通孔(試薬吸引孔)に結露が発生しやすい。この結露により発生した水滴は、試薬庫内に落下する。落下地点に試薬ボトルのボトル口がある場合、試薬ボトル内に水滴が入り、試薬が汚染されてしまう。試薬が汚染されると、測定結果の精度が劣化してしまう。
【0003】
特許文献1記載の自動分析装置は、二重構造を有する蓋の隙間に発熱体を設けて加熱し、蓋の表面温度を常に30〜40°に保つことで、結露を防止する。しかし、この構造は、複雑であり、高価である。また、加熱された蓋により試薬ボトルが加熱されてしまう。
【0004】
特許文献2記載の自動分析装置は、傾斜された裏面(試薬庫内部に面する蓋の面)を備える蓋、又は裏面が吸湿剤を収容可能な蓋を備えている。しかし、蓋の裏面全体を傾斜させると、傾斜角が大きくなるにつれて蓋の高さが増してしまう。また、吸湿剤が収容され、さらにこの吸湿剤が湿気を吸収するために、蓋の裏面は、網目構造を有していなくてはならず、構造が複雑になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56―140258号公報
【特許文献2】特開平08―262030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に係る自動分析装置は、開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、テーパー形状を有する貫通孔を備える蓋と、を具備する。
【0008】
本発明の第2局面に係る自動分析装置は、開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、第1径を有する貫通孔が形成された蓋と、前記蓋に接合される構造物であって、前記蓋との接合部分から末端部分にいくに従って前記第1径から前記第1径よりも長い第2径へと変化する径を有する第2の貫通孔が形成されたテーパー部と、を具備する。
【0009】
本発明の第3局面に係る自動分析装置は、開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、貫通孔が形成された蓋と、前記蓋の前記貫通孔の周囲に設けられる吸水部と、を具備する。
【0010】
本発明の第4局面に係る自動分析装置は、試薬ボトルを収容し、開口部を有する試薬庫と、前記試薬ボトル内の試薬を吸引するプローブと、前記開口部の一部を覆うために前記試薬庫に取り付けられる第1の蓋部と、前記開口部の前記一部領域以外の領域を覆うために前記試薬庫に着脱可能に取り付けられ、前記プローブが通過するための貫通孔が形成された第2の蓋部と、を具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止可能な自動分析装置の提供を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る自動分析装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1の蓋が外された試薬庫の内部を示す図。
【図3】実施例1に係る蓋の構造を示す図。
【図4】図3の内壁に設けられた内壁とボトル口との位置関係を立体的に示す図。
【図5】実施例2に係る蓋の構造を示す図。
【図6】実施例3に係る蓋の裏面を示す図。
【図7】図6の7―7断面図。
【図8】図6の他の7―7断面図。
【図9】実施例3に係り、試薬吸引孔を含む一部分のみを着脱可能な構造を有する蓋の斜視図。
【図10】図9の着脱部と、着脱部が外された蓋とを示す図。
【図11】図9の着脱部の裏面を示す図。
【図12】図9の他の着脱部の裏面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、自動分析装置は、筐体の上面にステージ100を有している。
【0015】
ステージ100の中央付近には、反応ディスク10が配置される。反応ディスク10は、反応管12を搬送する円周状の搬送路であり、反応ディスク10には、反応管12が円周状に一列に配列される。反応ディスク10は、特定の反応管12が所定のサンプル吐出位置12Aに位置決めされるように回動する。
【0016】
ステージ100の正面側の辺に沿って、サンプル庫20が配置される。サンプル庫20は、サンプルが収容されたサンプル容器22を一列に並べて保持し、特定のサンプル容器22を搬送路上のサンプル吸引位置22Aに移動させる。
【0017】
反応ディスク10とサンプル庫20との間にはサンプルアーム30が配置されている。サンプルアーム30の先端には、サンプルプローブ32が取り付けられている。サンプルアーム30は、その回転軸回りの回転軌道に沿ってサンプルプローブ32を回転可能させ、所定の位置で上下動する。具体的には、サンプルアーム30は、サンプルプローブ32回転軌道に沿って回転させて、サンプル吸引位置22A上に配置する。そしてサンプルアーム30は、サンプル吸引位置22Aにあるサンプル容器22内へサンプルプローブ32を下降させる。下降されたサンプルプローブ32は、サンプル容器22内のサンプルを所定量だけ吸引する。サンプルプローブ32がサンプルを吸引し終わると、サンプルアーム30は、サンプルプローブ32を上昇させる。サンプルプローブ32を上昇し終わると、サンプルアーム30は、サンプルプローブ32を回転軌道に沿って回転させ、反応ディスク10上のサンプル吐出位置12Aへ配置する。その後、サンプルプローブ32は、サンプル吐出位置12Aに配置された反応管12に、サンプルを所定量だけ吐出する。
【0018】
反応ディスク10の近傍には、試薬庫40が配置される。試薬庫40は、円筒形状を有する容器であり、開口部を有している。試薬庫40には、開口部を覆うための蓋1が開閉可能又は着脱可能に取り付けられている。蓋1は、後述する第1試薬プローブ52や第2試薬プローブ62が試薬庫40内部へ侵入するための複数の貫通孔2(内側の第1試薬吸引孔2A、外側の第1試薬吸引孔2B、内側の第2試薬吸引孔2C、外側の第2試薬吸引孔2D)を備えている。
【0019】
図2は、蓋1が外された試薬庫40の内部を上から眺めた図である。図2に示すように、試薬庫40は、同心円状に配置され、互いに独立して回転軸ZA回りに回転可能な内側ディスク42と外側ディスク44とを保持する。内側ディスク42と外側ディスク44とのそれぞれには、複数の試薬ラック46(46A、46B)が着脱可能に配置されている。試薬ラック46は、複数の試薬ボトル48(48A、48B)を着脱可能に保持する。各試薬ボトル48は、サンプルの各測定項目に選択的に反応する第1試薬、又は第1試薬に対応する第2試薬を収容する。試薬ボトル48は、内容量に応じた形状を有している。なお典型的には、試薬ボトル48は、円形の試薬庫40にできるだけ多く収容できるように、台形形状を有している。図2においては、代表的に用いられている2種類の試薬ボトル48A、48Bが示されている。例えば、試薬ボトル48Aには第1試薬が充填され、試薬ボトル48Bには第2試薬が充填されている。試薬ラック48は、同一形状の試薬ボトル48のみを保持可能である。例えば、試薬ラック46Aは試薬ボトル48Aを、試薬ラック46Bは試薬ボトル48Bを保持する。
【0020】
各試薬ボトル48には、後述する試薬プローブ52や62が試薬ボトル48内へ進入するための開口部48a(以下、ボトル口と呼ぶことにする)が設けられている。各試薬ボトル48は、ボトル口48aが円周状に配列されるように試薬庫40に配置される。
【0021】
試薬庫40は、内側ディスク42を回転させて、内側ディスク44上の特定の第1試薬ボトル48Aのボトル口48aを内側の第1試薬吸引孔2Aの真下に位置させる。同様に試薬庫40は、外側ディスク44を回転させて、外側ディスク44上の特定の第1試薬ボトル48Aのボトル口48aを外側の第1試薬吸引孔2Bの真下に位置させる。また、試薬庫40は、内側ディスク42を回転させて、内側ディスク42上の特定の第2試薬ボトル48Bのボトル口48aを内側の第2試薬吸引孔2Cの真下に位置させる。同様に試薬庫40は、外側ディスク44を回転させて、外側ディスク44上の特定の第2試薬ボトル48Bのボトル口48aを外側の第2試薬吸引孔2Dの真下に位置させる。
【0022】
試薬の劣化を防止するために、試薬庫40は、試薬ボトル48を保冷するための保冷機能を有している。試薬庫40内が保冷されることにより、試薬庫40内部と外部との温度差により、蓋1の試薬吸引孔2に面する内壁に結露が発生しやすい。結露により、蓋1の内壁に水滴が発生する。発生された水滴は、重力により内壁を伝って試薬庫40の内部へ落下する。本実施形態に係る蓋1には、結露により発生された水滴がボトル口48aを通じて試薬ボトル48内への進入を防止するための構造を有している。この構造の詳細については、後述する。
【0023】
図1に示すように、反応ディスク10の近傍には第1試薬アーム50と第2試薬アーム60とが配置される。第1試薬アーム50の先端には第1試薬プローブ52が、第2試薬アーム60の先端には第2試薬プローブ62が取り付けられている。
【0024】
第1試薬アーム50は、第1試薬プローブ52を回転軌道に沿って回転させ、試薬庫40上の第1試薬吸引位置2A又は2Bに配置する。次に第1試薬アーム50は、第1試薬プローブ52を下降させ、内側の第1試薬吸引位置2Aに配置された第1試薬ボトル48A内へ、又は外側の第1試薬吸引位置2Bに配置された第1試薬ボトル48A内へ各ボトル口48aを介して進入させる。第1試薬ボトル48A内へ進入された第1試薬プローブ52は、第1試薬を所定量だけ吸引する。第1試薬プローブ52が第1試薬を吸引し終わると、第1試薬アーム50は、第1試薬プローブ52を上昇させる。第1試薬プローブ52を上昇させ終わると、第1試薬アーム50は、第1試薬プローブ52を回転軌道に沿って回転させ、反応ディスク10上の第1試薬吐出位置12Bへ配置する。その後、第1試薬プローブ52は、第1試薬吐出位置12Bに配置された反応管12に第1試薬を所定量だけ吐出する。
【0025】
同様に第2試薬アーム60は、第2試薬プローブ62を回転軌道に沿って回転させ、試薬庫40上の第2試薬吸引位置2C又は2Dに配置する。次に第2試薬アーム60は、第2試薬プローブ62を下降させ、内側の第2試薬吸引位置2Cに配置された第2試薬ボトル48B内へ、又は外側の第2試薬吸引位置2Dに配置された第2試薬ボトル48B内へ各ボトル口48aを介して進入させる。第2試薬ボトル48B内へ進入された第2試薬プローブ62は、第2試薬を所定量だけ吸引する。第2試薬プローブ62が第2試薬を吸引し終わると、第2試薬アーム60は、第2試薬プローブ62を上昇させる。第2試薬プローブ62を上昇させ終わると、第2試薬アーム60は、第2試薬プローブ62を回転軌道に沿って回転させ、反応ディスク10上の第2試薬吐出位置12Cへ配置する。その後、第2試薬プローブ62は、第2試薬吐出位置12Cに配置された反応管12に第2試薬を所定量だけ吐出する。
【0026】
反応ディスク10の近傍には、撹拌部70が配置される。撹拌部70は撹拌子を備える。撹拌子は、反応ディスク10上の撹拌位置に配置された反応管12内のサンプルと第1試薬、又はサンプルと第1試薬と第2試薬とを撹拌し、混合液を生成する。
【0027】
また、ステージ100の内部には、測光部80が設けられている。測光部80は、測光中、発光体から連続的に光を発生させ、反応ディスク10の測光位置(図示せず)に光を照射し続けている。反応管12は、測光中、測光位置に照射されている光を横切るように反応ディスク10により回動されている。測光部80は、反応管12内の混合液を透過した光を検出し、検出された光の光量を測定する。
【0028】
また反応ディスク10の近傍には、洗浄部90が配置されている。洗浄部90は、複数本の洗浄ノズルと乾燥ノズルとを備えている。洗浄部90は、反応ディスク10の洗浄位置にある反応管12を洗浄ノズルにより洗浄し、乾燥ノズルにより乾燥する。
【0029】
以下、本実施形態に係る自動分析装置に特徴的な蓋1について以下の実施例1〜実施例3において詳細に説明する。なお、上記構成に依れば蓋1は、内側の第1試薬吸引孔2Aと、外側の第1試薬吸引孔2Bと、内側の第2試薬吸引孔2Cと、外側の第2試薬吸引孔2Dとを備えている。しかしながら、以下の説明を簡潔に行なうため、特に区別する必要のない場合、これら4つの試薬吸引孔2A、2B、2C、2Dを単に試薬吸引孔2と呼ぶことにする。また、蓋1の両面のうち、試薬庫40の内部に面する面を裏面、試薬庫40の外部に面する面を表面と呼ぶことにする。
【実施例1】
【0030】
図3は、実施例1に係る蓋1の構造を示す図であり、試薬吸引孔2を試薬庫40の径方向に沿って切断する断面図である。なお、試薬庫40の内側ディスク42又は外側ディスク44の回転方向は、紙面の手前から奥、又は奥から手前方向である。蓋1は、第1試薬プローブ52や第2試薬プローブ62が通過するための貫通孔(試薬吸引孔)2を有する。蓋1は、断熱材で形成された骨格部3と、骨格部3の表面を被覆する樹脂性の被覆部4とを備える。試薬吸引孔2に面する蓋1の内壁5は、外気に接するため結露が発生しやすい。蓋1は、結露により発生される水滴が、ボトル口48aを通って試薬ボトル48内へ落下することを防止するための特徴的な構造を有している。
【0031】
水滴が試薬ボトル48内へ落下することを防止するために、試薬吸引孔2(換言すれば、内壁5)は、テーパー形状を有している。すなわち、蓋1の表側から裏側にかけて径が大きくなるように試薬吸引孔2は、蓋1に形成されている。蓋1の表側の試薬吸引孔2の径r1は、ボトル口48aの径r1と略同一である。蓋1の裏側の試薬吸引孔2の径r2は、径r1に比して十分大きい。具体的には、径r1は10〜12mm程度に、r2は20mm程度に設計される。
【0032】
試薬吸引孔2の内壁5に水滴が発生した場合、発生された水滴は、重力により蓋1の裏側の内壁5の縁6まで導かれ、落下する。この縁6は、試薬吸引孔2がテーパー形状を備えていることにより、ボトル口48aの真上に位置していない。従って試薬庫40の内側ディスク42又は外側ディスク44が回転していない場合、縁6から落下する水滴は、ボトル口48aを通って試薬ボトル48内へ入ることはなく、試薬ボトル48の外部等、試薬庫40の内部に落下する。
【0033】
しかしながら、試薬庫40の内側ディスク42又は外側ディスク44が回転している場合、縁6から落下した水滴が回転している試薬ボトル48に入ってしまう可能性がある。これを防止するため蓋1には、水滴を寄せ集めるための内壁5の最下点(以下、滴下点と呼ぶことにする)が設けられる。
【0034】
図4は、蓋1の内壁5に設けられた滴下点7とボトル口48aとの位置関係を立体的に示す図である。図4に示すように、蓋1の裏面の試薬吸引孔2に隣接する位置には、隆起部分が形成されている。この隆起部分の先端が滴下点7となる。この滴下点7は、ボトル口48aの回転軌道T上の真上に位置しない箇所に設けられる。例えば、試薬庫40の径方向上にある内壁5の2箇所に設けられる。また、滴下点7間部分は、緩やかな曲線状に形成される。これにより、内壁5に発生された水滴Wは、重力により滴下点7に導かれる。
【0035】
この緩やかな曲線上の縁の頂点8からも水滴が落下する場合がある。従って、頂点8は、ボトル口48aの回転軌道T上の真上に位置しない箇所に設けられるとよい。
【0036】
上記構成により、試薬吸引孔に面する蓋の内壁は、テーパー形状を有している。この内壁に発生された水滴は、重力により内壁を伝い、滴下点へ寄せ集められる。上述したように、滴下点は、ボトル口の回転軌道上の真上にない。従って、滴下点から落下する水滴が試薬ボトル内へ入ることはない。
【0037】
特許文献1に記載の技術は、水滴が試薬ボトルへ落下することを防止するために、試薬庫の蓋に電熱線を取り付けていた。このような特許文献1に記載の技術を実現するためには、高価で複雑な構造が必要である。しかし実施例1に係る蓋1は、試薬吸引孔2をテーパー形状に形成することのみで、水滴が試薬ボトル48へ落下することを防止できる。また、特許文献2に記載の技術は、蓋の裏面全体を傾斜させるため、傾斜分だけ蓋が高くなっていた。従って、特許文献2に記載の技術は、自動分析装置の省スペース化の要請に適うものではない。しかし実施例1に係る蓋1は、試薬吸引孔2の体積が大きくなるのみで、蓋1の容積は変化しない。
【0038】
かくして実施例1に係る自動分析装置は、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止できる。
【実施例2】
【0039】
実施例2に係る試薬庫40の蓋も、試薬吸引孔2に面する蓋の内壁に発生された水滴を試薬ボトル48に落下させないための構造を有している。
【0040】
図5は、実施例2に係る蓋200の構造を示す図である。図5に示すように、蓋200は、深さに応じて径の変化しない貫通孔(試薬吸引孔)2を有している。試薬吸引孔2を塞がないように、テーパー形状を有する貫通孔が形成された構造物201が蓋200の裏面に接合されている。以下、この構造物をテーパー部201と呼ぶことにする。
【0041】
テーパー部201の貫通孔に面する内壁203は、実施例1の蓋1の内壁5と略同一の形状を有している。具体的には、内壁203(換言すれば、テーパー部201の貫通孔))は、蓋200に接合される接合部分側から接合部分側とは反対側の末端部分側にかけて、径が大きくなるように形成されている。接合部分側の貫通孔の径r1は、試薬吸引孔2の径と略同一である。このように貫通孔と試薬吸引孔2との位置が一致するように、テーパー部201は蓋200の裏面に接合されている。従って、テーパー部201の内壁203と蓋200の内壁5とは、段差がなく、滑らかに接合される。また、貫通孔203の径r1は、ボトル口48aの径r1とも略同一である。末端部分側の貫通孔の径r2は、径r1に比して十分大きい。具体的には、径r1は10〜12mm程度に、r2は20mm程度に設計される。テーパー部201の材料は、特に限定されない。例えば、蓋200と同じ材料を用いて形成される。また、内壁203には、滴下点205が設けられてもよい。この滴下点205は、実施例1の滴下点7と同様に、ボトル口48aの回転軌道上の真上にない。なお、テーパー部201の高さは、ボトル口48aにぶつからない高さを有するように設計されていることを明記しておく。
【0042】
蓋200とテーパー部201とは、個別に形成される。例えば、蓋200とテーパー部201とは、金属等の鋳型を用いた型抜成形によりそれぞれ形成される。
【0043】
上記構成により、蓋200には、テーパー形状を有する構造物であるテーパー部201が接合されている。蓋200やテーパー部201の内壁に発生された水滴は、重力によりこれら内壁を伝い、テーパー部201に設けられた滴下点205へ寄せ集められる。上述したように、滴下点205は、ボトル口48aの回転軌道上の真上にない。従って、滴下点205から落下する水滴が試薬ボトル48内へ入ることはない。また上述のように、実施例2に係る蓋200には、水滴の試薬ボトル48への落下防止に関する工夫が施されていない。テーパー形状を有する構造物であるテーパー部201を蓋200に接合するのみで、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を防止している。
【0044】
かくして実施例2に係る自動分析装置は、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止できる。
【0045】
なお上記構成においては、テーパー部201は、蓋200とは別に製造されるとした。しかしながら、テーパー部は、蓋と一体に形成されてもよい。この場合、蓋とテーパー部とは、例えば、金属製等の1枚の鋳型を用いた型抜成形により一体成形される。
【実施例3】
【0046】
実施例3に係る試薬庫40の蓋も、試薬吸引孔2に面する蓋の内壁に発生された水滴を試薬ボトル48に落下させないための構造を有している。
【0047】
図6は、実施例3に係る蓋300の裏面を示す図である。図7は、図6の7―7断面図である。すなわち、図7は、蓋300の試薬吸引孔2Aを試薬庫の径方向に沿って切断する断面図である。図6と図7とに示すように蓋300の裏面における試薬吸引孔2の周囲には、吸水シート301が貼り付けられている。吸水シート301は、例えば、吸水性のポリマー樹脂等の吸水部(図示せず)と、吸水剤を内包する布地等の包装部(図示せず)とを含んでいる。吸水部の種類は、特に限定されず、吸水機能があれば何でもよい。吸水シートを蓋へ貼り付ける方法は、両面テープや、接着剤での接着等による一般的な方法が採用される。包装部は、通気性が良い構造、例えば、網目構造を有しているとよい。この場合、吸水部により吸収された水分は、吸水部の全体に分散される。吸水部内の水分は、時間経過とともに蒸発し、包装部をして試薬庫内へ発散する。従って、吸水シート301を半永久的に使用することができる。なお、通常、試薬庫40には空気ダクト(図示せず)が設けられており、蒸発した水分は、空気ダクトを介して自動分析装置の筐体外へ放出される。従って、吸水シート301から蒸発した水分により再び結露が発生することはない。
【0048】
図6や図7に示すように、吸水シート301は、第1試薬プローブ52や第2試薬プローブ62が通るための貫通孔302を備える。貫通孔302の径r4は、試薬吸引孔2の径r1に比して小さく設計される。貫通孔302と試薬吸引孔2とが重なるように、吸水シート301は蓋300に貼り付けられる。これにより、内壁5に発生される水滴を確実に吸水することができる。また、径r4は、第1試薬プローブ52や第2試薬プローブ62と吸水シート301とが接触しない程度に大きく設計される。吸水シート301が試薬吸引孔2に接触することを防止するための他の方法として、図8に示すように、蓋の内壁にテーパーを設けても良い。
【0049】
図6に示すように、吸水シート301は、試薬吸引孔2の数と同数だけ用意される。なお、吸水シート301は、隣合う吸水シート301に重ならない程度の大きさや形状に形成される。例えば、吸水シートは、円形形状を有し、吸水シートの半径は、隣合う試薬吸引孔2の中心間間隔の半分以下に設計される。なお、蓋300に張り付けられる各吸水シート301の大きさや形状は、同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
特許文献2に記載の技術では、試薬庫の蓋の裏面を網目構造にし、その中に吸湿材を挿入していた。そのため特許文献2に係る試薬庫の蓋は、複雑な構造を有していた。一方、実施例3に係る蓋300は、上記の様に通常の構造を有している。そして蓋300の裏面であって、水滴が集まりやすい試薬吸引孔の周囲に吸水シートが貼り付けられている。上記構成により、蓋300の試薬貫通孔2に面する内壁に発生された水滴は、重力により内壁を伝って吸水シート301へ導かれ、吸水シート301により吸収される。このように実施例3は、簡便な構造で、結露により蓋300の内面に発生される水滴の試薬ボトル48内への落下を防止している。
【0051】
吸水シート301を半永久的に使用できない場合(例えば、吸水シート301の粘着性が弱くなった場合や、水分の蒸発が水滴の吸収に追いつかない場合)、メンテナンス時等において吸水シート301を交換する必要がある。上述のように蓋300は、開閉可能又は着脱可能に試薬庫40に取り付けられている。従って吸水シート301を交換する際、ユーザは、蓋300を開け、又は取り外すことによって交換作業を行なうことができる。
【0052】
上記構成においては、吸水シート301は、試薬吸引孔2の数と同数用意され、試薬吸引孔2の周囲にのみ貼り付けられるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、試薬吸引孔2の数と同数の貫通孔302を有する一枚の吸水シートが、試薬吸引孔2を塞がないように蓋の裏面に貼られても良い。この場合、吸水シートが試薬吸引孔を完全に塞がないように、貫通孔間の相対的な位置は、試薬吸引孔間の相対的な位置に応じて位置決めされている。吸水シートが一枚の場合、複数枚の場合に比して水滴を吸収できる量が多い。また、吸水シートが一枚の場合、複数枚の場合に比して交換の手間が少ない。
【0053】
試薬ボトル48内の試薬が蒸発し、吸水シートに吸収される場合がある。従って、上記のように複数枚の吸水シートを貼り付ける方が、一枚の吸水シートを貼り付ける場合に比して衛生的に良い。
【0054】
上記のように、吸水シート301を交換する際、蓋300を外さなければならない。また、吸水シート301の交換以外にも、第1試薬プローブ52や第2試薬プローブ62の位置調整等、メンテナンスのために蓋300を外なければならないことがある。しかし、蓋300が容易にはずせない場合や、位置調整を必要とする構造を有する場合であると、吸水シート301の交換に手間がかかってしまう。また蓋300を開けると、試薬庫40全体が外気に曝されてしまい、試薬が汚染される危険性がある。そこで、試薬吸引孔2を含む蓋300の一部分のみを着脱可能にすると良い。
【0055】
図9は、試薬吸引孔2を含む一部分のみを着脱可能な構造を有する蓋400の斜視図である。図9に示すように、蓋400は、試薬庫40に対して固定して装着される固定部410と、固定部410に対してスライド可能に設けられた可動部420と、固定部410に対して着脱可能に設けられた着脱部430とを備える。
【0056】
固定部410と可動部420とは、試薬庫40の開口部の一部を覆っている。固定部410は、可動部420をスライド方向にスライド可能に支持する支持部412を有している。支持部412は、蓋400の略中央に位置している。スライド方向は、蓋400の中心軸ZB周りの方向である。可動部420は、ユーザによりスイッチ414等が押されている間、スライド開閉用モータ416によりスライド方向にスライドされる。可動部420の表面には、取っ手422が設けられている。ユーザは、この取っ手422を把持してスライド方向に力を加えることにより、可動部420をスライド方向に手動でスライドさせることもできる。ユーザは、自動又は手動で可動部420を開けることにより、試薬庫40内部の試薬ボトル48を交換する。
【0057】
着脱部430は、試薬庫40の開口部のうち、固定部410と可動部420とが覆う領域以外の領域を覆う。着脱部430には、第1試薬プローブ52の回転軌道に沿う第1溝432と第2試薬プローブ62の回転軌道に沿う第2溝434とが形成されている。第1溝432には、内側の第1試薬吸引孔2Aと外側の第1試薬吸引孔2Bとが形成されている。また、第2溝434には、内側の第2試薬吸引孔4Cと外側の第2試薬吸引孔4Dとが形成されている。第1溝432と第2溝434との間には、着脱部430を着脱するために利用される取っ手436が設けられている。
【0058】
図10は、着脱部430と、着脱部430が外された蓋400とを示す図である。図10に示すように、着脱部430には係合爪438が、固定部410には係合爪438に係合される掛け金414が設けられている。また、着脱部430には螺子450が通過するための貫通孔440が形成されている。また、固定部410には螺子450に対応する螺子穴416が形成されている。係合爪438を掛け金414に係合し、又、螺子450を螺子穴416に螺合することにより着脱部430を固定部410に固定させることができる。
【0059】
着脱部430の着脱を検知するために、着脱部430の突起部分442に磁性体が埋め込まれている。また、この磁性体からの磁気を検出する磁気センサ460がステージ100の試薬庫40近傍に設けられている。突起部分442の磁性体と磁気センサ460とは、着脱部430が固定部410に取り付けられている場合に互いに近接する位置に設けられる。着脱部430が固定部410に取り付けられている間、磁気センサ460は、磁性体からの磁気を検出している。磁気を検出している間、磁気センサ460は、図示しないコントローラに動作信号を出力する。この動作信号を受けている間、コントローラは、自動分析装置を動作可能モードに設定する。動作可能モードにおいては、自動分析装置の動作が維持される。一方、着脱部430が固定部410から外されている場合、磁気センサ460が磁性体からの磁気を検出できない。磁気を検出しない間、磁気センサ460は、図示しないコントローラに停止信号を出力する。この停止信号を受けている間、コントローラは、自動分析装置を動作停止モードに設定する。こ動作停止モードにおいては、自動分析装置の動作が停止される。
【0060】
図11は、着脱部430の裏面を示す図である。図11に示すように、着脱部430に設けられた試薬吸引孔2A、2B、2C、2Dの周囲には、吸水シート301がそれぞれ貼り付けられている。なお、図12に示すように、試薬吸引孔の数と同数の貫通孔を有する一枚の吸水シート301´が、試薬吸引孔2A、2B、2C、2Dを完全に塞がないように着脱部430の裏面に貼り付けられていても良い。
【0061】
上記構成により、着脱部430を蓋400に設けることで、試薬吸引孔2付近のみを個別に着脱することできる。従って、吸水シート301、301´の交換等のメンテナンスを容易に行なうことができる。
【0062】
かくして実施例3に係る自動分析装置は、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止できる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上本発明によれば、結露により試薬庫の蓋に発生される水滴の試薬ボトル内への落下を簡便な構造で防止できる自動分析装置の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…蓋、2…試薬吸引孔、2A…内側の第1試薬吸引孔、2B…外側の第1試薬吸引孔、2C…内側の第2試薬吸引孔、2D…外側の第2試薬吸引孔、10…反応ディスク、12…反応管、12A…サンプル吐出位置、12B…第1試薬吐出位置、12C…第2試薬吐出位置、20…サンプル庫、22…サンプル容器、22A…サンプル吸引位置、30…サンプルアーム、32…サンプルプローブ、40…試薬庫、48…試薬ボトル、48a…ボトル口、50…第1試薬アーム、52…第1試薬プローブ、60…第2試薬アーム、62…第2試薬プローブ、70…撹拌部、80…測光部、90…洗浄部、100…ステージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、
前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、テーパー形状を有する貫通孔を備える蓋と、
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記蓋は、前記試薬庫の外部に面する表面と前記試薬庫の内部に面する裏面とを有し、
前記貫通孔の径は、前記表面から前記裏面にいくに従って長い、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、
前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、第1径を有する貫通孔が形成された蓋と、
前記蓋に接合される構造物であって、前記蓋との接合部分から末端部分にいくに従って前記第1径から前記第1径よりも長い第2径へと変化する径を有する第2の貫通孔が形成されたテーパー部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項4】
開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、
前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、第1の貫通孔が形成された蓋と、
前記蓋の前記貫通孔の周囲に設けられる吸水部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項5】
前記吸水部は、前記第1の貫通孔の径よりも短い径を有する第2の貫通孔を備え、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが重なるように前記蓋に設けられる、請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
試薬ボトルを収容し、開口部を有する試薬庫と、
前記試薬ボトル内の試薬を吸引するプローブと、
前記開口部の一部領域を覆うために前記試薬庫に取り付けられる第1の蓋部と、
前記開口部の前記一部領域以外の領域を覆うために前記試薬庫に着脱可能に取り付けられ、前記プローブが通過するための貫通孔が形成された第2の蓋部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項1】
開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、
前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、テーパー形状を有する貫通孔を備える蓋と、
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記蓋は、前記試薬庫の外部に面する表面と前記試薬庫の内部に面する裏面とを有し、
前記貫通孔の径は、前記表面から前記裏面にいくに従って長い、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、
前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、第1径を有する貫通孔が形成された蓋と、
前記蓋に接合される構造物であって、前記蓋との接合部分から末端部分にいくに従って前記第1径から前記第1径よりも長い第2径へと変化する径を有する第2の貫通孔が形成されたテーパー部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項4】
開口部を有し、試薬ボトルを収容可能な試薬庫と、
前記開口部を覆うために前記試薬庫に取り付けられ、第1の貫通孔が形成された蓋と、
前記蓋の前記貫通孔の周囲に設けられる吸水部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項5】
前記吸水部は、前記第1の貫通孔の径よりも短い径を有する第2の貫通孔を備え、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが重なるように前記蓋に設けられる、請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
試薬ボトルを収容し、開口部を有する試薬庫と、
前記試薬ボトル内の試薬を吸引するプローブと、
前記開口部の一部領域を覆うために前記試薬庫に取り付けられる第1の蓋部と、
前記開口部の前記一部領域以外の領域を覆うために前記試薬庫に着脱可能に取り付けられ、前記プローブが通過するための貫通孔が形成された第2の蓋部と、
を具備する自動分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−230560(P2010−230560A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79767(P2009−79767)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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