説明

自動分析装置

【課題】小型化できる自動分析装置を提供する。
【解決手段】第1及び第2試薬容器13,14を収納するための試薬ケース40及びこの試薬ケース40を覆う試薬カバー41から成る試薬庫17と、試薬庫17内に配置された第1及び第2試薬容器13,14を混在可能に保持する第1及び第2試薬ラック15,16と、第1及び第2試薬ラック15,16を回動駆動する第1及び第2移動機構511,512と、第1及び第2試薬ラック15,16に保持された第1及び第2試薬容器13,14内の第1及び第2試薬を吸引して反応容器19に吐出する分注を行う第1及び第2試薬分注プローブ23,27とを備え、試薬カバー41は第1及び第2試薬ラックに保持された第1及び第2試薬容器内の第1及び第2試薬を吸引するために第1及び第2試薬分注プローブ23,27が進入する4つの第1及び第2開口部43乃至46を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に含まれている成分を分析する自動分析装置に係り、特に、ヒトの血液や尿などの体液中に含まれる成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、被検体から採取された被検試料と各検査項目の試薬との混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、分光光度計や比濁計等の測光部で光学的に測定することにより、被検試料中の様々な検査項目成分の濃度や酵素の活性等で表される分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置では、各検査項目の試薬を収容した試薬容器を試薬庫に収納してから、検査に応じて選択された検査項目の分析を行う。そして、サンプル分注プローブにより検査対象の被検試料を収容した試料容器から被検試料を吸引して反応容器に吐出する。また、試薬分注プローブにより試薬庫内の試薬容器から試薬を吸引して反応容器に吐出する。そして、反応容器に吐出された被検試料及び試薬の混合液を測光部で測定する。
【0004】
ところで、分析可能な検査項目に応じた数の1試薬系及び2試薬系における第1試薬を収容した第1試薬容器が収納される第1試薬庫、及び2試薬系の第1試薬と対を成す第2試薬を収容した第2試薬容器が収納される第2試薬庫を備えた自動分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この第1試薬庫内に第1試薬容器を保持する第1試薬ラックが配置され、第1試薬容器内の第1試薬を第1試薬分注プローブで吸引可能な位置へ第1試薬ラックを移動駆動する機構を備えている。また、第2試薬庫内に第2試薬容器を保持する第2試薬ラックが配置され、第2試薬容器内の第2試薬を第2試薬分注プローブで吸引可能な位置へ第2試薬ラックを移動駆動する機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−145125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、分析可能な検査項目の種類の増加に伴い、多数の第1及び第2試薬容器を収納するための第1及び第2試薬庫を必要とするため、自動分析装置が大型化してしまう問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、小型化できる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記試薬の内の1試薬系及び2試薬系の第1試薬が収容された第1試薬容器及び前記2試薬系の第1試薬と対を成す第2試薬が収容された第2試薬容器を混在可能に保持する試薬ラックが配置された試薬庫と、前記試薬ラックを回動駆動する機構と、前記試薬ラックに保持された前記第1試薬容器内の第1試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブと、前記試薬ラックに保持された前記第2試薬容器内の第2試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブとを備え、前記試薬庫は、前記第1試薬容器及び前記第2試薬容器を収納するための試薬ケースと、この試薬ケースを覆う前記試薬ラックに保持された前記第1及び第2試薬容器内の第1及び第2試薬を吸引するために前記第1及び第2試薬分注プローブが進入する第1及び第2開口部を設けた試薬カバーとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、試薬庫内に第1及び第2試薬容器を混在可能に保持する試薬ラックを回動可能に配置することにより、大型化を抑制して小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る分析部の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の実施例に係る第1及び第2試薬容器の外観を示す図。
【図4】本発明の実施例に係る分析部の試薬庫、第1及び第2試薬ラック、反応ディスク、及び第1及び第2試薬分注アームの配置を示す平面図。
【図5】図4に示した試薬庫のA−A線矢視断面図。
【図6】本発明の実施例に係る表示部に表示された試薬情報設定画面の一例を示す図。
【図7】本発明の実施例に係る表示部に表示された分析パラメータ設定画面の一例を示す図。
【図8】本発明の実施例に係る表示部に表示された試薬情報設定画面の一例を示す図。
【図9】本発明の実施例に係る試薬分注工程の構成を示す図。
【図10】本発明の実施例に係る試薬分注工程の第1試薬分注工程を示すフローチャート。
【図11】本発明の実施例に係る試薬分注工程の第2試薬分注工程を示すフローチャート。
【図12】本発明の実施例に係る第1及び第2試薬分注工程の各ステップの動作のタイミングを示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0013】
以下、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図12を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料と各検査項目に該当する試薬との混合液を測定して標準データや被検データを生成する分析部10と、分析部10の測定に関る各分析ユニットの駆動及び制御を行う分析制御部50とを備えている。
【0015】
また、自動分析装置100で分析可能な検査項目の試薬を識別する試薬情報、及びこの試薬情報に関連する分析を可能にするための測定に必要な各試料の量や各試薬の量等の分析パラメータの保存を行う分析情報部55と、分析部10で生成された標準データや被検データを処理して検量データや分析データの生成を行うデータ処理部60とを備えている。
【0016】
更に、データ処理部60で生成された検量データや分析データを印刷出力や表示出力する出力部70と、各種コマンド信号の入力等を行う操作部80と、分析制御部50、分析情報部55、データ処理部60、及び出力部70を統括して制御するシステム制御部90とを備えている。
【0017】
図2は、分析部10の構成を示した斜視図である。この分析部10は、標準試料や被検試料等の各試料を収容する試料容器11と、この試料容器11を移動可能に保持するサンプルラック12と、各検査項目に該当する1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する第1試薬容器13と、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する第2試薬容器14とを備えている。
【0018】
また、第1及び第2試薬容器13,14を収納する試薬庫17と、この試薬庫17に収納された第1及び第2試薬容器13,14を混在可能に保持する第1及び第2試薬ラック15,16と、この第1及び第2試薬ラック15,16に保持された第1及び第2試薬容器13,14内の第1及び第2試薬を識別する第1及び第2試薬情報を読み取るリーダ18と、円周上に配置された複数の反応容器19を回転可能に保持する反応ディスク20とを備えている。
【0019】
このように、第1及び第2試薬容器13,14の収納が可能な試薬庫17を設けることにより、分析部10の小型化を図ることができる。また、部品数を減らすことができるため、コストを低減して信頼性の向上を図ることができる。
【0020】
また、サンプルラック12に保持された試料容器11内の試料を吸引して反応容器19内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ21と、このサンプル分注プローブ21を回動及び上下移動可能に保持するサンプル分注アーム22と、第1及び第2試薬ラック15,16に保持された第1試薬容器13内の第1試薬を吸引して各試料が吐出された反応容器19内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ23とを備えている。
【0021】
また、第1試薬分注プローブ23を回動及び上下移動可能に保持する第1試薬分注アーム24と、反応容器19内に吐出された各試料と第1試薬の混合液を撹拌する第1撹拌子25と、この第1撹拌子25を回動及び上下移動可能に保持する第1撹拌アーム26と、第1及び第2試薬ラック15,16に保持された第2試薬容器14内の第2試薬を吸引して各試料及び第1試薬が吐出された反応容器19内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ27とを備えている。
【0022】
また、この第2試薬分注プローブ27を回動及び上下移動可能に保持する第2試薬分注アーム28と、反応容器19内の各試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する第2撹拌子29と、第2撹拌子29を回動及び上下移動可能に保持する第2撹拌アーム30と、反応容器19内の混合液に光を照射して光学的に測定する測光部31と、測光部31で測定を終了した反応容器19内を洗浄する洗浄ユニット32とを備えている。
【0023】
そして、測光部31は、反応容器19に光を照射し、その反応容器19内の標準試料や被検試料を含む混合液を透過した各検査項目の波長光を検出する検出信号に基づいて、例えば吸光度や吸光度の変化量で表される標準データや被検データを生成する。そして、生成した標準データや被検データをデータ処理部60に出力する。
【0024】
図3は、分析部10の試薬庫17に収納される第1及び第2試薬容器13,14の外観を示した図である。この第1及び第2試薬容器13,14は、第1及び第2試薬情報が例えば一次元又は二次元コード表示されたラベル13a,14aを有し、夫々同じ形状及び寸法を成している。
【0025】
そして、1試薬系及び2試薬系の第1の試薬情報には、第1試薬を識別する試薬ID、第1試薬の検査項目名、第1試薬の試薬名等が含まれている。また、2試薬系の第2試薬情報には、第2試薬を識別する試薬ID、第2試薬と対を成す第1試薬の検査項目名と同じ検査項目名、第2試薬の試薬名等が含まれている。
【0026】
図1に示した分析制御部50は、分析部10の各分析ユニットを駆動する機構を有する機構部51、及びこの機構部51の各機構を制御して分析部10の各分析ユニットを分析サイクル毎に所定のタイミングで作動させる制御部52を備えている。
【0027】
機構部51は、分析部10のサンプルラック12を移動する機構、及び第1及び第2試薬ラック15,16を回動駆動して第1及び第2試薬ラック15,16に保持された第1及び第2試薬容器13,14を移動する第1及び第2移動機構511,512を備えている。また、サンプル分注プローブ21に試料の吸引及び吐出を行わせるポンプを駆動する機構、第1試薬分注プローブ23に第1試薬の吸引及び吐出を行わせるポンプを駆動する機構、第2試薬分注プローブ27に第2試薬の吸引及び吐出を行わせるポンプを駆動する機構を備えている。
【0028】
更に、反応ディスク20を回転した後に停止する機構、サンプル分注アーム22、第1試薬分注アーム24、第2試薬分注アーム28、第1撹拌アーム26、及び第2撹拌アーム30を夫々回動及び上下移動する機構、洗浄ユニット32を上下移動する機構等を備えている。
【0029】
制御部52は、機構部51の第1及び第2移動機構511,512を含む各機構を制御する制御回路を備えている。また、分析部10のリーダ18から出力された第1及び第2試薬情報に、この第1及び第2試薬情報を有する第1及び第2試薬容器13,14が保持された第1及び第2試薬ラック15,16の第1及び第2保持位置の情報を追加した第1及び第2試薬情報を分析情報部55に出力する。
【0030】
分析情報部55は、自動分析装置100で分析可能な各検査項目の第1及び第2試薬を識別する第1及び第2試薬設定情報及びこの試薬設定情報で識別される試薬を用いて分析可能にする検査項目の分析パラメータが保存される分析情報記憶部56と、第1及び第2試薬設定情報にこの試薬設定情報に関連する分析パラメータ等を関連付けて分析情報記憶部56に保存する分析情報薬管理部57とを備えている。
【0031】
分析情報管理部57は、操作部80の入力操作に応じてシステム制御部90から供給される各検査項目の第1及び第2試薬設定情報を分析情報記憶部56に保存する。また、各操作部80の入力操作に応じてシステム制御部90から供給される各検査項目の分析パラメータをこの分析パラメータに関連する第1及び第2試薬設定情報に関連付けて分析情報記憶部56に保存する。
【0032】
更に、分析制御部50の制御部52から出力される第1試薬情報を、この第1試薬情報を含む第1試薬設定情報に関連付けて分析情報記憶部56に保存する。また制御部52から出力される第2試薬情報を、この第2試薬情報を含む第2試薬設定情報に関連付けて分析情報記憶部56に保存する。
【0033】
データ処理部60は、分析部10の測光部31から出力された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する演算部61と、演算部61で生成された標準データや分析データを保存するデータ記憶部62とを備えている。
【0034】
演算部61は、測光部31から出力された標準データ及びこの標準データの標準試料に予め設定された標準値から、各検査項目成分の濃度や活性と標準データの関係を表す検量データを生成し、生成した検量データを出力部70に出力すると共にデータ記憶部62に保存する。
【0035】
また、測光部31から出力された吸光度で表される被検データに対応する検査項目の検量データをデータ記憶部62から読み出し、読み出した検量データを用いて測光部31から出力された被検データから濃度値として表される分析データを生成する。また、吸光度変化量で表される被検データに、分析パラメータとして設定された所定の波長における分子吸光係数を含むファクタを乗ずることにより、酵素の活性値として表される分析データを生成する。そして、生成した分析データを出力部70に出力すると共にデータ記憶部62に保存する。
【0036】
データ記憶部62は、ハードディスク等のメモリデバイスを備え、演算部61から出力された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部61から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
【0037】
出力部70は、データ処理部60の演算部61から出力された検量データや分析データを印刷出力する印刷部71及び表示出力する表示部72を備えている。そして、印刷部71は、プリンタなどを備え、演算部61から出力された検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0038】
表示部72は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、演算部61から出力された検量データや分析データを表示する。また、自動分析装置100で検査可能な各検査項目の分析パラメータを設定するための分析パラメータ設定画面、各検査項目に該当する第1及び第2試薬設定情報を設定するための試薬情報設定画面、被検試料毎に被検試料を識別する氏名やID等の識別情報及び検査対象の検査項目を設定するための被検試料情報設定画面等を表示する。
【0039】
操作部80は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、検査項目毎の分析パラメータ、第1及び第2試薬設定情報、被検試料の識別情報及び検査項目等を設定するための入力操作を行う。また、出力部70における表示部72の被検試料情報設定画面で設定された被検試料毎に検査項目を分析するための操作を行う。
【0040】
システム制御部90は、CPU及び記憶回路を備え、操作部80からの操作により入力されたコマンド信号、各検査項目の分析パラメータの情報、第1及び第2試薬設定情報、被検試料の識別情報及び検査項目の情報等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部50、分析情報部55、データ処理部60、及び出力部70を統括してシステム全体を制御する。
【0041】
次に、図1乃至図5を参照して、分析部10における第1及び第2試薬の分注動作の概略及び試薬庫17の構成の詳細を説明する。図4は、分析部10の試薬庫17、第1及び第2試薬ラック15,16、反応ディスク20、及び第1及び第2試薬分注アーム24,28の配置を示す平面図である。図5は、図4に示した試薬庫17のA−A線矢視断面図である。
【0042】
図4において、試薬庫17は、反応ディスク20の近傍に配置される。また、反応ディスク20との間に位置する第1試薬分注アーム24及びこの第1試薬分注アーム24に対向して配置される第2試薬分注アーム28の近傍に配置される。また、第1及び第2試薬ラック15,16は、試薬庫17内に配置される。
【0043】
第1試薬分注アーム24は、各検査項目の分析が行われるとき、回動軸を中心として上停止位置における高さで回動して、各検査項目の第1試薬の分注を行うために第1試薬分注プローブ23を破線で示した円形の第1軌道上を移動する。
【0044】
そして、第1試薬分注プローブ23を第1試薬ラック15又は第2試薬ラック16に保持された第1試薬容器13内の第1試薬を吸引するための第1試薬吸引位置T1又は第1試薬吸引位置T2の一方の第1試薬吸引位置で停止した後、一方の第1試薬吸引位置の下方に停止した第1試薬容器13内の第1試薬の吸引が可能な高さまで下へ移動する。
【0045】
次いで、第1試薬を吸引した第1試薬分注プローブ23を、一方の第1試薬吸引位置まで上へ移動した後、反応容器19内に第1試薬を吐出する位置である第1試薬吐出位置T3へ移動する。そして、第1試薬分注プローブ23により、第1試薬吐出位置T3の下方に停止した反応容器19内へ第1試薬の吐出が行われる。
【0046】
第2試薬分注アーム28は、回動軸を中心として上停止位置における高さで回動して、各検査項目の第2試薬の分注を行うために第2試薬分注プローブ27を破線で示した円形の第2軌道上を移動する。
【0047】
そして、第2試薬分注プローブ27を第1試薬ラック15又は第2試薬ラック16に保持された第2試薬容器14内の第2試薬を吸引するための第2試薬吸引位置T4又は第2試薬吸引位置T5の一方の第2試薬吸引位置で停止した後、一方の第2試薬吸引位置の下方に停止した第2試薬容器14内の第2試薬の吸引が可能な高さまで下へ移動する。
【0048】
次いで、第2試薬を吸引した第2試薬分注プローブ27を一方の第2試薬吸引位置まで上へ移動した後、反応容器19内に第2試薬を吐出する位置である第2試薬吐出位置T6へ移動する。そして、第2試薬分注プローブ27により、第2試薬吐出位置T6の下方に停止した第1試薬を収容する反応容器19内へ、その第1試薬と対を成す第2試薬の吐出が行われる。
【0049】
図5は、図4に示した試薬庫17のA−A線矢視断面図である。試薬庫17は第1及び第2試薬が収容された第1及び第2試薬容器13,14を収納するための上側に開口部を有する試薬ケース40と、この試薬ケース40の開口部を覆う着脱自在の試薬カバー41と、試薬ケース40に収納された第1及び第2試薬容器13,14を保冷する冷却器42を備えている。
【0050】
試薬ケース40内に第1及び第2試薬ラック15,16が回動可能に配置される。第1試薬ラック15は、図4に示すように、試薬ケース40に収納される第1及び第2試薬容器13,14を円周上に混在可能に配列保持する。また、第2試薬ラック16は、第1試薬ラック15の外周に配置され、第1試薬ラック15に第1及び第2試薬容器13,14が配列保持される円周と中心を同じくする同心円の外円周上に、第1及び第2試薬容器13,14を混在可能に配列保持する。そして、第1及び第2試薬ラック15,16は、分析制御部50における機構部51の例えばモータを有する第1及び第2移動機構511,512により、第1及び第2試薬容器13,14の配列方向に夫々独立して回動される。
【0051】
このように、第1及び第2試薬ラック15,16に夫々第1及び第2試薬容器13,14を混在させて配列保持させることができる。これにより、施設毎に検査項目の種類が異なり、検査項目の種類で1試薬系又は2試薬系に定まるため、第1試薬容器を収納する第1試薬庫の収納能力で分析可能な検査項目数が限定される第1及び第2試薬容器を第1及び第2試薬庫に分けて収納する場合よりも、多くの検査項目の試薬容器を収納することが可能となり、試薬庫17に第1及び第2試薬容器13,14を効率よく収納することができる。
【0052】
また、第1試薬容器13を第2試薬庫に収納する作業ミスや第2試薬容器14を第1試薬庫に収納する作業ミスを防ぐことができる。
【0053】
更に、第1及び第2試薬ラック15,16を回動して第1及び第2試薬容器13,14を移動することにより、第1及び第2移動機構511,512の構成を単純化することができる。
【0054】
なお、検査項目の数に応じて、第2試薬ラック16の外周に第1及び第2試薬容器13,14を混在可能に保持する第3試薬ラックを配置するように実施してもよい。この場合、試薬庫17は大きくなるものの、新たに試薬庫を設けるよりも分析部10を小型化することができる。
【0055】
試薬カバー41は、試薬ケース40内への外気の進入により、第1及び第2試薬容器13,14内の第1及び第2試薬が温度上昇して劣化するのを防ぐために設けられている。また、試薬ケース40に収納された第1及び第2試薬容器13,14内の第1及び第2試薬が蒸発して濃縮するのを抑えるために設けられている。
【0056】
そして、第1試薬ラック15に保持された第1試薬容器13内の第1試薬を吸引するために第1試薬分注プローブ23が進入する第1試薬吸引位置T1の下方の位置に設けられた第1開口部43と、第2試薬ラック16に保持された第1試薬容器13内の第1試薬を吸引するために第1試薬分注プローブ23が進入する第1試薬吸引位置T2の下方の位置に設けられた第1開口部44とを有する。このように、2つの第1開口部43,44を設けることにより、第1試薬容器13が第1試薬ラック15又は第2試薬ラック16のいずれに保持された場合でも第1試薬を吸引することができる。
【0057】
また、第1試薬ラック15に保持された第2試薬容器14内の第2試薬を吸引するために第2試薬分注プローブ27が進入する第2試薬吸引位置T4の下方の位置に設けられた第2開口部45と、第2試薬ラック16に保持された第2試薬容器14内の第2試薬を吸引するために第2試薬分注プローブ27が進入する第2試薬吸引位置T5の下方の位置に設けられた第2開口部46とを有する。このように、2つの第2開口部45,46を設けることにより、第2試薬容器14が第1試薬ラック15又は第2試薬ラック16のいずれに保持された場合でも第2試薬を吸引することができる。
【0058】
以下、図1乃至図12を参照して、自動分析装置100の試薬庫17に収納された第1及び第2試薬容器13,14から第1及び第2試薬を吸引して反応容器19に吐出する試薬分注動作の詳細を説明する。図6及び図8は、表示部72に表示された試薬情報設定画面の一例を示す図である。図7は、表示部72に表示された分析パラメータ設定画面の一例を示す図である。図9は、第1及び第2試薬を分注する試薬分注工程の構成を示す図である。図10及び図11は、図9に示した試薬分注工程の詳細を示すフローチャートである。図12は、図10及び図11に示したフローチャートの各ステップにおける動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0059】
自動分析装置100で分析可能な各検査項目の第1及び第2試薬設定情報が分析情報部55の分析情報記憶部56に保存されている。そして、試薬情報設定画面を表示させる操作が操作部80から行われると、分析情報部55の分析情報記憶部56に保存された第1及び第2試薬設定情報を含む試薬情報設定画面が出力部70の表示部72に表示される。
【0060】
図6は、表示部72に表示された試薬情報設定画面の一例を示した図である。この試薬情報設定画面73は、連番である「1」乃至「m」の欄と、各「1」乃至「m」の欄に対応する「項目」、「試薬」、及び「ID」等の欄とにより構成される。
【0061】
「1」の欄に対応する「項目」の欄に検査項目名である例えば「AST」が表示され、「試薬」の欄に「項目」の欄に表示された「AST」における例えば2試薬系の第1試薬の試薬名である「ASTI」が表示されている。また、「ID」の欄に「試薬」の欄に表示された「ASTI」の試薬IDである「1000」が表示されている。
【0062】
「2」の欄に対応する「項目」の欄に「1」の欄の「項目」の欄に表示された検査項目名と同じ「AST」が表示され、「試薬」の欄に「1」の欄の「試薬」の欄に表示された「ASTI」と対を成す第2試薬の試薬名である「ASTII」が表示されている。また、「ID」の欄に「試薬」の欄に表示された「ASTII」の試薬IDである「1001」が表示されている。
【0063】
「3」の欄に対応する「項目」の欄に検査項目名である「TP」が表示され、「試薬」の欄に「項目」の欄に表示された「TP」における例えば1試薬系の第1試薬の試薬名である「TPI」が表示されている。また、「ID」の欄に「試薬」の欄に表示された「TPI」の試薬IDである「1005」が表示されている。
【0064】
次に、分析パラメータの設定を行うために、分析パラメータ設定画面を表示させる操作が操作部80から行われると、表示部72に分析パラメータ設定画面が表示される。
【0065】
図7は、表示部72に表示された分析パラメータ設定画面の一例を示した図である。この分析パラメータ設定画面74は、各分析パラメータを設定するための「項目」及び「試薬」等の欄により構成される。そして、操作部80から各検査項目の分析パラメータを設定するための入力操作が行われると、分析情報管理部57は、システム制御部90から供給される分析パラメータをこの分析パラメータに関連する第1及び第2試薬設定情報に関連付けて分析情報記憶部56に保存する。また、表示部72に設定された分析パラメータが表示される。
【0066】
「項目」の欄に設定された検査項目名が表示される。そして、分析情報記憶部56に保存された第1又は第2試薬設定情報に含まれる検査項目名である例えば「AST」を設定する入力操作が操作部80から行われると、ダイアログボックス741内に「AST」が表示される。
【0067】
「試薬」の欄は、「項目」の欄に表示された検査項目の試薬を設定するための「第1試薬」及び「第2試薬」の欄と、「第1試薬」及び「第2試薬」の欄に設定した試薬を反応容器19内に吐出させる分注量を設定するための「第1試薬量」及び「第2試薬量」の欄とにより構成される。
【0068】
そして、「第1試薬」の欄に、分析情報記憶部56に保存された第1試薬設定情報に含まれる第1試薬の試薬名である「ASTI」を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス742内に「ASTI」が表示される。また、「第2試薬」の欄に、分析情報記憶部56に保存された第2試薬設定情報に含まれる第2試薬の試薬名である「ASTII」を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス743内に「ASTII」が表示される。
【0069】
「第1試薬量」の欄に、「第1試薬」の欄に設定された第1試薬を反応容器19内に吐出させる分注量として例えば150μLを設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス744内に「150」が表示され、「第2試薬量」の欄に、「第2試薬」の欄に表示された第2試薬を反応容器19内に吐出させる分注量として50μLを設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス745内に「50」が表示される。
【0070】
次に、各検査項目の分析に使用する第1及び第2試薬が収容された第1及び第2試薬容器13,14を試薬庫17に収納した後、操作部80から読み取り操作が行われると、試薬庫17の第1及び第2試薬ラック15,16は、試薬庫17に収納された第1及び第2試薬容器13,14を保持した状態で回動する。
【0071】
リーダ18は、第1及び第2試薬ラック15,16の回動中に、第1及び第2試薬ラック15,16に保持された全ての第1及び第2試薬容器13,14に貼付されたラベル13a,14aから第1及び第2試薬情報を読み取って、その第1及び第2試薬情報を制御部52に出力する。
【0072】
制御部52は、リーダ18から出力された第1及び第2試薬情報に、この第1及び第2試薬情報を有する第1及び第2試薬容器13,14が保持された第1及び第2試薬ラック15,16の第1及び第2保持位置の情報を追加した第1及び第2試薬情報を分析情報部55の分析情報管理部57に出力する。分析情報管理部57は、制御部52から出力された第1及び第2試薬情報を、この第1試薬情報を含む第1試薬設定情報に関連付けて分析情報記憶部56に保存する。
【0073】
次いで、試薬庫17に収納した第1及び第2試薬容器13,14を確認するために、試薬情報設定画面を表示させる操作が操作部80から行われると、分析情報記憶部56に保存された第1及び第2試薬設定情報を含む試薬情報設定画面画が表示部72に表示される。
【0074】
図8は、表示部72に表示された試薬情報設定画面の一例を示した図である。この試薬情報設定画面73aが、図6の試薬情報設定画面73と異なる点は、「位置」の欄が追加表示されている点である。
【0075】
「位置」の欄には、「試薬」の欄に表示された「ASTI」の第1試薬容器13が保持された例えば第1試薬ラック15の第1保持位置である「1A1」が表示されている。また、「試薬」の欄に表示された「ASTII」の第2試薬容器14が保持された例えば第2試薬ラック16の第2保持位置である「2A1」が表示されている。更に、「試薬」の欄に表示された「TP」の第1試薬容器13が保持された例えば第1試薬ラック15の第1保持位置である「1A2」が表示されている。
【0076】
次に、表示部72に被検試料情報設定画面を表示させて、被検試料の識別情報及び検査項目等を設定するための入力操作を行なった後、識別情報を設定した被検試料を収容した試料容器11をサンプルラック12に保持させる。そして、操作部80から検査開始の操作が行われると、自動分析装置100は、分析動作を開始する。
【0077】
ここで、図8乃至図12を参照して、自動分析装置100が分析動作中に実行する図7の分析パラメータ設定画面74で設定された検査項目である「AST」の試薬を分注する動作の一例を説明する。「AST」の第1及び第2試薬容器13,14は、第1及び2試薬ラック15,16の図8に示した試薬情報設定画面73aの「位置」の欄に表示された第1及び第2保持位置に保持されている。
【0078】
図9は、第1及び第2試薬を分注する試薬分注工程の構成を示した図である。この試薬分注工程S1は、第1試薬を分注する第1試薬分注工程S10及び第2試薬を分注する第2試薬分注工程S20により構成される。
【0079】
制御部52は、システム制御部90から供給される分析情報記憶部56に保存された各検査項目の分析パラメータ、第1及び第2試薬設定情報、及び被検試料毎に設定された検査対象の検査項目の情報に基づき機構部51の第1及び第2移動機構511,512を含む各機構を制御する。そして、第1及び第2試薬ラック15,16、反応ディスク20、並びに第1及び第2試薬分注アーム24,28等の各分析ユニットを作動させて、試薬分注工程S1を実行する。
【0080】
そして、操作部80から検査開始の操作が行われた後、最初の所定の分析サイクルの間、第1試薬分注工程S10だけが実行される。第1試薬分注工程S10が実行された後、第1試薬分注工程S10で分注された第1試薬を収容する反応容器19が第2試薬吐出位置T6に到達する所定の分析サイクル以降において、第1試薬分注工程S10及び第2試薬分注工程S20、又は第2試薬分注工程S20が実行される。
【0081】
図10は、試薬分注工程S1の第1試薬分注工程S10を示したフローチャートである。この第1試薬分注工程S10は、ステップS11乃至ステップS18により構成される。
【0082】
第1試薬ラック15は、回動して第1試薬吸引位置T1の下方まで第1保持位置「1A1」の第1試薬容器13を移動する(ステップS11)。
【0083】
第1試薬分注アーム24は、ホームポジションから第1試薬吸引位置T1まで第1試薬分注プローブ23を移動する(ステップS12)。
【0084】
ステップS11及びステップS12の後に、第1試薬分注アーム24は、第1試薬吸引位置T1から下方の第1試薬容器13内の第1試薬の吸引が可能な高さまで第1試薬分注プローブ23を移動する(ステップS13)。このとき、第1試薬分注プローブ23は、試薬カバー41の第1開口部43から進入して第1試薬容器13内に入る。
【0085】
ステップS13の後に、第1試薬分注プローブ23は、第1試薬容器13内の第1試薬を吸引する(ステップS14)。
【0086】
ステップS14の後に、第1試薬分注アーム24は、第1試薬の吸引が可能な高さから第1試薬吸引位置T1まで第1試薬分注プローブ23を移動する(ステップS15)。
【0087】
ステップS15の後に、第1試薬分注アーム24は、第1試薬吸引位置T1から第1試薬吐出位置T3まで第1試薬分注プローブ23を移動する(ステップS16)。
【0088】
ステップS16の後に、第1試薬分注プローブ23は、第1試薬吐出位置T3の下方に停止した反応容器19内に第1試薬を吐出する(ステップS17)。
【0089】
ステップS17の後に、第1試薬分注アーム24は、第1試薬吐出位置T3からホームポジションまで第1試薬分注プローブ23を移動する(ステップS18)。
【0090】
ホームポジションへ移動した後、第1試薬分注プローブ23の洗浄が行われる。洗浄後、次の第1試薬の分注に備えて待機する。
【0091】
図11は、試薬分注工程S1の第2試薬分注工程S20を示したフローチャートである。この第2試薬分注工程S20はステップS21乃至ステップS28により構成され、第1試薬分注工程S10で分注された第1試薬を収容する反応容器19に対して、その第1試薬と対を成す第2試薬を分注する工程である。従って、第1試薬分注工程S10が実行された後、第1試薬分注工程S10で分注された第1試薬を収容する反応容器19が、第2試薬吐出位置T6に到達する所定の分析サイクル後に実行される。
【0092】
第2試薬ラック16は、回動して第2試薬吸引位置T5の下方まで第2保持位置「2A1」の第2試薬容器14を移動する(ステップS21)。
【0093】
第2試薬分注アーム28は、ホームポジションから第2試薬吸引位置T5まで第2試薬分注プローブ27を移動する(ステップS22)。
【0094】
ステップS21及びステップS22の後に、第2試薬分注アーム28は、第2試薬吸引位置T5から下方の第2試薬容器14内の第2試薬の吸引が可能な高さまで第2試薬分注プローブ27を移動する(ステップS23)。このとき、第2試薬分注プローブ27は、試薬カバー41の第2開口部46から進入して第1試薬容器13内に入る。
【0095】
ステップS23の後に、第2試薬分注プローブ27は、第2試薬容器14内の第2試薬を吸引する(ステップS24)。
【0096】
ステップS24の後に、第2試薬分注アーム28は、第2試薬の吸引が可能な高さから第2試薬吸引位置T5まで第2試薬分注プローブ27を移動する(ステップS25)。
【0097】
ステップS25の後に、第2試薬分注アーム28は、第2試薬吸引位置T5から第2試薬吐出位置T6まで第2試薬分注プローブ27を移動する(ステップS26)。
【0098】
ステップS26の後に、第2試薬分注プローブ27は、第2試薬吐出位置T6の下方に停止した第1試薬を収容する反応容器19内に、その第1試薬と対を成す第2試薬を吐出する(ステップS27)。
【0099】
ステップS27の後に、第2試薬分注アーム28は、第2試薬吐出位置T6からホームポジションまで第2試薬分注プローブ27を移動する(ステップS28)。
【0100】
ホームポジションへ移動した後、第2試薬分注プローブ27の洗浄が行われる。洗浄後、次の第2試薬の分注に備えて待機する。
【0101】
図12は、図10及び図11に示した第1及び第2試薬分注工程S10,S20の各ステップの動作の1分析サイクルにおけるタイミングを示したタイミングチャートである。
【0102】
このタイミングチャート53には、矢印T方向に実行される第1試薬分注工程S10のステップS11乃至S18、及び第2試薬分注工程S20のステップS21乃至S28に対応した第1及び第2試薬ラック15,16、反応ディスク20、第1及び第2試薬分注アーム24,28、第1及び第2試薬分注プローブ23,27の動作開始タイミング、動作時間、及び動作終了タイミングが表されている。
【0103】
先ず、タイミングチャート53の第1試薬分注工程S10に対応する各ステップの動作のタイミングの詳細を説明する。
【0104】
タイミングチャート53における凸部の「回動」は、第1試薬ラック15による第1試薬容器13の移動であるステップS11に対応し、凸部の幅は第1試薬ラック15の動作時間に対応している。この動作時間には、最大角度である180°を回すのに要する時間が割り当てられている。「回動」の動作開始タイミングは分析サイクル毎に不変なので、第1試薬容器13の第1保持位置が第1試薬吸引位置T1の下方の近いほど動作が早く終了して、割り当てられた動作終了タイミングまでの余剰時間中、動作終了位置で待機している。
【0105】
なお、上述した凸部の「回動」の下側の破線で示した凸部の「回動」は、第2試薬ラック16による第1試薬容器13の移動に対応し、凸部の幅は第2試薬ラック16の動作時間に対応している。この動作時間には、最大角度である180°を回すのに要する時間が割り当てられている。
【0106】
凸部の「吸引」及び「吐出」は、第1試薬分注プローブ23による第1試薬の吸引及び吐出であるステップS14,S17に対応し、凸部の幅は第1試薬の吸引及び吐出の時間に対応している。この時間には、各測定項目の分析条件に最大の分注量が設定されたときに、その最大量を吸引及び吐出するのに要する時間が割り当てられている。「吸引」及び「吐出」の動作開始タイミングは分析サイクル毎に不変なので、設定された分注量が最大量よりも少ない場合、吸引及び吐出が早く終了して、割り当てられた動作終了タイミングまでの余剰時間中、動作終了位置で待機している。
【0107】
凸部の「T1」、「下」、「上」、「T3」、及び「ホームポジション」は、第1試薬分注アーム24による第1試薬分注プローブ23の移動であるステップステップS12,S13,S15,S16,S18に対応している。
【0108】
次に、タイミングチャート53の第2試薬分注工程S20に対応する各ステップの動作のタイミングの詳細を説明する。
【0109】
タイミングチャート53における凸部の「回動」は、第2試薬ラック16による第2試薬容器14の回動であるステップS21に対応し、凸部の幅は第2試薬ラック16の動作時間に対応している。この動作時間には、最大角度である180°を回すのに要する時間が割り当てられている。「回動」の動作開始タイミングは分析サイクル毎に不変なので、第2試薬容器14の第2保持位置が第2試薬吸引位置T5の下方の近いほど動作が早く終了して、割り当てられた動作終了タイミングまでの余剰時間中、動作終了位置で待機している。
【0110】
なお、上述した凸部の「回動」の上側の破線で示した凸部の「回動」は、第1試薬ラック15による第2試薬容器14の回動に対応し、凸部の幅は第1試薬ラック15の動作時間に対応している。この動作時間には、最大角度である180°を回すのに要する時間が割り当てられている。
【0111】
凸部の「吸引」及び「吐出」は、第2試薬分注プローブ27による第2試薬の吸引及び吐出であるステップS24,S27に対応し、凸部の幅は第2試薬の吸引及び吐出の時間に対応している。この時間には、各測定項目の分析条件に最大の分注量が設定されたときに、その最大量を吸引及び吐出するのに要する時間が割り当てられている。「吸引」及び「吐出」の動作開始タイミングは分析サイクル毎に不変なので、設定された分注量が最大量よりも少ない場合、吸引及び吐出が早く終了して、割り当てられた動作終了タイミングまでの余剰時間中、動作終了位置で待機している。
【0112】
凸部の「T5」、「下」、「上」、「T6」、及び「ホームポジション」は、第2試薬分注アーム28による第2試薬分注プローブ27の移動であるステップステップS22,S23,S25,S26,S28に対応している。
【0113】
なお、試薬分注工程S1及びタイミングチャート53では、第1試薬分注プローブ23による第1試薬の吸引後のタイミングで、第2試薬分注プローブ27により第2試薬を吸引する分注について説明したが、第1試薬分注プローブ23による第1試薬の吸引前のタイミングで第2試薬分注プローブ27により第2試薬を吸引するように実施してもよい。
【0114】
また、第1及び第2試薬ラック15,16を連結し、タイミングチャート53のステップS12,21のタイミングで、連結した第1及び第2試薬ラック15,16を1つの機構で回動駆動するように実施してもよい。これにより、機構部51の2つの第1及び第2移動機構511,512を1つの機構に削減して、機構部51の小型化を図ることができる。
【0115】
更に、2試薬系の第1試薬容器13又はこの第1試薬容器13と対を成す第2試薬容器14の一方の試薬容器を、第1試薬ラック15又は第2試薬ラック16の一方の試薬ラックに保持させると共に、他方の試薬容器を他方の試薬ラックに保持させる。そして、第1及び第2試薬ラック15,16を独立して駆動制御して、第1試薬分注プローブ23による第1試薬の分注と、第2試薬分注プローブ27による第2試薬の分注が並行して行われるタイミングで実行させるように実施してもよい。これにより、1分析サイクル当たりの時間を短縮して、迅速に検査を行うことができる。この場合、分析情報記憶部56にリーダ18からの第1及び第2試薬情報が保存されたとき、分析情報管理部57がリーダ18から出力された第1及び第2試薬情報に含まれる第1及び第2保持位置の情報に基づいて、2試薬系の第1及び第2試薬容器13,14が同じ試薬ラックに保持されているか否かを判別することにより、試薬庫17への2試薬系の第1及び第2試薬容器13,14の収納ミスを未然に防ぐことができる。
【0116】
以上述べた本発明の実施例によれば、第1及び第2試薬容器13,14の収納が可能な試薬庫17を設け、試薬庫17に収納した第1及び第2試薬容器15,16を混在可能に保持する第1及び第2試薬ラック15,16を第1及び第2移動機構511,512で回動することができる。
【0117】
また、試薬庫17の試薬カバー41に2つの第1開口部43,44を設けることにより、第1試薬容器13が第1試薬ラック15又は第2試薬ラック16のいずれに保持された場合でも第1試薬を吸引することができる。
【0118】
更に、試薬庫17の試薬カバー41に2つの第2開口部45,46を設けることにより、第2試薬容器14が第1試薬ラック15又は第2試薬ラック16のいずれに保持された場合でも第2試薬を吸引することができる。
【0119】
これにより、分析部10の小型化の結果、自動分析装置100の小型化を図ることができる。また、部品数を減らすことができるため、コストを低減して信頼性の向上を図ることができる。更に、試薬庫17に第1及び第2試薬容器13,14を効率よく収納することができる。更にまた、第1及び第2試薬容器13,14を収納する作業ミスを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0120】
T1,T2 第1試薬吸引位置
T3 第1試薬吐出位置
T4,T5 第2試薬吸引位置
T6 第2試薬吐出位置
10 分析部
13 第1試薬容器
14 第2試薬容器
15 第1試薬ラック
16 第2試薬ラック
17 試薬庫
18 リーダ
19 反応容器
20 反応ディスク
23 第1試薬分注プローブ
24 第1試薬分注アーム
27 第2試薬分注プローブ
28 第2試薬分注アーム
40 試薬庫
41 試薬ケース
42 試薬カバー
43,44 第1開口部
45,46 第2開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料及びこの試料の検査項目に該当する試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記試薬の内の1試薬系及び2試薬系の第1試薬が収容された第1試薬容器及び前記2試薬系の第1試薬と対を成す第2試薬が収容された第2試薬容器を混在可能に保持する試薬ラックが回動可能に配置された試薬庫と、
前記試薬ラックに保持された前記第1試薬容器内の第1試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブと、
前記試薬ラックに保持された前記第2試薬容器内の第2試薬を吸引して前記反応容器に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブとを備え、
前記試薬庫は、
前記第1試薬容器及び前記第2試薬容器を収納するための試薬ケースと、
この試薬ケースを覆う前記試薬ラックに保持された前記第1及び第2試薬容器内の第1及び第2試薬を吸引するために前記第1及び第2試薬分注プローブが進入する第1及び第2開口部を設けた試薬カバーとを
有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記試薬ラックは、前記試薬ケース内に配置された前記第1及び第2試薬容器を混在可能に保持する第1試薬ラック、及び前記第1及び第2試薬容器を混在可能に保持する前記試薬ケース内の前記第1試薬ラックの外周に配置された第2試薬ラックにより構成され、
前記試薬カバーには、前記第1及び第2試薬ラックに保持された前記第1試薬容器内の第1試薬を吸引するために前記第1試薬分注プローブが進入する2つの第1開口部、及び前記第1及び第2試薬ラックに保持された前記第2試薬容器内の第2試薬を吸引するために前記第2試薬分注プローブが進入する2つの第2開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記第2試薬分注プローブは、前記第1試薬分注プローブによる第1試薬の吸引後のタイミング、又は前記第1試薬分注プローブによる第1試薬の吸引前のタイミングで、前記試薬ラックに保持された前記第2試薬容器内の第2試薬を吸引することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記第1及び第2試薬ラックは、夫々独立して回動可能に配置され、
前記第1試薬容器又は前記第2試薬容器の一方の試薬容器は、前記第1試薬ラック又は前記第2試薬ラックの一方の試薬ラックに保持され、他方の試薬容器は他方の試薬ラックに保持されることを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記第1試薬分注プローブによる第1試薬の分注と、前記第2試薬分注プローブによる第2試薬の分注が並行して行われるタイミングであることを特徴とする請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記第1又は第2試薬ラックに保持された各検査項目の第1及び第2試薬容器内の第1及び第2試薬を識別する第1及び第2試薬情報、並びにこの第1及び第2試薬情報に関連付けてその第1及び第2試薬容器の第1及び第2保持位置の情報を記憶する分析情報記憶手段と、
前記検査項目の分析が行われるとき、前記分析情報記憶手段に保存されたその検査項目の第1及び第2試薬情報に関連する第1及び第2保持位置の情報に基づいて、その第1保持位置の第1試薬容器をこの第1試薬容器を保持する試薬ラックに対応する前記第1開口部の下方へ移動し、その第2保持位置の第2試薬容器を保持する試薬ラックに対応する前記第2開口部の下方へ移動する移動機構と、
前記第1試薬分注プローブを前記移動機構により前記第1開口部の下方に移動された第1試薬容器内の第1試薬の吸引が可能な位置まで移動する第1試薬分注アームと、
前記第2試薬分注プローブを前記移動機構により前記第2開口部の下方に移動された第2試薬容器内の第2試薬の吸引が可能な位置まで移動する第2試薬分注アームとを
有することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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