説明

自動分析装置

【課題】反応容器に収容された反応液中の発光物質の発光強度を希釈によって減光した場合に生じる反応容器内の反応液の容量増加を抑えること。
【解決手段】測定された発光強度が所定の上限値と比して大きいか否かを判定する判定手段と、消光剤を分注する分注手段とを有し、光量判定部46が、発光強度が上限値に比して大きいと判定した場合に、消光剤分注部15が反応容器7aに消光剤を分注して反応容器7aから発する発光を減光する。消光剤での減光によって極少量の分注で減光でき、容量の増加を抑えることを可能とする。また、数種の消光剤を消光剤試薬テーブル12に配置することで、フィルターを用いて減光する方式に比して、減光量若しくは減光する波長が容易に制御可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関するものであり、特に、免疫学、遺伝学的分析に適した自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来自動分析装置は、多数の検体に対する分析処理を同時に行ない、さらに、多成分を迅速に、かつ、高精度で分析できるため、免疫検査、生化学検査、輸血検査等さまざまな分野の検査に用いられている。たとえば、免疫検査を行なう自動分析装置は、反応容器内で検体と試薬とを反応させる反応機構、この検体と試薬との反応液の吸光度若しくは各試薬と検体とが反応して生成される免疫複合体から生じる発光の発光強度を測定する測光機構をそれぞれターンテーブル上に配置し、さらに検体、試薬および反応液を各機構に分注または移送する複数の分注移送機構を備え、様々な分析内容の免疫検査を行なっている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特公昭64−7343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来においては、測定された発光強度が上限値に比して大きい場合、当該反応容器を希釈液分注位置まで移送して、反応容器に収容されている反応液を希釈することによって再測定を行っていた。また、希釈後の発光強度が依然上限値に比して大きい場合は、希釈を繰り返すことによって発光強度を調整していた。しかしながら、希釈を繰り返すことによって反応容器内の容量が増加するため、反応容器自体の大型化若しくは反応容器内の反応液を排出する排出機構が必要となる。さらに、希釈の繰り返しによって、分析時間も増大するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、測定された発光強度が上限値に比して大きい場合であっても、コンパクトな構成によって短時間に分析処理を行うことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、反応容器に収容した反応液内の発光物質の発光強度を光度計によって測定し、該発光強度をもとに検体を分析する自動分析装置において、測定対象の反応容器から発する発光強度が所定の上限値に比して大きいか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が、発光強度が前記所定の上限値に比して大きいと判定した場合に消光剤を分注する分注手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記消光剤が分注された反応容器から発する発光強度をもとに、前記消光剤が分注される前の反応容器から発する発光強度に換算する換算手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記換算手段は、換算式を用いて前記消光剤が分注される前の反応容器から発する発光強度を換算することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記換算手段は、換算テーブルを用いて前記消光剤が分注される前の反応容器から発する発光強度を換算することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記分注手段は、前記判定手段の判定結果に応じて前記消光剤を段階的に分注することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定された発光強度が上限値に比して大きい場合、消光剤を分注することによって減光させるため、反応液の容量の増加を抑えることができるとともに、極端に発光強度が大きい場合、希釈では新たな希釈用反応容器が必要となるが、消光剤を用いて減光するので、測定対象の反応容器のみを用いたコンパクトな構成で再測定が可能となり、しかも短時間での再測定が可能になる。さらに、フィルターを用いて減光する場合、励起光、発光物質によって複数枚のフィルターを用意してフィルターの交換機構または測定機構を増設する必要があるが、本発明では、消光剤を用いて減光する場合、数種の消光剤を用意して選択的に分注するのみで良く、コンパクトな構成で、励起光、発光物質に関わらず各種分析に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態である自動分析装置について説明する。なお、各実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分または相当する部分には同一の符号を付している。
【0013】
図1は、本実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる自動分析装置1は、試料である検体と試薬との間の反応によって生成された反応生成物に対応する光学的特性を測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果を用いて分析を行なう制御分析機構40とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の免疫学的な分析を自動的に行なう。
【0014】
測定機構2は、図1に示すように、検体移送部3、担体試薬テーブル5、液体試薬テーブル6、反応テーブル7、検体分注部8、担体試薬分注部9、液体試薬分注部10、消光剤試薬テーブル12、攪拌部13、測光部14、消光剤分注部15及び洗浄部20を備えている。
【0015】
検体移送部3は、検体を収容する検体容器4aを搭載した複数のラック4を載置して順次移送する。担体試薬テーブル5は、周方向に配置される複数の担体試薬容器5aを保持するテーブルであり、周方向に回転させる駆動手段を有している。担体試薬容器5aは、検体との抗原抗体反応に適用する担体試薬を収容する。液体試薬テーブル6は、各種液体試薬を収容する液体試薬容器6aを保持するテーブルであり、担体試薬テーブル5とは異なる駆動手段によって周方向に回転させる駆動手段を有している。反応テーブル7は、検体と試薬とを反応させる反応容器7aを保持するテーブルであり、担体試薬テーブル5と同様、周方向に回転させる駆動手段を有している。また、消光剤試薬テーブル12は、消光剤を収容する消光剤容器12aを保持するテーブルであり、周方向に回転させる駆動手段を有している。
【0016】
各テーブル内は一定の温度に保たれている。例えば、液体試薬テーブル6は、試薬の劣化や変性を抑制するために室温よりも低温に設定され、反応テーブル7内は、人間の体温と同程度の温度に設定される。
【0017】
検体分注部8は、検体移送部3上の検体容器4aに収容されている検体を反応テーブル7で保持する反応容器7aに分注する。担体試薬分注部9は、担体試薬テーブル5上の担体試薬容器5aに収容されている担体試薬を反応容器7aに分注する。液体試薬分注部10は、液体試薬テーブル6上の液体試薬容器6aに収容されている液体試薬を反応容器7aに分注する。消光剤分注部15は、測光部14によって測定された反応容器7aから発する発光強度が上限値に比して大きい場合に消光剤容器12aに収容されている消光剤を当該反応容器内に分注する。なお、使用する消光剤として、たとえば、蛍光試薬にフルオロセインを用いる場合、消光剤にはマラカイトグリーン若しくはエオシンを使用し、発光試薬にルシフェリンを用いる場合、TAMRAを使用することが好ましい。
【0018】
ここで、検体容器4aは、内部に収容した検体を識別する識別情報をバーコードまたは2次元コード等の情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体が貼付されている(図示せず)。同様に、担体試薬容器5a及び液体試薬容器6aにも、内部に収容する試薬を識別する識別情報を情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体がそれぞれ貼付されている(図示せず)。このため、測定機構2は、検体容器4aに貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR、担体試薬容器5aに貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR及び液体試薬容器6aに貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CRを備えている。
【0019】
検体分注部8、担体試薬分注部9及び液体試薬分注部10は、検体の吸引及び吐出を行う細管状のプローブと、このプローブを移動するために鉛直方向への昇降作動及び水平方向への回転作動を行うアームと、吸排シリンジ等を用いた吸排機構とをそれぞれ備えている。各プローブは、コンタミネーションやキャリーオーバを防止するため、プローブの先端に着脱自在なチップを装着し、1回の分注作動ごとにチップを交換するディスポーザブル方式を採用している。たとえば、検体分注部8は、作動線上に未使用のチップが格納されているチップ格納部8aと、使用後のチップを廃棄するチップ廃棄部8bとが設けられている。
【0020】
反応容器移送部11は、反応容器7aを反応テーブル7に設置したり反応テーブル7から取り除いたりするために反応容器7aを移送する。反応容器移送部11は、作動線上に未使用の反応容器7aが格納されている反応容器格納部11aと、使用後の反応容器7aを廃棄する反応容器廃棄部11bとが設けられている。反応容器移送部11は、反応容器7aの内部に液体がある場合であってもその液体をこぼすことなく移送できるものであれば如何なる構成を有していてもよい。
【0021】
攪拌部13は、反応容器7aの内部に収容された液体を攪拌する。測光部14は、反応容器7a内の反応液が発光する微弱な光を測光する光電子増倍管を有している。なお、反応液から発生する蛍光を測定する場合、測光部14は、励起光を照射するための光源を設ければよい。
【0022】
洗浄部20は、BF洗浄ノズルとして、吐出ノズルおよび吐出ノズルに対応する吸引ノズルを複数組有する。吐出ノズルは、洗浄液タンクから供給されたBF洗浄液を反応容器7a内に吐出する。吸引ノズルは、反応容器7a内のBF洗浄液を吸引し、吸引したBF洗浄液を排水タンクに排出する。
【0023】
以上の構成を有する測定機構2において、1回の回転作動で反応テーブル7が回転する角度は予め定められており、その回転によって試料や各種試薬の分注等を同時多発的に行うことができるような構成となるように、全ての構成要素が配置されている。この意味で、図1はあくまでも測定機構2の構成要素を模式的に示すものに過ぎない。すなわち、測定機構2の構成要素間の相互の位置関係は、反応テーブル7のホイールの回転態様等の条件に応じて定められるべき設計的事項である。
【0024】
一方、制御分析機構40は、分析演算部41、入力部42、出力部43、記憶部44、制御部45及び光量判定部46を備えている。
【0025】
分析演算部41は、測定機構2における測定結果を分析する演算を行う。入力部42は、検体の分析に必要な情報及び自動分析装置1の作動指示信号が入力され、キーボード、マウス、マイクロフォン等によって実現される。出力部43は、分析結果を含む情報を出力し、ディスプレイ(CRT、液晶、プラズマ、有機EL等)、プリンタ、スピーカ等によって実現される。
【0026】
記憶部44は、分析結果の他、自動分析装置1や洗浄部20に関する各種パラメータ等を含む情報を記憶し、さまざまな情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1や洗浄部20が各種処理を実行する際にその処理に係るプログラムをハードディスクからロードして電気的に記録するメモリとを備えている。なお、記憶部44として、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、MOディスク、PCカード、xDピクチャーカード等の記録媒体に記録された情報を読み取ることができる補助記憶装置をさらに備えてもよい。
【0027】
制御部45は、自動分析装置1の制御を行い、記憶部44が記憶するプログラムをメモリから読み出すことにより、測定機構2における測定結果を用いた分析演算や、自動分析装置1の各種作動の制御等を行う。
【0028】
光量判定部46は、測定された発光強度が上限値に比して大きいか否かを判定する。発光強度が上限値に比して大きい場合、光量判定部46は発光強度が上限値を超えている旨を制御部45に報知する。
【0029】
以上の構成を有する制御分析機構40は、反応液が発光する微弱な光の測光結果を測光部14から受信すると、分析演算部41が反応容器7a内の反応液の発光強度を算出し、この算出結果に加えて標準検体から得られる検量線や分析情報に含まれる分析パラメータを用いることにより、反応液の成分等を定量的に求める。このようにして得られた分析結果は、出力部43から出力される一方、記憶部44に格納して記憶される。
【0030】
次に、図2は、ある波長における反応時間Tに対する発光強度Iを模式的に示すグラフであり、測定された時刻における発光強度が所定の上限値に比して大きい場合の発光強度曲線LIを示している。時刻Tは、試薬を投入して反応を開始させる時間であり、所定の時間反応させて時刻Tで測光部14によって発光強度を測定する。ここで、光量判定部46が、発光強度が所定の上限値に比して大きいと判定した場合、制御部45は消光剤分注部15に消光剤を分注するよう指示し、消光剤を分注した時刻をTとする。その後、時刻Tから所定の時間反応させた時刻Tで再度発光強度を測定する。時刻Tで測定された発光強度をもとに分析演算部41が消光剤を分注する前の発光強度に換算処理し、換算されたデータを用いて検体の分析を行う。
【0031】
消光剤分注後の発光強度が依然上限値に比して大きい場合、制御部45は、消光剤分注部15に再度消光剤を分注するように指示を出す。図3に示す発光強度曲線LIのように、消光剤分注後も上限値に比して大きい場合は段階的に消光剤を分注して減光する。上述した時刻Tにおいて発光強度が上限値に比して大きい場合、制御部45は、消光剤分注部15に消光剤を分注するように指示する。消光剤分注部15は、時刻Tで消光剤を分注する。その後、所定の反応時間経過した時刻Tで発光強度を再度測定する。発光強度が上限値に比して大きい場合は、発光強度が上限値を下回るまで上述した処理を繰り返す。換算処理において全分注量と減光後の発光強度とをもとに分注前の発光強度に換算されたデータが検体の分析に用いられる。
【0032】
ここで、消光剤分注部15が行う消光剤の分注において、消光剤分注量は任意に設定することが可能であり、消光剤によって分注量を個別に設定しても良く、消光剤分注部15は、図示した位置でなくとも、設置可能な如何なる位置に配置しても良い。また、消光剤試薬テーブル12と消光剤分注部15とを設置せずに、液体試薬テーブル12に消光剤容器12aを配置して液体試薬分注部10が消光剤の分注を行うようにしても良い。
【0033】
続いて、発光強度が上限値を超えているか否かを判定する判定処理を図4のフローチャートを用いて説明する。図4には、制御分析機構40における分注処理から演算処理までの処理が示されている。
【0034】
先ず、制御部45が免疫分析処理を開始する指示を受けると、制御部45は反応容器7aに担体試薬を分注するよう担体試薬分注部9に指示を出す(ステップS102)。続いて、制御部45は、検体を反応容器7aに分注するよう検体分注部8に指示を出す(ステップS104)。その後、制御部45は、BF洗浄部20に第1BF洗浄を行うよう指示し、検体と未結合の担体を除去する(ステップS106)。第1BF洗浄終了後、制御部45は液体試薬分注部10に第2試薬を分注するよう指示し(ステップS108)、分注後、BF洗浄部20が第2BF洗浄を行う(ステップS110)。
【0035】
第2BF洗浄によって検体と未結合の第2試薬を除去した後、制御部45は、液体試薬分注部10に第3試薬を分注するよう指示を出す(ステップS112)。ステップS110までに分注された反応液と第3試薬との反応によって、測定対象の反応に対する発光が起こる。この混合液を所定の時間および条件下でインキュベーションして反応させた(ステップS114)後、制御部45は測光部14に測定処理を行うよう指示を出す(ステップS116)。
【0036】
測定処理ステップS116を行って得られた発光強度に対して、光量判定部46が上限値に比して大きいか否かを判定する(ステップS118)。光量判定部46が、ステップS116で測定された発光強度が上限値に比して小さいと判定した場合(ステップS118:No)、ステップS128に移行して演算処理を行う。
【0037】
ここで、発光強度が上限値に比して大きい場合(ステップS118:Yes)、制御部45は、消光剤分注部15に消光剤を分注するよう指示する(ステップS120)。消光剤を分注した後、制御部45は測光部14に測定処理を指示し(ステップS122)、光量判定部46は、再度発光強度が上限値を超えているか否かを判定する(ステップS124)。光量判定部46によって発光強度が上限値を超えていると判定された場合(ステップS124:Yes)、ステップS120に戻って分注処理を行う。
【0038】
光量判定部46が、発光強度が上限値に比して小さいと判定した場合(ステップS124:No)、分析演算部41は、得られた発光強度を消光剤分注前の発光強度に換算する(ステップS126)。消光剤分注前の発光強度に換算されると、ステップS128に移行して演算処理を行う。このように、上述した処理が各反応容器に対して行われ、反応容器に収容された検体が分析される。
【0039】
次に、換算処理ステップS126について図5,6を用いて説明する。図5は、発光物質における換算テーブル200を示しており、発光物質毎の換算テーブル201〜203がある。また、図6は、換算テーブル201における発光物質Aに対する消光剤の換算テーブル201a〜201cを示している。消光剤換算テーブルには、予め計算されたデータが入力されており、分注量データをもとに必要なデータを出力する。
【0040】
図6は、図5における発光物質Aに対する消光剤の換算テーブルを示しており、発光物質Aが使用された場合に用いる消光剤毎に換算テーブルが形成されている。発光物質Aの発光強度を測定し、消光剤A−1を使用する分析処理において、制御部45は、換算テーブル200から発光物質Aの換算テーブル201と消光剤換算テーブル201aとを選択する。分注された消光剤量が(a−2)であった場合、分注量(a−2)を入力すると、分注量(a−2)と同行の数値が読まれ、消光剤の濃度Qが(b−2)となり消光剤分注前の発光強度Iと消光剤分注後の発光強度Iqとの比I/Iqが(c−2)と出力される。分注した消光剤の濃度情報が必要な場合は、濃度Qを出力しても良い。
【0041】
分析演算部41は、出力された発光強度比(c−2)をもとに、測定された消光剤分注後の発光強度Iqを用いて演算し、消光剤分注前の発光強度Iを出力する。この発光強度Iを用いることで検体の分析を行う。
【0042】
なお、分析演算部41が、分注後の発光強度Iqから換算式を用いて分注前の発光強度Iを演算しても良い。例えば、消光剤の濃度Qと分注した消光剤量Vとに応じた関数F(Q,V)を用意し、関数F(Q,V)に消光剤を分注した後の発光強度Iqを乗じて消光剤を分注する前の発光強度I(=F(Q,V)・Iq)を求めるようにしても良い。
【0043】
ここで、従来の自動分析装置においては、発光強度が上限値に比して大きい場合、希釈によって発光物質を分散させて発光強度を減少させていた。例えば、反応液を2倍に希釈して発光強度を半減させる場合、反応容器の容量は2倍となる。発光強度が測定可能となるまで希釈を繰り返すと、反応容器の容量を超えてしまう可能性がある。
【0044】
これに対して、実施の形態にかかる自動分析装置1においては、消光剤分子が発光物質の分子に対して直接作用するため、その濃度分の分注で良く、発光強度を半減させる場合でも容量に比して無視出来る程の極少量の消光剤を分注することで十分な消光効果を発揮する。また、消光剤によって発光物質自体の発光を抑制するため、希釈して減光する場合のように反応液中の分散性を考慮する必要もない。さらに、フィルターを用いて減光を行う方式に比して、対応する消光剤を消光剤試薬テーブル12に用意することで減光の制御が可能となり、異なる発光物質を用いても機構を増設する必要はない。
【0045】
なお、上述した実施の形態に限らず、如何なる発光量を読み取る自動分析装置に対しても適用することが可能である。すなわち、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動分析装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】発光強度が上限値を越えた場合の反応時間に対する発光強度を示すグラフである。
【図3】発光強度が複数回上限値を越えた場合の反応時間に対する発光強度を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態にかかる分注処理から演算処理までの流れを示すフローチャートである。
【図5】換算処理における発光物質の換算テーブルを示す図である。
【図6】換算処理における消光剤の換算テーブルを示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動分析装置
2 測定機構
3 検体移送部
4 ラック
4a 検体容器
5 担体試薬テーブル
5a 担体試薬容器
6 液体試薬テーブル
6a 液体試薬容器
7 反応テーブル
7a 反応容器
8 検体分注部
9 担体試薬分注部
10 液体試薬分注部
11 反応容器移送部
12 消光剤試薬テーブル
12a 消光剤容器
13 攪拌部
14 測光部
15 消光剤分注部
20 洗浄部
40 制御分析機構
41 分析演算部
42 入力部
43 出力部
44 記憶部
45 制御部
46 光量判定部
CR〜CR 情報コード読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に収容した反応液内の発光物質の発光強度を光度計によって測定し、該発光強度をもとに検体を分析する自動分析装置において、
測定対象の反応容器から発する発光強度が所定の上限値に比して大きいか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が、発光強度が前記所定の上限値に比して大きいと判定した場合に消光剤を分注する分注手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記消光剤が分注された反応容器から発する発光強度をもとに、前記消光剤が分注される前の反応容器から発する発光強度に換算する換算手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記換算手段は、換算式を用いて前記消光剤が分注される前の反応容器から発する発光強度を換算することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記換算手段は、換算テーブルを用いて前記消光剤が分注される前の反応容器から発する発光強度を換算することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記分注手段は、前記判定手段の判定結果に応じて前記消光剤を段階的に分注することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−43878(P2010−43878A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206406(P2008−206406)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】