説明

自動分析装置

【課題】 洗浄・乾燥後の反応セルの浮き上がりを防止すること。
【解決手段】 分析終了後の反応セルを洗浄する洗浄ユニットを備える自動分析装置において、乾燥ライン208の乾燥チップ208aを反応セル10へ挿入する際は、乾燥チップの下端部が反応セルの底部に当接するより前に、セル押し込みプレート208bを反応セルの開口端に当接させ、乾燥ラインの乾燥チップを反応セルから抜き出す際は、反応セル内の乾燥チップが上方へ移動を開始した後に、反応セルの開口端に当接しているセル押し込みプレートを上方へ移動させるようにした。
これにより、洗浄・乾燥工程において反応セルホルダから反応セルが浮き上がるのを防止し、試料や試薬の微量化に適した自動分析装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料と試薬を反応させて試料の成分や活性値などを、電気的または化学的に測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿などの試料に試薬を混合して反応させ、その反応状態を分光分析することによって、試料の成分や活性値などを自動的に分析する装置である。この自動分析装置は、多数の試料について、短時間に多数項目の成分分析を実施できるので、病院や医療検査機関などにおいて広く利用されている。
【0003】
図5は、自動分析装置の要部である分析部の概略的な構成を示した斜視図であり、この図を参照しながら自動分析装置について説明する。
【0004】
図5に示すように、自動分析装置は、多数の反応セル10を装着した反応ディスク11、多数の試料容器12aを収容したサンプルディスク12、第1試薬庫13、第2試薬庫14、試料分注機構15、第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19、洗浄ユニット20、測定ユニット22などを備え、これらのユニットや機構などの各構成機器の動作が、図示しない分析装置制御部によって制御されるものである。なお、オプションとして電極21も配置可能となっている。
【0005】
反応ディスク11は、リング状に形成されて周方向に多数の反応セル10を装着しており、設定されたプログラムに沿って所定の角度だけ回転したり停止したりする間欠的な回転動作を行う。この反応ディスク11の傍に、分析対象となる試料の入った試料容器12aを多数収容したサンプルディスク12が配置されている。第1試薬庫13は、反応ディスク11の内側に同心状に配置され、試薬を収容した多数の試薬容器13aを格納している。同じく試薬を収容した多数の試薬容器14aを格納している第2試薬庫14が、反応ディスク11の近傍に所定間隔をおいて配置されている。
【0006】
反応ディスク11とサンプルディスク12の間に試料分注機構15が配置されている。この試料分注機構15は支柱15aを軸として、反応ディスク11とサンプルディスク12の間を、孤を描くように回転する。また、反応ディスク11の外周近傍に第1試薬分注機構16が配置され、さらに反応ディスク11と第2試薬庫14の間に第2試薬分注機構17が配置されている。これら第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17もそれぞれ支柱16a、17aを軸として、反応ディスク11と第1試薬庫13の間、または反応ディスク11と第2試薬庫14の間を、孤を描くように回転する。さらに、反応ディスク11の外周近傍に、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19、洗浄ユニット20、電極21が配置され、反応ディスク11の所定位置に測定ユニット22が配置されている。
【0007】
サンプルディスク12は円盤状に形成され、その軸線を中心として回転することにより、試料容器12aの所望のものを試料分注機構15の吸引位置に移動させる。試料分注機構15は、サンプリングアーム15b(以下、単にアーム15bと称する。)の先端側に針状のサンプリングプローブ15c(以下、単にプローブ15cと称する。)を有している。そして、このプローブ15cをサンプルディスク12の所定の吸引位置に位置づけて支柱15aを下降させることにより、プローブ15cを試料容器12a内に降下させて試料を吸引する。その後支柱15aを上昇させた上でアーム15bを反応ディスク11側へ回転し、反応ディスク11に収容された所定の反応セル10内へ試料を吐出する。
【0008】
なお、試料の吐出に当っても吸引時と同様に、試料分注機構15は所定の吐出位置で支柱15aを下降させることにより、反応セル10内にプローブ15cを降下させて、プローブ15cから試料を吐出する。また、プローブ15cの根元部すなわちアーム15b側にチューブが連結されており、このチューブはアーム15b内を通り、さらに支柱15a内を通って、その他端は図示しないポンプに連結されている。
【0009】
反応ディスク11はその軸線を中心に回転し、所定の反応セル10を第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17の試薬吐出位置に移動させる。
【0010】
第1試薬庫13、第2試薬庫14はともに円環状に形成されていて、その軸線を中心として回転するものであり、それぞれに格納されている所望の試薬容器13a、14aを第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17の吸入位置へ移動させる。第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17はそれぞれ針状のノズルを有しており、それぞれ第1試薬庫13、第2試薬庫14の所定の試薬容器13a、14aから試薬を吸引し、その試薬を反応ディスク11に収容されている所定の反応セル10へ所定量分注する。
【0011】
反応ディスク11の回転動作によって、反応セル10が第1攪拌位置、第2攪拌位置に達すると、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19は、該当する反応セル10内に吐出されている試料と試薬との混合液を攪拌子で攪拌し、反応を促進させる。さらに、反応ディスク11の回転動作に伴い反応セル10が測定ユニット22の位置に達すると、測定ユニット22によって反応セル10内の混合液の成分が分光分析される。そして、分析終了後反応セル10内の混合液は廃棄され、その反応セル10内は洗浄ユニット20によって洗浄されて次の試料の分析に供せられる。
【0012】
この洗浄ユニット20は、複数の洗浄器具を備えており、反応ディスク11の回転動作に合わせて、反応セル10に対して順次複数段階の洗浄動作を実施する。すなわち、反応セル10が第1洗浄位置に在るときに、反応セル10内の混合液を吸引して排出し、その後アルカリ性洗剤を含む洗浄水を反応セル10に注入して洗浄し、洗浄が終わると洗剤を吸引して排出する。次に、当該反応セル10が第2洗浄位置へ移動すると、酸性洗剤を含む洗剤を反応セル10に注入して洗浄し、洗浄が終わると洗剤を吸引して排出する。次に、当該反応セル10が第3洗浄位置へ移動すると、純水を反応セル10に注入して洗浄し、純水での洗浄が終わるとこの純水を吸引して排出する。その後も第4浄位置、第5洗浄位置などでの洗浄を繰り返し、最後に、例えば吸い込み部と称される平たい角筒状に形成されている部材を反応セル10内に挿入して水分を吸収させ、洗浄水の水滴などが反応セル10内に残らないようにする作業を実施して洗浄動作を完了させる(例えば、特許文献1参照。)。
【0013】
ところで、自動分析装置で分析に供される試料について、近時その量を微量化したいとの要望が強い。その理由は、ひとにとって大切な血液を無駄にしたくないということは勿論のことであるが、試料の量が多いとその試料に反応させるために使用する試薬の量も多く必要となるからである。すなわち、自動分析装置の運用に当ってのランニングコストに占める試薬の割合が大きいため、ランニングコストを低減するためには、使用する試薬の量を減らさなければならないからである。
【0014】
一方、分光分析を実施するに当っては、正確な測定精度を得るため、試料に照射する光束の全てが試料内を通過しなければならない。換言すれば、光束は試料に入射してから出射するまでの間、試料の外部を通過しないようにしなければならない(例えば、特許文献2参照。)。そのため、試料を分注した反応セル10と測定ユニット22との位置を精度良く保つことが求められる。
【0015】
ここで、反応ディスク11部分のみを抽出して示すと、反応ディスク11は図6に示すようなリング状に形成されている。そして反応ディスク11は、そのA−A線に沿う断面を概略的に示した図7のような駆動部50によって駆動される。すなわち、図7に示すように、反応ディスク11の内周面は駆動軸51のピニオン52に噛合わされており、さらに反応ディスク11の内周面と底面は、それぞれガイドローラー53、54によって支持されるようになっている。
【0016】
そして、反応ディスク11の外周方向に反応セル10を保持した反応セルホルダ11aが装着されている。なお、反応セルホルダ11aは、例えば図8に示すような弧状に形成されており、リング状の反応ディスク11に例えば10個の反応セルホルダ11aが周状に配列され、この反応セルホルダ11aには、例えば11個の反応セル10が装着される。図7に戻って、このような反応セル10の底部側を、測定ユニット22の光源ランプ22aからの光束22bが通過するように、測定ユニット22が反応セル10の底部側に位置するように配置されている。
【0017】
このように、多数の反応セル10が測定ユニット22の光源ランプ22aからの光束22bを横切るように移動して試料の分析が行われる。
【特許文献1】特開平10−62431号公報
【特許文献2】特開2001−91455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、自動分析装置にあって測定ユニット22は固定されて配置されているので、不用意に位置がずれることはほんとん起こりえない。これに対して反応セル10は、分析すべき試料が変わる毎に洗浄ユニット20によって洗浄されて繰り返し使用される。また洗浄工程の最終段階では、反応セル10内に吸い込み部と称される平たい角筒状に形成されている部材を挿入して、反応セル10を乾燥させるが、この吸い込み部の挿入と抜き差し時の摩擦力によって、反応セル10が反応セルホルダ11aから浮き上がってしまうおそれがあった。
【0019】
この反応セル10の浮き上がりを防ぐために、図9に示すように、反応セル10の間に板ばね100を介在させて、隣接する反応セル10同士の摩擦力を高める試みもなされていた。しかしながら、反応セル10の間に板ばね100を介在させるためには、反応セルホルダ11aの構造が複雑になるという難点があった。また場合によっては、オペレータが反応セルホルダ11aから反応セル10を抜き取って、手作業で洗浄することもあり、この場合には、洗浄後に反応セル10が反応セルホルダ11aに正しく装着されないことも予想される。
【0020】
また、洗浄ユニット20による洗浄後、反応セル10が浮き上がっていないかどうか、或いは手作業で洗浄した後反応セル10が反応セルホルダ11aの正しい位置に戻されたどうかなどを検知することができなかった。従って、反応セル10が反応セルホルダ11aから浮き上がったままの状態で測定を行ってしまうことがあり、この場合には、測定ユニット22の光軸が反応セル10の底部にかかって光量不足となり、正確な分析データが得られないという重大な問題を引き起こすこととなる。
【0021】
本発明は、このような問題を解決し、反応セルの洗浄後に反応セルを正しい位置に戻すことを可能にした自動分析装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、反応セルホルダに保持されている反応セルに試料および試薬を分注して混合したものを反応させ、これに光を照射して前記試料の成分を分光分析する自動分析装置において、分析終了後の当該反応セルを洗浄する洗浄ラインおよび洗浄した反応セルを乾燥させる乾燥ラインを有する洗浄ユニットを備え、この洗浄ユニットの乾燥ラインに、前記反応セルを前記反応セルホルダの所定深さ位置に保持させるための押し込み手段を設けたことを特徴とする。
【0023】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動分析装置において、前記乾燥ラインは、前記反応セル内に接するように挿入される吸水部材と、この吸水部材に連結された中空のシャフトと、このシャフトを貫通させて固定したシャフト固定板とを有し、前記押し込み手段は、前記シャフト固定板にばね体を介して一体的に保持されるとともに、前記シャフトを摺接自在に貫通させて前記吸水部材より上部に位置する押し込みプレートから成り、この押し込みプレートは、前記反応セルを保持する反応セルホルダの開口よりも小さく、前記反応セルの開口端に当接する大きさに形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の自動分析装置において、前記乾燥ラインの前記吸水部材が前記反応セルに挿入される際は、前記吸水部材の下端部が前記反応セルの底部に当接する前に、前記押し込みプレートが前記反応セルの開口端に当接し、前記乾燥ラインの前記吸水部材が前記反応セルから抜き出される際は、前記吸水部材が前記反応セルから上方へ移動を開始した後に、前記押し込みプレートが上方へ移動することを特徴とする。
【0025】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の自動分析装置において、前記ばね体は、前記シャフトを囲むように複数配置され、前記ばね体を介して前記シャフト固定板と前記押し込みプレートとの間の間隔が調整可能に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
上記課題を解決するための手段の項にも示したとおり、本発明の特許請求の範囲に記載する各請求項の発明によれば、次のような効果を奏する。
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、反応セルを浮き上がらせる要因となる洗浄ユニットの乾燥ラインに、反応セルを反応セルホルダの所定深さ位置に保持させるための押し込み手段を設けたことにより、洗浄・乾燥工程において反応セルホルダから反応セルが浮き上がるのを防止し、試料や試薬の微量化に適した自動分析装置が提供される。
【0028】
請求項2に記載の発明によれば、セル押し込みプレートで反応セルの開口端を押さえたまま反応セルに吸水部材を挿入することができるので、反応セルの浮き上がりを防止することができる。
【0029】
請求項3に記載の発明によれば、大きな摩擦力が作用する吸水部材の引き抜き開始時には、反応セルをセル押し込みプレートで押さえたまま吸水部材の引き抜き動作を開始させるようにし、吸水部材が上昇し始めると摩擦力も軽減されるので、その後セル押し込みプレートに吸水部材が接すると両者を一緒に引き抜くようにしたことにより、反応セルの浮き上がりを確実に防止することができる。
【0030】
請求項4に記載の発明によれば、シャフトを囲むように設けたばね体で、押し込みプレートをシャフト固定板に連結することによって、押し込みプレートが傾くことなく上下動でき、特に下降時には反応セルホルダの開口部に引っ掛かることなく反応セルの開口端に当接し、反応セルを押し込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る自動分析装置の一実施例について、図1ないし図4を参照して詳細に説明する。なお、これらの図において、図5ないし図9と同一部分には同一符号を付して示してある。
【0032】
図1は、本発明に係る自動分析装置に使用される洗浄ユニット20の一実施例の概略を示した斜視図である。この洗浄ユニット20は反応ディスク11の外周近傍に配置されていて、反応ディスク11の回転動作に合わせて移動する反応セル10の真上に位置する複数の洗浄器具を備えている。洗浄ユニット20の有する洗浄器具としては、例えば図1の左側から工程順に並んでおり、最初に反応セル10内の高濃度の混合液を吸引して排出し、純水を注入する第1洗浄ライン201、次に、純水を排出してアルカリ性洗剤を注入する第2洗浄ライン(アルカリ洗浄ライン)202、さらにアルカリ性洗剤を排出して酸性洗剤を注入する第3洗浄ライン(酸性洗浄ライン)203、その後酸性洗剤を排出して純水を注入する第4洗浄ライン(純水洗浄ライン)204、純水での洗浄を繰り返す第5、第6洗浄ライン(純水洗浄ライン)205、206、純水を排出して反応セル10を空にするサクションライン207などであり、最後に、純水(洗浄液)で濡れている反応セル10を乾燥させる乾燥ライン208を備えている。なお、第6洗浄ライン206では、純水の注入された反応セル10に光を当てて、その透過率を計測することによって、洗浄が十分なされた否かを検査している。このように洗浄ユニット20は、反応ディスク11の回転に応じて上下動を繰り返しながら、各種の洗浄剤を反応セル10に順次注入して洗浄を行うことになる。
【0033】
このような洗浄工程の中で、乾燥ライン208では、反応セル10内に後述する乾燥チップ208aを挿入して水分を吸収させるが、この乾燥チップ208aを抜き出す際に反応セル10の浮き上がりが生じ易い。そこで本発明では、図2および図3を参照して詳細を説明するように、乾燥ライン208に反応セル10を押さえ込む部材としてのセル押し込みプレート208bを設け、反応セル10に乾燥チップ208aを挿入したときに、このセル押し込みプレート208bで反応セル10を反応セルホルダ11aに押し込んで、正しい位置に装着するようにし、さらに、反応セル10から乾燥チップ208aを抜き出す際には、セル押し込みプレート208bで反応セル10を押さえたまま先ず乾燥チップ208aを抜き出す動作を開始させ、その後乾燥チップ208aを含め乾燥ライン208全体を反応セル10の上方へ移動させるようにするものである。
【0034】
図2は、このような機能を果たす洗浄ユニット20の乾燥ライン208部分を、反応セルホルダ11aに保持された反応セル10の1つとともに拡大して示したものである。
【0035】
乾燥ライン208は先端に吸水性をもった乾燥チップ208aを備えている。乾燥チップ208aは、反応セル10の内壁に無理なく摺接する大きさに形成されている。また、乾燥チップ208aには中空のシャフト208cが結合されており、シャフト208cの上方部は方形のシャフト固定板208dにその中心部を貫通して固定されている。このシャフト固定板208dには、例えば4本のコイルバネ208eを介して平板状のセル押し込みプレート208bが水平になるように結合されており、このセル押し込みプレート208bの中心部をシャフト208cが貫通している。ただしシャフト208cは、セル押し込みプレート208bに固定されず、摺接する状態で係合している。
【0036】
なお、セル押し込みプレート208bの大きさは、反応セル10を保持している反応セルホルダ11aの開口よりもやや小さく、かつ反応セル10の開口端に当接するように、反応セル10の外径よりも小さく内径よりも大きい寸法に設定されている。例えば、セル押し込みプレート208bの大きさは、反応セルホルダ11aの開口に対して反応セル10の厚みの1/2程度のすき間ができるようなものであることが好ましい。
【0037】
コイルバネ208eはシャフト208cを囲むように4本設けられており、それぞれの一方の端部はセル押し込みプレート208bに固定されていて、他方の端部は、シャフト固定板208dにバネ固定用ブロック208fを介して取り付けられている。従って、バネ固定用ブロック208fによってコイルバネ208eの取り付け長さを調整することにより、シャフト固定板208dとセル押し込みプレート208bとの間の寸法が調整可能であり、かつセル押し込みプレート208bを水平に安定な状態で保持することができる。
【0038】
なお、シャフト208cの他端にはチューブ208gが接続されている。このチューブ208gは、乾燥チップ208aによって吸い取った反応セル10内の水滴などを、自動分析装置の外へ排出するためのものである。
【0039】
図3は、シャフト固定板208dの一例を示したものであり、図3(a)は側面図、図3(b)は平面図である。この図に示されているようにシャフト固定板208dの中央部分に凸部208hが形成されており、この凸部208hの中心に貫通穴208iが穿設されていて、この貫通穴208iにシャフト208cを挿通して固定する。さらに、貫通穴208iを囲むように別の貫通穴208jが4つ穿設されていて、ここにバネ固定用ブロック208fが取り付けられる。このバネ固定用ブロック208fは、ここに挿通されるコイルバネ208eの端部を固定するものである。
【0040】
次に、上記のように構成された本発明に係る自動分析装置の、特に洗浄ユニットにおける乾燥ラインの動作について説明する。
【0041】
既に述べたように、反応セル10は繰り返し分析に供せられるので、分析終了後反応セル10内の混合液は廃棄され、その反応セル10内は洗浄ユニット20によって洗浄される。洗浄ユニット20による洗浄の最終工程は、反応セル10内に乾燥チップ208aを挿入して反応セル10内に残っている水分を吸収させる乾燥ライン208での乾燥工程である。
【0042】
そこで、反応ディスク11の回転動作に合わせて移動しながら、洗浄ユニット20で順次各種の洗浄を受けた反応セル10が最終の乾燥ライン208の真下に位置すると、乾燥ライン208が下降して、反応セル10内に乾燥チップ208aを挿入することになる。乾燥ライン208は、上方に、挿通されたシャフト208cを固定したシャフト固定板208dが位置し、シャフト208cの下方に乾燥チップ208aが結合されており、乾燥チップ208aとシャフト固定板208dとの間にコイルバネ208eを介してセル押し込みプレート208bが設けられた構成となっていて、これらが一体となって上下動することになる。
【0043】
そこで、乾燥ライン208が下降して、反応セル10内に乾燥チップ208aが挿入されると、セル押し込みプレート208bも一緒に下降し、セル押し込みプレート208bは反応セル10の開口端に当接する。この時点では未だ乾燥チップ208aの下端は反応セル10の底部に当っていない。その後さらに乾燥ライン208を下降させると、コイルバネ208eが収縮しながら乾燥チップ208aとシャフト固定板208dはさらに下降し、遂に乾燥チップ208aの下端が反応セル10の底部に当たるので、この位置で乾燥ライン208の下降を停止する。
【0044】
この状態では、セル押し込みプレート208bは、コイルバネ208eの力によって、反応セル10を反応セルホルダ11a側へ押し込むように作用するので、反応セル10を反応セルホルダ11aの正しい位置に装着させることができる。また、シャフト208cを囲むように設けた4本のコイルバネ208eで、セル押し込みプレート208bをシャフト固定板208dに水平に連結することによって、セル押し込みプレート208bが傾くことなく上下動させることができ、反応セルホルダ11aの開口部に引っ掛かることなく反応セル10の開口端を押し込むことができる。
【0045】
逆に、乾燥ライン208を上昇させて乾燥チップ208aを反応セル10から抜き出す際は、セル押し込みプレート208bにシャフト208cは固定されていないので、コイルバネ208eに押されてセル押し込みプレート208bが反応セル10を押し付けたまま、先ず、シャフト固定板208dとともに乾燥チップ208aが上方へ移動を開始する。そして、乾燥チップ208aの上端がセル押し込みプレート208bに当ると、乾燥チップ208aと共にセル押し込みプレート208bが引き上げられて、反応セル10から離脱して乾燥工程を終了する。
【0046】
反応セル10が反応セルホルダ11aから浮き上がる不具合が生ずるのは、乾燥チップ208aを反応セル10から引き抜く際の摩擦力によることが大きな原因である。よって本発明では、大きな摩擦力が作用する乾燥チップ208aの引き抜き開始時には、反応セル10をセル押し込みプレート208bで押さえたまま乾燥チップ208aの引き抜き動作を開始させ、乾燥チップ208aが上昇し始めると摩擦力も軽減されるので、その後セル押し込みプレート208bに乾燥チップ208aが接すると両者を一緒に引き抜くようにしたので、反応セル10の浮き上がりを確実に防止することができる。
【0047】
このような本発明に係る自動分析装置の運用状況をフローチャートで示すと図4のようになる。すなわち、自動分析装置を立ち上げて分析に供する場合、先ずスタートアップ(ステップ1)として、全ての反応セル10を洗浄ユニット20によって洗浄することになる。よって、その最終工程として乾燥ライン208による反応セル10の乾燥作業が実施され、このときセル押し込みプレート208bによって、反応セル10を反応セルホルダ11aに正しく装着させるセル押し込み動作が行われる(ステップ2)。その後測定動作を開始する(ステップ3)ことになり、試料分注機構15による反応セル10へのサンプルの分注(ステップ4)、続いて第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17による反応セル10への試薬の分注(ステップ5)、さらに試料と試薬を混合させるための第1攪拌機構18、第2攪拌機構19による攪拌(ステップ6)が順次実行される。
【0048】
そして、所定の反応時間を経過した後測定ユニット22による分光分析を実施する(ステップ7)。分光分析が終了すると、反応セル10内の混合液を廃棄して洗浄・乾燥作業が実施され(ステップ8)、乾燥工程の終了時にその最終工程として、乾燥ライン208のセル押し込みプレート208bによって、反応セル10を反応セルホルダ11aに正しく装着させるセル押し込み動作(ステップ9)が順次実施される。以下ステップ4からステップ9の動作を繰り返し実施することになる。
【0049】
以上詳述したように、本発明によれば、洗浄・乾燥工程において反応セルホルダから反応セルが浮き上がるのを防止し、試料や試薬の微量化に適した自動分析装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る自動分析装置において、主要部位を構成する洗浄ユニットの概略を説明するために示した斜視図である。
【図2】洗浄ユニットにおける乾燥ラインの一例を示した説明図である。
【図3】乾燥ラインに設けられているシャフト固定板の一例を示した説明図である。
【図4】本発明に係る自動分析装置の運用状況を説明したフローチャートである。
【図5】自動分析装置の分析部の概略的な構成を示した斜視図である。
【図6】図5の反応ディスク部分を抽出して示した斜視図である。
【図7】図6のA−A線に沿う概略的な断面図である。
【図8】反応ディスクに装着さる反応セルホルダの斜視図である。
【図9】反応セルの間に板ばねを介在させた従来の浮き上がり防止策の説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10 反応セル
11a 反応セルホルダ
20 洗浄ユニット
208 乾燥ライン
208a 乾燥チップ
208b セル押し込みプレート
208c シャフト
208d シャフト固定板
208e コイルバネ
208f バネ固定用ブロック
208g チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応セルホルダに保持されている反応セルに試料および試薬を分注して混合したものを反応させ、これに光を照射して前記試料の成分を分光分析する自動分析装置において、
分析終了後の当該反応セルを洗浄する洗浄ラインおよび洗浄した反応セルを乾燥させる乾燥ラインを有する洗浄ユニットを備え、
この洗浄ユニットの乾燥ラインに、前記反応セルを前記反応セルホルダの所定深さ位置に保持させるための押し込み手段を設けたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記乾燥ラインは、前記反応セル内に接するように挿入される吸水部材と、この吸水部材に連結された中空のシャフトと、このシャフトを貫通させて固定したシャフト固定板とを有し、
前記押し込み手段は、前記シャフト固定板にばね体を介して一体的に保持されるとともに、前記シャフトを摺接自在に貫通させて前記吸水部材より上部に位置する押し込みプレートから成り、
この押し込みプレートは、前記反応セルを保持する反応セルホルダの開口よりも小さく、前記反応セルの開口端に当接する大きさに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記乾燥ラインの前記吸水部材が前記反応セルに挿入される際は、前記吸水部材の下端部が前記反応セルの底部に当接する前に、前記押し込みプレートが前記反応セルの開口端に当接し、前記乾燥ラインの前記吸水部材が前記反応セルから抜き出される際は、前記吸水部材が前記反応セルから上方へ移動を開始した後に、前記押し込みプレートが上方へ移動することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記ばね体は、前記シャフトを囲むように複数配置され、前記ばね体を介して前記シャフト固定板と前記押し込みプレートとの間の間隔が調整可能に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−96514(P2010−96514A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264955(P2008−264955)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】