説明

自動分析装置

【課題】自動分析装置において、分析結果の信頼性を高める。
【解決手段】蒸気発生装置30で発生した蒸気を、反応セル10の開口を塞ぐカバー200aを有する蒸気洗浄ノズル202から反応セル内に吐出して洗浄し、その後の反応セルの温度を監視する。
これにより、高温、高圧の蒸気で、反応セルの内壁に付着した汚れを隅々まで洗い流し、洗浄効果を向上できる。よって、再利用する反応セルについて、先に分析に供した試料の蛋白質や酵素などの機能を消失させて、分析結果の信頼性を高めることができ、洗剤の使用量も軽減できる。また、蒸気洗浄後の反応セルの温度が異常に高ければ、当該反応セルを再利用せず、分析結果に誤差が生ずるのを事前に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料と試薬を反応させて試料の成分や活性値などを自動的に測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿などの試料に試薬を混合して反応させ、その反応状態を例えば分光分析によって、試料の成分や活性値などを自動的に分析する装置である。この自動分析装置は、多数の試料について、短時間に多数項目の成分分析を実施できるので、病院や医療検査機関などにおいて広く利用されている。
【0003】
ところで、自動分析装置で分析に供される試料について、近時その量を微量化したいとの要望が強い。その理由は、ひとにとって大切な血液を無駄にしたくないということは勿論のことであるが、試料の量が多いとその試料に反応させるために使用する試薬の量も多く必要となるからである。すなわち、自動分析装置の運用に当って、ランニングコストに占める試薬の割合が大きいので、ランニングコストを低減するために、使用する試薬の量を極力減らしたいとの事情がある。
【0004】
試料は反応セルに所定量だけ分注され、そこに検査項目に応じた試薬を所定量分注して攪拌し反応させており、測定終了後は反応セルを洗浄して次の測定に再利用される。従って、正確な反応結果を得るためには、使用する反応セルに前回使用した試料や試薬などが残っていないことが重要である。そこで従来から、使用済みの反応液を排出した後の反応セルを、アルカリ性洗剤、酸性洗剤、純水などを用いて順次複数回にわたって洗浄が行われていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、反応セルに洗浄液を注入する場合、洗浄液が反応セルの内壁側面に沿って流れるように制御するような提案もなされていた(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
さらに、反応セルへ試料などを分注するのに使用される分注プローブを、薬剤によらず高温の蒸気を用いて洗浄することも提案されていた(例えば、特許文献3参照。)。この蒸気による分注プローブの洗浄は、分注プローブ自体を高温加熱したり、分注プローブに通じる配管流路を高温加熱したりすることにより、洗浄液を瞬時に沸騰させ、沸騰によって急激に膨張した蒸気を分注プローブの先端から排出して、分注プローブ内を洗浄するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−90372号公報
【特許文献2】特開2008−224538号公報
【特許文献3】特開平11−94843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、蒸気による分注プローブの洗浄は、分注する試料に含まれていた蛋白質や酵素などの機能を消失できることが期待されることから、次の試料の分注に備えて分注プローブを洗浄するためには効果的な手段であり、反応セルの洗浄にも適用したいところである。しかし、特許文献3に開示された洗浄手段を反応セルの洗浄に適用するには、個々の反応セルを加熱して蒸気を発生させることは困難であること、蒸気洗浄によって反応セルが高温になった場合は、当該反応セルを引き続き使用すると分析結果に誤差を生じかねないこと、反応セルから洗浄用蒸気が飛び散って、他の反応セルに混入したり他の場所を汚したりするおそれがあることなど、幾多の問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決した自動分析装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、反応セルに試料および試薬を分注して混合したものを反応させて前記試料の成分を分析する自動分析装置において、蒸気を発生する蒸気発生手段と、この蒸気発生手段で発生した蒸気を、前記反応セル内に吐出して前記反応セルを洗浄する蒸気洗浄手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蒸気発生装置を設け、ここで発生した高温、高圧の蒸気を反応セル内へ吐出させることにより、洗浄効果をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る自動分析装置の、分析部の概略的な構成を示した斜視図である。
【図2】本発明に係る自動分析装置に設けられる、洗浄ユニットの一例を示した斜視図である。
【図3】本発明に係る自動分析装置に備えられる蒸気発生装置と、この蒸気発生装置で発生した蒸気を洗浄ユニットへ供給する経路の一例を示した系統図である。
【図4】蒸気洗浄ノズルに備えられているカバーと伸縮部材の一例を示した説明図である。
【図5】蒸気洗浄ノズルの動作過程を説明するために示した説明図である。
【図6】図5の状態から蒸気洗浄ノズルがさらに下降した状態を示した動作過程の説明図である。
【図7】蒸気洗浄ノズルの上下動に応じた蒸気の吐出タイミングを説明したタイミングチャートである。
【図8】蒸気洗浄ノズルからの蒸気の吐出方向を説明した説明図である。
【図9】洗浄ノズルの配列を変更した洗浄ユニットの他の実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る自動分析装置の実施例について、図1ないし図9を参照して詳細に説明する。なお、これらの図において、同一部分には同一符号を付して示してある。
【0014】
図1は、自動分析装置の分析部の概略的な構成を示した斜視図である。
【0015】
自動分析装置は、多数の反応セル10を装着した反応ディスク11、多数の試料容器12aを収容したサンプルディスク12、第1試薬庫13、第2試薬庫14、試料分注機構15、第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19、洗浄ユニット20、測定ユニット22などを備え、これらのユニットや機構などの各構成機器の動作が、図1には示されていない分析装置制御部(図3参照。)によって制御されるものである。なお、オプションとして電極21も配置可能となっている。
【0016】
反応ディスク11は、リング状に形成されて周方向に多数の反応セル10を装着しており、設定されたプログラムに沿って所定の角度だけ回転したり停止したりする間欠的な回転動作を行う。この反応ディスク11の傍に、分析対象となる試料の入った試料容器12aを多数収容したサンプルディスク12が配置されている。第1試薬庫13は、反応ディスク11の内側に同心状に配置され、試薬を収容した多数の試薬容器13aを格納している。同じく試薬を収容した多数の試薬容器14aを格納している第2試薬庫14が、反応ディスク11の近傍に所定間隔をおいて配置されている。
【0017】
反応ディスク11とサンプルディスク12の間に試料分注機構15が配置されている。この試料分注機構15は支柱15aを軸として、反応ディスク11とサンプルディスク12の間を、孤を描くように回転する。また、反応ディスク11の外周近傍に第1試薬分注機構16が配置され、さらに反応ディスク11と第2試薬庫14の間に第2試薬分注機構17が配置されている。これら第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17もそれぞれ支柱16a、17aを軸として、反応ディスク11と第1試薬庫13の間、または反応ディスク11と第2試薬庫14の間を、孤を描くように回転する。さらに、反応ディスク11の外周近傍に、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19、洗浄ユニット20、電極21が配置され、反応ディスク11の所定位置に測定ユニット22が配置されている。
【0018】
サンプルディスク12は円盤状に形成され、その軸線を中心として回転することにより、試料容器12aの所望のものを試料分注機構15の吸引位置に移動させる。試料分注機構15は、サンプリングアーム15b(以下、単にアーム15bと称する。)の先端側に針状のサンプリングプローブ15c(以下、単にプローブ15cと称する。)を有している。そして、このプローブ15cをサンプルディスク12の所定の吸引位置に位置づけて支柱15aを下降させることにより、プローブ15cを試料容器12a内に降下させて試料を吸引する。その後支柱15aを上昇させた上でアーム15bを反応ディスク11側へ回転し、反応ディスク11に収容された所定の反応セル10内へ試料を吐出する。
【0019】
なお、試料の吐出に当っても吸引時と同様に、試料分注機構15は所定の吐出位置で支柱15aを下降させることにより、反応セル10内にプローブ15cを降下させて、プローブ15cから試料を吐出する。また、プローブ15cの根元部すなわちアーム15b側にチューブが連結されており、このチューブはアーム15b内を通り、さらに支柱15a内を通って、その他端は図示しないポンプに連結されている。
【0020】
反応ディスク11はその軸線を中心に回転し、所定の反応セル10を第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17の試薬吐出位置に移動させる。
【0021】
第1試薬庫13、第2試薬庫14はともに円環状に形成されていて、その軸線を中心として回転するものであり、それぞれに格納されている所望の試薬容器13a、14aを第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17の吸入位置へ移動させる。第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17はそれぞれ針状のノズルを有しており、それぞれ第1試薬庫13、第2試薬庫14の所定の試薬容器13a、14aから試薬を吸引し、その試薬を反応ディスク11に収容されている所定の反応セル10へ所定量分注する。
【0022】
反応ディスク11の回転動作によって、反応セル10が第1攪拌位置、第2攪拌位置に達すると、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19は、該当する反応セル10内に吐出されている試料と試薬との混合液を攪拌子で攪拌し、反応を促進させる。さらに、反応ディスク11の回転動作に伴い反応セル10が測定ユニット22の位置に達すると、測定ユニット22によって反応セル10内の混合液の成分が分光分析される。そして、分析終了後反応セル10が洗浄ユニット20の位置に達すると、先ず反応セル10内の混合液は排出され、その反応セル10内は洗浄ユニット20によって順次洗浄されて次の試料の分析に供せられる。
【0023】
この洗浄ユニット20は、反応ディスク11の外周近傍に配置されており、一例を図2に斜視図で示してある。すなわち洗浄ユニット20は、反応ディスク11の回転動作に合わせて移動する反応セル10の真上に位置する複数の洗浄器具201〜208を備え、反応ディスク11の回転動作に合わせて、反応セル10に対して順次複数段階の洗浄動作を実施する。
【0024】
洗浄ユニット20の有する洗浄器具としては、例えば図2の左側から工程順に第1洗浄ノズル201、第2洗浄ノズル202、第3洗浄ノズル203、第4洗浄ノズル204、第5洗浄ノズル205、第6洗浄ノズル206、サクションノズル207、乾燥ノズル208が並んでおり、反応セル10が夫々の洗浄ノズルに位置づけられることによって、次のように動作する。
【0025】
先ず、反応セル10が第1洗浄ノズル201に位置づけられると、高濃度の混合液の残っている反応セル10内に純水を注入し、これらを吸引して排出する。この第1洗浄ノズル202を第1洗浄ラインと称する。次に、第2洗浄ノズル202では、高圧・高温の蒸気を反応セル10内に吐出し、反応セル10内壁に付着している汚れを洗い流し、試料中に含まれていた蛋白質や酵素などが残っている場合、これらの機能を消失させる。よって、第2洗浄ノズル202を蒸気洗浄ラインと称する。
【0026】
続いて、第3洗浄ノズル203では、反応セル10内にアルカリ性洗剤を吐出して洗浄し、その後これを吸引して排出する。よって、第3洗浄ノズル203をアルカリ洗浄ラインと称する。さらに第4洗浄ノズル204では、反応セル10内に酸性洗剤を吐出して洗浄し、その後これを吸引して排出する。よって、第4洗浄ノズル204を酸性洗浄ラインと称する。その後第5洗浄ノズル205では、反応セル10内に純水を吐出して洗浄し、その後これを吸引して排出する。よって、第5洗浄ノズル205を純水洗浄ラインと称する。さらに、第6洗浄ノズル206では、純水での洗浄を繰り返すので、第6洗浄ノズル206も純水洗浄ラインと称する。
【0027】
その後、サクションノズル207(サクションライン)では、純水を排出して反応セル10内を空にし、最後に、乾燥ノズル208(乾燥ライン)において純水(洗浄液)で濡れている反応セル10を乾燥させる。なお、第6洗浄ノズル206では、純水の注入された反応セル10に光を当てて、その透過率を計測することによって、洗浄が十分なされた否かを検査している。このように洗浄ユニット20は、反応ディスク11の回転に応じて上下動を繰り返しながら、蒸気や各種の洗剤などを反応セル10に順次注入して洗浄を行っている。
【0028】
なお、洗浄ユニット20は、分析装置制御部(図3参照。)の制御によって、所定のタイミングで上下動を繰り返しながら各洗浄ノズルが所定の洗浄動作を一斉に実施するように動作する。ただし、洗浄ユニット20自体は、各洗浄ラインを構成する洗浄器具を保持するように固定されており、各洗浄ラインを構成する洗浄器具が、分析装置制御部(図3参照。)によって個別に制御されて、所定のタイミングで上下動を繰り返しながら洗浄動作を行うものであっても良い。
【0029】
さて、上述の洗浄ユニット20において、アルカリ洗浄ライン、酸性洗浄ライン、純水洗浄ライン、サクションライン、乾燥ラインなどは、従来から自動分析装置に設けられているものであり、本発明の自動分析装置では、第2洗浄ノズル202が蒸気洗浄ラインとして新たに設けられたものとなる。そこで次に、蒸気洗浄ラインとこの蒸気洗浄ラインに蒸気を供給するための蒸気発生装置の詳細について説明する。
【0030】
図3は、本発明に係る自動分析装置に備えられる蒸気発生装置と、この蒸気発生装置で発生した蒸気を洗浄ユニット20へ供給する経路の一実施例を示した系統図である。
【0031】
蒸気発生装置30は、密閉容器31とこの密閉容器31に設けられたヒータ32と温度センサ33から構成されており、密閉容器31には水供給管34および蒸気吐出管35が結合されている。そして、この水供給管34は供給制御バルブ41に結合されており、供給制御バルブ41はポンプ42を介して洗浄水タンク40に連結されている。なお、洗浄水タンク40は洗浄ユニット20の純水洗浄ライン205、206へ供給する洗浄用の純水を蓄えるものであるが、この純水がポンプ42によって、密閉容器31へも供給されるようになっており、密閉容器31へ導入された純水は、ヒータ32で加熱されて蒸気を発生し、蒸気の温度が温度センサ33で監視されるようになっている。
【0032】
密閉容器31に設けられている温度センサ33の出力信号は、分析装置制御部50へ供給される。この分析装置制御部50は自動分析装置全体の動作を制御する中枢機能を果たすものであるが、蒸気発生装置30のヒータ32を始めとして、供給制御バルブ41および吐出制御バルブ43の開閉、ポンプ42の駆動なども制御する。また、洗浄ユニット20の上下動や各洗浄ラインを構成する洗浄器具等を駆動するためにノズル駆動部60が設けられているが、分析装置制御部50はこのノズル駆動部60の動作も制御する。
【0033】
一方、密閉容器31に結合された蒸気吐出管35には、吐出制御バルブ43が結合されている。従って、密閉容器31で発生した蒸気は、吐出制御バルブ43を介して第2洗浄ノズル202(蒸気洗浄ライン)へ供給される。なお、第2洗浄ノズル202(蒸気洗浄ライン)から蒸気を反応セル10へ吐出するに際して、その蒸気が反応セル10の外へ飛散しないようにするために、カバー200aと伸縮部材200bとによって反応セル10の開口端を覆うようにしている。これらについての詳細は後述する。なお、供給制御バルブ41および吐出制御バルブ43は、例えば電磁的に開閉が制御されるものであり、吐出制御バルブ43を開いて密閉容器31内の蒸気を使用すれば、供給制御バルブ41を開くとともにポンプ42を作動させて、洗浄水タンク40から密閉容器31へ純水を補給する。
【0034】
さらに、本発明に係る自動分析装置には、反応セル10の温度を検出する温度センサ70が、洗浄ユニット20の近辺に設けられており、この温度センサ70の出力信号も分析装置制御部50へ供給される。この温度センサ70は、第2洗浄ノズル202(蒸気洗浄ライン)によって洗浄された後の反応セル10の温度を検出するものである。その理由は、通常試料の反応は36℃程度の環境下で行われるので、当該反応セル10の温度がこの温度よりも異常に高くなっている場合には、試料の分析結果に誤差を生ずることが予想される。よって、そのような場合に、当該反応セル10を次の分析に供しないように、分析装置制御部50によって自動分析装置の動作を制御するためである。また、分析制御部50による制御よって分析に用いられなかった高温状態の反応セル10に対しては、一定期間後、再び洗浄ユニット20による内部洗浄を開始し、蒸気洗浄後、再び温度センサ70がその反応セル10の温度検出を行う。その際、検出された温度が36℃程度であれば、その反応セル10を次の分析に用いるよう、分析装置制御部50が制御する。従って温度センサ70は、洗浄ユニット20における蒸気洗浄ライン以降乾燥ラインまでの間で、反応セル10の温度が検出できれば良い。
【0035】
さてここで、蒸気洗浄ラインに備えられているカバー200aと伸縮部材200bの機能について、図4ないし図6を参照して説明する。
【0036】
図4は、洗浄ユニット20の近辺における、第2洗浄ノズル202とその下に位置する反応セル10を示した縦断面図である。反応セル10は上端が開口した例えば断面U字形をしており、この反応セル10の上端の開口を塞ぐようなカバー200aが、第2洗浄ノズル202を中央に密に貫通させて設けられている。この第2洗浄ノズル202は、カバー200aに対して摺動自在であり、カバー200aの上には、図3に示したノズル駆動部60による第2洗浄ノズル202の上下動に応じて伸縮する伸縮部材200bが介在されている。
【0037】
そこで、図4の状態から第2洗浄ノズル202を下降させると、第2洗浄ノズル202とともにカバー200aと伸縮部材200bも下降し、図5に示すように、カバー200aが反応セル10の上端の開口に接触するようになる。このときの伸縮部材200bの長さ寸法はD0である。この状態からさらに第2洗浄ノズル202を下降させると、カバー200aは反応セル10の上端の開口に押し当てられたまま伸縮部材200bによって押圧され、図6に示すように、第2洗浄ノズル202の先端が反応セル10内へと挿入される。このときの伸縮部材200bの長さ寸法はD1となる(ただし、D0>D1。)。その後第2洗浄ノズル202を上昇させれば、図4の状態へ戻ることになる。なおカバー200aは、例えば耐熱性のある樹脂などで形成されている。
【0038】
次に、第2洗浄ノズル202の上下動に応じた蒸気の吐出について、図7のタイミングチャートを参照して説明する。なお、図7において(a)は、第2洗浄ノズル202の下降動作タイミングを示し、(b)は、第2洗浄ノズル202からの蒸気の吐出動作タイミングを示し、(c)は、第2洗浄ノズル202の上昇動作タイミングを示し、横軸tは時間を示している。
【0039】
さて、それまで停止した状態にあった第2洗浄ノズル202は、分析装置制御部50の指示に基づくノズル駆動部60の動作により、時間t1で下降を開始する。第2洗浄ノズル202が下降し始めると、時間t2においてカバー200aが反応セル10の上端の開口に接触し、図5に示した状態となる。このタイミングで分析装置制御部50は吐出制御バルブ43を開き、密閉容器31内の蒸気を第2洗浄ノズル202へ導入する。よって、高温、高圧の蒸気が第2洗浄ノズル202から反応セル10内へ吐出され、洗浄を開始する。
【0040】
その後、時間t3に達するまで第2洗浄ノズル202が下降するとともに、この間蒸気の吐出を続ける。このときの状態が図6に示すものとなる。そして、時間t3に達すると、分析装置制御部50は吐出制御バルブ43を閉じて、蒸気の吐出を停止するとともに、第2洗浄ノズル202を上昇させる。さらに、時間t4において、第2洗浄ノズル202の上昇を停止させて、当該反応セル10に対する蒸気洗浄動作を終了する。なお、第2洗浄ノズル202を上昇に転じるt3時点においては、まだ蒸気の吐出を継続させておき、第2洗浄ノズル202の上昇に伴い、カバー200aが反応セル10の上端開口から離れる少し前に、吐出制御バルブ43を閉じるようにしても良い。
【0041】
なお、第2洗浄ノズル202は、先端が開口しており、その開口から蒸気が吐出されるが、例えば図8(a)に矢印で示すノズルの左右方向へも蒸気を吐出するように、ノズルに開口を形成しておいても良い。また、図8(b)に矢印で示すノズルの横方向すなわち、前後左右へも蒸気を吐出するように、ノズルに開口を形成しておいても良く、さらに反応セル10が角型の場合に、図8(c)に矢印で示す四隅方向へ蒸気を吐出するように、ノズルに開口を形成しておいても良い。
【0042】
以上詳述したように本発明によれば、蒸気発生装置30を設け、ここで発生した高温、高圧の蒸気を反応セル10内へ吐出させるようにしたので、反応セルの内壁に付着した汚れを隅々まで洗い流すことができ、洗浄効果をより向上することができる。そのため、再利用する反応セル10について、先に分析に供した試料の蛋白質や酵素などの機能を消失させて、良好な分析結果を得ることができ、洗剤の使用量も軽減できる。また、蒸気洗浄ラインのノズルにはカバー200aを設けることによって、洗浄用の蒸気が飛び散って他の反応セル10に混入したり他の場所を汚したりすることも防止できる。
【0043】
さらに、蒸気洗浄後の反応セル10の温度を、温度センサ70で検出することによって、反応セル10が所定の温度を超えて高温になった場合は、当該反応セル10を次の分析に供しないように、分析装置制御部50によってリジェクトすることにより、試料の分析結果に誤差を生じさせないようにすることができるなど、信頼性の高い自動分析装置が提供される。
【0044】
なお、本発明は上述の実施例に限定されることなく、要旨の範囲内で種々の態様での実施が可能である。例えば上記の実施例では、第2洗浄ノズル202を蒸気洗浄ラインとして蒸気洗浄に使用し、その後の第3洗浄ノズル203ないし第6洗浄ノズル206において、アルカリ洗浄、酸性洗浄、純水洗浄を行うものとして説明したが、必ずしもこの順序で洗浄を行うことに限定する必要はない。
【0045】
すなわち図9に、洗浄ユニット20に設けられるノズルを概略的に示したとおり、第1洗浄ノズル201で反応セル10内に残っている高濃度の混合液を排出することは変わらないが、第2洗浄ノズル202をアルカリ洗浄ラインとしてアルカリ性洗剤によるアルカリ洗浄を行い、第3洗浄ノズル203を酸性洗浄ラインとして酸性洗剤による酸性洗浄を行い、次の第4洗浄ノズル204を蒸気洗浄ラインとして蒸気洗浄を行うようにしても良い。その後の第5洗浄ノズル205は、純水洗浄ラインとして純水での洗浄を行うことになるが、この場合、第4洗浄ノズル204で蒸気洗浄を実施しているので、第6洗浄ノズル206を廃止して、純水洗浄を1度で済ませることが可能である。このようにすれば、洗浄用の純水を節約することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 反応セル
30 蒸気発生装置
31 密閉容器
32 ヒータ
33 温度センサ
34 水供給管
35 蒸気吐出管
40 洗浄水タンク
41 供給制御バルブ
42 ポンプ
43 吐出制御バルブ
50 分析装置制御部
60 ノズル駆動部
70 温度センサ
200a カバー
200b 伸縮部材
202 第2洗浄ノズル(蒸気洗浄ライン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応セルに試料および試薬を分注して混合したものを反応させて前記試料の成分を分析する自動分析装置において、
蒸気を発生する蒸気発生手段と、
この蒸気発生手段で発生した蒸気を、前記反応セル内に吐出して前記反応セルを洗浄する蒸気洗浄手段と、
を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記蒸気洗浄手段は、
前記蒸気発生手段で発生した蒸気を前記反応セル内に吐出するノズルと、
このノズルから蒸気を吐出する際に、前記反応セルの開口部を覆うカバーと、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記蒸気洗浄手段の動作タイミングを、前記ノズルから蒸気を吐出するよりも前に、前記カバーで前記反応セルの開口部を覆うように制御するタイミング制御手段
を、さらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記蒸気洗浄手段で洗浄された前記反応セルの温度を検知する温度センサと、
この温度センサで検知された前記反応セルの温度が、所定の温度を超えているときは、当該反応セルを次の分析には供しないように前記自動分析装置の動作を制御する手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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