説明

自動分析装置

【課題】適切な分注確度を確保することが容易となり、試料ダミーを少量とすることが可能となり、また、試料の吸引及び吐出動作の複雑化を防止することが可能な自動分析装置を提供する。
【解決手段】希釈水又は洗浄水が入れられた第1容器と、試料が入れられた第2容器と、反応容器と、第1容器から希釈水又は洗浄水を吸引し、さらに、空気を吸引した後に、第2容器から試料を吸引し、吸引した試料を反応容器に分注するプローブとを備え、プローブにより、試料及び試薬を反応容器に分注して反応溶液を生成し、反応溶液の成分量を測定する自動分析装置において、非水系溶媒が入れられた第3容器と、空気を吸引した後であって、前記第2容器から試料を吸引する前に、プローブにより第3容器から非水系溶媒を吸引するようにプローブを制御する駆動制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動分析装置に関し、特に、試料及び試薬を反応容器に分注して反応溶液を生成し、該反応溶液の成分量を測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動分析装置では、キャリブレータ、血清、尿、希釈検体など液性の異なる試料を各容器から吸引し、反応容器に吐出して反応溶液を生成し、反応溶液の成分量を測定する。キャリブレータには標準液又は管理用試料(例えば、管理血清)が用いられる。既知の濃度のキャリブレータを用いて吸光度を測定し、測定結果に基づき、濃度と吸光度との関係線である検量線を較正するキャリブレーションを実施する。キャリブレーション実施後に、較正された検量線から試料の濃度を自動的に算出する。キャリブレーションの実施時期としては、例えば30日毎に自動的に実施される時期と、自動分析装置の試薬ポンプ、試薬プローブ、試料ポンプ、試料プローブ及び光源ランプなどの特定部品の交換や保守点検などを行った後に、実施される時期とがある。例えば、操作部の操作による指示を自動分析装置が受けて、キャリブレーションの依頼登録(キャリブレーションを行う項目の選択)を受け付けた場合に、キャリブレーションが実施される。
【0003】
基準サンプラによる測定濃度と評価対象サンプラによる測定濃度からそれぞれ回帰式を求め、回帰式により性能試験の評価を行うサンプリング性能試験がある。このサンプリング性能試験には血清を用いられるため、水溶性試料についてはサンプリング性能が若干劣る傾向がある。一般に試料を吸引する場合、試料成分の水への分子拡散を防止するために試料吸引前にエアーを吸引した後、試料を吸引する手段をとっている。しかし、エアーを吸引した後に、予めプローブ内に満たされていた水がプローブ管壁速度が0であるためにプローブの内壁に残留して水の層を形成する。その後、試料を吸引したとき、吸引した試料成分が境界層の水へ分子拡散し、それにより試料の濃度低下を招いてしまうことがある。このため、プローブによる試料の吸引時に、濃度低下を考慮した量の試料を余分に吸引し、プローブ内に吸引された試料の濃度低下を抑えている。以下の説明において、上記余分に吸引した試料を「試料ダミー」と呼ぶ。
【0004】
また、従来の自動分析装置として、プローブでの試料の吸入及び吐出動作を行わせるピストンを備えたポンプと、ピストンを駆動するためのステッピングモータと、ステッピングモータの制御回路及び駆動回路と、演算部と、試料及び分析項目の種類や試料の量を入力する入力装置とを有し、演算部が試料の種類や分注量に応じたパルス数を計算し、ステッピングモータの制御回路及び駆動回路がそのパルス数をステッピングモータに伝える。それにより、試料の粘性等による性質の差に無関係に正確に分注することが可能となる装置がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−291159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の従来技術では、プローブの内壁に形成された境界層の水へ試料成分が分子拡散するために試料の濃度低下を生じる。試料の濃度低下の度合いは、試料成分の分子量により異なる。例えば、低分子量域項目(例えば電解質、尿酸、カルシウム、無機リン、尿素窒素など)は高分子量域項目(総蛋白、アルブミン、酵素、脂質など)より拡散速度は10〜100倍速いため、濃度低下が大きい。特に低分子量域のキャリブレータは水溶性のためその度合いは血清に比べて大きい。そのため、試料の濃度低下を定量的に決定し難く、試料ダミーだけで、適切な分注確度を確保することが困難な場合もある。なお、試料ダミーの量を出来るだけ少量にすることが要望されている。
【0007】
また、試料の濃度低下に応じて、プローブに吸引される試料の量を変える必要性から、仮に、上記特許文献に記載された後者の従来技術を用いた場合、濃度低下の度合いの低い試料の吸引及び吐出では、ステッピングモータを低速回転させることにより少量の試料を吸引及び吐出し、濃度低下の度合いの高い試料の吸引及び吐出では、ステッピングモータを高速回転させることにより多量の試料を吸引及び吐出するため、試料の種類に応じて、試料の吸引及び吐出動作が異なって複雑となるという問題点があった。
【0008】
この発明は、上記の問題を解決するものであり、適切な分注確度を確保することが容易となり、試料ダミーを少量とすることが可能となり、また、試料の吸引及び吐出動作の複雑化を防止することが可能な自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明は、プローブの内壁に残留する水の層の上に非水系溶媒の層を形成した後に、試料を吸引すれば、試料の濃度低下を抑えることが可能となることに着目した。
具体的に、この発明の第1の形態は、希釈水又は洗浄水が入れられた第1容器と、試料が入れられた第2容器と、反応容器と、前記第1容器から前記希釈水又は前記洗浄水を吸引し、さらに、空気を吸引した後に、前記第2容器から前記試料を吸引し、該吸引した前記試料を前記反応容器に分注するプローブとを備え、該プローブにより、前記試料及び試薬を前記反応容器に分注して反応溶液を生成し、該反応溶液の成分量を測定する自動分析装置において、非水系溶媒が入れられた第3容器と、前記空気を吸引した後であって、前記前記第2容器から前記試料を吸引する前に、前記プローブにより前記第3容器から前記非水系溶媒を吸引するように前記プローブを制御する駆動制御部と、を有することを特徴とする自動分析装置である。
また、この発明の第2の形態は、希釈水又は洗浄水が入れられた第1容器と、試料が入れられた第2容器と、反応容器と、前記第1容器から前記希釈水又は前記洗浄水を吸引し、さらに、空気を吸引した後に、前記反応容器に分注すべき予め定められた前記試料を前記第2容器から吸引し、該吸引した前記試料を前記反応容器に分注するプローブとを備え、該プローブにより、液性の異なる複数種類の前記試料の中から測定項目に応じた前記試料を選び、該試料及び試薬を前記反応容器に分注して反応溶液を生成し、該反応溶液の成分量を測定する自動分析装置において、非水系溶媒が入れられた第3容器と、前記試料に対応付けて前記非水系溶媒の吸引の要否を記憶する記憶部と、前記反応容器に分注すべき前記予め定められた前記試料に対応付けて前記記憶部に記憶された要否の情報が前記非水系溶媒の吸引を要する場合に、前記空気を吸引した後であって、前記第2容器から前記試料を吸引する前に、前記プローブにより前記第3容器から前記非水系溶媒を吸引するように前記プローブを制御し、前記要否の情報が前記非水系溶媒の吸引を要しない場合に、前記空気を吸引した後に、前記第2容器から前記試料を吸引するように前記プローブを制御する駆動制御部と、を有することを特徴とする自動分析装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、適切な分注確度を確保することが容易となり、試料ダミーを少量とすることが可能となり、また、試料の吸引及び吐出動作の複雑化を防止することが可能となる。
【0011】
また、この発明の第1の形態によると、プローブにより希釈水又は洗浄水を吸引し、さらに、空気を吸引した後であって、試料を吸引する前に、非水系溶媒を吸引する構成なので、例えば、プローブの内壁に残留した水の層とプローブにより吸引された試料との間に非水系溶媒の層を形成することが可能となる。
【0012】
さらに、この発明の第2の形態によると、非水系溶媒の吸引を要しない場合を設けたので、非水系溶媒の消費量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態に係る自動分析装置の全体図である。
【図2】自動分析装置の概念図である。
【図3】試料プローブ、試料アーム、及び、試料プローブ駆動部の斜視図である。
【図4】自動分析装置の機能ブロック図である。
【図5】試料プローブの各動作を示したタイミングチャートである。
【図6】設定画面の一例を示す図である。
【図7】分析パラメータ項目等の入力手順を示すフローチャートである。
【図8】試料の測定手順を示すフローチャートである。
【図9】キャリブレータの測定動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施形態に係る自動分析装置の構成について図1から図7を参照して説明する。図1は、自動分析装置の全体図、図2は自動分析装置の概念図、図3は、試料プローブ、試料アーム、及び、その駆動装置の斜視図、図4は、自動分析装置の機能ブロック図である。
【0015】
先ず、自動分析装置の基本的な構成について図1、図2及び図4を参照して説明する。自動分析装置10は、試料庫100、試料(生体サンプル)を収容する試料容器101、試料アーム102、試料プローブ103、第1及び第2の試薬庫200、試薬を収容する試薬容器201、試薬アーム202、試薬プローブ203、試薬庫ケース210、反応庫300、反応容器301、駆動制御部40、記憶部42、判断部43、及び、表示制御部44を有する。駆動制御部40は、制御部41と、該制御部41の指示を受けて、それぞれ駆動する試料庫用駆動部104、試料プローブ駆動部105、試薬庫用駆動部204、試薬プローブ駆動部205、及び、反応庫用駆動部304とを有する。また、制御部41は、記憶部42及び判断部43を制御する。
【0016】
制御部41は、試料に対応付けて非水系溶媒の吸引の要否を記憶部42に記憶させる。表示制御部44は、試料に対応付けられた非水系溶媒の吸引の要否を表示部50に表示させる。制御部41は、操作部61の操作による変更指示を受けた場合に、表示制御部44に対し、変更された非水系溶媒の吸引の要否を表示させると共に、変更された非水系溶媒の吸引の要否を記憶部42に記憶させる。ここで、非水系溶媒は、水に不溶で、化学反応性が低く安定していれば良く、さらに、非揮発性である鎖式飽和炭化水素化合物の一般式 C2n+2でn≧20のアルカンであることが好ましい。
【0017】
さらに、試料庫100には、試料容器101の他に、希釈水又は洗浄水が入れられた希釈水容器106、及び、非水系溶媒が入れられた非水系溶媒容器107が設けられている。なお、希釈水容器106及び非水系溶媒容器107は、試料庫100とは別の収納庫等にそれぞれ設けられても良い。ここで、希釈水容器106、試料容器101、及び、非水系溶媒容器107が、第1容器、第2容器、及び、第3容器にそれぞれ相当している。また、試料プローブ103がプローブに相当している。
【0018】
試料庫100は、複数の試料容器101を円周方向に並べた状態で載置するディスクサンプラである試料ラック130と、試料ラック130を円周方向に回転させることにより、複数の試料容器101を順番に吸引位置に搬送する試料庫用駆動部104とを有する。
【0019】
第1及び第2の各試薬庫200は基本的に同じ構成をしている。以下に、第1の試薬庫200について主に説明し、第2の試薬庫200については、第1の試薬庫200と重複する説明を省略する。試薬庫200は、試薬容器201を円周方向に並べた状態で載置し、試薬容器201を円周方向に回転させることにより、複数の試薬容器201を順番に吸引位置に搬送する試薬庫用駆動部204を有する。試薬容器201には、試料に含まれる特定成分に対して選択的に反応する試薬が収容されている。
【0020】
第2の試薬庫200の試薬容器201には、前記第1の試薬庫200の試薬容器201に収容されている試薬と対をなす試薬が収容されている。
【0021】
反応庫300には複数の反応容器301が収容されている。反応庫300は、複数の反応容器301を円周方向に並べた状態で載置する反応ライン330と、反応ライン330を円周方向に回転させることにより、複数の反応容器301を順番に吐出位置に搬送する反応庫用駆動部304とを有する。
【0022】
試料アーム102の先端部には試料プローブ103が設けられている。試料プローブ103は、吸引位置に搬送された試料容器101から試料を吸引し、吸引した試料を、吐出位置に搬送された反応容器301に吐出する。試料アーム102は、試料プローブ103を吸引位置と吐出位置との間で移動させるように回動する。試薬アーム202の先端部には試薬プローブ203が設けられている。試薬プローブ203は、吸引位置に搬送された試薬容器201から試薬を吸引し、吸引した試薬を、吐出位置に搬送された反応容器301に吐出する。試薬アーム202は、試薬プローブ203を吸引位置と吐出位置との間で往復移動させるように回動する。
【0023】
次に、試料プローブ駆動部105及び試薬プローブ駆動部205の各構成について図3及び図4を参照して説明する。なお、各構成は基本的に同じであり、以下、試料プローブ駆動部105の構成を代表して説明し、試薬プローブ駆動部205の構成の説明を省略する。
【0024】
試料アーム102の先端に、この試料アーム102の軸方向に対して垂直に、試料プローブ103が固定されている。試料アーム102の末端は、この試料アーム102の軸方向に対して垂直に設けられているスプライン軸123の上端に固定支持されている。このスプライン軸123の略中間には回動機構124が固定されており、この回動機構124にはスプライン側プーリ125が同心円上に設けられている。このスプライン側プーリ125と、自動分析装置10のフレーム(図示省略)に固定され、回動機構124の駆動源を構成するステッピングモータ122の回転シャフトに固定されたモータ側プーリ127との間には、回動用ベルト128が掛け渡されて、モータ側プーリ127の回動に対してスプライン側プーリ125が連動して回動するようになっている。
【0025】
スプライン軸123の下端はブロック129に回動自在に軸支され、このブロック129にはボールネジ120のナット121が固定されている。さらに、前記ボールネジ120には、自動分析装置10のフレームに固定された上下動用ステッピングモータ122Aの回転軸が直接連結されており、ボールネジ120が回転することにより、ナット121が上下運動し、それに伴ってブロック129が上下運動するようになっている。
【0026】
次に、試料プローブ103及び試薬プローブ203の各制御、及び、各制御するための駆動制御部の構成について図4から図6を参照して説明する。図5は、試料プローブ103の各動作を示したタイミングチャート、図6は設定画面の一例を示す図である。
【0027】
先ず、試料プローブ103を制御するための駆動制御部の構成を説明する。試料プローブ103を下降及び上昇させ、及び、試料プローブ103を希釈水容器106の位置、非水系溶媒容器107の位置、試料容器101の位置、試薬容器201の位置、及び、反応容器301の位置の各位置に移動させ、さらに、洗浄位置、及び、待機位置に移動させるための試料プローブ駆動部105と、試料プローブ103により、試料を吸引及び吐出させるためのポンプ(図示省略)と、電磁弁(図示省略)と、電磁弁を駆動させるアクチュエータ(図示省略)と、試料プローブ駆動部105等を制御する制御部41とを有する。
【0028】
試料を吸引及び吐出させるためのポンプはステッピングモータを有する。ステッピングモータは、その回転速度に応じて試料の吸引速度及び吐出速度を変化させる。ステッピングモータの回転速度又は回転時間の一方を変化させることにより、試料の吸引量及び吐出量を変化させることが可能となる。
【0029】
次に、試料プローブ103の制御について説明する。
(希釈水の吸引)
制御部41の指示を受けて、試料プローブ駆動部105が試料アーム102を回動させ、試料プローブ103が待機位置から希釈水容器(第1容器)106の位置に移動すると、試料プローブ駆動部105が試料プローブ103を下降させる。制御部41の指示を受けて、ポンプ及び電磁弁が作動し、試料プローブ103により所定の希釈水容器106から希釈水を吸引させる。希釈水の吸引は、図5にイオン交換水の吸引で示す。
【0030】
(空気の吸引)
制御部41の指示を受けて、電磁弁が作動し閉じ、試料プローブ駆動部105が試料プローブ103を上昇させる。試料アーム102を回動させ、試料プローブ103が希釈水容器106の位置から非水系溶媒容器(第3容器)107の位置に移動する間に、電磁弁が作動して、空気を吸引させる。このとき、試料プローブ103内から希釈水が除去されるが、上記したようにプローブ管壁速度が0であるために、試料プローブ103の内壁に希釈水の層が残留する。
【0031】
(非水系溶媒の吸引)
制御部41が記憶部42から非水系溶媒の吸引の要否を読み出し、読み出した情報が非水系溶媒の吸引の要である場合、その指示を試料プローブ駆動部105にする。記憶部42に記憶された、分析パラメータ項目、キャリブレータ分注タイプ、試料種別、非水系溶媒の吸引量、及び、空気の吸引量の各データを一列に並べた配列構造を図6に示す。なお、分析パラメータ項目が測定項目に相当する。
【0032】
制御部41は、分析パラメータ項目の分注タイプ及び試料種別の各データが、「タイプ1」及び「水溶液」であるとき、非水系溶媒の吸引の要であるとして、各データを読み出す。また、制御部41は、分析パラメータ項目の分注タイプ及び試料種別の各データが、「タイプ0」及び「血清、尿」であるとき、非水系溶媒の吸引の否であることを読み出す。さらに、制御部41は、操作部61の操作による非水系溶媒の吸引量の入力を受けて、非水系溶媒の吸引の要否を記憶部に記憶させる。例えば、制御部41は、非水系溶媒の吸引量(μL)が「0」より大きな値であるとき、非水系溶媒の吸引の要であるとして、そのデータを読み出す。また、制御部41は、非水系溶媒の吸引量(μL)が「0」であるとき、非水系溶媒の吸引の否であるとして、そのデータを読み出す。
【0033】
制御部41の指示を受けて、試料プローブ駆動部105が試料プローブ103を希釈水容器106の位置から非水系溶媒容器107の位置に移動させた後、試料プローブ駆動部105が試料プローブ103を下降させる。制御部41の指示を受けて、電磁弁が作動して、試料プローブ103により所定の非水系溶媒容器107から非水系溶媒を吸引させる。試料プローブ103内に非水系溶媒が満たされる。なお、試料プローブ103の内壁には希釈水の層が残留したままである。
【0034】
(試料の吸引)
非水系溶媒の吸引終了後、又は、制御部41は、記憶部42から非水系溶媒の吸引の要否を読み出し、読み出した情報が非水系溶媒の吸引の否である場合、その指示を試料プローブ駆動部105にする。
【0035】
制御部41の指示を受けて、試料プローブ駆動部105が試料アーム102を回動させ、試料プローブ103を非水系溶媒容器107の位置から試料容器101の位置に移動させた後、試料プローブ駆動部105が試料プローブ103を下降させる。制御部41の指示を受けて、電磁弁が作動して、試料プローブ103により所定の試料容器101から試料を吸引させる。それにより、試料プローブ103内から非水系溶媒が除去され、新たに試料が満たされる。このときにも、上記したようにプローブ管壁速度が0であるために、試料プローブ103の内壁に希釈水の層が残留し、その希釈水の層の上に形成された非水系溶媒の層も残留する。
【0036】
それにより、試料プローブ103の内壁に残留した希釈水の層と、新たに吸引された試料との間に非水系溶媒が形成されているため、吸引した試料成分が希釈水へ分子拡散することがなく、試料の濃度低下を抑えることが可能となる。試料ダミーの吸引が不必要又は極めて少量となり、所定量の試料を吸引すれば良く、吸引すべき試料の種類(低分子量域又は高分子量域)に関係なく、試料の吸引時間及び吸引動作は同じである。
【0037】
(試料の吐出)
制御部41の指示を受けて、電磁弁が作動し閉じ、試料プローブ駆動部105が試料プローブ103を上昇させた後、試料アーム102を回動させ、試料プローブ103を試料容器101の位置から反応容器301の位置に移動させる。その後、試料プローブ駆動部105が試料プローブ103を下降させる。制御部41の指示を受けて、電磁弁が作動して、試料プローブ103により所定の反応容器301に試料を吐出させる。試料の吐出においても、所定量の試料を吐出すれば良く、吐出する試料の種類(低分子量域又は高分子量域)に関係なく、試料の吐出時間及び吐出動作は同じである。
【0038】
以上により、所定濃度の試料を反応容器301に所定量分注することが可能となり、試料の吸引及び吐出動作の複雑化を防止することが可能となる。試料ダミーの吸引が不必要又は極めて少量となる。また、試料の種類に応じて、試料の分注量を異ならせないので、適切な分注確度を容易に確保することが可能となる。
【0039】
(試料プローブの洗浄、待機位置への移動)
次に、制御部41の指示を受けて、電磁弁が作動し閉じ、試料プローブ駆動部105が試料プローブ103を上昇させ、試料アーム102を回動させ、試料プローブ103を反応容器301の位置から洗浄位置に移動させる。試料プローブ103の洗浄を終了した後、試料プローブ駆動部105が試料プローブ103を待機位置に移動させる。
【0040】
以上、試料プローブ103の制御について説明した。なお、水溶性試料の吸引をする前に、試料プローブ103による非水系溶媒の吸引を要する場合を図5(a)に示した。また、血清又は尿試料の吸引をする前に、試料プローブ103による非水系溶媒の吸引を要しない場合を図5(b)に示した。
【0041】
次に、試薬プローブ203を制御するための駆動制御部の構成を説明する。この構成は、上記した試料プローブ103を制御するための駆動制御部の構成と基本的に同じである。すなわち、試薬プローブ203を下降及び上昇させ、及び、試薬プローブ203を吸引位置と吐出位置との間に移動させ、さらに、洗浄位置、及び、待機位置に移動させるための試薬プローブ駆動部205と、試薬プローブ203により、試薬を吸引及び吐出させるためのポンプ(図示省略)と、電磁弁(図示省略)と、電磁弁を駆動させるアクチュエータ(図示省略)と、試料プローブ駆動部105等を制御する制御部41とを有する。
【0042】
次に、試薬プローブ203の制御について説明する。
(試薬の吸引)
制御部41の指示を受けて、試薬プローブ駆動部205が試薬アーム202を回動させ、試薬プローブ203を待機位置から吸引位置に移動させると、試薬プローブ駆動部205が試薬プローブ203を下降させる。制御部41の指示を受けて、電磁弁が作動して、試薬プローブ203により所定の試薬容器201から試薬を吸引させる。
【0043】
(試薬の吐出)
制御部41の指示を受けて、電磁弁が作動し、試薬プローブ駆動部205が試薬プローブ203を上昇させる。試薬アーム202を回動させ、試薬プローブ203が吸引位置から吐出位置に移動させた後に、試薬プローブ駆動部205が試薬プローブ203を下降させる。制御部41の指示を受けて、電磁弁が作動して、試薬プローブ203により所定の反応容器301に試料を吐出させる。
【0044】
(試薬プローブの洗浄、待機位置への移動)
次に、制御部41の指示を受けて、電磁弁が作動し閉じ、試薬プローブ駆動部205が試薬プローブ203を上昇させ、試薬アーム202を回動させ、試薬プローブ203を吐出位置から洗浄位置に移動させ、試薬プローブ203の洗浄を終了した後に、待機位置に移動させる。
【0045】
(攪拌、測定)
以上のように、試料及び試薬が分注された反応容器301を、反応庫用駆動部304によって、測光ユニット190の方へ移動させる。それまでの間、反応容器301内の試料及び試薬は攪拌子(図示省略)によって攪拌される。測光ユニット190は、攪拌後の反応容器301に光を照射して、透過した光から設定波長における吸光度を測定する。
【0046】
以上説明したように、試料プローブ駆動部105及び試薬プローブ駆動部205により、試料及び試薬を反応容器301に分注して反応溶液を生成し、反応溶液の成分量を測定する。試料プローブ駆動部105及び試薬プローブ駆動部205の基本的な構成は同じである。
【0047】
次に、自動分析装置10の一連の動作について、図6から図9を参照して説明する。図7は分析パラメータ項目等の入力手順を示すフローチャート、図8は、試料の測定手順を示すフローチャート、図9は、キャリブレータの測定動作を示すフローチャートである。
【0048】
先ず、分析パラメータ項目等の入力手順について図7を参照して説明する。分析パラメータ項目等の入力に際し、操作部61の操作による指示を受けて、制御部41が表示制御部44及び記憶部42を制御し、分析パラメータ画面、キャリブレータ依頼画面、設定画面の各画面をそれぞれ表示させ、各画面に分析パラメータ項目、分注タイプ、試料種別、非水系溶媒の吸引量、空気の吸引量等の各データを表示すると共に、各データを記憶部42に記憶させる。設定画面の一例を図6に示す。
【0049】
(分析パラメータ項目の入力:S101)
分析パラメータ項目Aのキャリブレータ試料においては、キャリブレータ分注タイプ「タイプ0」がデフォルトで設定されている。デフォルト以外の設定をする場合、操作部61の操作による指示を受けて、制御部41が表示制御部44に対し、設定画面の「項目の各欄にカーソルを表示させると共に、各欄に「項目B」、「項目C」を表示させる。
【0050】
(分注タイプの入力:S102)
次に、操作部61の操作による指示を受けて、制御部41が表示制御部44に対し、分析パラメータ画面(図示省略)の所定の各欄にカーソルを表示させると共に、例えば、分析パラメータ項目Bに係る分注タイプの欄に「タイプ1」を表示させる。また、分析パラメータ項目Cに係る分注タイプの欄に「タイプ0」を表示させる。
【0051】
(試料種別の入力:S103)
次に、操作部61の操作による指示を受けて、制御部41が表示制御部44に対し、キャリブレータ依頼画面(図示省略)の所定の各欄にカーソルを表示させると共に、例えば、項目Aに係る試料種別の欄に「血清または尿」を表示させる。また、項目Bに係る試料種別の欄に「水溶液」を表示させる。また、項目Cに係る試料種別の欄に「血清または尿」を表示させる。
【0052】
(非水系溶媒の吸引量の入力:S104)
次に、操作部61の操作による指示を受けて、制御部41が表示制御部44に対し、設定画面の所定の各欄にカーソルを表示させると共に、例えば、項目A、項目B、及び、項目Cに係る非水系溶媒の吸引量の各欄に「***」を表示させる。
【0053】
(空気の吸引量の入力:S105)
次に、操作部61の操作による指示を受けて、制御部41が表示制御部44に対し、設定画面の所定の各欄にカーソルを表示させると共に、例えば、項目A、項目B、及び、項目Cに係る空気の吸引量の各欄に「***」を表示させる。以上のようにして、各画面の各欄に表示させた分析パラメータ項目、キャリブレータ分注タイプ、試料種別、非水系溶媒の吸引量、及び、空気の吸引量の各データを制御部41は記憶部42に記憶させる。
【0054】
次に、キャリブレーション及び一般検体の測定について図8を参照して説明する。先ず、キャリブレータの測定を行うと判断部43が判断した場合(ステップS201;Y)、キャリブレータの測定を行う(ステップS202)。なお、キャリブレータの測定については図9を参照して後述する。キャリブレータの測定後、一般検体の測定(ステップS203)に移る。
【0055】
キャリブレータの測定を行わないと判断部43が判断した場合(ステップS201;N)、一般検体を測定する(ステップS203)。一般検体の測定中には、標準検体の測定が有りと判断部43が判断した場合(ステップS204;Y)、標準検体を測定する(ステップS206)。一般検体の測定が全て終了した場合(ステップS205;Y)、試料の測定を終了する。一方、一般検体の測定が全て終了してない場合(ステップS205;N)、新たな一般検体の測定(ステップS203)を繰り返す。
【0056】
次に、キャリブレータの測定について図9を参照して説明する。キャリブレータの測定は、設定画面に表示され、記憶部42に記憶された、分析パラメータ項目、キャリブレータ分注タイプ、試料種別、非水系溶媒の吸引量、及び、空気の吸引量の各データを基に行われる。
【0057】
制御部41は、試料種別のデータに対応付けられた分析パラメータ項目を記憶部42から読み出す(ステップS301)。例えば、分析パラメータ項目Bが読み出された場合(非水系溶媒の吸引を要する場合)(ステップS302;Y)、非水系溶媒の吸引を含む試料分注を行う(ステップS303)。すなわち、試料吸引時に空気、非水系溶媒、少量の試料ダミー、分注用試料の順に吸引動作される。なお、非水系溶媒の吸引を含む試料分注については、先の試料プローブ103の制御の説明中に述べた。
【0058】
また、制御部41は、試料に対応付けて(分析パラメータ項目、分注タイプ、試料種別、あるいは、非水系溶媒の吸引量の少なくとも1つ、又は、2以上の組合せに対応づけて)非水系溶媒の吸引の要否を記憶部42に記憶させているので、分析パラメータ項目に限らず、分注タイプ、試料種別、又は、非水系溶媒の吸引量を基に、非水系溶媒の吸引の要否を決定しも良い。
【0059】
なお、試料に対応付けて非水系溶媒の吸引の要否を記憶部42に記憶させずに、キャリブレーションの実施の有無に対応付けて非水系溶媒の吸引の要否を記憶部42にさせても良い。この場合、分析パラメータ項目又は分注タイプに対応付けて非水系溶媒の吸引の要否を記憶部42に記憶させる。このとき、非水系溶媒の吸引量は、試料が血清または尿であっても、「0」より大きい値となる。
【0060】
また、例えば、分析パラメータ項目Aが読み出された場合(非水系溶媒の吸引を要しない場合)(ステップS302;N)、非水系溶媒の吸引を含まない試料分注を行う(ステップS304)。すなわち、試料吸引時に空気、少量の試料ダミー、分注用試料の順に吸引動作される。なお、非水系溶媒の吸引を含まない試料分注については、先の試料プローブ103の制御の説明中に述べた。非水系溶媒の吸引を要しない場合を設けたので、非水系溶媒の消費量を低減することが可能となる。
【0061】
次に、記憶部42に記憶された、分析パラメータ項目、キャリブレータ分注タイプ、試料種別、非水系溶媒の吸引量、及び、空気の吸引量の各データを変更する場合について説明する。操作部61の操作による指示を受けて、制御部41は、表示制御部44に対し、分析パラメータ画面、キャリブレータ依頼画面、及び、設定画面の各画面上で各データを変更表示させ、変更した各データを記憶部42に記憶させる。各画面上で各データを変更すると共に、変更した各データを記憶させるので、変更作業が容易となる。
【0062】
なお、前記実施形態においては、キャリブレータの測定において、非水系溶媒の吸引を行うものを示したが、一般検体の測定において、非水系溶媒の吸引を行うようにしても良い。
【0063】
また、前記実施形態では、試料の種別に応じて、非水系溶媒の吸引を行う場合と行わない場合とを設けたが、試料の種別に関係なく、非水系溶媒の吸引を行っても良い。例えば、キャリブレータの吸引においては、キャリブレータの種別に関係なく、非水系溶媒の吸引を行ってもよい。それにより、プローブの内壁に残留した水の層とプローブにより吸引されたキャリブレータとの間に非水系溶媒の層を形成することが可能となり、適切な分注確度を確保することが容易となる。
【符号の説明】
【0064】
10 自動分析装置 100 試料庫 101 試料容器(第2容器)
102 試料アーム 103 試料プローブ 104 試料庫用駆動部
105 試料プローブ駆動部 106 希釈水容器(第1容器)
107 非水系溶媒容器(第3容器) 120 ボールネジ 121 ナット
123 スプライン軸 124 回動機構 125 スプライン側プーリ
127 モータ側プーリ 128 回動用ベルト 129 ブロック
130 試料ラック 190 測光ユニット 200 試薬庫
201 試薬容器 202 試薬アーム 203 試薬プローブ
204 試薬庫用駆動部 205 試薬プローブ駆動部 210 試薬庫ケース
300 反応庫 301 反応容器 304 反応庫用駆動部
40 駆動制御部 41 制御部 42 記憶部 43 判断部
44 表示制御部 50 表示部 操作部61


【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈水又は洗浄水が入れられた第1容器と、試料が入れられた第2容器と、反応容器と、前記第1容器から前記希釈水又は前記洗浄水を吸引し、さらに、空気を吸引した後に、前記第2容器から前記試料を吸引し、該吸引した前記試料を前記反応容器に分注するプローブとを備え、該プローブにより、前記試料及び試薬を前記反応容器に分注して反応溶液を生成し、該反応溶液の成分量を測定する自動分析装置において、
非水系溶媒が入れられた第3容器と、
前記空気を吸引した後であって、前記第2容器から前記試料を吸引する前に、前記プローブにより前記第3容器から前記非水系溶媒を吸引するように前記プローブを制御する駆動制御部と、
を有する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
希釈水又は洗浄水が入れられた第1容器と、試料が入れられた第2容器と、反応容器と、前記第1容器から前記希釈水又は前記洗浄水を吸引し、さらに、空気を吸引した後に、前記反応容器に分注すべき予め定められた前記試料を前記第2容器から吸引し、該吸引した前記試料を前記反応容器に分注するプローブとを備え、該プローブにより、液性の異なる複数種類の前記試料の中から測定項目に応じた前記試料を選び、該試料及び試薬を前記反応容器に分注して反応溶液を生成し、該反応溶液の成分量を測定する自動分析装置において、
非水系溶媒が入れられた第3容器と、
前記試料に対応付けて前記非水系溶媒の吸引の要否を記憶する記憶部と、
前記反応容器に分注すべき前記予め定められた前記試料に対応付けて前記記憶部に記憶された要否の情報が前記非水系溶媒の吸引を要する場合に、前記空気を吸引した後であって、前記第2容器から前記試料を吸引する前に、前記プローブにより前記第3容器から前記非水系溶媒を吸引するように前記プローブを制御し、前記要否の情報が前記非水系溶媒の吸引を要しない場合に、前記空気を吸引した後に、前記第2容器から前記試料を吸引するように前記プローブを制御する駆動制御部と、
を有する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
前記記憶部に記憶されている、前記試料に対応付けられた前記非水系溶媒の吸引の要否を表示部に表示させる表示制御部と、操作部の操作による変更指示を受けた場合に、前記表示制御部に対し、前記変更された前記非水系溶媒の吸引の要否を表示させると共に、変更された前記非水系溶媒の吸引の要否を前記記憶部に記憶させる制御部とを有することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記操作部の操作による前記非水系溶媒の吸引量の入力を受けて、前記非水系溶媒の吸引の要否を前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記非水系溶媒は、水に不溶で、化学反応性が低く安定している、非揮発性である鎖式飽和炭化水素化合物の一般式 C2n+2でn≧20のアルカンを含む請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記試料は、水溶性のキャリブレータを含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−117867(P2011−117867A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276405(P2009−276405)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】