説明

自動分析装置

【課題】フィラメントの変形による波長確度の低下を防ぐことができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】反応容器3に照射するための光を発するフィラメント712を有する光軸70上に配置された光源71と、光源71と反応容器3の間に離間して配置され、光源71からの光が通過する開口部721を有する遮蔽板72とを備え、開口部721は、光軸70に対して仮想の平行光をフィラメント712に当てることにより、遮蔽板72に投影される像の領域内に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に含まれている成分を分析する自動分析装置に係り、特に、ヒトの血液や尿などの体液中に含まれる成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、被検体から採取された被検試料と各検査項目の試薬との混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、分光光度計や比濁計等の測光部で光学的に測定することにより、被検試料中の様々な検査項目成分の濃度や酵素の活性等で表される分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料毎に多数の検査項目の中から選択された検査対象の項目の分析を行う。そして、分析を行うために、被検試料をサンプル分注プローブで試料容器から反応容器に分注し、各検査項目の試薬を試薬分注プローブで試薬容器から反応容器に分注する。次いで、反応容器に分注された被検試料及び試薬の混合液を撹拌子で撹拌した後、測光部で測定する。更に被検試料及び試薬に接触したサンプル及び試薬分注プローブ、並びに混合液に接触した撹拌子及び反応容器を洗浄した後、繰り返して測定に使用する。
【0004】
ところで、測光部には、様々な検査項目の混合液の反応に応じて、多数の波長を利用して混合液の測定を行うため、光源からの光を分光する回折格子や分光された各波長の光強度を検出する光検出器が用いられている。また、様々な検査項目の混合液の測定が可能なように近紫外から近赤外領域に亘って高い光強度が得られるハロゲンランプ等の光源が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
そして、ハロゲンランプ等のフィラメントを有する光源を長時間点灯していると、フィラメントの劣化に伴い光強度が低下するため、所定期間毎に交換される。また、測光部では光源から照射された光をモニタして、光強度が所定期間内に許容範囲を外れて低下した光源の異常を検出できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−58151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、所定期間内に光強度が許容範囲内であっても、フィラメントが変形して測光部の光軸からずれて、光検出器で検出する光の波長がずれてしまうため、例えば所定の波長における分子吸光係数を含むファクタを用いて生成される酵素活性値等の分析データが悪化する問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、フィラメントの変形による波長確度の低下を防ぐことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の自動分析装置は、被検試料及び試薬の混合液が収容された反応容器に光を照射して前記混合液内を透過した光を回折格子で分光し、そのスペクトルを検出して前記混合液を測定する自動分析装置において、前記反応容器に照射するための光を発するフィラメントを有する光軸上に配置された光源と、前記光源と前記反応容器の間に離間して配置され、前記光源からの光が通過する開口部を有する遮蔽板とを備え、前記開口部は、前記フィラメントが前記遮蔽板に投影される像の領域内に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の本発明の自動分析装置は、被検試料及び試薬の混合液が収容された反応容器に光を照射して前記混合液内を透過した光を回折格子で分光し、そのスペクトルを検出して前記混合液を測定する自動分析装置において、前記反応容器に照射するための光を発するフィラメントを有する光軸上に配置された光源と、前記光源からの光の照射により、前記回折格子から出射される0次光を検出して前記フィラメントの位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段により検出された位置情報に基づいて、前記光源からの光の前記光軸に対する位置ずれを補正する補正手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フィラメントの変形による光軸からの光の位置ずれを防ぐことにより、波長確度の低下を防ぐことが可能となり、分析データの悪化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例1に係る分析部の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の実施例1に係る測光部の構成を示す上面図。
【図4】本発明の実施例1に係る光源及び遮蔽板の構成を示す図。
【図5】本発明の実施例1に係る遮蔽板を説明するための図。
【図6】本発明の実施例1に係る遮蔽板を説明するための図。
【図7】本発明の実施例2に係る測光部の構成を示す上面図。
【図8】本発明の実施例2に係る測光部の動作を示すフローチャート。
【図9】本発明の実施例2に係るフィラメントからの光の補正を説明するための一例を示す図。
【図10】本発明の実施例3に係る測光部の構成を示す上面図。
【図11】本発明の実施例3に係る測光部の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明による自動分析装置の実施例1を、図1乃至図5を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料と各検査項目に該当する試薬との混合液を測定して標準データや被検データを生成する分析部24と、分析部24の測定に関る各分析ユニットの駆動及び制御を行う分析制御部25とを備えている。
【0016】
また、分析部24で生成された標準データや被検データを処理して検量データや分析データの生成を行うデータ処理部30と、データ処理部30で生成された検量データや分析データを印刷出力や表示出力する出力部40と、各種コマンド信号の入力等を行う操作部50と、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0017】
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、標準試料や被検試料等の各試料を収容する試料容器17と、この試料容器17を保持するサンプルディスク5と、各試料に含まれる検査項目の成分と反応する1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する試薬容器6と、この試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aを有する試薬庫1と、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、この試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aを有する試薬庫2と、円周上に配置された複数の反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0018】
また、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の各試料を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、このサンプル分注プローブ16を回動及び上下移動可能に保持するサンプル分注アーム10と、各試料の分注終了毎にサンプル分注プローブ16を洗浄する洗浄槽16aとを備えている。
【0019】
また、試薬庫1に収納された試薬容器6内の第1試薬を吸引して各試料が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14と、第1試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に保持する第1試薬分注アーム8と、第1試薬の分注終了毎に第1試薬分注プローブ14を洗浄する洗浄槽14aとを備えている。
【0020】
また、反応容器3内に吐出された各試料と第1試薬の混合液を撹拌する第1撹拌子18と、第1撹拌子18を回動及び上下移動可能に保持する第1撹拌アーム20と、混合液の撹拌終了毎に第1撹拌子18を洗浄する洗浄槽18aとを備えている。
【0021】
また、試薬庫2に収納された試薬容器7内の第2試薬を吸引して各試料及び第1試薬が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ15と、第2試薬分注プローブ15を回動及び上下移動可能に保持する第2試薬分注アーム9と、第2試薬の分注終了毎に第2試薬分注プローブ15を洗浄する洗浄槽15aとを備えている。
【0022】
また、反応容器3内の各試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する第2撹拌子19と、第2撹拌子19を回動及び上下移動可能に保持する第2撹拌アーム21と、混合液の撹拌終了毎に第2撹拌子19を洗浄する洗浄槽19aとを備えている。
【0023】
また、反応容器3内の混合液に光を照射して光学的に測定する測光部13と、測光部13で測定を終了した反応容器3内を洗浄する反応容器洗浄部12とを備えている。
【0024】
そして、測光部13は、反応容器3に光を照射し、その反応容器3内の標準試料や被検試料を含む混合液を透過した各検査項目の波長光を検出する検出信号に基づいて、例えば吸光度や吸光度の変化量で表される標準データや被検データを生成する。そして、生成した標準データや被検データをデータ処理部30に出力する。
【0025】
分析制御部25は、分析部24の各分析ユニットを駆動する機構を有する機構部26、及びこの機構部26の各機構を制御する制御部27を備えている。そして、機構部26は分析サイクル毎に、サンプルディスク5、試薬庫1の試薬ラック1a、及び試薬庫2の試薬ラック2aを夫々回動した後に停止する機構、並びに反応ディスク4を回転した後に停止する機構を備えている。また、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、及び第2撹拌アーム21を夫々回動及び上下移動する機構等を備えている。
【0026】
図1に示したデータ処理部30は、分析部24の測光部13から出力された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する演算部31と、演算部31で生成された標準データや分析データを保存するデータ記憶部32とを備えている。
【0027】
演算部31は、測光部13から出力された標準データ及びこの標準データの標準試料に予め設定された標準値から、各検査項目成分の濃度や活性と標準データの関係を表す検量データを生成し、生成した検量データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0028】
また、測光部13から出力された吸光度で表される被検データに対応する検査項目の検量データをデータ記憶部32から読み出し、読み出した検量データを用いて測光部13から出力された被検データから濃度値として表される分析データを生成する。また、吸光度変化量で表される被検データに、分析パラメータとして設定された所定の波長における分子吸光係数を含むファクタを乗ずることにより、酵素の活性値として表される分析データを生成する。そして、生成した分析データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0029】
データ記憶部32は、ハードディスク等のメモリデバイスを備え、演算部31から出力された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部31から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
【0030】
出力部40は、データ処理部30の演算部31から出力された検量データや分析データを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0031】
表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを表示する。また、自動分析装置100で検査可能な各検査項目の分析パラメータを設定するための分析パラメータ設定画面、各検査項目に該当する試薬の試薬情報を設定するための試薬情報設定画面、被検試料毎に被検試料を識別する氏名やID等の識別情報及び検査対象の検査項目を設定するための被検試料情報設定画面等を表示する。
【0032】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、検査項目毎の分析パラメータ、試薬情報、被検試料の識別情報及び検査項目等を設定するための操作を行う。また、表示部42の被検試料情報設定画面で設定された被検試料毎に検査項目を分析するための操作を行う。
【0033】
システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備え、操作部50からの操作により入力されたコマンド信号、各検査項目の分析パラメータの情報、試薬情報、被検試料の識別情報及び検査項目の情報等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
【0034】
以下、図1乃至図6を参照して、分析部24における測光部13の構成の一例を説明する。図3は、測光部13の構成を示す上面図である。図4は、測光部13を構成しているユニットの一部を示す図である。図5及び図6は、図4に示したユニットを説明するための図である。
【0035】
図3において、測光部13は、例えば白色光を発するハロゲンランプ等の光軸70上に配置された光源71と、光源71からの光を制限する開口部721を有する遮蔽板72と、遮蔽板72を通過した光を例えば反応容器3内に集光する第1の集光レンズ73と、反応容器3内の混合液を透過した光をスリット75に集光する第2の集光レンズ74とにより構成される。
【0036】
また、スリット75を通過した光を分光する回折格子76と、回折格子76により分光されたスペクトルを波長毎に検出して電気信号に変換するフォトダイオードを有する光検出器77と、光検出器77からの信号を処理して標準データや被検データを生成する信号処理部78とにより構成される。
【0037】
図4は、光源71及び遮蔽板72の構成を示した図である。そして、図4(a)は光源71及び遮蔽板72を第1の集光レンズ73側の光軸70の方向から見た正面図であり、図4(b)は光源71及び遮蔽板72の側面図である。
【0038】
光源71は、反応容器3に照射するための光を発する、中心軸711の回りを螺旋状に巻かれたタングステンからなるフィラメント712を有する。そして、所定の期間使用した後に交換され、交換時に中心軸711が光軸70と直交するように取り付けられる。
【0039】
遮蔽板72は、光源71と第1の集光レンズ73の間に離間して光軸70に対して垂直に配置され、光源71からの光が通過する開口部721を有する。そして、開口部721は、図5(a)に示すように、光軸70に対して仮想の平行光をフィラメント712に当てることにより、図5(b)に示すように、遮蔽板72に投影される破線で示す像の領域内に設けられている。
【0040】
なお、図6に示すように、遮蔽板72に投影される像が開口部721に含まれない例えば幅方向における長さが相対的に開口部721よりも短いフィラメント713である場合、フィラメント713が変形して、その発光中心が光軸70から回折格子76により分光されるスペクトル面に平行であり、且つ光軸70に対して垂直な方向である矢印L1方向又はこのL1方向とは反対方向の矢印L2方向へずれると、開口部721を通過する光の中心が光軸70からL1方向又はL2方向へずれる。これにより、回折格子76に入射する位置がL1方向又はL2方向にずれて、回折格子76により分散された各波長の光の検出器77に入射する位置がずれる。この位置ずれにより光検出器77で検出される光の波長がずれる。
【0041】
従って、光源71と第1の集光レンズ73の間に遮蔽板72を配置し、遮蔽板72の開口部721をフィラメント712像の領域に含まれる大きさにしておくことにより、フィラメント712が所定の期間の使用で変形してL1方向又はL2方向へずれた場合でも、発光中心が開口部721に対して相対的に広くなるために開口部721を通過する光の中心が光軸70からずれるのを防ぐことができる。これにより、光検出器77で検出される光の波長のずれを防ぐことが可能となり、所定の波長における分子吸光係数を含むファクタを用いて生成される酵素活性値等の分析データの悪化を防ぐことができる。
【0042】
以上述べた本発明の実施例1によれば、光源71と反応容器3の間に遮蔽板72を配置し、光軸70に対して仮想の平行光を当てることにより遮蔽板72に投影されるフィラメント712の像の領域内に開口部721を設けることにより、フィラメント712の変形による波長確度の低下を防ぐことが可能となり、分析データの悪化を防ぐことができる。
【実施例2】
【0043】
以下、本発明による自動分析装置の測光部の実施例2を、図7乃至図9を参照して説明する。
【0044】
図7は、実施例2に係る自動分析装置の測光部の構成を示した上面図である。図7に示した実施例2が図3における実施例1と異なる点は、光源71aに置き換えた点と、遮蔽板72を除いた点と、回折格子76に入射した光の内の波長分離が行われない0次光を検出する位置検出器80及び位置検出器80からの位置情報に基づいて光源71aにおける光の光軸70からの位置ずれを補正する補正手段である補正部81を追加配置した点である。実施例2を構成しているユニットの内、実施例1と同じユニットには同じ符号を付与し説明を省略又は簡略する。
【0045】
この測光部13aは、光源71a、第1及び第2の集光レンズ73,74、スリット75、回折格子76、光検出器77、信号処理部78、位置検出器80、及び補正部81により構成される。
【0046】
光源71aは、光軸70上に配置され、反応容器3に照射するための光を発するフィラメント712aを有する。フィラメント712aは、第1の集光レンズ73により反応容器3内に集光されるため、反応容器3に収容した混合液に含まれる大きさに形成されている。そして、光源71aは、定期的に交換され、交換時にフィラメント712aの中心軸が光軸70と直交するように取り付けられる。
【0047】
位置検出器80は、光源71aからの光の照射により回折格子76から出射される0次光を検出する一次元配列された複数のフォトダイオードを備えている。そして、0次光を検出したフォトダイオードの位置から光軸70のL1方向及びL2方向における光源71aのフィラメント712aの位置を検出する。
【0048】
補正部81は、位置検出器80により検出された位置情報に基づいて、光源71aからの光の光軸70に対する位置ずれを補正するために設けられ、光源71aのフィラメント712aが光軸70からL1方向又はL2方向にずれているか否かを判定する判定部82、光源71aからの光を屈折可能に透過する屈折板83、及びこの屈折板83を回動駆動する駆動部84により構成される。
【0049】
判定部82は、位置検出器80で検出された位置情報に基づいて、光軸70のL1方向及びL2方向におけるフィラメント712aと光軸70間の距離を求め、求めた距離の情報からフィラメント712aが光軸70からずれているか否かを判定する。そして、フィラメント712aが光軸70からずれている場合、求めた距離の情報並びに予め設定された屈折板83の厚さ及び屈折率の情報に基づいて、フィラメント712aの発光中心からの光を光軸70上へ移動するための屈折板83の角度である補正値を算出する。
【0050】
屈折板83は、光源71aと遮蔽板72の間に離間して配置され、光源71aからの光を屈折可能に透過する平板状のガラス材により構成される。そして、入射面及び出射面が光軸70に対して垂直である基準角度に設定されているとき、フィラメント712aの発光中心から入射した光を直進させる。また、基準角度以外に設定されているとき、フィラメント712aの発光中心から入射した光を屈折させて入射光に対して平行移動させる。
【0051】
駆動部84は、判定部82からの補正値の情報に基づいて、回折格子76のスペクトル面に対して垂直に配置された回動軸を中心として屈折板83を矢印R1方向及びこのR1方向とは反対方向である矢印R2方向に回動する。
【0052】
なお、光源71aと屈折板83、又は屈折板83と第1の集光レンズ73の間に図4に示した実施例1の遮蔽板72を配置するように実施してもよい。
【0053】
以下、図7乃至図9を参照して、測光部13aの動作の一例を説明する。
【0054】
図8は、測光部13aの動作を示したフローチャートである。以下に示す動作は、表示部42の被検試料情報設定画面で設定された被検試料毎に検査項目の分析を開始する前に実行する。
【0055】
操作部50から被検試料毎に検査項目を分析するための操作が行われると、測光部13aは、動作を開始する(ステップS1)。
【0056】
光源71aは光を照射している。第1の集光レンズ73は、光軸70に対して例えば90°に設定された屈折板83を透過した光を反応容器3内に集光する。第2の集光レンズ74は、第1の集光レンズ73により集光された光をスリット75に集光する。回折格子76は、スリット75を通過して入射した光の内の0次光を位置検出器80に出射する。位置検出器80は、回折格子76から出射された0次光から、光軸70のL1方向及びL2方向におけるフィラメント712aの位置を検出し、検出した位置情報を判定部82に出力する(ステップS2)。
【0057】
なお、屈折板83を透過した光が隣り合う2つの反応容器3間を透過した光の内の0次光を位置検出器80で検出するように実施してもよい。
【0058】
判定部82は、位置検出器80から出力された位置情報に基づいて、L1方向又はL2方向におけるフィラメント712aと光軸70間の距離を求め、求めた距離の情報からフィラメント712aが光軸70からずれているか否かを判定する。
【0059】
そして、フィラメント712aと光軸70間の距離が許容範囲から外れている場合(ステップS3のはい)、フィラメント712aが光軸70からL1方向又はL2方向にずれていると判定してステップS4へ移行する。また、フィラメント712aと光軸70間の距離が許容範囲内である場合(ステップS3のいいえ)、フィラメント712aの位置が正常範囲内であると判定してステップS6へ移行する。
【0060】
ステップS3の「はい」の後に、判定部82は、求めた距離の情報並びに予め設定された屈折板83の厚さ及び屈折率の情報に基づいて、光源71aからの光の位置を補正するためにフィラメント712aの発光中心からの光を光軸70上へ移動する屈折板83の角度である補正値を算出する(ステップS4)。その後、補正値の情報を駆動部84へ出力する。
【0061】
駆動部84は、判定部82からの補正値の情報に基づいて屈折板83を回動する(ステップS5)。これにより、フィラメント712aの発光中心からの光が光軸70上へ平行移動され、光源71aからの光の位置ずれを補正することができる。
【0062】
ここで、図9に示すように、フィラメント712aが例えば光軸70からL1方向へ距離D外れている場合、駆動部84は、屈折板83を基準角度からR1方向へ角度θ回動する。これにより、光軸70から距離D離れたフィラメント712aの発光中心からの光は、屈折板83により光軸70上へ平行移動する。
【0063】
ステップS3の「いいえ」又はステップS5の後に、測光部13aは、補正の動作を終了する(ステップS6)。その後、各検査項目を分析するための動作が開始される。
【0064】
以上述べた本発明の実施例2によれば、光源71aからの光の照射により回折格子76から出射される0次光から、光軸70のL1方向及びL2方向におけるフィラメント712aの位置を検出する位置検出器80からの位置情報に基づいて、L1方向又はL2方向におけるフィラメント712aと光軸70間の距離を求め、求めた距離の情報からフィラメント712aが光軸70からL1方向及びL2方向にずれているか否かを判定することができる。
【0065】
そして、フィラメント712aが光軸70からL1方向又はL2方向へずれている場合、屈折板83を回動してフィラメント712aの発光中心からの光を光軸70上へ移動することができる。これにより、フィラメント712aの変形による波長確度の低下を防ぐことが可能となり、分析データの悪化を防ぐことができる。
【実施例3】
【0066】
以下、本発明による自動分析装置の測光部の実施例3を、図10及び図11を参照して説明する。
【0067】
図10は、実施例3に係る自動分析装置の測光部の構成を示した上面図である。図10に示した実施例3が図3における実施例2と異なる点は、位置検出器80からの位置情報に基づいて光源71aにおける光の光軸70からの位置ずれを補正する補正手段である補正部81bに置き換えた点である。実施例3を構成しているユニットの内、実施例2と同じユニットには同じ符号を付与し説明を省略又は簡略する。
【0068】
この測光部13bは、光源71a、第1及び第2の集光レンズ73,74、スリット75、回折格子76、光検出器77、信号処理部78、位置検出器80、及び補正部81bにより構成される。
【0069】
補正部81bは、位置検出器80により検出された位置情報に基づいて、光源71aからの光の光軸70に対する位置ずれを補正するために設けられ、光源71aのフィラメント712aが光軸70からL1方向又はL2方向にずれているか否かを判定する判定部82b及び光源71aをL1方向及びL2方向に移動駆動する駆動部84bにより構成される。
【0070】
判定部82bは、位置検出器80で検出された位置情報に基づいて、L1方向又はL2方向におけるフィラメント712aと光軸70間の距離を求め、求めた距離の情報からフィラメント712aが光軸70からずれているか否かを判定する。そして、フィラメント712aが光軸70からL1方向又はL2方向へずれている場合、求めた距離の情報に基づいて、フィラメント712aを光軸70上へ移動するための補正値を算出する。
【0071】
駆動部84bは、判定部82bからの補正値の情報に基づいて、光源71aをL1方向及びL2方向に移動する。そして、光源71aからの光を光軸70上へ移動する。
【0072】
以下、図10及び図11を参照して、測光部13bの動作の一例を説明する。
【0073】
図11は、測光部13bの動作を示したフローチャートである。表示部42の被検試料情報設定画面で設定された被検試料毎に検査項目の分析を開始する前に実行する。
【0074】
操作部50から被検試料毎に検査項目を分析するための操作が行われると、測光部13bは、動作を開始する(ステップS11)。
【0075】
光源71aは光を照射している。第1の集光レンズ73は、光源71aからの光を反応容器3内又は隣り合う2つの反応容器3間に集光する。第2の集光レンズ74は、反応容器3内を透過した光、又は反応容器3間を通過した光をスリット75に集光する。回折格子76は、スリット75を通過して入射した光の内の0次光を位置検出器80に出射する。
【0076】
位置検出器80は、回折格子76からの0次光から、光軸70のL1方向及びL2方向におけるフィラメント712aの位置を検出する(ステップS12)。そして、検出した位置情報を補正部81bの判定部82bに出力する。
【0077】
判定部82bは、位置検出器80から出力された位置情報に基づいて、L1方向又はL2方向におけるフィラメント712aと光軸70間の距離を求め、求めた距離の情報からフィラメント712aが光軸70からずれているか否かを判定する。
【0078】
そして、フィラメント712aと光軸70間の距離が許容範囲から外れている場合(ステップS13のはい)、フィラメント712aが光軸70からずれていると判定してステップS14へ移行する。また、フィラメント712aと光軸70間の距離が許容範囲内である場合(ステップS13のいいえ)、フィラメント712aの位置は正常範囲内であると判定してステップS16へ移行する。
【0079】
ステップS13の「はい」の後に、判定部82bは、求めた距離の情報に基づいて、フィラメント712aを光軸70上へ移動するための補正値を算出する(ステップS14)。その後、補正値の情報を駆動部84bへ出力する。
【0080】
駆動部84bは、判定部82bからの補正値の情報に基づいて光源71aを移動する(ステップS15)。これにより、フィラメント712aが光軸70上へ移動される。
【0081】
ステップS13の「いいえ」又はステップS15の後に、測光部13bは、補正の動作を終了する(ステップS16)。その後、各検査項目を分析するための動作が開始される。
【0082】
以上述べた本発明の実施例3によれば、光源71aからの光の照射により回折格子76から出射される0次光から、光軸70のL1方向及びL2方向におけるフィラメント712aの位置を検出する位置検出器80からの位置情報に基づいて、L1方向又はL2方向におけるフィラメント712aと光軸70間の距離を求め、求めた距離の情報からフィラメント712aが光軸70からL1方向及びL2方向にずれているか否かを判定することができる。
【0083】
そして、フィラメント712aが光軸70からL1方向又はL2方向の一方向へずれている場合、光源71aを他方向へ求めた距離移動してフィラメント712aを光軸70上に設定することができる。これにより、フィラメント712aの変形による波長確度の低下を防ぐことが可能となり、分析データの悪化を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0084】
3 反応容器
70 光軸
71,71a 光源
72 遮蔽部
711 中心軸
721 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料及び試薬の混合液が収容された反応容器に光を照射して前記混合液内を透過した光を回折格子で分光し、そのスペクトルを検出して前記混合液を測定する自動分析装置において、
前記反応容器に照射するための光を発するフィラメントを有する光軸上に配置された光源と、
前記光源と前記反応容器の間に離間して配置され、前記光源からの光が通過する開口部を有する遮蔽板とを備え、
前記開口部は、前記フィラメントが前記遮蔽板に投影される像の領域内に設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記像は、前記光軸に対して仮想の平行光を前記フィラメントに当てることにより、前記遮蔽板に投影される像であることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
被検試料及び試薬の混合液が収容された反応容器に光を照射して前記混合液内を透過した光を回折格子で分光し、そのスペクトルを検出して前記混合液を測定する自動分析装置において、
前記反応容器に照射するための光を発するフィラメントを有する光軸上に配置された光源と、
前記光源からの光の照射により、前記回折格子から出射される0次光を検出して前記フィラメントの位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出された位置情報に基づいて、前記光源からの光の前記光軸に対する位置ずれを補正する補正手段とを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
前記補正手段は、
前記光源と前記反応容器の間に離間して配置され、前記光源からの光を屈折可能に透過する屈折板と、
前記回折格子のスペクトル面に対して垂直な軸を中心として前記屈折板を回動する駆動手段とを有し、
前記光源からの光の位置が前記光軸から前記回折格子のスペクトル面に平行であり、且つ前記光軸に対して垂直方向にずれている場合、前記屈折板を回動して前記光源からの光の中心を前記光軸上に移動するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記補正手段は、
前記光源を移動する駆動手段を有し、
前記光源からの光の位置が前記光軸から前記回折格子のスペクトル面に平行であり、且つ前記光軸に対して垂直方向にずれている場合、前記光源をずれている方向とは反対方向に移動して、前記フィラメントを前記光軸上に移動するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−122995(P2011−122995A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282457(P2009−282457)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】