説明

自動分析装置

【課題】希釈作成用反応セル内に残った僅かな希釈試料が濃縮し、これが希釈作成用反応セルの内壁にこびりつくことを防止する。
【解決手段】反応セル10に分注した試料に希釈液を分注して希釈試料とする。この希釈試料をさらに別の反応セル(これを測定用反応セル10Yと称する)に分注して測定用試料とする。次に、希釈試料の残った元の反応セル(これを希釈作成用反応セル10Xと称する)に補給剤を供給する。その後、測定後の測定用反応セルまたは測定に供されなかった希釈作成用反応セルから混合液を廃棄して当該反応セルを洗浄する。よって、希釈作成用反応セルに残った希釈試料がさらに薄められて内壁に付着することを防止し、洗浄により次の試料の分析に供することが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料と試薬を反応させて試料の成分や活性値などを自動的に測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿などの試料に試薬を混合して反応させ、その反応状態を例えば分光分析によって、試料の成分や活性値などを自動的に分析する装置である。この自動分析装置は、多数の試料について、短時間に多数項目の成分分析を実施できるので、病院や医療検査機関などにおいて広く利用されている。
【0003】
ところで、自動分析装置で分析に供される試料について、近時その量を微量化したいとの要望が強い。その理由は、ひとにとって大切な血液を無駄にしたくないということは勿論のことであるが、試料の量が多いとその試料に反応させるために使用する試薬の量も多く必要となるからである。すなわち、自動分析装置の運用に当って、ランニングコストに占める試薬の割合が大きいので、ランニングコストを低減するために、使用する試薬の量を極力減らしたいとの事情がある。
【0004】
試料は反応セルに所定量だけ分注され、そこに検査項目に応じた試薬を所定量分注して攪拌し反応させており、測定終了後は反応セルを洗浄して次の測定に再利用される。従って、正確な反応結果を得るためには、使用する反応セルに前回使用した試料や試薬などが残っていないことが重要である。そこで従来から、使用済みの反応液を排出して廃棄した後の反応セルは、所定の洗浄工程においてアルカリ性洗剤、酸性洗剤、純水などを用いて順次複数回にわたり洗浄が行われていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ところで近時、反応セルに試料を分注した後、その反応セルに希釈液を注入して試料を希釈し(以下、この希釈された試料を希釈試料と称する。)、その希釈試料を所定量だけ他の反応セルに再度分注する(以下、再度分注された希釈試料を測定用希釈試料と称する。)ようにして、この測定用希釈試料に試薬を反応させる方法も、測定項目によっては採用されている。このような方法によって測定する項目としては、例えばヘモグロビンA1c(HbA1c)などが該当する。
【0006】
従って、例えば血液中のHbA1cを測定しようとする場合は、全血または血球を一旦反応セルに分注し、これに純水などの希釈液を加えて希釈試料とする(以下、希釈するために一旦試料を分注する反応セルを、希釈作成用反応セルと称する。)。次に、この希釈作成用反応セルから希釈試料を別の反応セルに所定量分注して測定用希釈試料とし、この測定用希釈試料に試薬を混合して反応させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−90372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述の希釈作成用反応セルを用いて、全血または血球の試料に希釈液を加えて作成される希釈試料の量は、50μL程度であり、ここから測定用希釈試料として所定量だけ別の反応セルへ分注すると、希釈作成用反応セルに残る希釈試料はごく僅かの量となる。そして、この希釈作成用反応セルは、測定用希釈試料が所定のルーチンに従って、試薬の混合、反応、測定などを行う間反応ディスク内にそのまま保持され続けることになる。この時間は10分程度になり、その間に希釈作成用反応セル内に残った僅かな希釈試料から水分が蒸発して、希釈試料が濃縮し、これが希釈作成用反応セルの内壁にこびりつくことになる。そのため、希釈作成用反応セルを所定の洗浄工程において洗浄しても所望の洗浄効果が得られなくなり、この反応セルを次の測定に使用した場合、測定結果に悪い影響を与えるおそれがあった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、反応セルに試料および試薬を分注して混合し、これにより反応した前記試料の成分を測定する自動分析装置において、前記反応セルに分注した試料に希釈液を分注して試料を希釈する希釈試料作成手段と、この希釈試料作成手段で得た希釈試料をさらに別の反応セルに分注して測定に供する測定用試料分注手段と、この測定用試料分注手段で希釈試料を前記別の反応セルに分注した後の、希釈試料の残った元の反応セルに補給剤を供給する補給剤供給手段と、測定後の前記反応セルまたは測定に供されなかった前記反応セルから混合液を廃棄して当該反応セルを洗浄する洗浄手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、希釈試料の残った元の反応セルに補給剤を供給することにより、残った希釈試料がさらに薄められるので、残った希釈試料が濃縮して反応セルの内壁にこびりつくようなことが防止され、その後の洗浄により、容易に次の試料の分析に供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る自動分析装置の概略的な構成を示した斜視図である。
【図2】自動分析装置に備えられている洗浄ユニットの一例を示した斜視図である。
【図3】本発明に係る自動分析装置で新たに実行される動作シーケンスを説明するために示した説明図である。
【図4】本発明に係る自動分析装置の全体的な動作の流れを説明するために示したフローチャートである。
【図5】測定項目毎に補給剤などを設定するための設定画面の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る自動分析装置の一実施例について、図1ないし図5を参照して詳細に説明する。なお、これらの図において、同一部分には同一符号を付して示してある。
【0014】
図1は、本発明に係る自動分析装置の概略的な構成を示した斜視図である。
【0015】
自動分析装置は、多数の反応セル10を装着した反応ディスク11、多数の試料容器12aを収容したサンプルディスク12、第1試薬庫13、第2試薬庫14、試料分注機構15、第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19、洗浄ユニット20、測定ユニット22などと、これらのユニットや機構などの各構成機器の動作を制御するCPUや各種メモリなどを有する分析装置制御部30から構成されている。なお、オプションとして電極21も配置可能となっている。
【0016】
反応ディスク11は、リング状に形成されて周方向に多数の反応セル10を装着しており、分析装置制御部30に設定されたプログラムに沿って、所定の角度だけ回転したり停止したりする間欠的な回転動作を行う。この反応ディスク11の傍に、分析対象となる試料の入った試料容器12aを多数収容したサンプルディスク12が配置されている。第1試薬庫13は、反応ディスク11の内側に同心状に配置され、各種の試薬を収容した多数の試薬容器13aを格納している。同じく別の試薬を収容した多数の試薬容器14aを格納している第2試薬庫14が、反応ディスク11の近傍に所定間隔をおいて配置されている。
【0017】
反応ディスク11とサンプルディスク12の間に試料分注機構15が配置されている。この試料分注機構15は支柱15aを軸として、反応ディスク11とサンプルディスク12の間を、孤を描くように回転する。また、反応ディスク11の外周近傍に第1試薬分注機構16が配置され、さらに反応ディスク11と第2試薬庫14の間に第2試薬分注機構17が配置されている。これら第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17もそれぞれ支柱16a、17aを軸として、反応ディスク11と第1試薬庫13の間、または反応ディスク11と第2試薬庫14の間を、孤を描くように回転する。さらに、反応ディスク11の外周近傍に、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19、洗浄ユニット20、電極21が配置され、反応ディスク11の所定位置に測定ユニット22が配置されている。
【0018】
サンプルディスク12は円盤状に形成され、その軸線を中心として回転することにより、試料容器12aの所望のものを試料分注機構15の吸引位置に移動させる。試料分注機構15は、サンプリングアーム15b(以下、単にアーム15bと称する。)の先端側に針状のサンプリングプローブ15c(以下、単にプローブ15cと称する。)を有している。そして、このプローブ15cをサンプルディスク12の所定の吸引位置に位置づけて支柱15aを下降させることにより、プローブ15cを試料容器12a内に降下させて試料を所定量吸引する。その後支柱15aを上昇させた上でアーム15bを反応ディスク11側へ回転し、反応ディスク11に収容された所定の反応セル10内へ試料を吐出する。
【0019】
なお、試料の吐出に当っても吸引時と同様に、試料分注機構15は所定の吐出位置で支柱15aを下降させることにより、反応セル10内にプローブ15cを降下させて、プローブ15cから試料を吐出する。また、プローブ15cの根元部すなわちアーム15b側にチューブが連結されており、このチューブはアーム15b内を通り、さらに支柱15a内を通って、その他端は図示しないポンプに連結されている。
【0020】
反応ディスク11はその軸線を中心に回転し、所定の反応セル10を第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17の試薬吐出位置に移動させる。
【0021】
第1試薬庫13、第2試薬庫14はともに円環状に形成されていて、その軸線を中心として回転するものであり、それぞれに格納されている所望の試薬容器13a、14aを第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17の吸入位置へ移動させる。第1試薬分注機構16、第2試薬分注機構17も試料分注機構15と同様に、それぞれアーム16b、17bの先端に針状のプローブ16c、17cを有しており、このプローブ16c、17cによって第1試薬庫13、第2試薬庫14の所定の試薬容器13a、14aから試薬を吸引し、その試薬を反応ディスク11に収容されている所定の反応セル10へ所定量分注する。
【0022】
反応ディスク11の回転動作によって、反応セル10が第1攪拌位置、第2攪拌位置に達すると、第1攪拌機構18、第2攪拌機構19は、該当する反応セル10内に吐出されている試料と試薬との混合液を攪拌子で攪拌し、反応を促進させる。さらに、反応ディスク11の回転動作に伴い反応セル10が測定ユニット22の位置に達すると、測定ユニット22によって反応セル10内の混合液の成分が分光分析される。そして、分析終了後反応セル10が洗浄ユニット20の位置に達すると、先ず反応セル10内の混合液は排出され、その反応セル10内は洗浄ユニット20によって順次洗浄されて次の試料の分析に供せられる。
【0023】
この洗浄ユニット20は、反応ディスク11の外周近傍に配置されており、一例を図2に斜視図で示してある。すなわち洗浄ユニット20は、反応ディスク11の回転動作に合わせて移動する反応セル10の真上に位置する複数の洗浄器具201〜208を備え、反応ディスク11の回転動作に合わせて、反応セル10に対して順次複数段階の洗浄動作を実施する。
【0024】
洗浄ユニット20の有する洗浄器具としては、例えば図2の左側から工程順に第1洗浄ノズル201、第2洗浄ノズル202、第3洗浄ノズル203、第4洗浄ノズル204、第5洗浄ノズル205、第6洗浄ノズル206、サクションノズル207、乾燥ノズル208が並んでおり、反応セル10が夫々の洗浄ノズルに位置づけられることによって、次のように動作する。
【0025】
先ず、反応セル10が第1洗浄ノズル201に位置づけられると、高濃度の混合液の残っている反応セル10内に純水を注入し、これらを吸引して排出する。この第1洗浄ノズル202を第1洗浄ラインと称する。次に、第2洗浄ノズル202では、高圧・高温の蒸気を反応セル10内に吐出し、反応セル10内壁に付着している汚れを洗い流し、試料中に含まれていた蛋白質や酵素などが残っている場合、これらの機能を消失させる。よって、第2洗浄ノズル202を蒸気洗浄ラインと称する。
【0026】
続いて、第3洗浄ノズル203では、反応セル10内にアルカリ性洗剤を吐出して洗浄し、その後これを吸引して排出する。よって、第3洗浄ノズル203をアルカリ洗浄ラインと称する。さらに第4洗浄ノズル204では、反応セル10内に酸性洗剤を吐出して洗浄し、その後これを吸引して排出する。よって、第4洗浄ノズル204を酸性洗浄ラインと称する。その後第5洗浄ノズル205では、反応セル10内に純水を吐出して洗浄し、その後これを吸引して排出する。よって、第5洗浄ノズル205を純水洗浄ラインと称する。さらに、第6洗浄ノズル206では、純水での洗浄を繰り返すので、第6洗浄ノズル206も純水洗浄ラインと称する。
【0027】
その後、サクションノズル207(サクションライン)では、純水を排出して反応セル10内を空にし、最後に、乾燥ノズル208(乾燥ライン)において純水(洗浄液)で濡れている反応セル10を乾燥させる。なお、第6洗浄ノズル206では、純水の注入された反応セル10に光を当てて、その透過率を計測することによって、洗浄が十分なされた否かを検査している。このように洗浄ユニット20は、反応ディスク11の回転に応じて上下動を繰り返しながら、蒸気や各種の洗剤などを反応セル10に順次注入して洗浄を行っている。
【0028】
なお、洗浄ユニット20は、分析装置制御部30の制御によって、所定のタイミングで上下動を繰り返しながら各洗浄ノズルが所定の洗浄動作を一斉に実施するように動作する。ただし、洗浄ユニット20自体は、各洗浄ラインを構成する洗浄器具を保持するように固定されており、各洗浄ラインを構成する洗浄器具が、分析装置制御部30によって個別に制御されて、所定のタイミングで上下動を繰り返しながら洗浄動作を行うものであっても良い。
【0029】
ここまでは、本発明に係る自動分析装置の構成と、通常実行される動作について説明したが、次に、本発明に係る自動分析装置として、新たに実行される動作について説明する。
【0030】
図3は、本発明に係る自動分析装置で新たに実行される動作シーケンスを説明するために示した図である。そして、新たな動作を実行するために、第1試薬庫13および第2試薬庫14に格納されている多数の試薬容器13a、14aの1つに、試薬ではなく例えば純水などの希釈液を収容しておくものとする。
【0031】
例えば血液中のHbA1cを測定しようとする場合について説明する。この場合は、試料の濃度が高いと正確な分析データを得られなくなるおそれがあるため、予め試料を希釈する必要となる。そのため先ず、図3(a)に示すように、試料分注機構15のプローブ15cによって、サンプルディスク12に収容されている試料容器12aから全血または血球を吸引し、これを図3(b)に示す反応ディスク11の反応セル10X(総称的に用いた反応セル10と区別するために、便宜的に符号10Xを付して、希釈作成用反応セルと称する。)に一旦分注する。
【0032】
そして、この希釈作成用反応セル10Xが第1試薬分注機構16の試薬吐出位置に達したときに、第1試薬分注機構16のプローブ16cは、第1試薬庫13に格納されて希釈液を収容している試薬容器13aX(総称的に用いた試薬容器13aと区別するために、便宜的に符号13aXを付すが図示はされていない。)から希釈液を吸引し、その希釈液を希釈作成用反応セル10Xへ吐出して、所定の希釈倍率となるようにする。この状態を図3(c)に示す。その後、希釈作成用反応セル10Xが第1攪拌位置に達すると、第1攪拌機構18によって希釈作成用反応セル10X内の試料と希釈液との混合液を攪拌子で攪拌し、所定の希釈倍率の希釈試料とする。
【0033】
さらに、この希釈作成用反応セル10Xが試料分注機構15の分注位置に達すると、そのプローブ15cによって希釈作成用反応セル10Xから希釈試料を所定量吸引し、隣の空の反応セル10Y(反応セル10Xと区別するために、便宜的に符号10Yを付し、測定用反応セルと称する。)へ吐出して測定用希釈試料とする。この状態を図3(d)に示す。この測定用希釈試料の分注された測定用反応セル10Yには、第1試薬分注機構16のプローブ16cによって第1試薬が混合され(図3(e)参照。)、さらに第2試薬分注機構17のプローブ17cによって第2薬が混合されて反応が促進される(図3(f)参照。)。
【0034】
なお、これら、試料容器12aから全血または血球を吸引し、希釈作成用反応セル10Xに分注する量、希釈液を希釈作成用反応セル10Xへ吐出する量、希釈作成用反応セル10Xから測定用希釈試料を測定用反応セル10Yへ分注する量、測定用反応セル10Yへ第1試薬、第2試薬を分注する量などは、分析装置制御部30によって厳密に管理されるものである。
【0035】
その後、所定の時間を経て反応セル10Yが測定ユニット22位置に達すると、測定ユニット22によって反応セル10Y内の混合液の成分が分光分析される(図3(g)参照。)。なお、測定用希釈試料が分注されてから分光分析までには10分程度の時間がかかり、分光分析が終わった後反応セル10Yは、洗浄ユニット20によって洗浄されて次の試料の分析に供せられる。
【0036】
一方、反応セル10Yへ測定用希釈試料を分注させたことによって、残り少なくなった希釈試料を有する希釈作成用反応セル10X(図3(c)参照。)に対しては、これが第2試薬分注機構17の試薬吐出位置に達したときに、第2試薬分注機構17のプローブ17cは、第2試薬庫14に格納されている希釈液を収容している試薬容器14aX(総称的に用いた試薬容器14aと区別するために、便宜的に符号14aXを付して説明するが図示はされていない。)から希釈液を吸引し、その希釈液を希釈作成用反応セル10Xへ吐出する(図3(h)参照。)。その後、希釈作成用反応セル10Xが第2攪拌位置に達すると、第2攪拌機構19によって希釈作成用反応セル10X内の試料と希釈液との混合液を攪拌子で攪拌し、希釈試料を更に希釈する。
【0037】
これによって、反応セル10Y内の測定用希釈試料の分光分析が終わるまで、10分程度の時間を要したとしても、希釈作成用反応セル10X内の希釈試料が濃縮して希釈作成用反応セル10Xの内壁にこびりつくようなことが防止される。よって、その後の洗浄ユニット20による洗浄で、希釈作成用反応セル10Xも綺麗にされて、次の試料の分析に供せられる。なお、希釈用として第2試薬庫14の試薬容器に収容されている希釈液は、洗浄剤であっても良い。また、第2試薬庫14の試薬容器に収容された希釈液を用いた方法とは別に、第2試薬分注機構17の内部水を、第2試薬分注機構のプローブ17cにより希釈作成用反応セル10Xへ吐出しても良い。
【0038】
上述のように、本発明に係る自動分析装置では、従来と同様の通常実行される動作と、新たに実行される動作とが選択的に実行されることになる。よって、全体的な動作の様子を分かり易くするために、図4にフローチャートを示したので、図4を参照して、全体的な動作の流れを再度説明する。
【0039】
先ず、ステップ1として、試料分注機構15によって、サンプルディスク12に収容されている試料容器12aから試料を吸引し、反応セル10内へ試料を吐出する。このときステップ2として、当該試料を分析するに当たって実行すべき動作シーケンスが選択される。ここで、当該試料の分析項目が、試料にそのまま第1試薬、第2試薬を分注して反応させるシーケンスに該当するものの場合は、ステップ3へ進み、当該反応セル10が第1試薬分注位置に位置づけられたときに、第1試薬分注機構16によって第1試薬を分注し、次に第1攪拌位置で第1攪拌機構18によって、この反応セル10内を攪拌する(ステップ4)。
【0040】
そしてステップ5へ進み、反応セル10が第2試薬分注位置に位置づけられたときに、第2試薬分注機構17によって第2試薬を反応セル10へ分注し、次に第2攪拌位置で第2攪拌機構19によって、この反応セル10内を攪拌する(ステップ6)。その後所定の時間を経て試料と試薬との反応がなされた段階で、測定ユニット22の位置に反応セル10が達すると、反応セル10内の混合液の成分が分光分析される(ステップ7)。分析終了後、反応セル10が洗浄ユニット20の位置に達すると、反応セル10内は洗浄ユニット20によって洗浄され(ステップ8)て、この反応セル10は、次の試料の分析に供せられることとなる。
【0041】
一方、ステップ2において、当該試料の分析項目が、試料を更に希釈してから第1試薬、第2試薬を分注して反応させるシーケンスに該当するものの場合は、ステップ10へ進み、当該反応セル10(この反応セル10を、便宜的に希釈作成用反応セル10Xと称するものとする。)が第1試薬分注位置に位置づけられたときに、第1試薬分注機構16によって第1試薬庫13から希釈液を吸引して、この希釈液を当該希釈作成用反応セル10Xに分注し、第1攪拌位置で第1攪拌機構18によって、この希釈作成用反応セル10X内を攪拌して希釈試料とする(ステップ11)。
【0042】
次に、ステップ12へ進み、希釈作成用反応セル10Xが試料分注機構15の分注位置に達すると、試料分注機構15によって希釈作成用反応セル10Xから希釈試料を所定量吸引し、隣の空の反応セル10(この反応セル10を、便宜的に測定用反応セル10Yと称する。)へ吐出して測定用希釈試料とする。その後は、ステップ13として、当該測定用反応セル10Yが第1試薬分注位置に位置づけられたときに、第1試薬分注機構16によって第1試薬を分注し、続いて第1攪拌位置で第1攪拌機構18によって、この測定用反応セル10Y内を攪拌する(ステップ14)。
【0043】
そしてステップ15へ進み、測定用反応セル10Yが第2試薬分注位置に位置づけられたときに、第2試薬分注機構17によって第2試薬を測定用反応セル10Yへ分注し、次に第2攪拌位置で第2攪拌機構19によって、この測定用反応セル10Y内を攪拌する(ステップ16)。その後所定の時間を経て試料と試薬との反応がなされた段階で、測定ユニット22の位置に測定用反応セル10Yが達すると、測定用反応セル10Y内の混合液の成分が分光分析される(ステップ17)。分析終了後ステップ8へ進み、測定用反応セル10Yが洗浄ユニット20の位置に達すると、測定用反応セル10Y内は洗浄ユニット20によって洗浄されて、この測定用反応セル10Yは、次の試料の分析に供せられることとなる。
【0044】
なお、ステップ12において、測定用反応セル10Yに分注されたことによって、希釈試料の量が少なくなった希釈作成用反応セル10Xは、第2試薬分注位置に位置づけられたときに、第2試薬分注機構17によって第2試薬庫14から希釈液を吸引して、この希釈液を当該希釈作成用反応セル10Xに分注し、第2攪拌位置で第2攪拌機構19によって、この希釈作成用反応セル10X内を攪拌する(ステップ20)。
【0045】
よって、希釈作成用反応セル10X内に残っていた希釈試料は更に希釈される。そしてこの希釈作成用反応セル10Xは、測定ユニット22の位置で分光分析されることなく、洗浄ユニット20の位置に達すると、希釈作成用反応セル10X内が洗浄される。この希釈作成用反応セル10Xも、次の試料の分析に供せられることとなる。このように、希釈試料の量が少なくなった希釈作成用反応セル10X内に希釈液を注入して残った試料を更に薄めることにより、洗浄ユニット20での洗浄に至るまでの間に、試料が希釈作成用反応セル10X内にこびりついてしまい、洗浄が不十分になるような不都合を生ずることを防止できる。これらの一連の制御は、分析装置制御部30によって行われることは言うまでもない。
【0046】
ここで、ステップ19において、希釈作成用反応セル10Xに残った希釈試料が濃縮するのを防止するために、純水や凝縮し難い洗浄剤などの希釈液(補給剤とも称する。)を注入して希釈濃度を低下させるための、注入する補給剤の種類と量を、測定する項目毎に予め設定しておくための手段について説明する。
【0047】
図5は、設定画面の一例を示したものであり、ここでは測定項目がHbA1cである場合について、ステップ19において希釈作成用反応セル10Xに残った希釈試料に加える補給剤を純水とし、希釈試料を含む希釈作成用反応セル10Xへの総注入量(総補給量)を345μLに設定した例が示されている。この設定内容は、分析装置制御部30に記憶され、ある試料についてHbA1cの測定が指定された際に、ステップ12において測定用反応セル10Yに測定用の希釈試料が分注された後、希釈作成用反応セル10Xに残った希釈試料へ、この設定内容に応じて純水を注入して、希釈作成用反応セル10X内の総容量が345μLになるように更に希釈するように制御することになる。
【0048】
これによって、希釈作成用反応セル10Xに残った希釈試料は更に薄められ、測定用反応セル10Yが分析工程にある間(例えば10分程度)希釈作成用反応セル10X内の希釈試料が濃縮して内壁にこびりつくことを防止する。
【0049】
また、測定項目がHbA1cであったとしても、用いる試薬の種類によっては使用する試料の量や希釈倍率が異なることがある。それに伴って、測定用反応セル10Yへ分注する量が変わったり、希釈作成用反応セル10Xに残る量も異なったりすることになる。そのため、図5の設定画面に「試薬の種類」の項目を追加しておき、設定画面上で「試薬の種類」に応じて「補給剤の種類」と「総補給量」の対応付けを行うことにより、ステップ19において、希釈作成用反応セル10Xに必要とされる分だけの希釈液や洗浄剤を注入し、これらの無駄な使用を避けるようにすることができる。
【0050】
以上詳述したように本発明によれば、測定用反応セル10Y内の測定用希釈試料の分光分析が終わるまで、10分程度の時間を要したとしても、希釈作成用反応セル10X内の希釈試料が濃縮して希釈作成用反応セル10Xの内壁にこびりつくようなことが防止され、その後の洗浄ユニット20による洗浄で、希釈作成用反応セル10Xも綺麗にされて、次の試料の分析に供することができる。
【0051】
本発明は、上述の実施例に限ることなく、要旨の範囲内で種々の態様での実施が可能である。例えば、希釈作成用反応セル10Xへの希釈液の分注は、自動分析装置の動作シーケンスに基づき、第1試薬分注機構16または第2試薬分注機構17のいずれかで行えば良い。また、図4を参照して説明したステップ12として、希釈作成用反応セル10Xから測定用反応セル10Yへ希釈試料を分注したことによって、希釈試料の量が少なくなった希釈作成用反応セル10Xへ、ステップ19として更に供給する希釈液の量は、測定項目毎に設定せずに全ての項目で固定しておいても良い。さらに、ステップ19において更に供給する希釈液の量を測定項目毎に設定することに代えて、試料の提供者(例えば、患者。)の前回の測定結果、性別、年齢、既往症などの基礎情報に応じて設定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0052】
10 反応セル
11 反応ディスク
12 サンプルディスク
15 試料分注機構
16 第1試薬分注機構
17 第2試薬分注機構
20 洗浄ユニット
22 測定ユニット
30 分析装置制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応セルに試料および試薬を分注して混合し、これにより反応した前記試料の成分を測定する自動分析装置において、
当該反応セルのうち、第1の反応セルに分注した試料に希釈液を分注して試料を希釈する希釈試料作成手段と、
この希釈試料作成手段で得た希釈試料をさらに第2の反応セルに分注して測定に供する測定用試料分注手段と、
この測定用試料分注手段で希釈試料を前記第2の反応セルに分注した後の、希釈試料の残った前記第1の反応セルに補給剤を供給する補給剤供給手段と、
測定後の前記第2の反応セルまたは測定に供されなかった前記第1の反応セルから混合液を廃棄して当該第1の反応セルまたは第2の反応セルを洗浄する洗浄手段と、
を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記補給剤は希釈液または洗剤であることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記第1の反応セルへの補給剤の供給量は、測定項目に応じて設定可能であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記第1の反応セルへの補給剤の供給量は、前記試料に対応する被検体の基礎情報に応じて設定可能であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−191259(P2011−191259A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59432(P2010−59432)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】