説明

自動分析装置

【課題】構成の複雑化及び大型化を防いで、洗浄液を準備する作業者にかかる負担を軽減することができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】試料を収容する試料容器17から吸引して反応容器3内に吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、第1試薬を収容する試薬容器6から吸引して反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14とを備え、第1試薬分注プローブ14で洗浄液を収容した試薬容器6から吸引して反応容器3内に吐出させ、反応容器3内に吐出された洗浄液の一部をサンプル分注プローブ16内に吸引させて洗浄を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に含まれている成分を分析する自動分析装置に係り、特に、液体を分注する分注プローブを洗浄する機能を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、被検体から採取された被検試料等の試料と各検査項目の試薬との混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、分光光度計や比濁計の測光部で光学的に測定することにより、試料中の検査項目成分の濃度や酵素の活性等で表される分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料毎に複数の検査項目の中から設定された検査対象の項目の分析を行う。そして、測定中に、サンプル分注プローブは、試料容器内の被検試料を吸引して反応容器に吐出し、各被検試料の分注終了毎に洗浄槽で洗浄水を用いて洗浄が行われる。また、試薬分注プローブは、試薬容器内の試薬を吸引して反応容器に吐出し、各試薬の分注終了毎に洗浄槽で洗浄水を用いて洗浄が行われる。また、測光部は、反応容器内に吐出された被検試料及び試薬の混合液を測定し、混合液の測定終了毎に反応容器が洗浄水よりも強力な洗剤を含む洗浄液及び洗浄水を用いて洗浄が行われる。更に、測定終了後等の測定中以外のときに、洗浄液を収容した容器を所定の位置に設置し、その容器からサンプル分注プローブや試薬分注プローブ内に洗浄液を吸引させて洗浄が行われる。
【0004】
また、サンプル分注プローブや試薬分注プローブの洗浄においては、2種類の洗浄槽、この2種類の洗浄槽の一方の洗浄槽に洗浄水を供給するポンプ、及び他方の洗浄槽に洗浄液を供給するポンプを備え、サンプル分注プローブや試薬分注プローブを洗浄水及び洗浄液を用いて洗浄を行うことができる自動分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ところで、試料容器には被検体から採血された全血を収容する採血管がある。この採血管に収容された全血は、血清又は血漿からなる上層の試料と血球成分等を含む下層の試料に分離され、上層の試料を分注して各検査項目の分析が行われる。最近では、全血や下層試料を分注して、例えばグリコヘモグロビン等の検査項目の分析が行われるようになっている。
【0006】
そして、全血や下層の試料がサンプル分注プローブで反応容器内に分注されると、血清や血漿の場合よりも測定中の洗浄だけでは落とすことができない汚れがサンプル分注プローブや反応容器に蓄積しやすいため、洗浄液を用いて測定中よりも強力な洗浄を必要とする頻度が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−202945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、洗浄液を用いてサンプル分注プローブの洗浄を行おうとすると、洗浄液を容器に入れ、更にその容器を所定の位置に間違えないように設置する注意する必要があるため、洗浄液を準備する作業者に負担がかかっている。この問題に対して、特許文献1のように、洗浄液用の洗浄槽及びポンプ等の洗浄ユニットを設けて洗浄することが考えられるが、洗浄ユニットが増えて、構成が複雑になると共に大型化する問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、構成の複雑化及び大型化を防いで、洗浄液を準備する作業者にかかる負担を軽減することができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、試料と試薬を反応容器に分注して、その混合液を測定する自動分析装置において、前記試料を収容する試料容器から吸引して、前記反応容器内に吐出する分注を行うサンプル分注プローブと、前記混合液の測定中以外のときに、前記反応容器内に洗浄液を供給し、前記反応容器内に供給された前記洗浄液の一部を前記サンプル分注プローブ内に吸引させて洗浄を行う洗浄手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反応容器に洗浄液を供給し、供給された洗浄液の一部をサンプル分注プローブ内に吸引させることにより、洗浄液を用いて洗浄することができる。これにより、構成の複雑化や大型化を防いで、洗浄液を準備する作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る分析部の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の実施例に係る試料容器に収容される試料の吸引位置で停止したサンプル分注プローブを示す断面図。
【図4】本発明の実施例に係るプローブ洗浄部の測定中洗浄位置で停止したサンプル分注プローブを示す断面図。
【図5】本発明の実施例に係る自動分析装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例に係る表示部に表示された測定外洗浄条件設定画面の一例を示す図。
【図7】本発明の実施例に係るサンプル分注プローブの測定外洗浄位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図7を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料や被検試料等の試料と各検査項目の分析に用いる試薬とを分注し、その混合液を測定して標準データや被検データを生成する分析部24と、分析部24の各ユニットを駆動して測定動作や、測定中以外のときに行う洗浄(測定外洗浄)動作の制御を行う分析制御部25とを備えている。
【0016】
また、自動分析装置100は、分析部24で生成された標準データや被検データを処理して検量データや分析データを生成するデータ処理部30と、データ処理部30で生成された検量データや分析データを印刷出力や表示出力する出力部40と、各種コマンド信号の入力等を行う操作部50と、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0017】
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、標準試料や、尿、全血、及び全血から分離された血清又は血漿等の各被検試料を収容する試料容器17と、この試料容器17を保持するサンプルディスク5と、標準試料や被検試料の各試料に含まれる検査項目の成分と反応する1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する試薬容器6と、この試薬容器6を格納する試薬庫1と、この試薬庫1に格納された試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aと、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、この試薬容器7を格納する試薬庫2と、この試薬庫2に格納された試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aと、円周上に配置された複数個(n個)の反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0018】
また、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、サンプル分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせるサンプル分注ポンプ16aと、サンプル分注プローブ16を回動及び上下移動可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。また、サンプル分注プローブ16を純水装置110の純水を洗浄水として用いて洗浄するプローブ洗浄部70と、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料の液面から例えば1〜2mm程度の液面層をこの液面層とサンプル分注プローブ16の一端部との接触により検出する試料検出器16bとを備えている。
【0019】
また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬を吸引して試料が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14と、この第1試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に保持する第1試薬分注アーム8と、第1試薬分注プローブ14を純水装置110の洗浄水を用いて洗浄するプローブ洗浄部80と、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬の液面層をこの液面層と第1試薬分注プローブ14の一端部との接触により検出する第1試薬検出器14aとを備えている。
【0020】
また、反応容器3内に吐出された試料と第1試薬の混合液を撹拌する第1撹拌子18と、第1撹拌子18を回動及び上下移動可能に保持する第1撹拌アーム20と、混合液の撹拌終了毎に第1撹拌子18を純水装置110の洗浄水を用いて洗浄する洗浄槽18aとを備えている。
【0021】
また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬を吸引して第1試薬が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ15と、この第2試薬分注プローブ15を回動及び上下移動可能に保持する第2試薬分注アーム9と、第2試薬分注プローブ15を純水装置110の洗浄水を用いて洗浄するプローブ洗浄部90と、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬の液面層をこの液面層と第2試薬分注プローブ15の一端部との接触により検出する第2試薬検出器15aとを備えている。
【0022】
また、反応容器3内の試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する第2撹拌子19と、第2撹拌子19を回動及び上下移動可能に保持する第2撹拌アーム21と、混合液の撹拌終了毎に第2撹拌子19を純水装置110の洗浄水を用いて洗浄する洗浄槽19aと、反応容器3内の混合液に光を照射して光学的に測定する測光部13と、測光部13で測定を終了した反応容器3内を洗浄水よりも洗浄力を有する洗剤を含有する洗浄液を用いて洗浄した後に純水装置110の洗浄水を用いて洗浄する反応容器洗浄ユニット12とを備えている。
【0023】
そして、測光部13は、回転移動して光路を横切る反応容器3に光を照射し、反応容器3内の混合液を透過した光を検査項目の波長毎に検出する。そして、検出した検出信号に基づいて、例えば吸光度データで表される標準データや被検データを生成し、生成した標準データや被検データをデータ処理部30に出力する。
【0024】
分析制御部25は、分析部24の各ユニットを駆動する機構を有する機構部26と、機構部26の各機構を制御して分析部24の各ユニットを作動させる制御部27とを備えている。そして、機構部26は、サンプルディスク5、試薬ラック1a、及び試薬ラック2aを夫々回動する機構、並びに反応ディスク4を回転する機構を備えている。また、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、及び第2撹拌アーム21を夫々回動及び上下移動する機構を備えている。また、反応容器洗浄ユニット12を上下移動する機構を備えている。また、サンプル分注ポンプ16aを吸引及び吐出駆動する機構、及びプローブ洗浄部70,80,90の各洗浄ユニットを駆動する機構を備えている。
【0025】
制御部27は、機構部26の各機構を制御する制御回路を備え、分析部24のサンプルディスク5、試薬ラック1a、試薬ラック2a、反応ディスク4、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、第2撹拌アーム21、反応容器洗浄ユニット12、及びサンプル分注ポンプ16a等の各ユニットや、プローブ洗浄部70,80,90の各ユニットを分析サイクル毎に作動させる。
【0026】
そして、制御部27は、サンプル分注アーム10を回動駆動する回動機構に上死点の高さでサンプル分注プローブ16を移動させ、サンプルディスク5、反応ディスク4、及びプローブ洗浄部70の上方に位置する各上停止位置で停止させる。また、サンプル分注アーム10を上下駆動する上下機構に下移動駆動パルスを供給して、サンプル分注プローブ16を各上停止位置から下に移動させる。そして、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料の吸引が可能な吸引位置で停止させる。また、反応容器3内に試料を吐出の吐出が可能な吐出位置で停止させる。また、プローブ洗浄部70の洗浄が可能な洗浄位置で停止させる。
【0027】
図1に示したデータ処理部30は、分析部24の測光部13から出力された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する演算部31と、演算部31で生成された標準データや分析データを保存するデータ記憶部32とを備えている。
【0028】
演算部31は、測光部13から出力された標準データ及びこの標準データの標準試料に対して予め設定された標準値から、標準値と標準データの関係を表す検量データを検査項目毎に生成し、生成した検量データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0029】
また、測光部13から出力された被検データに対応する検査項目の検量データをデータ記憶部32から読み出す。そして、読み出した検量データを用いて測光部13より出力された被検データから、濃度値や活性値で表される分析データを生成する。そして、生成した分析データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0030】
データ記憶部32は、ハードディスク等のメモリデバイスを備え、演算部31から出力された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部31から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
【0031】
出力部40は、データ処理部30の演算部31から出力された検量データや分析データを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0032】
表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを表示する。また、自動分析装置100で分析可能な検査項目の分析パラメータである例えば反応容器3内に吐出させる試料量及び試薬量や試料容器17内の試料を吸引させる吸引位置等の設定を行う分析パラメータ設定画面、及びこの分析パラメータ設定画面で設定された検査項目の分析に用いる試薬の情報を設定するための試薬情報設定画面を表示する。また、測定外洗浄を行わせる洗浄条件である分析部24の試料や試薬に接触する分析ユニットを設定するための測定外洗浄条件設定画面を表示する。
【0033】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、検査項目毎の分析パラメータ、試薬情報、洗浄条件等を設定するための入力操作を行う。
【0034】
システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備え、操作部50からの設定操作により入力された各検査項目の分析パラメータ、試薬情報、洗浄条件等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
【0035】
次に、図2乃至図4を参照して、分析部24のサンプル分注プローブ16の構成、並びに測定中におけるサンプル分注プローブ16の吸引位置及び洗浄位置について説明する。そして、図3は、試料容器17に収容される試料の吸引位置で停止したサンプル分注プローブ16を示す断面図である。図4は、プローブ洗浄部70の洗浄位置で停止したサンプル分注プローブ16を示す断面図である。
【0036】
図3において、サンプル分注プローブ16は、一端及び他端に開口を有する管状を成し、一端で試料の吸引及び吐出を行い、他端とサンプル分注ポンプ16a間がチューブ161で連通している。そして、サンプル分注プローブ16及びチューブ161内には例えば純水等の圧力伝達媒体が充填されている。これにより、サンプル分注ポンプ16aからの吸引及び吐出動作による圧力がサンプル分注プローブ16一端に伝達され、一端から試料の吸引及び吐出を行うことができる。また、サンプル分注プローブ16は、他端部がサンプル分注アーム10に保持され、このサンプル分注アーム10により移動する。
【0037】
分析制御部25の制御部27は、システム制御部60から供給される分析パラメータに含まれる吸引位置の情報に基づいて、分析部24のサンプル分注アーム10を駆動する機構部26の機構を制御することにより、図3(a)に示すように、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料がサンプル分注プローブ16の一端部Dと接触して試料検出器16bで検出される液面層吸引位置A1で停止させる。また、図3(b)に示すように、液面層吸引位置A1よりも下方のサンプルディスク5の上停止位置から所定の距離下へ移動した下層吸引位置A2でサンプル分注プローブ16を停止させる。
【0038】
液面層吸引位置A1でサンプル分注プローブ16を停止させる試料容器17は、全血が上下層に分離された上層に位置する血清又は血漿からなる上層試料及び下層に位置する血球成分を含む下層試料を収容している所定のサイズの採血管である。なお、血清、血漿、尿等の均一な各試料を収容する所定のサイズのサンプルカップや試験管を試料容器17として用いるようにしてもよい。
【0039】
そして、サンプル分注プローブ16が液面層吸引位置A1で停止した後、制御部27は、システム制御部60から供給される分析パラメータに含まれる試料量の情報に基づいて、サンプル分注ポンプ16aを駆動する機構部26の機構を制御することにより、サンプル分注プローブ16内に設定された試料量に応じた量の血清又は血漿を吸引させる。
【0040】
このように、下層試料に含まれる成分の分析を必要としない検査項目の分析では、一端部Dだけを試料に接触させてサンプル分注プローブ16内に試料を吸引させることができる。これにより、試料の吸引に不要なサンプル分注プローブ16外面の一端部D以外の部分の試料との接触を防いで、サンプル分注プローブ16の試料による汚染を低減することができる。
【0041】
下層吸引位置A2でサンプル分注プローブ16を停止させる試料容器17は、例えば全血が上下層に分離された上層試料及び下層試料を収容している所定のサイズの採血管である。この採血管内の底面から上方に所定の距離離れてサンプル分注プローブ16の一端が位置している。なお、下層吸引位置A2でサンプル分注プローブ16を停止させる検査項目には例えばグリコヘモグロビンがあり、全血を収容している所定サイズの採血管でもよい。
【0042】
そして、サンプル分注プローブ16が下層吸引位置A2で停止した後、制御部27は、システム制御部60から供給される分析パラメータに含まれる試料量に基づいて、サンプル分注プローブ16内に設定された試料量に応じた量の血球成分を含む下層試料を吸引させる。
【0043】
このように、下層試料に含まれる成分を必要とする検査項目の分析では、試料の吸引に必要な下層吸引位置A2までサンプル分注プローブ16を移動させることができる。
【0044】
次に、図2乃至図4を参照して、測定中におけるサンプル分注プローブ16の洗浄位置を説明する。
図4は、プローブ洗浄部70の洗浄位置で停止したサンプル分注プローブ16を示した断面図である。プローブ洗浄部70は、サンプル分注プローブ16を洗浄する洗浄水を吐出する吐出口711を有する洗浄槽71、及びこの洗浄槽71の吐出口711にサンプル分注プローブ16の試料と接触した外面を洗浄するための洗浄水を供給する洗浄ポンプ72を備えている。
【0045】
分析制御部25の制御部27は、システム制御部60から供給される吸引位置の情報に基づいて、分析部24のサンプル分注アーム10を駆動する機構部26の機構を制御することにより、図4(a)に示すように、サンプル分注プローブ16をプローブ洗浄部70の上停止位置である液面層洗浄位置W1で停止させる。また、図4(b)に示すように、液面層洗浄位置W1よりも下方の下層洗浄位置W2で停止させる。
【0046】
サンプル分注プローブ16は、液面層吸引位置A1で吸引した試料の分注終了後に、液面層洗浄位置W1で停止する。この液面層洗浄位置W1は、液面層の試料と接触したサンプル分注プローブ16一端部Dの外面の洗浄が可能な位置である。
【0047】
サンプル分注プローブ16が液面層洗浄位置W1で停止した後、制御部27は、洗浄ポンプ72を制御する。洗浄ポンプ72は純水装置110から洗浄水を吸引して洗浄槽71の吐出口711に供給する。供給された洗浄水が吐出口711から吐出され、サンプル分注プローブ16の一端部D外面に付着した試料を洗い落とす。また、サンプル分注ポンプ16aは、チューブ161を介してサンプル分注プローブ16内に洗浄水を供給する。この供給によりサンプル分注プローブ16内を通過した洗浄液が一端から洗浄槽71内に吐出され、サンプル分注プローブ16内面に付着した試料を洗い落とす。
【0048】
このように、液面層吸引位置A1で吸引した試料の分注終了毎に、サンプル分注プローブ16を液面層洗浄位置W1へ移動させることにより、サンプル分注プローブ16の試料と接触した内外面を、洗浄水を用いて洗浄することができる。
【0049】
サンプル分注プローブ16は、下層吸引位置A2で吸引した試料の分注終了後に、下層洗浄位置W2で停止する。この下層洗浄位置W2は、サンプル分注プローブ16の上層及び下層試料と接触した外面の洗浄が可能な位置である。
【0050】
サンプル分注プローブ16が下層洗浄位置W2で停止した後、制御部27は、洗浄ポンプ72を制御する。洗浄ポンプ72は純水装置110から洗浄水を吸引して洗浄槽71の吐出口711に供給する。供給された洗浄水が吐出口711から吐出され、サンプル分注プローブ16外面に付着した試料を洗い落とす。また、サンプル分注ポンプ16aは、チューブ161を介してサンプル分注プローブ16内に洗浄水を供給する。この供給によりサンプル分注プローブ16内を通過した洗浄液が一端から洗浄槽71内に吐出され、サンプル分注プローブ16内面に付着した試料を洗い落とす。
【0051】
このように、下層吸引位置A2で試料を吸引した場合には、サンプル分注プローブ16を下層洗浄位置W2へ移動することにより、サンプル分注プローブ16の試料と接触した内外面を、洗浄水を用いて洗浄することができる。
【0052】
以下、図1乃至図7を参照して、自動分析装置100の測定外洗浄動作の一例を説明する。そして、図5は表示部42に表示された測定外洗浄条件設定画面の一例を示す図である。また、図6は、自動分析装置100の動作を示すフローチャートである。また、図7は、サンプル分注プローブ16の測定外洗浄のときの洗浄位置を示す図である。
【0053】
分析部24における測定が終了した後、測定外洗浄を行う分析部24の分析ユニットを設定するために、操作部50から測定外洗浄条件設定画面を表示させる操作が行われると、表示部42に測定外洗浄条件設定画面が表示される。
【0054】
図5は、表示部42に表示された測定外洗浄条件設定画面の一例を示した図である。この測定外洗浄条件設定画面43は、分析部24の各分析ユニットが表示される「ユニット」の欄、及び「ユニット」の欄に表示された各分析ユニットを設定するためのダイアログボックス431乃至43mにより構成される。そして、操作部50からの操作により設定された「ユニット」の欄の分析ユニットの情報がシステム制御部60の記憶回路に保存されると共に、その分析ユニットに対応する各ダイアログボックス431乃至43m内に「レ」が表示される。
【0055】
「ユニット」の欄には、「反応容器」、「Sプローブ」、「Rプローブ」等が表示されている。そして、分析部24の反応容器3の洗浄を行う場合に「反応容器」を設定することによりダイアログボックス431内に「レ」が表示される。この場合、例えば洗浄液を入れた試薬容器6を試薬庫1に格納し、その試薬容器6内の洗浄液を例えば第1試薬分注プローブ14で分注して、反応容器3に洗浄液を供給する。供給された洗浄液を分析サイクルよりも長い時間T反応容器3内に留めることにより、反応容器3内の洗浄を行う。
【0056】
また、サンプル分注プローブ16の洗浄を行う場合に「Sプローブ」を設定することにより、ダイアログボックス432内に「レ」が表示される。この場合、反応容器3の洗浄の場合と同様にして、反応容器3内に供給された洗浄液の一部を吸引させてサンプル分注プローブ16内に留めると共に反応容器3内に残る洗浄液にサンプル分注プローブ16を浸けて時間T維持することにより、サンプル分注プローブ16内外面を洗浄する。
【0057】
また、第1及び第2試薬分注プローブ14,15の洗浄を行う場合に「Rプローブ」を設定することにより、ダイアログボックス433内に「レ」が表示される。この場合、例えば洗浄液を入れた試薬容器6,7を試薬庫1,2に格納し、その試薬容器6,7内の洗浄液を吸引させて第1及び第2試薬分注プローブ14,15内に時間T留めることにより、第1及び第2試薬分注プローブ14,15の洗浄を行う。
【0058】
ここでは、毎日の全血や血球成分を含む下層試料の測定により、全血や血球成分を含む下層試料に接触して、血清や血漿よりも汚れが蓄積しやすい反応容器3及びサンプル分注プローブ16を設定する。そして、「ユニット」の欄の「反応容器」及び「Sプローブ」を設定することにより、各ダイアログボックス431,432内に「レ」が表示されている。また、非設定の分析ユニットに対応するダイアログボックス433乃至43mは空白になっている。
【0059】
図6は、自動分析装置100の動作を示したフローチャートである。図5に示した測定外洗浄条件設定画面43で洗浄条件を設定した後、洗浄対象の反応容器3及びサンプル分注プローブ16に対して強力な洗浄力を有する例えばアルカリ性洗剤や界面活性剤を含有する洗浄液を収容した試薬容器6を、試薬庫1に格納する。そして、操作部50から測定外洗浄を開始する操作が行われると、自動分析装置100は測定外洗浄を開始する(ステップS1)。
【0060】
システム制御部60は、分析制御部25の制御部27に測定外洗浄を指示する。制御部27は、システム制御部60から供給される洗浄条件の情報に基づいて、試薬庫1に格納された試薬容器6内の洗浄液を用いて反応容器3及びサンプル分注プローブ16の洗浄を行うために、機構部26の各機構を制御して反応ディスク4、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、サンプル分注ポンプ16a等の各ユニットを作動させる。
【0061】
第1試薬分注プローブ14は、一端部が試薬庫1に格納された試薬容器6内の洗浄液に接触して第1試薬検出器14bで検出される吸引位置で停止した後、洗浄液を吸引して反応容器3に吐出する。そして、(n―p)個(n>p≧1)の各反応容器3に対して、図7(a)に示すように、最大量を収容した混合液に接触する反応容器3内面の洗浄が可能なように、反応容器3を洗浄する前記最大量よりも多い洗浄量V1の洗浄液を吐出する(ステップS2)。
【0062】
(n−p)個の反応容器3内に洗浄液を吐出した後、第1試薬分注プローブ14は、試薬容器6から洗浄液を吸引する。そして、洗浄液が供給されていない残りp個の各反応容器3に対して、図7(b)に示すように、反応容器3に加えてサンプル分注プローブ16の洗浄が可能なように、反応容器3及びサンプル分注プローブ16を洗浄する洗浄量V1よりも多い洗浄量V2の洗浄液を吐出する(ステップS3)。
【0063】
このように、第1試薬分注プローブ14で洗浄液を反応容器3に供給することにより、洗浄液を用いて反応容器3の混合液と接触した内面を洗浄することができる。
【0064】
なお、第1試薬分注プローブ14で反応容器3に供給することにより、洗浄液を用いて第1試薬分注プローブ14を洗浄することができる。また、複数の反応容器3に分注することにより、測定中よりも長時間に亘って第1試薬分注プローブ14の第1試薬と接触した内外面を洗浄液と接触させて洗浄することができる。
【0065】
また、洗浄液を収容した試薬容器6,7を、試薬庫1,2に格納し、その試薬容器6,7内の洗浄液を第1及び第2試薬分注プローブ14,15で反応容器3に供給するように実施してもよい。これにより、測定外洗浄の洗浄条件として「Rプローブ」を設定しない場合でも、洗浄液を用いて第1及び第2試薬分注プローブ14,15を洗浄することができる。
【0066】
ステップS3の後に、サンプル分注プローブ16は、pが2以上の整数である場合に洗浄量V2の洗浄液が供給されたp個の内の(p−1)個目までの各反応容器3から、分注のときに吸引する試料の最大量よりも多い量である洗浄量V2から洗浄量V1を差し引いた洗浄量(V2−V1)の洗浄液を吸引し、吸引した洗浄液を洗浄槽71内に吐出する。そして、図7(c)に示すように、液面層吸引位置A1及び下層吸引位置A2の両位置で試料と接触した外面の一端部Dを含む範囲がp個目の反応容器3内の洗浄液に接触する、例えば一端が反応容器3内の底面に接する測定外洗浄位置W3で停止する。そして、反応容器3から洗浄量(V2−V1)の洗浄液を吸引する。
【0067】
このように、反応容器3内に供給された洗浄液の一部をサンプル分注プローブ16内に吸引させることにより、洗浄液を用いてサンプル分注プローブ16の試料と接触した内面を洗浄することができる。また、サンプル分注プローブ16を測定外洗浄位置W3で停止させることにより、液面層吸引位置A1及び下層吸引位置A2の両位置で試料と接触した一端部を含む範囲に亘るサンプル分注プローブ16外面を、洗浄液を用いて洗浄することができる。これにより、サンプル分注プローブ16の内外面を測定中よりも強力に洗浄することができる。
【0068】
p個目の反応容器3から洗浄液を吸引した後にサンプル分注プローブ16が測定外洗浄位置W3で停止した状態で、制御部27は、反応ディスク4、サンプル分注アーム10、及びサンプル分注ポンプ16aを時間T停止させる(ステップ4)。
【0069】
このように、時間T、全ての反応容器3内及びサンプル分注プローブ16内に洗浄液を留めると共にサンプル分注プローブ16を測定外洗浄位置W3で停止させることにより、反応容器3内及びサンプル分注プローブ16内外面を測定中よりも長時間に亘って洗浄することができるため、測定中よりも強力に洗浄することができる。
【0070】
これにより、洗浄液を用いて反応容器3及びサンプル分注プローブ16を洗浄する場合、サンプル分注プローブ16洗浄用の洗浄液を準備する必要がないため、作業者の負担を軽減することができる。また、サンプル分注プローブ16を洗浄液で洗浄するための洗浄槽やこの洗浄槽に洗浄液を供給するポンプ等の洗浄ユニットを設ける必要がないため、構成の複雑化や大型化を防ぐことができる。
【0071】
停止してから時間Tが経過した後、サンプル分注プローブ16は移動して、洗浄槽71の下層洗浄位置W2で停止する。洗浄槽71では、サンプル分注プローブ16を洗浄水を用いて洗浄する。洗浄後、サンプル分注プローブ16は移動して、ホームポジションで停止する。また、反応容器洗浄ユニット12は、全ての反応容器3内を洗浄する。そして、反応容器洗浄ユニット12が全ての反応容器3の洗浄を終了して、分析部24の各ユニットが移動してホームポジションで停止したとき、自動分析装置100は、洗浄動作を終了する(ステップS5)。
【0072】
以上述べた本発明の実施例によれば、洗浄液を反応容器3に供給することにより、洗浄液を用いて反応容器3の混合液と接触した内面を洗浄することができる。また、反応容器3内に供給された洗浄液の一部をサンプル分注プローブ16内に吸引させることにより、洗浄液を用いてサンプル分注プローブ16の試料と接触した内面を、測定中よりも強力に洗浄することができる。また、サンプル分注プローブ16を測定外洗浄位置W3で停止させることにより、液面層吸引位置A1及び下層吸引位置A2の両位置で試料と接触した一端部を含む範囲に亘るサンプル分注プローブ16外面を、測定中よりも強力に洗浄することができる。
【0073】
更に、時間T、全ての反応容器3内及びサンプル分注プローブ16内に洗浄液を留めると共にサンプル分注プローブ16を測定外洗浄位置W3で停止させることにより、反応容器3内及びサンプル分注プローブ16内外面を測定中よりも長時間に亘って洗浄することができるため、測定中よりも強力に洗浄することができる。
【0074】
これにより、反応容器3及びサンプル分注プローブ16を洗浄液を用いて洗浄する場合、サンプル分注プローブ16洗浄用の洗浄液を準備する必要がないため、作業者の負担を軽減することができる。また、サンプル分注プローブ16を洗浄液で洗浄するための洗浄槽やこの洗浄槽に洗浄液を供給するポンプ等の洗浄ユニットを設ける必要がないため、構成の複雑化や大型化を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0075】
3 反応容器
14 第1試薬分注プローブ
16 サンプル分注プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬を反応容器に分注して、その混合液を測定する自動分析装置において、
前記試料を収容する試料容器から吸引して、前記反応容器内に吐出する分注を行うサンプル分注プローブと、
前記混合液の測定中以外のときに、前記反応容器内に洗浄液を供給し、前記反応容器内に供給された前記洗浄液の一部を前記サンプル分注プローブ内に吸引させて洗浄を行う洗浄手段とを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記サンプル分注プローブは、分析サイクル毎に前記試料の分注を行い、
前記洗浄手段は、前記分析サイクルよりも長い時間、供給した前記洗浄液を前記反応容器内に留めると共に吸引させた前記洗浄液を前記サンプル分注プローブ内に留めるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記試料容器に収容された前記試料をこの試料の液面層と前記サンプル分注プローブの一端部との接触により検出する検出手段、及び前記試料の分注における吸引において、前記サンプル分注プローブを前記試料容器に収容された前記試料が前記検出手段により検出される液面層吸引位置及びこの液面層吸引位置よりも下方の下層吸引位置で停止させる移動手段を有し、
前記サンプル分注プローブが前記洗浄液の一部を吸引する位置は、前記反応容器内に供給された前記洗浄液と前記一端部を含む範囲が接触する洗浄位置であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記洗浄位置は、前記洗浄液が供給された前記反応容器内の底面に前記サンプル分注プローブの一端が接触する位置であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記下層吸引位置で停止した前記サンプル分注プローブが吸引する前記試料は、全血又はこの全血から分離された血球成分を含む試料であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記試薬を試薬容器から吸引して、前記反応容器内に吐出する分注を行う試薬分注プローブを有し、
前記測定外洗浄手段は、所定の位置に配置された前記洗浄液を収容する前記試薬容器から前記反応容器に分注させて、前記洗浄液を前記反応容器内に供給するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−232249(P2011−232249A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104314(P2010−104314)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】