自動分析装置
【課題】分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置の提供。
【解決手段】分注機構制御部13は、プローブとアームと反応ディスクとを制御して、反応管に対してプローブに溶液の分注を行なわせる。撮影部19は、分注中のプローブ及び反応管の少なくとも一方を撮影し、現在の分注に関する比較画像のデータを生成する。判定部23は、生成された比較画像と正常な分注に関する参照画像とを比較項目に従って比較して現在の分注が正常に行なわれたか否かを判定する。報知部25は、判定部23による判定結果を報知する。
【解決手段】分注機構制御部13は、プローブとアームと反応ディスクとを制御して、反応管に対してプローブに溶液の分注を行なわせる。撮影部19は、分注中のプローブ及び反応管の少なくとも一方を撮影し、現在の分注に関する比較画像のデータを生成する。判定部23は、生成された比較画像と正常な分注に関する参照画像とを比較項目に従って比較して現在の分注が正常に行なわれたか否かを判定する。報知部25は、判定部23による判定結果を報知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルや試薬等の溶液をプローブにより反応管に分注する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、自動分析装置は、恒温下の反応管にサンプルや試薬等の溶液をプローブにより定量分注する。そして自動分析装置は、分注されたサンプルと試薬とを撹拌して、化学反応を起こさせる。自動分析装置は、この化学反応を測光系で測定し、測定結果に基づいてサンプルの成分量を分析している。
【0003】
溶液がプローブにより正しく反応管に分注されることで、測定性能が向上する。従って分注性能は、測定性能に影響するキーファクターの1つであり、分注に係るプローブ等のユニットのメンテナンスは、とても重要である。
【0004】
しかしながら、溶液は、成分や物性が異なるため、ユニットの汚れ方も使用施設により異なる。この汚れの要因によりプローブや反応管のメンテナンス時期を一律に考えることは難しい。従って分注性能を維持管理することは難しく、分注性能の信頼性が十分に得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6―242126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に係る自動分析装置は、溶液を分注可能なプローブと、前記プローブを移動可能に支持する支持機構と、前記溶液を収容可能な反応管を吐出位置に移動可能に保持するディスクと、前記プローブと前記支持機構と前記ディスクとを制御して前記反応管に対して前記プローブに前記溶液の分注を行なわせる制御部と、前記分注中の前記プローブ及び前記反応管の少なくとも一方を撮影し、現在の分注に関する比較画像のデータを生成する撮影部と、前記撮影部により生成された比較画像と正常な分注に関する参照画像とを比較項目に従って比較して前記現在の分注が正常に行なわれたか否かを判定する判定部と、前記判定部による判定結果を報知する報知部と、を具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置の提供が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1及び第2実施形態に係る自動分析装置の構成を示す図。
【図2】図1の自動分析装置の筐体に設けられた分析機構の外観を示す図。
【図3】正常分注時においてプローブが吐出位置に配置された時点の状態を模式的に示す図。
【図4】正常分注時においてプローブが溶液を吐出している状態を模式的に示す図。
【図5】異常分注時におきるプローブの位置ずれを示す図。
【図6】異常分注時におきる分注中の溶液の、軌跡の屈曲の様子を模式的に示す図。
【図7】異常分注時におきる分注中の溶液の、飛び散りの様子を模式的に示す図。
【図8】異常分注時におきる分注中の溶液の、液切れの様子を模式的に示す図。
【図9】図1の判定部によるプローブの位置パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図。
【図10】図1の判定部による溶液の流出パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図。
【図11】図1の表示部により表示されるモニタリング試薬設定画面の一例を示す図。
【図12】図1の表示部により表示される判定結果画面の一例を示す図。
【図13】正常分注時においてプローブが反応管内で溶液を吐出している様子を模式的に示す図。
【図14】正常分注時における溶液吐出後のプローブと溶液とを模式的に示す図。
【図15】異常分注時における溶液吐出後のプローブと溶液とを模式的に示す図。
【図16】図1の判定部による反応管内でのプローブの位置パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図。
【図17】図1の判定部による分布パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図。
【図18】第2実施形態に係る小型カメラの設置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
【0011】
現行の自動分析装置において、プローブによる分注動作は、大きく分けて2つのタイプに分類できる。第1のタイプは、プローブの先端を反応管の内部に進入させないで、反応管上部から溶液を吐出するタイプである。第2のタイプは、プローブの先端を反応管の内底面に接触させて溶液を吐出するタイプである。第1実施形態に係る分注動作は、第1のタイプを対象とし、第2実施形態に係る分注動作は、第2のタイプを対象とする。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動分析装置の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る自動分析装置は、操作部11、分析機構制御部13、分析機構駆動部15、分析機構17、撮影部19、記憶部21、判定部23、報知部25、及びシステム制御部27を備える。
【0013】
操作部11は、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを備える。操作部11は、オペレータによる入力デバイスの操作に応じた操作信号をシステム制御部31に供給する。これにより操作部11は、オペレータからの各種指示や測定条件を受け付ける。
【0014】
分析機構制御部13は、オペレータからの操作部11を介した指示に従って測定条件を設定し、設定された測定条件に応じた制御信号を分析機構駆動部15に供給する。分析機構駆動部15は、分析機構制御部13からの制御信号に応じた駆動信号を分析機構17に供給し、測定条件に応じた動作を行なわせる。分析機構17は、自動分析装置の筐体上のステージに設けられている。
【0015】
図2は、筐体50に設けられた分析機構17の外観を示す図である。図2に示すようにステージ50の中央部には反応ディスク52が設けられている。反応ディスク52は、反応槽に設置される。反応ディスク52は、円周上に配列された複数の反応管54を保持する。反応ディスク52は、所定のサイクルで回動と停止とを繰り返す。
【0016】
反応ディスク52の近傍には、サンプルディスク56が配置されている。サンプルディスク56は、サンプルを収容するためのサンプル容器58を保持する。サンプルディスク56は、特定のサンプル容器58が所定のサンプル吸入位置に位置決めされるように回動する。
【0017】
反応ディスク52の近傍には、第1試薬庫60が配置される。第1試薬庫60は、サンプルの各測定項目に選択的に反応する第1試薬が収容された複数の試薬容器を保持する。第1試薬庫60は、特定の試薬容器が所定の第1試薬吸入位置に位置決めされるように回動する。
【0018】
反応ディスク52の内側には、第2試薬庫64が配置される。第2試薬庫64は、第1試薬に対応する第2試薬が収容された複数の試薬容器62を保持する。第2試薬庫64は、特定の第2試薬容器62が所定の第2試薬吸入位置に位置決めされるように回動する。
【0019】
反応ディスク52とサンプルディスク56との間にはサンプルアーム66Aが配置される。サンプルアーム66Aの先端には、サンプルプローブ68Aが取り付けられている。サンプルアーム66Aは、サンプルプローブ68Aをサンプルディスク56上のサンプル吸入位置に配置し、サンプル吸入位置に配置されたサンプル容器58内のサンプルを所定量だけ吸入させる。サンプルが吸入されるとサンプルアーム66Aは、サンプルプローブ68Aを上昇させ、サンプルプローブ68Aを回転軌道に沿って回動して、反応ディスク52上のサンプル吐出位置に配置させる。そしてサンプルアーム66Aは、サンプルプローブ68Aを反応管54内に向けて所定量だけ下降させる。所定量下降するとサンプルプローブ68Aは、サンプルを反応管に吐出する。その後サンプルアーム66Aは、サンプルプローブ68Aを上昇させ、回転軌道に沿って回動させ、再びサンプル吸入位置に移動させる。
【0020】
反応ディスク52と第1試薬庫60との間には第1試薬アーム66Bが配置される。第1試薬アーム66Bの先端には第1試薬プローブ68Bが取り付けられている。第1試薬アーム66Bは、第1試薬プローブ68Bを、第1試薬庫60上の第1試薬吸入位置に配置し、第1試薬吸入位置に配置された試薬容器内の第1試薬を所定量だけ吸入させる。第1試薬が吸入されると第1試薬アーム66Bは、第1試薬プローブ68Bを上昇させ、第1試薬プローブ68Bを回転軌道に沿って回動して、反応ディスク52上の第1試薬吐出位置に配置させる。そして第1試薬プローブ68Bは、第1試薬を反応管54に吐出する。その後第1試薬アーム66Bは、第1試薬プローブ68Bを回転軌道に沿って回動させ、洗浄プール67Bに配置する。洗浄プール67Bで洗浄された第1試薬プローブ68Bは、必要に応じて再び第1試薬吸入位置に移動する。
【0021】
反応ディスク52の外周近傍には第2試薬アーム66Cが配置される。第2試薬アーム66Cの先端には第2試薬プローブ68Cが取り付けられている。第2試薬アーム66Cは、第2試薬プローブ68Cを、第2試薬庫64上の第2試薬吸入位置に配置し、第2試薬吸入位置に配置された試薬容器62内の第2試薬を所定量だけ吸入させる。第2試薬が吸入されると第2試薬アーム66Cは、第2試薬プローブ68Cを上昇させ、第2試薬プローブ68Cを回転軌道に沿って回動して、反応ディスク52上の第2試薬吐出位置に配置させる。そして第2試薬プローブ68Cは、第2試薬を反応管54に吐出する。その後第2試薬アーム66Cは、第2試薬プローブ68Cを回転軌道に沿って回動させ、洗浄プール67Cに配置する。洗浄プール67Cで洗浄された第2試薬プローブ68Cは、必要に応じて再び第2試薬吸入位置に移動する。
【0022】
反応ディスク52の外周近傍には、撹拌系70が設けられている。撹拌系70は、撹拌子を有している。撹拌系70は、反応ディスク52上の撹拌位置に反応管54が停止されると、撹拌子で反応管54内のサンプル及び第1試薬の混合液や、サンプル、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する。
【0023】
反応ディスク52の内部には、測光系が設けられている。測光系は、反応管54内部の混合液を測光する。測光により得られた測定結果は表示部27に表示される。
【0024】
撮影部19は、分注中におけるモニタリング対象のプローブ68を光学的に撮影し、このプローブ68により行なわれた現在の分注に関する画像(以下、比較画像と呼ぶことにする)のデータを生成する。具体的には、撮影部19は、小型カメラ(図2の72)とA/Dコンバータ(図示せず)とを有する。小型カメラ72は、分注中のプローブ68を撮影可能な筐体50の上部表面位置に設置される。小型カメラ72は、CCD(Charge-coupled device)やCMOS(complementary metal-oxide semiconductor)イメージセンサー等の撮像素子を搭載している。小型カメラ72は、光を受光しアナログの映像信号を出力する。A/Dコンバータは、小型カメラ72から出力されたアナログの映像信号をデジタル変換し、デジタルの比較画像のデータを生成する。生成された比較画像のデータは、記憶部23に供給される。
【0025】
なお第1実施形態中の「プローブ」とは、第1試薬プローブ68Bと第2試薬プローブ68Cとの総称であり、第1試薬プローブ68Bと第2試薬プローブ68Cとを区別しない場合に用いるとする。また、第1実施形態中の「溶液」とは、第1試薬プローブ68Bにより分注される第1試薬、第2試薬プローブ68Cにより分注される第2試薬等の総称であり、これらを区別しない場合に用いるとする。
【0026】
記憶部21は、撮影部19により生成された比較画像のデータを一時的に記憶する。また記憶部21は、撮影部19により過去に生成された、プローブ68により行なわれた正常な分注に関する画像(以下、参照画像と呼ぶことにする)のデータを記憶している。参照画像撮影時のプローブ68は、典型的には、未使用品であり、汚れていないものとする。参照画像は、正常に行なわれた分注動作のパターンとして用いられる。
【0027】
判定部23は、比較画像のデータと参照画像のデータとを記憶部23から読み出し、比較項目に従って比較し、モニタリング対象のプローブ68により現在の分注が正常に行なわれた否かを判定する。より詳細には、判定部23は、比較画像に描出されているプローブ68の位置パターンや溶液の流出パターンを、参照画像に描出されているプローブ68の位置パターンや溶液の流出パターンと比較し、現在の分注が正常に行なわれたか否かを判定する。そして判定部23は、分注動作が正常であると判定した場合に正常信号を生成し、分注動作が異常であると判定した場合に異常信号を生成する。生成された各信号は、システム制御部31を介して報知部25に供給される。
【0028】
報知部25は、判定部23による判定結果をオペレータに報知する。より詳細には、報知部25は、システム制御部31から正常信号が供給された場合、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれた旨を報知する。異常信号が供給された場合、報知部25は、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれなかった旨を報知する。具体的には、報知部25は、表示部27と印刷部29とを有する。
【0029】
表示部27は、正常信号が供給された場合、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれた旨を表示デバイスに表示する。異常信号が供給された場合、表示部27は、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれなかった旨を表示デバイスに表示する。また、表示部27は、モニタリング用の溶液の選択画面を表示することも可能である。
【0030】
印刷部29は、正常信号が供給された場合、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれた旨をプリンタ用紙に印刷して出力する。異常信号が供給された場合、印刷部29は、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれなかった旨をプリンタ用紙に印刷して出力する。
【0031】
システム制御部31は、自動分析装置が備える各部を統括して制御する。例えば、システム制御部31は、操作部11からの操作信号や、モニタリング用のプローブ68の種類、モニタリング用の溶液の種類に応じて各部を制御することにより、第1実施形態に特有なモニタリング処理を実行する。モニタリング処理においてシステム制御部31は、撮影部19でプローブ68による分注をモニタリングし、プローブ68による分注が正常に行なわれているか否かを判定し、判定結果をオペレータに報知する。
【0032】
まずは正常分注時におけるプローブ68の位置パターン・溶液の吐出パターンと、正常でない分注時、すなわち異常分注時におけるプローブ68の位置パターン・溶液の吐出パターンとの違いについて説明する。
【0033】
図3は、正常分注時においてプローブ68が吐出位置P1に配置された時点の状態を模式的に示す図である。図3に示すように正常分注時においてプローブ68の先端は、溶液吐出位置P1に一致するように配置される。また、吐出対象の反応管54は、溶液吐出位置P1に反応ディスク52により正確に配置されている。すなわち反応管54の中心軸が溶液吐出位置P1に略一致するように配置される。そしてプローブ68も、その中心軸が溶液吐出位置P1に略一致するようにアーム66により配置される。すなわち、プローブ68の中心軸と反応管54の中心軸とが略一致するように配置される。この時、プローブ68の中心軸は、溶液が確実に反応管54内に吐出されるように、略鉛直方向を向いている。溶液吐出位置P1に配置されるとプローブ68は、溶液を吐出し始める。
【0034】
図4は、正常分注時においてプローブ68が溶液を吐出している状態を模式的に示す図である。図4に示すように、正常分注時において溶液は、反応管54の先端から鉛直方向に沿って真っ直ぐに吐出される。すなわち、正常分注時における溶液は、プローブ68の先端から反応管54の内底面まで鉛直方向に沿って直線状の軌跡を描く。
【0035】
次に異常分注時について説明する。異常分注の原因としては、吐出時における溶液吐出位置P1からのプローブ68の位置ずれがある。図5は、異常分注時におきるプローブ68の位置ずれを示す図である。図5に示すように、プローブ68が目的とする溶液吐出位置P1に正確に位置決めされない場合がある。これは経年劣化や、オペレータ等によるアーム66やプローブ68との接触により、アーム66によるプローブ68の位置決め精度が低下することが要因となっている。正確に位置決めされないと、溶液が反応管54外に飛散する可能性がある。また、溶液が反応管54内へ吐出されたとしても溶液が反応管54内側面に付着してしまい吐出精度が悪化する。この場合、反応管54内の溶液量が不足し、測定結果の信頼性が悪化してしまう。また、溶液の吐出は、反応管54内の溶液の撹拌効果を有するため、プローブ68が正確に位置決めされないと、その効果が低減する。
【0036】
このように異常分注時におけるプローブ68の位置パターンは、正常時におけるプローブ68の位置パターンとずれる。すなわち、モニタリング対象のプローブ68の位置パターンと正常時におけるプローブ68の位置パターンとを比較すれば、プローブ68の位置決め精度が低下しているか否かを判定することができる。
【0037】
異常分注の主な原因としては、プローブ68の内壁の汚れがある。プローブ68の内壁に汚れがあると、分注中の溶液の軌跡が屈曲したり、溶液が飛び散ったり、液切れが悪化したりする。
【0038】
図6は、異常分注時におきる分注中の溶液の、軌跡の屈曲の様子を模式的に示す図である。図6に示すように、プローブ68の内壁が汚れていると、このプローブ68から吐出される溶液は、鉛直方向に沿って直線状の軌跡を描かずに、屈曲した軌跡を描く。このため、溶液が反応管54内側面に付着してしまう場合がある。また、汚れが酷い場合には、溶液が反応管54内に正確に分注されない虞もある。これにより反応管54内の溶液量が不足し、測定結果の信頼性の悪化につながる。
【0039】
図7は、異常分注時におきる吐出中の溶液の、飛び散りの様子を模式的に示す図である。図7に示すように、プローブ68の内壁が汚れていると、溶液が直線状に吐出されず、飛び散ってしまうことがある。このため、溶液が反応管54の内側面に付着してしまう場合がある。また、汚れが酷い場合には、飛び散った溶液が反応管54内へ分注されない虞もある。これにより反応管54内の溶液量が不足し、測定結果の信頼性の悪化につながる。
【0040】
図8は、異常分注時におきる吐出中の溶液の、液切れの様子を模式的に示す図である。図8に示すように、プローブ68の内壁が汚れていると、吐出後のプローブ68の先端に気泡により膨らんだ溶液が生じてしまう場合がある。液切れが悪くなると、分注動作が終了しても吸入された溶液がプローブ68から吐出しきらず、飛び散りも生じやすくなる。このため、反応管54内の溶液量が不足し、測定結果の信頼性の悪化につながる。
【0041】
このように異常分注時における溶液の吐出パターンは、正常時における溶液の吐出パターンとずれる。すなわち、モニタリング対象のプローブ68から分注される溶液の吐出パターンと正常時における溶液の吐出パターンとを比較すれば、プローブ68が汚れているか否かを判定することができる。この吐出パターンのずれは、溶液の物性によっても異なる。例えば、高粘性や発泡性を有する溶液は、溶液の軌跡の歪みや、液切れ、飛び散りの度合がより強くなり、正常時における溶液の吐出パターンとのずれが増大する。従って、高粘性と発泡性とを有する溶液をモニタリング用の溶液に設定すれば、より高精度にプローブ68の汚れの有無を判定できる。
【0042】
上述のように比較画像と参照画像とは、定点撮影により生成されている。従って、モニタリング対象のプローブ68が正確に溶液吐出位置P1に配置されていれば、比較画像中のプローブ68と参照画像中のプローブ68とは同一座標に描出される。また、モニタリング対象のプローブ68から溶液が正常に吐出されていれば、比較画像中の溶液と参照画像中の溶液とは、同一座標に描出される。換言すれば、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていなければ、比較画像中のプローブ68と参照画像中のプローブ68とは互いに異なる座標位置に描出される。また、モニタリング対象のプローブ68から溶液が正常に吐出されていなければ、比較画像中の溶液と参照画像中の溶液とは、互いに異なる位置に描出される。
【0043】
判定処理において判定部23は、比較項目の1つとして、比較画像中のプローブ68の位置パターンと参照画像中のプローブ68の位置パターンとを比較する。より直接的には、比較画像上のプローブ68の座標位置と、参照画像上のプローブ68の座標位置とを比較する。また、判定部23は、比較項目の1つとして、比較画像中の溶液の吐出パターンと参照画像中の溶液の吐出パターンとを比較する。より直接的には、比較画像上の溶液の座標位置と、参照画像上の溶液の座標位置とを比較する。これらパターン比較により判定部23は、モニタリング対象のプローブ68により正常に分注が行なわれているか否かを判定する。パターンの比較方法は、既存のどの画像処理により行なわれても構わない。例えば、比較画像と参照画像との差分画像に基づいてプローブ68の位置パターン及び溶液の吐出パターンを比較する。
【0044】
以下、差分画像に基づく判定処理について具体的に説明する。まず差分画像を生成するための前処理として、比較画像と参照画像との画素値範囲を同一にするために比較画像と参照画像とを正規化する。次に正規化された比較画像と参照画像とをカラー画像からモノクロ画像に変換する。そしてモノクロの比較画像からモノクロの参照画像を減算し、モノクロの差分画像のデータを生成する。生成された差分画像にプローブが描出されているか否かを判定することにより、プローブの位置パターンの、ずれの有無を判定する。また、生成された差分画像に溶液が描出されているか否かを判定することにより、溶液の吐出パターンの、ずれの有無を判定する。
【0045】
図9は、判定部23によるプローブの位置パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図である。図9の(a)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されている場合、比較画像I1上でのプローブ681の位置と参照画像I2上でのプローブ682の座標位置とは同一である。従って、差分画像I3上にはプローブ68が描出されない。一方、図9の(b)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていない場合、比較画像I4上でのプローブ684の座標位置と参照画像I2上でのプローブ682の座標位置とが異なる。従って、差分画像I5上には、比較画像I4に由来するプローブ684と参照画像I2に由来するプローブ682とが描出される。
【0046】
モニタリング処理において判定部23は、差分画像上において、正確に配置されたプローブが描出される座標位置(以下、正常プローブ位置と呼ぶことにする)にプローブが描出されているか否かを判定する。正常プローブ位置は、例えば、図9の参照画像I2上に描出されるプローブ682の座標位置である。判定処理の一例としては、まず判定部23は、プローブが取りうる画素値よりも少し低い画素値を閾値として差分画像を閾値処理し、閾値以上の画素値を有する画素に画素値“1”を、閾値以下の画素値を有する画素に画素値“0”を割り付け、2値化画像を生成する。そして判定部23は、2値化画像上の正常プローブ位置にある画素のうち画素値“1”を有する画素を計数する。そして画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えた場合、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていると判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は正確に配置されていないことを意味する。従って、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていると判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていない、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていないと判定する。一方、画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えていない場合、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていないと判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は正確に配置されていることを意味する。従って、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていないと判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されている、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていると判定する。
【0047】
次に溶液の吐出パターンの、ずれの有無に関する判定処理について説明する。図10は、判定部23による溶液の吐出パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図である。図10の(a)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が汚れていない場合、比較画像I6上での溶液L6の座標位置と参照画像I7上での溶液L7の座標位置とは同一である。従って、差分画像I8上には溶液が描出されない。一方、図10の(b)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が汚れている場合、比較画像I9上での溶液L9の座標位置と参照画像I7上での溶液L7の座標位置とが異なる。従って、差分画像I10上には、比較画像I9に由来する溶液L9と参照画像I7に由来する溶液L7とが描出される。
【0048】
モニタリング処理において判定部23は、差分画像上において、正常に吐出された溶液が描出される座標位置(以下、正常溶液位置と呼ぶことにする)に溶液が描出されているか否かを判定する。正常溶液位置は、例えば、図10の参照画像I7上に描出される溶液L7の座標位置である。判定処理の一例としては、まず判定部23は、溶液が取りうる最小画素値を第1の閾値、溶液が取りうる最大画素値第2の閾値として閾値処理し、第1の閾値と第2の閾値との間の範囲内の画素値を有する画素に画素値“1”を、範囲外の画素値を有する画素に画素値“0”を割り付け、2値化画像を生成する。そして判定部23は、2値化画像上の正常溶液位置にある画素のうち画素値“1”を有する画素を計数する。そして画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えた場合、差分画像上の正常溶液位置に溶液が描出されていると判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は汚れていることを意味する。従って、正常溶液位置に溶液が描出されていると判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が汚れていない、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていないと判定する。一方、画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えていない場合、差分画像上の正常溶液位置に溶液が描出されていないと判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は汚れていないことを意味する。従って、正常溶液位置に溶液が描出されていないと判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が汚れていない、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていると判定する。
【0049】
なお上述のプローブ68の、汚れの有無、すなわち溶液の吐出パターンの、ずれの有無に関する判定処理は、吐出中の溶液の、軌跡の位置ずれを例として説明した。しかし、本判定処理はこれのみに限定されない。例えば、溶液の飛び散りや溶液の液切れに由来する溶液の位置ずれにも適用可能である。
【0050】
以下、第1実施形態に係るモニタリング処理における自動分析装置の動作例について説明する。なお以下の説明においてプローブ68は、第1試薬プローブ68Bと第2試薬プローブ68Cとであるとする。この場合、小型カメラは2台用意され、1つは筐体50上であって第1試薬吐出位置の近傍に設置され、もう一方は、第2試薬吐出位置の近傍に設置される。より詳細には、各小型カメラは、その撮像視野が各試薬プローブ68B、68Cの溶液吐出位置を含むような位置に設置される。
【0051】
モニタリング処理は、サンプルの分析中であっても、自動分析装置の起動時や終了時等に行なわれるメンテナンス時であっても行なうことができる。
【0052】
メンテナンスの開始時において表示部27は、モニタリング用の試薬を設定するためのモニタリング試薬設定画面を表示する。図11は、表示部27により表示されるモニタリング試薬設定画面の一例を示す図である。図11に示すように、設定画面には、第1試薬の一覧と第2試薬の一覧とが表示されている。オペレータは、操作部11を介してこの一覧上でモニタリング用の第1試薬と第2試薬とを設定する。図11においては、モニタリング用の第1試薬としてCRP−1が、第2試薬としてGGT−2が設定されている。モニタリング用試薬としては、正常分注時との溶液の吐出パターンのずれを増大させる高粘性や発泡性を有するものがよい。なおモニタリング用試薬は、実際に分析時に使用されるものであっても、モニタリングのために製造された試液であっても構わない。モニタリング専用試液は、例えば、高粘性溶液に界面活性剤を添加して気泡性を持たせたものが好適である。
【0053】
モニタリング用の試薬が設定されるとシステム制御部31は、設定されたモニタリング用の第1試薬を第1試薬プローブ68Bが分注し、また、設定されたモニタリング用の第2試薬を第2試薬プローブ68Cが分注するような設定条件を設定する。
【0054】
そしてオペレータ等により操作部11を介してモニタリング処理の開始指示がなされることを契機としてシステム制御部31は、モニタリング処理を開始する。モニタリング処理において分析機構制御部13は、設定された設定条件で分注機構駆動部15を制御して第1試薬プローブ68Bや第2試薬プローブ68C、反応ディスク52等の分注機構17を駆動させる。
【0055】
モニタリング用の第1試薬を吸入した第1試薬プローブ68Bが第1試薬吐出位置に配置されると撮影部19は、小型カメラ72を利用して第1試薬プローブ68Bの定点撮影を開始する。そして撮影部19は、第1試薬プローブ68Bがモニタリング用の第1試薬を吐出し終わると定点撮影を終了する。撮影期間中、第1試薬プローブ68Bに関する比較画像のデータは撮影部19により繰り返し生成され、記憶部21を経由して判定部23に供給される。なお撮影部19による第1試薬プローブ68Bに関する撮影期間の長さは、常に一定である。撮影期間は、例えば、1秒以下である。
【0056】
同様に、モニタリング用の第2試薬を吸入した第2試薬プローブ68Cが第2試薬吐出位置に配置されると撮影部19は、小型カメラ72を利用して第2試薬プローブ68Cの定点撮影を開始する。そして撮影部19は、第2試薬プローブ68Cがモニタリング用の第2試薬を吐出し終わると定点撮影を終了する。なお撮影部19による第2試薬プローブ68Cに関する撮影期間の長さは、常に一定であり、例えば、1秒以下である。
【0057】
比較画像のデータを受けると判定部23は、記憶部21から参照画像のデータを読み出し、読み出された参照画像と比較画像とを画像処理して上述の判定処理を行なう。なお参照画像と比較画像とは、互いに同一の撮影開始タイミング、撮影期間、及び撮影終了タイミングで撮影されたものである。撮影開始から同一時間経過後に生成された比較画像と参照画像とであれば、各画像に描出されているプローブは同一の動作タイミングに関するものであると推定される。従って判定部23は、撮影開始から同一時間経過後に生成された比較画像と参照画像とを画像処理して上述の判定処理を行ない、正常な分注が行なわれたか否かを判定する。正常な分注が行なわれたと判定した場合、判定部23は、正常信号を表示部27に供給する。一方、正常な分注が行なわれなかったと判定した場合、判定部23は、異常信号を表示部27に供給する。
【0058】
このような判定処理が行なわれると表示部27は、判定処理の結果を示す判定結果画面を表示する。図12は、表示部27により表示される判定結果画面の一例を示す図である。図12に示すように、判定結果画面は、モニタリング対象のプローブ名称の表示欄、メンテナンスの要否の表示欄、メンテナンスの最終実施日の表示欄を有する。メンテナンスの要否の表示欄には、判定部23による判定結果が表示される。すなわち、モニタリング対象のプローブ68が正常に分注を行なっていると判定された場合、「否」と表示される。また、モニタリング対象のプローブ68が正常に分注を行なっていないと判定された場合、「要」と表示される。「要」と表示することにより、表示部27は、オペレータに対して、そのプローブ68を洗浄したり、交換したり、プローブ68の位置決め精度の確認といったメンテナンスが必要なことを報知する。メンテナンスの最終実施日の表示欄には、そのプローブ68について最後にメンテナンスが行われた日が表示される。このようにメンテナンスの履歴を表示することにより、表示部27は、オペレータに対して、定期的にメンテナンスを実施することを要請できる。
【0059】
なお判定部23の結果の表示方法は、上述の方法のみに限定されない。例えば、判定結果に応じてプローブ名称の表示欄に表示される「プローブ」の表示色を切替えてもよい。例えば、正常に分注が行なわれたと判定された場合は黒で表示し、正常に分注が行なわれなかったと判定された場合は赤で表示するとよい。
【0060】
上記構成により第1実施形態に係る自動分析装置は、分注動作中のモニタリング対象のプローブ68を小型カメラ72で撮影し、モニタリング対象のプローブ68に関する比較画像のデータを生成する。また、予め生成された、正常な分注動作をしているプローブ68に関する参照画像のデータを記憶している。この比較画像と参照画像とを画像処理し、各画像に描出されているプローブ68の位置や溶液の位置を比較することにより、モニタリング対象のプローブ68が正常に分注しているか否かを判定する。そして判定結果をオペレータに報知する。これにより、試薬やサンプルの分注状態を管理することができ、プローブ68のメンテナンスタイミングをオペレータに報知することができる。従って、プローブ68による分注性能を維持することができ、安定した検査を実施することができる。ひいては測定結果の信頼性が向上する。また、溶液の撹拌効果が維持される。かくして第1実施形態によれば、分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置の提供が実現する。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態においては、プローブ68の先端を反応管54の内部に進入させて溶液を分注するタイプの分注動作に関するモニタリング処理について説明する。まずは正常な分注動作と正常でない分注動作との違いについて説明する。
【0062】
第2実施形態に係るモニタリング対象のプローブ68は、サンプルプローブ68Aとであるとする。モニタリング用の溶液としては、キャリブレータやコントロール、一般検体等のサンプルであるとする。サンプルの1回の分注量は、微量であり、試薬に比して少量である。なお、第1試薬プローブ68Bや第2試薬プローブ68Cが、反応管54内で吐出するタイプであれば、第2実施形態に係るモニタリング対象のプローブ68は、第1試薬プローブ68Bや第2試薬プローブ68Cにも適用可能である。
【0063】
図13は、正常分注時においてプローブ68が反応管54内で溶液を吐出している様子を模式的に示す図である。図13に示すように正常分注時においてプローブ68は、溶液吐出位置P1上に位置している。正常分注時においてプローブ68の先端は、反応管54の内底面に接触するまで下降される。このようにプローブ68の先端が反応管54の内底面に接触された状態で溶液が吐出される。溶液が吐出されるとアーム66によりプローブ68が上昇される。
【0064】
図14は、正常分注時における溶液吐出後のプローブ68と溶液とを模式的に示す図である。図14に示すように、吐出後の溶液は、反応管54の内底面に付着されている。
【0065】
次に異常分注時における分注動作について説明する。異常分注の原因としては、プローブ68の位置ずれやプローブ68の外壁の汚れが挙げられる。
【0066】
図15は、異常分注時における溶液吐出後のプローブ68と溶液とを模式的に示す図である。図15に示すように、プローブ68の外壁が汚れていると、吐出された溶液のうちの一部がプローブ68の外壁に付着されたままプローブ68が上昇してしまう。このため、反応管54の内底面に付着される溶液量は、正常分注時における溶液量に比して少量となる。このため、測定可能な溶液の分量が不足し、測定結果の信頼性の悪化につながる。
【0067】
このように異常分注時におけるプローブ68外壁の溶液の分布パターンは、正常時における溶液の分布パターンとずれる。すなわち、モニタリング対象のプローブ68外壁に付着された溶液の分布パターンと正常時における溶液の分布パターンとを比較すれば、プローブ68の外壁が汚れているか否かを判定することができる。この溶液の分布パターンのずれは、溶液の物性によっても異なる。例えば、高粘性を有する溶液は、プローブ68外壁の付着量がより多くなり、正常時における溶液の分布パターンとのずれが増大する。従って、高粘性を有する溶液をモニタリング用の溶液に設定すれば、より高精度にプローブ68外壁の汚れの有無を検出できる。
【0068】
上述のように比較画像と参照画像とは、小型カメラ72による定点撮影により生成されている。従って、モニタリング対象のプローブ68が正確に溶液吐出位置P1に配置されていれば、比較画像中のプローブ68と参照画像中のプローブ68とは同一座標に描出される。そして、モニタリング対象のプローブ68の外壁が汚れていなければ、吐出後に関する比較画像中のプローブ68の外壁周辺には溶液が描出されない。換言すれば、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていなければ、比較画像中のプローブ68と参照画像中のプローブ68とは互いに異なる座標位置に描出される。また、モニタリング対象のプローブ68の外壁が汚れていれば、吐出後に関する比較画像中のプローブ68の外壁周辺には溶液が描出される。
【0069】
判定処理において判定部23は、比較項目の1つとして、比較画像中のプローブ68の位置パターンと参照画像中のプローブ68の位置パターンとを比較する。より直接的には、比較画像上のプローブ68の座標位置と、参照画像上のプローブ68の座標位置とを比較する。また、判定部23は、比較項目の1つとして、比較画像中の溶液の分布パターンと参照画像中の溶液の分布パターンとを比較する。より直接的には、比較画像上のプローブ68の外壁周辺に溶液が描出されているか否かを判定する。これらパターン比較により判定部23は、モニタリング対象のプローブ68により正常に分注が行なわれているか否かを判定する。パターンの比較方法は、既存のどの画像処理により行なわれても構わない。例えば、比較画像と参照画像との差分画像に基づいてプローブ68の位置パターン及び溶液の分布パターンを比較する。
【0070】
以下、差分画像に基づく判定処理について具体的に説明する。なお説明は省略するが、第1実施形態と同様に、第2実施形態においても差分画像を生成するための前処理として、比較画像と参照画像とに対して正規化やモノクロ化が行なわれるものとする。
【0071】
図16は、判定部23によるプローブ68の位置パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図である。図16の(a)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されている場合、比較画像I11上でのプローブ6811の位置と参照画像I12上でのプローブ6812の座標位置とは同一である。従って、差分画像I13上にはプローブ68が描出されない。一方、図16の(b)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていない場合、比較画像I14上でのプローブ6814の座標位置と参照画像I12上でのプローブ6812の座標位置とが異なる。従って、差分画像I15上には、比較画像I14に由来するプローブ6814と参照画像I12に由来するプローブ6812とが描出される。
【0072】
モニタリング処理において判定部23は、差分画像上において、正常プローブ位置にプローブが描出されているか否かを判定する。正常プローブ位置は、例えば、図16の参照画像I12上に描出されるプローブ6812の座標位置である。判定処理の一例としては、まず判定部23は、プローブが取りうる画素値よりも少し低い画素値を閾値として差分画像を閾値処理し、閾値以上の画素値を有する画素に画素値“1”を、閾値以下の画素値を有する画素に画素値“0”を割り付け、2値化画像を生成する。そして判定部23は、2値化画像上の正常プローブ位置にある画素のうち画素値“1”を有する画素を計数する。そして画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えた場合、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていると判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は正確に配置されていないことを意味する。従って、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていると判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていない、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていないと判定する。一方、画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えていない場合、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていないと判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は正確に配置されていることを意味する。従って、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていないと判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されている、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていると判定する。
【0073】
次に溶液の分布パターンの、ずれの有無の判定処理について説明する。図17は、判定部23による溶液の分布パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図である。図17の(a)に示すように、モニタリング対象のプローブ68の外壁が汚れていない場合、比較画像I16上での溶液L16の位置と参照画像I17上での溶液L17の位置とは同一である。従って、差分画像I18上には溶液が描出されない。一方、図17の(b)に示すように、モニタリング対象のプローブ68の外壁が汚れている場合、比較画像I19上での反応管の内底面に描出された溶液L1191と参照画像I12上での溶液L12との面積が異なる。また、モニタリング対象のプローブ68の外壁が汚れている場合、比較画像I19上でのプローブ6819の外壁周辺には、溶液L1192,193が描出される。従って、差分画像I20上には、比較画像I19に由来する溶液L192,193と参照画像I17に由来する溶液L17の一部とが描出される。
【0074】
モニタリング処理において判定部23は、差分画像上において、プローブ68の外壁周辺の座標位置(以下、外壁周辺位置と呼ぶことにする)に溶液が描出されているか否かを判定する。外壁周辺位置は、例えば、図17の差分画像I20上に描出される溶液のうち参照画像I19に由来する溶液の座標位置である。判定処理の一例としては、まず判定部23は、溶液が取りうる最小画素値を第1の閾値、溶液が取りうる最大画素値第2の閾値として閾値処理し、第1の閾値と第2の閾値との間の範囲内の画素値を有する画素に画素値“1”を、範囲外の画素値を有する画素に画素値“0”を割り付け、2値化画像を生成する。そして判定部23は、2値化画像上の外壁周辺位置にある画素のうち画素値“1”を有する画素を計数する。そして画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えた場合、差分画像上の外壁周辺位置に溶液が描出されていると判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は汚れていることを意味する。従って、外壁周辺位置に溶液が描出されていると判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が汚れている、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていないと判定する。一方、画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えていない場合、差分画像上の外壁周辺位置に溶液が描出されていないと判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は汚れていないことを意味する。従って、外壁周辺位置に溶液が描出されていないと判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が汚れていない、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていると判定する。
【0075】
以下、第2実施形態に係るモニタリング処理における自動分析装置の動作例について説明する。小型カメラ72は、図18に示すように、サンプル吐出位置P2の近傍の筐体50の内部に設置される。より詳細には、小型カメラ72は、筐体50の内部であって、反応ディスク52の反応槽74の外壁近傍に取り付けられる。小型カメラ72は、その撮像視野が反応管54内底面を含むような位置に設置される。反応槽74の撮像視野を遮る部分76は、例えば、ガラス等の透明な部材(反応ウィンドウ)がはめ込まれている。小型カメラ72は、反応ウィンドウ76を介して反応管54やサンプルプローブ68Aを撮影する。
【0076】
メンテナンスの開始時において表示部27は、モニタリング用のサンプルを設定するための設定画面を表示する。オペレータは、操作部11を介してこの設定画面上でモニタリング用のサンプルとサンプルプローブ68Aとを設定する。モニタリング用のサンプルとしては、正常分注時との分布パターンのずれを増大させる高粘性を有するものがよい。なおモニタリング用のサンプルは、実際に分析時に使用されるものであっても、モニタリングのために製造された試液であっても構わない。
【0077】
モニタリング用のサンプルとモニタリング用のサンプルプローブ68Aとが設定されるとシステム制御部31は、設定されたモニタリング用のサンプルをモニタリング用のサンプルプローブ68Aが分注するような設定条件を設定する。
【0078】
そしてオペレータ等により操作部11を介してモニタリング処理の開始指示がなされることを契機としてシステム制御部31は、モニタリング処理を開始する。モニタリング処理において分析機構制御部13は、設定された設定条件で分注機構駆動部15を制御してサンプルアーム66Aや、サンプルプローブ68A、反応ディスク52等の分注機構17を動作させる。
【0079】
モニタリング用のサンプルを吸入したモニタリング用のサンプルプローブ68Aがサンプル吐出位置上の下降開始位置に配置されると撮影部19は、小型カメラ72を利用して反応管54の定点撮影を開始する。そして撮影部19は、サンプルプローブ68Aが反応管54内底面まで下降してモニタリング用サンプルを吐出し、下降開始位置まで上昇し終わると定点撮影を終了する。撮影期間中、モニタリング用の反応管54に関する比較画像のデータは撮影部19により繰り返し生成され、記憶部21を経由して判定部23に供給される。
【0080】
比較画像のデータを受けると判定部23は、撮影開始時から同一時間経過後に関する比較画像と参照画像とを画像処理して上述の判定処理を行ない、正常な分注が行なわれたか否かを判定する。サンプルプローブ68Aの外壁の汚れの有無を判定する場合、比較画像と参照画像とは、サンプルプローブ68Aがサンプルを吐出し終え所定距離(例えば、2mm)上昇した時に撮影されたものがよい。正常な分注が行なわれたと判定した場合、判定部23は、その旨の正常信号を表示部27に供給する。一方、正常な分注が行なわれなかったと判定した場合、判定部23は、その旨の異常信号を表示部27に供給する。
【0081】
このような判定処理が行なわれると表示部27は、判定処理の結果を表示する。例えば、モニタリング対象のサンプルプローブ68Aにより正常に分注が行なわれたと判定された場合、「メンテナンスの必要なし」と表示される。また、モニタリング対象のサンプルプローブ68Aにより正常に分注が行なわれなかったと判定された場合、「メンテナンスの必要あり」と表示される。「メンテナンスの必要あり」と表示することにより、表示部27は、オペレータに対して、そのサンプルプローブ68Aを洗浄したり、交換したりといったメンテナンスが必要なことを報知する。
【0082】
上記構成により第2実施形態に係る自動分析装置は、分注動作時においてモニタリング対象のプローブ68と反応管54とを小型カメラ72で撮影し、モニタリング対象のプローブ68に関する比較画像のデータを生成する。また、予め生成された、正常な分注動作時におけるプローブ68に関する参照画像のデータを記憶している。この比較画像と参照画像とを画像処理し、各画像に描出されている反応管54内の溶液液面の位置を比較することにより、モニタリング対象のプローブ68により正常に分注が行なわれたか否かを判定する。そして判定結果をオペレータに報知する。これにより、プローブ68の汚れや位置ずれの有無を確認することができ、プローブ68のメンテナンスタイミングをオペレータに報知することができる。従って、プローブ68による分注性能を維持することができ、安定した検査を実施することができる。かくして第2実施形態によれば、分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置の提供が実現する。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上本発明によれば、分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0085】
11…操作部、13…分析機構制御部、15…分析機構駆動部、17…分析機構、19…撮影部、21…記憶部、23…判定部、25…報知部、27…表示部、29…印刷部、31…システム制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルや試薬等の溶液をプローブにより反応管に分注する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、自動分析装置は、恒温下の反応管にサンプルや試薬等の溶液をプローブにより定量分注する。そして自動分析装置は、分注されたサンプルと試薬とを撹拌して、化学反応を起こさせる。自動分析装置は、この化学反応を測光系で測定し、測定結果に基づいてサンプルの成分量を分析している。
【0003】
溶液がプローブにより正しく反応管に分注されることで、測定性能が向上する。従って分注性能は、測定性能に影響するキーファクターの1つであり、分注に係るプローブ等のユニットのメンテナンスは、とても重要である。
【0004】
しかしながら、溶液は、成分や物性が異なるため、ユニットの汚れ方も使用施設により異なる。この汚れの要因によりプローブや反応管のメンテナンス時期を一律に考えることは難しい。従って分注性能を維持管理することは難しく、分注性能の信頼性が十分に得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6―242126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に係る自動分析装置は、溶液を分注可能なプローブと、前記プローブを移動可能に支持する支持機構と、前記溶液を収容可能な反応管を吐出位置に移動可能に保持するディスクと、前記プローブと前記支持機構と前記ディスクとを制御して前記反応管に対して前記プローブに前記溶液の分注を行なわせる制御部と、前記分注中の前記プローブ及び前記反応管の少なくとも一方を撮影し、現在の分注に関する比較画像のデータを生成する撮影部と、前記撮影部により生成された比較画像と正常な分注に関する参照画像とを比較項目に従って比較して前記現在の分注が正常に行なわれたか否かを判定する判定部と、前記判定部による判定結果を報知する報知部と、を具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置の提供が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1及び第2実施形態に係る自動分析装置の構成を示す図。
【図2】図1の自動分析装置の筐体に設けられた分析機構の外観を示す図。
【図3】正常分注時においてプローブが吐出位置に配置された時点の状態を模式的に示す図。
【図4】正常分注時においてプローブが溶液を吐出している状態を模式的に示す図。
【図5】異常分注時におきるプローブの位置ずれを示す図。
【図6】異常分注時におきる分注中の溶液の、軌跡の屈曲の様子を模式的に示す図。
【図7】異常分注時におきる分注中の溶液の、飛び散りの様子を模式的に示す図。
【図8】異常分注時におきる分注中の溶液の、液切れの様子を模式的に示す図。
【図9】図1の判定部によるプローブの位置パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図。
【図10】図1の判定部による溶液の流出パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図。
【図11】図1の表示部により表示されるモニタリング試薬設定画面の一例を示す図。
【図12】図1の表示部により表示される判定結果画面の一例を示す図。
【図13】正常分注時においてプローブが反応管内で溶液を吐出している様子を模式的に示す図。
【図14】正常分注時における溶液吐出後のプローブと溶液とを模式的に示す図。
【図15】異常分注時における溶液吐出後のプローブと溶液とを模式的に示す図。
【図16】図1の判定部による反応管内でのプローブの位置パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図。
【図17】図1の判定部による分布パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図。
【図18】第2実施形態に係る小型カメラの設置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
【0011】
現行の自動分析装置において、プローブによる分注動作は、大きく分けて2つのタイプに分類できる。第1のタイプは、プローブの先端を反応管の内部に進入させないで、反応管上部から溶液を吐出するタイプである。第2のタイプは、プローブの先端を反応管の内底面に接触させて溶液を吐出するタイプである。第1実施形態に係る分注動作は、第1のタイプを対象とし、第2実施形態に係る分注動作は、第2のタイプを対象とする。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動分析装置の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る自動分析装置は、操作部11、分析機構制御部13、分析機構駆動部15、分析機構17、撮影部19、記憶部21、判定部23、報知部25、及びシステム制御部27を備える。
【0013】
操作部11は、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを備える。操作部11は、オペレータによる入力デバイスの操作に応じた操作信号をシステム制御部31に供給する。これにより操作部11は、オペレータからの各種指示や測定条件を受け付ける。
【0014】
分析機構制御部13は、オペレータからの操作部11を介した指示に従って測定条件を設定し、設定された測定条件に応じた制御信号を分析機構駆動部15に供給する。分析機構駆動部15は、分析機構制御部13からの制御信号に応じた駆動信号を分析機構17に供給し、測定条件に応じた動作を行なわせる。分析機構17は、自動分析装置の筐体上のステージに設けられている。
【0015】
図2は、筐体50に設けられた分析機構17の外観を示す図である。図2に示すようにステージ50の中央部には反応ディスク52が設けられている。反応ディスク52は、反応槽に設置される。反応ディスク52は、円周上に配列された複数の反応管54を保持する。反応ディスク52は、所定のサイクルで回動と停止とを繰り返す。
【0016】
反応ディスク52の近傍には、サンプルディスク56が配置されている。サンプルディスク56は、サンプルを収容するためのサンプル容器58を保持する。サンプルディスク56は、特定のサンプル容器58が所定のサンプル吸入位置に位置決めされるように回動する。
【0017】
反応ディスク52の近傍には、第1試薬庫60が配置される。第1試薬庫60は、サンプルの各測定項目に選択的に反応する第1試薬が収容された複数の試薬容器を保持する。第1試薬庫60は、特定の試薬容器が所定の第1試薬吸入位置に位置決めされるように回動する。
【0018】
反応ディスク52の内側には、第2試薬庫64が配置される。第2試薬庫64は、第1試薬に対応する第2試薬が収容された複数の試薬容器62を保持する。第2試薬庫64は、特定の第2試薬容器62が所定の第2試薬吸入位置に位置決めされるように回動する。
【0019】
反応ディスク52とサンプルディスク56との間にはサンプルアーム66Aが配置される。サンプルアーム66Aの先端には、サンプルプローブ68Aが取り付けられている。サンプルアーム66Aは、サンプルプローブ68Aをサンプルディスク56上のサンプル吸入位置に配置し、サンプル吸入位置に配置されたサンプル容器58内のサンプルを所定量だけ吸入させる。サンプルが吸入されるとサンプルアーム66Aは、サンプルプローブ68Aを上昇させ、サンプルプローブ68Aを回転軌道に沿って回動して、反応ディスク52上のサンプル吐出位置に配置させる。そしてサンプルアーム66Aは、サンプルプローブ68Aを反応管54内に向けて所定量だけ下降させる。所定量下降するとサンプルプローブ68Aは、サンプルを反応管に吐出する。その後サンプルアーム66Aは、サンプルプローブ68Aを上昇させ、回転軌道に沿って回動させ、再びサンプル吸入位置に移動させる。
【0020】
反応ディスク52と第1試薬庫60との間には第1試薬アーム66Bが配置される。第1試薬アーム66Bの先端には第1試薬プローブ68Bが取り付けられている。第1試薬アーム66Bは、第1試薬プローブ68Bを、第1試薬庫60上の第1試薬吸入位置に配置し、第1試薬吸入位置に配置された試薬容器内の第1試薬を所定量だけ吸入させる。第1試薬が吸入されると第1試薬アーム66Bは、第1試薬プローブ68Bを上昇させ、第1試薬プローブ68Bを回転軌道に沿って回動して、反応ディスク52上の第1試薬吐出位置に配置させる。そして第1試薬プローブ68Bは、第1試薬を反応管54に吐出する。その後第1試薬アーム66Bは、第1試薬プローブ68Bを回転軌道に沿って回動させ、洗浄プール67Bに配置する。洗浄プール67Bで洗浄された第1試薬プローブ68Bは、必要に応じて再び第1試薬吸入位置に移動する。
【0021】
反応ディスク52の外周近傍には第2試薬アーム66Cが配置される。第2試薬アーム66Cの先端には第2試薬プローブ68Cが取り付けられている。第2試薬アーム66Cは、第2試薬プローブ68Cを、第2試薬庫64上の第2試薬吸入位置に配置し、第2試薬吸入位置に配置された試薬容器62内の第2試薬を所定量だけ吸入させる。第2試薬が吸入されると第2試薬アーム66Cは、第2試薬プローブ68Cを上昇させ、第2試薬プローブ68Cを回転軌道に沿って回動して、反応ディスク52上の第2試薬吐出位置に配置させる。そして第2試薬プローブ68Cは、第2試薬を反応管54に吐出する。その後第2試薬アーム66Cは、第2試薬プローブ68Cを回転軌道に沿って回動させ、洗浄プール67Cに配置する。洗浄プール67Cで洗浄された第2試薬プローブ68Cは、必要に応じて再び第2試薬吸入位置に移動する。
【0022】
反応ディスク52の外周近傍には、撹拌系70が設けられている。撹拌系70は、撹拌子を有している。撹拌系70は、反応ディスク52上の撹拌位置に反応管54が停止されると、撹拌子で反応管54内のサンプル及び第1試薬の混合液や、サンプル、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する。
【0023】
反応ディスク52の内部には、測光系が設けられている。測光系は、反応管54内部の混合液を測光する。測光により得られた測定結果は表示部27に表示される。
【0024】
撮影部19は、分注中におけるモニタリング対象のプローブ68を光学的に撮影し、このプローブ68により行なわれた現在の分注に関する画像(以下、比較画像と呼ぶことにする)のデータを生成する。具体的には、撮影部19は、小型カメラ(図2の72)とA/Dコンバータ(図示せず)とを有する。小型カメラ72は、分注中のプローブ68を撮影可能な筐体50の上部表面位置に設置される。小型カメラ72は、CCD(Charge-coupled device)やCMOS(complementary metal-oxide semiconductor)イメージセンサー等の撮像素子を搭載している。小型カメラ72は、光を受光しアナログの映像信号を出力する。A/Dコンバータは、小型カメラ72から出力されたアナログの映像信号をデジタル変換し、デジタルの比較画像のデータを生成する。生成された比較画像のデータは、記憶部23に供給される。
【0025】
なお第1実施形態中の「プローブ」とは、第1試薬プローブ68Bと第2試薬プローブ68Cとの総称であり、第1試薬プローブ68Bと第2試薬プローブ68Cとを区別しない場合に用いるとする。また、第1実施形態中の「溶液」とは、第1試薬プローブ68Bにより分注される第1試薬、第2試薬プローブ68Cにより分注される第2試薬等の総称であり、これらを区別しない場合に用いるとする。
【0026】
記憶部21は、撮影部19により生成された比較画像のデータを一時的に記憶する。また記憶部21は、撮影部19により過去に生成された、プローブ68により行なわれた正常な分注に関する画像(以下、参照画像と呼ぶことにする)のデータを記憶している。参照画像撮影時のプローブ68は、典型的には、未使用品であり、汚れていないものとする。参照画像は、正常に行なわれた分注動作のパターンとして用いられる。
【0027】
判定部23は、比較画像のデータと参照画像のデータとを記憶部23から読み出し、比較項目に従って比較し、モニタリング対象のプローブ68により現在の分注が正常に行なわれた否かを判定する。より詳細には、判定部23は、比較画像に描出されているプローブ68の位置パターンや溶液の流出パターンを、参照画像に描出されているプローブ68の位置パターンや溶液の流出パターンと比較し、現在の分注が正常に行なわれたか否かを判定する。そして判定部23は、分注動作が正常であると判定した場合に正常信号を生成し、分注動作が異常であると判定した場合に異常信号を生成する。生成された各信号は、システム制御部31を介して報知部25に供給される。
【0028】
報知部25は、判定部23による判定結果をオペレータに報知する。より詳細には、報知部25は、システム制御部31から正常信号が供給された場合、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれた旨を報知する。異常信号が供給された場合、報知部25は、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれなかった旨を報知する。具体的には、報知部25は、表示部27と印刷部29とを有する。
【0029】
表示部27は、正常信号が供給された場合、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれた旨を表示デバイスに表示する。異常信号が供給された場合、表示部27は、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれなかった旨を表示デバイスに表示する。また、表示部27は、モニタリング用の溶液の選択画面を表示することも可能である。
【0030】
印刷部29は、正常信号が供給された場合、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれた旨をプリンタ用紙に印刷して出力する。異常信号が供給された場合、印刷部29は、モニタリング対象のプローブ68により分注が正常に行なわれなかった旨をプリンタ用紙に印刷して出力する。
【0031】
システム制御部31は、自動分析装置が備える各部を統括して制御する。例えば、システム制御部31は、操作部11からの操作信号や、モニタリング用のプローブ68の種類、モニタリング用の溶液の種類に応じて各部を制御することにより、第1実施形態に特有なモニタリング処理を実行する。モニタリング処理においてシステム制御部31は、撮影部19でプローブ68による分注をモニタリングし、プローブ68による分注が正常に行なわれているか否かを判定し、判定結果をオペレータに報知する。
【0032】
まずは正常分注時におけるプローブ68の位置パターン・溶液の吐出パターンと、正常でない分注時、すなわち異常分注時におけるプローブ68の位置パターン・溶液の吐出パターンとの違いについて説明する。
【0033】
図3は、正常分注時においてプローブ68が吐出位置P1に配置された時点の状態を模式的に示す図である。図3に示すように正常分注時においてプローブ68の先端は、溶液吐出位置P1に一致するように配置される。また、吐出対象の反応管54は、溶液吐出位置P1に反応ディスク52により正確に配置されている。すなわち反応管54の中心軸が溶液吐出位置P1に略一致するように配置される。そしてプローブ68も、その中心軸が溶液吐出位置P1に略一致するようにアーム66により配置される。すなわち、プローブ68の中心軸と反応管54の中心軸とが略一致するように配置される。この時、プローブ68の中心軸は、溶液が確実に反応管54内に吐出されるように、略鉛直方向を向いている。溶液吐出位置P1に配置されるとプローブ68は、溶液を吐出し始める。
【0034】
図4は、正常分注時においてプローブ68が溶液を吐出している状態を模式的に示す図である。図4に示すように、正常分注時において溶液は、反応管54の先端から鉛直方向に沿って真っ直ぐに吐出される。すなわち、正常分注時における溶液は、プローブ68の先端から反応管54の内底面まで鉛直方向に沿って直線状の軌跡を描く。
【0035】
次に異常分注時について説明する。異常分注の原因としては、吐出時における溶液吐出位置P1からのプローブ68の位置ずれがある。図5は、異常分注時におきるプローブ68の位置ずれを示す図である。図5に示すように、プローブ68が目的とする溶液吐出位置P1に正確に位置決めされない場合がある。これは経年劣化や、オペレータ等によるアーム66やプローブ68との接触により、アーム66によるプローブ68の位置決め精度が低下することが要因となっている。正確に位置決めされないと、溶液が反応管54外に飛散する可能性がある。また、溶液が反応管54内へ吐出されたとしても溶液が反応管54内側面に付着してしまい吐出精度が悪化する。この場合、反応管54内の溶液量が不足し、測定結果の信頼性が悪化してしまう。また、溶液の吐出は、反応管54内の溶液の撹拌効果を有するため、プローブ68が正確に位置決めされないと、その効果が低減する。
【0036】
このように異常分注時におけるプローブ68の位置パターンは、正常時におけるプローブ68の位置パターンとずれる。すなわち、モニタリング対象のプローブ68の位置パターンと正常時におけるプローブ68の位置パターンとを比較すれば、プローブ68の位置決め精度が低下しているか否かを判定することができる。
【0037】
異常分注の主な原因としては、プローブ68の内壁の汚れがある。プローブ68の内壁に汚れがあると、分注中の溶液の軌跡が屈曲したり、溶液が飛び散ったり、液切れが悪化したりする。
【0038】
図6は、異常分注時におきる分注中の溶液の、軌跡の屈曲の様子を模式的に示す図である。図6に示すように、プローブ68の内壁が汚れていると、このプローブ68から吐出される溶液は、鉛直方向に沿って直線状の軌跡を描かずに、屈曲した軌跡を描く。このため、溶液が反応管54内側面に付着してしまう場合がある。また、汚れが酷い場合には、溶液が反応管54内に正確に分注されない虞もある。これにより反応管54内の溶液量が不足し、測定結果の信頼性の悪化につながる。
【0039】
図7は、異常分注時におきる吐出中の溶液の、飛び散りの様子を模式的に示す図である。図7に示すように、プローブ68の内壁が汚れていると、溶液が直線状に吐出されず、飛び散ってしまうことがある。このため、溶液が反応管54の内側面に付着してしまう場合がある。また、汚れが酷い場合には、飛び散った溶液が反応管54内へ分注されない虞もある。これにより反応管54内の溶液量が不足し、測定結果の信頼性の悪化につながる。
【0040】
図8は、異常分注時におきる吐出中の溶液の、液切れの様子を模式的に示す図である。図8に示すように、プローブ68の内壁が汚れていると、吐出後のプローブ68の先端に気泡により膨らんだ溶液が生じてしまう場合がある。液切れが悪くなると、分注動作が終了しても吸入された溶液がプローブ68から吐出しきらず、飛び散りも生じやすくなる。このため、反応管54内の溶液量が不足し、測定結果の信頼性の悪化につながる。
【0041】
このように異常分注時における溶液の吐出パターンは、正常時における溶液の吐出パターンとずれる。すなわち、モニタリング対象のプローブ68から分注される溶液の吐出パターンと正常時における溶液の吐出パターンとを比較すれば、プローブ68が汚れているか否かを判定することができる。この吐出パターンのずれは、溶液の物性によっても異なる。例えば、高粘性や発泡性を有する溶液は、溶液の軌跡の歪みや、液切れ、飛び散りの度合がより強くなり、正常時における溶液の吐出パターンとのずれが増大する。従って、高粘性と発泡性とを有する溶液をモニタリング用の溶液に設定すれば、より高精度にプローブ68の汚れの有無を判定できる。
【0042】
上述のように比較画像と参照画像とは、定点撮影により生成されている。従って、モニタリング対象のプローブ68が正確に溶液吐出位置P1に配置されていれば、比較画像中のプローブ68と参照画像中のプローブ68とは同一座標に描出される。また、モニタリング対象のプローブ68から溶液が正常に吐出されていれば、比較画像中の溶液と参照画像中の溶液とは、同一座標に描出される。換言すれば、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていなければ、比較画像中のプローブ68と参照画像中のプローブ68とは互いに異なる座標位置に描出される。また、モニタリング対象のプローブ68から溶液が正常に吐出されていなければ、比較画像中の溶液と参照画像中の溶液とは、互いに異なる位置に描出される。
【0043】
判定処理において判定部23は、比較項目の1つとして、比較画像中のプローブ68の位置パターンと参照画像中のプローブ68の位置パターンとを比較する。より直接的には、比較画像上のプローブ68の座標位置と、参照画像上のプローブ68の座標位置とを比較する。また、判定部23は、比較項目の1つとして、比較画像中の溶液の吐出パターンと参照画像中の溶液の吐出パターンとを比較する。より直接的には、比較画像上の溶液の座標位置と、参照画像上の溶液の座標位置とを比較する。これらパターン比較により判定部23は、モニタリング対象のプローブ68により正常に分注が行なわれているか否かを判定する。パターンの比較方法は、既存のどの画像処理により行なわれても構わない。例えば、比較画像と参照画像との差分画像に基づいてプローブ68の位置パターン及び溶液の吐出パターンを比較する。
【0044】
以下、差分画像に基づく判定処理について具体的に説明する。まず差分画像を生成するための前処理として、比較画像と参照画像との画素値範囲を同一にするために比較画像と参照画像とを正規化する。次に正規化された比較画像と参照画像とをカラー画像からモノクロ画像に変換する。そしてモノクロの比較画像からモノクロの参照画像を減算し、モノクロの差分画像のデータを生成する。生成された差分画像にプローブが描出されているか否かを判定することにより、プローブの位置パターンの、ずれの有無を判定する。また、生成された差分画像に溶液が描出されているか否かを判定することにより、溶液の吐出パターンの、ずれの有無を判定する。
【0045】
図9は、判定部23によるプローブの位置パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図である。図9の(a)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されている場合、比較画像I1上でのプローブ681の位置と参照画像I2上でのプローブ682の座標位置とは同一である。従って、差分画像I3上にはプローブ68が描出されない。一方、図9の(b)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていない場合、比較画像I4上でのプローブ684の座標位置と参照画像I2上でのプローブ682の座標位置とが異なる。従って、差分画像I5上には、比較画像I4に由来するプローブ684と参照画像I2に由来するプローブ682とが描出される。
【0046】
モニタリング処理において判定部23は、差分画像上において、正確に配置されたプローブが描出される座標位置(以下、正常プローブ位置と呼ぶことにする)にプローブが描出されているか否かを判定する。正常プローブ位置は、例えば、図9の参照画像I2上に描出されるプローブ682の座標位置である。判定処理の一例としては、まず判定部23は、プローブが取りうる画素値よりも少し低い画素値を閾値として差分画像を閾値処理し、閾値以上の画素値を有する画素に画素値“1”を、閾値以下の画素値を有する画素に画素値“0”を割り付け、2値化画像を生成する。そして判定部23は、2値化画像上の正常プローブ位置にある画素のうち画素値“1”を有する画素を計数する。そして画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えた場合、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていると判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は正確に配置されていないことを意味する。従って、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていると判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていない、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていないと判定する。一方、画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えていない場合、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていないと判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は正確に配置されていることを意味する。従って、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていないと判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されている、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていると判定する。
【0047】
次に溶液の吐出パターンの、ずれの有無に関する判定処理について説明する。図10は、判定部23による溶液の吐出パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図である。図10の(a)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が汚れていない場合、比較画像I6上での溶液L6の座標位置と参照画像I7上での溶液L7の座標位置とは同一である。従って、差分画像I8上には溶液が描出されない。一方、図10の(b)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が汚れている場合、比較画像I9上での溶液L9の座標位置と参照画像I7上での溶液L7の座標位置とが異なる。従って、差分画像I10上には、比較画像I9に由来する溶液L9と参照画像I7に由来する溶液L7とが描出される。
【0048】
モニタリング処理において判定部23は、差分画像上において、正常に吐出された溶液が描出される座標位置(以下、正常溶液位置と呼ぶことにする)に溶液が描出されているか否かを判定する。正常溶液位置は、例えば、図10の参照画像I7上に描出される溶液L7の座標位置である。判定処理の一例としては、まず判定部23は、溶液が取りうる最小画素値を第1の閾値、溶液が取りうる最大画素値第2の閾値として閾値処理し、第1の閾値と第2の閾値との間の範囲内の画素値を有する画素に画素値“1”を、範囲外の画素値を有する画素に画素値“0”を割り付け、2値化画像を生成する。そして判定部23は、2値化画像上の正常溶液位置にある画素のうち画素値“1”を有する画素を計数する。そして画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えた場合、差分画像上の正常溶液位置に溶液が描出されていると判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は汚れていることを意味する。従って、正常溶液位置に溶液が描出されていると判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が汚れていない、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていないと判定する。一方、画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えていない場合、差分画像上の正常溶液位置に溶液が描出されていないと判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は汚れていないことを意味する。従って、正常溶液位置に溶液が描出されていないと判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が汚れていない、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていると判定する。
【0049】
なお上述のプローブ68の、汚れの有無、すなわち溶液の吐出パターンの、ずれの有無に関する判定処理は、吐出中の溶液の、軌跡の位置ずれを例として説明した。しかし、本判定処理はこれのみに限定されない。例えば、溶液の飛び散りや溶液の液切れに由来する溶液の位置ずれにも適用可能である。
【0050】
以下、第1実施形態に係るモニタリング処理における自動分析装置の動作例について説明する。なお以下の説明においてプローブ68は、第1試薬プローブ68Bと第2試薬プローブ68Cとであるとする。この場合、小型カメラは2台用意され、1つは筐体50上であって第1試薬吐出位置の近傍に設置され、もう一方は、第2試薬吐出位置の近傍に設置される。より詳細には、各小型カメラは、その撮像視野が各試薬プローブ68B、68Cの溶液吐出位置を含むような位置に設置される。
【0051】
モニタリング処理は、サンプルの分析中であっても、自動分析装置の起動時や終了時等に行なわれるメンテナンス時であっても行なうことができる。
【0052】
メンテナンスの開始時において表示部27は、モニタリング用の試薬を設定するためのモニタリング試薬設定画面を表示する。図11は、表示部27により表示されるモニタリング試薬設定画面の一例を示す図である。図11に示すように、設定画面には、第1試薬の一覧と第2試薬の一覧とが表示されている。オペレータは、操作部11を介してこの一覧上でモニタリング用の第1試薬と第2試薬とを設定する。図11においては、モニタリング用の第1試薬としてCRP−1が、第2試薬としてGGT−2が設定されている。モニタリング用試薬としては、正常分注時との溶液の吐出パターンのずれを増大させる高粘性や発泡性を有するものがよい。なおモニタリング用試薬は、実際に分析時に使用されるものであっても、モニタリングのために製造された試液であっても構わない。モニタリング専用試液は、例えば、高粘性溶液に界面活性剤を添加して気泡性を持たせたものが好適である。
【0053】
モニタリング用の試薬が設定されるとシステム制御部31は、設定されたモニタリング用の第1試薬を第1試薬プローブ68Bが分注し、また、設定されたモニタリング用の第2試薬を第2試薬プローブ68Cが分注するような設定条件を設定する。
【0054】
そしてオペレータ等により操作部11を介してモニタリング処理の開始指示がなされることを契機としてシステム制御部31は、モニタリング処理を開始する。モニタリング処理において分析機構制御部13は、設定された設定条件で分注機構駆動部15を制御して第1試薬プローブ68Bや第2試薬プローブ68C、反応ディスク52等の分注機構17を駆動させる。
【0055】
モニタリング用の第1試薬を吸入した第1試薬プローブ68Bが第1試薬吐出位置に配置されると撮影部19は、小型カメラ72を利用して第1試薬プローブ68Bの定点撮影を開始する。そして撮影部19は、第1試薬プローブ68Bがモニタリング用の第1試薬を吐出し終わると定点撮影を終了する。撮影期間中、第1試薬プローブ68Bに関する比較画像のデータは撮影部19により繰り返し生成され、記憶部21を経由して判定部23に供給される。なお撮影部19による第1試薬プローブ68Bに関する撮影期間の長さは、常に一定である。撮影期間は、例えば、1秒以下である。
【0056】
同様に、モニタリング用の第2試薬を吸入した第2試薬プローブ68Cが第2試薬吐出位置に配置されると撮影部19は、小型カメラ72を利用して第2試薬プローブ68Cの定点撮影を開始する。そして撮影部19は、第2試薬プローブ68Cがモニタリング用の第2試薬を吐出し終わると定点撮影を終了する。なお撮影部19による第2試薬プローブ68Cに関する撮影期間の長さは、常に一定であり、例えば、1秒以下である。
【0057】
比較画像のデータを受けると判定部23は、記憶部21から参照画像のデータを読み出し、読み出された参照画像と比較画像とを画像処理して上述の判定処理を行なう。なお参照画像と比較画像とは、互いに同一の撮影開始タイミング、撮影期間、及び撮影終了タイミングで撮影されたものである。撮影開始から同一時間経過後に生成された比較画像と参照画像とであれば、各画像に描出されているプローブは同一の動作タイミングに関するものであると推定される。従って判定部23は、撮影開始から同一時間経過後に生成された比較画像と参照画像とを画像処理して上述の判定処理を行ない、正常な分注が行なわれたか否かを判定する。正常な分注が行なわれたと判定した場合、判定部23は、正常信号を表示部27に供給する。一方、正常な分注が行なわれなかったと判定した場合、判定部23は、異常信号を表示部27に供給する。
【0058】
このような判定処理が行なわれると表示部27は、判定処理の結果を示す判定結果画面を表示する。図12は、表示部27により表示される判定結果画面の一例を示す図である。図12に示すように、判定結果画面は、モニタリング対象のプローブ名称の表示欄、メンテナンスの要否の表示欄、メンテナンスの最終実施日の表示欄を有する。メンテナンスの要否の表示欄には、判定部23による判定結果が表示される。すなわち、モニタリング対象のプローブ68が正常に分注を行なっていると判定された場合、「否」と表示される。また、モニタリング対象のプローブ68が正常に分注を行なっていないと判定された場合、「要」と表示される。「要」と表示することにより、表示部27は、オペレータに対して、そのプローブ68を洗浄したり、交換したり、プローブ68の位置決め精度の確認といったメンテナンスが必要なことを報知する。メンテナンスの最終実施日の表示欄には、そのプローブ68について最後にメンテナンスが行われた日が表示される。このようにメンテナンスの履歴を表示することにより、表示部27は、オペレータに対して、定期的にメンテナンスを実施することを要請できる。
【0059】
なお判定部23の結果の表示方法は、上述の方法のみに限定されない。例えば、判定結果に応じてプローブ名称の表示欄に表示される「プローブ」の表示色を切替えてもよい。例えば、正常に分注が行なわれたと判定された場合は黒で表示し、正常に分注が行なわれなかったと判定された場合は赤で表示するとよい。
【0060】
上記構成により第1実施形態に係る自動分析装置は、分注動作中のモニタリング対象のプローブ68を小型カメラ72で撮影し、モニタリング対象のプローブ68に関する比較画像のデータを生成する。また、予め生成された、正常な分注動作をしているプローブ68に関する参照画像のデータを記憶している。この比較画像と参照画像とを画像処理し、各画像に描出されているプローブ68の位置や溶液の位置を比較することにより、モニタリング対象のプローブ68が正常に分注しているか否かを判定する。そして判定結果をオペレータに報知する。これにより、試薬やサンプルの分注状態を管理することができ、プローブ68のメンテナンスタイミングをオペレータに報知することができる。従って、プローブ68による分注性能を維持することができ、安定した検査を実施することができる。ひいては測定結果の信頼性が向上する。また、溶液の撹拌効果が維持される。かくして第1実施形態によれば、分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置の提供が実現する。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態においては、プローブ68の先端を反応管54の内部に進入させて溶液を分注するタイプの分注動作に関するモニタリング処理について説明する。まずは正常な分注動作と正常でない分注動作との違いについて説明する。
【0062】
第2実施形態に係るモニタリング対象のプローブ68は、サンプルプローブ68Aとであるとする。モニタリング用の溶液としては、キャリブレータやコントロール、一般検体等のサンプルであるとする。サンプルの1回の分注量は、微量であり、試薬に比して少量である。なお、第1試薬プローブ68Bや第2試薬プローブ68Cが、反応管54内で吐出するタイプであれば、第2実施形態に係るモニタリング対象のプローブ68は、第1試薬プローブ68Bや第2試薬プローブ68Cにも適用可能である。
【0063】
図13は、正常分注時においてプローブ68が反応管54内で溶液を吐出している様子を模式的に示す図である。図13に示すように正常分注時においてプローブ68は、溶液吐出位置P1上に位置している。正常分注時においてプローブ68の先端は、反応管54の内底面に接触するまで下降される。このようにプローブ68の先端が反応管54の内底面に接触された状態で溶液が吐出される。溶液が吐出されるとアーム66によりプローブ68が上昇される。
【0064】
図14は、正常分注時における溶液吐出後のプローブ68と溶液とを模式的に示す図である。図14に示すように、吐出後の溶液は、反応管54の内底面に付着されている。
【0065】
次に異常分注時における分注動作について説明する。異常分注の原因としては、プローブ68の位置ずれやプローブ68の外壁の汚れが挙げられる。
【0066】
図15は、異常分注時における溶液吐出後のプローブ68と溶液とを模式的に示す図である。図15に示すように、プローブ68の外壁が汚れていると、吐出された溶液のうちの一部がプローブ68の外壁に付着されたままプローブ68が上昇してしまう。このため、反応管54の内底面に付着される溶液量は、正常分注時における溶液量に比して少量となる。このため、測定可能な溶液の分量が不足し、測定結果の信頼性の悪化につながる。
【0067】
このように異常分注時におけるプローブ68外壁の溶液の分布パターンは、正常時における溶液の分布パターンとずれる。すなわち、モニタリング対象のプローブ68外壁に付着された溶液の分布パターンと正常時における溶液の分布パターンとを比較すれば、プローブ68の外壁が汚れているか否かを判定することができる。この溶液の分布パターンのずれは、溶液の物性によっても異なる。例えば、高粘性を有する溶液は、プローブ68外壁の付着量がより多くなり、正常時における溶液の分布パターンとのずれが増大する。従って、高粘性を有する溶液をモニタリング用の溶液に設定すれば、より高精度にプローブ68外壁の汚れの有無を検出できる。
【0068】
上述のように比較画像と参照画像とは、小型カメラ72による定点撮影により生成されている。従って、モニタリング対象のプローブ68が正確に溶液吐出位置P1に配置されていれば、比較画像中のプローブ68と参照画像中のプローブ68とは同一座標に描出される。そして、モニタリング対象のプローブ68の外壁が汚れていなければ、吐出後に関する比較画像中のプローブ68の外壁周辺には溶液が描出されない。換言すれば、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていなければ、比較画像中のプローブ68と参照画像中のプローブ68とは互いに異なる座標位置に描出される。また、モニタリング対象のプローブ68の外壁が汚れていれば、吐出後に関する比較画像中のプローブ68の外壁周辺には溶液が描出される。
【0069】
判定処理において判定部23は、比較項目の1つとして、比較画像中のプローブ68の位置パターンと参照画像中のプローブ68の位置パターンとを比較する。より直接的には、比較画像上のプローブ68の座標位置と、参照画像上のプローブ68の座標位置とを比較する。また、判定部23は、比較項目の1つとして、比較画像中の溶液の分布パターンと参照画像中の溶液の分布パターンとを比較する。より直接的には、比較画像上のプローブ68の外壁周辺に溶液が描出されているか否かを判定する。これらパターン比較により判定部23は、モニタリング対象のプローブ68により正常に分注が行なわれているか否かを判定する。パターンの比較方法は、既存のどの画像処理により行なわれても構わない。例えば、比較画像と参照画像との差分画像に基づいてプローブ68の位置パターン及び溶液の分布パターンを比較する。
【0070】
以下、差分画像に基づく判定処理について具体的に説明する。なお説明は省略するが、第1実施形態と同様に、第2実施形態においても差分画像を生成するための前処理として、比較画像と参照画像とに対して正規化やモノクロ化が行なわれるものとする。
【0071】
図16は、判定部23によるプローブ68の位置パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図である。図16の(a)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されている場合、比較画像I11上でのプローブ6811の位置と参照画像I12上でのプローブ6812の座標位置とは同一である。従って、差分画像I13上にはプローブ68が描出されない。一方、図16の(b)に示すように、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていない場合、比較画像I14上でのプローブ6814の座標位置と参照画像I12上でのプローブ6812の座標位置とが異なる。従って、差分画像I15上には、比較画像I14に由来するプローブ6814と参照画像I12に由来するプローブ6812とが描出される。
【0072】
モニタリング処理において判定部23は、差分画像上において、正常プローブ位置にプローブが描出されているか否かを判定する。正常プローブ位置は、例えば、図16の参照画像I12上に描出されるプローブ6812の座標位置である。判定処理の一例としては、まず判定部23は、プローブが取りうる画素値よりも少し低い画素値を閾値として差分画像を閾値処理し、閾値以上の画素値を有する画素に画素値“1”を、閾値以下の画素値を有する画素に画素値“0”を割り付け、2値化画像を生成する。そして判定部23は、2値化画像上の正常プローブ位置にある画素のうち画素値“1”を有する画素を計数する。そして画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えた場合、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていると判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は正確に配置されていないことを意味する。従って、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていると判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されていない、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていないと判定する。一方、画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えていない場合、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていないと判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は正確に配置されていることを意味する。従って、差分画像上の正常プローブ位置にプローブが描出されていないと判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が正確に配置されている、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていると判定する。
【0073】
次に溶液の分布パターンの、ずれの有無の判定処理について説明する。図17は、判定部23による溶液の分布パターンの、ずれの有無に関する判定処理の一例を示す図である。図17の(a)に示すように、モニタリング対象のプローブ68の外壁が汚れていない場合、比較画像I16上での溶液L16の位置と参照画像I17上での溶液L17の位置とは同一である。従って、差分画像I18上には溶液が描出されない。一方、図17の(b)に示すように、モニタリング対象のプローブ68の外壁が汚れている場合、比較画像I19上での反応管の内底面に描出された溶液L1191と参照画像I12上での溶液L12との面積が異なる。また、モニタリング対象のプローブ68の外壁が汚れている場合、比較画像I19上でのプローブ6819の外壁周辺には、溶液L1192,193が描出される。従って、差分画像I20上には、比較画像I19に由来する溶液L192,193と参照画像I17に由来する溶液L17の一部とが描出される。
【0074】
モニタリング処理において判定部23は、差分画像上において、プローブ68の外壁周辺の座標位置(以下、外壁周辺位置と呼ぶことにする)に溶液が描出されているか否かを判定する。外壁周辺位置は、例えば、図17の差分画像I20上に描出される溶液のうち参照画像I19に由来する溶液の座標位置である。判定処理の一例としては、まず判定部23は、溶液が取りうる最小画素値を第1の閾値、溶液が取りうる最大画素値第2の閾値として閾値処理し、第1の閾値と第2の閾値との間の範囲内の画素値を有する画素に画素値“1”を、範囲外の画素値を有する画素に画素値“0”を割り付け、2値化画像を生成する。そして判定部23は、2値化画像上の外壁周辺位置にある画素のうち画素値“1”を有する画素を計数する。そして画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えた場合、差分画像上の外壁周辺位置に溶液が描出されていると判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は汚れていることを意味する。従って、外壁周辺位置に溶液が描出されていると判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が汚れている、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていないと判定する。一方、画素値“1”の画素数が所定の閾値を超えていない場合、差分画像上の外壁周辺位置に溶液が描出されていないと判定する。この場合、モニタリング対象のプローブ68は汚れていないことを意味する。従って、外壁周辺位置に溶液が描出されていないと判定した場合、判定部23は、モニタリング対象のプローブ68が汚れていない、すなわちモニタリング対象のプローブ68により正常な分注が行なわれていると判定する。
【0075】
以下、第2実施形態に係るモニタリング処理における自動分析装置の動作例について説明する。小型カメラ72は、図18に示すように、サンプル吐出位置P2の近傍の筐体50の内部に設置される。より詳細には、小型カメラ72は、筐体50の内部であって、反応ディスク52の反応槽74の外壁近傍に取り付けられる。小型カメラ72は、その撮像視野が反応管54内底面を含むような位置に設置される。反応槽74の撮像視野を遮る部分76は、例えば、ガラス等の透明な部材(反応ウィンドウ)がはめ込まれている。小型カメラ72は、反応ウィンドウ76を介して反応管54やサンプルプローブ68Aを撮影する。
【0076】
メンテナンスの開始時において表示部27は、モニタリング用のサンプルを設定するための設定画面を表示する。オペレータは、操作部11を介してこの設定画面上でモニタリング用のサンプルとサンプルプローブ68Aとを設定する。モニタリング用のサンプルとしては、正常分注時との分布パターンのずれを増大させる高粘性を有するものがよい。なおモニタリング用のサンプルは、実際に分析時に使用されるものであっても、モニタリングのために製造された試液であっても構わない。
【0077】
モニタリング用のサンプルとモニタリング用のサンプルプローブ68Aとが設定されるとシステム制御部31は、設定されたモニタリング用のサンプルをモニタリング用のサンプルプローブ68Aが分注するような設定条件を設定する。
【0078】
そしてオペレータ等により操作部11を介してモニタリング処理の開始指示がなされることを契機としてシステム制御部31は、モニタリング処理を開始する。モニタリング処理において分析機構制御部13は、設定された設定条件で分注機構駆動部15を制御してサンプルアーム66Aや、サンプルプローブ68A、反応ディスク52等の分注機構17を動作させる。
【0079】
モニタリング用のサンプルを吸入したモニタリング用のサンプルプローブ68Aがサンプル吐出位置上の下降開始位置に配置されると撮影部19は、小型カメラ72を利用して反応管54の定点撮影を開始する。そして撮影部19は、サンプルプローブ68Aが反応管54内底面まで下降してモニタリング用サンプルを吐出し、下降開始位置まで上昇し終わると定点撮影を終了する。撮影期間中、モニタリング用の反応管54に関する比較画像のデータは撮影部19により繰り返し生成され、記憶部21を経由して判定部23に供給される。
【0080】
比較画像のデータを受けると判定部23は、撮影開始時から同一時間経過後に関する比較画像と参照画像とを画像処理して上述の判定処理を行ない、正常な分注が行なわれたか否かを判定する。サンプルプローブ68Aの外壁の汚れの有無を判定する場合、比較画像と参照画像とは、サンプルプローブ68Aがサンプルを吐出し終え所定距離(例えば、2mm)上昇した時に撮影されたものがよい。正常な分注が行なわれたと判定した場合、判定部23は、その旨の正常信号を表示部27に供給する。一方、正常な分注が行なわれなかったと判定した場合、判定部23は、その旨の異常信号を表示部27に供給する。
【0081】
このような判定処理が行なわれると表示部27は、判定処理の結果を表示する。例えば、モニタリング対象のサンプルプローブ68Aにより正常に分注が行なわれたと判定された場合、「メンテナンスの必要なし」と表示される。また、モニタリング対象のサンプルプローブ68Aにより正常に分注が行なわれなかったと判定された場合、「メンテナンスの必要あり」と表示される。「メンテナンスの必要あり」と表示することにより、表示部27は、オペレータに対して、そのサンプルプローブ68Aを洗浄したり、交換したりといったメンテナンスが必要なことを報知する。
【0082】
上記構成により第2実施形態に係る自動分析装置は、分注動作時においてモニタリング対象のプローブ68と反応管54とを小型カメラ72で撮影し、モニタリング対象のプローブ68に関する比較画像のデータを生成する。また、予め生成された、正常な分注動作時におけるプローブ68に関する参照画像のデータを記憶している。この比較画像と参照画像とを画像処理し、各画像に描出されている反応管54内の溶液液面の位置を比較することにより、モニタリング対象のプローブ68により正常に分注が行なわれたか否かを判定する。そして判定結果をオペレータに報知する。これにより、プローブ68の汚れや位置ずれの有無を確認することができ、プローブ68のメンテナンスタイミングをオペレータに報知することができる。従って、プローブ68による分注性能を維持することができ、安定した検査を実施することができる。かくして第2実施形態によれば、分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置の提供が実現する。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上本発明によれば、分注性能の信頼性を向上することが可能な自動分析装置の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0085】
11…操作部、13…分析機構制御部、15…分析機構駆動部、17…分析機構、19…撮影部、21…記憶部、23…判定部、25…報知部、27…表示部、29…印刷部、31…システム制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を分注可能なプローブと、
前記プローブを移動可能に支持する支持機構と、
前記溶液を収容可能な反応管を吐出位置に移動可能に保持するディスクと、
前記プローブと前記支持機構と前記ディスクとを制御して前記反応管に対して前記プローブに前記溶液の分注を行なわせる制御部と、
前記分注中の前記プローブ及び前記反応管の少なくとも一方を撮影し、現在の分注に関する比較画像のデータを生成する撮影部と、
前記撮影部により生成された比較画像と正常な分注に関する参照画像とを比較項目に従って比較して前記現在の分注が正常に行なわれたか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を報知する報知部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記比較項目として前記分注中の溶液の位置を前記比較画像と前記参照画像とで比較することにより、前記プローブの汚れの有無を判定する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記報知部は、前記判定結果として前記プローブの汚れの有無を報知する、請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記比較項目として前記プローブの位置を前記比較画像と前記参照画像とで比較することにより、前記プローブの位置ずれの有無を判定する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記報知部は、前記判定結果として前記プローブの位置ずれの有無を報知する、請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記溶液は、高粘性と発泡性との少なくとも一方の物性を有する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記撮影部は、前記吐出位置近傍であって筐体上、または、前記筐体内部に設けられるカメラにより撮影する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記溶液の種類をユーザからの指示に従って選択する選択部をさらに備える請求項1記載の自動分析装置。
【請求項1】
溶液を分注可能なプローブと、
前記プローブを移動可能に支持する支持機構と、
前記溶液を収容可能な反応管を吐出位置に移動可能に保持するディスクと、
前記プローブと前記支持機構と前記ディスクとを制御して前記反応管に対して前記プローブに前記溶液の分注を行なわせる制御部と、
前記分注中の前記プローブ及び前記反応管の少なくとも一方を撮影し、現在の分注に関する比較画像のデータを生成する撮影部と、
前記撮影部により生成された比較画像と正常な分注に関する参照画像とを比較項目に従って比較して前記現在の分注が正常に行なわれたか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を報知する報知部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記比較項目として前記分注中の溶液の位置を前記比較画像と前記参照画像とで比較することにより、前記プローブの汚れの有無を判定する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記報知部は、前記判定結果として前記プローブの汚れの有無を報知する、請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記比較項目として前記プローブの位置を前記比較画像と前記参照画像とで比較することにより、前記プローブの位置ずれの有無を判定する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記報知部は、前記判定結果として前記プローブの位置ずれの有無を報知する、請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記溶液は、高粘性と発泡性との少なくとも一方の物性を有する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記撮影部は、前記吐出位置近傍であって筐体上、または、前記筐体内部に設けられるカメラにより撮影する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記溶液の種類をユーザからの指示に従って選択する選択部をさらに備える請求項1記載の自動分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−237344(P2011−237344A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110422(P2010−110422)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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