説明

自動分析装置

【課題】自動分析装置上で試薬容器にICタグを付して試薬情報を管理する際、試薬容器の形状が左右対称な直方体状で試薬容器保持部に正規の向きの他、逆向きにも架設することができる場合、試薬容器の向きが誤った向きのまま架設され分析が行われることとなり、正しい分析結果を得ることが困難となる。
【解決手段】リーダアンテナを、その読取り範囲が正向き読取り領域のみ読取れる位置に配置する。この時、正向きであれば試薬容器に付加されたICタグを読取ることが可能となり、逆向きであれば、リーダアンテナの読取り範囲からタグアンテナが外れ、読取ることが不可能となり、逆置きを防止可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液,尿などの生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に試薬容器に試薬識別情報などを記憶する記憶媒体を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液,尿などの生体サンプルの分析を行う自動分析装置では、サンプル中の分析対象成分と反応する試薬をサンプルに添加,混合することで分析を行う。近年、製薬技術の進歩により、多くの種類の分析対象について分析が可能な試薬が市販化されるようになった。このように多くの種類の試薬を使用する自動分析装置では、試薬の取り違えにより間違った分析結果を報告しないよう、試薬容器にバーコードなどの識別IDを付して、装置が自動的に試薬の種類を識別するような機構を備えるものが主流になっている。より具体的には試薬が入れられた試薬容器にバーコードを貼付し、それをバーコードリーダによって読取り、その後試薬情報を装置の記憶保持手段に記憶し、適宜利用している。読取った情報によっては試薬の有効期限が切れているためアラームを発生しユーザに注意を喚起するといったようにシステム上で試薬情報を活用している。試薬情報としては試薬の有効期限の他、試薬の製造ロット番号・シリアル番号,試薬初期容量などがあり、これを上述のバーコード情報として記録した上で試薬容器に貼付けして読取っている。
【0003】
従来識別IDとしてよく用いられてきたのはバーコードであるが、近年ではIDの情報量を増やし、より多くの情報を管理したいというニーズに応えるため、2次元コードやRFIDも用いられるようになってきた。中でもRFIDはリーダアンテナとICタグのタグアンテナが互いに対向し、かつリード/ライト(通信ともいう)可能領域内であれば双方のアンテナの向きを気にすることなく通信が可能であるため、管理する情報量を増やす上でも、また読取り時の信頼性を向上する上でもバーコードと比較し、メリットがあると考えられる。
【0004】
特許文献1では構成部品にICタグを付し、情報を読み出すことによって、メンテナンスを簡便にする手段を備えた分析システムおよび装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−283344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
RFIDは上述の通り、リーダアンテナとタグアンテナの向き、特にチルト角にそれほど留意しなくとも通信が可能であるため、情報を簡便に入手することができる。つまりリーダアンテナとタグアンテナの向きに関わらず通信が可能であることを意味する。
【0007】
しかし、自動分析装置上で試薬容器にICタグを付して試薬情報を管理する際、試薬容器の形状が左右対称な直方体状で試薬容器保持部に正規の向きの他、逆向きにも架設することができる場合、試薬容器の向きが誤った向きのまま架設され、試薬情報が読取られ、分析を行うケースが想定される。本ケースで試薬容器が第1試薬と第2試薬を有するペアリングカセットである場合、第1試薬と第2試薬が誤って認識され、使用され、分析が行われることとなり、正しい分析結果を得ることが困難となる。こうしたミスを未然に防ぐためには、試薬容器の逆置きを自動分析装置上で識別可能にする必要がある。
【0008】
本発明の第一の目的は、試薬容器の逆置き防止手段を備えた自動分析装置を提供することにある。
【0009】
また、試薬容器の架設向きの他、容器そのものが架設されているか、架設されていないかという点に着目する。試薬容器の架設有無を識別する方法として、従来は光学式センサを用いて識別していたが、構成が複雑になる、コストアップにつながるという別の課題が存在していた。
【0010】
本発明の第二の目的は、光学式センサを用いることなく試薬容器の有無を識別する手段を備えた自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するための、本発明の構成は以下の通りである。
【0012】
アンテナを有する非接触識別媒体と、前記非接触識別媒体と通信する通信機と、液体を収容する容器と、該容器を架設する容器保持機構と、を備えた自動分析装置であって、前記アンテナを前記容器に非対称の位置に設け、前記容器に設けられた前記非接触媒体と前記通信機が通信不能であった場合、該容器を前記容器保持機構を駆動して所定距離移動し、再度通信することにより、前記容器の前記容器保持機構上での設置向きを識別する識別機構を備えた自動分析装置。
【0013】
特に好ましい実施態様は以下の通りである。
【0014】
第一の目的を達成するための構成について説明する。試薬容器に付加するICタグにおいて、タグアンテナをタグ内の4辺のうちいずれかの1辺に寄せたものを利用する。寄せたアンテナは、タグの中心を通り、寄せた辺と平行の線よりも寄せた辺側の領域(以下、正向き読取り領域という)にある。そしてリーダアンテナを、その読取り範囲が正向き読取り領域のみ読取れる位置に配置する。試薬保冷庫内にある試薬容器を回転移動させ、停止させ、読取りを行う。この時、正向きであれば試薬容器に付加されたICタグを読取ることが可能である。逆向きであれば、リーダアンテナの読取り範囲からタグアンテナが外れ、読取ることが不可能となる。
【0015】
試薬容器が逆向きに置かれている場合において、試薬容器を読取る際の停止位置では上述の構成によってリーダアンテナの読取り範囲から外れるため、ICタグを読取ることができない。当該読取り時にICタグを読取ることができなかった後、試薬容器に付加されたICタグのタグアンテナが、リーダアンテナの読取り範囲内に入るよう、試薬容器を移動する。その後、再度読取りを実施し、ICタグを読取る。この再度の読取りによってICタグを読取ることができた場合、試薬容器が逆向きに架設されていると判断することができる。これによって試薬容器が逆向きに架設されている時には、ユーザへアラームを発するなどして注意を喚起することができる。
【0016】
次に第二の目的を達成するための構成について説明する。上述の2度の読取りでいずれもICタグを読取れなかった場合、試薬容器が無いのか、タグが破損している、あるいは他の要因によって読取れないのかが不明である。そこで、2度の読取りでいずれもICタグを読取れなかった場合、試薬プローブを用いた液面検知または異常下降検知を利用することで、試薬容器の有無を識別する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第一の効果として、試薬容器の逆置き防止手段を備えた自動分析装置を提供することが可能となる。
【0018】
また本発明の第二の効果として、光学式センサを用いることなく試薬容器の有無を識別する手段を備えた自動分析装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自動分析装置の概観図である。
【図2】試薬保冷庫内部と試薬容器,ICタグ,RFIDリーダ/ライタの構成図である。
【図3】試薬保冷庫内に架設された試薬容器とICタグの構成図である。
【図4】読取り時における試薬容器,ICタグ,リーダアンテナの構成を示した例1の図である。
【図5】試薬読取り時におけるタイムチャート例1である。
【図6】液面検知時における構成を示した図である。
【図7】読取り時における試薬容器,ICタグ,リーダアンテナの構成を示した例2の図である。
【図8】試薬読取り時におけるタイムチャート例2である。
【図9】読取り時における試薬容器,ICタグ,リーダアンテナの構成を示した例3の図である。
【図10】試薬読取り時におけるタイムチャート例3である。
【図11】読取り時における試薬容器,ICタグ,リーダアンテナの構成を示した例4の図である。
【図12】試薬読取り時におけるタイムチャート例4である。
【図13】読取り時における試薬容器,ICタグ,リーダアンテナの構成を示した例5の図である。
【図14】試薬読取り時におけるタイムチャート例5である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を用いて、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0021】
図1に示したのは自動分析装置の概観図である。操作部1からの指示により、ICタグが付加された試薬容器がICタグ情報の読取りを行う位置へと移動する。そして試薬保冷庫の蓋に設置されたRFIDリーダ/ライタによって試薬容器ごとの個別情報を取得する。次に試料の入った試料容器2が架設された搬送ラック3が分析部に搬送される。分析部に搬送された試料は操作部1から指示された分析を行うため、試料容器2内の測定用液体を試料分注機構4を用いて吸引し、反応ディスク5に架設した反応容器6に注入する。また試薬保冷庫7内に架設した試薬容器8をあらかじめ取得した試薬容器8の情報に基づき、所定の試薬を吸引するため、蓋の開口部の位置に移動し試薬容器8内の試薬を試薬分注機構9により吸引し、反応ディスク5に乗った反応容器6に注入する。反応容器6に注入された試料と試薬は攪拌機構10によって撹袢される。これによる化学反応の発色を光源ランプ,分光用回折格子,光検知器により構成される光度計11で測光し分析を行う。分析後は次の試料を分析するため、反応容器6を洗浄機構12により洗浄する。分析を行うための試料を吸引後、試料容器2を架設した搬送ラック3は分析部から搬出される。図1中では試薬保冷庫7の蓋の一部を断面表示し、保冷されている複数の試薬容器8の一部が見えるようにしてある。試薬保冷庫7は試薬を充填した円周上に配置された複数の試薬容器8を保冷し、試薬容器8から試薬を吸引するための少なくとも1つの蓋開口部13を持つことを特徴とする。
【0022】
次に図2を用いて試薬容器8とICタグおよびICタグの情報を読取るリーダ/ライタの構成に関して説明する。図2中に示したように、試薬保冷庫7内には試薬保持部14と試薬容器8が配置され、試薬保持部14は試薬保持部制御部15によって回転駆動させることができる。試薬保持部制御部15の動作は自動分析装置の中枢制御部16から行い、また試薬保持部制御部15は中枢制御部16を介して記憶保持手段17と接続されている。
【0023】
試薬保冷庫7の上部には試薬保冷庫の蓋18が設置されており、保冷庫内の温度を一定に保っている。試薬保冷庫の蓋18内にICタグと通信するためのRFIDリーダ/ライタ19が配置されており、RFIDリーダ/ライタ19は中枢制御部16と接続されている。RFIDリーダ/ライタ19は複数のリーダアンテナを有し、特に試薬保持手段14の内周と外周に架設された試薬容器上面に付加されたICタグ20をリード/ライトするため、ICタグ20の上方に内周ICタグ用リーダアンテナ21と外周ICタグ用リーダアンテナ22とを併せ持つ。こうして試薬容器8に付加されたICタグ20を内周・外周において各々一対一で読取るような構成となるようにする。
【0024】
次に図3を用いて試薬保冷庫7内における試薬容器8の架設位置に関して説明する。試薬保冷庫7内において、内周の試薬容器の架設位置は、外周の試薬容器の架設位置と周期的に一直線上に並ぶような構成である。並ぶ向きは、内周と外周の試薬容器細手方向の面が互いに対向する向きであり、かつ内周と外周の試薬容器の長手方向面が互いに同一直線上にある向きである。また内周と外周に架設される試薬容器8は同心円の円周上に並び、試薬容器細手方向の片側が同心円の中心を向く方向である。
【0025】
またICタグ20に関して、図3中に示したようにタグ内4辺のうち、細手方向辺の片側にアンテナを寄せ、正向き読取り領域にのみタグアンテナ23が位置するような構成をとる。またタグ内にはICチップ24があり、不揮発性メモリにタグデータを保有している。本実施例では電磁誘導方式を利用したパッシブ型RFIDとして説明するが、電磁結合方式,電波方式等他の方式でも構わない。またアクティブ型RFIDでも構わない。
【0026】
次に図4を用いて試薬読取り位置における試薬容器8とICタグ20,内周ICタグ用リーダアンテナ21との位置関係について説明する。なお、本図においては内周ICタグ用リーダアンテナ21を用いて説明するが、外周でも内周同様、外周ICタグ用リーダアンテナ22を用いて読取りを行う。
【0027】
試薬容器8の上方には内周ICタグ用リーダアンテナ21があり、リーダアンテナ内部にはICタグ20と電磁誘導を利用し通信が可能なようリーダループアンテナパターン25がある。タグアンテナ23とリーダループアンテナパターン25は通信の指向性を高めるため、ループにより閉じられる領域を長方形状に狭めてある。図4中にはリーダアンテナの通信可能領域26を示してある。通信距離については明示していないが、ICタグ20は当然にリーダアンテナの通信距離仕様を満足する領域内に存在する。また試薬容器8の上面には試薬容器開口部27が二つあり、当該二つの開口部の間にICタグ20が付加されている。
【0028】
リーダアンテナの通信可能領域26内にタグアンテナ23が位置する場合は、リーダアンテナとICタグ20との通信において、ICタグ20を動作させるために必要な放射磁界強度が得られ、通信が可能であるが、本領域外にタグアンテナ23が位置する場合はICタグ20を動作させるために必要な放射磁界強度が得られず、ICタグのリード/ライトを行うことができない。なお、タグデータはリーダアンテナからの搬送波をICチップ24の情報で変調し、その信号を反射させることによって得ることができる。
【0029】
試薬容器が正向きに架設された時には、リーダアンテナの通信可能領域26にタグアンテナ23が位置し、ICタグ20の情報をリード/ライトすることができる。一方、試薬容器を逆向きに架設した場合、タグアンテナ23が図4中に示したように移動し、リーダアンテナの通信可能領域26から外れ、ICタグ20のタグデータをリード/ライトすることができない。
【0030】
試薬容器が逆向きに架設されている場合、試薬容器読取り位置ではリードを行うことができないが、本1度目のリード動作の後、試薬容器を移動し、タグアンテナ23がリーダアンテナの通信可能領域26の領域内に位置するようにする。その後、本領域内に位置する場所で試薬容器を停止させ、再度リード動作を行う。試薬容器が逆向きに架設されている場合は、この2度目のリード動作でICタグ20のタグデータを取得することができる。2度目のリード動作でICタグ20のタグデータを取得することができた場合、試薬容器が逆向きに架設されていると判断するものとする。
【0031】
試薬容器読取り位置において、ICタグ20のタグデータをリード/ライトするために通信コマンドを利用する。特にリードの一連の動作としては、試薬容器を読取り位置で停止→中枢制御部16からRFIDリーダ/ライタ19へリードコマンド発行→ICタグ20の情報をRFIDリーダ/ライタ19が受信・認識→RFIDリーダ/ライタ19から中枢制御部16へタグデータを送信し、タグデータを取得、という流れになる。
【0032】
次に図5を用いてRFIDリーダ/ライタ19と試薬保持部14の動作について説明する。まず中枢制御部16が試薬保持部制御部15を経由して試薬保持部14を回転させる。これにより、内周ポジション1に架設された試薬容器が、内周ポジション1試薬読取り回転動作28aによって試薬容器読取り位置へと回転移動する。その後動作を停止し、中枢制御部16がRFIDリーダ/ライタ19へ内周ポジション1試薬読取りコマンド発行29aを行う。当該コマンド発行により、試薬容器8が正向きに架設されている場合、ICタグ20のタグデータ30aを取得する。その後、CW方向へ試薬容器を再度移動する。この試薬容器逆向き読取り位置への回転動作31aを行った後、停止する。
【0033】
次に内周ポジション2に架設された試薬容器を同様な動作で読取る。こうして内周に架設されている試薬容器の数分だけ、試薬読取りを行う。ここで、内周ポジション2に架設された試薬容器が逆向きである場合、内周ポジション2試薬読取りコマンド発行29bを行った後、タグデータを取得することができない。タグデータが当該1度目の読取り時に取得できなかった場合、試薬容器逆向き読取り位置への回転動作31bを行った後、2度目の試薬読取りコマンド発行32aを行う。ここでタグデータ30bを取得することができる。本2度目の読取りでもタグデータが取得できなかった場合、試薬容器が架設位置に存在しない、またはICタグ20が破損している場合が想定されるが、詳細は後述する。
【0034】
内周に架設された試薬を全て読取った後、外周に架設された試薬を同様なタイムチャートで読取る。外周では試薬容器の架設数が多いため、試薬保持部の動作時間は内周と比較し短くなる。なお回転方向はCWとしてあるが、CCWであっても、またCWとCCWを組み合わせていても構わない。
【0035】
上述した方法で、逆向き読取り位置でタグデータを取得した場合、ユーザへ操作部1を通してアラームを発し、注意を喚起する。
【0036】
次に図6を用いて試薬容器の有無を識別する方法について説明する。内周・外周の試薬読取りを全て完了した後、試薬容器の有無に関わらず試薬保持部14内の全ての試薬容器架設位置へ試薬分注機構9を駆動し、当該分注機構が有する試薬プローブ33で試薬容器の液面検知を実施する。液面検知は、プローブ先端とアースとの静電容量を断続的に測定しており、ある一定の静電容量を超えたときに監視基板が信号を発することにより液面を検出する技術のことである。試薬プローブ33が液体試薬34に突入することにより、静電容量が変化し、当該変化を捉えることによって液面を検出する。液面検出後、プローブは直ちに下降動作を停止する。本技術は液面を検出後、プローブ上限点までのパルスモータへの発行パルス数によるプローブ上昇量より液面の高さを算出し、併せて試薬容器容量を加味することで試薬残量を測定する等の目的で実施されるものであるが、既に自動分析装置で採用され、公知技術となっているためここでは動作の詳細に関しては省略する。また試薬プローブ33は異常下降検知機能を備えており、プローブ先端が固体等にあたり、物理的な下降が阻害されるのを試薬分注機構9内部にある検知板と検知器を用いて検出する。すなわち、検知器をリミッタとして用い、検知器の信号を監視し、検知板による検知器遮蔽により信号が発せされた場合はプローブ下降動作を停止する。この液面検知を全ての試薬容器架設位置で実施し、先の試薬容器のタグデータ読取り結果と組み合わせて使用することによって、試薬容器有無を識別する。
【0037】
以上より、正向き・逆向きのタグデータは単純に試薬容器有りと識別できる。また向きによって試薬容器容量を内周外周逆向きにして、試薬残量登録を正確に実現する。
【0038】
タグデータが2度の読取りで取得できなかった場合、液面検知を行うことによって液面を検出した時は試薬容器があり、かつ試薬があると識別する。つまりICタグ20が破損している、または不正なICタグ(例えば、通信未対応のICチップを使用しているタグ)を使用している、またはICタグそのものが試薬容器に付加されていないと判断する。また液面を検出しなかった時は、試薬容器が無いと判断する。
【0039】
また、液面検知に加えて異常下降検知を利用しても良い。上述の液面を検出しなかった時は、試薬容器がないケースの他、試薬容器が空の場合も想定される。よって液面検知動作の後、試薬容器停止位置を変化させ、試薬プローブ33を試薬容器開口部27へ突入するのではなく、開口部以外の容器上面に接触させ、異常下降検知をもって試薬容器の有無を判断しても良い。
【0040】
また、液面検知は使用せず、最初から異常下降検知のみを使用して試薬容器の有無を判断しても良い。
【実施例2】
【0041】
次に図7を用いてリーダアンテナおよびICタグレイアウトを変更した長手方向読取りICタグ35を使用した実施例を説明する。実施例1のICタグ20とは別の長手方向読取りICタグ35を準備する。本ICタグはタグ内4辺のうち、長手方向辺の片側にアンテナを寄せ、正向き読取り領域にのみ長手方向タグアンテナ36が位置するような構成をとる。またタグ内には長手方向用ICチップ37があり、タグデータを保有している。
【0042】
内周ICタグ用リーダアンテナ21の位置は、当該アンテナの長手方向が、長手方向読取りICタグ35の長手方向と平行となる位置でも垂直となる位置でも構わないが、本ケースの場合は互いの長手方向が平行になる位置に内周ICタグ用リーダアンテナ21を配置するものとする。
【0043】
実施例1同様、試薬容器が正向きの場合は通信可能領域に長手方向タグアンテナ36が存在するため、タグデータが取得でき、試薬容器が逆向きの場合は通信可能領域から長手方向タグアンテナ36が外れるため、タグデータは取得できない。ここでは試薬容器の回転方向と、長手方向タグアンテナ36が正向きと逆向きで移動する方向が異なるため、試薬容器逆向き読取り位置への回転動作は行わない。
【0044】
次に図8を用いてRFIDリーダ/ライタ19と試薬保持部14の動作について説明する。図5で説明したタイムチャートの中で、試薬容器逆向き読取り位置への回転動作と、2度目の試薬読取りコマンド発行動作がなくなったものが、本ケースのタイムチャートに該当する。
【実施例3】
【0045】
次に図9を用いてリーダアンテナおよびICタグレイアウトを変更したダブルチップICタグ39を使用した実施例を説明する。タグ内に2つのICチップと2つのタグアンテナを有し、図4で説明した正向き読取り領域に正規のタグデータを有するICチップとタグアンテナを配置する。図4で逆方向に架設した場合のタグアンテナの位置に、ダミーデータを有するICチップとタグアンテナを配置する。ダミーデータを読取った場合、試薬容器が逆向きに架設されていると判断する。当該構成で読取りを行った場合のタイムチャートを図10に示す。実施例2の図8と比較し、試薬読取りコマンド発行を行った後、試薬容器がある場合は正規のタグデータまたはダミーデータのいずれかの情報を取得する。
【0046】
本ケースの場合、増設したリーダアンテナ38を用いて読取りを同時に行っても良いし、またダブルチップICタグ39を二分割してタグを2種類準備しても良い。
【0047】
増設したリーダアンテナ38は、内周ICタグ用リーダアンテナ21と異なる情報を取得するようにする。
【実施例4】
【0048】
次に図11を用いてリーダアンテナを移動させて読取りを実施する場合の実施例について説明する。実施例1の図4、そして実施例2の図7において、正向き読取りを実施した後、内周ICタグ用リーダアンテナ21を、試薬容器が逆向きに置かれている場合にタグデータが読取れる位置まで移動する。移動後、再度読取りを実施する。この際、図4中の試薬容器逆向き読取り位置への試薬保持部回転動作は行わない。すなわち、試薬容器は試薬容器読取り位置で停止するのみである。再度の読取りを行った後、内周ICタグ用リーダアンテナ21は元の正向き読取り位置へと移動する。また長手方向読取りICタグ35を用いて同様の読取りを実施しても良い。
【0049】
次に図12を用いてリーダアンテナを移動させて読取りを実施する場合のタイムチャートについて説明する。実施例2の図7に示した場合で、試薬容器が逆向きに置かれタグデータが取得できなかった場合、リーダアンテナ保持部動作40aを行い、リーダアンテナを移動する。その後、再度試薬読取りコマンドを発行し、タグデータを取得する。その後、リーダアンテナ保持部動作40bを行い、リーダアンテナは元の位置へと戻る。リーダアンテナ保持部にはパルスモータ等のアクチュエータを用いればよい。
【実施例5】
【0050】
次に図13を用いて実施例3のダブルチップICタグ39と実施例4のリーダアンテナ移動を使用した実施例について説明する。実施例4の図12において、リーダアンテナ保持部動作を、正向き・逆向きに関わらず、1ポジションごとに実施していく。リーダアンテナがCW方向に移動する前後でそれぞれ試薬読取りコマンド発行を1回ずつ行う。ダミーデータを取得する時が、リーダアンテナがCW方向に移動する前の試薬読取りコマンド発行である時は逆向きに置かれているのもと判断する。
【0051】
以上に述べたことを実施することで、試薬容器の逆置き防止手段を備えた自動分析装置を提供することが可能となる。また光学式センサを用いることなく試薬容器の有無を識別する手段を備えた自動分析装置を提供することが可能になる。
【0052】
なお、いうまでもなく本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 操作部
2 試料容器
3 搬送ラック
4 試料分注機構
5 反応ディスク
6 反応容器
7 試薬保冷庫
8 試薬容器
9 試薬分注機構
10 攪拌機構
11 光度計
12 洗浄機構
13 蓋開口部
14 試薬保持部
15 試薬保持部制御部
16 中枢制御部
17 記憶保持手段
18 試薬保冷庫の蓋
19 RFIDリーダ/ライタ
20 ICタグ
21 内周ICタグ用リーダアンテナ
22 外周ICタグ用リーダアンテナ
23 タグアンテナ
24 ICチップ
25 リーダループアンテナパターン
26 リーダアンテナの通信可能領域
27 試薬容器開口部
28,28a,28b,28c,28d 内/外周ポジション試薬読取り回転動作
29,29a,29b,29c,29d 内/外周ポジション試薬読取りコマンド発行
30,30a,30b,30c,30d タグデータ
31,31a,31b,31c,31d 試薬容器逆向き読取り位置への回転動作
32,32a,32b 2度目の試薬読取りコマンド発行
33 試薬プローブ
34 液体試薬
35 長手方向読取りICタグ
36 長手方向タグアンテナ
37 長手方向用ICチップ
38 増設したリーダアンテナ
39 ダブルチップICタグ
40,40a,40b,40c,40d リーダアンテナ保持部動作

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを有する非接触識別媒体と、前記非接触識別媒体と通信する通信機と、液体を収容する容器と、該容器を架設する容器保持機構と、を備えた自動分析装置であって、
前記アンテナを前記容器に非対称の位置に設け、
前記容器に設けられた前記非接触媒体と前記通信機が通信不能であった場合、該容器を前記容器保持機構を駆動して所定距離移動し、再度通信することにより、前記容器の前記容器保持機構上での設置向きを識別する識別機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記容器に収容された液体の液面を検知する検知機構を備え、
前記識別機構により、前記容器の設置向きを識別した後、前記液面検知機構によって前記容器の有無を識別する容器有無識別機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動分析装置において、
前記容器は、前記非接触識別媒体を少なくとも2つ備え、かつそれぞれの非接触識別媒体のアンテナの通信範囲が異なることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の自動分析装置において、
前記通信機は、通信範囲が異なる少なくとも2つの通信アンテナを備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
アンテナを有する非接触識別媒体と、前記非接触識別媒体と通信する通信機と、液体を収容する容器と、該容器を架設する容器保持機構と、を備えた自動分析装置であって、
前記アンテナを前記容器に非対称の位置に設け、
前記通信機の通信アンテナを移動させる通信アンテナ移動手段を備え、該通信アンテナ移動手段により通信アンテナの位置を変えて通信することで前記容器の前記容器保持機構上での設置向きを識別する識別機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−27658(P2011−27658A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175996(P2009−175996)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】