説明

自動分析装置

【課題】本発明は、弱耐光性試薬の光線による品質劣化を抑えることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、分注機構の試薬分注プローブが出入りする試薬収納庫に設けられた分注用窓部を備える自動分析装置において、分注用窓部から入る試薬分注プローブを試薬容器の分注口に挿入して試薬の吸い取りを終えたら、試薬容器に光が当たらないよう試薬容器の移動または分注用窓部を閉じることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液等の成分を自動的に分析する自動分析装置に係り、特に耐光性の弱い試薬の保存状態を向上させるシステムを搭載する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、例えば、特開2008−157970号公報(特許文献1)に示すような構成を備える。
【0003】
特許文献1に示す自動分析装置は試薬容器を載置する試薬ディスクが内置される試薬保冷庫の試薬保管庫カバーに分注用窓部を備え、この分注用窓部から分注機構を用いて試薬の分注が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−157970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析装置では弱耐光性試薬や耐光性試薬を含む様々な試薬が用いられている。弱耐光性試薬は、通常、暗所、定温にて保存されている。しかし、自動分析装置に搭載後においては、例えば分注ポジション(位置)に停止した際には分注用窓部からの外乱光の入射は避けられない。
【0006】
現状の自動分析装置の分注に関するシステムにおいては、試薬分注時に分注ポジションに試薬容器がセットされてから分注作業をし、次の試薬の分注時まではそのまま分注ポジションに停止しているため、試薬容器内部に外乱光が入射する時間が長くなる可能性があった。耐光性の弱い試薬においてはこのように外乱光にさらされることは品質劣化につながる好ましくない状態である。
【0007】
本発明は、上記に課題に鑑み、弱耐光性試薬の光線による品質劣化を抑えることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、分注機構の試薬分注プローブが出入りする試薬収納庫に設けられた分注用窓部を備える自動分析装置において、分注用窓部から入る試薬分注プローブを試薬容器の分注口に挿入して試薬の吸い取りを終えたら、試薬容器に光が当たらないよう試薬容器の移動または分注用窓部を閉じることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分注機構で分注するときを除いて試薬に光線が当たらないように対処されるので、耐光性の弱い試薬に対して良好な保存状態を維持できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係るもので、試薬保管庫の外観図である。
【図2】本発明の実施例に係るもので、一部を破断して内部を示した試薬保管庫の外観図である。
【図3】本発明の実施例に係るもので、試薬分注時の状態を示す試薬保管庫の上面図である。
【図4】本発明の実施例に係るもので、試薬分注後に試薬ディスクを移動した状態を示す試薬保管庫の上面図である。
【図5】本発明の実施例に係るもので、試薬分注のシステムに関する制御ブロック図である。
【図6】本発明の実施例に係るもので、図6に示す制御ブロックに基くフローチャート図である。
【図7】本発明の他の実施例に係るもので、試薬分注のシステムに関する制御ブロック図である。
【図8】本発明の他の実施例に係るもので、図7に示す制御ブロックに基くフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に関し、実施例の図面を引用して説明する。
【0012】
まず、図1から図6に沿って述べる。
【0013】
図1から図4に示すように、自動分析装置は試薬収納保管部に含まれる試薬収納保管部試薬保管庫1、試薬保管庫カバー2を有する。試薬保管庫1には、試薬ディスク6が内置される。試薬ディスク6は回転中心の周りに試薬容器4が円状に配置される。
【0014】
分注用窓3は試薬保管庫カバー2に設けられる。分注用窓3は複数設けることが可能である。試薬容器4は分注口7を有する。試薬ディスク6に載って回転する試薬容器4の分注口7の回転軌跡と分注用窓3の位置が一致するように配置されている。試薬ディスク6の回動により、何れの試薬容器4の分注口7も分注用窓3に位置合せすることができる。
【0015】
試薬容器4は試薬ディスク6に載置する際に分注口7の蓋を外してセットする。試薬容器や蓋が光線を遮光する材料で作られていても試薬ディスク6に載置した状態では分注口7から光線が試薬に入る。
【0016】
分注機構(図示せず)は、試薬分注プローブを有する。この試薬分注プローブを分注用窓3に通して降下させ、試薬容器4の分注口7内に挿入して試薬を吸い取り、その試薬は反応容器配置部に置かれる反応容器または反応ディスクに置かれる反応容器に吐き出される。反応容器内で、試料と反応して反応液が生成される。反応液は分析機構で分析される。
【0017】
通常、試薬ディスク6に載置する試薬容器4はサイズが同じである。このため、試薬ディスク6に円状に配置される試薬容器4は等間隔に置かれる。また、円状に配置される試薬容器4の分注口7は円状に配置方向の幅の中間点に設けられている。
【0018】
上記分注は、図2に示す分注ポジション5(分注位置)で行う。上述したように、耐光性の弱い試薬は、通常、暗所、定温にて保存されているが、自動分析装置に搭載後においては、分注ポジションに来た試薬容器は分注用窓部3から入る光線を避けることができない。
【0019】
そこで、試薬容器が分注ポジション5(分注位置)で停止する停止時間を最小限にして耐光性の弱い試薬に光線が当たる時間を極力短くすることにより、試薬の品質劣化を抑えることができる。
【0020】
耐光性の弱い試薬においては、該当する試薬容器を自動分析装置の分注に関するシステムに認識させて置く。そして、分注後には試薬容器を半個分移動することによって、分注後に分注ポジション(分注位置)での停止をなくすることで試薬の保管状態を良好に保つことが出来る。
【0021】
この分注に関するシステムについて図5、図6に沿って更に詳しく述べる。
【0022】
図5に示すように、試薬容器を設置している試薬ディスク50は駆動回転用のモータ51および駆動制御用のドライバ52が備わっている。また試薬ディスク50の試薬容器から試薬を分注する分注機構の分注プローブ53は分注機構を駆動するためのモータ54および駆動制御用のドライバ55が備わっている。
【0023】
分注プローブ53は試薬ディスク50の試薬容器より分注するのにアクセス可能な位置に設置されている。また、試薬ディスク50を駆動するドライバ52、および分注機構を駆動するドライバ55は機構制御部56に接続されている。この機構制御部56には機構制御アルゴリズム57、分注制御アルゴリズム58、分注後に試薬容器を半個分移動させて止める停止位置制御アルゴリズム59が備えられている。
【0024】
上記制御アルゴリズムに関し、図6に示すフローチャートに沿って述べる。
【0025】
分注機構による試薬の吸い取りを終了(ステップ100)後にステップ101で分注位置に止めている試薬容器の情報を確認し、試薬容器情報と試薬容器情報データベースとの照合をする(ステップ102)。
【0026】
ステップ103で試薬容器が弱耐光性試薬の登録されていないものであったら試薬ディスクは次の試薬容器をセットする指示が出るまで動かない(ステップ104)。すなわち、弱耐光性試薬でない試薬容器であるので分注ポジション(分注位置)に止めたままにする。逆に試薬容器が弱耐光性試薬の登録されているものであった場合は試薬ディスクがN番目の試薬容器とN+1番目の試薬容器の中間位置にまで移動する(ステップ105)。
そして、ステップ106で通常動作に戻る。
【0027】
このようなフローにより弱耐光性試薬の登録された試薬容器内の試薬に光線が入射するのを回避できる。つまり、試薬ディスクは分注ポジション(分注位置)から移動させ、分注用窓部に対して隣合う二つの試薬容器の中間位置になるように止める。この中間位置は分注用窓部から分注口が見えない位置になるので試薬容器内の試薬に光線が当たらないのである。
【0028】
中間位置が分注用窓部から分注口が見えない位置で光線が当たらないのは、上述したところの通常、試薬ディスク6に載置する試薬容器4はサイズが同じであること、試薬ディスク6に円状に配置されること、試薬容器4は等間隔に置かれこと、円状に配置される試薬容器4の分注口7が円状に配置方向の幅の中間点に設けられること、等が役立っている。
【0029】
この中間位置である分注用窓部から分注口が見えない位置は、次の分注指示を待つ分注待機位置でもある。分注指示が来ると、試薬ディスクが回転作動し、指定された試薬容器が分注ポジション(分注位置)にセットされるようになる。
【0030】
また、弱耐光性試薬の登録された試薬容器内より2度、3度と引き続き分注するときも、分注の度毎に、見えない位置(分注待機位置)で待機させ、次の分注指示を待つようにする。中間位置である分注用窓部から分注口が見えない位置への移動は試薬ディスクを回す角度が小さく短時間で移動させることができる。
【0031】
また、分注用窓部から分注口が見えない位置は試薬分注をした試薬容器から複数個の試薬容器をスキップしたところの試薬容器間に設けることも可能である。
【0032】
また、分注用窓部から分注口が見えない位置は中間位置だけに限らない。分注用窓部から見た隣接する二つの試薬容器間の任意の位置を分注口が見えない位置にすることが可能である。但し、二つの試薬容器間の両端は除く。
【0033】
分注のシステムに関する他の実施例について図7、図8を引用して説明する。
【0034】
この実施例は耐光性の弱い試薬が入った試薬容器には専用のラベルが貼付されてものを扱う。試薬容器に専用のラベルは、図7に示す読み取りセンサー70で検出する。読み取りセンサー70は試薬ディスク50の近くに設け、試薬ディスク50に載って回る試薬容器に専用のラベルを読み、その読んだ信号情報を機構制御部56に提供して耐光性の弱い試薬か否かの判定確認が図8に示す(ステップ200/ステップ300)で行われる。
【0035】
このセンサー70を用いるところ以外は、図5、図6に示す実施例と共通である。共通するところの説明は省略する。
【0036】
更に他の実施例について説明する。
【0037】
上記の実施例に代え、分注用窓部に開け閉めする遮光蓋を設け、分注時以外は遮光蓋を閉じて遮光する。分注機構の試薬分注プローブの上げ下げ動作と遮光蓋の開閉タイミングを合せることで、分注時に光線が入る時間を短縮化できる。
【0038】
また、試薬ディスクを回す代わりに試薬保管庫カバーを回して分注用窓部から分注口が見えない位置に保つことができる。
【0039】
また、試薬収納保管部は試薬ディスクに代えてマトリックス状に試薬容器に配置し、上カバーに縦横に移動する分注用窓部を設けた構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…試薬保管庫
2…試薬保管庫カバー
3…分注用窓部
4…試薬容器
5…分注ポジション(分注位置)
6…試薬ディスク
7…分注口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬容器を収納保管する試薬収納保管部と、複数の反応容器が置かれる反応容器配置部と、前記試薬収納庫の試薬容器から吸引した試薬を前記反応容器配置部の反応容器に吐く分注機構と、前記反応容器で反応した反応液を分析する分析機構と、前記分注機構の試薬分注プローブが出入りする前記試薬収納庫に設けられた分注用窓部を備える自動分析装置において、
前記分注用窓部から入る前記試薬分注プローブを前記試薬容器の分注口に挿入して試薬の吸い取りを終えたら、前記試薬容器に光が当たらないよう前記試薬容器の移動または分注用窓部を閉じることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
複数の試薬容器を収納保管する試薬収納保管部と、複数の反応容器が置かれる反応容器配置部と、前記試薬収納庫の試薬容器から吸引した試薬を前記反応容器配置部の反応容器に吐く分注機構と、前記反応容器で反応した反応液を分析する分析機構と、前記分注機構の試薬分注プローブが出入りする前記試薬収納庫に設けられた分注用窓部を備える自動分析装置において、
前記分注用窓部から入れる前記試薬分注プローブを前記試薬容器の分注口に挿入して試薬の吸い取りを終えたら、分注用窓部から分注口が見えない位置に試薬容器を移動させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
複数の試薬容器を収納保管する試薬収納保管部と、複数の反応容器が置かれる反応容器配置部と、前記試薬収納庫の試薬容器から吸引した試薬を前記反応容器配置部の反応容器に吐く分注機構と、前記反応容器で反応した反応液を分析する分析機構と、前記分注機構の試薬分注プローブが出入りする前記試薬収納庫に設けられた分注用窓部を備える自動分析装置において、
前記分注用窓部を開け閉めする遮光蓋を設け、
前記分注用窓部から入る前記試薬分注プローブを前記試薬容器の分注口に挿入して試薬の吸い取りを終え、分注口から前記試薬分注プローブが抜かれたら前記遮光蓋を閉じることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
複数の試薬容器が回転中心の周りに円状に配置される試薬ディスクと、前記試薬ディスクを内置する試薬保管庫と、複数の反応容器が置かれる反応ディスクと、試薬ディスクの試薬容器から吸引した試薬を前記反応ディスクの反応容器に吐く分注機構と、前記反応容器で反応した反応液を分析する分析機構と、前記試薬容器の分注口に挿入する前記分注機構の試薬分注プローブが出入りする前記試薬保管庫に設けられた分注用窓部を備える自動分析装置において、
前記試薬ディスクを回して前記分注用窓部に前記分注口を位置合せ、前記試薬分注プローブを分注用窓部から前記試薬容器の分注口に挿入し、試薬の吸い取りを終え試薬分注プローブが前記分注口から抜かれたら前記試薬ディスクを回して前記分注用窓部から前記分注口が見えない位置に当該試薬容器を移動させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項4記載の自動分析装置において、
前記分注口が見えない位置は、分注用窓部から見て隣合う二つの前記試薬容器間の中間位置であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項4記載の自動分析装置において、
前記分注口が見えない位置は、分注用窓部から見て隣合う二つの前記試薬容器間に存在することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項4記載の自動分析装置において、
前記分注口が見えない位置を分注待機位置とし、この分注待機位置で次に分注指示を待つことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項4記載の自動分析装置において、
弱耐光試薬の前記試薬容器と耐光試薬の前記試薬容器での取り扱いでは、弱耐光性試薬の試薬容器を前記分注口が見えない位置に移動させ、耐光性試薬の試薬容器については前記分注口が見えない位置への移動を見送ることを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項4記載の自動分析装置において、
弱耐光試薬の試薬容器からの分注を引き続きするときも前記分注口が見えない位置に試薬容器を一旦移動させ、次の分注指示を待って分注が行われる位置に戻し移動することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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