説明

自動分析装置

【課題】被験者から採取される検体に含まれる粒子成分を分析する自動分析装置において、移動および開閉などの動作をしない部位の異常を検知することは困難であった。
【解決手段】被験者から採取される検体に含まれる粒子成分を分析する自動分析装置であって、検体を測定し、測定データを取得する測定部と、測定部により取得された測定データを解析し、検体に含まれる粒子成分の分析結果を取得する制御部と、所定の情報を通知する通知手段と、を備え、制御部は、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度に基づき、測定部の異常の兆候を示す情報を通知するよう通知手段を制御する自動分析装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被験者から採取された検体を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁バルブを備えたサンプリングバルブ、ピペット、および、定容量流路などを備え、被験者から採取される血液に含まれる粒子成分を分析する血液分析装置が記載されている。特許文献1に記載の血液分析装置は、電磁バルブおよびピペットをセンサにより監視し、このセンサが異常を検出すると、アラームを発することで装置に異常が発生していることを操作者に知らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−083960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の血液分析装置は、上述したように、センサの出力に基づき、装置に異常が発生したことを操作者に知らせることができる。ここで、血液分析装置には、電磁バルブのように開閉したり、ピペットのように移動したりはしないが異常が発生する部位もある。しかし、特許文献1に開示された血液分析装置は、センサによってのみ異常を検出可能であるため、このような部位の異常を検出することは困難であった。
【0005】
本発明は、被験者から採取される検体に含まれる粒子成分を分析する自動分析装置であって、移動および開閉などの動作をしない部位の異常の兆候を示す情報を操作者に提供可能な自動分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の様態における自動分析装置は、被験者から採取される検体に含まれる粒子成分を分析する自動分析装置であって、検体を測定し、測定データを取得する測定部と、測定部により取得された測定データを解析し、検体に含まれる粒子成分の分析結果を取得する制御部と、所定の情報を通知する通知手段と、を備え、制御部は、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度に基づき、測定部の異常の兆候を示す情報を通知するよう通知手段を制御する。
【0007】
上記様態において、通知手段として表示部を備え、制御部は、測定部の異常の兆候を示す情報を表示するよう表示部を制御してもよい。
【0008】
また、上記様態において、記憶部を備え、制御部は、検体の分析結果を取得するごとに、予め記憶部に記憶された設定値と、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度とを比較し、頻度が設定値を超えた場合に、測定部の異常の兆候を示す情報を通知するよう通知手段を制御してもよい。
【0009】
また、上記様態において、設定値変更受付手段を備え、制御部は、設定値変更受付手段により設定値変更の入力を受け付けると、変更された設定を記憶部に記憶させてもよい。
【0010】
また、上記様態において、測定部の異常の兆候を示す情報は、測定部において発生する可能性がある異常を示す情報であってもよい。
【0011】
また、上記様態において、測定部に複数の検体を連続的に搬送する搬送部を備え、測定部は、搬送部により搬送される複数の検体を連続的に測定可能であり、制御部は、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度に基づき、測定部において測定中の検体の測定が終了した後、測定部の測定動作および搬送部の搬送動作をそれぞれ停止させてもよい。
【0012】
また、上記様態において、停止指示受付付手段を備え、制御部は、停止指示受付付手段により測定部および搬送部の動作停止指示の入力を受け付けると、測定部の測定動作および搬送部の搬送動作をそれぞれ停止させてもよい。
【0013】
また、上記様態において、測定部は、検体容器に収容された検体を吸引する吸引部と、吸引部により吸引された検体が流通する流路を含み、検体と試薬を含む試料を調製する調製部と、調製部により調製された試料が流入するフローセルと、フローセル中の試料に光を照射する光源部と、光源部により光を照射することで試料から生じる光を受光する受光部と、受光部により受光された光信号を測定データとして制御部へ送信する送信部と、を備え、制御部は、流路の異常の兆候を示す情報を通知するよう通知手段を制御してもよい。
【0014】
また、上記様態において、所定の粒子成分の異常に関する情報は、血小板凝集に関する情報であってもよい。
【0015】
また、上記様態において、流路の異常の兆候を示す情報は、流路に汚れが付着している可能性があることを示す情報であってもよい。
【0016】
また、上記様態において、測定部は、流路の洗浄動作を実行可能に構成されていてもよい。
【0017】
また、上記様態において、浄動指示受付手段を備え、制御部は、浄動指示受付手段により洗浄指示の入力が受け付けられたときに、流路の洗浄動作を実行するよう測定部を制御し、洗浄動作が終了した後、測定部の測定動作および搬送部の搬送動作をそれぞれ再開させてもよい。
【0018】
本発明の二の様態における自動分析装置は、被験者から採取される検体に含まれる粒子成分を分析する自動分析装置であって、検体を測定し、測定データを取得する測定部と、測定部により取得された測定データを解析し、検体に含まれる粒子成分の分析結果を取得する制御部と、所定の情報を通知する通知手段と、を備え、制御部は、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度に基づき、測定部の保守動作に関する情報を通知するよう通知手段を制御する。
【0019】
上記様態において、保守動作実行指示受付手段を備え、制御部は、保守動作実行指示受付手段により保守動作実行指示の入力が受け付けられると、測定部において測定中の検体の測定が終了した後、測定部の測定動作を停止させ、測定部に保守動作を実行させてもよい。
【0020】
また、上記様態において、測定部は、検体容器に収容された検体を吸引する吸引部と、吸引部により吸引された検体が流通する流路を含み、検体と試薬を含む試料を調製する調製部と、調製部により調製された試料が流入するフローセルと、フローセル中の試料に光を照射する光源部と、光源部により光を照射することで試料から生じる光を受光する受光部と、受光部により受光された光信号を測定データとして制御部へ送信する送信部と、を備え、制御部は、流路の洗浄動作に関する情報を通知するよう通知手段を制御し、測定部に流路の洗浄動作を実行させてもよい。
【0021】
本発明の三の様態における自動分析装置は、被験者から採取される検体に含まれる粒子成分を分析する自動分析装置であって、検体を測定し、測定データを取得する測定部と、測定部により取得された測定データを解析し、検体に含まれる粒子成分の分析結果を取得し、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度に基づき、測定部に保守動作を実行させる制御部と、を備える。
【0022】
上記様態において、測定部は、検体容器に収容された検体を吸引する吸引部と、吸引部により吸引された検体が流通する流路を含み、検体と試薬を含む試料を調製する調製部と、調製部により調製された試料が流入するフローセルと、フローセル中の試料に光を照射する光源部と、光源部により光を照射することで試料から生じる光を受光する受光部と、受光部により受光された光信号を測定データとして制御部へ送信する送信部と、を備え、制御部は、測定部に流路の洗浄動作を実行させてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明による自動分析装置によれば、移動および開閉などの動作をしない部位の異常の兆候を示す情報を操作者に提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態にかかる自動分析装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】サンプル容器を保持するラックおよびラックに保持されたサンプル容器の外観構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる測定ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる試料調整部の構成を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる検出部が備えるフローセルの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる検出部の構成を示す模式図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる制御装置の検体分析処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態にかかる表示部に表示される分析結果表示画面の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる異常発生履歴データベースを示す図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる制御装置のエラー処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態にかかる表示部に表示されるエラー画面の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施形態にかかる表示部に表示される設定変更画面の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施形態にかかる測定ユニットの検体測定動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第一の実施形態にかかる自動分析装置は、被験者から採取された血液検体に含まれる赤血球、白血球、および、血小板などの血球成分を分類し、計数する血球分析装置である。
【0026】
図1は、血球分析装置1の外観構成を示す斜視図である。血球分析装置1は、図1に示すように、測定ユニット3と、測定ユニット3の前面側(矢印Y1方向側)に配置された搬送装置4と、測定ユニット3および搬送装置4に電気的に接続されたパーソナルコンピュータからなる制御装置5とを備えている。制御装置5は、表示部52と、入力デバイス53とを含んでいる。表示部52は、測定ユニット3から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果などを表示するために設けられている。
【0027】
測定ユニット3は、サンプル容器100を把持することが可能なハンド部351と、サンプル容器100を矢印Y1およびY2方向に水平移動させるサンプル容器移送部355とを有している。ハンド部351は、垂直方向(矢印Z1およびZ2方向)および水平方向(矢印X1およびX2方向)に移動可能に構成されている。また、サンプル容器移送部355は、検体セット部355aを有し、矢印Y2方向にスライドすることで検体セット部355aを、後述する検体吸引部31による検体吸引位置に配置させることが可能である。なお、ハンド部351、サンプル容器移送部355、および、検体セット部355aは、後述するサンプル容器搬送部35に含まれる(図3参照)。
【0028】
搬送装置4は、分析が行われる前の検体を収容するサンプル容器100が収容された複数のラック101を保持することが可能な分析前ラック保持部41と、分析が行われた後の検体を収容するサンプル容器100が収容された複数のラック101を保持することが可能な分析後ラック保持部42と、ラック101を矢印X1およびX2方向に横送り可能に構成された搬送部43と、サンプル容器100のバーコード100bを読み取るとともに、ラック101に貼付されたバーコード101aを読み取るバーコード読取部44を含んでいる。
【0029】
ラック搬送部43は、分析前ラック保持部41に保持されたラック101を、矢印X1方向に連続的に搬送可能である。ラック搬送部43は、分析前ラック保持部41に保持されたラック101を、検体供給位置に搬送する。ここで、検体供給位置とは、ハンド部351が、ラック101に保持されたサンプル容器100を検体セット部355aに設置可能な位置である。具体的には、検体供給位置は、ラック搬送部43上、かつ、サンプル容器移送部355よりもX2方向側に存在する。そして、ラック搬送部43は、検体供給位置に搬送されたラック101に保持されたサンプル容器100に収容されている検体の測定ユニット3による測定が終了すると、そのラック101を検体供給位置から分析後ラック保持部42に搬送する。
【0030】
図2は、サンプル容器を保持するラックおよびラックに保持されたサンプル容器の外観構成を示す斜視図である。ラック101には、図2に示すように、10本のサンプル容器100を一列に収容可能なように10個の容器収容部101bが形成されている。各サンプル容器100のバーコード100bは、各検体に固有に付されたものであり、各検体の検査結果の管理などに使用される。また、各容器収容部101bには、それぞれ、収容したサンプル容器100のバーコード100bが視認可能なように開口部101cが設けられている。ラック101のバーコード101aは、各ラックに固有に付されたものであり、検体の検査結果の管理などに使用される。
【0031】
図3は、血球分析装置1の測定ユニット3の構成を示すブロック図である。測定ユニット3は、図3に示すように、検体吸引位置に配置されたサンプル容器100から検体(本実施形態においては血液)を吸引する検体吸引部31と、検体吸引部31により吸引された血液から試料を調製する試料調製部32と、試料調製部32により調製された試料から血液に含まれる赤血球などの粒子を検出する検出部33とを含んでいる。なお、検出部33は、フローセル33aを含む。この点については後述する。また、測定ユニット3は、検体吸引部31や試料調製部32などを内部に収容するユニットカバー34と、サンプル容器100をユニットカバー34(図1参照)の内部に取り込み、検体吸引位置までサンプル容器100を搬送するサンプル容器搬送部35をさらに含んでいる。また、測定ユニット3は、各部を制御するためのCPU36と、CPU36により実行されるプログラムや、それに用いられるデータを記憶させるためのメモリ37と、制御装置5と相互に通信可能に接続された通信インタフェース38とをさらに備えている。
【0032】
図4は、試料調整部32の構成を示す模式図である。図4に示すように、試料調製部32は、試料の調製に使用される反応チャンバ321、希釈液が収容された希釈液容器322、溶血剤が収容された溶血剤容器323、染色液が収容された染色液容器324、および、シース液が貯留されるシース液チャンバ325を備えている。検体吸引部31は、サンプル容器100から吸引した検体を、反応チャンバ321に吐出する。希釈液容器322、溶血剤容器323、および、染色液容器324は、それぞれ、チューブ等の流路32a、32b、および、32cを介して反応チャンバ321と接続されている。流路32a、32b、および、32cには複数の電磁弁が設けられており、それら電磁弁の間にはダイヤフラムポンプが設けられている。ダイヤフラムポンプは、陽圧源および陰圧源が接続されており、ダイヤフラムポンプを陽圧駆動および陰圧駆動することができるようになっている。このような電磁弁およびダイヤフラムポンプが動作することで、各種試薬が反応チャンバ321に供給される。また、反応チャンバ321は流路32dを介してフローセル33aに接続されている。
【0033】
シース液チャンバ325は、フローセル33aに供給されるシース液を貯留するためのチャンバであり、電磁弁を含む流路32eを介して希釈液容器322に接続されている。測定の開始前には、電磁弁が開放され、希釈液容器322に収容された希釈液が、シース液チャンバ325に供給さる。そして、測定が開始されるときには、フローセル33aへの試料の供給と同期して、流路32fが備える電磁弁が開放され、シース液チャンバ325に貯留されたシース液が、流路32fを介して、フローセル33aへ供給される。
【0034】
図3に戻って、検出部33は、フローセル33aを備え(図5参照)、RBC検出(赤血球の検出)およびPLT検出(血小板の検出)をシースフローDC検出法により行うとともに、HGB検出(血液中の血色素の検出)をSLS−ヘモグロビン法により行うように構成されている。また、検出部33は、WBC検出(白血球の検出)を、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により行うようにも構成されている。検出部33で得られた検体の測定結果は、CPU36によって、制御装置5に送信される。なお、この測定結果は、ユーザに提供される最終的な検査結果(赤血球数、血小板数、ヘモグロビン量、白血球数など)のもととなる。
【0035】
図5は、検出部33が備えるフローセル33aの構成を示す斜視図である。図5に示すように、フローセル33aは、透光性を有する石英、ガラス、合成樹脂等の材料によって管状に構成されており、その内部が試料およびシース液が通流する流路となっている。フローセル33aには、内部空間が他の部分よりも細く絞り込まれたオリフィス33cが設けられている。フローセル33aの当該オリフィス33cの入口付近は二重管構造となっており、その内側管部分が試料ノズル33cとなっている。この試料ノズル33cは、流路32dを介して反応チャンバ321と接続されており、この試料ノズル33cからオリフィス33cに向かって試料が吐出される。
【0036】
また、試料ノズル33cの外側の空間はシース液が通流する流路33eであり、この流
路33eは、シース液チャンバ325と、流路32fを介して接続されている。シース液は、シース液チャンバ325から流路32fを介して流路33eを通流し、オリフィス33cへ導入される。こうして、フローセル33aに供給されたシース液は、試料ノズル33cから吐出された試料を取り囲むように流れることとなる。そして、オリフィス33cによって試料の流れが細く絞り込まれ、試料に含まれる赤血球等の粒子がシース液に取り囲まれて一つずつオリフィス33cを通過する。
【0037】
図6は、検出部33の構成を模式的に示す概略平面図である。図6に示すように、検出部33には、半導体レーザ光源331が、フローセル33aのオリフィス33bへ向けてレーザ光を出射するように配置されている。半導体レーザ光源331とフローセル33aとの間には、複数のレンズからなる照射レンズ系332が配されている。この照射レンズ系332によって、半導体レーザ光源から出射された平行ビームがビームスポットに集束されるようになっている。また、半導体レーザ光源331から直線的に延びた光軸上には、フローセル33aを挟んで照射レンズ系332に対向するように、ビームストッパ333aが設けられている。半導体レーザ光源331からのビームのうちフローセル33a内で散乱されずに直進するビーム(以下、直接光という)は、ビームストッパ333aによって遮光される。また、ビームストッパ333aのさらに光軸下流側には、フォトダイオード333が配されている。
【0038】
フローセル33aに試料が流れると、レーザ光により散乱光および蛍光の光信号が発生する。このうち前方の信号光(散乱光)が前記フォトダイオード333へ向けて照射される。半導体レーザ光源331から直線的に延びた光軸に沿って進行する光のうち、半導体レーザ光源331の直接光は、ビームストッパ333aによって遮断され、フォトダイオード333にはおおむね前記光軸方向に沿って進行する散乱光(以下、前方散乱光という)のみが入射する。フローセル33aから発せられた前方散乱光は、フォトダイオード333で光電変換され、これによって生じた電気信号(以下、前方散乱光信号という)がアンプ333bによって増幅されて、CPU36に出力される。かかる前方散乱光信号は、血球の大きさを反映している。
【0039】
また、フローセル33aの側方であって、半導体レーザ光源331からフォトダイオード333へ直線的に延びる光軸に対して直交する方向には、側方集光レンズ334が配されている。フローセル33a内を通過する血球に半導体レーザを照射したときに発生する側方光(前記光軸に対して交差する方向へ出射される光)がこの側方集光レンズ334で集められるようになっている。側方集光レンズ334の下流側にはダイクロイックミラー335が設けられており、側方集光レンズ334から送られた信号光は、ダイクロイックミラー335で散乱光成分と蛍光成分とに分けられる。ダイクロイックミラー335の側方(側方集光レンズ334とダイクロイックミラー335とを結ぶ光軸方向に交差する方向)には、側方散乱光受光用のフォトダイオード336が設けられている。また、ダイクロイックミラー335の前記光軸下流側には、光学フィルタ337aおよびフォトダイオード337が設けられている。
【0040】
ダイクロイックミラー335により反射された側方散乱光成分は、フォトダイオード336で光電変換される。かかる光電変換によって生じた電気信号(以下、側方散乱光信号という)がアンプ336aによって増幅され、CPU36に出力される。この側方散乱光信号は、血球の内部情報(核の大きさ等)を反映している。また、ダイクロイックミラー335を透過した側方蛍光成分は光学フィルタ337aによって波長選択された後、フォトダイオード337で光電変換される。かかる光電変換によって生じた電気信号(側方蛍光信号)がアンプ337bによって増幅され、CPU36に出力される。この側方蛍光信号は、血球の染色度合いに関する情報を反映している。
【0041】
図7は、血球分析装置1の制御装置5の構成を示すブロック図である。制御装置5は、図7に示すように、制御部51と、表示部52と、入力デバイス53とから主として構成されたコンピュータ500によって構成されている。
【0042】
制御部51は、図7に示すように、CPU51aと、ROM51bと、RAM51cと、ハードディスク51dと、読出装置51eと、入出力インタフェース51fと、通信インタフェース51gと、画像出力インタフェース51hとから主として構成されている。CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、および画像出力インタフェース51hは、バス51iによって接続されている。
【0043】
CPU51aは、ROM51bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM51cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム54aをCPU51aが実行することにより、コンピュータ500が制御装置5として機能する。
【0044】
ROM51bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU51aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0045】
RAM51cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM51cは、ROM51bおよびハードディスク51dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU51aの作業領域として利用される。
【0046】
ハードディスク51dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU51aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータが記憶されたプログラム記憶部53aを備えている。プログラム記憶部53aには、制御装置5用の分析プログラムも記憶されている。また、ハードディスク51dには、分析結果データベース54b、異常発生履歴データベース54cがそれぞれ設けられている。
【0047】
読出装置51eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体54に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体54には、アプリケーションプログラムが格納されており、コンピュータ500がその可搬型記録媒体54からアプリケーションプログラムを読み出し、そのアプリケーションプログラムをプログラム記憶部53aに記憶させることが可能である。
【0048】
なお、上記アプリケーションプログラムは、可搬型記録媒体54によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ500と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、上記アプリケーションプログラムがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ500がアクセスして、そのアプリケーションプログラムをダウンロードし、これをプログラム記憶部53aに記憶させることも可能である。
【0049】
また、プログラム記憶部53aには、例えば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、アプリケーションプログラムは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0050】
入出力インタフェース51fは、例えば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース51fには、入力デバイス53が接続されており、ユーザがその入力デバイス53を使用することにより、コンピュータ500にデータを入力することが可能である。
【0051】
通信インタフェース51gは、例えば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータ500は、その通信インタフェース51gにより、所定の通信プロトコルを使用して測定ユニット3、搬送装置4との間でデータの送受信が可能である。
【0052】
画像出力インタフェース51hは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部52に接続されており、CPU51aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部52に出力するようになっている。表示部52は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示するように構成されている。
【0053】
図8は、制御装置5による検体分析処理を示すフローチャートである。以下、図8を参照しつつ、CPU51aによる検体分析処理について説明する。
【0054】
血球分析装置1の電源が投入されると、CPU51aは、プログラム記憶部53aに記憶されている分析プログラムを実行する。CPU51aは、まず、各種パラメータの設定など、初期設定の処理を実行する(ステップS101)。次いで、CPU51aは、測定開始指示の入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS102)。操作者は、入力デバイス53を介して、測定開始指示を入力することが可能である。測定開始指示の入力を受け付けたと判定した場合(ステップS102においてYES)、CPU51aは、測定開始信号を測定ユニット3および搬送装置4に送信する処理を実行する(ステップS103)。
【0055】
測定開始指示の入力を受け付けなかったと判定した場合(ステップS102においてNO)、または、測定開始信号を測定ユニット3に送信した場合、CPU51aは、測定ユニット3から送信される測定結果を受信したか否かを判定する(ステップS104)。測定結果を受信しなかったと判定した場合(ステップS104においてNO)、CPU51aは、後述するステップS108の処理を実行する。測定結果を受信したと判定した場合(ステップS104においてYES)、CPU51aは、受信した測定結果を分析し(ステップS105)、分析結果を分析結果データベース54bに記憶させる(ステップS106)。次いで、CPU51aは、分析結果データベース54bに記憶させた分析結果を示す分析結果表示画面521(図9参照)を表示部53に表示させる(ステップS107)。
【0056】
図9は、分析結果表示画面521の一例を示す模式図である。図9に示すように、分析結果表示画面521は、検体情報フィールド521a、操作者情報フィールド521b、測定項目フィールド521c、スキャッタグラムフィールド521d、および、IPメッセージが表示されるIPメッセージフィールド521eを備えている。
【0057】
検体情報フィールド521aには、測定された検体のIDなど、検体に関する情報が表示される。操作者情報フィールド521bには、その検体を測定していたときに血球分析装置1を操作していた操作者のIDなど、操作者に関する情報が表示される。
【0058】
測定項目フィールド521cには、検体に含まれる白血球数(WBC)、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(HGB)、および、血小板数(PLT)など、検体に含まれる成分に関する情報が表示される。また、スキャッタグラムフィールド521dには、例えば、縦軸を側方蛍光強度、横軸を側方散乱光強度とするDIFFスキャッタグラムなどが表示される。
【0059】
IPメッセージフィールド521eには、検体の分析結果に異常がある場合、または異常がある疑いがある場合、その旨を示すIPメッセージが表示される。例えば、分析結果の所定の項目の数値が正常な範囲から逸脱している場合、または逸脱している疑いがある場合、IPメッセージがIPメッセージフィールド521eに表示される。IPメッセージには、分析結果が明らかに異常であることを示すアブノーマルIPメッセージと、異常がある疑いがあることを示すサスペクトIPメッセージの2種類がある。なお、検体の分析結果に異常がない場合、および異常がある疑いがない場合には、IPメッセージフィールド521eにはいずれのIPメッセージも表示されない。
【0060】
図8に戻って、CPU51aは、分析結果データベース54bに記憶させた分析結果の所定の項目に異常が発生しているか否かを判定する(ステップS108)。本実施形態において、CPU51aは、分析結果の血小板に関する項目に異常が発生しているか否かを判定する。分析結果の所定の項目に異常が発生している場合、分析結果表示画面521のIPメッセージ領域521eには、それを示唆するメッセージが表示される。例えば、検体に血小板凝集が発生している疑いがある場合には、血小板凝集が発生している疑いがあることを示すサスペクトIPメッセージ「PLT Clumps?」がIPメッセージ領域521eに表示される。
【0061】
分析結果に異常がないと判定した場合、すなわち、IPメッセージ領域521eにメッセージが表示されていない場合(ステップS108においてNO)、CPU51aは、後述するステップS110の処理を実行する。分析結果に異常があると判定した場合、すなわち、IPメッセージ領域521eにメッセージが表示されている場合(ステップS108においてYES)、CPU51aは、異常発生履歴データベース54c(図10参照)の、分析結果の異常と対応する項目の発生回数をインクリメントする(ステップS109)。
【0062】
図10は、ハードディスク51dに設けられた異常発生履歴データベース54cを示す図である。図10に示すように、異常発生履歴データベース54cは、項目および発生回数のフィールドを備えている。項目は、分析結果に発生する異常の内容を示す。本実施形態において、項目フィールドにはIPメッセージ領域521eに表示されるメッセージが登録される。また、発生回数は、その異常が発生した回数を示す。本実施形態において、発生回数は、項目フィールドに登録されたIPメッセージ領域521eに対応するメッセージが表示された回数を示す。例えば、分析結果表示画面522のIPメッセージ領域522eに「PLT Clumps?」と表示された場合CPU51aは、異常発生履歴データベース54cに登録されている項目「PLT Clumps?」の発生回数をインクリメントする。
【0063】
図8に戻って、CPU51aは、異常発生履歴データベース54cを参照し、発生頻度が設定値以上である項目があるか否かを判定する(ステップS110)。ここで、CPU51aは、現在までに取得した分析結果の数を計数しており、その計数結果と異常発生履歴データベース54cの各項目の発生回数とに基づき、発生頻度が設定値以上となっている項目があるか否かを判定する。設定値は項目ごとに設定されており、ハードディスク51dに予め記憶されている。設定値は、例えば、20検体につき1検体でもよいし、10検体につき1検体でもよいし、5検体につき1検体でもよい。また、設定値は固定の値であってもよいし変更可能であってもよい。なお、本実施形態において、設定値は変更可能である。この点については後述する。
【0064】
発生頻度が設定値以上の項目がないと判定した場合(ステップS110においてNO)、CPU51aは、後述するステップS112の処理を実行する。発生頻度が設定値以上の項目があると判定した場合(ステップS110においてYES)、CPU51aは、エラー処理を実行する(ステップS111)。
【0065】
図11は、エラー処理を示すフローチャートである。ここからは、図11を参照しつつ、エラー処理について説明する。
【0066】
まず、CPU51aは、エラー画面522(図12参照)を表示部52に表示させる(ステップS201)。
【0067】
図12は、表示部52に表示されるエラー画面522の一例を示す図である。図12に示すように、エラー画面522は、エラーメッセージ領域522aと、異常関連メッセージ領域522bと、を備えている。エラーメッセージ領域522aには、異常発生履歴データベース54cに登録された項目のうち、いずれの項目の発生頻度が設定値以上であるかを示す旨のエラーメッセージが表示される。本実施形態において、エラーメッセージ領域522aに表示されるエラーメッセージは、IPメッセージ領域521eに表示されるメッセージと対応付けられてハードディスク51dに記憶されている。
【0068】
異常関連メッセージ領域522bには、エラーメッセージ領域522aに表示されるメッセージに関する異常の兆候を示すメッセージが表示される。例えば、エラーメッセージ領域522aに「PLT Clumps?の発生頻度が高い」と表示された場合、異常関連メッセージ領域522bに「流路に汚れが付着している可能性があります。」というメッセージが表示される。異常関連メッセージ領域522bに表示されるメッセージは、エラーメッセージ領域522aに表示されるメッセージと対応付けられてハードディスク51dに記憶されている。
【0069】
エラー画面522は、さらに、測定ユニット3および搬送装置4の動作を停止させる信号を送信するための動作停止ボタン522cと、キャンセルボタン522dと、を備えている。操作者は、入力デバイス53によって動作停止ボタン522cを選択することで、動作停止指示を入力できる。また、操作者は、キャンセルボタン522dを選択することで、エラーキャンセルの指示を入力することができる。
【0070】
図11に戻って、CPU51aは、動作停止指示またはエラーキャンセル指示の入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS202)。いずれかの指示の入力を受け付けたと判定した場合(ステップS202においてYES)、CPU51aは、その指示が測定ユニット3および搬送装置4の動作停止指示であるか否かを判定する(ステップS203)。動作停止指示でないと判定した場合、すなわち、エラーキャンセルの指示であると判定した場合(ステップS203においてNO)、CPU51aは、後述するステップS207における処理を実行する。
【0071】
動作停止指示であると判定した場合(ステップS203においてYES)、CPU51aは、動作停止信号を測定ユニット3および搬送装置4に送信する(ステップS204)。動作停止信号を受信すると、測定ユニット3および搬送装置4は、検体測定動作および検体搬送動作をそれぞれ停止させる。さらに、測定ユニット3は、流路の洗浄動作を実行する。これらの点については後述する。
【0072】
次いで、CPU51aは、測定ユニット3から送信される洗浄動作完了信号を受信したか否かを判定する(ステップS205)。洗浄動作完了信号を受信したと判定した場合(ステップS205においてYES)、CPU51aは、動作開始信号を測定ユニット3および搬送装置4に送信する(ステップS206)。動作開始信号を受信した場合、測定ユニット3および搬送装置4は、検体測定動作および検体搬送動作をそれぞれ再開させる。この点については後述する。
【0073】
次いで、CPU51aは、エラー履歴のリセットを実行する(ステップS207)。ここで、CPU51aは、異常発生履歴データベース54cにおいて、エラー画面522のエラーメッセージ領域522aに表示されたメッセージにかかる項目の発生回数を0とし、分析結果の取得回数の計数結果をクリアする。その後、CPU51aは、表示部52に表示されているエラー画面522の表示を解除する(ステップS208)。その後、CPU51aは、ステップS112の処理を実行する。
【0074】
図8に戻って、CPU51aは、設定変更画面表示指示の入力を受信したか否かを判定する(S112)。操作者は、入力デバイス53を介して、設定変更画面表示指示を入力することが可能である。設定変更画面表示指示の入力を受け付けなかったと判定した場合(ステップS112においてNO)、CPU51aは、後述するステップS118の処理を実行する。設定変更画面表示指示の入力を受け付けたと判定した場合(ステップS112においてYES)、CPU51aは、設定変更画面523(図13参照)を表示部52に表示させる(ステップS113)。
【0075】
図13は、表示部52に表示される設定変更画面523の一例を示す図である。図13に示すように、設定変更画面523は、異常発生履歴データベース54cに登録されている項目が表示される項目フィールド523aと、項目フィールド523aに表示された各項目に対する頻度の設定値を入力する頻度設定フィールド523bと、を備えている。
【0076】
また、設定変更画面523は、OKボタン523c、および、キャンセルボタン523dを備えている。操作者は、入力デバイス53を介して、OKボタン523cを選択することで、頻度設定フィールド523bへの入力を確定させる、すなわち、設定変更指示の入力を確定させる。また、操作者は、キャンセルボタン523dを選択することで、設定変更のキャンセルの指示を入力することができる。
【0077】
なお、項目フィールド523aが、異常発生履歴データベース54cへの新規項目の登録機能を備えていてもよい。具体的には、操作者は、入力デバイス53を介して、項目フィールド523aに新規登録項目を入力し、OKボタンを選択する。これにより、項目の新規登録の指示が入力され、CPU51aは、入力された指示に基づき、異常発生履歴データベース54cへ新規項目を登録するようにしてもよい。
【0078】
図8に戻って、CPU51aは、設定変更指示の入力または設定変更のキャンセルの入力を受信したか否かを判定する(ステップS114)。いずれかの指示の入力を受信したと判定した場合(ステップS114においてYES)、CPU51aは、受け付けた指示の入力が設定変更指示の入力であるか否かを判定する(ステップS115)。設定変更指示の入力であると判定した場合(ステップS115においてYES)、CPU51aは、入力された設定変更指示に基づき、設定を更新する(ステップS116)。ここで、各項目の設定値がCPU51aにより更新され、ハードディスク51dに記憶される。設定変更指示の入力でないと判定した場合、すなわち、設定変更処理のキャンセル指示の入力であると判定した場合(ステップS115においてNO)、および、設定を更新した場合、CPU51aは、表示部52に表示されている設定変更画面523の表示を解除する(ステップS117)。
【0079】
次いで、CPU51aは、操作者からの終了指示の入力を受け付けたか否か判定する(ステップS118)。終了指示の入力を受け付けたと判定した場合(ステップS118においてYES)、CPU51aは、測定ユニット3に終了信号を送信し、シャットダウン処理を実行し、制御装置5の動作を終了させる(ステップS119)。また、終了指示の入力を受け付けていないと判定した場合(ステップS118においてNO)、CPU51aは、ステップS102の処理を実行する。
【0080】
図14は、測定ユニット3の検体測定動作を示すフローチャートである。ここからは、図14を参照しつつ、測定ユニット3の検体測定動作について説明する。
【0081】
まず、CPU36は、測定ユニット3の各部を初期動作位置に戻す処理などの初期処理を実行する(ステップS301)。ここで、CPU36は、測定ユニット3の各部を初期動作位置に戻した後、初期洗浄を実施するよう試料調製部32を制御する。具体的には、CPU36は、希釈液容器322に収容された希釈液および溶血剤容器323に収容された溶血剤を、反応チャンバ321、流路32d、および、フローセル33aなどに流通させるよう試料調製部32を制御する。
【0082】
次いで、CPU36は、制御装置5から送信される測定開始信号を受信したか否か判定する(ステップS302)。測定開始信号を受信しなかったと判定した場合(ステップS302においてNO)、CPU36は、後述するステップS308の処理を実行する。
【0083】
測定開始指示を受信したと判定した場合(ステップS302においてYES)、CPU36は、検体供給位置にあるラック101に保持されたサンプル容器100に収容されている検体を吸引するよう、サンプル容器搬送部35および検体吸引部31を制御する(ステップS303)。ここで、搬送装置4は、制御装置5から送信される測定開始信号を受信すると、分析前ラック保持部41にあるラック101をラック搬送部43によりX1方向に横送りすることで検体供給位置に搬送する。
【0084】
ステップS303において、CPU36は、まず、検体供給位置にあるラック101に保持されたサンプル容器100を、ハンド部351により検体セット部355aに配置させ、サンプル容器移送部355をY2方向にスライドさせることでサンプル容器100を検体吸引位置に搬送するようサンプル容器搬送部35を制御する。次いで、CPU36は、検体吸引位置に搬送されたサンプル容器100から検体を吸引し、反応チャンバ321に吐出するよう検体吸引部31を制御する。
【0085】
次いで、CPU36は、各種試薬を反応チャンバ321に供給し、検体と混合させることで試料を調製するよう試料調製部32を制御する(ステップS304)。次いで、CPU36は、試料調製部32により調製された試料を測定するよう検出部33を制御する(ステップS305)。検体の測定が終了すると、CPU36は、測定結果を制御装置5に送信する(ステップS306)。
【0086】
次いで、CPU36は、第一洗浄を実行するよう試料調製部32を制御する(ステップS307)。ここで、CPU36は、希釈液容器322に収容された希釈液を、反応チャンバ321、流路32d、および、フローセル33aなどに流通させるよう試料調製部32を制御する。
【0087】
ここで、ステップS303〜S307の処理は、検体供給位置にあるラック101に保持されたサンプル容器100のそれぞれについて並列に実行される。検体供給位置にあるラック101に保持されたすべてのサンプル容器100に収容されている検体の測定が終了すると、搬送装置4は、検体供給位置にあるラック101をラック搬送部43により矢印X1方向に横送りすることで分析後ラック保持部42まで搬送する。
【0088】
次いで、CPU36は、制御装置5から送信される動作停止信号を受信したか否かを判定する(ステップS308)。動作停止信号を受信しなかったと判定した場合(ステップS308においてNO)、CPU36は、後述するステップS315の処理を実行する。
【0089】
動作停止信号を受信したと判定した場合(ステップS308においてYES)、CPU36は、測定ユニット3の検体測定動作を停止させる(ステップS309)。ここで、CPU36は、サンプル容器移送部355をY1方向にスライドさせ、検体容器セット部355aに配置されているサンプル容器100を、ハンド部351により検体供給位置のラック101に戻すようサンプル容器搬送部35を制御する。なお、動作停止信号を受信した時点で検体吸引部31によってサンプル容器100から検体が吸引されている場合、CPU36は、当該検体の測定処理(ステップS303〜S307の処理)を実行するよう各部を制御する。ここで、搬送装置4は、制御装置5から送信される動作停止信号を受信し、サンプル容器100が検体供給位置にあるラック101に戻された段階で、当該ラック101をラック搬送部43により矢印X2方向(図1参照)に横送りすることで分析前ラック保持部41まで搬送する。
【0090】
次いで、CPU36は、第二洗浄を実行するよう試料調製部32を制御する(ステップS310)。CPU36は、希釈液容器322に収容されている希釈液および溶血剤容器323に収容された溶血剤を、反応チャンバ321、流路32d、および、フローセル33aなどに流通させるよう試料調製部32を制御する。ここで、溶血剤には界面活性剤が含まれている。そのため、第二洗浄は、第一洗浄よりも洗浄力が強く、第一洗浄で除去しきれなかった流路の汚れを除去することが可能である。第二洗浄が終了すると、CPU36は、制御装置5に、洗浄動作完了信号を送信する(ステップS311)。
【0091】
次いで、CPU36は、制御装置5から送信される動作開始信号を受信したか否かを判定する(ステップS312。動作開始信号を受信したと判定した場合(ステップS312においてYES)、CPU36は、検体測定動作を再開させる(ステップS313)。ここで、搬送装置4は、制御装置5から送信される動作開始信号を受信すると、測定動作が停止したときに測定ユニット3により処理中であったラック101を、ラック搬送部43により分析前ラック保持部41から検体供給位置に搬送する。
【0092】
次いで、CPU36は、測定動作が停止したときに処理中であったラック101の再処理を実行する(ステップS314)。ここで、CPU36は、検体供給位置にあるラック101に保持されたサンプル容器100に収容されている検体のうち、測定結果が制御装置5に送信されていない検体について、検体の測定処理(ステップS303〜ステップS307における処理)を実行するよう各部を制御する。再処理が終了すると、搬送装置4は、当該ラック101をラック搬送部43により矢印X1方向(図1参照)に横送りすることで分析後ラック保持部42に搬送する。
【0093】
次いで、CPU36は、測定対象の検体がないか否かを判定する(ステップS315)。具体的には、CPU36は、ラック搬送部43により、分析前ラック保持部41から検体供給位置に搬送されるラック101がないか否かを判定する。測定対象の検体があると判定した場合(ステップS315においてNO)、CPU36は、ステップS303の処理を実行する。
【0094】
測定対象の検体がないと判定した場合(ステップS315においてYES)、CPU36は、制御装置5から送信される終了信号を受信したか否か判定する(ステップS316)。終了信号を受信していないと判定した場合(ステップS316においてNO)、CPU36は、ステップS302の処理を実行する。
【0095】
終了信号を受信したと判定した場合(ステップS316においてYES)、CPU36は、シャットダウン洗浄を実行し、測定ユニット3の動作を終了させる(ステップS317)。ここで、CPU36は、洗浄液による流路の洗浄を実行するよう検体吸引部31および試料調製部32を制御する。この洗浄液は、希釈液や溶血剤とは異なり、流路の洗浄専用の薬剤である。そのため、シャットダウン洗浄は、第一洗浄および第二洗浄よりも洗浄力が強い。まず、CPU36は、洗浄液容器に収容された洗浄液を吸引し、吸引した洗浄液を反応チャンバ321に吐出するよう検体吸引部31を制御する。その後、CPU36は、反応チャンバ321に吐出された洗浄液を、流路32dおよびフローセル33aなどに流通させるよう試料調製部32を制御する。
【0096】
上述したように、本実施形態にかかる自動分析装置は、測定ユニット3による検体の測定結果を分析し、分析結果に検体中の所定成分の異常に関する情報を含む頻度を取得し、その頻度が設定値を超えた場合に、測定ユニット3に含まれる流路に異常が発生する兆候があることを示す情報を含む画面を表示部52に表示させるように構成されている。したがって、本実施形態にかかる自動分析装置は、装置に異常が発生する前に、装置の異常の兆候を示す情報を操作者に提供可能である。
【0097】
<他の実施形態>
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0098】
上記実施形態において、自動分析装置は血球分析装置である。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、自動分析装置は、尿中有形成分分析装置、免疫分析装置、血液凝固測定装置、血液像分析装置、および、生化学分析装置などであってもよい。特に、検体および試薬が流通する流体系を備え、フローサイトメトリー法により検体を測定する尿中有形成分分析装置、および、免疫分析装置が自動分析装置としてより好ましい。
【0099】
また、上記実施形態において、検体中の所定成分の異常に関する情報は、血小板凝集に関する情報である。血小板凝集に関する情報は、健常人から採取された検体の分析結果には含まれない異常な粒子、すなわち血小板凝集塊が含まれていることを示す情報である。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、血小板凝集塊以外の異常な粒子が含まれていることを示す情報であってもよい。また、検体中の所定成分の異常に関する情報が、赤血球および白血球などの計数結果が正常な範囲を逸脱していることを示す情報であってもよい。ただし、検体中の所定成分の異常に関する情報は、通常の測定における発生頻度があまり高くないものであることが好ましい。
【0100】
また、上記実施形態において、検体中の所定成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度が設定値を超えた場合に、その旨を示す情報を含む画面が表示部52に表示される。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、制御装置5がスピーカを備えており、検体中の所定成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度が設定値を超えた場合に、CPU51aが、その旨を示す警告音およびその旨を示すメッセージ音声などを鳴らすようスピーカを制御してもよい。
【0101】
また、上記実施形態において、エラー画面522の異常関連メッセージ領域522bには、流路の異常に関する情報が表示される。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、エラー画面522の異常関連メッセージ領域522bに、測定ユニット3が備える流路以外の機構の異常に関する情報が表示部52に表示されてもよい。
【0102】
上記実施形態において、エラー画面522のエラーメッセージ領域522aに「PLT Clumps?の発生頻度が高い」と表示された場合、異常関連メッセージ領域522bに「流路に汚れが付着している可能性があります。」というような、流路の異常の兆候を示すメッセージが表示される。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、エラーメッセージ領域522aに「PLT Clumps?の発生頻度が高い」と表示された場合、異常関連メッセージ領域522bに、「流路の洗浄を実施してください。」というような、装置の保守動作の実行を操作者に促すメッセージを表示してもよい。さらに、異常関連メッセージ領域522bに、測定ユニット3が備える流路以外の機構の保守動作に関する情報が表示されてもよい。
【0103】
また、上記実施形態において、第二洗浄では、希釈液容器322に収容されている希釈液および溶血剤容器323に収容された溶血剤が、反応チャンバ321、流路32d、および、フローセル33aなどを流通することで洗浄が行われる。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、第二洗浄において、シャットダウン洗浄と同様の洗浄が行われてもよい。すなわち、洗浄液容器に収容された洗浄液が、検体吸引部31により反応チャンバ321に分注されるとともに、反応チャンバ321に分注された洗浄液が、流路32dおよびフローセル33aなどを流通することで第二洗浄が行われてもよい。
【0104】
また、上記実施形態においては、エラー画面522が表示部52に表示され、操作者が、測定ユニット3および搬送装置4の検体測定動作および検体搬送動作を停止させるか否かを選択可能である。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、エラー画面522が表示部52に表示されず、CPU51aが、自動的に測定ユニット3および搬送装置4に検体測定動作および検体搬送動作の停止信号を送信するよう構成されていてもよい。ここで、測定ユニット3が、制御装置5から送信される停止信号を受信した場合、自動的に流路の第二洗浄を実行するよう構成されていてもよい。さらに、測定ユニット3は、制御装置5から送信される停止信号を受信した場合、流路の洗浄動作に限らず、測定ユニット3が備える流路以外の機構のメンテナンス動作を自動的に実行するよう構成されていてもよい。このように構成することで、自動分析装置は、例えば、流路に汚れが付着するなどの装置の異常の兆候を検知した段階で自動的に洗浄動作を実行するため、異常の発生を未然に防止することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 血液分析装置
3 測定ユニット
4 搬送装置
5 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者から採取される検体に含まれる粒子成分を分析する自動分析装置であって、
検体を測定し、測定データを取得する測定部と、
測定部により取得された測定データを解析し、検体に含まれる粒子成分の分析結果を取得する制御部と、
所定の情報を通知する通知手段と、を備え、
制御部は、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度に基づき、測定部の異常の兆候を示す情報を通知するよう通知手段を制御する自動分析装置。
【請求項2】
通知手段として表示部を備え、
制御部は、測定部の異常の兆候を示す情報を表示するよう表示部を制御する請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
記憶部を備え、
制御部は、検体の分析結果を取得するごとに、予め記憶部に記憶された設定値と、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度とを比較し、頻度が設定値を超えた場合に、測定部の異常の兆候を示す情報を通知するよう通知手段を制御する請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
設定値変更受付手段を備え、
制御部は、設定値変更受付手段により設定値変更の入力を受け付けると、変更された設定を記憶部に記憶させる請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
測定部の異常の兆候を示す情報は、測定部において発生する可能性がある異常を示す情報である請求項1から4のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項6】
測定部に複数の検体を連続的に搬送する搬送部を備え、
測定部は、搬送部により搬送される複数の検体を連続的に測定可能であり、
制御部は、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度に基づき、測定部において測定中の検体の測定が終了した後、測定部の測定動作および搬送部の搬送動作をそれぞれ停止させる請求項1から5のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項7】
停止指示受付付手段を備え、
制御部は、停止指示受付付手段により測定部および搬送部の動作停止指示の入力を受け付けると、測定部の測定動作および搬送部の搬送動作をそれぞれ停止させる請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
測定部は、検体容器に収容された検体を吸引する吸引部と、吸引部により吸引された検体が流通する流路を含み、検体と試薬を含む試料を調製する調製部と、調製部により調製された試料が流入するフローセルと、フローセル中の試料に光を照射する光源部と、光源部により光を照射することで試料から生じる光を受光する受光部と、受光部により受光された光信号を測定データとして制御部へ送信する送信部と、を備え、
制御部は、流路の異常の兆候を示す情報を通知するよう通知手段を制御する請求項1から7のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項9】
所定の粒子成分の異常に関する情報は、血小板凝集に関する情報である請求項1から8のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項10】
流路の異常の兆候を示す情報は、流路に汚れが付着している可能性があることを示す情報である請求項8または9に記載の自動分析装置。
【請求項11】
測定部は、流路の洗浄動作を実行可能に構成されている請求項8から10のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項12】
浄動指示受付手段を備え、
制御部は、浄動指示受付手段により洗浄指示の入力が受け付けられたときに、流路の洗浄動作を実行するよう測定部を制御し、洗浄動作が終了した後、測定部の測定動作および搬送部の搬送動作をそれぞれ再開させる請求項11に記載の自動分析装置。
【請求項13】
被験者から採取される検体に含まれる粒子成分を分析する自動分析装置であって、
検体を測定し、測定データを取得する測定部と、
測定部により取得された測定データを解析し、検体に含まれる粒子成分の分析結果を取得する制御部と、
所定の情報を通知する通知手段と、を備え、
制御部は、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度に基づき、測定部の保守動作に関する情報を通知するよう通知手段を制御する自動分析装置。
【請求項14】
保守動作実行指示受付手段を備え、
制御部は、保守動作実行指示受付手段により保守動作実行指示の入力が受け付けられると、測定部において測定中の検体の測定が終了した後、測定部の測定動作を停止させ、測定部に保守動作を実行させる請求項13に記載の自動分析装置。
【請求項15】
測定部は、検体容器に収容された検体を吸引する吸引部と、吸引部により吸引された検体が流通する流路を含み、検体と試薬を含む試料を調製する調製部と、調製部により調製された試料が流入するフローセルと、フローセル中の試料に光を照射する光源部と、光源部により光を照射することで試料から生じる光を受光する受光部と、受光部により受光された光信号を測定データとして制御部へ送信する送信部と、を備え、
制御部は、流路の洗浄動作に関する情報を通知するよう通知手段を制御し、測定部に流路の洗浄動作を実行させる請求項14に記載の自動分析装置。
【請求項16】
被験者から採取される検体に含まれる粒子成分を分析する自動分析装置であって、
検体を測定し、測定データを取得する測定部と、
測定部により取得された測定データを解析し、検体に含まれる粒子成分の分析結果を取得し、所定の粒子成分の異常に関する情報を含む分析結果が取得される頻度に基づき、
測定部に保守動作を実行させる制御部と、を備える自動分析装置。
【請求項17】
測定部は、検体容器に収容された検体を吸引する吸引部と、吸引部により吸引された検体が流通する流路を含み、検体と試薬を含む試料を調製する調製部と、調製部により調製された試料が流入するフローセルと、フローセル中の試料に光を照射する光源部と、光源部により光を照射することで試料から生じる光を受光する受光部と、受光部により受光された光信号を測定データとして制御部へ送信する送信部と、を備え、
制御部は、測定部に流路の洗浄動作を実行させる請求項16に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−47911(P2011−47911A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199054(P2009−199054)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】